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特許7303075金属箔用コーティング剤およびプレススルーパッケージ包装用の蓋材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】金属箔用コーティング剤およびプレススルーパッケージ包装用の蓋材
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/02 20060101AFI20230627BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230627BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C09D163/02
C09D175/04
B65D65/40 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019163016
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021042275
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 勉
(72)【発明者】
【氏名】竹下 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】菊池 浩
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-002922(JP,A)
【文献】特開2015-174984(JP,A)
【文献】特開2010-205708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0046389(US,A1)
【文献】特表2016-524007(JP,A)
【文献】特開平05-023639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 -201/10
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
B65D 65/00 - 65/46
B65D 67/00 - 79/02
B65D 81/18 - 81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)~(3)を満たすことを特徴とする金属箔用コーティング剤。
(1)エポキシ当量3500g/eq以上であり、且つ数平均分子量(Mn)7000以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ポリイソシアネートを含有する。
(2)前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂が水酸基を有し、該水酸基価に対するポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(当量)が0.3~1.2の範囲である。
(3)前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、下記一般式(1)で表されるものである。
【化1】

(一般式(1)中、nは1~1000の整数を表し、Xは(xi)、(xii )で示される基を表す。)
【化2】
【化3】
【請求項2】
前記ポリイソシアネートが芳香族ポリジイソシアネートである請求項1に記載の金属箔用コーティング剤。
【請求項3】
前記金属箔がアルミニウム箔である請求項1又は2に記載の金属箔用コーティング剤。
【請求項4】
アルミニウム箔上に金属箔用コーティング剤を塗工したプレススルーパッケージ包装用の蓋材であって、前記金属箔用コーティング剤が請求項1~3のいずれかに記載の金属箔用コーティング剤であることを特徴とするプレススルーパッケージ包装用の蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用PTP包材(Press Through Package)や、食品や飲料パック等のアルミ金属箔を用いた蓋材への塗工を目的とするコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬品や食品等の包装部材として、アルミニウム箔(アルミ箔ともいう)等の金属箔が使用されている。
例えば、アルミニウム箔を積層体の一部として、アルミニウム箔などの金属箔基材とポリエチレンやポリプロピレンなどの熱融着性フィルム(以下シーラントと記載する)を、ポリウレタン系接着剤などを用いて積層することによって食品包装材料として使用することや(例えば特許文献1参照)、アルミ箔とヒートシール剤とを、接着剤等を使用して、医薬品包装容器(PTP包装容器)(例えば特許文献2参照)や、ヨーグルトや乳酸飲料などの液状流動乳製品等の液状流動食品の蓋材(例えば特許文献3参照)として使用することや、収容する容器のガスバリア機能を期待した用途として、アルミ箔やアルミ蒸着膜をプラスチックフィルムと積層させて使用することが知られている(例えば特許文献4参照)。
【0003】
一方で、アルミ箔等の金属箔は薄いため耐擦性等に劣ることから、アルミ箔を最表層とする積層体は今まであまり流通はしていない。しかしながら近年、包装部材の軽量化や低コスト化、あるいはリサイクル性を考慮して、従来の複雑な積層構造ではない、簡便な積層構造を有する包装材が要求されるようになり、アルミ箔を最表層とする積層体の検討が試みられるようになってきている。
【0004】
アルミ箔等の金属箔用のコーティング剤としては、例えば特許文献5に、プレススルーパッケージ(PTPとも言う)包装の蓋材の耐熱被覆層に用いられるPTP包装用印刷インキ組成物であって、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、および、ホルムアルデヒド吸収剤を含むPTP包装用印刷インキ組成物が知られている。しかしながら特許文献5に開示された組成物はホルムアルデヒド濃度に着目した組成物であり、耐擦性等の観点から評価されたものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-246688号公報
【文献】特開平10-152169号公報
【文献】特開2018-47958号公報
【文献】特開2017-203137号公報
【文献】特開2018-2922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、アルミ箔等の金属箔に対する密着性に優れ、且つ耐熱性、耐擦性に優れる金属箔用のコーティング剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は金属への密着が良好であり、通常硬化剤と共に使用し熱硬化させることで塗膜強度すなわち耐擦性等を発現する。
本発明者らは、更にエポキシ樹脂として高分子量のエポキシ樹脂を使用すれば、熱可塑性樹脂様の性質を有するために硬化剤なしでもある程度造膜し、低分子量エポキシ樹脂と比較して硬化剤を減量させても硬化膜強度を低下させることなく造膜できることを見出した。且つ、水酸基と反応するポリイソシアネート硬化剤の使用量を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が有する水酸基量に対して特定量とすることで、短時間での硬化時間でも所望の耐熱性、耐擦性を発現できることを見出した。
【0008】
即ち本発明は、(1)~(3)を満たすことを特徴とする金属箔用コーティング剤に関する。
(1)エポキシ当量3500g/eq以上であり、且つ数平均分子量(Mn)7000以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ポリイソシアネートを含有する。
(2)前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂が水酸基を有し、該水酸基価に対するポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(当量)が0.3~1.2の範囲である。
(3)前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、下記一般式(1)で表されるものである。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)中、nは1~1000の整数を表し、Xは(xi)、(xii)で示される基を表す。)
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】

【0013】
また、本発明は、前記ポリイソシアネートが芳香族ポリジイソシアネートである金属箔用コーティング剤に関する。
【0014】
また、本発明は、前記金属箔がアルミニウム箔である金属箔用コーティング剤に関する。
【0015】
また、本発明は、アルミニウム箔上に金属箔用コーティング剤を塗工したプレススルーパッケージ包装用の蓋材であって、前記金属箔用コーティング剤が該金属箔用コーティング剤であることを特徴とするプレススルーパッケージ包装用の蓋材に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、アルミ箔等の金属箔に対する密着性に優れ、且つ耐熱性、耐擦性に優れる金属箔用のコーティング剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔ビスフェノールA型エポキシ樹脂〕
本発明で使用するビスフェノールA型エポキシ樹脂は、次を満たすエポキシ樹脂であれば特に限定なく使用することができる。
・エポキシ当量3500/eq以上であり、且つ数平均分子量(Mn)7000以上である。
・水酸基を有する。
・一般式(1)で表されるものである。
【0018】
【化4】

(一般式(1)中、nは1~1000の整数を表し、Xは(xi)、(xii)で示される基を表す。)
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】
エポキシ当量が3500g/eq以上であることで、密着性、耐熱性に優れる。エポキシ当量は中でも4500g/eq以上であることが好ましく、5500g/eq以上であることが最も好ましい。一方上限は、特に限定はないが、市販されているエポキシ樹脂のエポキシ当量の上限から考慮すると500,000g/eq以下であることが一般的である。
【0022】
また、数平均分子量(Mn)は7000以上であることが好ましく、中でも8000以上であることがなお好ましく、9000以上であることが最も好ましい。
尚、上限は塗工性の観点から50000以下であることが好ましく、30000以下であることがなお好ましく 20000以下であることが最も好ましい。
尚、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0023】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8420GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。

「TSKgel SuperHZ1000」(4.6mmΦ×15cm)×1本
「TSKgel SuperHZ2000」(4.6mmΦ×15cm)×1本
「TSKgel SuperHZ3000」(4.6mmΦ×15cm)×1本
「TSKgel SuperHZ4000」(4.6mmΦ×15cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.35mL/分
注入量:10μL(試料濃度0.3質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0024】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-380」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-850」
【0025】
また、本発明で使用するビスフェノールA型エポキシ樹脂は水酸基を有する。
該ビスフェノールA型エポキシ樹脂の、水酸基当量としてこのましくは300g/eq以下であり、より好ましくは295g/eq以下である。
尚、本発明で使用する一般式(1)で示されるビスフェノールA型エポキシ樹脂において、nが大きいほど分子量がおおきくなるため、水酸基当量は相対的に小さくなり、n=1000とした場合、水酸基当量は286g/eqに収束される。
【0026】
このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂としては市販品を使用してもよく、例えば三菱ケミカル(株)、日鉄ケミカル&マテリアル(株)から入手可能である。
実例をあげれば、三菱ケミカル(株)社製のjER1010、jER1256、jER1256B40、日鉄ケミカル&マテリアル(株)社製のYP-50、YP-50S、YP-40ASM40、YP-50EK35などが挙げられる。
【0027】
また本発明の効果を損なわない範囲において、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂以外のエポキシ基含有化合物を配合していてもよい。エポキシ基含有化合物としては、例えば水添のビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、あるいはビスフェノール以外のエポキシ樹脂として、ノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アクリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテル等の化合物や、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや重量平均分子量が数千から数十万のポリマー等が挙げられる。
【0028】
〔ポリイソシアネート〕
本発明で使用するポリイソシアネートは、特に限定なくエポキシ基と反応しうるイソシアネート基を複数有するイソシアネート化合物であれば特に限定されない。例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、これらのポリイソシアネートのビュレット体、または、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられる。
【0029】
本発明に用いるポリイソシアネート化合物は、硬化剤として作用し適宜選択して用いることができるが、芳香族系であっても脂肪族系であってもよい。本発明で好ましく用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のポリイソシアネート、を挙げることができる。
中でもキシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)が好ましい。
【0030】
〔イソシアネート基含有率(当量)〕
本発明においては、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の水酸基価に対するポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(当量)が0.3~1.2の範囲であることが必要である。この範囲とすることで、アルミ箔等の金属箔に対する密着性と耐擦性とを両立させることができる。なお本発明において、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の水酸基価に対するポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(当量)は次の方法により算出した。

ビスフェノールA型エポキシ樹脂の水酸基価:A(mgKOH/g)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の質量:B(g)
ポリイソシアネートのNCO%:C(%)
ポリイソシアネートの質量:D(g)

NCO/OH比=C×D×561/(A×B×42)
【0031】
〔その他の原料〕
本発明の金属箔用コーティング剤は、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、前記ポリイソシアネート以外に、汎用の樹脂を含有することもできる。例えば、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール樹脂、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂等があげられる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
また、耐摩性を上げる為、耐摩剤、滑り剤等を配合しても良い。脂肪酸アミド、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE等を単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
また、硬化性を上げる為、触媒を添加しても良い。
前記触媒としては、有機系スズ化合物、三級アミン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0033】
必要に応じて上記以外の例えば、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級脂肪酸等の有機化合物系ブロッキング防止剤を使用することが好ましい。これら有機化合物系ブロッキング防止剤は、ヒートシール層表面にブリードアウトすることでブロッキングを防止する。そのため、粒子系ブロッキング防止剤と有機化合物系ブロッキング防止剤を併用してもよい。有機化合物系ブロッキング防止剤は多量に配合すると接着性を阻害し、接着不良を起こし易いので、少量添加に留めることが好ましい。
【0034】
実際に本発明の金属箔用コーティング剤を金属箔に塗布するに当っては、その塗布性能を上げるべく、各種有機溶剤で固形分20%質量となる様に溶解して使用する。
使用できる希釈溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらのうち通常はトルエン、メチルエチルケトンや、これらの混合物を使用するのが好ましい。
【0035】
金属箔への塗工法としては、例えば、バーコーター、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法で塗工することができる。本発明の効果を最大限発揮するためには、アルミ箔への塗膜量としては1~2g/mが好ましく、乾燥条件は120~200℃で5~100秒の範囲が好ましい。
【0036】
本発明の金属箔用コーティング剤の具体的な用途としては、錠剤やカプセルを充填した医療用PTP包材(Press Through Package)、ヨーグルト、コーヒーパック、乳飲料パック等のアルミ金属箔を用いた蓋材への塗工を挙げる事ができる。
【実施例
【0037】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
なお、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による数平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC-8420GPCシステムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgel SuperHZを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:0.35ml/分。試料濃度:0.3質量%。試料注入量:10μL。
段落〔0024〕記載の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
合成したエポキシ化合物のエポキシ当量については、JIS K7236に則って測定を行ない、エポキシ当量(g/eq)を算出した。
また、水酸基価は、樹脂中の水酸基を過剰のアセチル試薬にてアセチル化した際の、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウム(KOH)のmg数で示したものであり、JISK0070に準じたものである。
【0038】
〔金属箔用コーティング剤の作製〕
〔実施例1〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂jER1010(不揮発分100質量%、三菱ケミカル(株)社製)10部をメチルエチルケトン:トルエン=質量比1:1の混合溶剤48.7部に少しずつ添加して攪拌混合する。完全に溶解した後、ポリイソシアネートとしてXS-100ハードナー(トリレンジイソシアネートTDIのトリメチロールプロパンアダクト、不揮発分37.5質量%、DIC(株)社製)」10部を混合攪拌する上記により得られた組成物合計68.7部(固形分20質量%、水酸基価に対するポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(当量):NCO/OH比率0.30)から金属箔用コーティング剤を作成した。
【0039】
〔実施例2~30、比較例1~8〕
表1~3の実施例2~30、表4の比較例1~8についても同様に金属箔用コーティング剤を作製した。いずれも出来上がった金属箔用コーティング剤の固形分比率が20質量%となる様、配合を調節した。
【0040】
〔蓋材への塗装〕
硬質アルミ箔へ焼き付け後の塗膜量が2g/mとなるようにロールコーターを使用して塗工し、180℃10秒で乾燥させた。
【0041】
〔評価基準1:折り曲げ密着性〕
作成した塗膜を外側に180°折り曲げ、アルミ箔上の塗膜に直線状の折り曲げ痕をつけ、塗膜を元に戻す。直線状の折り曲げ痕をつけたアルミ箔上の塗膜を平らな台に置き、直線状の折り曲げ痕部分を中心になる様にニチバンの24mm幅セロファンテープを貼り、セロファンテープが塗膜に完全に接着する様に、布等でセロファンテープの上から擦りつける。貼り付けたセロファンテープより2mm程大きい枠を、セロファンテープの外側の塗膜に強く押し当てながら、塗膜に貼り付けたセロファンテープを上方に、勢い良く剥がし、塗膜のアルミ箔への密着度合を目視判定する。
(評価基準)
5:セロファンテープ接着部分の塗膜の剥離は見られない。
4:セロファンテープ接着部分の塗膜の10%未満が剥離した
3:セロファンテープ接着部分の塗膜の10%以上30%未満が剥離した
2:セロファンテープ接着部分の塗膜の30%以上50%未満が剥離した。
1:簡単に:セロファンテープ接着部分の塗膜の50%以上が剥離した。
【0042】
〔評価基準2:耐摩耗性〕
作成した塗膜を適当な大きさに切断し、学振型摩擦試験機(大栄科学精器製作所製RT-100、曲面半径200mm)にセットする。磨耗子の先端にガーゼを取り付け、試験荷重500(g)で100往復させた後、塗膜表面の傷付き、磨耗具合を目視判定する。
(評価基準)
5:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が0%
4:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が10%未満
3:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が10%以上30%未満
2:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が30%以上50%未満
1:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が50%以上
【0043】
〔評価基準3:耐熱性〕
作成した塗膜をヒートシールテスター(テスター産業株式会社製TP-701-B)にセットして、設定温度230、250、270℃、設定圧力0.3MPa、設定時間2秒でシールする。シール後の塗膜の膨れや変色具合を目視判定する。
(評価基準)
5:塗膜表面に変色や膨れが全く無い
4:塗膜表面に極小量の変色や膨れがある
3:塗膜表面に小量の変色や膨れがある
2:塗膜表面に変色や膨れがある
1:塗膜表面に大きな変色や膨れがある
【0044】
各々の金属箔用コーティング剤の固形分比率を20質量%とした際の各配合、各ビスフェノールA型エポキシ樹脂の物性値、水酸基価に対するポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(NCO/OH比率)、及びこれを用いた蓋材の評価結果を表1~4に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】

表中の略語は次の通りである。また、空欄は未配合である事を示す。
・jER1004:三菱ケミカル(株)社製 ビスフェノールA型エポキシエポキシ樹脂
・jER1007:三菱ケミカル(株)社製 ビスフェノールA型エポキシエポキシ樹脂
・jER1009:三菱ケミカル(株)社製 ビスフェノールA型エポキシエポキシ樹脂
・jER1010:三菱ケミカル(株)社製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂
・jER1256B40:三菱ケミカル(株)社製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂(不揮発分40質量%)
・jER1256:三菱ケミカル(株)社製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂
・フェノトートーYP-40ASM40:日鉄ケミカル&マテリアル(株)製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂(不揮発分40質量%)
・フェノトートーYP-50EK35:日鉄ケミカル&マテリアル(株)製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂(不揮発分35質量%)
・XS-100ハードナー:トリレンジイソシアネートTDIのトリメチロールプロパンアダクト、不揮発分37.5質量%、DIC(株)社製
・タケネートD-110N:キシリレンジイソシアネートXDIのトリメチロールプロパンアダクト、不揮発分75質量%、三井化学(株)社製
【0049】
本発明の金属箔用のコーティング剤は、アルミ箔等の金属箔に対する密着性に優れ、耐熱性、及び耐摩耗性を兼備する結果となった。