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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】カバーパネル
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/18 20060101AFI20230627BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20230627BHJP
   F21V 21/03 20060101ALI20230627BHJP
   B61D 29/00 20060101ALI20230627BHJP
   F21W 106/00 20180101ALN20230627BHJP
【FI】
B61D17/18
B61D37/00 Z
F21V21/03 460
B61D29/00
F21W106:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019177069
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054152
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀俊
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172516(JP,A)
【文献】特開2015-093562(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0301425(KR,Y1)
【文献】特開2018-067484(JP,A)
【文献】特開2016-162480(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104108399(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0144872(US,A1)
【文献】特表2017-507080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0319502(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0329452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/18
B61D 29/00
B61D 37/00
B64D 11/00
B64D 47/02
F21V 21/03
F21W 106/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旅客輸送を行う輸送機材の客室の天井に、複数の長尺の照明ユニットがケーシングを介して各々の長尺方向に互いに間隔を空けて設置されるときに、前記ケーシングの間隔を埋めるようにして設置されるカバーパネルであって、
前記天井から下方へ延びて艤装品を支えるためのブラケットが挿通される挿通孔が設けられると共に、該挿通孔が設けられた部分を除き、前記長尺方向と平行な方向に一様に、前記照明ユニットのケーシングと同じ断面形状を有し、
前記挿通孔を横切る位置を分割面が通る態様で、前記長尺方向と直交する方向へと分割可能な分割片により構成されていることを特徴とするカバーパネル。
【請求項2】
前記天井に設置されたときの上下方向を基準として、下方から上方へ窪んだ凹条部を有すると共に、前記分割面が前記凹条部の底を成す部位を通るように設けられていることを特徴とする請求項1記載のカバーパネル。
【請求項3】
前記凹条部の底を成す部位には、前記分割片が天井に固定される際に使用される複数の取付穴が、前記長尺方向と平行な方向に互いに間隔を空けて設けられた取付部が構成され、
前記分割面は、前記取付部が、各々が少なくとも1つの前記取付穴を有する複数部位へと前記長尺方向と平行な方向に分割され、且つ、前記複数部位が前記分割片の各々に配分されるように、前記長尺方向に沿ってクランク状に設けられていることを特徴とする請求項2記載のカバーパネル。
【請求項4】
前記分割片が2つであり、
前記分割面は、前記天井に設置されたときの上下方向を基準として、2つの前記分割片が合体された状態で、一方の分割片に含まれる前記取付部の一部が他方の分割片の上側に重なると共に、前記他方の分割片に含まれる前記取付部の一部が前記一方の分割片の上側に重なるような、相補的形状を成すように設けられていることを特徴とする請求項3記載のカバーパネル。
【請求項5】
前記長尺方向が前記輸送機材の進行方向と平行であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のカバーパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客輸送を行う輸送機材の客室の天井に設置されるカバーパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両、バス、旅客機といった旅客を輸送する輸送機材の客室には、様々な艤装品が取り付けられる。例えば、特許文献1には、鉄道車両に取り付けられる種々の艤装品が開示されており、特許文献2には、鉄道車両に用いられる照明装置が開示されている。図6には、そのような鉄道車両の客室の天井80を見上げた状態を示しており、鉄道車両の客室の天井80には、客室内に明かりを提供する複数の長尺の照明ユニット82、乗客が身体を支えるために掴まる複数の吊手86、乗客に様々な情報を提示する表示器92等が、艤装品として設置されている。これらのうち、複数の吊手86は、鉄道車両の進行方向或いは幅方向に延在する吊手棒88から吊り下げられており、吊手棒88は、天井80から延びる吊手棒受90により支持されている。更に、吊手棒受90は、複数の照明ユニット82の間に設置されたカバーパネル100を貫通して延びており、カバーパネル100は、鉄道車両の進行方向と直交する断面について、照明ユニット82のケーシング84と同じ断面形状を一様に有している。これにより、複数の照明ユニット82が連続して設置された如く見えるように、見栄えが向上されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3675811号公報
【文献】特許第5600657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来のカバーパネル100は、吊手棒受90が貫通する構造であるため、図7に示すように、照明ユニット82の長尺方向(図7では鉄道車両の進行方向と同じ方向)へと分割できるようになっており、吊手棒受90や吊手棒88を組み上げた後に、吊手棒受90を挟んで取り付けられていた。しかしながら、このような分割構造では、カバーパネル100の分割面を正確に合わせることが難しく、又、断面が一様な方向を横切るようにして分割面が設けられる結果、分割位置が乗客から容易に視認される位置にあるため、見栄えが悪かった。一方、カバーパネル100を分割構造とせずに、カバーパネル100の貫通孔に先に吊手棒受90を通しておく方法もある。しかしながら、この場合は、吊手棒88を取り付ける際にカバーパネル100が邪魔になってしまい、作業性が悪いという問題や、後からカバーパネル100を取り外す必要があるときに、手間がかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、艤装品の取り付け作業性を損なうことなく、客室の天井の見栄えを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)旅客輸送を行う輸送機材の客室の天井に、複数の長尺の照明ユニットがケーシングを介して各々の長尺方向に互いに間隔を空けて設置されるときに、前記ケーシングの間隔を埋めるようにして設置されるカバーパネルであって、前記天井から下方へ延びて艤装品を支えるためのブラケットが挿通される挿通孔が設けられると共に、該挿通孔が設けられた部分を除き、前記長尺方向と平行な方向に一様に、前記照明ユニットのケーシングと同じ断面形状を有し、前記挿通孔を横切る位置を分割面が通る態様で、前記長尺方向と直交する方向へと分割可能な分割片により構成されているカバーパネル(請求項1)。
【0008】
本項に記載のカバーパネルは、旅客輸送を行う輸送機材の客室の天井に、長尺の照明ユニットと共に設置されるものである。すなわち、客室の天井には、複数の照明ユニットがケーシングを介して各々の長尺方向に互いに間隔を空けて設置され、そのようなケーシングの間隔を埋めるようにしてカバーパネルが設置される。又、カバーパネルは、照明ユニットの長尺方向と平行な方向に一様に、照明ユニットのケーシングと同じ断面形状を有している。換言すれば、カバーパネルと照明ユニットのケーシングとは、照明ユニットの長尺方向と平行な方向に延在する、一様な外形を有している。このため、照明ユニットの長尺方向に沿って、照明ユニットとカバーパネルとが交互に設置された客室の天井は、あたかも照明ユニットが連続して設置されているように視認され、見栄えが向上されるものである。更に、本項に記載のカバーパネルには、ブラケットが挿通される挿通孔が設けられており、このブラケットは、天井から下方へ延びて、種々の艤装品を支えるために用いられるものである。すなわち、カバーパネルは、天井に固定されるブラケットの固定部分を覆う役割も果たしており、天井の美観が損なわれることなく、ブラケットにより支えられる艤装品や照明ユニットが機能的に取り付けられることになる。
【0009】
しかも、本項に記載のカバーパネルは、ブラケットが挿通される挿通孔を横切る位置を分割面が通る態様で、照明ユニットの長尺方向と直交する方向へと分割可能な分割片により構成されている。このため、ブラケットが天井に固定された状態で、延いてはブラケットに艤装品が取り付けられた状態でも、分割片毎に取り付けが行われることで、後からカバーパネルが天井に対して容易に取り付けられるものとなる。更に、照明ユニットの長尺方向と直交する方向へと分割可能なことから、分割面は、カバーパネルの断面形状が一様な方向(照明ユニットの長尺方向)を横切るのではなく、主に断面形状が一様な方向へと平行に延在するものとなる。従って、照明ユニットのケーシングと同様の、照明ユニットの長尺方向に延在する一様な外形の一部(例えば段差や窪み等)に位置が合わされて、分割面が形成されることとすれば、分割面の端部が乗客から視認され難くなるものである。これにより、ブラケットによって支持される艤装品や本カバーパネルの取り付け作業性が損なわれることなく、客室の天井の見栄えが向上されることとなる。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記天井に設置されたときの上下方向を基準として、下方から上方へ窪んだ凹条部を有すると共に、前記分割面が前記凹条部の底を成す部位を通るように設けられているカバーパネル(請求項2)。
本項に記載のカバーパネルは、客室の天井に設置されたときの上下方向を基準として、下方から上方へ窪んだ凹条部を有するものであり、この凹条部は、照明ユニットの長尺方向に延在し、当然のことながら照明ユニットにも形成されるものである。そして、このような凹条部の底を成す部位(凹条部の上方に位置する部位)を通るように、分割片へと分割するための分割面が設けられているものである。これにより、分割面同士が正確に合わされずに分割片が合体されている場合であっても、分割面の下端が凹条部の底側に隠されているため、凹条部の開口側から乗客に視認されるようなことはなく、見栄えがより向上されるものとなる。
【0011】
(3)上記(2)項において、前記凹条部の底を成す部位には、前記分割片が天井に固定される際に使用される複数の取付穴が、前記長尺方向と平行な方向に互いに間隔を空けて設けられた取付部が構成され、前記分割面は、前記取付部が、各々が少なくとも1つの前記取付穴を有する複数部位へと前記長尺方向と平行な方向に分割され、且つ、前記複数部位が前記分割片の各々に配分されるように、前記長尺方向に沿ってクランク状に設けられているカバーパネル(請求項3)。
【0012】
本項に記載のカバーパネルは、凹条部の底を成す部位に、分割片を天井に固定するための取付部が構成されたものであり、この取付部は、分割片の固定に使用される複数の取付穴が、照明ユニットの長尺方向と平行な方向に互いに間隔を空けて設けられている。そして、分割片へと分割するための分割面が、照明ユニットの長尺方向に沿ってクランク状に設けられていることで、分割片の各々が問題なく固定されるようになっている。すなわち、分割面がクランク状に設けられていることにより、上述した取付部は、各々が少なくとも1つの取付穴を有する複数部位へと、照明ユニットの長尺方向と平行な方向に分割され、更にそれらの複数部位が、分割片の各々に配分されるようになっている。これによって、分割片の各々は、少なくとも1つの取付穴を有する取付部の部位を1つ以上含むことになるため、そのような取付部の取付穴を介して、天井へ強固に固定されるものとなる。しかも、分割面の下端と取付穴との双方が凹条部の底側に隠されているため、見栄えがより一層向上されるものである。
【0013】
(4)上記(3)項において、前記分割片が2つであり、前記分割面は、前記天井に設置されたときの上下方向を基準として、2つの前記分割片が合体された状態で、一方の分割片に含まれる前記取付部の一部が他方の分割片の上側に重なると共に、前記他方の分割片に含まれる前記取付部の一部が前記一方の分割片の上側に重なるような、相補的形状を成すように設けられているカバーパネル(請求項4)。
【0014】
本項に記載のカバーパネルは、2つの分割片により構成され、これら2つの分割片が相補的形状を成すように、分割面が設けられているものである。すなわち、客室の天井に設置されたときの上下方向を基準として、2つの分割片が合体された状態で、一方の分割片に含まれる取付部の一部が他方の分割片の上側に重なり、他方の分割片に含まれる取付部の一部が一方の分割片の上側に重なるようになっている。これにより、2つの分割片は、互いに上下方向へのズレ止め及び位置決めとして機能するようになる。更に、照明ユニットの長尺方向と平行な方向に分割される取付部の複数部位のうち、一方の分割片に属する取付部の部位が、他方の分割片に属する取付部の部位により挟み込まれるように、分割面が設けられることとすれば、照明ユニットの長尺方向と平行な方向についても、2つの分割片が互いにズレ止め及び位置決めとして機能するようになる。これにより、2つの分割片に分割可能な構成にも関わらず、正確に位置決めされた状態で客室の天井に固定されるものとなる。
【0015】
(5)上記(1)から(4)項において、前記長尺方向が前記輸送機材の進行方向と平行であるカバーパネル(請求項5)。
本項に記載のカバーパネルは、照明ユニットの長尺方向が輸送機材の進行方向と平行になっており、換言すれば、照明ユニットとカバーパネルとが、輸送機材の進行方向に沿って交互に設置される態様となる。これにより、輸送機材の進行方向に沿って細長く設けられることが多い客室において、本カバーパネルにより見栄えが向上された状態で、輸送機材の進行方向に沿って断続的に設置された照明ユニットから、効率よく明かりが提供されるものとなる。更に、輸送機材の進行方向に沿った複数個所に、カバーパネルを貫通したブラケットを介して艤装品が設置されるものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のような構成であるため、艤装品の取り付け作業性を損なうことなく、客室の天井の見栄えを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るカバーパネルを示しており、(a)が斜視図、(b)が(a)と異なる角度の斜視図、(c)が正面図である。
図2図1のカバーパネルを構成する2つの分割片の斜視図であり、(a)が一方の分割片、(b)が他方の分割片である。
図3図1のカバーパネルを分割する際の分割途中の状態を示しており、(a)が斜視図、(b)が正面図である。
図4図3に引き続き、図1のカバーパネルを分割する際の分割した状態を示しており、(a)が斜視図、(b)が正面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るカバーパネルの設置例を説明するための、鉄道車両の客室の天井の一部を示すイメージ図である。
図6】鉄道車両の客室の天井を示すイメージ図である。
図7】従来のカバーパネルが設置された、鉄道車両の客室の天井の一部を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体を通して、同一部分若しくは相当する部分は、同一の符号で示している。
図1に示す本発明の実施の形態に係るカバーパネル10は、例えば図5及び図6に示すように、旅客輸送を行う鉄道車両等の輸送機材の客室の天井80に、照明ユニット82と共に設置されるものである。すなわち、カバーパネル10は、図6に示した従来のカバーパネル100に替えて利用されるものであって、ケーシング84を介して天井80に断続的に設置される複数の照明ユニット82の、隣接する照明ユニット82間の間隔を埋めるように設置される。本実施形態では、照明ユニット82の長尺方向が鉄道車両の進行方向と平行であり、カバーパネル10と照明ユニット82とが、鉄道車両の進行方向に沿って交互に設置される。
【0019】
図1に戻り、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10は、照明ユニット82の長尺方向と平行な方向(図1(a)における右下~左上方向、図1(b)における左下~右上方向、図1(c)における紙面と直交する方向)に、一様な断面形状を有して延在している。更に、カバーパネル10は、図1(c)の正面図で確認できるような、照明ユニット82の長尺方向と直交するその一様な断面形状が、照明ユニット82の同方向の断面形状と同じになっている。より詳しくは、本実施形態において、カバーパネル10は、凹条部20、取付部22、第1側壁部32、第1翼部34、第1脚中部36、第1脚先部38、第2側壁部42、第2翼部44、第2脚中部46及び第2脚先部48を有しており、これらの各部位が照明ユニット82の長尺方向と平行な方向へ一様に延在している。
【0020】
図1(c)に示す正面視において、凹条部20は、下方から上方へ窪んだ部位であり、その凹条部20の底20aが、略矩形を成す取付部22により形成されている。取付部22の図中右下側及び左下側には、凹条部20の側壁を形成する第1側壁部32及び第2側壁部42が接続されている。第1側壁部32は略三角形を成し、その図中右上側に第1翼部34が接続されると共に、その図中左下側に第1脚中部36が接続されている。第1翼部34は、その図中下側の面が僅かに円弧状を成しながら、図中右側へ向かって延びている。第1脚中部36は、第1側壁部32から図中右下側へ向かって延び、その先端に第1脚先部38が接続されている。第1脚先部38は、その図中下側の面が円弧状を成しながら、第1脚中部36から図中右上側と図中左側との双方へ向かって延びている。
【0021】
一方、第2側壁部42は略三角形を成し、その図中左上側に第2翼部44が接続されると共に、その図中右下側に第2脚中部46が接続されている。第2翼部44は、その図中下側の面が円弧状を成しながら、図中左上側へ向かって延びている。第2脚中部46は、第2側壁部42から図中左下側へ向かって延び、その先端に第2脚先部48が接続されている。第2脚先部48は、その図中下側の面が円弧状を成しながら、第2脚中部46から図中左上側と図中右側との双方へ向かって延びている。すなわち、第1側壁部32、第1翼部34、第1脚中部36及び第1脚先部38と、第2側壁部42、第2翼部44、第2脚中部46及び第2脚先部48とは、取付部22を通って図中上下方向に延びる仮想線を基準として、第1翼部34と第2翼部44とが僅かに異なるものの、概ね線対称の形状を有している。
【0022】
更に、カバーパネル10には、図1(a)及び(b)に示すように、挿通孔12と複数の取付穴26とが設けられている。挿通孔12は、様々な艤装品62を支えるためのブラケット60(図5参照)が挿通される貫通孔であって、カバーパネル10の延在方向(照明ユニット82の長尺方向と平行な方向)の略中央に、主に取付部22から第2翼部44の途中まで至る大きさで、平面視で略矩形に設けられている。複数の取付穴26は、カバーパネル10が客室の天井80(図5及び図6参照)に固定される際に、取付ねじが挿通される貫通孔であって、本実施形態では4つの取付穴26が、カバーパネル10の延在方向に互いに間隔を空けて取付部22に穿設されている。
【0023】
又、カバーパネル10は、その延在方向に沿ってクランク状に分割面14が設けられていることで、延在方向と直交する方向へと分割可能な、本実施形態では2つの分割片16(16A、16B)により構成されている。具体的に、分割面14は、取付部22がカバーパネル10の延在方向に複数部位へと分割されるように、主に取付部22を通して設けられている。より詳しくは、分割面14は、カバーパネル10の延在方向については、取付部22と第1側壁部32との接続部分や、取付部22と第2側壁部42との接続部分を縦断し、カバーパネル10の幅方向(図1(c)における左右方向)については、隣接する取付穴26の間を通って取付部22を横断している。更に、分割面14は、挿通孔12を横切って設けられている。
【0024】
上述した分割面14により、本実施形態のカバーパネル10は、取付部22が4つの部位24A~24Dへと分割され、部位24A~24Dの各々に1つの取付穴26が配置されている。図2には、分割面14により分割された2つの分割片16A、16Bを別々に図示している。図2(a)に示されている分割片16Aは、取付部22の4つの部位24A~24Dのうちの部位24B及び24Cを含み、これらの間に挿通孔12の片割れ12Aが配置されている。又、分割片16Aの分割面14Aは、部位24Bの図中左上側に隣接する位置と、部位24Cの図中右下側に隣接する位置とに、段差面30A及び30Dが形成されるように設けられている。これらの段差面30A及び30Dは、僅かな幅で分割片16Aの長手方向に沿って延在しており、分割片16Aが客室の天井80に設置された状態で上方を向くようになっている。
【0025】
他方、図2(b)に示されている分割片16Bは、取付部22の4つの部位24A~24Dのうちの部位24A及び24Dを含み、これらの間であってこれらの各々から距離を空けた位置に、挿通孔12の片割れ12Bが配置されている。又、分割片16Bの分割面14Bは、部位24Aの図中左下側に隣接する位置と、部位24Dの図中右上側に隣接する位置とに、段差面30B及び30Cが形成されるように設けられている。これらの段差面30B及び30Cは、僅かな幅で分割片16Bの長手方向に沿って延在しており、分割片16Bが客室の天井80に設置された状態で上方を向くようになっている。
【0026】
次に、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10を分離及び合体する方法について説明する。図1に示したカバーパネル10は合体された状態であり、この状態では、図2も参照して、分割片16Aの分割面14Aと分割片16Bの分割面14Bとが向かい合っている。更に、分割片16Aに属する取付部22の部位24Bの、図2(a)における左下側が、客室の天井80に設置されたときの上下方向を基準として、分割片16Bの段差面30Bの上側に重なっている。又、分割片16Aに属する取付部22の部位24Cの、図2(a)における左下側が、客室の天井80に設置されたときの上下方向を基準として、分割片16Bの段差面30Cの上側に重なっている。同様に、分割片16Bに属する取付部22の部位24A及び24Dの、図2(b)における右下側が、客室の天井80に設置されたときの上下方向を基準として、分割片16Aの段差面30A及び30Dの上側に重なっている。特に図1(c)では、分割片16Bに属する取付部22の部位24Dの右側が、分割片16Aの段差面30Dの上側に重なっていることが確認できる。
【0027】
そして、上記のように合体していた2つの分割片16A、16Bを分離する際には、図3に示すように、まず、2つの分割片16A、16Bがカバーパネル10の幅方向(図3(b)における左右方向)に僅かに離れるように、分割片16A、16Bの双方又は一方を移動する。すると、分割片16Aに属する取付部22の部位24B及び24Cの一部が、分割片16Bの段差面30B及び30Cの上側に重なっていた状態が解除され、同様に、分割片16Bに属する取付部22の部位24A及び24Dの一部が、分割片16Aの段差面30A及び30Dの上側に重なっていた状態が解除される。特に図3(b)では、分割片16Bに属する取付部22の部位24Dの右側が、分割片16Aの段差面30Dの上側に重ならなくなった状態が確認できる。
【0028】
続いて、図4に示すように、2つの分割片16A、16Bが、客室の天井80に設置されたときの上下方向(図4(b)における上下方向)に離れるように、分割片16A、16Bの双方又は一方を移動する。すなわち、図1に示した合体状態では、取付部22の部位24A~24Dの一部が段差面30A~30Dの上側に重なっていたため、2つの分割片16A、16Bを上下方向に離すことができなかったが、図3に示したように2つの分割片16A、16Bを幅方向に離す手順を経ることで、2つの分割片16A、16Bを上下方向に離すことができるようになったものである。図4では、2つの分割片16A、16Bが完全に分離されたことが確認できる。
【0029】
一方、2つの分割片16A、16Bを分離された状態から合体する際には、上述した分離の手順を逆に実行すればよい。一例として、図5には、一方の分割片16Bが先に客室の天井80に取り付けられ、残りの分割片16Aが離れた位置にある状態が示されている。この状態では、分割片16Bに設けられた挿通孔12の片割れ12Bと、後に分割片16Aに設けられた挿通孔12の片割れ12Aが位置する隙間とを通って、艤装品62を支えるブラケット60が天井80から下方へと延びている。図5の実施形態では、艤装品62を支えるブラケット60として、吊手86が取り付けられた吊手棒88を支える吊手棒受90が示されている。このような状態から、図3に示した状態になるように分割片16Aが上方へ移動され、更に、取付部22の部位24A~24Dの一部が段差面30A~30Dの上側に重なるように、分割片16Aが分割片16Bに向かって幅方向に移動されることで、図1に示したように2つの分割片16A、16Bが合体される。
【0030】
このとき、分割片16Aの部位24B及び24Cが斜め上方を向くように、分割片16Aを傾けた状態で分割片16Bに向かって移動させ、部位24B及び24Cを分割片16Bの段差面30B及び30Cの上方に位置させた後に、分割片16Aの傾きをなくすように分割片16Aの第1翼部34側を上方へ移動させることで、2つの分割片16A、16Bを合体させてもよい。又、分割片16Aが分割片16Bよりも先に天井80に取り付けられていてもよい。なお、図5に示す実施形態は、図6に示した例と同様に、鉄道車両の客室の天井80に、鉄道車両の長手方向に沿って照明ユニット82とカバーパネル10とが交互に配置される列が、鉄道車両の幅方向に間隔を空けて2列設置される場合に対応している。この場合、分割片16Aが鉄道車両の幅方向外側に配置され、分割片16Bが鉄道車両の幅方向中央側に配置される。
【0031】
ここで、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10は、図1図5に示したような構成に限定されるものではなく、例えば、分割面14は、挿通孔12を横切る位置を通っていれば任意の位置に設けてよく、カバーパネル10を3つ以上の分割片16へと分割するように設けられてもよい。又、取付部22に設けられる取付穴26の数は任意であり、それに応じて分割面14により分割される取付部22の部位数も任意である。更に、カバーパネル10が有する一様な断面形状は、照明ユニット82のケーシング84と同じであれば、図1図5に示した形状と異なっていてもよい。加えて、照明ユニット82と共に設置されるカバーパネル10は、天井80への設置方向が輸送機材の進行方向と異なっていてもよく、天井80への設置列数が2列以外であってもよく、設置先の輸送機材が鉄道車両以外のバス等であってもよい。更に、ブラケット60が、例えば広告や表示器92(図6参照)といった吊手棒88以外の艤装品62を支えるものであってもよい。
【0032】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10は、例えば図5及び図6に示すように、旅客輸送を行う輸送機材の客室の天井80に、長尺の照明ユニット82と共に設置されるものである。すなわち、客室の天井80には、複数の照明ユニット82がケーシング84を介して各々の長尺方向に互いに間隔を空けて設置され、そのようなケーシング84の間隔を埋めるようにしてカバーパネル10が設置される。又、図1も参照して、カバーパネル10は、照明ユニット82の長尺方向と平行な方向に一様に、照明ユニット82のケーシング84と同じ断面形状を有している。換言すれば、カバーパネル10と照明ユニット82のケーシング84とは、照明ユニット82の長尺方向と平行な方向に延在する、一様な外形を有している。このため、照明ユニット82の長尺方向に沿って、照明ユニット82とカバーパネル10とが交互に設置された客室の天井80は、あたかも照明ユニット82が連続して設置されているように視認され、見栄えを向上することができる。
【0033】
更に、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10には、ブラケット60が挿通される挿通孔12が設けられており、このブラケット60は、天井80から下方へ延びて、種々の艤装品62を支えるために用いられるものである。すなわち、カバーパネル10は、天井80に固定されるブラケット60の固定部分を覆う役割も果たしており、天井80の美観を損なうことなく、ブラケット60により支えられる艤装品62や照明ユニット82を機能的に取り付けることができる。しかも、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10は、ブラケット60が挿通される挿通孔12を横切る位置を分割面14が通る態様で、照明ユニット82の長尺方向(カバーパネル10の延在方向)と直交する方向へと分割可能な分割片16により構成されている。このため、ブラケット60が天井80に固定された状態で、延いてはブラケット60に艤装品62が取り付けられた状態でも、分割片16毎に取り付けを行うことで、後からカバーパネル10を天井80に対して容易に取り付けることができる。
【0034】
更に、カバーパネル10がその延在方向と直交する方向へと分割可能なことから、分割面14は、カバーパネル10の断面形状が一様な方向(カバーパネル10の延在方向)を横切るのではなく、主に断面形状が一様な方向へと平行に延在するものとなる。従って、照明ユニット82のケーシング84と同様の、照明ユニット82の長尺方向に延在する一様な外形の一部(例えば段差や窪み等)に位置を合わせて、分割面14を形成することとすれば、分割面14の端部を乗客から視認され難くすることができる。これにより、ブラケット60によって支持される艤装品62や本カバーパネル10の取り付け作業性を損なうことなく、客室の天井80の見栄えを向上することが可能となる。
【0035】
又、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10は、図1に示すように、客室の天井80に設置されたときの上下方向(図1(c)における上下方向)を基準として、下方から上方へ窪んだ凹条部20を有するものであり、この凹条部20は、カバーパネル10の延在方向と平行に延在し、当然のことながら照明ユニット82にも形成されるものである。そして、このような凹条部20の底20aを成す部位(凹条部20の上方に位置する部位)を通るように、分割片16へと分割するための分割面14が設けられているものである。これにより、分割面14同士が正確に合わされずに分割片16が合体されている場合であっても、分割面14の下端を凹条部20の底20a側に隠すことができるため、凹条部20の開口側から乗客に視認されるようなことはなく、見栄えをより向上することが可能となる。
【0036】
更に、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10は、凹条部20の底20aを成す部位に、分割片16を天井80に固定するための取付部22が構成されたものであり、この取付部22は、分割片16の固定に使用される複数の取付穴26が、カバーパネル10の延在方向に互いに間隔を空けて設けられている。そして、分割片16へと分割するための分割面14が、カバーパネル10の延在方向に沿ってクランク状に設けられていることで、分割片16の各々が問題なく固定されるようになっている。すなわち、分割面14がクランク状に設けられていることにより、上述した取付部22は、各々が少なくとも1つの取付穴26を有する複数部位24A~24Dへと、カバーパネル10の延在方向に分割され、更にそれらの複数部位24A~24Dが、分割片16の各々に配分されるようになっている。これによって、分割片16の各々は、少なくとも1つの取付穴26を有する取付部22の部位を1つ以上含むことになるため、そのような取付部22の取付穴26を介して、各分割片16を天井80へ強固に固定することができる。しかも、分割面14の下端と取付穴26との双方が凹条部20の底20a側に隠されているため、見栄えをより一層向上することができる。
【0037】
又、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10は、図1及び図2に示すように、2つの分割片16A、16Bにより構成され、これら2つの分割片16A、16Bが相補的形状を成すように、分割面14が設けられているものである。すなわち、客室の天井80に設置されたときの上下方向を基準として、2つの分割片16A、16Bが合体された状態で、一方の分割片16Aに含まれる取付部22の部位24B及び24Cの一部が、他方の分割片16Bの段差面30B及び30Cの上側に重なり、他方の分割片16Bに含まれる取付部22の部位24A及び24Dの一部が、一方の分割片16Aの段差面30A及び30Dの上側に重なるようになっている。これにより、2つの分割片16A、16Bを、互いに上下方向へのズレ止め及び位置決めとして機能させることができる。
【0038】
更に、カバーパネル10の延在方向に分割される取付部22の複数部位24A~24Dのうち、一方の分割片16Aに属する取付部22の部位24B及び24Cが、他方の分割片16Bに属する取付部22の部位24A及び24Dにより挟み込まれるように、分割面14が設けられていることで、カバーパネル10の延在方向についても、2つの分割片16A、16Bを互いにズレ止め及び位置決めとして機能させることができる。これにより、2つの分割片16A、16Bに分割可能な構成にも関わらず、正確に位置決めした状態で客室の天井80に固定することが可能となる。なお、2つの分割片16A、16Bを分離及び合体する際には、図3及び図4に示すような手順を経ることで、ズレ止め機能を回避しつつ位置決め機能を利用しながら、分離及び合体することができる。
【0039】
又、本発明の実施の形態に係るカバーパネル10は、図5に示すように、照明ユニット82の長尺方向が輸送機材の進行方向と平行になっていることで、照明ユニット82とカバーパネル10とが、輸送機材の進行方向に沿って交互に設置される態様となる。これにより、輸送機材の進行方向に沿って細長く設けられることが多い客室において、本カバーパネル10により見栄えを向上した状態で、輸送機材の進行方向に沿って断続的に設置された照明ユニット82から、効率よく明かりを提供することができる。更に、輸送機材の進行方向に沿った複数個所に、カバーパネル10を貫通したブラケット60を介して艤装品62を設置することもできる。
【符号の説明】
【0040】
10:カバーパネル、12(12A、12B):挿通孔、14(14A、14B):分割面、16(16A、16B):分割片、20:凹条部、20a:底、22:取付部、24A~24D:複数部位、26:取付穴、60:ブラケット、62:艤装品、80:天井、82:照明ユニット、84:ケーシング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7