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特許7303090電気接続構造、コネクタ、及び電気接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電気接続構造、コネクタ、及び電気接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/38 20060101AFI20230627BHJP
   H01R 9/00 20060101ALI20230627BHJP
   H01R 13/44 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H01R4/38 B
H01R4/38 C
H01R9/00 Z
H01R13/44 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019199649
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072236
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】川崎 直哉
(72)【発明者】
【氏名】東 慎輔
(72)【発明者】
【氏名】土屋 豪範
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-77783(JP,U)
【文献】実開昭59-164176(JP,U)
【文献】特開2012-209259(JP,A)
【文献】実開昭57-45167(JP,U)
【文献】特表2017-531906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/38
H01R 9/00
H01R 13/44
H02G 5/00-5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面となる第一接続面を有する導電性の第一導体部及び平面となる第二接続面を有する導電性の第二導体部と、
前記第一接続面及び前記第二接続面を向かい合わせて前記第一導体部及び前記第二導体部の電気的な接続を行うための一対の締結部材と、
前記第一導体部を収容するための絶縁性の第一絶縁部及び前記第二導体部を収容するための絶縁性の第二絶縁部とを備え、
前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記一対の締結部材の締結進行方向に沿って見た時に、この見える範囲で前記第一導体部及び前記第二導体部を覆う第一触指防止部及び第二触指防止部を有し、且つ、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記第一導体部及び前記第二導体部の両側位置で前記一対の締結部材による締結を行う部分としての第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部を有する
ことを特徴とする電気接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続構造において、
前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、それぞれハウジング形状に形成され、且つ、前記第一絶縁部は、開口部が形成されたフード形状の第一係合部を有し、且つ、前記第二絶縁部は、前記開口部を介して前記第一係合部に挿入される第二係合部を有し、且つ、前記第一係合部は、前記一対の締結部材の締結前で前記第二係合部の前記締結進行方向への移動を許容する形状に形成される
ことを特徴とする電気接続構造。
【請求項3】
請求項2に記載の電気接続構造において、
前記第一係合部及び前記第二係合部には、前記挿入の際のガイド部分になる第一ガイド部及び第二ガイド部が形成される
ことを特徴とする電気接続構造。
【請求項4】
請求項3記載の電気接続構造において、
前記第一ガイド部及び前記第二ガイド部は、前記第一導体部及び前記第二導体部の配置部分と、前記第一絶縁締結部及び前記第二絶縁締結部の形成部分との間の位置に配置される
ことを特徴とする電気接続構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電気接続構造において、
前記第二係合部の前記第二ガイド部は、前記締結進行方向の反対方向から見える一対の壁形状の部分に形成され、且つ、該一対の壁形状の部分である前記第二ガイド部は、前記第二導体部に対する触指防止のための部分としても形成される
ことを特徴とする電気接続構造。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5に記載の電気接続構造を採用し、該電気接続構造における第一導体部及び第二導体部に高電圧用の電線端末又はバスバーをそれぞれ接続してなる
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
平面となる第一接続面を有する導電性の第一導体部及び平面となる第二接続面を有する導電性の第二導体部と、
前記第一接続面及び前記第二接続面を向かい合わせて前記第一導体部及び前記第二導体部の電気的な接続を行うための一対の締結部材と、
前記第一導体部を収容するための絶縁性の第一絶縁部及び前記第二導体部を収容するための絶縁性の第二絶縁部とを備え、
前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記一対の締結部材の締結進行方向に沿って見た時に、この見える範囲で前記第一導体部及び前記第二導体部を覆う第一触指防止部及び第二触指防止部を有し、且つ、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記第一導体部及び前記第二導体部の両側位置で前記一対の締結部材による締結を行う部分としての第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部を有し、
前記一対の締結部材による前記締結進行方向への締結を行うと、前記第一絶縁部に対し前記第二絶縁部が前記締結進行方向への移動が規制され、この移動規制に伴って前記第一導体部及び前記第二導体部の接続が完了する
ことを特徴とする電気接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結により電気的な接続を行う電気接続構造、この電気接続構造を採用してなるコネクタ、及び電気接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧・大電流が流れる接続部は、部品発熱低減のために、より小さな接触抵抗となる構造が求められる。尚、接触抵抗を小さくするだけなら溶接や溶着が有効な手段になる。しかしながら、ユニット部品の接続部位は、サービス性に配慮して分解できる構造が必要である。分解可能で且つ小さな接触抵抗となる接続構造としては、穴あき端子や穴あきバスバーと言った導体をボルトとナットで直接締結する構造、具体的には端子台による構造が知られる。端子台は、端子台本体に導電性のボルトが設けられ、このボルトの軸部に対してボルト挿通孔を有するバスバーが挿通される。そして、バスバーに対し重ねるようにして同じくボルト挿通孔を有する端子(電線端末に設けられる)が軸部に挿通され、この後にナットにて締め付け固定をすることにより電気的な接続が完了する。端子台を採用して高電圧の機器と電線とを電気的に接続するにあたっては、作業者が直接触れないようにして安全性を確保する必要がある(感電防止)。尚、下記特許文献1には、感電防止のための構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-91764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、文献中の接続保護部材をセットするまでの間、端子が剥き出しのままで危険な状態であり、そのため作業者の例えば指が端子に触れると感電が起きてしまうという恐れがある。そこで、既に低電圧での接続の分野において技術的に確立されたコネクタの接続構造を採用すれば感電を防げるものと考えてみた。しかしながら、コネクタの端子は一般的にバネ接点での接続になることから、これをそのまま高電圧での接続に採用すると体格が大きくなってしまうという問題点を有する。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、絶縁状態で作業をすることが可能な小型の電気接続構造、コネクタ、及び電気接続方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明の電気接続構造は、平面となる第一接続面を有する導電性の第一導体部及び平面となる第二接続面を有する導電性の第二導体部と、前記第一接続面及び前記第二接続面を向かい合わせて前記第一導体部及び前記第二導体部の電気的な接続を行うための一対の締結部材と、前記第一導体部を収容するための絶縁性の第一絶縁部及び前記第二導体部を収容するための絶縁性の第二絶縁部とを備え、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記一対の締結部材の締結進行方向に沿って見た時に、この見える範囲で前記第一導体部及び前記第二導体部を覆う第一触指防止部及び第二触指防止部を有し、且つ、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記第一導体部及び前記第二導体部の両側位置で前記一対の締結部材による締結を行う部分としての第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部を有することを特徴とする。
【0007】
このような請求項1の特徴を有する本発明によれば、第一導体部及び第二導体部を覆う第一触指防止部及び第二触指防止部を有することから、少なくとも作業者から見える範囲において絶縁状態で作業をすることができる。また、本発明によれば、第一導体部及び第二導体部の両側位置に第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部を配置し、この第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部の位置で一対の締結部材による締結を行えるようにしたことから、作業者は第一導体部及び第二導体部に触れずにすみ、結果、絶縁状態での作業をすることができる。また、本発明によれば、バネ接点による接続にならない構造であることから、体格が大きくならず、結果、小型の電気接続構造を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の電気接続構造において、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、それぞれハウジング形状に形成され、且つ、前記第一絶縁部は、開口部が形成されたフード形状の第一係合部を有し、且つ、前記第二絶縁部は、前記開口部を介して前記第一係合部に挿入される第二係合部を有し、且つ、前記第一係合部は、前記一対の締結部材の締結前で前記第二係合部の前記締結進行方向への移動を許容する形状に形成されることを特徴とする。
【0009】
このような請求項2の特徴を有する本発明によれば、第一絶縁部及び第二絶縁部がそれぞれハウジング形状に形成され、そして、ハウジング同士を係合させた上で電気的な接続が行われることから、より確実に絶縁状態で作業をすることができる。また、本発明によれば、第一係合部に挿入された第二係合部が一対の締結部材の締結前で締結進行方向に移動することから、この移動に伴って向かい合う第一導体部及び第二導体部が面接触して接続することができる。すなわち、バネ接点による接続にならない構造にて接続することができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の電気接続構造において、前記第一係合部及び前記第二係合部には、前記挿入の際のガイド部分になる第一ガイド部及び第二ガイド部が形成されることを特徴とする。
【0011】
このような請求項3の特徴を有する本発明によれば、第一ガイド部及び第二ガイド部が形成されることから、第一絶縁部のフード形状の第一係合部に対し第二絶縁部の第二係合部をスムーズに挿入することができ、以て作業性の向上を図ることができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の電気接続構造において、前記第一ガイド部及び前記第二ガイド部は、前記第一導体部及び前記第二導体部の配置部分と、前記第一絶縁締結部及び前記第二絶縁締結部の形成部分との間の位置に配置されることを特徴とする。
【0013】
このような請求項4の特徴を有する本発明によれば、第一導体部及び第二導体部の配置部分と、第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部の形成部分との間に第一ガイド部及び第二ガイド部が配置されることから、第一導体部及び第二導体部から一対の締結部材を離すことができる(一定距離で遠ざけることができる)。すなわち、より確実に絶縁状態で作業をすることができる。
【0014】
請求項5に記載の本発明は、請求項3又は4に記載の電気接続構造において、前記第二係合部の前記第二ガイド部は、前記締結進行方向の反対方向から見える一対の壁形状の部分に形成され、且つ、該一対の壁形状の部分である前記第二ガイド部は、前記第二導体部に対する触指防止のための部分としても形成されることを特徴とする。
【0015】
このような請求項5の特徴を有する本発明によれば、第二ガイド部が第二係合部の裏側から見て一対の壁形状の部分に形成されることから、作業者が第二導体部を触らないように隔てることができ、結果、より確実に絶縁状態で作業をすることができる。
【0016】
また、上記課題を解決するためになされた請求項6に記載の本発明のコネクタは、請求項1、2、3、4又は5に記載の電気接続構造を採用し、該電気接続構造における第一導体部及び第二導体部に高電圧用の電線端末又はバスバーをそれぞれ接続してなることを特徴とする。
【0017】
このような請求項6の特徴を有する本発明によれば、請求項1、2、3、4又は5に記載の電気接続構造を採用することから、絶縁状態でコネクタによる接続作業をすることができる。また、小型の電気接続構造を採用することから、体格が大きくならない小型のコネクタを提供することができる。尚、本発明は、コネクタが対象であるが、この「コネクタ」を「端子台」と読み替えて特徴づけることも有効である。すなわち、「請求項1、2、3、4又は5に記載の電気接続構造を採用し、該電気接続構造における第一導体部及び第二導体部に高電圧用の電線端末又はバスバーをそれぞれ接続してなることを特徴とする端子台。」としても有効である。
【0018】
また、上記課題を解決するためになされた請求項7に記載の本発明の電気接続方法は、平面となる第一接続面を有する導電性の第一導体部及び平面となる第二接続面を有する導電性の第二導体部と、前記第一接続面及び前記第二接続面を向かい合わせて前記第一導体部及び前記第二導体部の電気的な接続を行うための一対の締結部材と、前記第一導体部を収容するための絶縁性の第一絶縁部及び前記第二導体部を収容するための絶縁性の第二絶縁部とを備え、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記一対の締結部材の締結進行方向に沿って見た時に、この見える範囲で前記第一導体部及び前記第二導体部を覆う第一触指防止部及び第二触指防止部を有し、且つ、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記第一導体部及び前記第二導体部の両側位置で前記一対の締結部材による締結を行う部分としての第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部を有し、前記一対の締結部材による前記締結進行方向への締結を行うと、前記第一絶縁部に対し前記第二絶縁部が前記締結進行方向への移動が規制され、この移動規制に伴って前記第一導体部及び前記第二導体部の接続が完了することを特徴とする。
【0019】
このような請求項7の特徴を有する本発明によれば、第一導体部及び第二導体部を覆う第一触指防止部及び第二触指防止部を有することから、少なくとも作業者から見える範囲において絶縁状態で作業をすることができる。また、本発明によれば、第一導体部及び第二導体部の両側位置に第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部を配置し、この第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部の位置で一対の締結部材による締結を行えるようにしたことから、作業者は第一導体部及び第二導体部に触れずにすみ、結果、絶縁状態での作業をすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電気接続構造、コネクタ、及び電気接続方法によれば、絶縁状態で作業をすることができるという効果や、体格を大きくせずに小型のものを提供することができるというを奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の電気接続構造を採用したコネクタの一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】雌コネクタである第一コネクタの斜視図である。
図3】雄コネクタである第二コネクタの斜視図である。
図4】雄コネクタを裏側から見た時の斜視図である。
図5図2のA-A線位置でのコネクタの断面図である。
図6図2のB-B線位置でのコネクタの断面図である。
図7図2のC-C線位置でのコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
電気的な接続を行うためのコネクタは、雌コネクタである第一コネクタと、雄コネクタである第二コネクタと、一対の締結部材とを備えて構成される。第一コネクタ及び第二コネクタは、それぞれ高電圧用の電線端末に設けられる。第一コネクタ、第二コネクタ、及び一対の締結部材は、電気接続構造を構成する。
【0023】
電気接続構造は、平面となる第一接続面を有する導電性の第一導体部及び平面となる第二接続面を有する導電性の第二導体部と、第一接続面及び第二接続面を向かい合わせて第一導体部及び第二導体部の電気的な接続を行うための一対の締結部材と、第一導体部を収容するための絶縁性の第一絶縁部及び第二導体部を収容するための絶縁性の第二絶縁部とを備えて構成される。
【0024】
第一絶縁部及び第二絶縁部は、一対の締結部材の締結進行方向に沿って見た時に、この見える範囲で第一導体部及び第二導体部を覆う第一触指防止部及び第二触指防止部を有し、且つ、第一絶縁部及び第二絶縁部は、第一導体部及び第二導体部の両側位置で一対の締結部材による締結を行う部分としての第一絶縁締結部及び第二絶縁締結部を有する。
【実施例
【0025】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明の電気接続構造を採用したコネクタの一実施形態を示す分解斜視図である。また、図2は雌コネクタである第一コネクタの斜視図、図3は雄コネクタである第二コネクタの斜視図、図4は雄コネクタを裏側から見た時の斜視図、図5図7はコネクタの断面図である。尚、図1の矢印Pは前後方向、矢印Qは左右方向、矢印Rは上下方向を示すものとする(向きは一例であるものとする)。
【0026】
<コネクタ1について>
例えばハイブリッド自動車には、高電圧の機器が搭載される。この高電圧の機器に対し電力を供給するために高電圧の電線・ケーブルが配索される。高電圧の機器及び電線・ケーブルは、図1に示すコネクタ1(又は端子台)にて電気的に接続される。コネクタ1は、以下の説明で分かるようになるが、作業者から見て全て絶縁状態での電気的な接続作業になるものである。高電圧・大電流が流れる接続部としてのコネクタ1は、バネ接点による電気的な接続にならない構造であり、そのため体格が大きくならず、結果、小型の電気接続構造2として提供することができる。小型の電気接続構造2であるコネクタ1は、図1に示すように構成される。すなわち、雌コネクタである第一コネクタ3と、一対の締結部材4と、雄コネクタである第二コネクタ5とを備えて構成される。
【0027】
<第一コネクタ3について>
図1において、第一コネクタ3は、上記の如く雌コネクタであって、高電圧用の電線6の端末に設けられる。第一コネクタ3は、上記機器の図示しない固定用の台の上に設けられる(固定用の台に限らないものとする)。本実施例の第一コネクタ3は、不動の接続部として備えられる。このような第一コネクタ3は、第一導体部7と、第一絶縁部8とを備えて構成される。また、第一コネクタ3は、後述する締結部材4の一部(ナット31)を一体化させたものとして構成される。以下、上記構成について説明をする。
【0028】
<電線6について>
図1図2、及び図6において、電線6は、断面円形に形成された導体9と、この導体9を所定の厚みで被覆する絶縁体10とを備えて構成される。導体9は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により上記の断面円形に形成される。導体9に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面円形(丸形)になる棒状の導体構造(例えば丸単心となる導体構造)のものの、いずれであってもよいものとする。絶縁体10は、熱可塑性樹脂材料を用いて導体9の外周面に押出成形される。絶縁体10は、断面円形状の被覆として形成される。絶縁体10は、所定の厚みを有して形成される。上記熱可塑性樹脂としては、公知の様々な種類のものが使用可能であり、例えばポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料から適宜選択される。尚、以上のような電線6に替えて導電性のバスバーを採用してもよいものとする。
【0029】
<第一導体部7について>
図1図2図5、及び図6において、第一導体部7は、導電性を有する端子であって、金属板を加工して形成される。第一導体部7は、電気接触部11と、電線接続部12とを有する。電気接触部11は、前後方向に真っ直ぐのびる帯板状の部分に形成される。帯板状の電気接触部11は、表裏面(上下面)が平面且つ平行に形成される。電気接触部11の表面(上面)は、第一接続面13として形成される。第一接続面13は、後述する第二導体部33との接続面・接触面・対向面として形成される。第一接続面13の反対側となる電気接触部11の裏面(下面)は、第一絶縁部8の後述する第一導体収容部16の底面を摺接したりする面に形成される。電気接触部11は、この先端14が第一絶縁部8の後述する第一係合部15から外側に突出しない長さに形成される。より好ましくは、第一係合部15の後述する開口部17を介して作業者の指が触れない長さに形成される。以上のような電気接触部11に対し電線接続部12が連成される。電線接続部12は、電線6の端末に露出した導体9を圧着する部分に形成される。また、電線接続部12は、絶縁体10を固定する部分にも形成される。
【0030】
<第一絶縁部8について>
図1図2図5図6、及び図7において、第一絶縁部8は、絶縁性を有する樹脂材料を用いた樹脂成形品であって、図示のような雌ハウジング形状に形成される(形状は一例であるものとする)。第一絶縁部8は、後述する締結部材4の一部(ナット31)をインサート成形したものに形成される。第一絶縁部8は、第一係合部15と、第一導体収容部16とを有して図示形状に形成される。
【0031】
<第一係合部15、第一触指防止部23、及び第一絶縁締結部24について>
図1図2図5図6、及び図7において、第一係合部15は、左右方向にのびる横長の箱形状に形成される。第一係合部15は、この前端に開口部17が形成される。第一係合部15は、上壁18と、下壁19と、左壁20と、右壁21と、後壁22とを有し、前壁となる部分に開口部17が配置形成される。第一係合部15は、フード形状に形成される。第一係合部15は、第二コネクタ5の後述する第二係合部42を挿入することができる形状に形成される。また、第一係合部15は、上記挿入後の第二係合部42を下方向(締結進行方向)へ移動させることができる(移動を許容する)形状にも形成される。第一係合部15は、第一導体部7の電気接触部11を覆う形状(囲い込む形状)に形成される。このような第一係合部15は、作業者の指が電気接触部11に触れないように防止する部分に形成される。すなわち、第一係合部15は、この全体が第一触指防止部23として形成される。
【0032】
尚、第一触指防止部23に関し、作業者が締結作業をする際に、作業者から見える部分(本実施例では上壁18)のみを第一触指防止部23と設定してよいものとする。また、作業者が手で持つような部分も当然に第一触指防止部23と設定してよいものとする。本実施例においては、第一絶縁部8の全体が設定対象になるものとする。すなわち、第一係合部15だけでなく第一導体収容部16も含めて第一触指防止部23に設定されるものとする。
【0033】
第一係合部15には、一対の第一絶縁締結部24が形成される。この一対の第一絶縁締結部24は、一対の締結部材4による締結を行えるようにする部分として形成される。一対の第一絶縁締結部24は、第一導体部7の両側位置に(左右両側に)且つ第一導体部7から同じ距離だけ離れて配置される。一対の第一絶縁締結部24は、左右どちらも同じ形状・部分に形成される。以下、左側のみを代表として説明すると、第一絶縁締結部24は、上壁18の締結用開口部25と、下壁19のインサート部26とを備えて構成される。締結用開口部25は、上壁18を円形に貫通する部分に形成される。締結用開口部25は、締結に必要な大きさに開口するように形成される。インサート部26は、後述する締結部材4の一部(ナット31)を下壁19にインサート成形する部分に形成される。
【0034】
尚、特に図示しないが、締結用開口部25の中心軸とナット31の中心軸とが一致しており、これが締結軸になるものとする。この締結軸を上から下に向けた方向が特許請求の範囲に記載された「締結進行方向」になるものとする。
【0035】
<第一導体収容部16について>
図1図2図5、及び図6において、第一導体収容部16は、第一導体部7を収容する部分であって、第一係合部15に対し一体に形成される。第一導体収容部16は、前側収容部27と、後側収容部28とを有する。前側収容部27は、第一導体部7の電気接触部11を収容する部分であって、第一係合部15における下壁19の中央部分を下方に凹ませるようにして形成される。前側収容部27の底面は、電気接触部11が摺接するような平面に形成される。前側収容部27は、収容後の電気接触部11を下方に移動させないようにする部分に形成される。後側収容部28は、主に第一導体部7の電線接続部12を収容・保持する部分であって、第一係合部15における後壁22に連続するように、また、第一係合部15の内部に連通するように形成される。第一導体収容部16は、後方から第一導体部7を挿入することができるように形成される。第一導体収容部16は、収容後の第一導体部7における電気接触部11の第一接続面13を第一係合部15における下壁19の内面に対して略面一に配置することができるように形成される。
【0036】
<一対の締結部材4について>
図1図2図5、及び図7において、一対の締結部材4は、ボルト29と、ワッシャ30と、ナット31とを備えて構成される。本実施例のナット31は、第一係合部15における第一絶縁締結部24のインサート部26にインサート成形される。一対の締結部材4は、上記締結軸に合わせてボルト29を上記締結進行方向にねじ込むことにより、第一係合部15に挿入された第二コネクタ5の後述する第二係合部42を固定するために備えられる。すなわち、第一係合部15と第二係合部とを締結するために備えられる。
【0037】
<第二コネクタ5について>
図1において、第二コネクタ5は、上記の如く雄コネクタであって、高電圧用の電線32の端末に設けられる。第二コネクタ5は、第一コネクタ3に対して接続され、本実施例においては可動側の接続部として備えられる。このような第二コネクタ5は、第二導体部33と、第二絶縁部34と、一対のカラー35とを備えて構成される。以下、第二コネクタ5の上記構成について説明をする。
【0038】
<電線32について>
図1図3図4、及び図6において、電線32は、上記電線6と同様に、断面円形に形成された導体36と、この導体36を所定の厚みで被覆する絶縁体37とを備えて構成される。導体36は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により上記の断面円形に形成される。導体36に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面円形(丸形)になる棒状の導体構造(例えば丸単心となる導体構造)のものの、いずれであってもよいものとする。絶縁体37は、熱可塑性樹脂材料を用いて導体36の外周面に押出成形される。絶縁体37は、断面円形状の被覆として形成される。絶縁体37は、所定の厚みを有して形成される。上記熱可塑性樹脂としては、公知の様々な種類のものが使用可能であり、例えばポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料から適宜選択される。
【0039】
<第二導体部33について>
図1図3図4図5、及び図6において、第二導体部33は、導電性を有する端子であって、第一導体部7と同様に金属板を加工して形成される。第二導体部33は、電気接触部38と、電線接続部39とを有する。電気接触部38は、前後方向に真っ直ぐのびる帯板状の部分に形成される。帯板状の電気接触部38は、表裏面(上下面)が平面且つ平行に形成される。電気接触部38の裏面(下面)は、第二接続面40として形成される。第二接続面40は、第一導体部7の第一接続面13との接続面・接触面・対向面として形成される。このような第二接続面40は、上記接続面・接触面・対向面とするため、第二コネクタ5を下方から上方へ向けて見た状態で(上記締結進行方向の反対方向から見た状態で)露出するように配置される。一方、第二接続面40の反対側となる電気接触部38の表面(上面)は、第二絶縁部34の後述する第二導体収容部43の天井面に対し摺接したりする面に形成される。電気接触部38は、この先端41が第二絶縁部34の後述する第二係合部42から外側に突出しない長さに形成される。以上のような電気接触部38に対し電線接続部39が連成される。電線接続部39は、電線32の端末に露出した導体36を圧着する部分に形成される。また、電線接続部39は、絶縁体37を固定する部分にも形成される。
【0040】
<第二絶縁部34について>
図1図3図4図5図6、及び図7において、第二絶縁部34は、絶縁性を有する樹脂材料を用いた樹脂成形品であって、第一絶縁部8と同様に、図示のような雄ハウジング形状に形成される(形状は一例であるものとする)。第二絶縁部34は、一対のカラー35をインサート成形したものに形成される。このような第二絶縁部34は、第二係合部42と、第二導体収容部43とを有して図示形状に形成される。
【0041】
<第二係合部42、第二触指防止部44、及び第二絶縁締結部45について>
図1図3図4図5図6、及び図7において、第二係合部42は、左右方向にのびる横長で平面視長円形状の板状部分に形成される。第二係合部42は、第一係合部15が挿入先となるような形状に形成される。また、第二係合部42は、第一係合部15に挿入された後に下方向(締結進行方向)に移動可能な形状に形成される。第二係合部42は、第二導体部33の電気接触部38をこの上から覆う形状に形成される。このような第二係合部42は、作業者の指が上から電気接触部38に触れないように防止する部分として形成される。すなわち、第二係合部42は、第二触指防止部44として形成される。
【0042】
尚、第二触指防止部44に関し、作業者が締結作業をする際に、作業者から見える部分(本実施例では第二係合部42の上面)のみを第二触指防止部44と設定してよいものとする。また、作業者が手で持つような部分も当然に第二触指防止部44と設定してよいものとする。本実施例においては、後述する第二導体収容部43も含めて第二触指防止部44に設定されるものとする。
【0043】
第二係合部42には、一対の第二絶縁締結部45が形成される。この一対の第二絶縁締結部45は、一対の締結部材4による締結を行えるようにする部分として形成される。一対の第二絶縁締結部45は、第二導体部33の両側位置に(左右両側に)且つ第二導体部33から同じ距離だけ離れて配置される。一対の第二絶縁締結部45は、左右どちらも同じ形状・部分に形成される。このような一対の第二絶縁締結部45には、一対のカラー35がインサート成形される。
【0044】
尚、一対のカラー35は、金属製の環状部材であって、第二係合部42の厚みよりも若干厚く形成される。一対のカラー35は、ボルト29の頭部及びワッシャ30と、ナット31とで挟み込まれる金属部材として備えられる。一対のカラー35は、ボルト29の軸部が挿通可能に形成される。
【0045】
<第二導体収容部43について>
図1図3図4図5、及び図6において、第二導体収容部43は、第二導体部33を収容する部分であって、第二係合部42に対し一体に形成される。第二導体収容部43は、前側収容部46と、後側収容部47とを有する。前側収容部46は、第二導体部33の電気接触部38を収容する部分であって、第二係合部42の裏面(下面)から下方に突出し且つ前後方向にのびる一対の壁形状の部分に形成される。このような前側収容部46は、第一コネクタ3における第一導体収容部16の前側収容部27への挿入部分としても形成される。
【0046】
<第一ガイド部48及び第二ガイド部49について>
図1図2図4、及び図5において、第一コネクタ3における第一導体収容部16の前側収容部27は、前側収容部46をガイドするための第一ガイド部48を有する。第二コネクタ5における第二導体収容部43の前側収容部46は、自身が第一ガイド部48にガイドされる第二ガイド部49としても形成される。
【0047】
<第一コネクタ3と第二コネクタ5との電気的接続について>
図1において、第一コネクタ3の雌ハウジング形状の第一係合部15に対し第二コネクタ5の第二係合部42を挿入し、この挿入を第二係合部42が第一係合部15の奥に突き当たるまで行うと、この時、第一コネクタ3の第一導体部7の第一接続面13に対し第二コネクタ5の第二導体部33の第二接続面40が上下方向に向かい合わせとなる状態に配置される。また、第一コネクタ3にインサート成形された一対の締結部材4のナット31と、第二コネクタ5にインサート成形された一対のカラー35とが同軸に配置される。そして、ワッシャ30付きの状態でボルト29を第一コネクタ3の締結用開口部25及び第二コネクタ5のカラー35に挿通し、さらに上記締結進行方向にねじ込んでいくと、第一係合部15と第二係合部42とが一対の締結部材4により締結される(図5及び図7参照)。第一係合部15と第二係合部42とが締結されると、この時、第一導体部7の第一接続面13に対し第二コネクタ5の第二接続面40が押し付けられて面接触することから、電気的な接続も完了する(図5及び図6参照)。すなわち、コネクタ1による(電気接続構造2による)電気的な接続が完了する。
【0048】
<効果について>
以上、図1ないし図7を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態であるコネクタ1(電気接続構造2)によれば、第一導体部7及び第二導体部33を覆う第一触指防止部23及び第二触指防止部44を有することから、少なくとも作業者から見える範囲において絶縁状態で作業をすることができるという効果を奏する。また、コネクタ1(電気接続構造2)によれば、第一導体部7及び第二導体部33の両側位置に第一絶縁締結部24及び第二絶縁締結部45を配置し、この第一絶縁締結部24及び第二絶縁締結部45の位置で一対の締結部材4による締結を行えるようにしたことから、作業者は第一導体部7及び第二導体部33に触れずにすみ、結果、絶縁状態での作業をすることができるという効果も奏する。また、コネクタ1(電気接続構造2)によれば、バネ接点による接続にならない構造であることから、体格が大きくならず、結果、小型のコネクタ1(電気接続構造2)を提供することができるという効果も奏する。
【0049】
また、コネクタ1(電気接続構造2)によれば、第一絶縁部8及び第二絶縁部34がそれぞれハウジング形状に形成され、そして、ハウジング同士を係合させた上で電気的な接続が行われることから、より確実に絶縁状態で作業をすることができるという効果も奏する。また、コネクタ1(電気接続構造2)によれば、第一係合部15に挿入された第二係合部42が一対の締結部材4の締結前で締結進行方向に移動することから、この移動に伴って向かい合う第一導体部7及び第二導体部33を面接触させて接続することができるという効果も奏する。すなわち、上記のようにバネ接点による接続にならない構造にて接続することができるという効果も奏する。
【0050】
また、コネクタ1(電気接続構造2)によれば、第一ガイド部48及び第二ガイド部49が形成されることから、第一絶縁部8のフード形状の第一係合部15に対し第二絶縁部34の第二係合部42をスムーズに挿入することができ、以て作業性の向上を図ることができるという効果も奏する。また、コネクタ1(電気接続構造2)によれば、第一導体部7及び第二導体部33の配置部分と、第一絶縁締結部24及び第二絶縁締結部45の形成部分との間に第一ガイド部48及び第二ガイド部49が配置されることから、第一導体部7及び第二導体部33から一対の締結部材4を離すことができ(一定距離で遠ざけることができ)、結果、より確実に絶縁状態で作業をすることができるという効果も奏する。
【0051】
<変形例について>
以上の説明では、電線6の端末の第一導体部7と、電線32の端末の第二導体部33とが一つずつであったが、横並びに二つずつや三つずつとなる電気接続構造、コネクタ、端子台であってもよいものとする。
【0052】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1…コネクタ、 2…電気接続構造、 3…第一コネクタ、 4…締結部材、 5…第二コネクタ、 6…電線、 7…第一導体部、 8…第一絶縁部、 9…導体、 10…絶縁体、 11…電気接触部、 12…電線接続部、 13…第一接続面、 14…先端、 15…第一係合部、 16…第一導体収容部、 17…開口部、 18…上壁、 19…下壁、 20…左壁、 21…右壁、 22…後壁、 23…第一触指防止部、 24…第一絶縁締結部、 25…締結用開口部、 26…インサート部、 27…前側収容部、 28…後側収容部、 29…ボルト、 30…ワッシャ、 31…ナット、 32…電線、 33…第二導体部、 34…第二絶縁部、 35…カラー、 36…導体、 37…絶縁体、 38…電気接触部、 39…電線接続部、 40…第二接続面、 41…先端、 42…第二係合部、 43…第二導体収容部、 44…第二触指防止部、 45…第二絶縁締結部、 46…前側収容部、 47…後側収容部、 48…第一ガイド部、 49…第二ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7