(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20230627BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20230627BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20230627BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F01N13/14
F01N13/08 Z
F02B39/00 B
F02B39/00 S
(21)【出願番号】P 2019203799
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浦 晴登
(72)【発明者】
【氏名】樹杉 剛
(72)【発明者】
【氏名】町田 和也
(72)【発明者】
【氏名】福村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】荒川 達哉
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105182(JP,A)
【文献】特開2009-174326(JP,A)
【文献】特開2019-100224(JP,A)
【文献】実開昭54-091540(JP,U)
【文献】実開昭52-117721(JP,U)
【文献】米国特許第08500398(US,B1)
【文献】特開2019-127944(JP,A)
【文献】実開平06-073337(JP,U)
【文献】特開2008-202467(JP,A)
【文献】実開昭57-129928(JP,U)
【文献】特開昭62-067237(JP,A)
【文献】特開2019-112902(JP,A)
【文献】特開2016-205155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F01N 13/14
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒が区画されたシリンダブロックと、
前記気筒からの排気の流れを利用して
前記気筒へ吸気を圧送する
とともに、前記シリンダブロックよりも上方に配置されている過給機と、
前記過給機におけるタービンハウジングの少なくとも一部を外側から囲む遮熱用のインシュレータとを備えた内燃機関であって、
前記インシュレータは、前記タービンハウジングの外面に対して離間して配置され、
前記インシュレータと前記タービンハウジングの外面とで区画される空間が、当該内燃機関が車両に搭載されたときの車両前方及び車両後方に開口しており、
前記インシュレータと前記タービンハウジングの外面との隙間には断熱材が介在しており、
前記断熱材と前記インシュレータと前記タービンハウジングの外面とで、前記空間の
前記車両前方の開口から
前記車両後方の開口へと至る流路が区画されて
おり、
前記断熱材には、上側断熱材と、前記上側断熱材よりも下方に配置されている下側断熱材と、があり、
前記下側断熱材は、前記上側断熱材よりも前記車両前方に配置されている
内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された内燃機関は、排気の流れを利用して吸気を圧送する過給機を備えている。すなわち、過給機は、吸気通路と排気通路とに跨って配置されている。排気通路には、過給機のタービンが収容されたタービンハウジングが配置されている。タービンハウジングは、遮熱用のインシュレータで覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インシュレータによってタービンハウジングを覆う特許文献1のような技術において、タービンハウジングの熱影響をタービンハウジングの近傍に留めることができるように、タービンハウジングの外面とインシュレータとの間に断熱材を介在させることがある。しかし、タービンハウジングの外面に断熱材を配置すると、断熱材の位置によってはタービンハウジングから熱を逃がすことができなくなり、タービンハウジングが過熱することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための内燃機関は、排気の流れを利用して吸気を圧送する過給機と、前記過給機におけるタービンハウジングの少なくとも一部を外側から囲む遮熱用のインシュレータとを備えた内燃機関であって、前記インシュレータは、前記タービンハウジングの外面に対して離間して配置され、前記インシュレータと前記タービンハウジングの外面とで区画される空間が、当該内燃機関が車両に搭載されたときの車両前方及び車両後方に開口しており、前記インシュレータと前記タービンハウジングの外面との隙間には断熱材が介在しており、前記断熱材と前記インシュレータと前記タービンハウジングの外面とで、前記空間の車両前方の開口から車両後方の開口へと至る流路が区画されている。
【0006】
上記構成のように、車両前方から車両後方へ至る流路を設けることで、当該流路を走行風が流通し易くなる。そして、走行風が流路を流れる際、タービンハウジングの外面からの放熱が促進される。したがって、タービンハウジングを冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】車両左方から視た第1過給機及びインシュレータの平面図。
【
図4】車両後方から視た第1過給機及びインシュレータの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、内燃機関の一実施形態を、図面を参照して説明する。
先ず、内燃機関の概略構成を説明する。
図1に示すように、車両のエンジンルーム120には、内燃機関10が配置されている。内燃機関10の機関本体20は、内部に円柱状の気筒22aが区画されたシリンダブロック22を備えている。気筒22aは6つ区画されていて、これら気筒22aの内部において燃料が燃焼される。
図2に示すように、6つの気筒22aのうち、3つの気筒22aは、クランクシャフト12の中心軸線よりも一方側でクランクシャフト12の中心軸線方向に並んでいる。これら3つの気筒22aは、第1バンク10A側の気筒群を構成している。また、他の3つの気筒22aは、クランクシャフト12の中心軸線よりも他方側でクランクシャフト12の中心軸線方向に並んでいる。これら3つの気筒22aは、第2バンク10B側の気筒群を構成している。
図1に示すように、第1バンク10A側の気筒群及び第2バンク10B側の気筒群は、下方に向かうほど互いに近づくように傾斜している。すなわち、第1バンク10A側の気筒群と第2バンク10B側の気筒群は、V型に配置されている。
【0009】
シリンダブロック22の下端面には、箱型のオイルパン24が固定されている。オイルパン24の底部には、機関本体20の各種部位を潤滑するためのオイルが貯留されている。シリンダブロック22とオイルパン24との間には、クランクシャフト12が回転可能に支持されている。なお、
図1及び
図2では、クランクシャフト12を簡略化して表している。
【0010】
図1に示すように、シリンダブロック22の上部には、第1バンク10A側の気筒群と向かい合うようにして、第1シリンダヘッド26が取り付けられている。図示は省略するが、第1シリンダヘッド26には、第1バンク10A側の気筒群の各気筒22aに吸気を供給するための吸気ポートが気筒22a毎に区画されている。また、第1シリンダヘッド26には、第1バンク10A側の気筒群の各気筒22aから排気を排出するための排気ポートが気筒22a毎に区画されている。
【0011】
また、シリンダブロック22の上部には、第2バンク10B側の気筒群と向かい合うようにして、第2シリンダヘッド28が取り付けられている。第2シリンダヘッド28には、第1シリンダヘッド26と同様、気筒22a毎の吸気ポートと、気筒22a毎の排気ポートとが区画されている。このように、本実施形態において、機関本体20は、シリンダブロック22、オイルパン24、第1シリンダヘッド26、第2シリンダヘッド28で構成されている。
【0012】
機関本体20は、エンジンルーム120において、クランクシャフト12の中心軸線が車両の前後方向に一致するように配置されている。また、第1バンク10A側の気筒群は、クランクシャフト12の中心軸線よりも車両左方、つまり車室からみてクランクシャフト12の中心軸線よりも左方に位置し、第2バンク10B側の気筒群は、クランクシャフト12の中心軸線よりも車両右方、すなわち車室からみてクランクシャフト12の中心軸線よりも右方に位置している。
【0013】
第1シリンダヘッド26の各吸気ポートには、これらの吸気ポート毎に枝分かれしたインテークマニホールドを介して第1吸気通路31が接続されている。また、第1シリンダヘッド26の各排気ポートには、これらの排気ポートを合流させるエキゾーストマニホールドを介して第1排気通路32が接続されている。そして、
図2に示すように、第1吸気通路31及び第1排気通路32には、これらの両者を跨いで第1過給機34が取り付けられている。具体的には、第1吸気通路31の途中には、第1過給機34のコンプレッサハウジング41が配置されている。コンプレッサハウジング41の内部には、吸気を圧送するためのコンプレッサホイール42が収容されている。また、第1排気通路32の途中には、第1過給機34のタービンハウジング45が配置されている。タービンハウジング45の内部には、排気の流れを利用して回転するタービンホイール46が収容されている。タービンホイール46とコンプレッサホイール42とは、シャフト44の両端に固定されていて同軸で回転する。そして、タービンホイール46が排気の流れに伴って回転することで、コンプレッサホイール42がタービンホイール46とともに回転して吸気を圧送する。このように、第1過給機34は、排気の流れを利用して吸気を圧送する排気駆動式になっている。
【0014】
第1過給機34は、シャフト44の中心軸線が車両の前後方向に沿うように配置されている。なお、タービンホイール46は、コンプレッサホイール42よりも車両後方に位置している。この状態で、第1過給機34は、概ね機関本体20よりも上側に配置されているとともに、機関本体20の前端部に配置されている。
図1に示すように、車両の左右方向に関して、第1過給機34は、第1シリンダヘッド26と第2シリンダヘッド28との間に位置しているとともに、第1シリンダヘッド26の側に寄っている。
【0015】
第1過給機34の近傍には、電気配線の束であるワイヤーハーネス37の一部が配置されている。ワイヤーハーネス37の一部は、第1過給機34に対して車両の左斜め上方に位置している。ワイヤーハーネス37と第1過給機34との間には、後述するインシュレータ50等の遮熱用部品を除くと、他の部品が存在していない。なお、電気的な部品であるワイヤーハーネス37は、高温化による機能不全を防止する必要上、周囲から高温の熱が及ぶことを防止する必要のある要保護部品となっている。
【0016】
図示は省略するが、第1シリンダヘッド26と同様、第2シリンダヘッド28の各吸気ポートには第2吸気通路が接続され、第2シリンダヘッドの各排気ポートには第2排気通路が接続されている。そして、
図1に示すように、これら第2吸気通路と第2排気通路とを跨いで、第1過給機と同じ構成の第2過給機36が設けられている。第2過給機36は、第1過給機34と同様、機関本体20よりも概ね上側に配置されているとともに、機関本体20の前端部に配置されている。また、第2過給機36は、車両の左右方向に関して、第1シリンダヘッド26と第2シリンダヘッド28との間に位置しているとともに、第2シリンダヘッド28の側に寄っている。
【0017】
第2過給機36の近傍には、冷却水が流通する冷却水ホース38の一部が配置されている。冷却水ホース38の一部は、第2過給機36に対して車両の右斜め上方に位置している。この冷却水ホース38と第2過給機36との間には、後述するインシュレータ50等の遮熱用部品を除くと他の部品が存在していない。なお、冷却水ホース38は、その内部を流通する冷却水の高温化を防止する必要上、周囲から高温の熱が及ぶことを防止する必要のある要保護部品となっている。
【0018】
また、第2過給機36の近傍には、各気筒22aに燃料を圧送するサプライポンプ39が配置されている。サプライポンプ39は、第2過給機36の略真下に位置している。このサプライポンプ39と第2過給機36との間には、後述するインシュレータ50等の遮熱用部品を除くと他の部品が存在していない。なお、電気的な部品であるサプライポンプ39は、高温化による機能不全を防止する必要上、周囲から高温の熱が及ぶことを防止する必要のある要保護部品となっている。
【0019】
次に、第1過給機34のタービンハウジング45の構造について具体的に説明する。
図1及び
図4に示すように、タービンハウジング45は、全体として円柱形状の中心部71と、中心部71の外周を取り囲むように延びているスクロール部72とを備えている。スクロール部72は、中心部71の周方向の略全周に亘って延びている。なお、
図1では、中心部71とスクロール部72の概略形状を点線で表している。
【0020】
図3及び
図4に示すように、スクロール部72は、全体としては、中心部71の中心軸線J方向において中心部71の中央近傍から中心部71の一方の端に向けて螺旋状に延在している。すなわち、スクロール部72は、中心部71の中心軸線J方向においてコンプレッサハウジング41側に寄って配置されている。スクロール部72の内部には、排気が流通するスクロール通路77が区画されている。スクロール部72の上流端においては、タービンハウジング45よりも上流側の排気通路を接続するためのフランジ79が外側へ張り出している。フランジ79には、ボルトを挿通される孔79Hが貫通している。なお、スクロール部72の上流端は、中心部71の中心軸線J方向において中心部71の他方の端に位置している。
【0021】
図4に示すように、中心部71には、タービンホイール46が収容された排出通路76が区画されている。排出通路76は、スクロール部72のスクロール通路77に連通している。排出通路76は、中心部71の中心軸線J方向に沿って延びていて、中心部71の中心軸線J方向の他方の端で開口している。この開口の縁からは、タービンハウジング45よりも下流側の排気通路を接続するためのフランジ78が外側へ張り出している。フランジ78には、ボルトを挿通させる孔78Hが貫通している。なお、中心部71の中心軸線Jとタービンホイール46の中心軸線とは一致している。
【0022】
図3に示すように、タービンハウジング45が第1排気通路32の一部として内燃機関10に取り付けられた状態では、中心部71の中心軸線J方向が車両の前後方向に一致している。そして、中心部71の中心軸線J方向の一方が車両前方を指向し、中心軸線J方向の他方が車両後方を指向している。すなわち、タービンハウジング45においては、スクロール部72が車両前方に位置し、中心部71のフランジ78及びスクロール部72のフランジ79が車両後方に位置している。
【0023】
次に、タービンハウジング45の遮熱構造について説明する。
図3及び
図4に示すように、タービンハウジング45は、板状の遮熱用のインシュレータ50で覆われている。
図5に示すように、インシュレータ50は、円筒をその軸線方向に沿って2分したような形状の一対の半割体を溶接等で一つに結合したものである。インシュレータ50は、全体としては円筒状になっている。
図3及び
図4に示すように、インシュレータ50は、タービンハウジング45を中心部71の径方向外側から取り囲んでいる。
図3に示すように、インシュレータ50は、中心部71の中心軸線J方向に関してタービンハウジング45の前端から後端の範囲に及んでいる。すなわち、インシュレータ50は、タービンハウジング45の略全体を外側から覆っている。
【0024】
図3に示すように、インシュレータ50は、中心部71の径方向に関してタービンハウジング45よりも一回り大きくなっている。この結果として、インシュレータ50は、タービンハウジング45に対して離間して配置されている。そして、インシュレータ50とタービンハウジング45の外面とで区画される空間は、車両前方及び車両後方に開口している。上記空間の車両前方の開口である前方開口K1は、タービンハウジング45のスクロール部72の外面と、インシュレータ50の車両前方の縁とで区画されている。
図4に示すように、上記空間の車両後方の開口である後方開口K2は、中心部71のフランジ78及びスクロール部72のフランジ79と、インシュレータ50の車両後方の縁とで区画されている。
【0025】
図4に示すように、インシュレータ50とタービンハウジング45の外面との間の隙間Sには、断熱材80が介在している。この断熱材80を介して、インシュレータ50がタービンハウジング45に支持されている。なお、
図4では、インシュレータ50を一部切り欠いた状態で表している。
図3に示すように、断熱材80は、インシュレータ50における車両前後方向の中央から前方寄りの部分に配置されている。詳細には、断熱材80は、インシュレータ50におけるタービンハウジング45のスクロール部72を覆っている部分(以下、スクロール覆い部50aと称する。)に配置されている。断熱材80は、複数配置されている。
図5に示すように、この実施形態では、断熱材80は6つある。6つの断熱材80は、タービンハウジング45の周方向に互いに離間して配置されている。
【0026】
図4に示すように、6つの断熱材80のうちの4つは、タービンハウジング45の中心部71の中心軸線Jよりも上方に配置されている。タービンハウジング45の中心部71の中心軸線Jよりも上方に配置されているこれらの断熱材80は、上側断熱材80Aを構成している。
図3に示すように、上側断熱材80Aは、インシュレータ50におけるスクロール覆い部50aのうち、車両後方に寄った位置に配置されている。なお、
図4に示すように、4つの上側断熱材80Aのうちの2つは、中心部71の中心軸線Jよりも車両左方に配置されている。
図1及び
図4に示すように、これら2つの上側断熱材80Aのうちの一方は、タービンハウジング45と、第1過給機34の左斜め上方に配置されたワイヤーハーネス37と、の間に位置している。なお、
図1では、要保護部品とタービンハウジング45との間に位置している断熱材80に関してのみ、その配置を概略的に示している。
【0027】
図4に示すように、6つの断熱材80のうちの2つは、タービンハウジング45の中心部71の中心軸線Jよりも下方に配置されている。なお、
図4では、これら2つの断熱材80のうちの1つは隠れていて見えていない。タービンハウジング45の中心部71の中心軸線Jよりも下方に配置されている2つの断熱材80は、下側断熱材80Bを構成している。2つの下側断熱材80Bはそれぞれ、これらの少なくとも一部が、中心部71の中心軸線Jを挟んで上側断熱材80Aと反対側に位置するように配置されている。
図3に示すように、下側断熱材80Bは、インシュレータ50におけるスクロール覆い部50aのうち、車両前方に寄った位置に配置されている。
【0028】
図3に示すように、断熱材80と、インシュレータ50と、タービンハウジング45の外面とは、走行風が流通する走行風流路90を区画している。上記のとおり、上側断熱材80Aは、インシュレータ50におけるスクロール覆い部50aのうち、車両後方に寄った位置に配置されている。そして、上側断熱材80Aよりも車両前方であって中心部71の中心軸線Jよりも上方では、インシュレータ50とタービンハウジング45の外面との隙間Sが塞がれることなく前方開口K1まで繋がっている。上側断熱材80Aよりも車両前方のこの隙間S部分は、走行風流路90の上流部分である流路上流部90aとなっている。
【0029】
上記のとおり、下側断熱材80Bは、インシュレータ50におけるスクロール覆い部50aのうち、車両前方に寄った位置に配置されている。そして、下側断熱材80Bよりも車両後方であって中心部71の中心軸線Jよりも下方では、インシュレータ50とタービンハウジング45の外面との隙間Sが塞がれることなく後方開口K2まで繋がっている。下側断熱材80Bよりも車両後方のこの隙間S部分は、走行風流路90の下流部分である流路下流部90cとなっている。
【0030】
流路上流部90aと流路下流部90cとの間に位置している隙間S部分は、流路上流部90aと流路下流部90cとを繋ぐ流路中流部90bとなっている。流路中流部90bは、中心部71の中心軸線Jを挟んで車両左方と車両右方とにそれぞれ存在している。すなわち、流路上流部90aと流路下流部90cとは、左右2箇所の流路中流部90bで連通している。中心部71の中心軸線Jよりも上側に位置している流路上流部90aと、中心部71の中心軸線Jよりも下側に位置している流路下流部90cと、これら流路上流部90a及び流路下流部90cを連通している流路中流部90bとによって、走行風流路90は、中心部71の周方向の全周に亘って繋がっている。
【0031】
なお、
図1に示すように、第1過給機34と同様、第2過給機36のタービンハウジングは、インシュレータ50で覆われている。そして、第2過給機36のタービンハウジングとインシュレータ50との間には、複数の断熱材80が介在している。これらの断熱材80は、インシュレータ50及びタービンハウジングの外面とともに走行風流路を区画している。なお、一部の上側断熱材80Aは、冷却水ホース38とタービンハウジングとの間に位置している。また、一部の下側断熱材80Bは、サプライポンプ39とタービンハウジングとの間に位置している。
【0032】
次に、本実施形態の作用として、第1過給機34周辺での走行風の流れについて説明する。ここでは第1過給機34を例として走行風の流れを説明するが、第2過給機36周辺でも同様の流れが生じる。
【0033】
図2の矢印Z1で示すように、車両の走行中には、エンジンルーム120において車両前方から車両後方へ向けて走行風が流れる。第1過給機34は、機関本体20の前端部に位置していることから、内燃機関10に向かう車両前方からの走行風の一部は当該第1過給機34に至る。ここで、
図1に示すように、第1過給機34は、機関本体20よりも概ね上方に位置している。図示は省略するが、上下方向に関して第1過給機34と機関本体20との間には、様々な部品が存在している。これらの部品が走行風を遮ることから、第1過給機34よりも下方では走行風が流通し難い。一方で、第1過給機34よりも上方には、他の部品がほとんど存在していない。そのため、走行風は第1過給機34よりも上方を流通し易い。
【0034】
図2の矢印Z2で示すように、第1過給機34よりも上方を車両後方へ流れる走行風の一部は、タービンハウジング45に向かう。この走行風は、
図3の矢印Z3で示すように、前方開口K1を通じて、走行風流路90の流路上流部90aに流入する。流路上流部90aに流入した走行風は、当該流路上流部90aよりも車両後方に位置している上側断熱材80Aによって下方へと流れの向きが変更される。そして、走行風は、流路上流部90aから流路中流部90bへと至り、流路中流部90bをタービンハウジング45の中心部71の周方向に流れる。また、流路中流部90bにおいて、走行風は、中心部71の中心軸線Jよりも下方に位置している下側断熱材80Bによって車両後方へと流れの向きが変更される。そのため、
図3の矢印Z4で示すように、流路中流部90bでは、走行風は全体としては下方且つ車両後方へ流れる。そして、走行風は、下側断熱材80Bよりも車両後方の流路下流部90cに至る。この後、
図3の矢印Z5で示すように、走行風は、車両後方へと流れて後方開口K2を通じて流路下流部90cから流出する。
【0035】
こうした走行風の流れは、中心部71の中心軸線Jを挟んで車両左方と車両右方とにそれぞれで生じる。そして、中心部71の中心軸線Jを挟んだ車両左方と車両右方とのそれぞれにおいて、走行風は、上記のように流路上流部90aから流路下流部90cへと至る間に中心部71の周方向を概ね180度に亘って流れる。
【0036】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)タービンハウジング45の内部においては高温な排気が流通する。こうした排気の熱によってタービンハウジング45が過熱されると、タービンハウジング45が劣化し易くなる。
【0037】
上記構成では、タービンハウジング45の外面とインシュレータ50と断熱材80とによって区画された走行風流路90を、上記作用に記載したように、車両前方から車両後方へと走行風が通過する。こうした走行風の流れによって、タービンハウジング45の外面では放熱が促進される。そのため、タービンハウジング45を効率よく冷却できる。
【0038】
(2)上記のとおり、上下方向に関して第1過給機34と機関本体20との間には、様々な部品が存在していることから、第1過給機34よりも下方では走行風が流通し難い。
上記構成では、走行風流路90を流れる走行風は、中心部71の周方向を概ね180度に亘って流れることで、中心部71の中心軸線Jよりも上方から中心軸線Jよりも下方にまで至る。したがって、走行風が流通し難いタービンハウジング45の下寄りの部分をも冷却できる。
【0039】
(3)上記構成では、断熱材80が、ワイヤーハーネス37や冷却水ホース38といった要保護部品と、タービンハウジング45との間に配置されている。そのため、タービンハウジング45の熱が要保護部品に至ることを防止できる。
【0040】
(4)上記構成では、上側断熱材80Aと下側断熱材80Bとが、互いに中心部71の中心軸線Jを挟んで反対側に位置するように配置されている。そのため、タービンハウジング45に取り付けられているインシュレータ50の位置が安定する。
【0041】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・断熱材80の数や配置は、上記実施形態の例に限定されない。前方開口K1から後方開口K2へと至る走行風流路90を区画できるように断熱材80が配置されていれば、断熱材80の数や位置は問わない。例えば、上側断熱材80Aと下側断熱材80Bとを中心部71の中心軸線Jを挟んで反対側に配置することに代えて、断熱材80を中心部71の周方向において例えば120度毎に配置してもよい。このように断熱材80が中心部71の周方向に等間隔で配置されていれば、タービンハウジング45の外側においてインシュレータ50の位置を安定させることができる。
【0042】
・断熱材80の数や配置に関して、上記実施形態とは異なる要保護部品が第1過給機34や第2過給機36の近傍に配置されている場合、その要保護部品とタービンハウジング45との間となる位置に断熱材80を配置してもよい。
【0043】
・要保護部品とタービンハウジング45との間に断熱材80が配置されていることは必須ではない。例えば、要保護部品そのものに周囲からの熱を遮る部材を取り付けてもよい。
【0044】
・断熱材80の数や位置を変更することに伴って、走行風流路90が、中心部71の周方向の全周に亘って繋がっていなくてもよい。例えば走行風流路90は、中心部71の周方向の半周分のみ繋がっていてもよい。走行風流路90が前方開口K1から後方開口K2へと至ってさえいれば、走行風が走行風流路90を流通し易くなり、タービンハウジング45からの放熱を促進できる。
【0045】
・インシュレータ50の形状は、上記実施形態の例に限定されない。インシュレータ50は、タービンハウジング45の外面と当該インシュレータ50とで区画する空間が車両前方及び車両後方に開口される形状であればよい。インシュレータ50は、例えば角筒状でもよい。
【0046】
・インシュレータ50のみによってタービンハウジング45を囲むのではなく、インシュレータ50と他の部品とを組み合わせてタービンハウジング45を囲むように、インシュレータ50の形状を変更してもよい。例えば、インシュレータ50を、円筒をその軸線方向に2分した半割れ円筒状に構成する。そして、そうしたインシュレータ50を、第1過給機34を間に配置した状態で機関本体20の外面に取り付ける。こうした構成によって、インシュレータ50と機関本体20の外面とによって第1過給機34を囲んでもよい。このように、インシュレータ50は、タービンハウジング45の少なくとも一部を囲んでいればよい。上記のようにインシュレータ50と他の部品とを組み合わせてタービンハウジング45を囲む場合でも、インシュレータ50と他の部品とタービンハウジング45の外面とで区画される空間が車両前方及び車両後方に開口していればよい。
【0047】
・タービンハウジング45の形状は、上記実施形態の例に限定されない。タービンハウジング45の形状に合わせてインシュレータ50の形状を変更すればよい。
・機関本体20の構成は上記実施形態の例に限定されない。例えば、気筒22aの数を変更してもよい。全ての気筒22aをクランクシャフト12の中心軸線方向並べた所謂直列型として機関本体20を構成してもよい。
【0048】
・エンジンルーム120における機関本体20の配置は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、クランクシャフト12の中心軸線が車両の左右方向に沿うように機関本体20をエンジンルーム120に配置してもよい。この場合、インシュレータ50の形状を変更したり、第1過給機34や第2過給機36の向きを変更したりすることで、インシュレータ50とタービンハウジング45の外面とで区画される空間が車両前方及び車両後方に開口するように構成すればよい。
【符号の説明】
【0049】
K1…前方開口
K2…後方開口
10…内燃機関
34…第1過給機
36…第2過給機
45…タービンハウジング
50…インシュレータ
80…断熱材
90…走行風流路