(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】吸収性陰圧創傷療法被覆材
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20060101AFI20230627BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20230627BHJP
A61M 27/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61F13/02 A
A61F13/00 300
A61M27/00
(21)【出願番号】P 2019507938
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2017071322
(87)【国際公開番号】W WO2018037075
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-07-08
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391018787
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Building 5,Croxley Park,Hatters Lane,Watford,Hertfordshire WD18 8YE,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フィリップ・ゴワンス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ケルビー
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・ジェーン・ノーブル
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-536851(JP,A)
【文献】特表2009-506878(JP,A)
【文献】特表2015-514451(JP,A)
【文献】特表2011-504127(JP,A)
【文献】特開2014-155866(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006457(WO,A1)
【文献】特表2014-523778(JP,A)
【文献】特表2015-516197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0343518(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00-13/14
A61F 15/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷被覆材であって、
創傷と接触して配置されるよう構成される創傷接触層と、
前記創傷接触層上の第一エリアであって、下側スペーサ層と吸収層とを含む前記第一エリアと、
任意の複数のスペーサ層と、前記複数のスペーサ層内またはその間に配置される陰圧源および/または電子構成要素とを含む、前記創傷接触層上の第二エリアであって、前記第一エリアが、前記第二エリアに隣接して配置され、前記第一エリアおよび/または前記第二エリアの一つまたは複数の層に適用されたエポキシ材料によって形成された隔壁によって前記第二エリアから分離される、前記第二エリアと、
前記創傷接触層と前記第一エリアと前記第二エリアとを被覆し、前記創傷接触層と前記第一エリアと前記第二エリアとを覆う封止を形成するよう構成された被覆層と、
を含む、前記創傷被覆材において、
前記創傷被覆材が、前記第一エリアおよび前記第二エリアを被覆するよう、且つ、前記隔壁を越えて周ることによって前記第一エリアと前記第二エリアとの間を空気が連通することができるよう構成された上側スペーサ層をさらに含む、創傷被覆材。
【請求項2】
前記エポキシ材料が可撓性の疎水性材料を含む、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項3】
前記エポキシ材料がシリコン接着剤を含む、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項4】
前記第二エリアにおける前記複数のスペーサ層が、前記陰圧源および/または電子構成要素の下の第三スペーサ層と、前記陰圧源および/または電子構成要素の上に配置された第四スペーサ層とを含み、前記第四スペーサ層が、前記陰圧源および/または電子構成要素を受容するよう構成された一つまたは複数の切り欠き部または凹部を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項5】
ユーザが前記陰圧源および/または電子構成要素を操作できるよう構成された、一つまたは複数のユーザインターフェース構成要素をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月25日に出願された米国仮出願第62/379,667号に対する優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
開示された実施形態は、一般的に、陰圧創傷療法を使用した創傷の治療、特に陰圧療法被覆材の選択された領域における流体吸収の防止に関する。
【0003】
関連技術の説明
大きすぎて自然には閉じられない、もしくはそうでなければ、創傷の部位への陰圧の適用では治癒しない、開放創または慢性創傷の治療は、当該技術分野ではよく知られている。現在当該技術分野で知られている陰圧創傷療法(NPWT)システムは、創傷の上に流体に対して不透過性または半透過性の被覆を置くことと、創傷を囲む患者の組織に対して被覆を封止する、様々な手段を使用することと、陰圧を被覆の真下に作り出し維持するような手法で、陰圧の源(真空ポンプなど)を被覆に接続することとを伴う。このような陰圧は、創傷部位における肉芽組織の形成を促進し、かつ人体の通常の炎症プロセスを補助しながら、同時に有害なサイトカインおよび/またはバクテリアを含む可能性がある過剰な流体を除去することにより、創傷の治癒を促進すると考えられている。しかしながら、治療の便益を完全に実現するには、NPWTのさらなる改良が必要とされる。
【0004】
NPWTシステムに役立つ、多くの異なるタイプの創傷被覆材が知られている。様々な種類の創傷被覆材には、様々な種類の材料および層、例えば、ガーゼ、パッド、フォームパッド、または多層創傷被覆材が含まれる。多層創傷被覆材の一例は、Smith&Nephew社製のPICO被覆材であり、これは、裏当て層の下に超吸収層を含み、NPWTによって創傷を治療するためのキャニスターレスシステムをもたらしている。創傷被覆材は、一本のチューブに接続する吸引ポートに対して封止され得、その吸引ポートは、被覆材から流体を吸い出し、および/または、ポンプから創傷被覆材に陰圧を伝達するのに使用され得る。
【0005】
しかしながら、一部の創傷被覆材では、吸収層は、予測不可能かつしばしば不均一な様式で流体によって満たされる。一部の状況では、流体が創傷被覆材のある一定のエリアおよび/または吸収層のある一定の部分に達するのをより容易に防ぐことが望まれる場合がある。現在の被覆材は、吸収層の流体経路を制御する方法としては限定的および/または不満足である。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態には、創傷被覆材装置ならびにそれを製造および利用する方法が含まれる。特定の実施形態は、創傷被覆材内に創傷滲出液を保持するための吸収エリアを有する創傷被覆材装置およびそれを使用する方法、ならびに吸収エリアと流体連通する陰圧源を対象とする。陰圧源は、創傷被覆材に取り付けられたコネクタを介して創傷被覆材に接続されてもよく、または陰圧源は、創傷被覆材自体の上またはその内部であってもよい。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、創傷と接触して配置されるよう構成された創傷接触層と、下側スペーサ層および吸収層を含む創傷接触層の上の第一エリアと、任意の複数のスペーサ層および複数のスペーサ層内またはその間に配置された陰圧源および/または電子構成要素を含む創傷接触層の上の第二エリアと、を含み、第一エリアが第二エリアに隣接して配置され、隔壁によって分離され、当該隔壁が第一エリアおよび/または第二エリアの一つまたは複数の層に適用されるエポキシ材料により形成され、創傷接触層と、第一エリア、および第二エリアを被覆し、かつその上で封止を形成するよう構成される被覆層と、を含む、創傷被覆材が提供される。
【0008】
前段落の創傷被覆材は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。創傷被覆材の一部の実施形態では、エポキシ材料は可撓性疎水性材を含む。創傷被覆材の一部の実施形態では、エポキシ材料はシリコン接着剤を含む。実施形態では、創傷治療はさらに、第一エリアおよび第二エリアを被覆し、隔壁周りで第一エリアと第二エリアとの間を空気が連通することができるよう構成された上側スペーサ層を含む。創傷被覆材の一部の実施形態では、第二エリアにおける複数のスペーサ層は、陰圧源および/または電子構成要素の下の第三スペーサ層と、陰圧源および/または電子構成要素の上に配置された第四スペーサ層とを含み、第四スペーサ層が、陰圧源および/または電子構成要素を受容するよう構成された一つまたは複数の切り欠き部または凹部を含む。実施形態では、創傷治療装置はさらに、ユーザが陰圧源および/または電子構成要素を操作できるよう構成された、一つまたは複数のユーザインターフェース構成要素をさらに含む。
【0009】
別の実施形態によれば、創傷と接触して配置されるよう構成された創傷接触層と、下側スペーサ層および吸収層を含む創傷接触層上の第一エリア、任意の複数の層ならびに複数の層の中またはその間に配置された陰圧源および/または電子構成要素を含む創傷接触層上の第二エリアと、を含み、第一エリアが第二エリアに隣接して配置され、第二エリアの複数の層の一つまたは複数の層が、陰圧源および/または電子構成要素を囲む疎水性材を含み、創傷接触層、第一エリア、および第二エリアを被覆し、その上で封止を形成するように構成される、被覆層と、を含む、創傷被覆材が提供される。
【0010】
前段落のいずれかの創傷被覆材は、次の特徴のうちの一つ以上を含み得る。創傷被覆材の一部の実施形態では、吸収層は、第二エリアに隣接した部分を含み、第二エリアに隣接した部分は疎水性材を含む。特定の実施形態では、創傷治療装置は、第一エリアおよび第二エリアを被覆し、第一エリアと第二エリアとの間を空気が連通することができるよう構成された上側スペーサ層を含む。創傷被覆材の一部の実施形態では、第二エリアにおける複数の層は、陰圧源および/または電子構成要素の下の第三スペーサ層と、陰圧源および/または電子構成要素の上に配置された第四スペーサ層とを含み、第四スペーサ層が、陰圧源および/または電子構成要素を受容するよう構成された一つまたは複数の切り欠き部または凹部を含む。創傷被覆材の一部の実施形態では、第二エリア内の複数の層は、陰圧源および/または電子構成要素の下の第三スペーサ層を含み、第三スペーサ層および下側スペーサ層は、吸収層および陰圧源および/または電子部品および創傷接触層の下に配置される一つの連続的な層である。実施形態では、創傷治療装置はさらに、ユーザが陰圧源および/または電子構成要素を操作できるよう構成された、一つまたは複数のユーザインターフェース構成要素をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクタおよび創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を図示する。
【
図1B】
図1Bは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクタおよび創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を図示する。
【
図2A】
図2Aは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクタおよび創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を図示する。
【
図2B】
図2Bは、創傷被覆材に接続された流体コネクタの一実施形態の断面を図示する。
【
図2C】
図2Cは、一実施形態による、ポンプおよび/またはその他の電子機器が創傷部位から離れて配置された創傷被覆材を図示する。
【
図3】
図3は、流体コネクタの遠位端の周りに接着剤のリングを含む、部分的に浸透した創傷被覆材の一実施形態の画像である。
【
図4】
図4は、経時的に染色流体でより浸透する創傷被覆材の実施形態の複数の画像を示す。
【
図5】
図5は、裏当て層上に接着剤を有する創傷被覆材の実施形態の複数の断面マイクロCTを示す。
【
図6】
図6は、裏当て層上に接着剤を有する創傷被覆材の実施形態の複数の走査電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示す。
【
図7】
図7は、裏当て層上に接着剤を有する創傷被覆材の実施形態の複数のSEM顕微鏡写真を示す。
【
図8】
図8は、裏当て層上に接着剤を有しない創傷被覆材の実施形態の複数のSEM顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に開示された実施形態は、陰圧源および創傷被覆材構成要素および装置を含む、減圧によって創傷を治療する装置および方法に関する。創傷に重ね、パッキングする材料を含む装置および構成要素があれば、本明細書では集合的に被覆材として称される場合がある。
【0013】
本明細書に開示する一部の実施形態は、ヒトまたは動物の体に対する創傷療法に関する。そのため、本明細書における創傷へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体上の創傷を指すことができ、本明細書における体へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体を指し得る。本明細書で使用される用語「創傷」は、幅広い通常の意味を有するのに加えて、陰圧を使用して治療されてもよい、患者のいかなる体の一部を含む。創傷には、開放創傷、切開、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、圧迫性潰瘍、ストーマ、外科創傷、外傷性潰瘍および静脈性潰瘍などが含まれるが、これらに限定されない。そのような創傷の治療は、陰圧創傷療法を使用して実施することができ、減圧または陰圧が、創傷の治癒を容易にして促進するように、創傷に適用され得る。本明細書に開示される流体コネクタおよび方法は、身体の他の部分に適用されてもよく、創傷の治療に必ずしも限定されないことも、理解されるであろう。
【0014】
そのような創傷の治療は、陰圧創傷療法を使用して実施することができ、減圧または陰圧が、創傷の治癒を容易にして促進するように、創傷に適用され得る。本明細書に開示される創傷被覆材および方法は、身体の他の部分に適用されてもよく、創傷の治療に必ずしも限定されないことも、理解されるであろう。本出願の一定の実施形態は、創傷被覆材および流体コネクタを用いる創傷治療装置、およびそれを使用する方法に関する。
【0015】
本開示の実施形態は、概して、局所陰圧(「TNP(topical negative pressure)」)療法システムで使用するように適用可能であることは理解されるであろう。手短に言えば、陰圧創傷療法は、組織の浮腫を減少させ、血流および顆粒組織形成を促し、過度の滲出液を除去することによって、「治癒が困難な」創傷の多くの形態を閉鎖および治癒するのを支援し、細菌負荷(および、それゆえ感染リスク)を低減してもよい。加えて、療法によって、創傷の不安を減らすことが可能になり、より早期の治癒に導く。TNP療法システムはまた、流体を除去し、閉鎖の並列された位置で組織を安定化するのに役立つことで、外科的に閉じられた創傷の治癒を支援してもよい。TNP療法のさらなる有益な使用は、過剰な流体を除去することが重要であり、組織の生存度を確保するために移植片が組織に近接していることが求められる、移植片およびフラップにおいて見出すことができる。
【0016】
本明細書に使用する通り、-XmmHgなど、減圧または陰圧レベルは、760mmHg(または1atm、29.93inHg、101.325kPa、14.696psiなど)に相当し得る、平常の周囲気圧に対する圧力レベルを表す。したがって、-XmmHgの陰圧値は、760mmHgよりもXmmHg低い絶対圧力、または、言い換えれば、(760-X)mmHgの絶対圧力を反映する。さらに、XmmHgよりも「低い」または「小さい」陰圧は、大気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低い)。-XmmHgよりも「高い」または「大きい」陰圧は、大気圧からより遠い圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高い)。一部の実施形態では、局所的な周囲気圧は基準点として使用され、そのような局所的な気圧は、必ずしも、例えば、760mmHgでなくてもよい。
【0017】
本開示の幾つかの実施形態に関する陰圧範囲は、約-80mmHg、または約-20mmHgから-200mmHgの間であり得る。これらの圧力は、760mmHgであり得る、平常の周囲気圧に対して相対的であることには留意されたい。それゆえ、-200mmHgは、実質的には約560mmHgであろう。一部の実施形態では、圧力範囲は、約-40mmHgと-150mmHgとの間であり得る。代替として、最高-75mmHg、最高-80mmHgまたは-80mmHgを超える圧力範囲が使用され得る。また、他の実施形態では、-75mmHgを下回る圧力範囲が使用され得る。代替として、およそ-100mmHgまたはさらに-150mmHgより上の圧力範囲が、陰圧装置により供給され得る。
【0018】
図1A~
図1Bは、流体コネクタ110とともに創傷被覆材100を用いる、陰圧創傷治療システム10の実施形態を図示する。図中、流体コネクタ110は細長い導管を含んでよく、より好ましくは、近位端130および遠位端140を有するブリッジ120、およびブリッジ120の遠位端140にアプリケータ180を含んでもよい。一部の実施形態では、任意の連結器160がブリッジ120の近位端130に配置されることが好ましい。キャップ170が、システムに提供されてもよい(一部の場合、図示する通り、連結器160に取り付けられ得る)。キャップ170は、近位端130から流体が漏出するのを妨げるときに有用であり得る。システム10は、ポンプまたは陰圧を供給できる陰圧ユニット150など、陰圧の源を含んでもよい。ポンプは、創傷滲出液、および創傷から除去されてもよい他の流体を貯蔵する、キャニスタまたは他の容器を含んでもよい。キャニスタまたは容器はまた、ポンプとは別に提供されてもよい。一部の実施形態では、
図1A~
図1Bに図示するように、ポンプ150は、Smith&Nephewより販売される、PICO(商標)ポンプなど、キャニスタなしのポンプであり得る。ポンプ150は、管190を介して連結器160に接続してもよく、またはポンプ150は、連結器160に直接、もしくはブリッジ120に直接接続してもよい。使用中、被覆材100は、一部の場合、発泡体またはガーゼなどの創傷パッキング材料で満たされてもよい、好適に準備された創傷の上に置かれる。流体コネクタ110のアプリケータ180は、被覆材100の隙間の上に置かれ、被覆材100の最上表面に封止される、封止面を有する。流体コネクタ110の被覆材100への接続の前、間、または後のいずれかに、ポンプ150は、管190を介して連結器160へ接続されるか、または連結器160もしくはブリッジ120へ直接接続される。その後ポンプが起動され、それによって陰圧を創傷に供給する。陰圧の適用は、所望するレベルの創傷治癒を達成するまで行われてもよい。
【0019】
まず
図2A~
図Bを参照すると、本明細書の特定の実施形態での陰圧を用いる創傷の治療は、可撓性流体コネクタ110とともに創傷滲出液を吸収および貯蔵することが可能な創傷被覆材100を使用する。一部の実施形態では、創傷被覆材100は、創傷被覆材と実質的に類似しており、国際特許公開WO2013/175306、WO2014/020440、WO2014/020443および米国出願公開第2011/0282309A1号全体に記載されているものと同一または類似した構成要素を有しており、その全体が参照により組み込まれる。その他の実施形態(図示せず)では、創傷被覆材は、創傷部位の上に封止されたチャンバを形成するように構成された一つまたは複数の裏当て層を単に含み得る。一部の実施形態では、創傷部位が創傷パッキング材料で部分的または完全に満たされることが好ましい場合がある。この巻き付けられた創傷パッキング材料は任意であるが、特定の創傷、例えば深い創傷に望ましい場合がある。創傷パッキング材料は、創傷被覆材100に加えて使用できる。創傷パッキング材料は、一般的に、例えば発泡体(網状発泡体を含む)、およびガーゼなど、多孔性および快適な材料を含み得る。一部の実施形態では、好ましくは、創傷パッキング材料は、空間全てを充填するように、創傷部位内に適合するサイズまたは形状である。続いて、創傷被覆材100は、創傷部位および創傷部位上に重ねられた創傷パッキング材料の上に置かれる。創傷パッキング材料が使用される時、創傷被覆材100が創傷部位の上に封止されると、陰圧は、流体コネクタ110を介して可撓性チューブを通してポンプまたはその他の陰圧源から創傷被覆材100へと発せられ、創傷パッキング材料を通って、最終的に創傷部位に達する。この陰圧は、創傷部位から創傷滲出液およびその他の流体または分泌物を引き出す。
【0020】
図2Aの実施形態に示す通り、流体コネクタ110は、以下にさらに詳細に記載する通り、被覆材100と流体連通する拡大遠位端または頭部140を含むことが好ましい。一実施形態では、拡大遠位端は丸い形または円形を有する。頭部140は、図中、被覆材100の端近くに位置するように示しているが、被覆材上のいずれの場所に配置されてもよい。例えば、一部の実施形態は、被覆材100の端または角上または近くではない、中心または中心から外れた場所に提供されてもよい。一部の実施形態では、被覆材10は、流体コネクタ110と流体連通する一つまたは複数の頭部140をそれぞれ含む、二つ以上の流体コネクタ110を含んでもよい。一部の実施形態では、頭部140は、最も幅の広い縁に沿って30mmあることが好ましい。頭部140は、上に記載した、創傷被覆材の最上表面に対して封止されるように構成される、アプリケータ180を少なくとも一部形成する。
【0021】
図2Bは、流体コネクタ110と共に
図1Bに示される、創傷被覆材10に類似する創傷被覆材100の断面を示し、それは国際特許公開WO2013/175306に記載され、参照によってその全体が組み込まれる。代替として、本明細書に開示するいずれの創傷被覆材の実施形態、または本明細書に開示する創傷被覆材の実施形態のいずれの数の特徴のいかなる組み合わせでもあり得る、創傷被覆材100は、治療される創傷部位の上に置かれ得る。被覆材100は、創傷部位の上に封止されたくぼみを形成するために配置されてもよい。一部の実施形態では、被覆材100は、最上層もしくは被覆層、または任意の創傷接触層222に取り付けられる裏当て層220を含むことが好ましく、それらについて以下により詳細に記載する。これら二つの層220、222は、内部空間またはチャンバを画定するために、共に接合または封止されることが好ましい。この内部空間またはチャンバは、陰圧を分配または伝達し、創傷滲出液および創傷から除去された他の流体を貯蔵するように適応してもよい追加構造と、以下により詳細に説明するであろう他の機能とを含んでもよい。以下に記載するそのような構造の例は、透過層226および吸収層221を含む。
【0022】
図2Bに図示するように、創傷接触層222は、ポリウレタン層、ポリエチレン層、または、例えば、ホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、または超音波プロセスを介すか、またはその他のいくつかの方法で穴加工された、あるいは別の方法で液体および気体が透過するようにしたその他の可撓性のある層であってもよい。創傷接触層222は、下面224と上面223とを有する。一部の実施形態では、打抜き穴(perforation)225は、創傷接触層222に貫通穴を含み、それによって流体が層222を通って流れることが可能となるのが好ましい。創傷接触層222は、創傷被覆材の他の材料中への組織内殖を防ぐのに役立つ。特定の実施形態では、打抜き穴は、流体が打抜き穴を通って流れることを依然として可能にしながら、この要件を満たすほど十分に小さい。例えば、0.025mmから1.2mmの範囲のサイズを有するスリットまたは穴として形成されたパーフォレーションは、創傷滲出液が被覆材内に流れるのを可能にしつつ、創傷被覆材内に組織が内部成長するのを防止する一助となるには十分小さいと考えられる。一部の構成では、創傷接触層222は、陰圧を創傷に維持するために、吸収性パッドの周りに気密状態をも作り出しながら、被覆材100全体の完全性を維持するのに役立つ場合がある。
【0023】
創傷接触層222の一部実施形態はまた、任意の上部および下部接着層(図示せず)用の担体として働いてもよい。例えば、下部感圧接着剤が、創傷被覆材100の下面224上に提供されてもよい一方、上部感圧接着層は、創傷接触層の上面223上に提供されてもよい。シリコン、ホットメルト、親水コロイドもしくはアクリルをベースとする接着剤、または他のそのような接着剤であってもよい感圧接着剤は、創傷接触層の両側面上、もしくは任意で選択された片側面上に形成されてもよく、または創傷接触層のどちらの側面上に形成されなくてもよい。下部感圧接着層を利用することが、創傷被覆材100を創傷部位の周りの皮膚に接着させる助けになってもよい。一部の実施形態では、創傷接触層は穴加工されたポリウレタンフィルムを含んでもよい。フィルムの下面はシリコン感圧接着剤を提供されてもよく、上面はアクリル感圧接着剤を提供されてもよく、それによって被覆材がその完全性を維持するのを助けてもよい。一部の実施形態では、ポリウレタンフィルム層の上面および下面の両面上に接着層を提供してもよく、全三層は共に穴加工されていてもよい。
【0024】
多孔質材料の層226は、創傷接触層222の上方に置かれ得る。この多孔質層または透過層226により、液体および気体を含む流体が、創傷部位から離れて創傷被覆材の上部層中へと透過することが可能になる。特定の実施形態では、透過層226によって、吸収層が相当量の滲出液を吸収したときでも、創傷エリアの上に陰圧を伝達するよう、外気チャネル(open air channel)が維持されることが確保されるのが好ましい。層226は、好ましくは、上述の通り、陰圧創傷療法時に適用されることになる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって、創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。層226は、三次元構造を有する材料から形成されてもよい。例えば、編みもしくは織りスペーサ布(例えば、Baltex 7970の横編ポリエステル)、または不織布が使用され得る。
【0025】
一部の実施形態では、透過層226は、84/144で織られたポリエステルである最上層(すなわち、使用中、創傷床から遠位の層)と、10デニールの平坦なポリエステルである最下層(すなわち、使用中、創傷床に近接して置かれる層)と、編まれたポリエステルビスコース、セルロースまたは類似のモノフィラメント繊維により画定される領域である、これら二つの層の間に挟まれて形成される第三層とを含む、3Dポリエステルのスペーサ布層を含む。他の材料、および他の線質量密度の繊維ももちろん使用され得る。
【0026】
本開示を通して、モノフィラメント繊維への言及がなされるものの、もちろん多糸の代替物が利用され得ることは理解されるであろう。それゆえ、最上部スペーサ布は、それを形成するのに使用される一本の糸において、最下部スペーサ布層を形成するのに使用される糸を構成するフィラメントの数よりも多くのフィラメントを有する。
【0027】
間隔を置いて配置された層におけるフィラメント数のこの差は、透過層を横切る水分の流れを制御する一助となる。具体的には、最上層のフィラメント数をより多くすることによって、すなわち、最上層が、最下層に使用される糸よりも多くのフィラメントを有する糸から作られることによって、液体は、最下層よりも最上層に沿ってより多く吸われる傾向がある。使用中、この差異によって、液体が創傷床から引き離され、被覆材の中心領域中に引き寄せられるようになり、中心領域では、吸収層221が液体を閉じ込めるのに役立つか、または液体を放出させ得る被覆層に向かって、それ自体で液体を前方へ吸い上げる。
【0028】
一部の実施形態では、好ましくは、透過層226を横切る(すなわち、最上部および最下部スペーサ層の間に形成されるチャネル領域と垂直に)液体の流れを改善するために、3D織物は、ドライクリーニング剤(限定するものではないが、パークロロエチレンなど)で処理されて、透過層の親水能力を邪魔する可能性がある、前に使用された鉱油、油脂および/またはワックスなどの、いかなる工業製品をも除去するのに役立ってもよい。一部の実施形態では、続いて、3Dスペーサ布が親水性剤(限定するものではないが、Rudolph Groupから市販されている30g/lのFeran Iceなど)で洗われる、追加の製造ステップに進んでもよい。この工程ステップは、水などの液体が3D編物に接触するとすぐに織物に進入し得るほど、材料の表面張力が低くなることを保証するのに役立つ。またこのステップは、いかなる滲出液の液状侵襲成分(liquid insult component)の流れを制御するのにも役立つ。
【0029】
吸収性材料の層221は、透過層226の上に提供される。発泡体もしくは不織の天然または合成材料を含み、任意で超吸収性材料を含んでもよい吸収性材料は、流体、具体的には、創傷部位から除去される液体用の貯留部を形成する。一部の実施形態では、層10もまた、流体を裏当て層220の方へ引き寄せるのに役立ってもよい。
【0030】
吸収層221の材料はまた、創傷被覆材100に収集された流体が、被覆材内を自由に流れるのを防ぎ得る。一部の実施形態では、吸収層221の材料は、被覆材内に収集された液体を収容するように作用することが好ましい。吸収層221はまた、流体を創傷部位から引き寄せ、吸収層中に渡って貯蔵するように、吸い上げ作用によって層全体に流体を分配するのを助ける。これによって、吸収層のエリアにおける凝集を妨げるのを助ける。吸収性材料の容量は、陰圧を適用するとき、創傷の滲出液が流れる速度を管理するのに十分でなくてはならない。使用中、吸収層は陰圧を経験するため、吸収層の材料は、そのような状況下で液体を吸収するように選ばれる。例えば、超吸収体材料といった、陰圧下にあるとき液体を吸収できる、いくつかの材料が存在する。吸収層221は通常、ALLEVYN(商標)発泡体のFreudenberg114-224-4および/またはChem-Posite(商標)11C-450より製造されてもよい。一部の実施形態では、吸収層221は、超吸収性粉末、セルロースなどの繊維材料、および結合繊維を含む複合材を含んでもよい。特定の実施形態では、好ましい合成物は、風成(airlaid)の、熱結合合成物である。
【0031】
一部の実施形態では、吸収層221は、層中に渡って分散する乾燥粒子の形態である超吸収性材料を有する、不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維の使用によって、被覆材により吸収される液体を素早くかつ均等に分配するのに役立つ、高速吸い上げ要素が導入される。多数の撚糸様繊維を並列させることが、液体を分配するのに役立つ繊維パッドの、強い毛細管作用につながる。このように、超吸収性材料に液体を効率的に供給する。また、吸い上げ作用によって、被覆材の蒸散率を増加させるのに役立つように、液体を上部被覆層と接触させるように支援する。
【0032】
一部の実施形態では、陰圧を被覆材100に適用することが可能になるように、隙間、孔またはオリフィス227が裏当て層220に提供される。特定の実施形態では、流体コネクタ110は、被覆材100の中に作られるオリフィス227の上で、裏当て層220の最上部に取り付けられるか、または封止され、オリフィス227を通って陰圧を伝えることが好ましい。長いチューブが、被覆材から流体を汲み上げることが可能になるように、第一端部で流体コネクタ110に、第二端部でポンプユニット(図示せず)に連結されてもよい。流体コネクタが創傷被覆材の最上層に接着する場合、長いチューブは、チューブまたは導管が、流体コネクタから離れて平行に、または実質的に被覆材の最上表面へ延在するような、流体コネクタの第一端部で連結されてもよい。流体コネクタ110は、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化性またはホットメルト接着剤などの接着剤を使用して、裏当て層220に接着および封止してもよい。流体コネクタ110は、ショアAスケールで30から90の硬度を有する、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、シリコンまたはポリウレタンといった柔らかいポリマーから形成されてもよい。一部の実施形態では、流体コネクタ110は、柔らかい材料または適合する材料から作られてもよい。
【0033】
一部の実施形態では、吸収層221は、流体コネクタ110の下にあるように配置される、少なくとも一つの貫通孔228を含む。貫通孔228は、一部の実施形態では、裏当て層の開口部227と同じサイズであってもよく、またはより大きいもしくは小さくてもよい。
図2Bに図示する通り、単一の貫通孔は、流体コネクタ110の下にある開口部をもたらすように使用され得る。複数の開口部が、代替として利用され得ることは理解されるであろう。加えて、二つ以上のポートが、本開示のある実施形態に従って利用されるべき場合、一つまたは複数の開口部が、各流体コネクタと位置を合わせて、吸収層および不明瞭化層に作られてもよい。本開示のある実施形態には必須ではないものの、超吸収層に貫通孔を使用することで、吸収層が飽和に近いとき特に、遮断されないままの流体流路を提供してもよい。
【0034】
隙間または貫通孔228は、オリフィスが透過層226に直接接続するように、オリフィス227の下方の吸収層221に提供され得る。これによって、流体コネクタ110に適用される陰圧を、吸収層221を通過することなく、透過層226へ伝えることが可能になる。これで、吸収層が創傷滲出液を吸収しても、創傷部位に適用される陰圧が、吸収層によって阻害されないことが保証される。他の実施形態では、隙間は吸収層221に提供されなくてもよく、または、代替として、オリフィス227の下にある複数の隙間が提供されてもよい。さらなる代替の実施形態では、別の透過層などの追加層、国際特許公開WO2014/020440に記載されるような隠蔽層が、吸収層221の上および裏当て層220の下に提供されてもよい。
【0035】
一部の実施形態では、裏当て層220は気体不透過性であるが透湿性があり、創傷被覆材100の幅に渡って延在し得ることが好ましい。例えば、片方の側面に感圧接着剤を有するポリウレタンフィルム(例えば、Elastollan SP9109)であってもよい、裏当て層220は、気体に対して不透過性であり、それゆえ、この層は創傷を被覆し、上に創傷被覆材が置かれる創傷空洞を封止するように動作する。このように、効果的なチャンバが、陰圧が確立され得る、裏当て層220と創傷部位との間に作られる。特定の実施形態では、裏当て層220は、例えば接着技術または溶接技術を介して、被覆材の周囲の境界領域内において、創傷接触層222に封止され、境界領域を通って空気が吸い込まれないよう確保することが好ましい。裏当て層220によって、創傷が外部の細菌汚染から保護され(細菌バリア)、層を通って創傷滲出液からの液体を移動させ、フィルム外表面から蒸発させることが可能になる。一部の実施形態では、裏当て層220は、二つの層、すなわちポリウレタンフィルムとこのフィルム上に広げられた接着パターンとを含むのが好ましい。特定の実施形態では、ポリウレタンフィルムは透湿性であるのが好ましく、濡れると透水率が高くなる材料から製造されてもよい。一部の実施形態では、裏当て層が濡れると、裏当て層の透湿性が増大する。濡れた裏当て層の透湿性は、乾いた裏当て層の透湿性の最大約10倍であってもよい。
【0036】
吸収層221は、透過層226の縁と重複するように、透過層226よりも大きい面積から成ってもよく、それによって、透過層が裏当て層220に接触しないことを保証する。これにより、創傷接触層222と直接接触する、吸収層221の外側チャネルが提供され、滲出液の吸収層へのより急速な吸収に役立つ。さらに、この外側チャネルによって、液体が創傷空洞の外周に貯留できないことが保証され、そうでない場合には、被覆材の周囲の封止部から染み出して、漏出の形成につながる場合がある。一部の実施形態では、透過層226は、透過層226が吸収層221の縁を越えて延在するように、吸収層221よりも大きな面積であり得る。被覆材は、吸収層の上または下に位置する一つまたは複数の透過層を含み得る。
図2A~
図2Bに図示する通り、吸収層221によって、境界線または境界領域が、吸収層221の端と裏当て層220の端との間に画定されるように、裏当て層220の周囲よりも小さい周囲を画定してもよい。
【0037】
図2Bに示す通り、創傷被覆材100の一実施形態は、流体コネクタ110の下に置かれる吸収層221に隙間228を含む。使用中、例えば、陰圧が被覆材100に適用されるとき、流体コネクタの創傷に面する部分は、透過層226と接触してもよく、それゆえ、吸収層221が創傷流体で満たされているときでさえ、創傷部位に陰圧を伝達するのに役立ち得る。一部の実施形態によって、裏当て層220を透過層226に少なくとも一部接着させてもよい。一部の実施形態では、隙間228は、流体コネクタ110の創傷に面する部分またはオリフィス227の直径よりも、少なくとも1~2mm大きい。
【0038】
特に、単一流体コネクタ110および貫通孔を伴う一部の実施形態では、
図2Aに図示する通り、流体コネクタ110および貫通孔が、中心から外れた位置に置かれるのが好ましい場合がある。そのような場所では、流体コネクタ110が被覆材100の残余部と比較して持ち上げられるように、被覆材100を患者の上に配置することが可能になってもよい。そのように配置すると、流体コネクタ110およびフィルタ214は、創傷部位への陰圧の伝達を減じるために、時期を早めてフィルタ214を閉塞させ得る創傷流体と、接触する可能性が低くなる場合がある。
【0039】
ここで流体コネクタ110に目を転じると、一部の実施形態は、封止面216と、近位端130および遠位端140を伴うブリッジ211(
図1A~
図1Bのブリッジ120に相当)と、フィルタ214とを含むことが好ましい。特定の実施形態では、封止面216は、創傷被覆材の最上表面に封止される、前に記載したアプリケータを形成することが好ましい。一部の実施形態では、流体コネクタ110の最下層は、下の
図5Cの層540のように、封止面216を含んでもよい。流体コネクタ110はさらに、一部の実施形態では下の
図5Cの層510のような、流体コネクタの別個の上部層により画定される、封止面216から垂直方向に離間した上面を含んでもよい。他の実施形態では、上面および下面は、材料の同じ一片から形成されてもよい。一部の実施形態では、封止面216は、創傷被覆材と連通するように、その中に少なくとも一つの隙間229を含んでもよい。一部の実施形態では、フィルタ214は、封止面の開口部229を横切って配置されてもよく、開口部229全体にわたってもよい。封止面216は、創傷被覆材の被覆層に流体コネクタを封止するように構成されてもよく、接着剤または接合部を含んでもよい。一部の実施形態では、封止面216は、被覆層のオリフィスの上に置かれてもよい。一部の実施形態では、封止面216は、被覆層のオリフィスおよび吸収層220の隙間の上に位置してもよく、流体コネクタ110によって透過層226を通る空気の流れを提供することが可能になる。一部の実施形態では、ブリッジ211は、陰圧の源と連通する第一流体通路212を含んでもよく、第一流体通路212は、3D編み材料など、前に記載した多孔質層226と同じでもよく、または異なってもよい、多孔質材料を含む。一部の実施形態では、ブリッジ211は、近位端および遠位端を有し、第一流体通路212を囲むように構成される、少なくとも一つの可撓性フィルム層208、210によって被包されることが好ましく、可撓性フィルムの遠位端は、封止面216に接続する。フィルタ214は、創傷滲出液がブリッジに侵入するのを実質的に妨げるように構成される。これらの要素については、以下により詳細に記載する。
【0040】
一部の実施形態はさらに、第一流体通路212の上に配置される、任意の第二流体通路を含んでもよい。例えば、一部の実施形態によって、第一流体通路212および被覆材100中への空気経路を提供するように構成され、最上層の近位端に配置される可能性がある、空気漏れ部を提供してもよく、これは、参照することによって全体が組み込まれる、米国特許第8,801,685号に記載される吸引アダプタに類似する。
【0041】
一部の実施形態では、好ましくは、流体通路212は、スペーサがねじれるかまたは折り重なる場合でも、流体が通過することを可能にする、可撓性のある、規格に準拠した材料から構築される。流体通路212の好適な材料には、ポリエチレンまたはポリウレタン発泡体など、連続気泡発泡体を含む発泡体、メッシュ、3D編物、不織材料および流体チャネルを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、流体通路212は、透過層226に関して上に記載したものと、類似の材料から構築されてもよい。有利なことに、流体通路212に使用されるそのような材料によって、患者の快適性をより増すことが可能になるだけでなく、ねじれるか、または曲がっている間でも、依然として流体通路212が流体を創傷から陰圧の源の方へと移動できるような、より大きなねじれ抵抗を提供してもよい。
【0042】
一部の実施形態では、流体通路212は、例えば、編みもしくは織りスペーサ布(ポリエステルで編まれた3D織物Baltex 7970(登録商標)またはGehring 879(登録商標))といったウィッキング生地、または不織布から成ってもよい。選択されたこれらの材料は、好ましくは、創傷滲出液を創傷から離すように導き、陰圧および/または吐出された空気を創傷部位へ伝達するために置くことができ、また、ある程度のねじれ抵抗または閉塞抵抗を、流体通路212に与えてもよい。一部の実施形態では、ウィッキング生地は、一部の場合、流体の吸い上げまたは陰圧の伝達に役立つ場合がある、三次元構造を有してもよい。特定の実施形態では、ウィッキング生地を含むある実施形態では、これらの材料は、開放されたままで、例えば、40から150mmHgの間の陰圧療法で使用される通常圧力下において、変わらず陰圧を創傷エリアに伝えることができる。一部の実施形態では、ウィッキング生地は、互いの上に積み重なった、または積層された材料のいくつかの層を含んでもよく、一部の場合には、陰圧適用状況下において、流体通路212が崩れるのを妨げるのに有用であってもよい。特定の実施形態では、流体通路212に使用されるウィッキング生地は、1.5mmと6mmとの間であってもよく、より好ましくは、ウィッキング生地は、3mmと6mmとの間の厚さであってもよく、一つまたはいくつかの個別のウィッキング生地層から成ってもよい。他の実施形態では、流体通路212は1.2~3mmの間の厚さであってもよく、好ましくは1.5mmよりも厚い。一部の実施形態、例えば、創傷滲出液などの液体を保持する被覆材と共に使用される吸引アダプタは、流体通路212に疎水性の層を用いてもよく、気体のみが流体通路212を通って動いてもよい。さらに、既に記載した通り、システムの一部の実施形態に使用される材料は、快適で柔らかいものであることが好ましく、それにより患者の皮膚に押し付けられる創傷治療システムに起因する場合がある、圧迫性褥瘡およびその他の合併症を回避するのに役立つ場合がある。
【0043】
一部の実施形態では、好ましくは、フィルタ要素214は液体に対して不透過性であるが、気体に対しては透過性があるため、液体バリアとして作用し、流体が創傷被覆材100から漏れ出ないことを確保するために提供される。フィルタ要素214はまた、細菌バリアとして機能してもよい。通常、管孔サイズは0.2μmである。フィルタ要素214のフィルタ材料に好適な材料には、MMT範囲からの0.2ミクロンのGore(商標)拡張PTFE、PALL Versapore(商標)200RおよびDonaldson(商標)TX6628を含む。より大きな管孔サイズも使用され得るが、これらは、2次フィルタ層が、完全な生物汚染の封じ込めを保証することを必要とする場合がある。創傷流体は脂質を含有するため、一部の実施形態では、必須ではないものの、例えば、0.2ミクロンのMMT-323の前に1.0ミクロンのMMT-332といった、撥油性フィルタ膜を使用することが好ましい。これにより、脂質が疎水性フィルタを遮断するのを防げる。フィルタ要素は、オリフィスの上のポートおよび/または被覆フィルムに取り付けられるか、または封止され得る。例えば、フィルタ要素214は、流体コネクタ110に成型されてもよく、または限定するものではないが、UV硬化接着剤などの接着剤を使用して、被覆層の最上部および吸引アダプタ110の最下部の一方または両方に接着してもよい。
【0044】
他のタイプの材料がフィルタ要素214に使用され得ることは、理解されるであろう。より広くは、薄く平坦な1枚のポリマー材料である、微多孔膜を使用することができ、これは数十億もの微細な管孔を包含する。選んだ膜に応じて、これらの管孔は、0.01マイクロメートルから10マイクロメートルより大きいサイズに及び得る。微多孔膜は、親水性(水のフィルタリング)および疎水性(撥水)形態の両方で利用可能である。一部の実施形態では、フィルタ要素214は、支持層と、支持層上に形成されるアクリルコポリマー膜とを含む。特定の実施形態に従う創傷被覆材100は、好ましくは、疎水性微多孔膜(MHM:microporous hydrophobic membrane)を使用する。多数のポリマーを用いて、MHMを形成してもよい。例えば、MHMは、PTFE、ポリプロピレン、PVDFおよびアクリルコポリマーのうちの一つ以上から形成されてもよい。これら任意のポリマーのすべてが、疎水性および撥油性の両方であり得る、特定の表面特性を得るために処理され得る。これらによって、マルチビタミン注入物、脂質、界面活性剤、油および有機溶媒など、表面張力の低い液体を追い払うであろう。
【0045】
MHMは、空気が膜を通って流れることを可能にしながら、液体を遮断する。MHMはまた、潜在的感染エアロゾルおよび粒子を排除する、非常に効率的なエアフィルタである。MHMの単一片は、機械弁またはベントを交換する選択肢として、よく知られる。それゆえ、MHMの組込みによって製品組立費を削減し、利益、および患者に対する費用/利得の割合を改善し得る。
【0046】
フィルタ要素214はまた、例えば、活性炭、炭素繊維布もしくはVitec Carbotec-RT Q2003073発泡体、または類似のものといった臭気吸収材を含んでもよい。例えば、臭気吸収材は、フィルタ要素214の層を形成してもよく、またはフィルタ要素内の疎水性微多孔膜間に挟まれてもよい。それゆえ、フィルタ要素214によって、オリフィスを通して気体を排出することが可能になる。しかしながら、液体、微粒子および病原体は被覆材に包含される。
【0047】
被覆材上のポンプと電子機器
一部の実施形態では、ポンプおよび/またはその他の電子構成要素が未だ、患者に適用されることになる単一の装置の一部であるが、ポンプおよび/またはその他の電子機器が創傷部位から離れて配置されるよう、ポンプおよび/またはその他の電子構成要素は、吸収体および/または透過層に隣接して、またはそれらの隣に配置されるよう構成され得る。一部の実施形態では、ポンプおよび/またはその他の電子構成要素は、上記の吸収層および/または透過層の上に配置され、またはその上に取り付けられてもよい。
図2Cは、ポンプおよび/またはその他の電子機器が創傷部位から離れて配置される創傷被覆材を図示する。創傷被覆材は、電子機器エリア1361と、吸収エリア1360とを含み得る。吸収エリア1360は、吸収性材料を含むことができ、創傷部位の上に配置され得る。電子機器エリア1361は、吸収エリア1360から横にずらして配置することなどによって、創傷部位から離れて配置され得る。電子機器エリア1361は、吸収エリア1360に隣接し、且つ、その吸収エリア1360と流体連通して配置され得る。一部の実施形態では、電子機器エリア1361および吸収エリア1360はそれぞれ、長方形状であってよく、互いに隣接して配置されてもよい。電子機器は電子機器エリア1361内に位置し、吸収エリア1360は創傷上に配置され得る。被覆材は、創傷接触層1310と、スペーサ層1311および/または吸収層1317の一つ以上と、吸収層1322と、接触層の上に位置づけられた透湿性フィルムまたは被覆層1313と、スペーサ層、吸収層、またはその他の被覆材の層の一つ以上を含み得る。創傷接触層1310、一つまたは複数のスペーサ層1311および/または透過層1317、吸収層1322、透湿性フィルムまたは被覆層1313は、
図2A~
図2Bに関して記載された対応する創傷接触層、スペーサ層、透過層、吸収層、および被覆層に関して記載されたものと類似した材料および特徴を含み得る。電子機器エリアの創傷被覆材層および吸収層は、一つの連続した被覆層1313によって覆われ得る。
【0048】
図2Cは、ポンプおよび電子構成要素が、創傷の上に配置された被覆材の吸収エリアからずらされた、創傷被覆材の実施形態を図示する。創傷被覆材は、創傷接触層1310、および吸収エリア1360と電子機器エリア1361とを取り囲む透湿性フィルムまたは被覆層1313を含み得る。被覆層1313は、創傷接触層の周囲にて創傷接触層1310に対して被覆層1319の周囲で封止し得る。被覆材は、被覆層1313の下、かつ、吸収エリアの層および電子機器エリアの層の上に配置された、スペーサ材の連続する層を含む、上側スペーサ層または第一スペーサ層1317を含み得る。スペーサ材の連続する層、または上側スペーサ層1317は、被覆材の二つのエリアの間の空気通路を可能にし得る。一部の実施形態では、スペーサ層1317は、吸収エリア1360の上にのみ提供され、電子機器エリア1361上には延在しない。
【0049】
被覆材の吸収エリア1360は、創傷接触層1310の上方に配置された、第二スペーサ層1311、または下側スペーサ層、および吸収層1322を含み得る。第二スペーサ層1311は、創傷部位の上に、開放空気経路(open air path)を有し得る。吸収層1322は、被覆材の吸収エリア1360内に配置された超吸収体を含み得る。吸収層1322は、創傷流体を内部に保持し得、それによって、被覆材の電子機器エリア1361内への創傷滲出液の流体通路を防止する。創傷流体は、創傷接触層1310を通り、下側スペーサ層1311へ、および吸収層1322内へ流れ得る。次いで、創傷流体は、
図2Cで創傷流体を指す方向矢印によって示すように、吸収層1322全体に広がり、吸収層1322で保持される。
【0050】
被覆材の電子機器エリア1361は、スペーサ材1351の複数の層と、スペーサ材1351の複数の層内に埋め込まれた電子構成要素1350とを含み得る。スペーサ材の層は、崩壊を防止するための構造をもたらしつつ、電子構成要素を内部に埋め込むための凹部または切り欠き部を有し得る。電子構成要素1350は、ポンプ、電源、コントローラ、および/または電子機器パッケージを含み得る。
【0051】
一部の実施形態では、分離材料は、
図2Cに示すように隔壁1362とすることができる。一部の実施形態では、隔壁1362は、吸収エリア1360と電子機器エリア1361との間に配置することができる。隔壁1362は、吸収層1322および下側空気流スペーサ層1311を、電子機器エリアにおける被覆材の電子ハウジングセグメントから分離することができる。隔壁1362は、創傷流体が被覆材の電子機器ハウジングセクションに侵入するのを防止することができる。一部の実施形態では、隔壁は、非多孔質ダムまたはその他の構造であり得る。非多孔質ダム1362は、シアノアクリレート接着剤ビードまたは一片のシリコンを含み得る。被覆材を通る空気通路は、方向矢印で
図2Cに示される。空気は、創傷接触層1310、下側スペーサ層1311、吸収層1322を通り、第一スペーサ層1317内へ流れる。空気は、第一スペーサ層1317を通り、隔壁1362を越えて周り、被覆材の電子機器エリア内へ、水平に移動し得る。
【0052】
ポンプ排出口1370は、ポンプから被覆材の外側へ空気を排出するよう設けられ得る。ポンプ排出口は、電子機器エリア1361および被覆材の外部と連通し得る。一部の実施形態では、ポンプ排出口1370は、排出ポートを崩壊させることなく、圧力を適用することができる3D材を含む、可撓性流体コネクタであってもよい。3D材に関連する追加の開示が記載され得る出願の例としては、2015年5月21日に公開された「Apparatuses and Methods for Negative Pressure Wound Therapy」と題する米国特許第2015/0141941号を含む。本特許の開示は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0053】
被覆材への接着剤の適用
図2Bで既に述べたような特定の実施形態では、流体(例えば、創傷滲出液)は、穴加工された創傷接触層222を通過することによって、被覆材100によって対処され、透過層226に入って、次いで吸収層221によって吸収されて保持される。次いで、流体は通気性のある裏当て層220を通して蒸発することができる。しかしながら、一部の実施形態では、インビトロ創傷モデル試験中に観察されたもののように、吸収層は予測不可能でしばしば不均一な様式で流体によって満たされる。従って、上述のように、流体が吸収層の特定のエリアに達するのを防止することが望ましい場合がある。
【0054】
特定の実施形態では、吸収層の流体浸透は、シアノアクリレートスーパーグルー(例えば、ヘンケルのロックタイト)などの接着剤を裏当て層上に適用することによって妨げられ得る。本明細書では、本節および明細書全体を通して、「接着剤/グルー(glue)」という用語は、スーパーグルーまたは任意のシアノアクリレート接着剤などの接着剤を示すために使用される。接着剤の適用により、流体が接着剤の下にあるエリア内に吸収されることを防止することによって、下にある吸収層に影響を与える。一部の実施形態では、接着剤は、吸収性材料の特定のエリアが流体で膨張することを防ぐ。接着剤は、アプリケータチューブを介してなど任意の適切な方法によって、裏当て層または被覆材の他の場所に適用され得る。
【0055】
図2A~
図2Bに記載の被覆材と類似した創傷被覆材300の実施形態の上面図を示す
図3を参照すると、接着剤のリング302は、流体コネクタ306の遠位端304を被覆材300に接着する。流体は被覆材308内に引き込まれ、吸収層312を浸透していることが、裏当て層310を通して視認できる。しかしながら、接着剤が裏当て層312の上部に適用されても、接着剤のリング302周りで流体は曲がる。実施形態では、裏当て層の上部への接着剤の適用は、下にある吸収層312のエリアが浸透および膨張することを有益にも阻止し得る。実施形態では、このエリアでの超吸収体粒子の膨張は流体接続306を塞ぎ、その結果陰圧送達を阻害するため、この浸透の防止は有益である。
【0056】
特定の実施形態では、接着剤は、裏当て層上の様々な場所に配置され得る。例えば、接着剤は、裏当て層内の開口部の端部まで全体に適用してもよく、および/または流体コネクタの遠位端全体を流体コネクタの外側端まで被覆してもよい。上記のように、接着剤は、開口部の縁の周りにリングの形態で適用され得る。実施形態では、接着剤は、一本の線として、または一連の線として適用されてもよい。接着剤は、裏当て層上に渦巻状または同心円状で適用されてもよい。特定の実施形態では、接着剤は、別個の一本の線または複数の線として適用されてもよい。接着剤は、裏当て層の上側に関して記載した任意の方法で裏当て層の下側に適用してもよい。
【0057】
実施形態において、接着剤は、裏当て層の周辺の周りに適用されてもよく、例えば、周辺全体、全体の50%、または全体の25%に適用されてもよい。特定の実施形態では、接着剤は、例えば25%、50%、または75%など、遠位端流体コネクタの周囲の一部分のみに適用されてもよい。接着剤は、創傷滲出液を裏当て層内の開口部に流すために下にある吸収層内にチャネルを作り出すために適用されてもよい。特定の実施形態では、接着剤は、流体コネクタのアプリケータ部分の下に適用されてもよいが、流体通路には適用されてはならない。実施形態において、接着剤は、流体コネクタのアプリケータ部分の最外側リングのみに適用され得る。特定の実施形態では、接着剤は、流体コネクタの封止面に塗布され得る。さらなる実施形態では、接着剤は、流体コネクタの周りの裏当て層上に適用されてもよいが、流体コネクタの下の裏当て層には適用されてはならない。
【0058】
特定の実施形態では、接着剤は、本明細書で本節または本明細書の他の箇所で記載した、特に裏当て層に関して上で記載した任意の様式で、吸収層に直接適用されてもよい。一部の実施形態では、接着剤は、本明細書で本節または本明細書の他の箇所で記載した、特に裏当て層に関して上で記載した任意の様式で、透過層に直接塗布されてもよい。実施形態では、接着剤は、本明細書で本節または本明細書の他の箇所で記載した、特に裏当て層に関して上で記載した任意の様式で、創傷接触層に直接塗布されてもよい。
【0059】
図4は、
図2A~
図3の被覆材と類似した創傷被覆材400の実施形態の二つの画像を示す。ここで、スーパーグルーの薄いビーズを使用して、被覆材402、特に裏当て層の上部に「PICO」と書き込んだ。次に、被覆材を染料溶液404で満たすと、被覆材の裏当て層上に書かれた言葉「PICO」が徐々に明らかになった。
図3に示す接着剤リングと同様に、接着剤の裏当て層の上部への接着剤の適用により、下にある吸収層エリアの浸透を防止する。特定の実施形態では、接着剤の塗布は、吸収層エリア(例えば、流体コネクタの遠位端の周り)が浸透されるのを意図的に防止するために使用され得る。
【0060】
図5~
図8は、
図2A~
図4の被覆材に類似した被覆材の実施形態の画像である。被覆材は、清潔なハサミおよび片刃のカミソリを使用して切断された。これらの画像は、インビトロ創傷被覆材の特定の観察により動機付けられた。PICO被覆材のポートへの接着剤の適用後、しばしば被覆材が満たされる前、通常はポートを追跡してポートをブロックするところ、創傷モデルにおいて接着剤付けされたエリアがウマ血清を弾く様子が観察された。上記観察のため、接着剤は、ポートと被覆材の上部フィルムとの間、およびソフトポートの真下の吸収層の孔の切断端の周りに、直接塗布された。
【0061】
図5は、
図2A~
図4の被覆材と類似した被覆材500の実施形態の二つの断面角度でのマイクロCT画像を示す。ここでは、被覆材の裏当て層の上に適用された接着剤は、接着剤のない裏当て層と並べて比較される。接着剤エリア上の上部フィルムのきめのある外観の他、接着剤のあるエリアと接着剤のないエリアとの間にはマクロ構造差はなく、繊維が結合されている目立ったしるしはない。
【0062】
図6は、
図2~
図5の被覆材と類似した被覆材の実施形態の一連のSEM画像を示す。ここで、裏当て層は接着剤602で被覆された。接着剤で被覆された被覆材セクションの点検により、(接着剤を持つ)裏当て層の下に、顆粒状粒子で被覆された多数の繊維604および超吸収体粒子のセクション(
図7に示す)があることが示された。顆粒状粒子は平坦なセルロース系繊維上では観察されなかった。平坦な繊維(すなわち、顆粒状粒子がSEMによって見られなかった繊維)上に接着剤の薄膜があるかどうかを判断するために化学分析が必要となることになる。
図6は、類似の被覆材の以前の知識に基づいて識別された建設用接着剤606をさらに含む。
【0063】
図7は、
図6の創傷被覆材の一連のさらなるSEM画像である。
図6のように、接着剤は被覆材の裏当て層に適用されている。ここでは、顆粒状粒子608は、超吸収性粒子のセクションを被覆する。
【0064】
図8は、
図6~
図7の被覆材と類似した創傷被覆材700の一連のSEM画像であるが、ここではスーパーグルーは適用されておらず、顆粒状粒子は観察されていない。
【0065】
流体の流れを制御する被覆材材料
既に
図2Cを参照して論じたように、隔壁1362は、ポンプおよび電子機器を含む創傷被覆材の吸収エリア1360と電子機器エリア1361との間に使用され得る。隔壁1362は、吸収層1322および下側空気流スペーサ層1311を、電子機器エリアにおける被覆材の電子ハウジングセグメントから分離することができる。一部の実施形態では、材料は、被覆材内に組み込まれるか、または隔壁1362の代わりに、または隔壁1362に加えて使用して、創傷流体が被覆材の電子機器ハウジングセクションに侵入するのを防止することができる。一部の実施形態では、隔壁は、吸収エリアを電子機器エリアから完全にまたは部分的に分離する任意の材料とすることができる。一部の実施形態では、被覆材層および/または電子構成要素は、疎水性または親水性被覆で被覆されて、吸収エリア1360および電子機器エリア1361の必要な分離を提供することができる。一部の実施形態では、被覆材層および/または電子構成要素は、疎水性または親水性の材料で作製することができる。例えば、
図2Cに示す通り、非多孔質ダム1362は、シアノアクリレート接着剤ビードまたは一片のシリコンを含み得る。
【0066】
一部の実施形態では、吸収エリアおよび電子機器エリアは、エポキシ材料または類似の材料を使用して分離され得る。エポキシ材料は、
図3~
図8を参照して既に記載した通り、接着剤の使用に類似した方法で使用され得る。例えば、シリコンタイプの接着剤を使用して、上記の接着剤の使用と類似した方法で被覆材内の流体の流れを導くことができる。シリコン接着剤は、適用されるエリアに封止できる柔軟性のある接着剤であり得る。シリコン接着剤は疎水性であり、被覆材内の流体がシリコンの周りまたはシリコンから離れることを可能にする。その他の実施形態では、被覆材および電子構成要素の疎水性または親水性の材料および被覆は、被覆材内の流体の流れを制御および導くために利用され得る。
【0067】
一部の実施形態では、組み込まれたポンプおよび電子機器を用いた創傷被覆材は、電子機器エリアと吸収エリアとを分離するダムまたは構造を含まない。創傷被覆材は代わりに、材料の疎水性または親水性を利用して、流体の流れを制御し、被覆材内の流体から電子機器を保護することができる。一部の実施形態では、創傷被覆材は、吸収エリアから電子機器エリアに延在する下側スペーサ層1311、または電子機器エリアと創傷接触層との間の別個のスペーサ層を含み得る。従って、下側スペーサ層は、吸収エリアの吸収層と創傷接触層との間、および電子機器エリアの電子機器と創傷接触層との間に配置され得る。下側スペーサ層は、上記のように、スペーサ層を通して流体を吸収層内に向けて、および電子機器から離れるように導く、親水性剤で形成することができ、親水性剤で処理することができ、または親水性剤で被覆することができる。
【0068】
一部の実施形態では、吸収層の一部分は、疎水性材料で形成することができ、疎水性材料で処理することができ、疎水性材料で被覆することができる。例えば、電子機器エリア内に位置するか、またはそれに直接隣接する吸収層は、疎水性材料で形成、処理、または被覆されて、ポンプおよび/または電子機器から流体が離れるように導く、またはポンプおよび/または電子機器の周りに流体が溜まることを阻害する。疎水性材料を含まない吸収層の部分は、
図2A~
図2Cを参照して記載した通りに作用し、創傷被覆材内に収集された液体が被覆材内で自由に流れることを防止し得る。一部の実施形態では、疎水性材料を含まない吸収層の部分は、被覆材内のその部分に収集された液体を収容するように作用することが好ましい。一部の実施形態では、電子機器エリア内の被覆材層はすべて、親水性材料で形成され、処理され、または被覆され得る。
【0069】
特定の態様、実施形態、または例に関連して説明される特性、物質、特徴、または群は、本明細書に記載される他の任意の態様、実施形態、または例に、これらと両立できないことがない限り、適用可能であることを理解されたい。(あらゆる特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)本明細書において開示されるすべての特徴、および/またはそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップのうち少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされてよい。本発明の保護するものは、前述の任意の実施形態の詳細に限定されない。保護するものは、本明細書(添付の任意の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)において開示される特徴のうちの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせにおよび、または同様に開示される任意の方法またはプロセスのステップのうちの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0070】
一定の実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は、単に例として提示されており、保護範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の新規な方法およびシステムは、様々な他の形態で具現化されてもよい。さらに、本明細書に記載の方法およびシステムの形態において、様々な省略、置換、および変形がなされ得る。一部の実施形態では、図示および/または開示されたプロセスにおいて実施される実際のステップは、図に示されたステップとは異なり得ることを、当業者は認識するであろう。実施形態によっては、上述したステップのうちの特定のステップが除去される場合があり、別のものが加えられる場合もある。さらに、上記に開示された特定の実施形態の特徴および特性は、様々な方法で組み合わせることができ、さらなる実施形態を形成することができるが、その全てが本開示の範囲内に収まることになる。
【0071】
本開示には、一定の実施形態、例、および適用例が含まれるが、本開示は、具体的に開示された実施形態の範囲を超えて、他の代替の実施形態および/または使用ならびにその明らかな変更形およびその等価物にまでおよび、これには本明細書に記載された特徴および利点の全てを提供しているとは限らない実施形態が含まれることは、当業者に理解されるはずである。従って、本開示の範囲は、本明細書における特定の実施形態の特定の開示によって限定されることを意図するものではなく、本明細書に提示されるまたはこの後に提示される特許請求の範囲によって定義され得る。