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特許7303107自己免疫疾患の診断、予防、および/または治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】自己免疫疾患の診断、予防、および/または治療
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230627BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230627BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230627BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20230627BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
G01N33/53 K
A61K47/64
A61P13/12
C07K14/705
C12N15/11 Z ZNA
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019529463
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017046626
(87)【国際公開番号】W WO2018031947
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】62/374,382
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519049190
【氏名又は名称】イムノワーク,リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,チェンシェン
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】松本 隆彦
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528789(JP,A)
【文献】特表2009-517046(JP,A)
【文献】国際公開第2015/185949(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/004603(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0255346(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105510575(CN,A)
【文献】KANIGICHERLA Durga et al., Anti-PLA2R antibodies measured by ELISA predict long-term outocome in a prevalent population of patients with idiopathic membranous nephropathy, 2013, Kidney international, Vol.83, pp.940-948
【文献】MA Hong et al., The Role of Complement in Membranous Nephropathy, 2013, Seminar in Nephrology, Vol.33, No.6, pp.531-542
【文献】RONCO Pierre, DEBIEC Hanna, Pathophysiological advances in membranous nephropathy: time for a shift in patient’s care, 2015, Lancet, Vol.385,pp.1983-1992
【文献】KAO Liyo et al., Identification of the Immunodominant Epitope Region in Phospholipase A2 Receptor-Mediating Autoantibody Binding in Idiopathic Membranous Nephropathy, 2015, Journal of the American Society of Nephrology, Vol.26, pp.291-301
【文献】FRESQUET Maryline et al., Identification of a Major Epitope Recognized by PLA2R Autoantibodies in Primary Membranous Nephropathy, 2015, Journal of the American Society of Nephrology, Vol.26, pp.302-313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における膜性腎症(MN)の存在を決定するためのデータを取得する方法であって、前記方法が:
患者から得られた細胞を含むサンプルを、PLA2Rフラグメント内に含まれるPLA2Rエピトープと接触させること;
結合を検出するフルオロフォアベースアッセイ、放射免疫アッセイまたは磁性免疫アッセイを行うことにより、前記サンプルにおけるPLA2RエピトープのB細胞への結合を検出することによって、前記サンプルにおける抗PLA2Rエピトープ自己抗体産生B胞の量を決定すること;
前記サンプルにおける抗PLA2Rエピトープ自己抗体産生B細胞の量と、MNを有さない対象から得られた細胞を含むコントロールサンプルにおいて予想される抗PLA2Rエピトープ自己抗体産生B細胞の量を比較することであって、前記コントロールサンプルにおいて予想される抗PLA2Rエピトープ自己抗体産生B細胞の量と比較した前記サンプルにおける抗PLA2Rエピトープ自己抗体産生B細胞の量の増加が、患者がMNの存在を示唆する自己免疫細胞を有しており且つMNの治療候補であることを示唆するものであること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記PLA2Rエピトープの配列が、配列番号13で定められた通りである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PLA2Rフラグメントの配列が、配列番号1で定められた通りである、配列番号2で定められた通りである、配列番号2で定められた通りの配列及び配列番号3で定められた配列の少なくとも5%の配列である、配列番号4で定められた通りである、配列番号5で定められた通りである、又は配列番号5で定められた通りの配列及び配列番号6で定められた配列の少なくとも5%の配列である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記コントロールサンプルにおける抗PLA2Rエピトープ自己抗体産生B細胞の量と比較した、前記サンプルにおける抗PLA2Rエピトープ自己抗体産生B細胞の量の増加が、少なくとも10%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが、体液又は組織若しくは臓器の生検サンプルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が複数のタイムポイントで実施されるものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、患者がMNの存在を示唆する自己免疫細胞を有しており且つPLA2Rエピトープと薬物を含む複合体による治療の候補であるかを決定するために実行されるものである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複合体が、患者において抗PLA2R自己抗体産生B細胞集団を排除又は減少させることによって、膜性腎症(MN)の治療に使用するためのものである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記複合体が、T細胞集団も排除するものであって、前記T細胞集団が抗PLA2R自己抗体産生B細胞集団にT細胞ヘルプを提供するものである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2016年8月12日に出願された米国特許仮出願第62/374,382号の優先権を主張し、これは参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
【0002】
電子フォーマットの配列表
本願は、EFSウェブを介してASCIIテキストファイルとして電子的配列表と共に出願されている。電子的配列表は、72,810バイトの容量を有し、2017年8月11日に作成、最終保存されたIMWO001WOSEQLIST.txtというファイル名で提出されている。電子的配列表の中の情報は、米国特許法第1.52(e)条に従って、その全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
【0003】
本開示は、概して、エピトープ特異的自己免疫細胞の検出、標的化、および/または排除による自己免疫系疾患の診断、予防および/または治療のための組成物、方法、および/またはキットに関する。
【背景技術】
【0004】
自己免疫疾患は、T細胞媒介、B細胞媒介、またはその双方媒介であり得、臓器および/または組織傷害と関連し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態では、膜性腎症(MN)患者の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、MN患者の治療方法は、MN患者を特定すること、およびPLA2Rエピトープおよび薬物を含む複合体を患者に投与することを含み、該エピトープはPLA2Rフラグメント内に含まれ、それにより患者の抗PLA2R自己抗体産生B細胞集団を排除または低減する。
【0006】
MN患者の治療方法のいくつかの実施形態では、PLA2Rエピトープは、配列番号13で定められた通りである。方法のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントの配列は、配列番号1で定められた通りである。方法のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントの配列は、配列番号2で定められた通りである。方法のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントは配列番号2で定められた通りであり、配列番号3で定められた配列の少なくとも約5%である。方法のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントは、配列番号4で定められた通りである。方法のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントは、配列番号5で定められた通りである。方法のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントは配列番号5で定められた通りであり、配列番号6で定められた配列の少なくとも約5%である。方法のいくつかの実施形態では、薬物は、アンチセンスRNA、miRNA、siRNAもしくはRNAiに関するRNAフラグメント、1つ以上のデュオカルマイシン類似体、またはアドゼレシン、ビゼレシン(bizelesin
)、カルゼルシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エピルビシン、シスプラチン、5-フルオロウラシルおよびカペシタビンなどの細胞傷害性薬物からなる群から選択される。方法のいくつかの実施形態では、抗PLA2R自己抗体産生B細胞集団の排除効率は、約70%~約100%の範囲である。方法のいくつかの実施形態では、複合体は、T細胞集団も排除し、該T細胞集団は、抗PLA2R自己抗体産生B細胞集団にT細胞ヘルプを提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、PLA2Rエピトープを含む複合体および薬物を提供する。複合体のいくつかの実施形態では、エピトープは、PLA2Rフラグメント内に含まれる。複合体のいくつかの実施形態では、PLA2Rエピトープは、配列番号13で定められた通りである。複合体のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントの配列は、配列番号1で定められた通りである。複合体のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントの配列は、配列番号2で定められた通りである。複合体のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントの配列は配列番号2で定められた通りであり、配列番号3で定められた配列の少なくとも約5%である。複合体のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントの配列は、配列番号4で定められた通りである。複合体のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントの配列は、配列番号5で定められた通りである。複合体のいくつかの実施形態では、PLA2Rフラグメントの配列は配列番号5で定められた通りであり、配列番号6で定められた配列の少なくとも約5%である。複合体のいくつかの実施形態では、薬物は、アンチセンスRNA、miRNA、siRNAもしくはRNAiに関するRNAフラグメント、1つ以上のデュオカルマイシン類似体、またはアドゼレシン、ビゼレシン、カルゼルシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エピルビシン、シスプラチン、5-フルオロウラシルおよびカペシタビンなどの細胞傷害性薬物からなる群から選択される。複合体のいくつかの実施形態では、薬物は、バリン-シトルリンリンカーによりPLA2Rフラグメントと結合している。
【0008】
自己免疫B細胞またはT細胞を有する対象への薬物の送達方法を提供する。いくつかの実施形態では、薬物の送達方法は、リンカーにより薬物と結合されたエピトープを含むエピトープ-薬物複合体(EDC)において薬物を提供することであって、該エピトープは対象の自己免疫B細胞またはT細胞上の受容体により認識され、該薬物はB細胞が他の細胞を刺激することを阻害する作用を有する、前記提供をすること、および該対象にEDCを皮内または皮下投与することを含む。薬物の送達方法のいくつかの実施形態では、自己免疫B細胞またはT細胞は、対象の血液中に循環している。薬物の送達方法のいくつかの実施形態では、自己免疫B細胞またはT細胞は、対象のリンパ節中にある。薬物の送達方法のいくつかの実施形態では、薬物は、B細胞またはT細胞を殺す。薬物の送達方法のいくつかの実施形態では、薬物は、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンB1、デュオカルマイシンB2、デュオカルマイシンC1、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンD、デュオカルマイシンSA、CC-1065、アドゼレシン、ビゼレシン、カルゼルシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エピルビシン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、またはカペシタビン、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、アントラサイクリン系薬剤、オキサリプラチン、またはボルテゾミブからなる群から選択される。薬物の送達方法のいくつかの実施形態では、薬物は、B細胞またはT細胞からのサイトカインの放出を阻害するかまたはB細胞またはT細胞内のサイトカインシグナル伝達を阻害する。薬物の送達方法のいくつかの実施形態では、薬物は、ラパマイシン、シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸、フィンゴリモド、イマチニブ、テムシロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、ピルフェニドン、Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤(ダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、バフェチニブ)、MEKキナーゼ阻害剤(セルメチニブ、トラメチニブ、およびレファメチニブ)からなる群から選択される。薬物の送達方法のいくつかの実施形態では、対象は、活動性自己免疫疾患の急性期ではない。薬物の送達方法のいくつかの実施形態では、対象は、患者が活動性自己免疫疾患の急性期でないように免疫抑制剤を用いて治療された。薬物の送達方法のいくつかの実施形態では、EDCは、14~70kDaの分子量を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、尋常性天疱瘡(PV)患者の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、PV患者の治療方法は、PV患者を特定すること、およびデスモグレイ
ン1またはデスモグレイン3エピトープおよび薬物を含む複合体を患者に投与することを含み、該エピトープはデスモグレイン1またはデスモグレイン3フラグメント内に含まれ、それにより患者の抗デスモグレイン1または抗デスモグレイン3自己抗体産生B細胞集団を排除または低減する。
【0010】
PV患者の治療方法のいくつかの実施形態では、デスモグレイン1エピトープは、配列番号16で定められた通りである。PV患者の治療方法のいくつかの実施形態では、デスモグレイン1フラグメントの配列は、配列番号16で定められた通りである。PV患者の治療方法のいくつかの実施形態では、デスモグレイン3エピトープは、配列番号17で定められた通りである。方法のいくつかの実施形態では、デスモグレイン3の配列は、配列番号17で定められた通りである。方法のいくつかの実施形態では、薬物は、アンチセンスRNA、miRNA、siRNAもしくはRNAiに関するRNAフラグメント、1つ以上のデュオカルマイシン類似体、またはアドゼレシン、ビゼレシン、カルゼルシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エピルビシン、シスプラチン、5-フルオロウラシルおよびカペシタビンなどの細胞傷害性薬物からなる群から選択される。方法のいくつかの実施形態では、抗デスモグレイン1自己抗体産生B細胞集団の排除効率は、約70%~約100%の範囲である。方法のいくつかの実施形態では、抗デスモグレイン3自己抗体産生B細胞集団の排除効率は、約70%~約100%の範囲である。方法のいくつかの実施形態では、複合体は、T細胞集団も排除し、該T細胞集団は、抗デスモグレイン1自己抗体産生B細胞集団にT細胞ヘルプを提供する。方法のいくつかの実施形態では、複合体は、T細胞集団も排除し、該T細胞集団は、抗デスモグレイン3自己抗体産生B細胞集団にT細胞ヘルプを提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、エピトープ薬物複合体(EDC)を提供する。いくつかの実施形態では、EDCは、薬物およびデスモグレイン1エピトープまたはデスモグレイン3エピトープを含み、該デスモグレイン1エピトープはデスモグレイン1フラグメント内に含まれ、該デスモグレイン3エピトープはデスモグレイン3フラグメント内に含まれる。
【0012】
EDCのいくつかの実施形態では、デスモグレイン1エピトープは、配列番号16で定められた通りである。EDCのいくつかの実施形態では、デスモグレイン1フラグメントは、配列番号16で定められた通りである。EDCのいくつかの実施形態では、デスモグレイン3エピトープは、配列番号17で定められた通りである。EDCのいくつかの実施形態では、デスモグレイン3フラグメントは、配列番号17で定められた通りである。EDCのいくつかの実施形態では、薬物は、アンチセンスRNA、miRNA、siRNAもしくはRNAiに関するRNAフラグメント、1つ以上のデュオカルマイシン類似体、またはアドゼレシン、ビゼレシン、カルゼルシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エピルビシン、シスプラチン、5-フルオロウラシルおよびカペシタビンなどの細胞傷害性薬物からなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、対象の自己免疫疾患の診断方法を提供する。いくつかの実施形態では、診断方法は、対象からサンプルを採取することにより対象の自己免疫Bおよび/またはT細胞の集団の存在を検出すること、エピトープおよびフルオロフォアを含むEDCとサンプルをインキュベートし、該エピトープは自己免疫B細胞により発現された1つ以上のB細胞受容体および/または自己免疫T細胞により発現された1つ以上のT細胞受容体に特異的である、前記インキュベートすること、EDCとB細胞および/またはT細胞との結合を検出し、それにより対象の自己免疫疾患を診断することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】細胞膜中のPLA2Rの形態的なフォールディング構造および構造的ドメインの実施形態を示す。
図2】優位な立体構造エピトープを含むPLA2Rの形態的なフォールディング構造の実施形態を示す。
図3】抗原プロセシングおよびB細胞によるT細胞ヘルプの補充の実施形態の模式図を示す。
図4】エピトープ薬物複合体(EDC)設計の実施形態の分子基盤の模式図を示す。
図5】EDC治療の機序の実施形態の模式図を示す。
図6】PLA2Rフラグメント(配列番号1)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図7】PLA2Rフラグメント(配列番号2)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図8】PLA2Rフラグメント(配列番号3)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図9】PLA2Rフラグメント(配列番号4)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図10】PLA2Rフラグメント(配列番号5)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図11】PLA2Rフラグメント(配列番号6)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図12】PLA2RのCysRドメイン(配列番号7)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図13】PLA2RのCysRおよびFNIIドメイン(配列番号8)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図14】PLA2RのCysR、FNIIおよびCTLD1ドメイン(配列番号9)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図15】PLA2RのCysR、FNIIおよびCTLD1、2ドメイン(配列番号10)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図16】PLA2RのCysR、FNIIおよびCTLD1、2、3ドメイン(PLA2R-1~5ドメイン)(配列番号11)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図17】PLA2RのCysR、FNIIおよびCTLD1、2、3、4ドメイン(配列番号12)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図18】それに対する自己抗体がMN患者に存在するPLA2Rのエピトープ(配列番号13)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図19】完全長PLA2R(配列番号14)の実施形態のアミノ酸配列を示す。影付き領域はそれに対する自己抗体がMN患者に存在するPLA2Rのエピトープ(配列番号13)の実施形態を示す。下線領域はPLA2RのCysR、FNIIおよびCTLD1ドメイン(配列番号9)の実施形態を示す。
図20】PLA2R(配列番号15)のN末端272アミノ酸における潜在的なN結合グリコシル化部位を示す。
図21】自己免疫疾患治療のための薬物開発プラットフォームの模式図を示す。上図は、エピトープ薬物複合体(EDC)の設計を示す。中央図は、EDCがB細胞およびT細胞の表面上の抗原特異的受容体と結合することを示す。下図は、標的免疫細胞に対するEDCの効果(例えば、細胞死)を示す。
図22】末梢リンパ節に存在する記憶B細胞へのEDCの送達の模式図を示す。
図23】PLA2Rエピトープ薬物複合体(EDC)の実施形態の設計を示す。
図24】PLA2R-AbポジティブPMN患者血液サンプルから単離された全B細胞中のPLA2Rエピトープ特異的記憶B細胞の検出を示す。
図25】PLA2RAbポジティブPMN患者から単離されたB細胞に対するPLA2R-エピトープ-MMAE複合体の効果を示す。
図26】細胞膜中のデスモグレインの形態的なフォールディング構造を示す。短い方の垂直線は、自己抗体結合(EC1~2)に関するDsg1における免疫優性エピトープ領域を示し、長い方の垂直線は、自己抗体結合(EC1~3)に関するDsg3における免疫優性エピトープ領域を示す。
図27】粘膜皮膚PV患者の治療方法のいくつかの実施形態治療のためのエピトープ薬物複合体(EDC)の実施形態の設計を示す。
図28】精製および薬物結合エピトープと結合する自己抗体。
図29】粘膜皮膚PV患者血液サンプルから単離された全B細胞中のDsg1およびDsg3エピトープ特異的記憶B細胞の検出を示す。
図30】粘膜皮膚PV患者血液サンプルから単離されたB細胞に対するDsg1-エピトープ-MMAEおよびDsg3-エピトープ-MMAE複合体の効果を示す。
図31】EDCを開発するためのDsg1のエピトープ配列(配列番号16)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
図32】EDCを開発するためのDsg3のエピトープ配列(配列番号17)の実施形態のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
現在、ステロイドホルモンおよび免疫抑制剤の高用量を使用すること以外に自己免疫疾患の効果的な治療はない。これらの治療は非特異的であり、顕著な副作用を有し、該疾患の進行を止めることができないことも多い。これらの治療の大きな課題は、試薬用量を減らす場合(例えば、疾病は臨床的寛解になった後)、高頻度で疾病が再発することであり、このことは、患部臓器の機能を重く傷害する。
【0016】
自己免疫疾患診断、予防および/または治療のための新規薬物開発プラットフォーム
B細胞における抗体産生は、細胞表面B細胞受容体(BCR)と結合する抗原により開始される。BCRとの抗原の初期結合は、B細胞活性をもたらす一連の細胞内シグナル伝達イベントを誘発する。BCRと結合する抗原は、BCR-抗原複合体の迅速な内部移行を開始させる。内部移行後、BCR-抗原複合体は初期エンドソームに仕分けられ、その後、主要組織適合性複合体分類II(MHCII)含有後期エンドソームに仕分けられる。リソソームと融合時、これらのコンパートメントは、抗原を、ヘルパーT細胞に提示するためにMHCII上にロードされるペプチドに分解する(図3)。特異的ヘルパーT細胞の結合は活性化されたB細胞による抗体産生を刺激する(図3)。
【0017】
自己免疫疾患は、正常な体組織および/または臓器に対する免疫応答(例えば、B細胞による抗体産生)によって起こる。約80種類の自己免疫疾患がヒトにおいて公知であり、ほとんどいずれもの組織および/または臓器が影響を受け得る。
【0018】
臨床的に、患者における頻繁な自己免疫疾患の再発は、患者の身体内での静止状態において存在する記憶B細胞の特定の群の存在のせいであり、末梢血液および末梢リンパ組織および/または器官(例えばリンパ節)間で循環している。これらが特異的である抗原と再び出会った時、これらの記憶B細胞は即時に活性化され、その後、短時間で莫大な量の病原抗体(病原性抗体)を産生するプラズマ細胞に分化する。加えて、これらの記憶B細胞は、抗原特異的ヘルパーT細胞に処理抗原を提示する抗原提示細胞(APC)の役割をし、従って、T細胞媒介性臓器および/または組織傷害を引き起こすおよび/または増強する。これらの記憶B細胞および抗原特異的T細胞は、それぞれ、固有かつ抗原特異的なBCRならびにT細胞受容体(TCR)を有し、これら双方は特異的に抗原と結合する。現在、病原記憶B細胞および抗原特異的T細胞(自己免疫記憶B細胞およびT細胞)のこの群を特異的に標的とすることができる治療はない。詳細には、末梢血液および末梢リンパ組織および/または器官(例えばリンパ節)間で循環している自己免疫記憶B細胞および自己免疫T細胞のこの群を特異的に標的とすることができる治療はない。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象/患者の末梢血液および末梢リンパ器官における自己免疫細胞のこのレパートリーを特異的に標的とする新規薬物開発プラットフォー
ムに関する。いくつかの実施形態では、末梢血液および末梢リンパ器官における自己免疫細胞のこのレパートリーの標的化は、生涯にわたる治療効果をもたらすだろう。
【0020】
自己免疫抗体結合の原因となる抗原の部分はエピトープと呼ばれる特定の領域である。本明細書で使用されるとき、「エピトープ」は、天然ペプチド、合成ペプチド、人工ペプチド、バイオシミラー、アプタマー、タンパク質ドメイン、またはそれらの組合せであり得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、立体配座である。いくつかの実施形態では、エピトープは、非立体配座である。いくつかの実施形態では、エピトープは、立体配座および非立体配座の両方である。ペプチド/タンパク質エピトープを、組換え技術により発現する他に、エピトープ合成および精製の技術分野において周知の1つ以上の技術を用いて大量合成で得ることができる。エピトープは、病原自己抗体の他、記憶B細胞上で発現された抗原特異的BCR、ヘルパーT細胞上で発現されたTCR、またはその両方に対して高親和性を有する。いくつかの実施形態では、エピトープは、非ペプチド/タンパク質エピトープであり得る。非限定的例としては、DNA、RNA、小分子、および有機化学物質が挙げられる。
【0021】
本開示は、エピトープ薬物複合体(EDC)、および組成物、方法および/またはEDCを含むキットに関する。いくつかの実施形態では、本開示は、記憶B細胞上で発現された抗原特異的BCR、ヘルパーT細胞上で発現されたTCR、またはその両方を標的とするペプチドエピトープを含むEDCに関する(図21)。いくつかの実施形態では、EDCは、EDCを貪食するおよび/またはEDCのエンドサイトーシスを行うAPCも標的とする(図21)。プラットフォームは免疫細胞により特異的に認識されるエピトープに基づいているので、本開示によるプラットフォームは、いずれもの自己免疫疾患に適し得る。図21は、自己免疫疾患治療のための薬物開発プラットフォームの模式図を示す。図21(上図)は、EDCの設計を示す。図21(中央図)は、EDCがB細胞およびT細胞の表面上の抗原特異的受容体と結合することを示す。EDCを、BCR媒介エンドサイトーシスにより細胞内に内部移行することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示によるEDCは、エピトープ、リンカー、および薬物を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、患者の体内および/または細胞外側の血液循環中で安定(すなわち、加水分解も分解もしない)である。いくつかの実施形態では、リンカーは開裂可能であり、エピトープと薬物の分離を可能とする。いくつかの実施形態では、リンカーは細胞の内側で開裂される。いくつかの実施形態では、リンカーは細胞の外側で開裂される。いくつかの実施形態では、リンカーは細胞の内側と外側の両方で開裂される。いくつかの実施形態では、リンカーは細胞の外側で部分的に開裂され、細胞の内側で部分的に開裂される。いくつかの実施形態では、リンカーは細胞の外側で部分的に開裂され、細胞の内側で完全に開裂される。いくつかの実施形態では、リンカーの初期開裂は細胞の内側で起こり、最終の開裂は細胞の内側で起こる。開裂可能なリンカーの非限定的例としては、ヒドラゾンリンカー、ジスルフィド系リンカーおよびペプチドリンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、ジスルフィド系リンカーは、細胞の内側で選択的に分解する。いくつかの実施形態では、ジスルフィド系リンカーは、チオールのより高い細胞内濃度が理由で細胞の内側で選択的に分解する。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、細胞内酵素により細胞の内側で選択的に分解する。
【0023】
いくつかの実施形態では、リンカーは、開裂可能でない。開裂可能でないリンカーの非限定的例としては、チオエーテルリンカー、PEG4Malリンカー、および同様のものが挙げられる。いくつかの実施形態では、リンカーは、エピトープ上の1つ以上のアミノ酸と結合している。いくつかの実施形態では、リンカーはエピトープ上のシステイン残基と結合している。いくつかの実施形態では、リンカーは、エピトープ上のシステイン以外(例えば、リジン)の残基と結合している。いくつかの実施形態では、リンカー結合のエ
ピトープ上の1つ以上の部位は、1つ以上の溶媒露出システインもしくはリジンまたは両方であり得る。
【0024】
EDCの生成のための他の種類のリンカー、結合化学物質、およびエピトープ上の結合部位は、本開示の範囲内に含まれる。非限定的例は、米国特許第9,156,854号および米国特許第9,388,408号に開示されており、これらはその全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。リンカーの他の非限定的例としては、イミドエステル(Imidoesters)、マレイミド(Maleimides)、カルボジイミド(Carbodiimide)、ピリジルジチオール(Pyridyldithiol)、イソシアネート(Isocyanate)、イソペプタグ(Isopeptag)、スパイタグ(SpyTag)、スヌープタグ(SnoopTag)およびSNAPタグ(SNAP-tag)が挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、リンカーは、エピトープおよび薬物の両方が、二成分を結合するための結合部位を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは開裂可能である。いくつかの実施形態では、リンカーは、エピトープおよび薬物の1つまたは両方から開裂可能である。いくつかの実施形態では、リンカーは、開裂可能でない。いくつかの実施形態では、リンカーは、エピトープおよび薬物の1つまたは両方から開裂可能でない。
【0026】
いくつかの実施形態では、遊離システイン残基を、エピトープのC末端において導入する。それから、遊離システインのチオ基を、開裂可能なリンカーと結合する。いくつかの実施形態では、開裂可能なリンカーは、バリン-シトルリンリンカーである。いくつかの実施形態では、バリン-シトルリンリンカーは、薬物(例えば、デュオカルマイシン類似体)とあらかじめ結合している。いくつかの実施形態では、遊離システイン残基を、エピトープのC末端に導入し、該遊離システインのチオ基を、薬物(例えば、デュオカルマイシン類似体)とあらかじめ結合された開裂可能なバリン-シトルリンリンカーと結合する。
【0027】
いくつかの実施形態では、CXPXRの短い配列を、エピトープのC末端に導入する。いくつかの実施形態では、システイン残基を、ホルミルグリシンアルデヒドタグに変換する。いくつかの実施形態では、システイン残基を、ホルミルグリシン生成酵素を用いてホルミルグリシンアルデヒドタグに変換する。いくつかの実施形態では、それから、ホルミルグリシンアルデヒドタグを、非開裂(non-cleavable)結合により薬物-リンカーと結
合する。いくつかの実施形態では、ホルミルグリシンアルデヒドタグを、オキシム化学による非開裂結合により薬物-リンカーと結合する。いくつかの実施形態では、ホルミルグリシンアルデヒドタグを、ピクテ・スペングラー反応による非開裂結合により薬物-リンカーと結合する。いくつかの実施形態では、薬物-リンカー中の薬物は、細胞傷害性試薬である。
【0028】
いくつかの実施形態では、薬物を、BCR/TCR相互作用部位の外側の領域においてエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、薬物を、1つ以上のリジン残基とのBCR/TCR相互作用部位の外側の領域においてエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、薬物を、薬物-リンカーに付加されたN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルとのアミド結合による1つ以上のリジン残基とのBCR/TCR相互作用部位の外側の領域においてエピトープと結合する。
【0029】
いくつかの実施形態では、エピトープを、実施例4および実施例7に記載されているように操作することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の化学的結合部位を、エピトープに導入する。いくつかの実施形態では、1つ以上の化学的結合部位は、非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態では、1つ以上の化学的結合部位は、1つ以上のシス
テイン残基を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、エピトープは、その天然アミノ酸配列であり得る。いくつかの実施形態では、エピトープの天然アミノ酸配列を、修飾してもよい。例えば、エピトープ中のグリコシル化部位(例えば、PLA2Rの細胞外部分をグリコシル化する)は、エピトープの大きさ、体積、および立体配座の複雑さを増大させることができる。PLA2R(配列番号15)の最初の272アミノ酸における潜在的なN結合グリコシル化部位(下線Asn残基)を図20に示し、Dsg1エピトープ(配列番号16)の場合を図31に示し、Dsg3エピトープ(配列番号17)の場合を図32に示している。いくつかの実施形態では、エピトープの大きさ、体積、立体配座の複雑さは、潜在的なグリコシル化部位(例えば、図20中のAsn70およびAsn89において)をGlnまたは自己抗体認識に関してタンパク質構造および/または立体配座に影響を与えないだろう他の非グリコシル化アミノ酸で置換することにより低減することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、グリコシル化される可能性のある残基を、例えば、部位特異的変異誘発を用いて置換することができる。いくつかの実施形態では、グリコシル化される可能性のある残基を、例えば、エピトープを発現する発現ベクターを用いる場合、部位特異的変異誘発を用いて置換することができる。いくつかの実施形態では、エピトープを直接合成することができる。いくつかの実施形態では、エピトープを直接合成する場合、グリコシル化される可能性のある残基が自己抗体認識に関してタンパク質構造および/または立体配座に影響を与えないだろう非グリコシル化残基で置換されるように、ペプチドおよび/またはタンパク質合成をカスタマイズすることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、エピトープにさらなる修飾を行って、例えば、試薬(例えば、薬物)をエピトープに結合させ、細胞表面上の受容体へのエピトープの接近性を向上、および/またはタンパク質発現および産生量を向上させてもよい。例えば、小さい(約2~10アミノ酸)N末端もしくはC末端ペプチドまたは両方を挿入すること、保存的置換および/または非保存的置換すること、および/または1つ以上の異種配列を付加して所望の目的を達成することにより、エピトープを改変してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるエピトープの1つ以上を核酸によりコードする。いくつかの実施形態では、エピトープをコードする核酸は、cDNAまたはmRNAである。いくつかの実施形態では、エピトープをコードする核酸は、タンパク質発現ベクター内に含まれ得る。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、DNAベクターまたはRNAベクターである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、哺乳類細胞発現ベクターである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、昆虫細胞発現ベクターである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクター内に含まれるエピトープをコードする核酸は、調節エレメントと機能可能に連結してエピトープの発現を調節する。
【0034】
調節エレメントは、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、その他を含み得る。本明細書で使用されるとき、「機能可能に連結した」とは、核酸からのタンパク質発現を正または負に制御する調節エレメントを表す。
【0035】
本明細書で提供されるタンパク質発現ベクターの1つ以上、ならびに当業者に公知の他のタンパク質発現ベクターを使用して、本明細書で提供された組成物、方法および/またはキットの1つ以上に組み込むために、本明細書で開示された大量の1つ以上のエピトープならびにそのフラグメントおよび変異体を得ることができる。いくつかの実施形態では、エピトープの変異体は、該エピトープと約70%~約99.99%の同一性を有し得る
。いくつかの実施形態では、エピトープの変異体は、該エピトープと約65、70、57、80、85、90、95、96、97、98、99、99.25、99.5、99.75、99.99%の同一性を有するか、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲を有する値の同一性を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、コードされたエピトープにタグを導入する。いくつかの実施形態では、1つ以上のタグは、エピトープの精製を可能とする。いくつかの実施形態では、タグはN末端にある。いくつかの実施形態では、タグはC末端にある。いくつかの実施形態では、タグは、N末端およびC末端の両方にある。タグの非限定的例としては、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-転移酵素、チオレドキシン、ポリ(NANP)、FLAG、V5、Myc、HA、NE、ビオチン、ビオチンカルボキシルキャリアプロテイン、GFP、Halo、Nus、Fc、AviTag、カルモジュリン、ポリGlu、E、S、SBP、Softag1、Softag3、Strep、TC、VSV、TyおよびXpressが挙げられる。いくつかの実施形態では、タグは、ポリヒスチジン(ポリHis)タグである。
【0037】
いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、エピトープおよびタグ間の開裂部位を付加的に導入して、タグからエピトープの分離を可能とする。いくつかの実施形態では、開裂部位は、タンパク質分解部位である。いくつかの実施形態では、開裂部位は、非タンパク質分解部位である。タンパク質分解部位の非限定的例としては、TEVプロテアーゼ、第Xa因子またはエンテロペプチダーゼの部位が挙げられる。いくつかの実施形態では、タンパク質分解部位は、トロンビン開裂部位である。考えられる他のプロテアーゼおよび非プロテアーゼ開裂部位の非限定的例としては、口蹄疫ウイルス(FMDV)プロテアーゼ、Arg-Cプロテアーゼ、Asp-Nエンテロペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ、高特異性キモトリプシン、低特異性キモトリプシン、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、CNBr、エンテロキナーゼ、第Xa因子、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、LysC、LysN、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、好中球エラスターゼ、ペプシン、プロリン-エンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビン、トリプシン、および当業者に公知の酵素に特異的な他の部位が挙げられる。
【0038】
1つ以上の市販のセルラインを使用してエピトープを発現することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリHisタグエピトープを哺乳類細胞(例えば、HEK293細胞)内で発現し、Ni-アフィニティ精製およびゲルろ過カラムを用いて、細胞培養培地から精製することができる。それから、ポリHisタグをタンパク質消化(例えば、トロンビンを用いて)により除去することができ、エピトープを、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて均一になるまでさらに精製してトロンビン酵素ならびに遊離したポリHisタグを除去する。エピトープの発現および精製を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)を用いてタンパク質抽出物に対して試験することができる(図23および図28)。1つ以上の抗体ならびに/または患者血漿および/もしくは血清を用いて、ウェスタンブロッティング法(図23および図28)により、エピトープ発現も試験することができる。SDS-PAGEゲルを、クマシー染料染色(図23および図28)、銀染色、亜鉛染色、蛍光染料染色、および官能基特異的染色の1つ以上で染色することができる。
【0039】
本明細書で使用されるとき、EDC中の「薬物」を、「治療薬」(図21;上図)または「薬剤」と呼ぶこともできる。薬物としては、1つ以上の疾病の予防および/または治療のために特異的に使用される薬剤が挙げられる。薬物は、細胞分裂阻害薬、細胞傷害性薬、免疫抑制剤、または治療目的のために使用することができるいずれもの薬剤であり得
る。例えば、EDCとTCRとの結合は、薬物による免疫寛容の誘発をもたらし得、EDCのAPCへの内部移行は、APCの死をもたらし得る(図21;下図)。いくつかの実施形態では、免疫寛容は1つ以上の公知の機序により起こる。例えば、薬物は自己免疫B細胞、T細胞または両方により1つ以上のサイトカインの放出を阻害、または自己免疫B細胞、T細胞または両方におけるサイトカインシグナル伝達を阻害する。非限定的例としては、クローン除去、レセプター編集、濾胞除去、および免疫不応答が挙げられる。いくつかの実施形態では、薬物は、自己免疫B細胞によるT細胞への抗原提示を阻害する。いくつかの実施形態では、薬物は、1つ以上のシグナル伝達経路を阻害する。非限定的例としては、IL-6受容体シグナル伝達、NF-κBシグナル伝達、Toll様受容体シグナル伝達、B細胞受容体シグナル伝達、T細胞受容体シグナル伝達、およびインフラマソームシグナル伝達が挙げられる。いくつかの実施形態では、1つ以上のシグナル伝達経路における1つ以上の標的を、薬物により標的としてもよい。非限定的例としては、COX、CCR、ヒスタミン受容体、インターロイキン受容体、gp120/CD4、CXCR、PD-1/PD-L1、MALT、LTR、ROS、NOS、TLR、NADPHオキシダーゼ、およびNrf2が挙げられる。
【0040】
薬物の非限定的例としては、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンB1、デュオカルマイシンB2、デュオカルマイシンC1、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンD、デュオカルマイシンSA、CC-1065、アドゼレシン、ビゼレシン、カルゼルシン、シクロホスファミド、ラパマイシン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エピルビシン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、またはカペシタビン、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、アントラサイクリン系薬剤、オキサリプラチン、またはボルテゾミブが挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、EDCは、細胞死滅のための細菌性毒素と融合した抗体に基づいた標的ドメインである免疫毒素に基づき得る(Alewine, C., et al, The Oncologist, Vol. 20, pp. 176-185, 2015、その全文を参照することにより本明細書に組み入れられる)。免疫毒素に基づいたEDCはタンパク質合成の阻害により細胞を殺すことができ、分裂細胞および非分裂細胞の両方を標的にすることができる。
【0042】
薬物は、検出試薬、例えば、フルオロフォアであり得る。非限定的例としては、FITC、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン、カスケードブルー、パシフィックブルー、パシフィックオレンジ、ルシファーイエロー、NBD、NBD-X、R-フィコエリスリン(PE)、PE-Cy5複合体、PE-Cy7複合体、レッド613(PE-テキサスレッド)、ペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP)、TruRed(PerCP-Cy5.5複合体)、FluorX、フルオレセイン、BODIPY-FL、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、TRITC、X-ローダミン、リサミンローダミンB、テキサスレッド、アロフィコシアニン(APC)、およびAPC-Cy7複合体が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、FACSおよび/または顕微鏡に基づいたアッセイを、EDCにおける薬物として使用することができる小分子のスクリーニングおよび同定のために設計することができる。いくつかの実施形態では、FACSに基づいたアッセイ(実施例1に基づく)を使用して、小分子の1つ以上の市販ライブラリーをスクリーニングし、EDCにおける薬物として使用することができる小分子を同定することができる。いくつかの実施形態では、顕微鏡に基づいたアッセイ(実施例2に基づく)を使用して、小分子の1つ以上の市販ライブラリーをスクリーニングし、EDCにおける薬物として使用することができる小分子を同定することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、薬物は、自己免疫細胞死を誘導することができる化学物質、
試薬、タンパク質またはペプチドの1つ以上であり得る。いくつかの実施形態では、薬物は、アンチセンスRNA、miRNA、siRNAまたはB細胞内の抗体mRNA安定性、ターンオーバー、および/または翻訳に干渉することができるRNAiに関するRNAフラグメントの1つ以上であり得る。いくつかの実施形態では、薬物は細胞傷害性薬物であり、細胞死をもたらすB細胞およびT細胞に対する細胞傷害効果を有する。いくつかの実施形態では、細胞死は、プログラムされた細胞死、アポトーシス、マクロオートファジー、オートファジー、ネクローシス、ネクロトーシス、分裂期細胞死、活性化誘導細胞死、アノイキス、角質化、興奮毒性、フェロトーシス、ウォーラー変性、および免疫原性アポトーシスの1つ以上により起こる。
【0045】
一旦、EDCが記憶B細胞表面上の抗原特異的受容体と結合したならば、タンパク質複合体はエンドサイトーシスにより内部移行し、その後、細胞効果を開始させる結合された薬物が放出される。EDCがヘルパーT細胞表面上の抗原特異的受容体と結合する場合、細胞効果を誘導する。細胞効果の非限定的例としては、細胞増殖停止、細胞死、アポトーシス、オートファジー、免疫寛容などが挙げられる。いくつかの実施形態では、EDCは、APCにより内部移行する。いくつかの実施形態では、APCにより内部移行されたEDCは、該APCがT細胞に抗原を提示するのを阻害する。
【0046】
EDCおよびBCR/TCR間の相互作用は、「親和性」の観点で表すことができ、その受容体に対する単一EDCの結合強度として定義することができる。親和性は平衡解離定数(K)として表され、その受容体に対するEDCの結合速度および受容体からのEDCの解離速度間に平衡が存在する濃度である。より小さいK値は、より高い親和性を意味し、その逆もまた同様である。
【0047】
いくつかの実施形態では、BCRおよびTCRに対するEDCの親和性は、約10-7~約10-13の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、親和性は、約10-4~約10-10の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、親和性は、約10-9~約10-15の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、親和性は、約10-4~約10-10の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、親和性は、約10-3、10-4、10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、10-14、10-15、10-16、10-17、もしくは10-18、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内の値である。
【0048】
いくつかの実施形態では、1つより多いEDCを、組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、1つより多いEDCを使用することができ、この場合、自己免疫細胞に対する増強された効果が観察される。この増強は、付加的または相乗的であり得る。相乗効果は、付加効果より大きい。増強が、異なるEDCの個々の効果の合計と同じである場合、付加効果が観察される。増強が、異なるEDCの個々の効果の合計より大きい場合、相乗効果が観察される。相乗効果、付加効果または両方は、ヒト患者、非ヒト患者、非患者ヒトボランティア、インビボモデル、エキソビボモデル、インビトロモデルなどで起こり得る。増強は、約<1~約100倍の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、相乗効果は、約3倍~約30倍である。いくつかの実施形態では、増強は、<1、1、>1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍の範囲であり、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内である。
【0049】
BCRおよびTCRに対するエピトープの特異性のおかげで、EDCは、正常な免疫細胞の機能に影響を及ぼすことなく、病原自己免疫細胞(例えば、抗原特異的B細胞およびT細胞)のみを特異的に標的とする。したがって、本開示によるプラットフォームは、全く副作用なく/最小限の副作用で、または重大な副作用なく、病原自己免疫細胞の特異的
レパートリーのみを標的とする。したがって、疾病の進行および再発は軽減され、長続きする保護効果をもたらす。
【0050】
EDCは、いずれもの分子サイズ範囲であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、大きさは、約2.5kDa~約75kDaの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、大きさは、約50kDa~約500kDaの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、大きさは、約250kDa~約2500kDaの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、大きさは、約2.5、5、10、25、50、100、250、500、750、1000、1250、1500、1750、2000、2250、もしくは2500kDa、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内の値であり得る。
【0051】
図22は、末梢リンパ節に存在する記憶B細胞へのEDCの送達の模式図を示す。患者にEDCを効率的に送達し、記憶B細胞へEDCを最大限に接近させるために、本開示によるEDCを、約14kDa~約70kDaの分子範囲で設計する。EDCの分子の大きさが約14kDa~約70kDaの範囲内である場合、皮下および/または皮内経路により投与する場合、EDCを輸入リンパ管に直接流すことができる。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、EDCの大きさは、約14kDa~約70kDaの範囲である。いくつかの好ましい実施形態では、EDCの大きさは、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75kDa、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内の値である。
【0052】
皮下および/または皮内経路により送達する場合、約14kDa~約70kDaの大きさの範囲のEDCは、輸入リンパ管に直接流れる(図22)。したがって、いくつかのより好ましい実施形態では、約14kDa~約70kDaの大きさの範囲のEDCの投与経路は、皮下、皮内または両方であり、輸入リンパ管にEDCを直接送達する。
【0053】
皮下および/または皮内経路により送達する場合、約14kDa~約70kDaの大きさの範囲のEDCは輸入リンパ管に直接流れ、抗原提示細胞の助けなしで直接リンパ節において記憶B細胞と遭遇して結合する(図22)。したがって、いくつかのより好ましい実施形態では、約14kDa~約70kDaの大きさの範囲のEDCの投与経路は、皮下、皮内または両方であり、輸入リンパ管にEDCを直接送達し、抗原提示細胞の助けなしでリンパ節において直接記憶B細胞にEDCを送達する。
【0054】
いくつかの好ましい実施形態では、約14kDa~約70kDaの分子量範囲内のEDCを、リンパ節に迅速に流し、皮下および/または皮内経路により送達する場合、抗原特異的記憶B細胞(およびT細胞)を標的とする。しかしながら、EDCを、必要に応じて、全ての可能な送達経路により患者に送達することができる。例えば、いくつかの実施形態では、局所、非経口、関節内(intrarticular)、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、
腔内(intracavitary)、腔内(intracelial)、小脳内(intracelebellar)、脳室内、
結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、筋肉内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、関節滑液嚢内、くも膜下腔内、胸腔内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、腟、直腸、口腔、舌下、鼻腔内、または経皮経路の1つ以上によるEDC投与が考えられる。
【0055】
いくつかの患者では、自己抗体の循環レベルは高く、例えば、活動性自己免疫疾患患者ではそうである。活動性疾病の間、自己抗体は、患者の血液循環中に存在し、患者は疾病の影響を経験している。循環している自己抗体は、特に、静脈内投与する場合、EDCにおけるエピトープとの結合によりEDCの効果を中和することができる。加えて、自己抗体は、EDCとの免疫複合体を形成し、望ましくない副作用をもたらし得る。したがって、いくつかの実施形態では、特に活動性病態中および/または自己抗体の高いレベルが対
象の血液循環中に存在する場合、好ましい投与経路は、皮下、皮内、または経口の1つ以上である。このような患者では、送達の皮下および/または皮内経路は、自己抗体によるEDC中和の機会を最小限にし、リンパ組織および/または器官において記憶B細胞(およびT細胞)にEDCが達する機会を最大にする(図22)。一旦、活動性病期が過ぎ、患者が低レベルの血液循環抗体の寛解状態でなったならば、皮内および/または皮下経路によるEDCの投与に加えて、患者に静脈内経路によりEDCを与えて末梢を循環している自己免疫細胞を標的にすることができる。
【0056】
しかしながら、いくつかの実施形態では、経路の組合せによりEDCを投与することは必要で有り得る(例えば、尋常性天疱瘡)。このような患者では、患者の血液循環中に自己抗体の滴定量を減らした後に、EDCを送達する。例えば、患者の血液循環中に自己抗体の滴定量を減らした後に、皮内、皮下および静脈内経路の組合せアプローチでEDCを送達することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、循環自己抗体レベルが再利用、分解、または両方によって抗体の半減期に対して自然に減少し、その後、EDCを投与するまで、患者の活動性疾病を代替療法により治療する。患者の活動性疾病を代替療法により治療している状況では、皮内、皮下、経口、または静脈内経路の1つ以上によりEDCを投与してもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、代替療法を投与されて寛解している患者に、EDCを送達することができる。このような状況では、EDCを投与して病原記憶B細胞およびT細胞の長引く集団を排除し、したがって、潜在的な将来の疾病の再発を阻止することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示による薬物開発プラットフォームを使用して、いずれものT細胞およびB細胞媒介性自己免疫疾患を診断、予防および/または効果的に治療することができる。いくつかの実施形態では、本開示による薬物開発プラットフォームを使用して、これに限定されないが、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性じん麻疹、軸索型&神経型ニューロパチー(AMAN)、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、類天疱瘡、キャッスルマン病(CD)、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状ループス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎(EoE)、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合性クリオグロブリン血症、エバンス症候群、線維筋痛症、線維化肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発性血管炎を伴う肉芽腫症、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、妊娠性疱疹または妊娠性類天疱瘡(PG)、低ガンマグロブリン血症(Hypogammalglobulinemia)、IgA腎症、IgG4関連硬化疾患、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、封入体筋炎(IBM)、間質性膀胱炎(IC)、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎(JM)、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA病(LAD)、ループス、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、混合性結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼球瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ(PR)、PANDAS、傍腫瘍性小脳変性症(PCD)、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、毛様体扁平部炎(
末梢性ぶどう膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群(Parsonnage-Turner syndrome)、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血(PA)、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多発内分泌腺症候群I、II、III型、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆(PRCA)、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発性軟骨炎、下肢静止不能症候群(RLS)、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子&精巣自己免疫病、全身硬直症候群(SPS)、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎(SO)、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トローザ・ハント症候群(THS)、横断性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎(UC)、未分化結合織疾患(UCTD)、ぶどう膜炎、血管炎、白斑症、ウェゲナー肉芽腫症(または多発性血管炎を伴う肉芽腫症(GPA))を含むいずれもの抗原特異的自己免疫疾患を診断、予防および/または効果的に治療することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、他の免疫疾患の診断、予防および/または治療は、1つ以上の免疫細胞の機能が歪み必ずしも自己免疫疾患でない免疫系疾患をもたらすものを含むと考えられる。したがって、本明細書における薬物開発プラットフォームを使用して、自己免疫疾患でない疾病を診断、予防および/または効果的に治療することもできる。好ましい実施形態では、ヒト自己免疫疾患をプラットフォームにより標的とする。いくつかの実施形態では、非ヒトの自己免疫疾患を標的とする。非ヒトの非限定的例としては、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、モルモット、サル、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、およびシマウマが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヒトおよび非ヒトにおける非自己免疫疾患である免疫系疾患を、本開示のプラットフォームにより標的とする。
【0061】
いくつかの実施形態では、患者は、約1か月~約5年間自己免疫疾患を有していた。いくつかの実施形態では、患者は、約1、2、3もしくは4週間、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内、または2,3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月間、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内、または2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10年間、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内、自己免疫疾患を有していた。
【0062】
いくつかの実施形態では、患者は、以前に、自己免疫疾患に対する治療を受けていなかった。いくつかの実施形態では、患者は、以前に、自己免疫疾患に対する治療(免疫抑制剤もしくはステロイドホルモンまたは両方のいずれか)を受けた。いくつかの実施形態では、患者は、以前に自己免疫疾患に対する免疫抑制剤もしくはステロイドホルモンまたは両方のいずれかを用いた治療に成功した。いくつかの実施形態では、患者は、以前に自己免疫疾患に対する免疫抑制剤もしくはステロイドホルモンまたは両方のいずれかを用いた治療に成功したが、自己免疫疾患は再発した。いくつかの実施形態では、患者は、以前に自己免疫疾患に対する免疫抑制剤もしくはステロイドホルモンまたは両方のいずれかを用いた治療に成功しなかった。
【0063】
患者の年齢は、約20歳~約95歳の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、患者の年齢は、約5歳~約70歳の範囲である。いくつかの実施形態では、患者の年齢は、5歳未満である。いくつかの実施形態では、患者の年齢は、70歳より上である。いくつかの実施形態では、患者の年齢は、約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90もしくは95歳、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内である。いくつかの実施形態では、患者は男性である。いくつかの実施形態では、患者は女性である。
【0064】
いくつかの実施形態では、EDCを、組成物の形態で提供する。いくつかの実施形態では、EDC組成物を、本明細書中の1つ以上の投与経路による送達のために製剤することができる。組成物は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および指定レシピエントの血液と等張の処方物を与える溶質を含有することができる水性および非水性で等張性滅菌注射液剤、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含むことができる水性および非水性滅菌懸濁剤であり得るが、これに限定されない。
【0065】
組成物を、アンプルおよびバイアルなどの単回用量または反復用量のシール容器で提供することができる。注射液剤および懸濁剤を、滅菌散剤、顆粒剤、カプセル剤および錠剤の1つ以上から調製することができる。エアロゾルまたはネブライザーによる送達および皮膚用パッチ剤による送達などの他の非限定的組成物も考えられる。いくつかの実施形態では、組成物の有効性を、ヒト患者、非ヒト患者、または両方に投与する前に、非患者ヒトボランティア、インビボモデル、エクスビボモデル、インビトロモデルで試験してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、EDCを、毎日、毎週、隔週または毎月投与する。いくつかの実施形態では、EDCを、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回または1日8回投与する。
【0067】
いくつかの実施形態では、EDCを用いた治療期間は、約2週間~約4か月の範囲である。いくつかの実施形態では、疾病の重度に応じて、EDCを用いた治療期間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24週間、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内である。
【0068】
いくつかの実施形態では、治療の治療有効性は、患者の循環する自己抗体レベルおよび/またはエピトープ特異的免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)数により決定したとき、約80%~約95%の範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効性は、患者の循環する自己抗体レベルおよび/またはエピトープ特異的免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)数により決定したとき、約70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100%、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内である。
【0069】
いくつかの実施形態では、EDC組成物の体積は、約0.1ml~約10mlの範囲である。いくつかの実施形態では、EDC組成物の体積は、約0.05ml~約100mlの範囲である。いくつかの実施形態では、EDC組成物の体積は、約0.005、0.0075、0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、100、もしくは150ml、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内である。
【0070】
いくつかの実施形態では、例えば、BCRおよびTCRに対するEDCの非常に高い親和性および特異性、ならびに体内の比較的近接不能な位置への接近性によって、EDC中の薬物を単独で投与する場合と比較して、より低いEDC中の薬物用量で自己免疫疾患の効果的治療を行うことができる。加えて、いくつかの実施形態では、EDCを用いた必要な治療期間は、EDC中の薬物を単独で投与する場合と比較してより短い。例えば、いくつかの実施形態では、EDC中の薬物が抗がん/抗腫瘍薬物である場合、EDCの開始用量は、EDC中の薬物を固形腫瘍治療のために使用する用量の約10分の1である。
【0071】
EDCは末梢血液循環中のBCRおよび末梢リンパ組織/器官に、よりよく到達するの
で、EDCの形態の薬物の開始用量は、薬物の用量が単独であるよりも、より低くあり得る(例えば、体内の比較的近接不能な位置における腫瘍/がんのため)。例えば、EDCの形態の薬物の開始用量は、EDC中の薬物を疾病の治療のために使用する用量の約5分の1、10分の1、15分の1、20分の1、25分の1、30分の1、35分の1、40分の1、45分の1、50分の1、55分の1、60分の1、65分の1、70分の1、75分の1、80分の1、85分の1、90分の1、95分の1、100分の1、200分の1、250分の1、500分の1、1000分の1、2000分の1もしくは5000分の1、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つ以上のEDCによる治療選択肢は、免疫抑制剤および/またはステロイド剤を用いた治療と比較して、即効性であり、より低い用量のみ必要とし、最小限の副作用しかない。
【0073】
いくつかの実施形態では、EDCの単回用量は、約0.001mg/kg~約5mg/kgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、EDCの単回用量は、約0.01mg/kg~約50mg/kgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、B細胞を標的とするためのEDCの単回用量は、約0.001mg/kg~約50mg/kgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、T細胞を標的とするためのEDCの単回用量は、約0.001mg/kg~約50mg/kgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、EDCの単回用量は、約0.001、0.01、0.1、0.5、1、2.5、5、7.5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50mg/kg、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内の値であり得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、EDCを単回1日の用量として投与する。いくつかの実施形態では、EDCを1日当たり1回より多い用量として投与する。いくつかの実施形態では、1日当たりの用量回数は、1回~6回の範囲である。いくつかの実施形態では、1日当たりの用量回数は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回である。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書中のEDCを使用して、血漿交換療法、アフェレシス療法、および白血球除去療法中において、循環自己免疫細胞を除去および/または排除することができる。
【0076】
診断および治療後患者モニタリング
疾病診断および治療後疾病進行のモニタリングは、患者治療選択肢、治療に対する患者応答、および患者疾病管理の確認にとって欠かせない。
【0077】
いくつかの実施形態では、診断および疾病進行の治療後患者モニタリングを、痛みのある侵襲的な方法を用いて行う。例えば、膜性腎症(MN)進行の診断および治療後患者モニタリングは、侵襲的であり、重度の腎臓の出血および多くの他の副作用を引き起こし得る腎臓の生検に完全に依存している。
【0078】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患の非侵襲的および/または最小限の侵襲的な診断および治療後モニタリングのためのEDCを本明細書において提供する。
【0079】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患の非侵襲的および/または最小限の侵襲的な診断および治療後モニタリングのためのEDCは、本明細書で提供される1つ以上のエピトープを含む。エピトープは、溶液もしくは基材上に固定化、または両方であり得る。基材は、カラム、ビーズ、マイクロスフィア、診断および治療後モニタリング用アッセイに有用であることが公知の試験ストリップまたはマルチウェルプレートなどの様々な基材のいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患の診断および治療後モニタ
リングは、1つ以上のアッセイによる。いくつかの実施形態では、アッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、FACS、エリスポット法(Enzyme-Linked ImmunoSpot)(ELISPOT)、放射免疫アッセイ、磁性免疫アッセイなどの免疫アッセイの1つ以上であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つ以上のエピトープを、標準的手順を用いて基材(例えば、ELISAプレート)に結合することができる。患者サンプル(例えば、血液、血清および/または血漿)を、標準的な臨床的な処置によって、病院への訪問中に採取することができる。患者サンプルを、適切なコントロールサンプルと共に、異なる希釈(例えば、10分の1、100分の1、1000分の1、その他)でELISAプレートに添加することができる。標準的インキュベーション後、ELISAプレートを、標準的プレートリーダーを用いて読むことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、コントロールサンプルと比較して患者サンプルにおいて抗エピトープ自己抗体の検出可能な増加がある。いくつかの実施形態では、コントロールサンプルと比較した抗エピトープ自己抗体の少なくとも10%の検出可能な増加は、患者における自己免疫疾患の存在を示す。いくつかの実施形態では、患者サンプルにおける抗エピトープ自己抗体の検出可能な増加は、コントロールサンプルと比較して10%より大きい。いくつかの実施形態では、患者サンプルにおける抗エピトープ自己抗体の検出可能な増加は、コントロールサンプルと比較して約5%~約15%の範囲である。いくつかの実施形態では、患者サンプルにおける抗エピトープ自己抗体の検出可能な増加は、コントロールサンプルと比較して約1、2.5、5、7.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100%、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内である。
【0082】
いくつかの実施形態では、コントロールサンプルと比較して、患者サンプルにおける抗エピトープ自己抗体の検出可能な増加がある。患者サンプルにおける抗エピトープ自己抗体の増加は、本明細書で提供される組成物、方法および/または診断用キットの1つ以上を用いて検出可能である。本明細書で使用されるとき、「コントロールサンプル」というのは、抗エピトープ自己抗体の正常レベルの代表となるサンプル、または自己免疫疾患がないと分かっている対象から得られたサンプルのいずれかを言う。
【0083】
いくつかの実施形態では、患者サンプルは、例えば、体液(例えば、血液、血漿、血清、尿、脳脊髄液、およびリンパ液の1つ以上)、自己免疫疾患にかかった組織および/または臓器の生検サンプルであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、MN患者において腎生検を行ってもよい。いくつかの実施形態では、尋常性天疱瘡患者において粘膜皮膚病変の生検を行ってもよい。
【0084】
自己免疫疾患の診断および治療後モニタリングのための顕微鏡によるアッセイは、患者の血液サンプルを得ることを含み得る。本明細書中の1つ以上のEDCを用いて、血液サンプルをそのまま分析することができ、または細胞(例えば、全B細胞または全T細胞)の1つ以上の特定集団を、患者の自己免疫細胞の存在を診断する前に、当技術分野で公知の1つ以上の細胞精製技術(例えば、FACS)を用いて単離してもよい。例えば、本明細書中の1つ以上のEDCを使用して、患者サンプルにおける自己抗体産生B細胞の存在を検出することができる(実施例5:図24および実施例8:図29)。本明細書中の1つ以上のEDCを、患者における自己抗体レベルの検出のために使用することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、アッセイを、患者における自己免疫疾患の状態および/または本明細書で提供される治療選択肢の1つ以上に対する応答性をモニタリングするようにもできる。例えば、血液、血清および/または血漿サンプルを、第一時点において患者か
ら採取することができる。第一時点は、診療所への患者の最初の訪問であり得、患者は自己免疫疾患と診断されておらず、以前に自己免疫疾患の治療をした経験がない。
【0086】
いくつかの実施形態では、第一時点は、患者が以前に他の形態の治療を経験している、本明細書で提供される1つ以上の治療選択肢の開始前であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つ以上の治療選択肢の開始後、第二時点ならびにさらにその後の時点において患者から血液、血清および/または血漿サンプルを採取することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、患者サンプルにおける抗エピトープ自己抗体産生B細胞の量を、様々な時点において比較することができる。いくつかの実施形態では、第一時点と比較して、第二および/またはその後の時点における患者サンプルの自己抗体産生B細胞量の減少は、疾病の寛解を示している。いくつかの実施形態では、第一時点と比較して、第二および/またはその後の時点における患者サンプルの自己抗体産生B細胞量の減少は、自己抗体産生B細胞の排除および疾病の100%治療を示している。いくつかの実施形態では、自己免疫細胞の排除および疾病の寛解は、約50%~100%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、自己免疫細胞の排除および疾病の寛解は、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%である。いくつかの実施形態では、自己免疫細胞の排除は、1回のみの治療後100%である。いくつかの実施形態では、自己免疫細胞の排除は1回の治療後では低く(例えば、50%未満)、追加の1回以上の治療を提供して自己免疫細胞を排除してもよく、および/または患者に1つ以上の追加の治療を行ってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、EDCの有効性を、患者にEDCを投与する前に、患者サンプルを用いてインビトロで試験をしてもよい。例えば、EDCの有効性を、患者末梢血液単核細胞(PBMC)からの単離B細胞に対して試験する(図25:実施例6および図30:実施例9)。細胞傷害性薬物を含むEDCへのサンプルの暴露前に、フルオロフォア(例えば、FITC)を含むEDCを使用して患者サンプル(図25の左図(MN患者サンプル)および図30(尋常性天疱瘡患者サンプル))における自己抗体産生B細胞の存在を検出する。それから、患者サンプルを、細胞傷害性薬物(例えば、MMAE)を含むEDCで処理する。それから、フルオロフォアを含むEDCを使用して、患者サンプル(図25中の中央図(MN患者サンプル)および図30(尋常性天疱瘡患者サンプル))の自己抗体産生B細胞の細胞傷害性薬物を含むEDCの有効性を決定する。
【0089】
いくつかの実施形態では、患者自己抗体産生B細胞の排除における細胞傷害性薬物を含むEDCの有効性は100%である(図25中の中央図(MN患者サンプル)および図30(尋常性天疱瘡患者サンプル))。いくつかの実施形態では、有効性は、約50%~100%の範囲である。いくつかの実施形態では、有効性は、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%である。いくつかの実施形態では、1回目の治療後の有効性は100%でなく、追加の1回以上の治療を行うことができ、有効性の再評価を治療の各回後に行うことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、フルオロフォアを含む1つ以上のEDCを診断ツールとして使用し、患者のエピトープ特異的細胞数を決定する。例えば、図24は、MN患者の末梢血液循環における自己免疫B細胞の存在を決定するための診断ツールとして、PLA2RエピトープおよびFITCによるEDCの使用を示す。図29は、PV患者の末梢血液循環における自己免疫B細胞の存在を決定するための診断ツールとして、DsgエピトープおよびFITCによるEDCの使用を示す。
【0091】
いくつかの実施形態では、フルオロフォアを含む1つ以上のEDCを診断ツールとして
使用し、第一時点における患者のエピトープ特異的自己免疫細胞数を決定する。第一時点における患者のエピトープ特異的自己免疫細胞数が所定の閾値(患者が疾病のための1つ以上の治療を必要とすることを示す)より上である場合、単独または1つ以上の補助療法と併用のいずれかで薬物を含む1つ以上のEDCを患者に投与する。エピトープ特異的自己免疫細胞数を、フルオロフォアを含む1つ以上のEDCを用いて第二時点において再評価する。第二時点におけるエピトープ特異的自己免疫細胞数が所定の閾値未満である場合、治療を中断する。第二時点におけるエピトープ特異的自己免疫細胞数が所定の閾値より上である場合、治療を継続し、その後評価を行う。
【0092】
患者の自己免疫細胞の存在を、血液、他の生体液、ならびに組織および臓器生検(例えば、手術中に採取する)で検出することができる。EDCを使用して、エピトープと結合することができるいずれもの細胞集団(例えば、B細胞、T細胞、PBMC中の他の細胞、および他の生体液中の細胞)を検出することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書中のプラットフォームを、いずれものペプチド、タンパク質ドメイン、小分子、および他のリガンド(例えば、特異的受容体と結合するリガンドドメインまたはペプチドドメイン)に適合することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、患者の自己抗体産生B細胞数/レベルを、標準的自動コンピュータプログラムを用いて算出することができる。いくつかの実施形態では、自己抗体産生B細胞レベルを、本明細書で提供される1つ以上の治療選択肢での治療の前後で比較することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つ以上のエピトープを大量に製造、精製することができ、標準的商用グレードのELISAプレートを製造し、臨床検査室における診断および治療後患者モニタリングのためのルーチン手順として使用することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、アッセイは、非侵襲的および/または最小限の侵襲的、簡単、時間効率が良く、対費用効果が高く、臨床検査室でルーチン的に行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、MN患者に対して使用するとき、侵襲的腎生検の必要なしに、アッセイを行うことができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、PLA2Rエピトープ特異的ELISAアッセイを、MN治療のために小分子をスクリーニングおよび同定するように設計することができる。例えば、いくつかの実施形態では、PLA2R自己抗体とPLA2Rとの結合を特異的に阻害する小分子を同定することができる。例えば、本明細書で提供されるELISAプレートの実施形態を使用して、小分子の1つ以上の市販ライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、この小分子の1つ以上の市販ライブラリーは、代謝産物(例えば、アルカロイド、グリコシドおよび脂質)、ペプチド、天然フェノール類(例えば、フラボノイド類)、ポリケチド類、テルペン類、ステロイドおよびテトラピロール類を含み得るが、これに限定されない。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物および/または方法のいずれかを、1つ以上のキットとして提供する。キットは、1つ以上のポリペプチド、抗体、プローブおよび/または本明細書に記載されている他のアッセイ試薬を備え得る。キットは、アッセイ試薬を結合または固定し得る固形担体を備えることができる。試薬を、必要に応じて、検出可能なマーカーで標識化することができる。キットは、ポリペプチド、抗体、プローブおよび/または本明細書に記載されている他の試薬を収容、貯蔵および/または運搬するための1つ以上の容器をさらに備えることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、エピトープ特異的免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)を特異的に標的とし排除する組成物、方法、および/またはキットを提供する。いくつかの実施形態では、1つ以上の患者を、本明細書で提供される組成物、方法、および/またはキットを用いて選択し治療して、患者のエピトープ認識免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)を特異的に標的とし排除する。
【0100】
膜性腎症(MN)
膜性腎症(MN)(原発性MNまたは特発性MNとも呼ぶ)は、一般的糸球体疾患である。MNの罹患率は40歳を超えた患者で高い。頻繁な疾病の再発は、臨床治療の大きな課題である。高用量のステロイドホルモンおよび免疫抑制剤を使用すること以外に効果的な治療はなく、患者は現在の治療では5~10年で腎不全に進行する。米国では4,000~6,000件の新たな症例/年があり、欧州では10,000件の新たな症例/年があり、世界では80,000件の新たな症例/年がある。
【0101】
MNは,自己免疫糸球体疾患である。MNの疾病を引き起こす機序は、自己抗体産生B細胞により生じた循環自己免疫抗体(自己抗体)の腎有足細胞表面上の膜受容体、ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)との結合が原因であることが最近特定された。70%を超える患者が、抗PLA2R自己抗体による原因である。MNはしばしば再発して、5~10年で腎不全をもたらす。
【0102】
MNに対する現在の臨床治療は、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、リツキシマブ、クロラムブシル、タクロリムス、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル)またはステロイドホルモン(例えば、コルチコステロイド)のいずれかを使用する。しかしながら、これらの治療選択肢の両方とも、非特異的であり、重大な副作用を生じる。これらの治療の容量を減らした場合、しばしば疾病の再発が起こる。さらに、多くの患者では、これらの治療は効果的でない。したがって、まだ、有害な副作用のないMNに対する特異的治療に対する強いニーズがある。
【0103】
MNの疾病を引き起こす機序は、腎有足細胞表面上のPLA2Rと結合する循環自己抗体が原因であると最近特定された。加えて、CTLD6およびCTLD7間のリンカー領域中のC型レクチン様ドメイン1(CTLD1)およびG1106S中における多型M292Vand H300Dが、患者のMNの発生と相関があり得る(Kao, L., et al.)
【0104】
MN患者の血漿中の抗体レベルは、疾病の重度および治療に対する患者の応答と直接相関する。したがって、有害な副作用を同時に回避しながら疾病を治療するように患者から自己抗体産生B細胞を取り除くニーズがある。
【0105】
PLA2Rは、約180~185kDaの分子量を有する大きな内在性膜タンパク質である(配列番号14)。マンノース受容体によるPLA2Rの提案された形態を、図1に示す。PLA2Rは、リガンド、単一膜貫通ドメインおよび短い細胞質末端鎖と相互作用する大きなグリコシル化細胞外部分を含む(図1)。この大きな細胞外部分は、さらに10ドメイン:縦一列になった、システインリッチドメイン(CysR)、フィブロネクチン様II型ドメイン(FnII)、および8つの反復C型レクチン様ドメイン(CTLD)に分割することができる(図1)。
【0106】
図1は、PLA2Rの様々なドメイン(矢印で示している)の境界を画定するアミノ酸の位置を示す。ドメインのいくつかのアミノ酸配列を、配列番号7~配列番号12(図12図17)に示す。MN患者における自己抗体により認識されるPLA2Rエピトープ
(配列番号13)は、受容体の細胞外部分に位置し、立体配座であり、還元されやすく、自己抗体に対する非常に高い親和性を有する。
【0107】
しかしながら、単独で発現された場合、PLA2Rエピトープ(図18:配列番号13)は、正しい立体配座に適切にフォールディングしない。最初の2つのドメインを含むことで、抗原の適切な立体配座へのフォールディングを可能とする。完全長PLA2Rタンパク質(図19:配列番号14)は、生化学的に安定でないので、大規模で発現、精製をすることができない。しかしながら、ドメイン1~3ドメインおよびドメイン1~6までは、大量のタンパク質を発現して得るのに適している。ドメイン1~5は最適なタンパク質発現を与える。例えば、適切にフォールディングされた立体配座を、配列番号9で示した配列を用いることにより得ることができる。
【0108】
MN患者における抗PLA2R自己抗体の産生は、PLA2Rのエピトープを認識する特定のBCRを運搬する特定のB細胞集団の活性化および増殖による。同じPLA2Rエピトープに対して特異的なT細胞受容体を運搬する特定のヘルパーT細胞集団に関与された場合に、特定のB細胞集団が活性化される。これらの特定のB細胞およびT細胞は、B細胞およびT細胞の全レパートリーのほんのわずかのみを提示する。
【0109】
B細胞およびT細胞の標的化によるMN治療
患者からの抗PLA2R自己抗体の除去は、自己抗体の病理学的影響を軽減し得る。しかしながら、患者からの自己抗体の除去は、依然として患者は疾病再発しやすいままである。これは、PLA2R自己抗体産生B細胞が、患者血液から病原自己抗体を除去したにもかかわらず、自己抗体を産生し続けているからである。したがって、PLA2Rエピトープ認識免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)の特異的な標的化は、他の免疫細胞の正常な機能に影響を及ぼすことなく、病原性自己抗体の産生を排除することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、組成物、方法、および/またはキットは、PLA2Rエピトープ認識免疫細胞を特異的に標的とし排除する。いくつかの実施形態では、組成物、方法、および/またはキットは、PLA2Rエピトープ認識B細胞を特異的に標的とし排除する。いくつかの実施形態では、組成物、方法、および/またはキットは、PLA2Rエピトープ認識T細胞を特異的に標的とし排除する。いくつかの実施形態では、組成物、方法、および/またはキットは、PLA2Rエピトープ認識B細胞およびT細胞を特異的に標的とし排除する。いくつかの実施形態では、EDCは、本明細書で提供される1つ以上のPLA2Rフラグメント、リンカーおよび薬物を含む。
【0111】
MNに対する現在の治療は非特異的であり、重大な副作用および頻繁な疾病再発がある。MNに対する本明細書中のEDCは特異的であり、最小限の副作用しかなく/全く副作用がなく、疾病再発を排除する。
【0112】
患者は、少なくとも1つのMN臨床症状を示す。MNの症状としては、ネフローゼ症候群、浮腫(身体のいずれかの領域に腫脹)、タンパク尿、尿の泡沫の出現(大量のタンパク質が原因)、排尿(夜、過剰に)、疲労、食欲不振および体重増加の1つ以上が挙げられる。
【0113】
いくつかの実施形態では、患者は、約1か月~約5年MNを有している。いくつかの実施形態では、患者は、約1、2、3もしくは4週、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月、または2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10年、または前述の値のいずれか2つにより規定された範囲内、MNを有している。
【0114】
いくつかの実施形態では、患者は、以前にMNのための治療を全く受けていない。いく
つかの実施形態では、患者は、以前に、MNに対する治療(免疫抑制剤もしくはステロイドホルモンまたは両方のいずれか)を受けた。いくつかの実施形態では、患者は、以前に、免疫抑制剤もしくはステロイドホルモンまたは両方のいずれかを用いたMNに対する治療に成功した。いくつかの実施形態では、患者は、以前に、免疫抑制剤もしくはステロイドホルモンまたは両方のいずれかを用いたMNに対する治療に成功しなかった。
【0115】
いくつかの実施形態では、患者を腎生検に付し、患者がMNであることを確認してもよい。いくつかの実施形態では、コントロールサンプルと比較して、患者サンプルにおいて抗PLA2R自己抗体の検出可能な増加がたとえあったとしても、患者を腎生検に付す。いくつかの実施形態では、コントロールサンプルと比較して、患者サンプルにおいて抗PLA2Rの検出可能な増加がある場合、患者を腎生検に付さない。
【0116】
完全長PLA2R(図19:配列番号14)は精製するのが難しく、したがって、臨床背景での応用は限られている。したがって、いくつかの実施形態では、患者サンプルからの自己抗体産生B細胞の除去のための組成物、方法、および/またはキットは、完全長PLA2Rの精製されたフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、フラグメントは、CysR、FnIIおよび1つ以上のCTLDを含む(図2)。
【0117】
いくつかの実施形態では、フラグメントは、少なくともPLA2Rのドメイン1~5を含む。いくつかの実施形態では、フラグメントの配列は、配列番号1(約658アミノ酸長)において定められた通りである(図6)。いくつかの実施形態では、フラグメントの配列は、配列番号2で定められた通りである。いくつかの実施形態では、フラグメントの配列は、配列番号2(図7)で定められた通りであり、配列番号3(図8)に定められた配列の約5%~約95%である。いくつかの実施形態では、フラグメントの配列は、配列番号2(図7)で定められた通りであり、配列番号3(図8)に定められた配列の約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95%である。
【0118】
いくつかの実施形態では、フラグメントの配列は、配列番号4(約805アミノ酸長)において定められた通りである(図9)。いくつかの実施形態では、フラグメントの配列は、配列番号5(図10)で定められた通りである。いくつかの実施形態では、フラグメントの配列は、配列番号5(図10)で定められた通りであり、配列番号6(図11)に定められた配列の約5%~約95%である。いくつかの実施形態では、フラグメントの配列は、配列番号5で定められた通りであり、配列番号6(図11)に定められた配列の約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95%である。
【0119】
いくつかの実施形態では、組成、方法、および/またはキットは、PLA2Rエピトープ認識免疫細胞を特異的に標的とし排除し、1つ以上の薬物(EDC)のキャリアとして本明細書で提供されるPLA2Rの1つ以上のフラグメントを含む(図4)。PLA2Rフラグメントは、特定のB細胞および患者の抗PLA2R自己抗体産生に関与している対応するヘルパーT細胞に対して、薬物を特異的に標的化するだろう。EDCは、表面B細胞およびT細胞上の特定の受容体と結合し、エンドサイトーシスにより細胞に侵入することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、遊離システイン残基を、PLA2RフラグメントのC末端において導入する。それから、遊離システインのチオ基を、開裂可能なリンカーと結合する。いくつかの実施形態では、開裂可能なリンカーは、バリン-シトルリンリンカーである。いくつかの実施形態では、バリン-シトルリンリンカーは、薬物とあらかじめ結合している。いくつかの実施形態では、薬物は、デュオカルマイシン類似体である。いくつかの
実施形態では、遊離システイン残基を、PLA2RフラグメントのC末端に導入し、該遊離システインのチオ基を、デュオカルマイシン類似体とあらかじめ結合された開裂可能なバリン-シトルリンリンカーと結合する。
【0121】
いくつかの実施形態では、CXPXRの短い配列を、PLA2RフラグメントのC末端に導入する。いくつかの実施形態では、システイン残基を、ホルミルグリシンアルデヒドタグに変換する。いくつかの実施形態では、ホルミルグリシン生成酵素を用いてホルミルグリシンアルデヒドタグに変換する。いくつかの実施形態では、それから、ホルミルグリシンアルデヒドタグを、非開裂結合により薬物-リンカーと結合する。いくつかの実施形態では、ホルミルグリシンアルデヒドタグを、オキシム化学による非開裂結合により薬物-リンカーと結合する。いくつかの実施形態では、ホルミルグリシンアルデヒドタグを、ピクテ・スペングラー反応による非開裂結合により薬物-リンカーと結合する。いくつかの実施形態では、薬物-リンカー中の薬物は、細胞傷害性試薬である。
【0122】
いくつかの実施形態では、薬物を、BCR相互作用部位の外側の領域においてPLA2Rフラグメントと結合する。いくつかの実施形態では、薬物を、1つ以上のリジン残基とのBCR相互作用部位の外側の領域においてPLA2Rフラグメントと結合する。いくつかの実施形態では、薬物を、薬物-リンカーに付加されたN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルとのアミド結合による1つ以上のリジン残基とのBCR相互作用部位の外側の領域においてPLA2Rフラグメントと結合する。
【0123】
例えば、いくつかの実施形態では、静脈内経路により患者血液循環中にEDCを投与する。いくつかの実施形態では、PLA2R認識自己抗体産生B細胞とのEDCの結合は、エンドサイトーシスによる受容体-EDC複合体の迅速な内部移行を開始させる(図5)。いくつかの実施形態では、PLA2R認識T細胞とのEDCの結合は、エンドサイトーシスによる受容体-EDC複合体の迅速な内部移行を開始させる。エンドソームでは、内部移行受容体-EDC複合は、結合された薬物の放出によって消化される。いくつかの実施形態では、それから、放出された薬物は、PLA2R認識自己抗体産生B細胞の死を引き起こす(図5)。いくつかの実施形態では、それから放出された薬物は、PLA2R認識T細胞の死を引き起こす。いくつかの実施形態では、薬物は、アポトーシスによりB細胞およびT細胞の死を引き起こす。いくつかの実施形態では、薬物は、非アポトーシス機序によりB細胞およびT細胞の死を引き起こす。
【0124】
尋常性天疱瘡
尋常性天疱瘡(PV)は、細胞間接着喪失を原因とする上皮内水疱形成を特徴とする潜在的な重篤な自己免疫性水疱形成疾患である。PVは、皮膚および粘膜の両方に影響を及ぼし、ケラチノサイト細胞表面分子デスモグレイン1(Dsg1)およびデスモグレイン3(Dsg3)に向けられた循環病原性自己抗体により媒介される。
【0125】
デスモグレインとの自己抗体の結合は、水疱形成を引き起こす細胞-細胞接着喪失をもたらすデスモソームの完全性を損ない、加えて、棘融解をもたらす細胞プロセスを開始させる。PVの粘膜皮膚形態を有する患者は、病原性抗Dsg1および抗Dsg3自己抗体を有する。PVの粘膜形態を有する患者は、抗Dsg3自己抗体のみを有する。
【0126】
Dsg3およびDsg1は双方共、各々が5つの細胞外カドヘリン(EC)ドメイン、1回膜貫通領域および細胞内テールを含む類似の分子構造を有する膜貫通タンパク質である(図26)。Dsg3における優性エピトープは、全ての抗Dsg3病原性自己抗体と結合するEC1~3ドメイン(図26)中に位置する。Dsg3 EC1~3ドメインは、334個のアミノ酸を含む。Dsg1における優性エピトープは、全ての抗Dsg1病原性自己抗体と結合するEC1~2ドメイン(図26)に位置し、Dsg1 EC1~2
は、それぞれ、221個のアミノ酸を含む。エピトープにおけるカルシウム結合部位は、自己抗体結合にとって重要である(図26)(Ohyama, B., et al.)。
【0127】
いくつかの実施形態では、Dsg1におけるエピトープによるEDCを提供する。図31は、本開示によるDsg1エピトープベースEDCの開発に使用されるDsg1のエピトープの実施形態のアミノ酸配列(配列番号16:336アミノ酸)を示す。いくつかの実施形態では、Dsg3におけるエピトープによるEDCを提供する。図32は、本開示によるDsg3エピトープベースEDCの開発に使用されるDsg3のエピトープの実施形態のアミノ酸配列(配列番号17:450アミノ酸)を示す。いくつかの実施形態では、Dsg1およびDsg3におけるエピトープによるEDCを提供する。
【0128】
Dsg1およびDsg3におけるエピトープによるEDCの実施形態の模式図を図27に示す。PV治療のためのDsg1およびDsg3におけるエピトープによるEDCの開発は、実施例7に記載している。
【0129】
いくつかの実施形態では、グリコシル化される可能性のある残基を、例えば、Dsg1フラグメントまたはDsg3フラグメントを発現する発現ベクターを用いる場合、部位特異的変異誘発を用いて置換することができる。いくつかの実施形態では、Dsg1またはDsg3タンパク質フラグメントを直接合成する場合、グリコシル化される可能性のある残基が自己抗体認識に関してタンパク質構造および/または立体配座に影響を与えないだろう非グリコシル化残基で置換されるように、ペプチドおよび/またはタンパク質合成をカスタマイズすることができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、さらなる改変をDsg1またはDsg3フラグメントに行って、例えば、試薬(例えば、薬物)をDsg1またはDsg3フラグメントと結合させてもよく、細胞表面上の受容体にDsg1またはDsg3エピトープの接近性を向上させてもよく、および/またはタンパク質発現および収量を向上させてもよい。例えば、小さい(約2~10アミノ酸)N末端もしくはC末端ペプチドまたは両方を挿入すること、保存的置換および/または非保存的置換すること、および/または1つ以上の異種配列を付加して所望の目的を達成することにより、Dsg1またはDsg3フラグメントを改変してもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるDsg1またはDsg3フラグメントの1つ以上を核酸によりコードする。いくつかの実施形態では、Dsg1またはDsg3をコードする核酸は、cDNAまたはmRNAである。いくつかの実施形態では、Dsg1またはDsg3をコードする核酸は、タンパク質発現ベクター内に含まれ得る。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、DNAベクターまたはRNAベクターである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、哺乳類細胞発現ベクターである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、昆虫細胞発現ベクターである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクター内に含まれるDsg1またはDsg3フラグメントをコードする核酸は、調節エレメントと機能可能に連結してPLA2Rフラグメントの発現を調節する。
【0132】
調節エレメントは、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、その他を含み得る。本明細書で使用されるとき、「機能可能に連結した」とは、核酸からのタンパク質発現を正または負に制御する調節エレメントを表す。
【0133】
本明細書で提供されるタンパク質発現ベクターおよび当業者に公知の他のもののうち1つ以上を使用して、本明細書で提供される組成物、方法、および/またはキットのうち1
つ以上に組み込むために、本明細書で提供されるDsg1またはDsg3フラグメントのうち1つ以上を大量に得ることができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、コードされたDsg1またはDsg3フラグメントにタグを導入する。いくつかの実施形態では、タグはN末端にある。いくつかの実施形態では、タグはC末端にある。いくつかの実施形態では、タグは両末端にある。タグの非限定的例としては、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-転移酵素、チオレドキシン、ポリ(NANP)、FLAG、V5、Myc、HA、NE、ビオチン、ビオチンカルボキシルキャリアプロテイン、GFP、Halo、Nus、Fc、AviTag、カルモジュリン、ポリGlu、E、S、SBP、Softag1、Softag3、Strep、TC、VSV、TyおよびXpressが挙げられる。いくつかの実施形態では、タグは、ポリヒスチジン(ポリHis)タグである。
【0135】
いくつかの実施形態では、タンパク質発現ベクターは、Dsg1またはDsg3フラグメントおよびタグ間の開裂可能部位を付加的に導入する。いくつかの実施形態では、開裂部位は、タンパク質分解部位である。タンパク質分解部位の非限定的例としては、TEVプロテアーゼ、第Xa因子またはエンテロペプチダーゼの部位が挙げられる。いくつかの実施形態では、タンパク質分解部位は、トロンビン開裂部位である。
【0136】
他の開裂可能部位
例えば、いくつかの実施形態では、ポリHisタグDsg1またはDsg3フラグメントを哺乳類細胞(例えば、HEK293細胞)内で発現し、Ni-アフィニティ精製を用いて、細胞培養培地から精製することができる。それから、ポリHisタグをタンパク質消化(例えば、トロンビンを用いて)により除去することができ、Dsg1またはDsg3フラグメントを、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いてさらに精製し、トロンビン酵素ならびに遊離したポリHisタグを除去する。
【0137】
いくつかの実施形態では、自己抗体は、例えば、PV患者において、皮膚(皮膚コンパートメント中の標的細胞間結合)および/または皮下コンパートメント中に蓄積し得る。このような状況では、EDCを皮下に送達する場合、EDCはちょうど注入部位において中和され得、リンパ節に到達しない。したがって、皮膚および/または皮下コンパートメント中の自己抗体により本明細書中の1つ以上のEDCの可能性ある中和のおかげで、自己抗体を低減させおよび/または排除するために、PV患者を1つ以上の免疫抑制剤(例えば、リツキサン)を用いて最初に治療する。免疫抑制剤は皮膚および/または皮下コンパートメント中の自己抗体を特異的に標的としないが、免疫抑制剤は免疫系を抑制し、したがって、自己抗体の産生を抑制する。この結果、新しい抗体の産生を阻害し、循環自己抗体を排除する(循環自己抗体は再循環されおよび/またはその半減期に基づき分解する)。それから、静脈内、皮下および/または皮内経路によりPV患者に本明細書中の1つ以上のEDCを投与して、リンパ節中の自己免疫記憶B細胞を標的とし疾病再発を阻止することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つ以上のEDCを、1つ以上の免疫抑制剤治療と併用で使用して、疾病再発を阻止することができる。例えば、PVは高い頻度の再発を有し、反復リツキサン治療は致死性感染症の原因となる。したがって、リツキサン投与後の本明細書中の1つ以上のEDCの投与は、PV患者の致死性感染症を阻止することができる。加えて、リツキサンは、リンパ節中の自己免疫記憶B細胞に達することができない。対照的に、EDCは、リンパ節中の自己免疫記憶B細胞に達することができる。したがって、再発の阻止に加えて、EDCは、リンパ節中の自己免疫記憶B細胞の排除によりPV患者を治癒することができる。
【実施例
【0138】
以下の実施例は非限定的であり、本発明を例証し、本発明を実施および使用する際に当業者の助けとするためにのみ提示されている。実施例はいかなる方法でも本発明の範囲を別様に限定するものではない。
【0139】
実施例1
MN患者から血液を採取する。血液から全B細胞を単離する。FACSを使用して、PLA2Rエピトープに対する受容体を発現する細胞を特定し分離する。PLA2Rエピトープに対する受容体を運搬する細胞にEDCを添加する。PLA2Rエピトープに対する受容体を発現しない細胞をコントロールとして使用する。EDCを、各細胞集団に、該EDC中の薬物の通常の用量の1000分の1の用量で添加する。細胞集団を、EDCと共に一夜インキュベートする。PLA2Rエピトープ受容体を発現する細胞はEDCによって殺されるが、受容体を発現しない細胞は影響を受けず生き残る。細胞をトリパンブルーで染色してPLA2Rエピトープに対する受容体を発現する細胞を殺すことにおけるEDCの有効性を評価することができる。
【0140】
実施例2
MN患者から血液を採取する。PLA2Rエピトープに対する受容体を発現する細胞に蛍光標識PLA2Rエピトープで標識化する。標識化および標識化していない細胞を、顕微鏡を用いて分離する。標識化していない細胞をコントロールとして使用する。EDCを、各細胞集団に、該EDC中の薬物の通常の用量の1000分の1の用量で添加する。細胞集団を、EDCと共に一夜インキュベートする。PLA2Rエピトープ受容体を発現する細胞をEDCにより殺すが、受容体を発現しない細胞は影響を受けず生き残る。細胞をトリパンブルーで染色してPLA2Rエピトープに対する受容体を発現する細胞を殺すEDCの有効性を評価することができる。
【0141】
実施例3
1つの例では、本明細書で提供される1つ以上の治療選択肢を用いた治療後、MN患者は、以前に治療レジメンを受けて約6か月と比較して、約1か月で回復した。患者の回復を、尿中タンパク質レベルにより測定した。
【0142】
実施例4-部位特異的化学結合に対する改変PLA2Rエピトープのエンジニアリング
PLA2Rエピトープは、最低でも3つのドメイン、すなわち、N末端システインリッチドメイン(CysR)、フィブロネクチン様II型ドメイン(FnII)、およびC型レクチン様ドメイン1(CTLD1)を含む(図1図2、および図23)。エピトープと自己抗体および/またはB細胞受容体(BCR)との相互作用の性質は、いまだに明らかでない。エピトープとの化学物質の結合は、抗体抗原相互作用と干渉しないことは重要である。
【0143】
これを達成するため、結合に対するPLA2Rエピトープの特異的部位を開発した。詳細には、遊離システインをエピトープのC末端鎖中に操作して化学結合のための特異的部位を開発した。TEV開裂部位およびHisタグ(6ヒスチジン残基)もエピトープタンパク質C末端中に操作してタンパク質精製のためにシステインを導入した。図23(上)は、タンパク質精製および薬物結合のための改変PLA2Rエピトープ構築物の設計の模式図を示す。図23(中央)は、薬物(細胞傷害性薬剤)が精製されたPLA2Rエピトープとどのように結合しているかの模式図を示す。
【0144】
タンパク質発現の評価により、改変PLA2Rエピトープが充分に発現され、抗PLA2R自己抗体に強力に達し、導入されたシステインがエピトープのフォールディングに影響を及ぼさないことを示すことが分かった。それから、構築物はHEK293細胞内で発現され、エピトープタンパク質はニッケルおよびゲルろ過カラムを用いて精製され、次い
で、TEVが開裂されHisタグを除去した。それから、タンパク質を蛍光剤(例えば、FITC)または細胞傷害性試薬(例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE))と結合する。
【0145】
図23(上)は、タンパク質精製および薬物結合のための改変PLA2Rエピトープ構築物の設計を示す。PLA2R EDCの設計では、部位特異的結合部位をPLA2Rエピトープ、次いで、TEV開裂部位およびHisタグを導入した。図23(中央)は、薬物が精製されたPLA2Rエピトープとどのように結合しているかを示す。精製エピトープタンパク質を、部位特異的な方法で細胞傷害性薬剤と結合する。図23(下)は、精製後のPLA2Rエピトープタンパク質の純度を示す。結合PLA2Rエピトープタンパク質を精製し、SDS-PAGEで分離した。エピトープを7%SDS-PAGEで分析し、正確な分子量(約37kDa)における単一タンパク質バンドを示した(図23:左下)。
【0146】
別の実験(図23:右下)では、等量のエピトープ、FITC結合エピトープおよびMMAE結合エピトープタンパク質を、非還元条件下でSDS-PAGEで分離し、膜に移して、抗PLA2R自己抗体を含む患者血清によりプローブした。非結合および結合PLA2Rエピトープタンパク質を非還元条件下4~20%SDS-PAGEで分離し、抗PLA2R自己抗体を含む患者血清によりプローブした(図23、右下)。結果は、薬物結合PLA2Rエピトープは、非結合PLA2Rエピトープと同様に強力に自己抗体と結合していることを示した(図23、右下)。
【0147】
抗PLA2R自己抗体を用いたウェスタンブロッティング法は、PLA2Rエピトープが抗PLA2R自己抗体と強力に反応し、導入されたシステインはエピトープのフォールディングに影響を及ぼさないことを示した(図23(右下;ウェスタンブロット))。それから、構築物はHEK293細胞内で発現され、エピトープタンパク質はニッケルおよびゲルろ過カラムを用いて精製され、次いで、TEVが開裂されHisタグを除去した。それから、タンパク質を蛍光剤(例えば、FITC)または細胞傷害性試薬(例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE))と結合する(図23)。
【0148】
実施例5-PMN患者から単離された記憶B細胞と結合するPLA2Rエピトープ-FITCの評価
PMNは、B細胞媒介自己免疫疾患である。病原性自己抗体は、PLA2Rエピトープと特異的に結合する固有のB細胞受容体(BCR)を有し、記憶B細胞群由来血漿細胞から分泌される。記憶B細胞のこの群を識別し、PLA2Rエピトープ薬物複合体が記憶B細胞群のこの群の表面上のBCRと効果的に結合することができるか否かを評価するため、PMN患者の血液サンプルから単離された全B細胞に対するPLA2Rエピトープ-FITC分析を用いて結合アッセイを行った。患者末梢血液から単離された全B細胞を、ウシ胎仔血清および抗生物質を添加したRPMI培地中で、37℃、5%COにおいて一夜培養した。それから、細胞を、上下にピペッティングして分散し、集めて、氷冷PBSで2回洗浄した。その後、細胞を、4℃で1時間、PBS中PLA2Rエピトープ-FITCと共にインキュベートした。細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、励起波長488nmおよび発光波長520nmにおいて蛍光顕微鏡下で撮像した。図24は、PLA2Rエピトープ-FITCで標識化されたB細胞集団が、PMN患者のPLA2Rエピトープ結合記憶B細胞の特定集団の存在、およびこれらの記憶B細胞表面上でのPLA2Rエピトープ-FITCとBCRとの強力な結合を示していることを示す。
【0149】
実施例6-PMN患者から単離された記憶B細胞に対するPLA2Rエピトープ-MMAEの有効性評価
PMN患者から単離されたPLA2Rエピトープ特異的記憶B細胞の排除に対するPLA
2Rエピトープ-MMAEの有効性を評価した。MMAEは、細胞死を引き起こすチューブリン重合を阻害する強力な細胞傷害性薬剤である。MMAEは、リンパ腫治療用抗体-薬物複合体、ブレンツキシマブベドチン(商品名アドセトリス(Adcetris))の開発のために使用され、2011年にFDAにより認可された。患者末梢血液から単離された全B細胞を、RPMI培地中一夜培養してから、12ウェル細胞培養プレート(2ml/ウェル)の2つのウェル中に等しく分割した。1つのウェルの細胞をMMAEと共にインキュベートし、他を細胞培養インキュベーター内で24時間PLA2Rエピトープ-MMAEと共にインキュベートした。それから、両方のウェルからの細胞を集め、氷冷PBSで洗浄し、4℃で1時間、PLA2Rエピトープ-FITCと共にインキュベートした。細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、励起波長488nmおよび発光波長520nmにおいて蛍光顕微鏡下で撮像した。
【0150】
MMAE単独とのプレインキュベーションは、PLA2Rエピトープ-FITCにより染色されている多くのB細胞をもたらした(図25)。対照的に、PLA2Rエピトープ-MMAEとのプレインキュベーションは、PLA2Rエピトープ-MMAEによるPLA2Rエピトープ特異的記憶B細胞の特異的標的化および排除を示すPLA2Rエピトープ-FITC染色はないことを示した(図25)。PLA2Rエピトープ-MMAE治療B細胞の光学顕微鏡画像は、EDCが大部分のB細胞に対してほとんど効果がないことも示した(図25)。
【0151】
実施例7-尋常性天疱瘡に対するEDC治療の開発
自己抗体結合にとって重要であるDsg3エピトープ中にカルシウム結合部位を保存するために、Dsg3 EC1~4ドメイン(450アミノ酸;図32;配列番号17)を薬物結合のためのエピトープとして選択した。Dsg3 EC1~4における特異的結合部位を開発するために、全ての内在性システイン(図32の下線部)を構造類似アミノ酸セリンと置き換えた。加えて、2つの内在性N-グリコシル化部位(Asn61およびAsn131;図32の下線部)を構造類似アミノ酸グルタミンと置き換えた。薬物結合のためDsg1エピトープを設計するために同様なアプローチをして、改変Dsg1 EC1~3ドメイン(336アミノ酸)を選択した(図31;配列番号16)。生成されたエピトープを、Dsg1 EC1~3およびDsg3 EC1~4と名付けた。Dsg1 EC1~3エピトープの分子量は約35kDaであり、Dsg3 EC1~4エピトープの分子量は約60kDaであった。
【0152】
それから、遊離システインを各エピトープのC末端鎖中に操作して、化学結合のための特異的部位を開発した。TEV開裂部位およびHisタグ(6His)も、タンパク質精製のためのシステイン導入後にエピトープタンパク質中に操作した(図27)。
【0153】
操作されたエピトープをHEK293細胞内で発現し、ニッケルアフィニティおよびゲルろ過カラムを用いて培養培地から精製し、次いで、TEVを開裂してHisタグを除去した(図28、左図;クマシーブルー)。それから、エピトープを、蛍光剤(例えば、FITC)または細胞傷害性試薬(例えば、MMAE)のいずれかと結合した。
【0154】
Dsg1およびDsg3に対する自己抗体は、未変性Dsg1またはDsg3タンパク質と優先的に結合するので、TEV処理前の2つのエピトープの精製FITCまたはMMAE複合体を、PBS緩衝液中で粘膜皮膚PV患者血清と混合して免疫複合体を生成し、それからタンパク質Gビーズと免疫沈降させた。Dsg1およびDsg3エピトープ精製複合体の等量(TEV開裂前)を、4℃で2時間、PBS緩衝液中で粘膜皮膚PV患者血清と混合し、タンパク質Gビーズと免疫沈降させた。ビーズを広範囲に洗浄し、結合したエピトープをSDSサンプル緩衝液で溶出し、SDS-PAGEで分離し、膜に移して、抗Hisタグ抗体によりプローブした(図28、中央および右図;ウェスタンブロット)
。ウェスタンブロットの結果により、Dsg1およびDsg3の操作および化学結合したエピトープは自己抗体と強力に反応し、タンパク質Gビーズとよく免疫沈降し、エピトープタンパク質の操作および化学結合が自己抗体-抗原相互作用と干渉しないことを示すことが分かった。
【0155】
実施例8-粘膜皮膚PV患者から単離された記憶B細胞と結合するDsgエピトープ-FITCの評価
粘膜皮膚PV患者の血液サンプルから単離された記憶B細胞における特定のBCRと結合するDsgエピトープ-FITCの能力を評価した。まず、末梢血液単核細胞を、密度勾配遠心分離(ヒストパック(Histopaque)-1077)を用いて全血から単離し、次いで、B細胞ネガティブ単離キットを用いてB細胞を単離した。それから、単離された全B細胞を、ウシ胎仔血清および抗生物質を添加したRPMI培地中、37℃、5%COにおいて一夜培養した。それから、細胞を処理し、PBS中、4℃で1時間、Dsgエピトープ-FITCで染色し、励起波長488nmおよび発光波長520nmにおいて蛍光顕微鏡で撮像した。図29は、Dsgエピトープ-FITCはB細胞群を強力に染色し、これらの記憶B細胞表面上のBCRとのDsgエピトープ-FITCの強い結合を示す。
【0156】
実施例9-粘膜皮膚PV患者から単離された記憶B細胞上のDsgエピトープ-MMAEの有効性評価
粘膜皮膚PV患者から単離された、それぞれ、Dsg1およびDsg3エピトープ特異的記憶B細胞を排除するためのMMAEと結合したDsg1およびDsg3エピトープの有効性を評価した。患者末梢血液から単離された全B細胞を、RPMI培地中で一夜培養してから、12ウェル細胞培養プレート(2ml/ウェル)の2つのウェル中に等しく分割した。1つのウェルの細胞をMMAEと共にインキュベートし、他を細胞培養インキュベーター内で24時間Dsg1およびDsg3エピトープ-MMAEと共にインキュベートした。それから、両方のウェルからの細胞を集め、氷冷PBSで洗浄し、4℃で1時間、Dsg1およびDsg3エピトープ-FITCと共にインキュベートした。細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、励起波長488nmおよび発光波長520nmにおいて蛍光顕微鏡下で撮像した。
【0157】
MMAE単独とのプレインキュベーションは、Dsg1およびDsg3エピトープ-FITCにより染色されている多くのB細胞をもたらした(図30)。対照的に、Dsg1およびDsg3エピトープ-MMAEとのプレインキュベーションは、Dsg1およびDsg3エピトープ-MMAEによるDsg1およびDsg3エピトープ特異的記憶B細胞の特異的標的化および排除を示すDsg1およびDsg3エピトープ-FITC染色はないことを示した(図30)。Dsg1およびDsg3エピトープ-MMAE治療B細胞の光学顕微鏡画像は、EDCが大部分のB細胞に対してほとんど効果がないことも示した(図30)。
【0158】
本明細書で使用されるとき、節の見出しは、構成的な目的のためだけのものであり、いかなる場合も記載された主題を限定すると解釈すべきでない。これに限らないが、特許、特許出願、論文、書籍、学術論文、およびインターネットウェブページを含む本願中に引用された全ての文献および類似の材料は、いかなる目的のためでも、その全文を参照することにより明示的に組み入れられるものとする。組み入れられた参照中の用語定義が本教示中で定められた定義と異なるように思われる場合、本教示中で定められた定義が優先する。少しおよびごくわずかな偏差が本明細書中の本教示の配位内であるように、本教示中で議論される温度、濃度、時間などの前に黙示的「約」があると理解されるであろう。
【0159】
本願では、特に断りがない限り、単数形の使用は複数形を含む。また、「含む(com
prise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」、「含む(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」の使用は限定的でないことを意図している。
【0160】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるとき、特に文脈から別の意味を明示しない限り、単数形「a」、「an」および「the」は複数の意味を含む。
【0161】
本明細書で使用されるとき、「約」は、指示量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量(amount)、重量または長さに対して20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%の大きさで変動する量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量(amount)、重量または長さを意味する。
【0162】
本発明は、特定の実施形態および実施例との関連で開示されているが、当業者は、本発明が具体的に開示された実施形態の範囲外で、本発明の他の代替の実施形態および/または使用ならびにその明白な修飾および均等物まで及ぶことを理解するだろう。加えて、本発明のいろいろな変化形が詳細に示され記載されているが、本発明の範囲内である他の修飾は、本開示に基づいて当業者に容易に明らかとなるであろう。実施形態の具体的特徴および態様の様々な組合せまたはサブコンビネーションを行ってもよく、まだ本発明の範囲内となることも理解される。本開示された実施形態の様々な特徴および態様を、本開示の発明の様々な様式または実施形態を形成するために互いを組合せることも、置き換えることもできると理解されるべきである。したがって、本明細書中開示された本発明の範囲が上記特定の開示された実施形態により限定されるべきでないものとする。
【0163】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の趣旨および範囲内の様々な変化および修飾が当業者に明白になるので、本詳細な説明は例証によってのみ与えられると理解されるべきである。
【0164】
本明細書中で提示された説明で使用された用語は、いかなる限定的にも制限的にも解釈されないものとする。むしろ、用語は、システム、方法および関連構成成分の実施形態の詳細な説明と関連して単純に利用されている。さらに、実施形態は、いくつかの新規な特徴を含んでもよく、そのうちの1つが、その所望の特質に単独で原因となることも、本明細書に記載された本発明の実践に必須であると考えられることもない。
【0165】
前述の説明中に開示された概念および具体的実施形態を、本発明の同じ目的を実行するために他の実施形態を修飾または設計するための基礎として容易に利用してもよいと、当業者は認識するだろう。
【0166】
本願で使用された全ての科学および技術用語は、特に断りがない限り、当技術分野で共通に使用される意味を有する。本願中で使用されるとき、次の語またはフレーズは指定された意味を有する。
【0167】
本明細書で使用されるとき、「検出可能なマーカー」または「標識」は、試薬の部分と結合、または試薬の部分として合成された分子である。この分子は、独自に検出可能であり、試薬が結果として検出されることを可能とする。これらの検出可能な部分は、放射性同位体、化学発光分子、酵素、ハプテン、または独自のオリゴヌクレオチド配列でさえあることがしばしばである。
【0168】
本明細書で使用されるとき、「ポリペプチド」としては、タンパク質、タンパク質のフ
ラグメント、および天然源から単離、組換え技術により製造または化学的に合成されたかにかかわらずペプチドが挙げられる。ポリペプチドは、通常、少なくとも約6アミノ酸を含む。より短いポリペプチド、例えば、約50アミノ酸長未満のものは、通常、「ペプチド」と呼ぶ。
【0169】
本発明のポリペプチドは、いくつかの実施形態では、天然タンパク質の変異体を含む。本明細書で使用されるとき、ポリペプチド「変異体」は、ポリペプチドの治療有効性が実質的に小さくならないように、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入において天然タンパク質と異なるポリペプチドである。すなわち、天然タンパク質と比較して、有効性は増強してもよく変化しなくてもよく、天然タンパク質と比較して50%未満小さくてもよく、好ましくは20%未満小さくてもよい。好ましい変異体としては、N末端リーダー配列などの1つ以上の部分が除去されたものが挙げられる。他の好ましい変異体としては、小さい部分(例えば、1~30アミノ酸、好ましくは5~15アミノ酸)が天然タンパク質のN末端および/またはC末端から除去された変異体が挙げられる。ポリペプチド変異体は、好ましくは、同定されたポリペプチドと少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の同一性(上記のように決定される)を示す。当技術分野で知られているように、変異体は、結合パートナーに対するポリペプチドの親和性を最適化するように選択することもできる。
【0170】
好ましくは、変異体は、保存置換を含む。「保存置換」は、ペプチド化学の当業者が置換的に変化しないポリペプチドの第二構造およびヒドロパシー性を期待するように、アミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸と置き換わるものである。アミノ酸置換は、概して、残基の極性、荷電、溶解性、疎水性、親水性および/または両性の類似性を基本として行ってもよい。例えば、負に荷電したアミノ酸としてはアスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ;正に荷電したアミノ酸としてはリジンおよびアルギニンが挙げられ;ならびに類似の親水性値を有する無荷電極性頭部を有するアミノ酸としてはロイシン、イソロイシンおよびバリン;グリシンおよびアラニン;アスパラギンおよびグルタミン;ならびにセリン、スレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが挙げられる。保存変化を示し得るアミノ酸の他の群としては:(1)Ala、Pro、Gly、Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、Thr;(2)Cys、Ser、Tyr、Thr;(3)Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;(4)Lys、Arg、His;および(5)Phe、Tyr、Trp、His。変異体は、非保存的変化も含んでもよく、または代替的に含んでもよい。好ましい実施形態では、変異体ポリペプチドは、5個のアミノ酸または数個のアミノ酸の置換、欠失または付加により天然配列と異なる。変異体を、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造およびヒドロパシー性に対する最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加により改変してもよい(または代替的に改変してもよい)。
【0171】
本明細書中で提示された説明で使用された用語は、いかなる限定的にも制限的にも解釈されないものとする。むしろ、用語は、システム、方法および関連構成成分の実施形態の詳細な説明と関連して単純に利用されている。さらに、実施形態は、いくつかの新規な特徴を含んでもよく、そのうちの1つが、その所望の特質に単独で原因となることも、本明細書に記載された本発明の実践に必須であると考えられることもない。
【0172】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修飾は当業者に明白であるので、本詳細な説明は例証によってのみ与えられると理解されるべきである。
【0173】
参考文献
本開示中に引用された全ての参考文献は、その全文を参照することにより本明細書に組
み入れられるものとする。
【0174】
米国特許第8,507,215(B2)号
【0175】
Beck, L.H., et al., N Engl J Med, Vol. 361, pp. 11-21, 2009.
【0176】
Beck, L.H., et al., J Am Soc Nephrol, Vol. 22, pp. 1543-1550, 2011.
【0177】
Kao, L., et al., J Am Soc Nephrol, Vol. 26, No. 2, pp. 291-301, 2015.
【0178】
Ohyama, B., et al., J Invest Dermatol, Vol. 132, pp. 1158-1168, 2012.
【0179】
Alewine, C., et al, The Oncologist, Vol. 20, pp. 176-185, 2015.
【0180】
Pape, K.A., et al, Immunity, Vol. 26, pp. 491-502, 2007.
【0181】
Roozendaal, R., et al, Immunity, Vol. 30, pp. 264-276, 2009.
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図2
図3
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【配列表】
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