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特許7303112実体変速機を備えるパワートレインテストベンチを制御するための、特に閉ループ制御するための方法
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  • 特許-実体変速機を備えるパワートレインテストベンチを制御するための、特に閉ループ制御するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】実体変速機を備えるパワートレインテストベンチを制御するための、特に閉ループ制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
G01M17/007 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019554759
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018058860
(87)【国際公開番号】W WO2018185286
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】A50291/2017
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス・プフィスター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・フレック
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/012575(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0167143(US,A1)
【文献】特開2014-174103(JP,A)
【文献】国際公開第2016/083566(WO,A1)
【文献】特開2016-001174(JP,A)
【文献】特開2010-223861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 15/00- 15/14
G01M 17/00- 17/10
G01M 13/00- 13/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実体変速機(3)を備えるパワートレインのためのテストベンチ(1)を制御するための方法であって、以下の作用ステップ、すなわち、
前記実体変速機(3)の変速機出力部(4)の制御パラメータの所望の目標値(n)を、モデル(2)に基づいて計算するステップ(102)であって、当該モデルは前記実体変速機(3)および少なくとも一つのさらなる前記パワートレインの出力側の構成要素を、仮想構成要素(3’,9a,9b,10a,10b,11,12)として、前記パワートレインにおいて測定された少なくとも一つの測定パラメータ、特に回転速度(n;n)および/またはトルク(T;T)に基づいて再現するステップであって、少なくとも一つのさらなる前記構成要素は、前記テストベンチに実際に構成されているのではなく、仮想構成要素としてのみ存在している、再現するステップと、
前記制御パラメータの目標値(n)に基づいて、前記テストベンチ(1)を制御するステップ(103)と、を有する方法。
【請求項2】
前記モデル(2)は、車両の特性、および路面の特性を考慮する、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記モデル(2)は、前記実体変速機(3)の少なくとも一つの送込みトルク(Tin)を考慮する、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(100)であって、さらに以下の作用ステップ、すなわち、
前記実体変速機(3)の送込みトルク(Tin)を、前記実体変速機(3)の軸方向慣性モーメント(J)と、前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の角加速度(α(t))と、前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の測定されたトルク(T)とに基づいて計算するステップ(101)を有する、方法。
【請求項5】
前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の前記角加速度(α(t))と、前記実体変速機(3)の前記軸方向慣性モーメントとから計算された、ダイナミックなトルクは、前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の前記測定されたトルク(T)に加算される、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記実体変速機(3)の前記送込みトルク(Tin)および/または前記制御パラメータの所望の目標値(n)を計算する際、検査すべき前記実体変速機(3)のそれぞれ用いられている変速比が考慮される、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記実体変速機(3)の前記軸方向慣性モーメントは、検査すべき前記実体変速機(3)の変速比に依存して考慮される、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の測定された前記トルク(T)および/または前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の回転速度(n)は、前記テストベンチ(1)において測定される、請求項4から7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)における測定された前記トルク(T)および/または前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の前記角加速度(α(t))は、フィルタを用いてフィルタリングされ、当該フィルタは、二次ローパスフィルタ、ベッセルフィルタ、バターワースフィルタ、ノッチフィルタ、およびカルマンフィルタから成るグループから選択される、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の回転速度(n)はさらなる測定値を用いて計算または安定化される、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項11】
請求項4に記載の方法(100)であって、さらに、
前記実体変速機(3)の前記変速機出力部の前記角加速度(α(t))を、前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の前記測定された回転速度(n)から計算するステップ(101a)、および
前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の前記角加速度(α(t))を測定するステップ(101b)
のうちの少なくとも1つの作用ステップを有する、方法。
【請求項12】
請求項4に記載の方法(100)であって、さらに以下の作用ステップ、すなわち、
変速機入力部(5)のトルク(T)を用いて前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の測定された前記トルク(T)を計算する、または安定化させるステップ(101c)を有する、方法。
【請求項13】
前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の測定された前記トルク(T)は、前記テストベンチ(1)の負荷機械(6)の電気的なエアギャップモーメントの測定により決定される、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項14】
コマンドを含むコンピュータプログラムであって、当該コマンドはコンピュータによって実施されるとき、当該コンピュータに請求項1に記載の方法のステップを実施させる、コンピュータプログラム。
【請求項15】
コンピュータ読取可能媒体であって、請求項14に記載のコンピュータプログラムが記憶されている媒体。
【請求項16】
実体変速機(3)を備えるパワートレインのためのテストベンチ(1)を制御するためのシステム(20)であって、当該システムは、
前記実体変速機(3)の変速機出力部(4)の制御パラメータの所望の目標値(n)を、モデル(2)に基づいて計算するための第一のモジュール(21)であって、当該モデルは前記実体変速機(3)および少なくとも一つのさらなる構成要素を仮想構成要素(3’,9a,9b,10a,10b,11,12)として、前記パワートレインにおいて測定された少なくとも一つの測定パラメータに基づいて再現しており、少なくとも一つのさらなる前記構成要素は、前記テストベンチに実際に構成されているのではなく、仮想構成要素としてのみ存在している、第一のモジュール(21)と、
前記制御パラメータの所望の前記目標値(n)に基づいて、前記テストベンチ(1)を制御するための第二のモジュール(22)と、を有するシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステム(20)であって、さらに、
前記実体変速機(3,3’)の送込みトルク(Tin)を、前記実体変速機(3)の軸方向慣性モーメント(J)と、前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の角加速度(α(t))と、前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の測定されたトルク(T)とに基づいて計算するための第三のモジュール(23)を有するシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステム(20)であって、さらに、
前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の前記角加速度(α(t))を決定するための第一のセンサ(24)と、
前記実体変速機(3)の前記変速機出力部(4)の前記トルク(T)を測定するための第二のセンサ(25)と、を有するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実体変速機を備えるパワートレインのためのテストベンチを制御するための、特に閉ループ制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用テストベンチまたはパワートレインのためのテストベンチでは、少なくとも車両のパワートレインの個々の構成要素を検査することができる。このとき単独または複数のいずれの構成要素が検査されるかに応じて、シャーシ・ダイナモメータ、エンジンテストベンチ、トランスミッションテストベンチなどが用いられる。
【0003】
このとき検査対象、すなわち検査すべき装置には試験運転が課せられ、それにより検査対象の特性を検査する。これを達成するために、試験運転の間に好適な測定センサを用いて一定の測定値が検出され、リアルタイムで、または遅延を有して(事後に)評価される。
【0004】
このとき検査対象は一般的に、多数の実体構成要素と多数の仮想の構成要素とを組み合わせたものであり、実体構成要素は実際にテストベンチに設けられた部材として構成されており、仮想の構成要素はシミュレーションモデルを用いて、特にリアルタイムでシミュレートされ、このようなやり方で実体構成要素を補ってシステム全体とする。したがって検査対象は有利には、実体構成要素を含む実際検査対象(Real Unit Under Test-rUUT)と、仮想の構成要素を含む仮想検査対象(Virtual Unit Under Test-vUUT)とに分類することができる。このような検査対象の例は、自動車、パワートレインであり、あるいは、パワーパック、ハイブリッドモータ、あるいはまた変速機など単に規模がより小さいシステムである。
【0005】
試験運転は、テストベンチにおいて開ループ制御または閉ループ制御を用いて調整される試験対象の状態の時間的経過である。
【0006】
パワートレインテストベンチの場合、実際検査対象はまた、負荷機械と接続されており、当該負荷機械は検査対象に対して検査経過に応じて負荷を、例えば正の負荷トルクまたは負の負荷トルク、あるいは回転速度、あるいは他の定義による負荷状態を設定する。実際検査対象は、試験運転の設定に応じて、上記の負荷もしくは負荷状態の下で作動される。
【0007】
例えばテストベンチ上に内燃機関と変速機とが実際に設けられていてよく、変速機は好ましくは変速機出力部を介して、負荷機械と機械式に結合されている。
【0008】
内燃エンジンと変速機はその後、試験運転に応じて、例えば内燃エンジンの絞り弁の調整により、ギアの設定により、あるいは変速機出力部において所定の回転速度を調整することにより、制御される。
【0009】
負荷機械は、時間的に変化する目標トルクTまたは目標回転速度nを介して制御され、目標トルクまたは目標回転速度の設定により、検査対象の負荷もしくは負荷状態が生じる。
【0010】
このとき目標トルクまたは目標回転速度の推移は、試験運転において設定された、検査されるべきエンジン動作点に依存する。さらに仮想検査対象、すなわちパワートレインの仮想構成要素、例えば駆動軸、差動装置、車軸、タイヤ、および検査対象の環境との相互作用、例えばタイヤと路面との接触、は、これらの目標トルクTまたは目標回転速度nを設定する際、シミュレーションモデルを用いてシミュレーションすることができる。
【0011】
実際構成要素と仮想構成要素とのインターフェースにおいて、時間的に変化するパラメータ、特に回転速度またはトルクはリアルタイムに伝えられる。
【0012】
パワートレイン検査対象の仮想構成要素と実際構成要素とを含むテストベンチ上で、ダイナミックなシステムおよびプロセスを再現することは、特別な挑戦である。
【0013】
特許文献1は、検査対象、例えば内燃エンジンまたは車両パワートレインを含むテストベンチ構成体の閉ループ制御に関し、検査対象は出力として少なくとも一つの回転角度を有し、少なくとも一つの結合シャフトを介して少なくとも一つの負荷ユニットと接続されている。検査対象に対する機械的抵抗を記述する一つのインピーダンスモデルにおいて、検査対象から導き出された入力値を起点として、結合シャフトのトルクの目標値が出力値として計算され、当該目標値が負荷ユニットのためのトルク閉ループ制御の基礎となる。
【0014】
特許文献2は、テストベンチ上に構成されているトルク発生装置の駆動トルクを特定するための方法に関し、トルク発生装置の内部トルクが測定され、当該測定された内部トルクに基づいて、測定された内部トルクと、力学的トルクと、トルク発生装置の出力軸上で測定された軸トルクとを用いた運動方程式から補正トルクが推定され、推定された補正トルクおよび測定された内部トルクから、関係式M=MCOR+Mにより駆動トルクが計算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2011/022746号パンフレット
【文献】オーストリア特許発明第514725号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、実際検査対象の部分として実体変速機を備えるテストベンチを制御するための改善された方法および改善されたシステムを提供することである。本発明の課題は特に、実際検査対象の部分として実体変速機を備えるテストベンチを制御するための方法であって、検査対象が仮想検査対象、すなわち検査対象の部分を成す仮想的な構成要素の部分として、特に変速機出力部に少なくとも一つの弾性軸を有している方法を提供することである。「剛性軸」のモデルに対して「弾性軸」のモデルは、軸の個々の部分およびそれらの弾力性、減衰特性、および下流の質量体を考慮し、それらはrUUT(実際検査対象)と共に振動性システムを形成する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題は請求項1に記載のパワートレインのためのテストベンチを開ループ制御および/または閉ループ制御するための方法と、請求項16に記載のパワートレインのためのテストベンチを開ループ制御および/または閉ループ制御するためのシステムと、によって解決される。有利な構成は従属請求項に記載される。従属請求項に記載の説は、明示的に詳細な説明を構成する部分となっている。
【0018】
本発明の第一の態様は、実体変速機を備えるパワートレインのためのテストベンチを制御する、特に閉ループ制御するための方法に関し、当該方法は好ましくは以下の作用ステップ、すなわち、
一つの制御パラメータの目標、特に実体変速機の変速機出力部の目標回転速度を、特に仮想検査対象の一つのモデルに基づくか、もしくは仮想検査対象の一つのモデルを用いて計算するステップであって、当該モデルは変速機または変速機の部分(例えば変速機の慣性および/または出力軸に凝縮された変速機の回転慣性)および少なくとも一つのさらなる構成要素、特にパワートレインの出力側の一つの駆動軸、特に複数の駆動軸、差動装置、ホイール、タイヤを、特に仮想検査対象の仮想構成要素として、パワートレインにおいて測定された少なくとも一つの測定パラメータ、特に回転速度および/またはトルクに基づいて再現する、ステップと、
前記目標(特に目標回転速度)に基づいて、テストベンチ、特に負荷機械を制御するステップと、を有する。
【0019】
本発明の第二の態様は、実体変速機を備えるパワートレインのためのテストベンチを制御する、特に閉ループ制御するためのシステムに関し、当該システムは好ましくは以下のもの、すなわち
一つの制御パラメータの目標、特に実体変速機の変速機出力部における目標回転速度を、一つのモデルに基づくか、もしくは一つのモデルを用いて計算するための第一のモジュールであって、当該モデルは変速機および少なくとも一つのさらなる構成要素、特にパワートレインの出力側の一つの駆動軸を仮想構成要素として、パワートレインにおいて測定された少なくとも一つの測定パラメータ、特に少なくとも一つの回転速度および/またはトルクに基づいて再現する、第一のモジュールと、
前記目標(特に目標回転速度)に基づいて、テストベンチ、特に出力機械を制御するための第二のモジュールと、を有する。
【0020】
本発明の意味における変速機は、トルクおよび回転速度を減速もしくは加速させるのに好適である構成要素を有する。変速機は特に、変速比において切り替え可能であり、あるいは連続的に変化可能な変速比を備える変速機である。
【0021】
変速機入力部とは、規定に応じて車両に取り付けられた状態で駆動機関と接続されている、変速機のあらゆる接続部である。変速機は好ましくは複数の変速機入力部を有してよく、それにより例えばハイブリッド車両では、複数の駆動機関を一つの出力部に結合する。
【0022】
本発明の意味における変速機出力部とは、規定に応じて取り付けられた状態で、パワートレインのホイールに導かれる部分、すなわち残余パワートレインと接続されている、変速機のあらゆる接続部である。
【0023】
好ましくは変速機入力部も変速機出力部もフランジを有し、当該フランジは入力側または出力側の駆動軸と接続可能である。
【0024】
本発明の意味におけるパワートレインは、車両の駆動に寄与するために構成されている構成要素、特にエンジン、変速機、駆動軸、差動装置、ホイール、タイヤなどを有している。
【0025】
本発明の意味におけるパワートレインは、テストベンチにおける検査対象であり、少なくとも一つの実体変速機を有する。パワートレインの他の構成要素は好ましくは仮想構成要素としてシミュレーションされる。さらに好ましくはこのようなパワートレインは、複数の実体構成要素と、複数の仮想の構成要素とを有する。実体構成要素は現実の部材としてテストベンチ上に構成されている。仮想の構成要素はシミュレーションモデルとして、特にリアルタイムで保存されており、実体構成要素を補うためにシミュレーションされ、それにより実体構成要素を補ってパワートレインとする。
【0026】
本発明の意味における目標とは、目標値または目標値推移である。目標は好ましくは複数の値を有し、目標はさらに好ましくはエンジン特性マップおよび/または関数を有する。
【0027】
軸方向慣性モーメントとは、変速機出力軸の回転軸線に対して、実体変速機の回転部材が有する軸方向の慣性である。軸方向慣性モーメントは好ましくは、変速機のファーストギヤにおける軸方向慣性によって定義され、好ましくは時不変のパラメータである。軸方向慣性モーメントは好ましくは、運動学的な強制条件を介して変速機出力軸の回転運動に結合されている物体の慣性も含み、この場合はいわゆる拡大された慣性モーメントを表す。
【0028】
本発明の意味における安定化とは、測定されたパラメータの品質を、他の測定パラメータの値を参照することによって改善することである。安定化のために特に、いわゆるセンサフュージョン法を用いることができる。安定化により特に、測定ノイズを低減することができ、あるいは除去することさえできる。例えば測定パラメータの目標関数は重み係数を含んでいてよく、当該重み係数は例えばカルマンフィルタを用いて計算することができる。
【0029】
本発明の意味におけるモジュールは、ハードウェアおよび/またはソフトウェア技術的に形成されていてよく、特に好ましくはストレージシステムおよび/またはバスシステムとデータもしくは信号を介して接続された、特にデジタル式の処理ユニット、特にマイクロプロセッサユニット(CPU)、および/または一つまたは複数のプログラム、またはプログラム・モジュールを有してよい。マイクロプロセッサユニットは、ストレージシステム内に格納されたプログラムとして実行されているコマンドを遂行し、データバスからの入力信号を検出し、および/または出力信号をデータバスに出力するために形成されていてよい。ストレージシステムは一つまたは複数の、特に異なる記憶媒体を有してよく、特に光学的媒体、磁気的媒体、固体および/または他の不揮発性媒体を有してよい。プログラムは、当該プログラムが本願で説明される方法を具体化するか、もしくは実施することができるように調整されていてよく、それによりマイクロプロセッサユニットはこのような方法のステップを実施することができるとともに、特にテストベンチを開ループ制御および/または閉ループ制御することができる。
【0030】
本発明は、検査対象として実体変速機を備えるパワートレインを有するテストベンチを制御するにあたり、パワートレインの残りの構成要素であって、テストベンチ上に実際に構成されておらず、単に仮想の構成要素として存在する残りの構成要素をシミュレーションする際に、当該変速機もしくは少なくとも当該変速機の慣性モーメントを考慮するというアプローチに基づいている。したがって変速機は実体検査対象の部分であるだけでなく、仮想の検査対象の部分でもある。このように実体検査対象と仮想の検査対象は、互いに離接的もしくは補完的ではなく、少なくとも変速機のいくつかの要素に関して、特に変速機の慣性に関して重なり合っている。
【0031】
仮想の検査対象において変速機を考慮することの有利点は、実体検査対象の部分ではない構成要素から形成される残余パワートレインのシミュレーションの際に、変速機の慣性モーメントが考慮されることである。例えばトランスミッションテストベンチの場合、残余パワートレインの構成要素は例えば、駆動軸、差動装置、車軸、ホイール、タイヤなどである。比較的大きな軸方向慣性モーメントを備える変速機を、仮想の検査対象の部分としても考慮することによって、残余パワートレインが、残余パワートレインの慣性が比較的小さいために、ダイナミックなシミュレーションの際に振動することは回避できるが、当該残余パワートレインが振動すると、負荷機械を介して供給される負荷の制御は不可能になるか、少なくとも実質的に困難になると想定される。本発明により特に、シミュレーションのために用いられるモデルにおいて、いわゆる弾性軸(フレキシブル・シャフト)を仮想構成要素として備え、しかもテストベンチを安定的に運転することが可能であるが、それは実体構成要素の状態に基づいて計算された駆動トルクが、大きな機械的慣性を備える物体、すなわち変速機出力部に作用するからである。
【0032】
本発明の一つの有利な構成においてモデルは、車両の特性、特に車両の質量および/または慣性、および/または単独または複数の変速機出力軸の弾力性、および路面の特性、特に摩擦抵抗係数および/または転がり抵抗係数を考慮する。車両の特性および場合により、さらなる環境特性を考慮することにより、実体運転におけるパワートレインの挙動をテストベンチ上でより現実的に再現することができる。
【0033】
一つのさらなる有利な構成においてモデルは、特に実体変速機の少なくとも一つの測定パラメータに依存している少なくとも一つの送込みトルクを、特に時不変の入力パラメータとして考慮する。
【0034】
本発明の意味における当該送込みトルクは、変速機内部トルクであり、変速機内でかかっているトルクを表している。送込みトルクは好ましくは、変速機の軸方向慣性モーメントを考慮する。モデルにおいて、もしくはシミュレーションの際に当該送込みトルクを考慮することにより、変速機、特に当該変速機の慣性モーメントは、さらなる仮想構成要素として仮想の検査対象に付加され得る。すなわち、変速機は残余パワートレインの仮想構成要素の一つでもある。これにより特に、残余パワートレインの比較的小さな慣性モーメントは増大し、残余パワートレインはシミュレーションにおいて、特に駆動軸として弾性軸が設けられているとき、自己振動を生じにくくなる。実体変速機の送込みトルクをモデルへの入力パラメータとして供給することはさらに有利であるが、それは多数の既存の仮想車両モデルが、本発明に係る送込みトルクのような入力パラメータを考慮するためのインターフェースを有しているからである。したがって送込みトルクを考慮するために、既存の仮想車両モデルのそれぞれの構成を変化させる必要はない。
【0035】
本発明により好ましくは、実体検査対象に取り付けられたセンサシステムに基づいて、雑音を含む測定値がリアルタイムで読み込まれる。これらの雑音を含む測定値から、好適な数値的方法を介して、品質的により価値が高く、時間的に変化する物理的パラメータ、特に変速機出力部回転速度および変速機出力部におけるトルク、好ましくはまた変速機入力部における回転速度および変速機入力部におけるトルクがリアルタイムで特定される。これらの値からまた、トルク推定器を用いて送込みトルクが特定される。
【0036】
一つのさらなる有利な構成において本発明に係る方法はまた、以下の作用ステップ、すなわち、
送込みトルクを特にリアルタイムで、実体変速機の軸方向慣性モーメントと、測定を用いて、特に下流のリアルタイムアルゴリズムを用いて特定された、実体変速機の変速機出力部の角加速度と、実体変速機の変速機出力部の測定されたトルクとに基づいて計算するステップを有する。
【0037】
これに対応して一つの有利な構成においてシステムは、変速機の送込みトルクを、特にリアルタイムで、実体変速機の軸方向慣性モーメントと、測定を用いて特定された、実体変速機の変速機出力部の角加速度と、実体変速機の変速機出力部の測定されたトルクとに基づいて計算するための第三のモジュールを有する。
【0038】
本発明の一つのさらなる有利な構成において、変速機出力部の角加速度と、変速機の軸方向慣性モーメントとから計算された、特にダイナミックなトルクは、好ましくは相応にリアルタイムで調整された変速機出力部の測定されたトルクに加算される。したがって変速気入力部における送込みトルクは、比較的容易に測定もしくは特定される、角加速度および変速機出力部にかかるトルクというパラメータから決定される。
【0039】
このとき変速機は特に、既存のテストベンチにおいても仮想の検査対象の仮想構成要素として考慮され得る。
【0040】
本発明の一つのさらなる有利な構成において、送込みトルクおよび/または目標(特に目標回転速度)を計算する際、検査すべき変速機のそれぞれ用いられている変速比が考慮される。本発明の一つの変化形態において、軸方向慣性モーメントは、検査すべき変速機のそれぞれ用いられている変速比に依存して考慮される。これにより特に、異なる変速比において変速機の軸方向慣性モーメントにおいて生じる相違を考慮することができる。モデルの正確さはこのようなやり方で増大させることができる。
【0041】
本発明の一つのさらなる有利な構成において、変速機出力部のトルクおよび/または変速機出力部の回転速度はテストベンチにおいて測定される。特に変速機出力部の回転速度から、変速機出力部の角加速度を決定することができる。
【0042】
本発明の一つのさらなる有利な構成において、変速機出力部におけるトルクおよび/または変速機出力部の角加速度は、それぞれフィルタを用いてフィルタリングされ、当該フィルタは好ましくは以下のフィルタ、すなわち、二次ローパスフィルタ、ベッセルフィルタ、バターワースフィルタ、ノッチフィルタ、カルマンフィルタから選択される。信号をフィルタリングすることにより、ノイズを低減するか、あるいは除去することさえできる。
【0043】
本発明の一つのさらなる有利な構成において、変速機出力部の回転速度はさらなる測定値、例えば変速機入力部の回転速度を用いて計算および/または安定化される。
【0044】
一つのさらなる有利な構成において本発明に係る方法はまた、以下の作用ステップ、すなわち、
変速機出力部の角加速度を、変速機出力部の測定された、好ましくは安定化された回転速度から計算するステップ、および/または
好適なセンサを介して角加速度を測定する、もしくは角加速度を読み込むステップを有する。
【0045】
角加速度は例えばフェラリス原理を用いて測定することができる。角速度が測定も計算もされる場合、信号ノイズをさらに低減もしくは除去するためにカルマンフィルタを応用することができる。このようなやり方で、従来のテストベンチにおいて一般的に利用可能である測定技術と、従来技術において既知であるリアルタイムアルゴリズムとを用いて、実体変速機の変速機出力部における角加速度をリアルタイムで計算することができる。当該角加速度は好ましくは入力パラメータとして、送込みトルクの計算に取り込まれる。
【0046】
これに対応して一つの有利な構成においてシステムは、
変速機出力部の角加速度を、変速機出力部の測定された、好ましくは安定化された回転速度から計算するための第四のモジュール、および/または
好適なセンサを介して角加速度を測定するための第五のモジュールを有する。
【0047】
一つのさらなる有利な構成において本発明に係る方法はまた、以下の作用ステップ、すなわち、
変速機入力部のトルクを用いて変速機出力部のトルクを計算する、または安定化するステップを有する。
【0048】
これによっても、変速機入力部にかかっているトルクの測定を介した、変速機出力部におけるトルクの測定から、場合により生じるノイズを除去することができる。
【0049】
これに対応して一つの有利な構成においてシステムは、
変速機入力部のトルクを用いて変速機出力部のトルクを計算する、または安定化するための第六のモジュールを有する。
【0050】
本発明の一つのさらなる有利な構成において、変速機出力部のトルクは、テストベンチの負荷機械の電気的なエアギャップモーメントの測定を用いて決定される。この場合、変速機出力部に、トルクを測定するためのさらなるセンサが設けられている必要はない。
【0051】
上記において本発明の第一の態様である方法に関して説明された特徴および有利点は、本発明の第二の態様であるシステムについても相応に当てはまり、その逆も成り立つ。
【0052】
一つの有利な構成において本発明に係るシステムは、変速機出力部の角加速度を、特に少なくとも一つの測定パラメータを測定することにより決定もしくは測定するための第一のセンサと、変速機出力部のトルクを測定するための第二のセンサとを有する。
【0053】
本発明のさらなる特徴および有利点は、図に基づいた以下の説明に記載されている。図に少なくとも部分的に概略化されて示されるのは以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】テストベンチに設置されている本発明に係るシステムの一つの実施の形態を示す図である。
図2】本発明に係る方法の一つの実施の形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
制御すべきトランスミッションテストベンチ1に設けられた本発明に係るシステム20の一つの実施の形態を表示する図1に基づいて、本発明に係る理論を詳細に説明する。
【0056】
トランスミッションテストベンチ1上に実体変速機3が取り付けられており、当該変速機は、検査対象を表しているパワートレインの実際構成要素として、試験運転を課せられる。テストベンチはこの課題のために、駆動機械7、好ましくは電気機械と、好ましくは同じく電気機械として形成されている負荷機械6とを有する。
【0057】
駆動機械7は変速機入力部5においてトルクTを供給する。負荷機械6はテストベンチ駆動軸8を介して変速機出力部4に負荷を及ぼす。変速機出力部4において調整すべき回転速度nと、駆動機械7により導入される出力と、変速機3により設定される変速比とにより、出力が定義され、負荷機械は当該出力を負荷として与えなければならない。
【0058】
テストベンチを制御するための本発明に係るシステム20は、好ましくは三つのモジュールを有している。
【0059】
テストベンチ1を制御するためのシステム20の第一のモジュール21は、テストベンチ1上に取り付けられている実体変速機3の変速機出力部4における目標回転速度nを計算するために構成されている。そのために第一のモジュール21のデータ処理システム、特にデータストレージ内に、好ましくはリアルタイムベースのモデル2が保存されており、当該モデルは検査対象の仮想構成要素として、仮想変速機3’、弾性軸11、差動装置12、ホイール9a,9bを伴う車軸10a,10bをシミュレーションすることができる。シミュレートされる残余パワートレインは好ましくは、より少ない、あるいはより多い仮想構成要素を有してよい。例えばモデルは仮想構成要素として弾性軸11に加えて、差動装置12も考慮することができる。
【0060】
テストベンチ1上で調整すべき変速機出力部4における目標回転速度nを計算するために、テストベンチ1の作動状態に関する情報がモデル2に入力され、当該情報は、パワートレイン2に関する測定パラメータ、特に少なくとも一つの回転速度n,nおよび/またはトルクT,Tを測定することにより決定される。好ましくは二つの測定パラメータ、すなわち実体変速機3の変速機出力部4の回転速度nと、実体変速機3の変速機出力部4のトルクTである。
【0061】
これらの両方の測定パラメータから、システム20の第三のモジュール23により、変速機3もしくは仮想変速機3’の送込みトルクもしくは変速機内部トルクTinが、特にリアルタイムで計算される。
【0062】
当該送込みトルクTinは、入力パラメータとしてモデル2に入力され、当該入力パラメータに基づいて第一のモジュール21は、目標回転速度nを計算する。このとき入力パラメータTinは好ましくは、時不変であり、すなわち入力パラメータはそれぞれの測定パラメータの数値布置が等しいとき、それぞれの時点で同一の値を取る。
【0063】
このとき送込みトルクTinは第三のモジュール23により、好ましくは以下の関係式に応じて決定される。
【0064】
【数1】
【0065】
式(1)はオイラーの微分方程式の型式を有し、当該微分方程式は本発明により数値的に解かれ、当該式において
α(t) 変速機出力部4の角加速度であり、
実体変速機の軸方向慣性モーメントであり、
テストベンチ駆動軸8の軸方向トルクである。
【0066】
変速機出力部4の角加速度α(t)は、ねじり強さを有して変速機出力部4および負荷機械6と結合されているテストベンチ駆動軸8の回転速度nを導出することにより特定される。
【0067】
システム1はそのために好ましくは、第一のセンサ24、例えばインクリメンタルエンコーダを有し、当該インクリメンタルエンコーダは負荷機械6のロータおよび/またはテストベンチ駆動軸8の回転を検出するために構成されている。代替的に負荷機械6は、独自の回転速度センサを利用可能であってもよく、当該独自の回転速度センサは回転速度nをシステム1の第三のモジュール23に提供する。このとき回転速度nは例えば、負荷機械6により生じさせられる交番電磁界に基づいて決定することができる。
【0068】
このとき角加速度α(t)は、変速機出力部4における回転速度nの数値微分を用いて以下の式から得られる。
【0069】
【数2】
【0070】
ここで測定信号、例えばインクリメンタルエンコーダの信号の品質を改善するために、様々なフィルタリングを信号に応用することができ、それにより信号の品質を向上させる。そのために特に二次ローパスフィルタ、ベッセルフィルタ、バターワースフィルタ、あるいはまたノッチフィルタが適している。カルマンフィルタも応用することができる。
【0071】
付加的または代替的に、変速機入力部5における回転速度nを測定することもできる。変速機3の変速比を介して当該回転速度nから、好ましくは変速機出力部4における回転速度を導き出すことができる。回転速度nは別個の回転速度センサ26を用いて、特にねじり強さを有して変速機3の変速機入力部5と結合されている負荷機械6において測定することができる。このときセンサ26は駆動機械7の構成部材であってよく、あるいは本発明に係るシステム20の付加的なセンサであって、駆動機械7に、または駆動機械7と変速機入力部5との間に設けられているセンサであってもよく、それにより回転速度nを測定する。
【0072】
変速機入力部5における回転速度nも、変速機出力部4における回転速度nも存在する場合、センサフュージョン法もしくはインフォメーションフュージョン法を応用することができ、それによりnおよびnに関するデータを、場合により変速機の変速比iを利用して結合し、それにより、送込みトルクTinを決定するために重要である変速機出力部4における回転速度信号の品質を向上させる。センサフュージョンもしくはインフォメーションフュージョンの際、測定信号は好適なやり方でまとめられ、それにより現実のより正確な再現を生じさせる。
【0073】
加えて角加速度α(t)は、例えばフェラリス原理を用いて直接的に測定することができる。直接的に測定された当該角加速度α(t)と、例えば変速機出力部4における回転速度nであって、例えば負荷機械6において決定される回転速度が存在するとき、ここでもセンサフュージョン法もしくはインフォメーションフュージョン法を用いることができ、それにより同じく角加速度α(t)の信号の品質を向上させる。
【0074】
変速機3,3’の軸方向慣性モーメントJは好ましくは以下の式から得られる。
【0075】
【数3】
【0076】
このときJは変速機入力部5において測定された慣性モーメントであり、Jは変速機出力部4において測定された変速機3の慣性モーメントであり、それぞれ変速比i1.Gangを有するファーストギヤにおけるものである。慣性モーメントJ4,および変速比i1.Gangに対して、本発明によれば好ましくは近似値を用いることができる。
【0077】
したがって変速機3,3’のファーストギヤにおける軸方向慣性モーメントJは、好ましくは他の全ての変速比に対しても当てはめることができ、すなわち概算において一定であると想定することができる。
【0078】
第三のモジュール23において用いられる軸方向慣性モーメントJに対する値は、好ましくは第一のモジュール21において目標回転速度nを計算するために用いられる値でもあるべきものと想定される。すなわち、送込みトルクTinを決定するために用いられる値は好ましくは、本発明に係るモデル2内で目標回転速度nを計算するために用いられる軸方向慣性モーメントJに対する値と同一であるべきものと想定される。
【0079】
式(1)から得られる、変速機出力部4におけるトルクTは好ましくは、テストベンチ駆動軸8に設けられたトルクセンサ25を用いて測定することができる。当該測定されたトルクTは、変速機出力部4におけるトルクに対応する。
【0080】
トルクセンサ25から得られる信号の品質も、様々な信号フィルタを応用して向上させることができる。
【0081】
変速機出力部4におけるトルクTの値を、特に変速機3の変速比iを十分に利用して計算するために、付加的に変速機入力部5におけるトルクTを用いることができる。代替的に変速機出力部4におけるトルクTの測定信号を、変速機入力部5におけるトルクTを用いて、特にまたセンサフュージョン法もしくはインフォメーションフュージョン法を十分に利用して安定させることが行われてよい。
【0082】
代替的または付加的に、変速機出力部4におけるトルクTを計算および/または安定化するために、負荷機械6のエアギャップモーメントの測定を用いることもできる。
【0083】
第三のモジュール23内で計算された送込みトルクTinは、変速機出力部4,4’における回転速度nを計算するためにモデル2内に供給される。このとき送込みトルクTinは特に、残余パワートレインの挙動をシミュレーションする際に変速機3,3’の軸方向慣性モーメントJを考慮するのに役立つ。
【0084】
計算された回転速度nは好ましくは、テストベンチを制御するため、特に負荷機械6を制御するためのシステム1の第二のモジュール22に出力される。このとき第二のモジュール22は本発明に係るシステム20の部分であっても、すでにテストベンチ1上に設けられている制御部の部分であってもよい。
【0085】
上記において図1に基づいて説明されたテストベンチ1を制御するための原理は、図2に基づいて個々の方法ステップに分けられる。
【0086】
モデルにおけるシミュレーションのために送込みトルクTinを計算できるように、まず角加速度α(t)が、好ましくは変速機出力部4の測定された回転速度nに基づいて計算される(101a)。代替的または付加的に、角加速度α(t)は好適なセンサを介して測定される(101b)。付加的に変速機出力部のトルクTが測定されるか、あるいは変速機入力部5のトルクTを用いて計算されるか、または付加的に安定化される(101c)。
【0087】
次のステップにおいて送込みトルクTinはリアルタイムで計算され、入力パラメータとして、図1に関して説明されたように計算された、実体変速機3の軸方向慣性モーメントJと、角加速度α(t)と、実体変速機3の変速機出力部4におけるトルクTとが入力される。
【0088】
モデル2において、変速機出力部4における目標回転速度nは、送込みトルクTinおよび残余パワートレインであって、好ましくは駆動軸11、差動装置12、車軸10a,10bおよびホイール9a,9bから成る残余パワートレインのさらなる特性を用いて計算される(102)。当該目標回転速度nに基づいてテストベンチ1、特に当該テストベンチの負荷機械6が制御される(103)。
【0089】
説明された制御プロセスは、実体変速機3および仮想の弾性軸11を備えるパワートレインのためのテストベンチ1の制御ループを可能にし、当該制御ループは、変速機出力部4における回転速度nを調整すべきとき、テストベンチ1の安定した運転を保証する。
【0090】
上記において説明された実施の形態は、本発明の保護範囲、応用、および構成を何ら制限すべきでない例のみを扱っている。むしろ上記の説明を介して、当業者には少なくとも一つの実施の形態を実施するためのガイドラインが与えられ、特に説明された構成部材の作用および構成に関して、請求項および請求項と同等の特徴の組み合わせから生じるような保護範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
1 テストベンチ
2 パワートレイン
3 変速機
4 変速機出力部
5 変速機入力部
6 負荷機械
7 駆動機械
8 テストベンチ駆動軸
9a,9b ホイール
10a,10b 車軸部分
11 駆動軸
12 差動装置
20 システム
21 第一のモジュール
22 第二のモジュール
23 第三のモジュール
24 第一のセンサ
25 第二のセンサ
26 第三のセンサ
27 第四のセンサ
in 送込みトルク
変速機入力部のトルク
変速機出力部のトルク
変速機入力部の回転速度
変速機出力部の回転速度
α(t) 角加速度
軸方向慣性モーメント
変速機出力部における慣性モーメント
変速機入力部における慣性モーメント
図1
図2