IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化成品工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-包装用シート 図1
  • 特許-包装用シート 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】包装用シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230627BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230627BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230627BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20230627BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20230627BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230627BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230627BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230627BHJP
   B65D 85/48 20060101ALI20230627BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
B32B5/18
B32B27/32 Z
C08L23/04
C08K5/42
C08L71/02
C08K5/09
C08K5/20
B65D85/48
B65D65/40 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020024994
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2020158758
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019056305
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】落合 哲也
(72)【発明者】
【氏名】結城 正太
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136755(JP,A)
【文献】特開平10-101816(JP,A)
【文献】特開2009-155423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
B32B 5/18
B32B 27/32
C08L 23/04
C08K 5/42
C08L 71/02
C08K 5/09
C08K 5/20
B65D 85/48
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂組成物で構成されたポリエチレン系樹脂発泡シートが備えられている包装用シートであって、
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートが少なくとも一方の表面に露出するように備えられ、
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートがアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を備え、
前記アニオン系界面活性剤が、前記表面においてコーティングされているか、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートに練り込まれているかの何れかの状態で備えられ、
前記ノニオン系界面活性剤が、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートに練り込まれて備えられており、該ノニオン系界面活性剤が、HLB値が15以上のポリオキシエチレン系界面活性剤であり、
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートには高分子型帯電防止剤が含有されていない包装用シート。
【請求項2】
前記表面での前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面抵抗率が1×10Ω以上1×1012Ω以下である請求項1記載の包装用シート。
【請求項3】
前記アニオン系界面活性剤が、前記表面において前記コーティングされている請求項1又は2記載の包装用シート。
【請求項4】
前記表面における前記アニオン系界面活性剤と前記ノニオン系界面活性剤との合計量が1mg/m以上1000mg/m以下である請求項1乃至の何れか1項に記載の包装用シート。
【請求項5】
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートにおける脂肪酸化合物の含有量が7ppm以下である請求項1乃至の何れか1項に記載の包装用シート。
【請求項6】
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるステアリン酸アミドの含有量が5ppm以下である請求項記載の包装用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用シートに関し、より詳しくは、ポリエチレン系樹脂発泡シートを備えた包装用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡シートやポリエステル系樹脂発泡シートなどに比べて柔軟であり緩衝性に優れている。
そのため、電子部品、家電製品、ガラス板などといった物品を包装するための包装用シートとしてポリエチレン系樹脂発泡シートが広く用いられている。
この種の包装用シートとしては、包装する物品と接する面にポリエチレン系樹脂発泡シートを露出させるようにしたシートが知られており、ポリエチレン系樹脂発泡シート単独のシートやポリエチレン系樹脂発泡シートの片面に表装シートなどが積層されたものなどが知られている。
該包装用シートは、フラットディスプレイパネルの基板となるガラス板、半導体基板、金属板などの部材を保管したりする際にこれらの部品間に介挿させる合紙などとしても用いられている。
【0003】
この合紙などに利用される包装用シートには、ガラス板や金属板などといった物品に対して異物を付着させることを防止すべく帯電防止性が求められている。
そのためにポリエチレン系樹脂発泡シートに対して帯電防止性を発揮させる取り組みが広く行われている。
ポリエチレン系樹脂発泡シートに帯電防止性を発揮させる方法としては、高分子型帯電防止剤と称されるポリマータイプの帯電防止剤や、低分子型帯電防止剤と称される界面活性剤をポリエチレン系樹脂発泡シートの形成材料中に含有させる方法が知られている。
【0004】
前記界面活性剤は、通常、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面にブリードアウトして帯電防止性を発揮する。
そのため、このようなポリエチレン系樹脂発泡シートをガラス板の合紙などとして使用するとブリードアウトした界面活性剤がガラス板の表面に付着する。
前記高分子型帯電防止剤は、ポリエチレン系樹脂発泡シートへの界面活性剤の添加量を減らして界面活性剤がガラス板に付着することを防止する目的で利用されたりしている。
なお、下記特許文献1にも記載のとおり、界面活性剤は、ガラス板などの物品に付着しても該物品を水洗することで容易に除去できる場合があり、むしろ界面活性剤が水洗後の物品の表面を清浄にするのに有効に作用することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-42556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
界面活性剤の使用は、ポリエチレン系樹脂発泡シートにタック性を発現させる要因となる。
表面にタック性が生じたポリエチレン系樹脂発泡シートを包装用シートとして用いる際には、物品の包装前に表面に異物が付着し易い状況が生じ得る。
そのため、タック性が生じたポリエチレン系樹脂発泡シートを包装用シートに用いると、包装する物品に異物が付着するおそれが生じる。
上記のようなことから水洗後の物品の表面に十分良好な清浄性を発揮させることが困難になっている。
しかしながら、このような問題を解決するのに特に有効な方法は見出されていない。
そこで、本発明は、保護対象となる物品の水洗後の表面を十分清浄な状態とすることが可能な包装用シートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討したところ、ポリエチレン系樹脂発泡シートでの帯電防止に特定の界面活性剤を組み合わせて用いることで上記の要望を満足させ得る包装用シートが得られることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
上記のような課題を解決するための本発明は、
ポリエチレン系樹脂組成物で構成されたポリエチレン系樹脂発泡シートが備えられている包装用シートであって、
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートが少なくとも一方の表面に露出するように備えられ、
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートがアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を備え、
前記アニオン系界面活性剤が、前記表面においてコーティングされているか、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートに練り込まれているかの何れかの状態で備えられ、
前記ノニオン系界面活性剤が、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートに練り込まれて備えられており、該ノニオン系界面活性剤が、HLB値が15以上のポリオキシエチレン系界面活性剤である包装用シートを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、アニオン系界面活性剤と特定のノニオン系界面活性剤とがポリエチレン系樹脂発泡シートに備えられているため包装した物品の水洗後の表面を十分清浄な状態とすることが可能な包装用シートが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の包装用シートの一使用態様を示した概略図。
図2】本発明の一実施形態に係る包装用シートの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の包装用シートについて説明する。
以下においては、包装用シートがポリエチレン系樹脂発泡シート単独で構成されている場合を例示する。
また、以下においては、押出発泡シートにコーティングが施された状態のポリエチレン系樹脂発泡シートを例示する。
より詳しくは、本実施形態の包装用シートは、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂組成物を押出発泡させることによって得られた押出発泡シートの両面にアニオン系界面活性剤がコーティングされてコーティング膜が形成されているポリエチレン系樹脂発泡シートである。
【0012】
図1に示すように本実施形態の包装用シート1は、例えば、ガラス板の合紙として利用される。
本実施形態の包装用シート1は、ガラス板2を複数枚上下方向に積層して積層体100を形成する際に隣接するガラス板2の間に介装させて用いられる。
本実施形態における包装用シート1は、ポリエチレン系樹脂発泡シートで構成されており、両面において前記ポリエチレン系樹脂発泡シートが表面に露出した状態となっている。
本実施形態の包装用シート1は、図2に示すように当該包装用シート1のポリエチレン系樹脂発泡シートは、基体となる押出発泡シート10と、押出発泡シート上に形成されたコーティング膜11,12とを備えている。
本実施形態における前記ガラス板2は、プラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネルなどのフラットディスプレイパネル用のガラス板である。
本実施形態の包装用シート1は、押出発泡シート10の第1の表面に積層された第1コーティング膜11と、前記第1の表面とは反対面となる第2の表面に積層された第2コーティング膜12とを備えている。
従って、本実施形態の包装用シート1を構成しているポリエチレン系樹脂発泡シートは、微視的には第1コーティング膜11/押出発泡シート10/第2コーティング膜12の3層構造を備えている。
【0013】
本実施形態のポリエチレン系樹脂発泡シートを構成するポリエチレン系樹脂に含有させる前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレンが挙げられる。
前記低密度ポリエチレン系樹脂としては、例えば、中低圧法によって重合される直鎖低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)や、高圧法によって分子構造中に長鎖分岐が形成された低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂発泡シートを構成するポリエチレン系樹脂組成物には、ポリエチレン系樹脂を1種単独で含有させる必要はなく、2種以上を含有させてもよい。
ポリエチレン系樹脂組成物に含有させるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0014】
前記低密度ポリエチレン樹脂としては、メルトマスフローレイト(以下「MFR」ともいう)が2~6g/10minで、樹脂密度が925kg/m以上、935kg/m以下の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を用いることが好ましい。
【0015】
上記のメルトマスフローレイト(MFR)は、本明細書中においては、特段の断りがない限りにおいて、JIS K 7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)」及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載の方法(但し、試験温度190℃、荷重21.18N)により測定される。
【0016】
本実施形態の押出発泡シート10に含まれる前記ポリエチレン系樹脂として、上記のような密度を有していることが好ましいのは、樹脂密度が925kg/m未満では、押出後の発泡シートからの発泡剤の逸散が速く、樹脂自体の剛性が小さく、収縮を抑制できなくなるおそれがあるからである。また、上記のような密度を有していることが好ましいのは、樹脂密度を935kg/mを超えた値とすると樹脂自体の剛性が大きすぎて包装用シートが良好なクッション性を示さなくなるおそれを有するためである。
【0017】
本実施形態のポリエチレン系樹脂発泡シートには、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とが備えられている。
これらの界面活性剤の内、押出発泡シート10を構成するポリエチレン系樹脂組成物には、ノニオン系界面活性剤が含有されている。
即ち、前記ノニオン系界面活性剤は、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートに練り込まれた状態で備えられている。
【0018】
前記アニオン系界面活性剤は後段において詳述するように前記第1コーティング膜11と、前記第2コーティング膜12とに含まれた状態でポリエチレン系樹脂発泡シートに備えられている。
即ち、ポリエチレン系樹脂発泡シートを構成するポリエチレン系樹脂組成物には、押出発泡シート10を構成するポリエチレン系樹脂組成物の他に前記第1コーティング膜11及び前記第2コーティング膜12を構成するアニオン系界面活性剤が含まれている。
前記アニオン系界面活性剤は、前記第1コーティング膜11や前記第2コーティング膜12に含有させるだけでなく、ノニオン系界面活性剤とともに押出発泡シート10に含有させてもよい。
即ち、前記アニオン系界面活性剤は、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面においてコーティングされた状態で備えられているか、ポリエチレン系樹脂発泡シートに練り込まれているかの何れの状態で備えられてもよい。
ポリエチレン系樹脂発泡シートに練り込まれて備えられる場合、アニオン系界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤と同様に押出発泡シート10の内部に含まれた状態となる。
【0019】
本実施形態における前記ノニオン系界面活性剤は、ポリオキシエチレン系界面活性剤である。
前記ポリオキシエチレン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
ポリオキシエチレン系界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などであってもよい。
前記ポリオキシエチレン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルのいずれかであることが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであることがより好ましい。
【0020】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン数が2~60の親水部と炭素数が8~24のアルキルによる親油部とが前記親水部の末端の酸素原子を介してエーテル結合した化合物やこれらの混合物が挙げられる。
具体的には、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルやこれらの内の2種以上を混合した混合物などが挙げられる。
【0021】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートに練り込まれた状態で備えられることにより、グリス、金属石鹸などの水洗によって容易に除去できない付着物がガラス板に生じることを抑制する効果を発揮する。
このような効果をより顕著に発揮させる上において、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、HLBの値が所定の範囲内となっていることが好ましい。
本実施形態における前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、HLBが15以上であることが好ましく、HLBが16以上であることがより好ましく、HLBが17以上であることがさらに好ましい。
【0022】
本実施形態における「HLB」の値は、グリフィン法によって求められる値を意味し、下記式(A)によって求められる値を意味している。

HLB= 20 × 親水部の式量の総和/分子量 ・・・(A)
【0023】
前記ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンミリスチン酸エステル、ポリオキシエチレンパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステルなどが挙げられる。
【0024】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンミリスチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステルなどが挙げられる。
【0025】
前記ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレングリセリンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノミリスチン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノオレイン酸エステルなどが挙げられる。
【0026】
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるノニオン系界面活性剤の含有量は、通常、0.05質量%以上2.0質量%以下とされる。
前記ポリエチレン系樹脂組成物における前記ノニオン系界面活性剤の含有量としては、前記ポリエチレン系樹脂の含有量を100質量部としたときに、通常、0.05質量部以上とされる。
前記ノニオン系界面活性剤の前記含有量は、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。
前記ノニオン系界面活性剤の前記含有量は、2.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましい。
【0027】
前記ノニオン系界面活性剤は、1種を単独で用いる必要はなく、2種以上を混合して前記ポリエチレン系樹脂組成物に含有させてもよい。
2種以上のノニオン系界面活性剤を含有させる場合は、少なくとも1種のノニオン系界面活性剤を、HLBが前記のような値を示すポリオキシエチレン系界面活性剤とすればよく、全部をHLBが前記のような値を示すポリオキシエチレン系界面活性剤で構成することが好ましい。
2種以上のノニオン系界面活性剤を含有させる場合、全てのノニオン系界面活性剤の内でHLBが前記のような値を示すポリオキシエチレン系界面活性剤の占める割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
複数のノニオン系界面活性剤を使用する場合、その含有量の合計値が上記の数値範囲内となるように前記ポリエチレン系樹脂組成物に含有させることが好ましい。
また、含有するノニオン系界面活性剤の合計量を100質量%としたときに、50質量%以上が上記のようなポリオキシエチレンアルキルエーテルとなるように調整されることが好ましい。
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルが前記ノニオン系界面活性剤に占める割合は、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることがとりわけ好ましい。
【0028】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩等のスルホン酸塩系界面活性剤;脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン酸塩、N-アシルグルタミン酸塩等のカルボン酸塩系界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩系界面活性剤;アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩系界面活性剤などを採用することができる。
なお、上記のアニオン系界面活性剤は、1種を単独で用いる必要はなく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるアニオン系界面活性剤の含有量は、前記ノニオン系界面活性剤よりも多くなるように調整されることが好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるアニオン系界面活性剤の含有量は、通常、0.05質量%以上5.0質量%以下とされる。
そこで押出発泡シートを作製するための前記ポリエチレン系樹脂組成物における前記アニオン系界面活性剤の含有量は、前記コーティング膜でのアニオン系界面活性剤の含有量にもよるが、前記ポリエチレン系樹脂の含有量を100質量部としたときに、通常、0.05質量部以上5.0質量部以下とされる。
【0030】
本実施形態の押出発泡シート10を構成する前記ポリエチレン系樹脂組成物には、任意成分として高分子型帯電防止剤を含有させてもよい。
前記高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、エチレン-メタクリル酸共重合体などのアイオノマー、ポリエチレングリコールメタクリレート系共重合体等の第四級アンモニウム塩、特開2001-278985号公報に記載のオレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体等が挙げられる。
【0031】
前記ポリエチレン系樹脂組成物における前記高分子型帯電防止剤の含有量は、1質量%以下とされる。
尚、本実施形態における包装用シートでは、前記高分子型帯電防止剤の減量により包装対象となる物品の水洗後の表面清浄度が改善される傾向を示す。
そこで、前記含有量は、0.5質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%(検出限界未満)であることが特に好ましい。
即ち、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートは、高分子型帯電防止剤を全く含んでいないことが好ましく、含んでいたとしてもその含有量については1質量%以下とされる。
【0032】
本実施形態の押出発泡シート10は、押出発泡法によって製造されるため、これまでに述べた成分に加えて発泡に必要な成分がさらに含有され得る。
この発泡のための成分としては、発泡剤や気泡調整剤を挙げることができる。
【0033】
前記発泡剤としては、イソブタン、ノルマルブタン、プロパン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタンなどの炭化水素、二酸化炭素、窒素などの無機ガスを挙げることができる。
なかでも、前記発泡剤としては、イソブタンとノルマルブタンとの混合物である混合ブタンが好ましい。
【0034】
このようにして混合ブタンを用いると、イソブタンによって、押出工程における発泡剤の急激な逸散が抑制される。一方、ポリエチレン系樹脂との相溶性が優れるノルマルブタンが、連続気泡率の増大を抑制するので、収縮が少なく、かつ連続気泡率の少ないクッション性に優れた押出発泡シート10を得ることができる。
【0035】
押出発泡に際して用いる発泡剤の量は、求める発泡度合いにもよるが、ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、通常、5質量部以上、25質量部以下とされる。
通常、発泡剤の添加割合がこのような範囲とされるのは、発泡剤が5質量部未満であると十分な発泡を得にくく、25質量部を超えると気泡膜が破れて良好なポリエチレン系樹脂発泡シートが得られなくなるおそれを有するためである。
【0036】
発泡剤によって形成される気泡を調整するための前記気泡調整剤としては、タルク、シリカなどの無機粉末などが挙げられる。分解型発泡剤としても用いられる多価カルボン酸と炭酸ナトリウムあるいは重曹(重炭酸ナトリウム)との混合物、アゾジカルボン酸アミドなどを前記気泡調整剤として用いてもよい。
これらは単独で用いても、複数のものを併用してもよい。
この気泡調整剤の添加量は、ポリエチレン系樹脂100質量部あたり0.5質量部以下とすることが好ましい。
【0037】
本実施形態の押出発泡シート10には、上記のような成分以外にも、必要に応じて、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0038】
ポリエチレン系樹脂、ノニオン系界面活性剤、及び、アニオン系界面活性剤の他にポリエチレン系樹脂発泡シートに含まれる成分の割合は、10質量%以下であることが好ましく5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
即ち、ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるポリエチレン系樹脂、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤の合計割合は90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
上記のようなポリエチレン系樹脂組成物によって構成される押出発泡シート10の密度(見掛け密度)については、特に限定されるものではなく、ガラス板の合紙などとして一般に求められているクッション性を発揮させる程度であれば良く、通常、70kg/m未満とされ、好ましくは10kg/m以上、60kg/m以下とされる。
このような密度を選択し得るのは、密度が70kg/m以上では、押出発泡シート10の柔軟性が不足して緩衝性が低いものとなるおそれを有するためであり、密度が小さすぎると押出発泡シート10の強度が十分なものにならない結果、緩衝性が低いものとなるおそれを有するためである。
さらに、気泡膜の厚みが薄くなりすぎると、収縮が大きくなる結果、長尺な押出発泡シート10を作製した際に、これを一つのロールとして巻き取ることが困難になる。
したがって、押出発泡シート10の密度は、10kg/m以上とすることが好ましく、15kg/m以上とすることが好ましい。
【0040】
本実施形態の包装用シートは、前記のように押出発泡シート10の両面にアニオン系界面活性剤を含むコーティング膜11,12を有する。
押出発泡シート10の前記第1コーティング膜11と前記第2コーティング膜12とは、含有するアニオン系界面活性剤の種類や含有量が共通していても共通していなくてもよい。
前記包装用シートをガラス板の合紙として表裏を気にせず用いることができる点において第1コーティング膜11のアニオン系界面活性剤の種類や含有量は、第2コーティング膜12と共通していることが好ましい。
【0041】
第1コーティング膜11や第2コーティング膜12に含まれるアニオン系界面活性剤は、ガラス板などの包装する物品の表面からの水洗による除去が長期にわたって可能であることが好ましい。
即ち、アニオン系界面活性剤は、空気中の酸素や水分、紫外線などによる反応が生じ難く、水溶性が失われ難いものが好ましい。
前記第1コーティング膜11及び前記第2コーティング膜12は、下記一般式(1)で表されるアニオン系界面活性剤を含むことが好ましい。
【0042】
【化1】
【0043】
ここで、一般式(1)において、「R-」は下記一般式(2)で表される1価の有機基であり、「n」は1~150の整数で、「-X」はアニオン性官能基である。
【0044】
【化2】
【0045】
ここで、一般式(2)における「m」は1~14の整数である。
【0046】
即ち、一般式(1)の「R-」は、直鎖状又は分枝状アルカンから1個の水素原子を除いた1価基である。
【0047】
前記アニオン性官能基(-X)としては、例えば、下記一般式(a1)~(a4)で表されるものが挙げられる
【0048】
【化3】
【0049】
ここで一般式(a1)~(a4)における「M」は、1価の陽イオンを表している。
【0050】
なお、一般式(2)における「m」は、6以上(6~14)であることが好ましく、8以上(8~14)であることがより好ましく、10以上(10~14)であることが特に好ましい。
「m」は、12であるか13であるかのいずれかであることがとりわけ好ましい。
また、前記アニオン性官能基(-X)は、一般式(a2)で表される硫酸塩であることが好ましい。
さらに、上記の陽イオン(M)としては、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオンなどの金属イオンやアンモニウムイオンが好適である。
なかでも前記陽イオン(M)は、ナトリウムイオンであることが好ましい。
【0051】
一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムか、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウムかの何れかであることがとりわけ好ましい。
【0052】
前記第1コーティング膜11及び前記第2コーティング膜12には、上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤が1種単独で含まれていても2種以上含まれていてもよい。
前記第1コーティング膜11及び前記第2コーティング膜12には、上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤以外のアニオン系界面活性剤を含有させることも可能であるが、前記第1コーティング膜11及び前記第2コーティング膜12に含有されるアニオン系界面活性剤は、95質量%以上が上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤であることが好ましい。
前記第1コーティング膜11及び前記第2コーティング膜12に含有されるアニオン系界面活性剤に占める上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤の割合は98質量%以上であることが特に好ましい。
第1コーティング膜11及び第2コーティング膜12は、実質的に上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤のみで構成されていることがとりわけ好ましい。
【0053】
前記コーティング膜11,12に含有されるアニオン系界面活性剤は、包装用シート1によって表面保護される保護対象物である前記ガラス板2と包装用シート1との接触によって該ガラス板2の表面に移行し、該ガラス板2の表面に親水性の保護膜を形成する。
しかも、本実施形態における包装用シート1は、ポリエチレン系樹脂発泡シートにポリオキシエチレン系のノニオン系界面活性剤が練り込まれていることでガラス板に対して親水性の低い付着物が生じることも抑制される。
このことによりガラス板2は、水洗後に清浄な表面状態となり得る。
しかも、ガラス板2は、水洗後に清浄な表面状態となり得る状態が長期間にわたって持続され得る。
したがって、ガラス板2は、例えば、本実施形態の包装用シート1を合紙として介挿させた状態で3ヶ月以上にも及ぶ長期保管がされた後でもその表面を容易に清浄化させることができる。
【0054】
本実施形態において上記のような鎖長のアルキル基を有するアニオン系界面活性剤をコーティング膜に含有させているのは、同じアニオン系界面活性剤でもアルキル基の鎖長が長かったりするとガラス板2の表面の保護膜に十分な親水性が発揮されず、ガラス板2の表面に水洗除去がアニオン系界面活性剤よりも容易ではない親油性の付着物を生じ易くなるためである。
また、同じような鎖長のアルキル基を有していても界面活性剤がアニオン系界面活性剤ではなくノニオン系界面活性剤であると、ガラス板2の表面の保護膜に十分な親水性が発揮され難くなる。
【0055】
ガラス板2の表面に親油性の付着物を生じさせないようにする上で、本実施形態のポリエチレン系樹脂発泡シートでは、脂肪酸化合物の含有量が所定以下であることが好ましい。
具体的には、ポリエチレン系樹脂発泡シートにおける脂肪酸化合物の含有量は、10ppm以下であることが好ましく、9ppm以下であることがより好ましく、8ppm以下であることがさらに好ましく、7ppm以下であることが特に好ましい。
ポリエチレン系樹脂発泡シートにおける脂肪酸化合物の含有量は、6ppm以下であってもよく、5ppm以下であってもよい。
【0056】
ポリエチレン系樹脂発泡シートは、脂肪酸化合物のなかでも、ステアリン酸アミドの含有量が所定以下であることが好ましい。
具体的には、ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるステアリン酸アミドの含有量は、7ppm以下であることが好ましく、6ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましい。
ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるステアリン酸アミドの含有量は、4ppm以下であることが特に好ましい。
【0057】
脂肪酸化合物は、ポリエチレン系樹脂の外部滑剤や内部滑剤などとして市販の樹脂ペレット中に含まれることがある。
したがって、ポリエチレン系樹脂発泡シートに含まれるポリエチレン樹脂として市販品を採用する場合は、脂肪酸化合物が上記のような含有量のものを採用することが好ましい。
即ち、前記ポリエチレン系樹脂は、脂肪酸化合物の含有量が10ppm以下であることが好ましく、9ppm以下であることがより好ましく、8ppm以下であることがさらに好ましく、7ppm以下であることが特に好ましい。
ポリエチレン系樹脂における脂肪酸化合物の含有量は、6ppm以下であってもよく、5ppm以下であってもよい。
また、ポリエチレン系樹脂におけるステアリン酸アミドの含有量は、7ppm以下であることが好ましく、6ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましい。
ポリエチレン系樹脂におけるステアリン酸アミドの含有量は、4ppm以下であることが特に好ましい。
【0058】
本実施形態においては、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面に前記アニオン系界面活性剤や前記ノニオン系界面活性剤が存在することでこれらの脂肪酸化合物がポリエチレン系樹脂発泡シートに含まれても包装する物品に脂肪酸化合物が付着することが抑制される。
しかしながら、脂肪酸化合物の付着をより確実に防止する上で脂肪酸化合物の含有量は上記のような値とされることが好ましい。
【0059】
前記アニオン系界面活性剤や前記ノニオン系界面活性剤が押出発泡シートに練り込まれる場合、押出発泡シートにおけるこれらの界面活性剤の濃度よりも高い濃度でこれらの界面活性剤を含むマスターペレットを利用することが有効である。
前記アニオン系界面活性剤や前記ノニオン系界面活性剤を含むマスターペレットを使って押出発泡シートを作製する際には、通常、界面活性剤を含まないポリエチレン系樹脂ペレットとマスターペレットとが混合された混合ペレットを使って押出発泡が実施される。
【0060】
このとき、マスターペレットとポリエチレン系樹脂ペレットとの合計に占めるマスターペレットの割合を「X(%)」とし、マスターペレットの希釈倍率を「Y(倍)」とした場合、「X(%)」と「Y(倍)」との間には、概ね下記の関係が成り立つ。
Y=(100/X)
そのため、前記脂肪酸化合物を含んでいないポリエチレン系樹脂ペレットでマスターペレットが希釈される場合、前記マスターペレットには、前記脂肪酸化合物が前述の含有量のY倍の割合で含まれてもよい。
このことは界面活性剤をマスターペレットで押出発泡シートに含有させる場合だけでなく、各種添加剤をマスターペレットで押出発泡シートに含有させる場合も同じである。
【0061】
前記ように脂肪酸化合物は、押出機のシリンダーの内壁面やスクリューのフライトなどと当該押出機内で溶融混練される樹脂との間の過度な摩擦を抑制するための外部滑剤などとして機能する。
本実施形態においては、界面活性剤を高濃度で含有するマスターペレットを用いることで、押出機内においてマスターペレットから界面活性剤の一部がブリードアウトして外部滑剤として作用することを期待することができる。
【0062】
マスターペレットにおける界面活性剤の含有量(アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤との合計含有量)は、例えば、2.5質量%以上とされることが好ましい。
マスターペレットにおける界面活性剤の含有量は、3質量%以上であることがより好ましく、3.5質量%以上とされることがさらに好ましく、4質量%以上とされることが特に好ましい。
マスターペレットにおける界面活性剤の含有量は、5質量%以上であっても、6質量%以上であってもよい。
マスターペレットに過度な割合で界面活性剤を含有させることは難しいため界面活性剤の含有量は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下とされることがさらに好ましい。
【0063】
本実施形態における脂肪酸化合物としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0064】
脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、更にこのようなモノカルボン酸の他に、ダイマー酸等のジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
【0065】
脂肪酸アミドとは、脂肪酸から誘導される酸アミドである。
該脂肪酸アミドとしては、例えば、脂肪族アミン由来のものが挙げられる。
脂肪酸アミドの具体例としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0066】
脂肪酸エステルの具体例としては、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ベヘニン酸モノグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リシノール酸モノグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(5)グリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)グリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)モノオレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ポリアジピン酸ペンタエリストールステアレート、ステアリン酸ステアリル、1,2-オキシステアリン酸、硬化ひまし油等が挙げられる。
【0067】
ポリエチレン系樹脂発泡シートの脂肪酸化合物の含有量の測定方法は、公知の方法を用いることができる。
その方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0068】
前記脂肪酸金属塩については、例えば次のように測定される。
沸騰メタノールにポリエチレン系樹脂発泡シートを浸漬して抽出し、放冷して析出した沈殿をろ別する。析出物を希塩酸中に懸濁し、エーテルを用いて溶媒抽出すると、エーテル相に遊離した脂肪酸が、水相に金属がそれぞれ抽出されるので脂肪酸は後述の手法で、金属はICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置等により金属種の特定と定量を行うことができる。
【0069】
前記脂肪酸、前記脂肪酸アミド、及び、前記脂肪酸エステルの定量は、後述する「界面活性剤の定量」の方法と同様に液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)(例えば、TermoSCIENTIFIC社製 「ACCELA」)を使って行うことができる。
【0070】
尚、脂肪酸化合物の定量に用いる検量線は、定量する脂肪酸化合物(脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル)の1000ppm濃度の基準溶液(メタノール溶液)をメタノールで希釈して作製した濃度の異なる5種類の標準液(5ppm、2ppm、1ppm、0.5ppm、0.2ppm)を使って作成する。
また、LC-MS/MSで測定する試料は、以下のようにして調製する。
・ポリエチレン系樹脂発泡シートを約2mm角の大きさに切断して約0.15gの抽出試料を採取する。
・該抽出試料を精秤し、該抽出試料を10mlのメタノールとともにPTFE(ポリテトラフロロエチレン)製の耐圧容器に入れ、該耐圧容器を密閉する。
・密閉した耐圧容器を120℃のオーブンで2時間加熱した後、オーブンから取り出して常温の室内で自然放冷する。
・室温まで冷却された耐圧容器を開けて容器内の抽出液を濾紙(No.5A)で濾過する。
・上記の濾過によって得られた濾液をLC-MS/MSでの測定試料とする。
・測定結果から、先に求めた検量線を使って濾液における脂肪酸化合物の量を算出する。
・濾液に含まれる脂肪酸化合物の量からポリエチレン系樹脂発泡シートにおける脂肪酸化合物の含有量(ppm)を求める。
【0071】
本実施形態において前記のようなアニオン系界面活性剤をポリエチレン系樹脂発泡シートの内部からブリードアウトさせるのではなくコーティング膜の状態でポリエチレン系樹脂発泡シートの表面上に保持させることが好ましい。
即ち、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるアニオン系界面活性剤の練り込み量(質量)は、コーティング膜での含有量(第1コーティング膜、第2コーティング膜の合計量)よりも少ないことが好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるアニオン系界面活性剤の練り込み量(質量)は、具体的には、1質量%以下とされることが好ましく、0.5質量%以下とされることがより好ましい
【0072】
アニオン系界面活性剤の練り込み量を制限するのが好ましいのは、当該アニオン系界面活性剤が十分にブリードアウトするまでにガラス板2の表面に親油性の付着物を生じさせてしまうことを抑制するとともにブリードアウトするアニオン系界面活性剤に同伴されてポリエチレン系樹脂発泡シートの内部からオリゴマーなどの親油性の低分子量化合物が滲出することを抑制するためである。
【0073】
前記ガラス板2と接する前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面における前記アニオン系界面活性剤と前記ノニオン系界面活性剤との合計量は、所定の範囲内であることが好ましい。
前記表面におけるが前記アニオン系界面活性剤と前記ノニオン系界面活性剤との合計量は、1mg/m以上1000mg/m以下であることが好ましい。
【0074】
前記第1コーティング膜11及び前記第2コーティング膜12のそれぞれは、押出発泡シート10の単位面積(1m)当りにおける前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤の含有量が、3mg/m以上100mg/m以下であることが好ましい。
それぞれのコーティング膜のポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤の含有量は、3mg/m以上80mg/m以下であることがより好ましく、4mg/m以上50mg/m以下であることが特に好ましい。
尚、コーティング膜の単位面積当たりにおける界面活性剤の含有量は、次のようにして求めることができる。
【0075】
(界面活性剤の定量)
包装用シートから一辺が約10cmの正方形の試料を切り出す。
次に、該試料を50mlの蒸留水に漬けて、23℃の室温下に40分間保管し、界面活性剤を溶出する。
得られた溶出液を、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)で測定し、標準液から得られた検量線をもとに、溶出液における界面活性剤の濃度(d(%))を算出する。
濃度(d(%))と溶出液に用いた蒸留水の量(50ml)から溶出液に含まれる界面活性剤の質量(m(mg)=50×d)を求める。
溶出後の試料を再び50mlの蒸留水に漬けて、同様の測定を行い、溶出液に含まれる界面活性剤の質量(m(mg))を求める。
このような測定を繰り返し、界面活性剤の溶出が検出限界以下となるまで実施し、試験片に付着していた界面活性剤の総量(M=m+m+・・・)を求める。
前記試料の表面積(S:上記においては、約200cm(約100cm×2(両面)))をできるだけ正確に測定し、先に得られた界面活性剤の総量(M)を前記表面積(S)で除してコーティング膜の単位面積当たりの界面活性剤量(M/S)を求めることができる。
尚、前記第1コーティング膜11と前記第2コーティング膜12とを個々に測定する必要がある場合は、試料を厚み方向中央部で切断して2枚のスライス片を作製するか、試料の片面に対する十分なふき取りを行った上で上記のような測定を行えばよい。
また、LC-MS/MSの試験条件は次の通りとすることができる。
【0076】
(LC-MS/MSの試験条件)
・使用装置:
液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)(型番「UHLC ACCELA」Thermo SCIENTIFIC社製)
・カラム:
Thermo製 Hypersil GOLD C18 1.9μm(2.1mmI.D.*100mmL)
・測定条件:
カラム温度(40℃),移動相(A:10mM酢酸アンモニウム/B:アセトニトリル=10/90)
・検量線作成方法:
検出する界面活性剤の標準液を濃度0.01ppm~10ppmの間で数点作製し、同条件でLC-MS/MSにて測定し、検出されるピーク面積と標準液の濃度における検量線を作成する。
【0077】
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートは、上記のようにして界面活性剤が練り込まれたり表面に界面活性剤がコーティングされたりして所望の表面抵抗率となるように調製されることが好ましい。
本実施形態におけるポリエチレン系樹脂発泡シートは、表面抵抗率が1×10Ω以上であることが好ましい。
前記表面抵抗率は、1×10Ω以上であることがより好ましく、1×10Ω以上であることがさらに好ましい。
前記表面抵抗率は、1×1012Ω以下であることが好ましく、1×1011Ω以下であることがより好ましい。
【0078】
表面抵抗率は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定することができる。
即ち、試験装置((株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微少電流計、型名「R3840」及びレジスティビティ・チェンバ、型名「R12702A」)を使用し、ポリエチレン系樹脂発泡シートから採取した試料に、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vで1分間充電後の抵抗値を測定し、次式により算出する。
試料は、幅100mm×長さ100mm×厚み(ポリエチレン系樹脂発泡シートのままの厚み)とする。
測定は、温度20±2℃、相対湿度65±5%RHの環境下で24時間以上状態調節後に実施し、試験環境は、温度20±2℃、相対湿度65±5%RHとする。
試料数(n数)は5個とし、原則的に、それぞれ表裏両面を測定することとする。
【0079】
尚、個々の試料の表面抵抗率は次式により求め、全ての試料についての測定値を算出平均し、その平均値をポリエチレン系樹脂発泡シートの表面抵抗率とする。

ρs=(π(D+d)/(D-d))×Rs

ρs: 表面抵抗率(MΩ)
D: 表面の環状電極の内径(cm)
d: 表面電極の内円の外径(cm)
Rs: 表面抵抗(MΩ)
【0080】
本実施形態において包装用シート1を構成するポリエチレン系樹脂発泡シートは、前記アニオン系界面活性剤が含まれているコーティング液を押出発泡シート10の表面にコーティングすることによって製造される。
即ち、本実施形態の包装用シート1は、前記一般式(1)で表されるアニオン系界面活性剤が含まれているコーティング液を押出発泡シート10にコーティングする工程を実施し、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面に前記コーティング液で形成されたコーティング膜11,12を有する前記包装用シート1を製造することで作製され得る。
【0081】
前記のように製造されるポリエチレン系樹脂発泡シートのコーティング膜11,12に含まれる前記アニオン系界面活性剤の単位面積当たりの含有量は、所定の範囲内であることが好ましい。
より具体的には、前記コーティング液を塗布する前記工程は、前記コーティング膜の単位面積当たりにおける前記アニオン系界面活性剤の含有量が3mg/m以上100mg/m以下となるように実施することが好ましい。
【0082】
上記のようなコーティング膜11,12の形成は、押出発泡シート10の製造に連続して行うことができる。
前記の通り本実施形態に係る押出発泡シート10は、押出発泡法で製造される。
具体的には、押出発泡シート10は、前記ポリエチレン系樹脂組成物を押出機の先端に装着したサーキュラーダイなどから連続的にシート状に押出発泡して押出発泡シートを作製する押出工程、押出されたシートを巻取り機により巻き取ってシートロールを作製する巻き取り工程を行って製造することができる。
【0083】
本実施形態における前記押出工程では、サーキュラーダイから連続的に押出される筒状の発泡体を押出直後に内外から冷却エアを吹き付けて空冷する1次冷却が行われる。本実施形態における前記押出工程では、空冷後(1次冷却後)の発泡体を冷却用マンドレルを用いてさらに冷却する2次冷却が行われる。
前記押出工程では、冷却用マンドレルの下流側に設けたカッターで筒状の発泡体が押出方向に切断しつつ引き取られる。
本実施形態における前記押出工程では、サーキュラーダイの直径よりも径大な外径を有する冷却用マンドレルを使って2次冷却が行われる。
したがって、該2次冷却は、冷却用マンドレルの外周面を1次冷却された筒状の発泡体の内周面に摺接させることによって実施される。
該2次冷却では、1次冷却された筒状の発泡体を冷却しつつ同時に冷却用マンドレルによる拡径も行われる。
前記のように押出方向にカッターで切断された発泡体は、展開されて帯状とされた後で前記原反ロールを構成すべく巻き取られる。
【0084】
前記コーティング膜11,12は、このようにして作製される押出発泡シート10にコーティング液をコーティングすることによって形成される。
前記コーティング膜11,12は、前記アニオン系界面活性剤を含むコーティング液を用意するコーティング液準備工程と、前記押出発泡シート10の両面に前記コーティング液をコーティングする塗布工程と、を実施することで形成させ得る。
該コーティング液のコーティングは、押出工程と並行して実施されても、押出工程が完了した後に改めて実施されてもよい。
即ち、巻取り工程で作製されるシートロールは、コーティング膜の形成されたポリエチレン系樹脂発泡シートがロール状に巻回されたものでも、押出発泡シートだけがロール状に巻回されたものでもよい。
【0085】
前記コーティング液準備工程では、アニオン系界面活性剤のみを含むコーティング液を調製しても、アニオン系界面活性剤とともにコーティング液の粘度を調整するための溶媒を含有するコーティング液を調製してもよい。
前記塗布工程は、ロールコート、キスコート、スプレーコート、刷毛塗り、などといった一般的な方法で実施することができる。
【0086】
コーティング液のコーティングを押出工程と並行して実施する場合、コーティング液の塗布は、冷却用マンドレルよりも上流側で行っても下流側で行ってもよい。
コーティング液のコーティングは、必要であれば、押出し直後の円筒状の発泡体の内外にコーティング液をスプレーコートするようにして行ってもよい。即ち、コーティング液のコーティングは、冷却用マンドレルでの2次冷却前に実施される1次冷却を兼ねるように実施してもよい。
このような場合、ポリエチレン系樹脂発泡シート(円筒状の発泡体)と冷却用マンドレルとの間に生じる摩擦力の軽減を図り得る。
冷却用マンドレルで2次冷却された後のポリエチレン系樹脂発泡シートであっても、通常、その表面温度は、常温(23℃)よりも温度が高いため、コーティング液の塗布を押出工程と並行して実施する場合、コーティング液のコーティングをどの場所で実施してもコーティング液は暖かな状態のポリエチレン系樹脂発泡シートにコーティングされることになる。
そうすると、コーティング膜では、アニオン系界面活性剤が分子運動し易い状態になり、親水性の官能基が表面付近に密に存在し易くなり、ガラス板に水洗除去が容易な保護膜を形成させる上で有利となる。
【0087】
前記塗布工程でポリエチレン系樹脂発泡シートの両面にコーティング膜を形成させるためには、必ずしもポリエチレン系樹脂発泡シートの両面にコーティング液を塗布しなくてもよい。
例えば、ポリエチレン系樹脂発泡シートの一面側のみにコーティング膜を形成させ、シートロールを形成させた際にコーティング膜が形成されていない他面側にコーティング液の一部を転写させる方法を採用してもよい。
【0088】
前記塗布工程を前記押出工程と並行して実施せず押出工程を終えた後に実施する場合、コーティング液の塗布は、シートロールを巻き換える際などに実施することができる。
前記ポリエチレン系樹脂発泡シートは、内部に練り込まれた状態でノニオン系界面活性剤を備えることで、タック性が生じることがあるが、本実施形態においては、アニオン系界面活性剤がコーティングされるためタック性の発現を抑制することができる。
【0089】
本実施形態においては押出発泡によって製造した押出発泡シートをポリエチレン系樹脂発泡シートの基体としているがポリエチレン系樹脂発泡シートの作製法は押出発泡に限定されるものではない。
また、本実施形態においては押出発泡シートの両面にアニオン系界面活性剤をコーティングすることでポリエチレン系樹脂発泡シートを作製しているが、アニオン系界面活性剤のコーティングは、押出発泡シートの片面だけに実施してもよい。
さらに、本実施形態においてはアニオン系界面活性剤のコーティングを実施せず、アニオン系界面活性剤をポリエチレン系樹脂発泡シートに練り込んだ状態とし、該アニオン系界面活性剤をポリエチレン系樹脂発泡シートの表面にブリードアウトさせるようにしてもよい。
【0090】
本実施形態においては包装用シートが単一のポリエチレン系樹脂発泡シートで構成された単層構造の場合を例示しているが、包装用シートは複数のポリエチレン系樹脂発泡シートが積層されたものであってもよい。
本実施形態の包装用シートは、ポリエチレン系樹脂発泡シートの片面に布帛などの繊維シートや金属フィルムが積層されたようなものであってもよい。
【0091】
本実施形態においては包装用シートをガラス板の合紙として用いる場合を例示しているが、本発明の包装用シートは、その用途をガラス板の合紙に限定するものではなく、ガラス板以外の部材でも水洗が予定されているものであれば、その包装等に利用することでガラス板の合紙として用いる場合と同様の効果を期待することができる。
即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例
【0092】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
押出機として、一段目(上流側)の押出機が口径90mmの単軸押出機、二段目(下流側)の押出機が口径150mmの単軸押出機から構成されたタンデム押出機を用いてポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
低密度ポリエチレン樹脂(密度:931kg/m、MFR=4.0g/10min)100質量部に対して、気泡調整剤マスターペレット(アゾジカルボンアミド含有マスターペレット)が0.15質量部の割合となる割合で添加されている配合物を用意した。
また、該配合物には、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:約18)を0.4質量%となる割合で含有させるとともにアニオン系界面活性剤(アルキルスルホン酸ナトリウム)を1.0質量%の割合となるように含有させた。
【0093】
前記配合物を一段目の口径90mmの押出機のホッパーに供給し、該押出機内での最高到達温度が210℃となるように溶融混練した。
また、該第一押出機の途中から発泡剤として混合ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=50/50(モル比))を前記低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対する割合が18質量部となるように圧入し、該押出機でさらに溶融混練を実施した。
この第一押出機での溶融混練によって得られた混練物を接続管を通して二段目の押出機(シリンダー径:φ150mm)に供給し、該第二押出機で発泡に適する温度域(111℃)まで溶融混練物の温度を低下させた。
温度低下させた溶融混練物を第2押出機の先端に接続された口径222mm(スリット0.04mm)のサーキュラーダイより大気中に押出発泡して筒状の発泡体を作製した。
その時の樹脂温度は116℃であった。
【0094】
押出発泡された筒状発泡体は、エアーを吹き付けて冷却した後、直径770mm、長さ650mmの冷却用マンドレル上を沿わせて冷却し、該冷却用マンドレルの後ろ側に設けたカッターで押出し方向に沿って切断して長尺帯状の発泡シート(押出発泡シート)とした。
該押出発泡シートを巻取りスピード50m/minで巻取り、押出発泡シートをロール状にした。
即ち、ノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤との両方が練り込まれ、且つ、高分子型帯電防止剤が全く用いられていないポリエチレン系樹脂発泡シートを押出発泡によって作製した。
【0095】
得られたポリエチレン系樹脂発泡シートは、先述の方法で表面抵抗率を測定し、該表面抵抗率が1×10Ω以上1×1012Ω以下である場合を「〇」として判定し、それ以外を「×」として判定した。
尚、評価項目中の「タック性」、「坪量」、「厚み」については以下のようにして評価した。
(タック性の評価)
まず、ポリエチレン系樹脂発泡シートを5cm×10cmの大きさに切って試料とした。
洗浄・乾燥したガラス板(日本電気硝子株式会社製 無アルカリガラス OA-10Gの上に、試料を乗せ、試料全体に荷重がかかるよう1kgの重りを乗せて恒温恒湿槽(ISUZU製作所社製、商品名「HPAV-120-40」)で65℃×48時間加熱を行った。
加熱後の試料を取り出し、室温まで冷却した後、試料を平らな机の上に置き、試料をガラスから剥がす際の状況を、次のように判定した。
〇:ガラスへの張り付きは無く、ポリエチレン系樹脂発泡シートのみが抵抗無く剥がれる。
△:ポリエチレン系樹脂発泡シートを剥がす際に、少しガラスが浮き上がるが直ぐに離れる。
×:ポリエチレン系樹脂発泡シートとガラスが一緒に持ち上がる。
【0096】
(坪量の測定方法)
ポリエチレン系樹脂発泡シートの坪量は、ポリエチレン系樹脂発泡シートを押出方向に20cmの幅で押出方向と直交方向に切取り、その切片の質量W(g)と面積S(cm)から下記式にて求める。
なお、20cmの幅で押出方向と直交方向に切取れる程の大きさにない場合には、可能な大きさに矩形上に切取り、その切片の質量W(g)と面積S(cm)から下記式にて求める。
坪量(g/m)=W/S×10000
【0097】
上記の坪量の測定結果と、ポリエチレン系樹脂発泡シートの作製に用いたノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤との総合計とによって、ポリエチレン系樹脂発泡シート1m当たりの界面活性剤量(合計界面活性剤量)を計算で求めた。
【0098】
(厚み)
ポリエチレン系樹脂発泡シートの厚みについては、定圧厚み測定機(Teclock社製、型式「SCM-627」)を用い、円筒状の重りを用いて、直径4.4cmの円形状の面(面積:60.8cm)に、95gの荷重(自重を含む)をポリエチレン系樹脂発泡シートにかけたときのポリエチレン系樹脂発泡シートの厚みを測定する。
なお、幅方向に5cmごとに50点測定し、その測定値の算術平均値を厚みとする。
また、50点分の測定箇所を得ることが出来ない場合には、可能な限り測定し、その測定値の算術平均値を厚みとする。
【0099】
尚、評価項目中の「接触角」については以下のようにして評価した。
(接触角の測定)
実施例、比較例で得られたポリエチレン系樹脂発泡シートがディスプレイ用ガラスを包装した状態で長期間保管した際のガラス表面に清浄性を発揮させる効果を有しているかの評価を以下のようにサイクル加熱後の接触角にて判定した。
まず、ポリエチレン系樹脂発泡シートを5cm×10cmの大きさに切って試料とした。
洗浄・乾燥したガラス板(日本電気硝子株式会社製 無アルカリガラス OA-10G)の上にこの試料を乗せ、該試料の全体に荷重が加わるように1kgの重りを乗せて、下記サイクルにて恒温恒湿槽(ISUZU製作所製、商品名「HPAV-120-40」)での加熱を行った。
【0100】
(サイクル条件)
恒温恒湿槽での加熱は、下記(1)~(4)を1サイクルとして実施した。
(1)20℃・60%RHから60℃・90%RHまで1時間で昇温
(2)60℃・90%RHで1時間保持
(3)60℃・90%RHから20℃・60%RHまで1時間で降温
(4)20℃・60%RHで1時間保持
【0101】
上記のサイクル加熱試験後のガラス板の表面から試料を取り除き、家庭用アルカリ洗剤(花王株式会社製、商品名「アタック」)を0.4%含有する洗浄水で前記ガラス板を洗浄し、蒸留水にてすすぎ洗いを実施した後、温度30℃、相対湿度0%にて24時間乾燥した。
試料と接していたガラス板表面における精製水の接触角を協和界面化学株式会社製、固液界面解析装置(商品名「DROP MASTER300」)によって測定した。
尚、接触角は、それぞれ20点の測定を行い、その平均値によって算出した。
【0102】
接触角の測定結果については、以下の3段階で判定した。
〇:接触角が10°以下であった。
△:接触角が10°を超え13°以下であった。
×:接触角が13°を超えていた。
【0103】
(脂肪酸化合物の定量)
ポリエチレン系樹脂発泡シートに含有されているステアリン酸アミドの量を前述の方法(メタノール注出、LC-MS/MS)にて定量した。
【0104】
(実施例2)
ノニオン系界面活性剤の使用量を0.4質量部に代えて1.0質量部としたこと、アニオン系界面活性剤をアルキルスルホン酸ナトリウムからポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムに変更したこと、及び、該アニオン系界面活性剤を練り込まず、押出発泡シートを作製後に該押出発泡シートの表面にコーティングしたこと以外は実施例1と同様にポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
尚、アニオン系界面活性剤のコーティングは、押出発泡シートを巻き取る直前にスプレーノズルを使って実施した。
アニオン系界面活性剤のスプレーは、押出発泡シートの両面に対して実施し、スプレーする量は、コーティングされているアニオン系界面活性剤のポリエチレン系樹脂発泡シートにおける割合が0.3質量%となるように実施した。
【0105】
(実施例3)
ノニオン系界面活性剤をHLBが約18のポリオキシエチレンラウリルエーテルに代えてHLBが約16のポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオレイルエーテルとポリオキシエチレンセチルエーテルとの混合物)とし、使用量を0.4質量部に代えて1.5質量部としたこと、アニオン系界面活性剤をアルキルスルホン酸ナトリウムからポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムに変更したこと、及び、該アニオン系界面活性剤の練り込み量を1.0質量部から0.5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
【0106】
(実施例4)
ノニオン系界面活性剤をHLBが約18のポリオキシエチレンラウリルエーテルに代えてHLBが約16のポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオレイルエーテルとポリオキシエチレンセチルエーテルとの混合物)とし、1.0質量部のアニオン系界面活性剤(アルキルスルホン酸ナトリウム)を押出発泡シートの作製時にシート中に練り込んだ上で更にスプレーによって押出発泡シートの表面にアニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)をコーティングしたこと以外は実施例1と同様にポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
尚、上記のコーティングでは、アニオン系界面活性剤のポリエチレン系樹脂発泡シートにおける割合が0.2質量%となるようにスプレーする量を調整した。
【0107】
(実施例5)
アニオン系界面活性剤(アルキルスルホン酸ナトリウム)の量を1.0質量%に代えて3.0質量%とした以外は実施例1と同様にポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
【0108】
(比較例1)
ノニオン系界面活性剤を練り込むのではなく押出発泡シートの表面にコーティングしたこと以外は実施例1と同様にポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
尚、コーティングしたノニオン系界面活性剤の量は、実施例1と同じく0.4質量%とした。
【0109】
(比較例2)
アニオン系界面活性剤を練り込まず、ノニオン系界面活性剤(HLBが約16のポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオレイルエーテルとポリオキシエチレンセチルエーテルとの混合物))のみを練り込み、且つ、該ノニオン系界面活性剤の練り込み量を0.4質量%から2.0質量%に変更した以外は実施例1と同様にポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
【0110】
(比較例3)
ノニオン系界面活性剤を練り込まず、アニオン系界面活性剤(アルキルスルホン酸ナトリウム)のみを練り込み、且つ、該アニオン系界面活性剤の練り込み量を1.0質量%から0.4質量%に変更した以外は実施例1と同様にポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
【0111】
(比較例4)
ノニオン系界面活性剤もアニオン系界面活性剤も用いなかったこと以外は実施例1と同様にポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
【0112】
(比較例5)
ノニオン系界面活性剤をポリオキシエチレンラウリルエーテルに代えてジグリセリンモノオレートに代えたこと、及び、該ノニオン系界面活性剤の練り込み量を0.4質量%から1.0質量%に変更した以外は実施例1と同様にポリエチレン系樹脂発泡シートを作製した。
【0113】
各実施例、比較例のポリエチレン系樹脂発泡シートについて評価した結果を下記表に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
上記のようなことからも、本発明の包装用シートは、ガラス板などを保護対象物としたときに、水洗後の表面を清浄にさせるのに有効であることがわかる。
【符号の説明】
【0117】
1:包装用シート
10:押出発泡シート
11,12:コーティング膜
100:積層体
図1
図2