(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】ねじの固定構造及び弁装置並びに冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16B 33/02 20060101AFI20230627BHJP
F25B 41/335 20210101ALI20230627BHJP
F16K 31/126 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
F16B33/02 Z
F25B41/335 Z
F16K31/126 Z
F16B33/02 B
(21)【出願番号】P 2020047606
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2021-11-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】當山 雄一郎
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-117929(JP,A)
【文献】実開昭61-157716(JP,U)
【文献】特公昭48-032897(JP,B1)
【文献】特開昭56-101472(JP,A)
【文献】特開2018-204840(JP,A)
【文献】特表2018-526589(JP,A)
【文献】特開平07-110022(JP,A)
【文献】特開2009-228833(JP,A)
【文献】特開2011-252593(JP,A)
【文献】特開平05-256538(JP,A)
【文献】特開2011-007355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00-43/02
F25B 41/06
F25B 41/33
F25B 41/335
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじ部と雌ねじ部とを嵌合してなるねじ機構におけるねじの固定構造であって、
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部が径方向に押し付けられて前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とが中心の軸線周り
のうち前記径方向に押し付けられた側で螺旋状
の一部に線接触するよう構成され、
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とが、
前記径方向に押し付けられた側で前記線接触する部位
である前記螺旋状の一部のみで溶
着され、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部の形状が維持されたまま前記部位に局所的な溶融固化層が形成され、
前記軸線周りのうち前記径方向に押し付けられていない側では溶着されていないことを特徴とするねじの固定構造。
【請求項2】
前記雄ねじ部のねじ山または谷の頂角に対し、前記雌ねじ部のねじ山または谷の頂角を変えることで螺旋状に線接触することを特徴とする請求項1に記載のねじの固定構造。
【請求項3】
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部の前記軸線に沿った面での断面形状は、両方共、三角形の形状であることを特徴とする請求項2に記載のねじの固定構造。
【請求項4】
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との前記軸線に沿った面での断面形状は、一方のねじ溝が三角形の形状で、他方のねじ山が台形の形状、または両方共、台形形状であることを特徴とする請求項2に記載のねじの固定構造。
【請求項5】
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との前記軸線に沿った面での断面形状は、一方のねじ溝が矩形の形状で、他方のねじ山が三角形状または台形形状であることを特徴とする請求項2に記載のねじの固定構造。
【請求項6】
流体が流れる弁ポートの開度を弁体により制御するとともに、駆動アクチュエータの駆動力を前記弁体に伝達するよう構成された弁装置であって、調整ばねの圧縮量を当該調整ばねの変形方向に相互に調整可能な雄ねじ部と雌ねじ部とを嵌合してなる調整ねじ機構に請求項1のねじの固定構造を備えてなることを特徴とする弁装置。
【請求項7】
前記弁体と前記弁ポートは、流入通路から流入する冷媒を絞って流出通路から該冷媒を膨張させて流出させる膨張弁として構成されたことを特徴とする請求項6に記載の弁装置。
【請求項8】
圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、絞り装置とを含む冷凍サイクルシステムであって、請求項7に記載の弁装置が、前記絞り装置として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじの緩み止めを施すのに好適なねじの固定構造及び、これを適用した弁装置並びに冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじの緩み止めの技術として、例えば特開2002-181022号広報(特許文献1)に開示されたものがある。この特許文献1の技術は、溶接を用いたねじ機構の緩み止め構造であり、ねじの頭と被固定部材の接触面とを電気点溶接やレーザー溶接で固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような技術では、ねじ部と被固定部材との接触面積が大きいため、抵抗溶接を実施するのが困難であった。また、一般的な従来の溶接によるねじ固定では、ねじの頭が被固定部材から浮いている状態や、イモねじなどのようにねじ自体が被固定部材の内部に入り込む場合には、溶接が難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、例えばねじ緩み止めを目的とする場合の溶接方法として、電気点溶接やレーザー溶接だけではなく、抵抗溶接も実施可能となるねじの固定構造及び、これを適用した弁装置並びに冷凍サイクルシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のねじの固定構造は、雄ねじ部と雌ねじ部とを嵌合してなるねじ機構におけるねじの固定構造であって、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部が径方向に押し付けられて前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とが中心の軸線周りのうち前記径方向に押し付けられた側で螺旋状の一部に線接触するよう構成され、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とが、前記径方向に押し付けられた側で前記線接触する部位である前記螺旋状の一部のみで溶着され、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部の形状が維持されたまま前記部位に局所的な溶融固化層が形成され、前記軸線周りのうち前記径方向に押し付けられていない側では溶着されていないことを特徴とする。
【0007】
この際に、前記雄ねじ部のねじ山または谷の頂角に対し、前記雌ねじ部のねじ山または谷の頂角を変えることで螺旋状に線接触することが好ましい。
【0008】
また、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部の前記軸線に沿った面での断面形状は、両方共、三角形の形状であることが好ましい。
【0009】
また、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との前記軸線に沿った面での断面形状は、一方のねじ溝が三角形の形状で、他方のねじ山が台形の形状、または両方共、台形形状であることが好ましい。
【0010】
また、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との前記軸線に沿った面での断面形状は、一方のねじ溝が矩形の形状で、他方のねじ山が三角形状または台形形状であることが好ましい。
【0011】
また、上述したように、本発明のねじの固定構造は、前記ねじの嵌合構造を有するねじの固定構造であって、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とが、前記線接触する部位で溶接されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の弁装置は、流体が流れる弁ポートの開度を弁体により制御するとともに、駆動アクチュエータの駆動力を前記弁体に伝達するよう構成された弁装置であって、調整ばねの圧縮量を当該調整ばねの変形方向に相互に調整可能な雄ねじ部と雌ねじ部とを嵌合してなる調整ねじ機構に前記ねじの固定構造を備えてなることを特徴とする。
【0013】
この際に、前記弁体と前記弁ポートは、流入通路から流入する冷媒を絞って流出通路から該冷媒を膨張させて流出させる膨張弁として構成されたことを特徴とする弁装置が好ましい。
【0014】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、絞り装置とを含む冷凍サイクルシステムであって、前記弁装置が、前記絞り装置として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のねじの固定構造及び、これを適用した弁装置並びに冷凍サイクルシステムによれば、雄ねじ部と雌ねじ部との接触部位を線接触とすることで、ねじ緩み止めを目的とした溶接方法として、抵抗溶接も容易に実施可能となり、ねじ機構の緩み止めを施すのに好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の弁装置としての温度式膨張弁を備えた冷却装置の一部断面図である。
【
図2】実施形態におけるねじの嵌合構造の作用効果を説明する図である。
【
図3】実施形態の温度式膨張弁における調整ねじ機構の要部拡大断面図である。
【
図4】実施形態における調整ねじの変形例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明のねじの嵌合構造、ねじの固定構造及び弁装置並びに冷凍サイクルシステムの実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図5は実施形態の温度式膨張弁を用いた冷却装置の冷凍サイクルシステムの要部を示す図であり、先ず、実施形態の冷凍サイクルシステムについて説明する。
図5において、10は実施形態の温度式膨張弁、100は圧縮機、200は凝縮器、300は蒸発器、400はアキュムレータであり、これらは配管で環状に接続することにより冷凍サイクルシステムを構成している。温度式膨張弁10は、後述のように、ハウジング20内に装着され、ダイヤフラム式の駆動アクチュエータ3と例えば従来の感温筒と同様な感温筒5、及びキャピラリチューブ6を有している。ハウジング20の流入通路20Bは凝縮器200の出口側配管200aに接続され、ハウジング20の流出通路20Cは蒸発器300の入口側配管300aに接続されている。そして、蒸発器300は冷却対象である図示しない発熱体に接触して併設されたり、空調、冷蔵用として冷やす室内雰囲気中等に配置され、この蒸発器300の出口側配管300bに感温筒5が取り付けられている。
【0019】
圧縮機100は冷凍サイクルシステムを流れる冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒は凝縮器200で凝縮液化され、流入通路20Bを通して温度式膨張弁10に流入される。温度式膨張弁10は流入される冷媒を減圧(膨張)して流出通路20Cから蒸発器300に流入させる。蒸発器300は冷媒の一部を蒸発気化し、気液混合状態の冷媒がアキュムレータ400に流入し、このアキュムレータ400から気相冷媒が圧縮機100に循環される。そして、蒸発器300は、冷媒の一部を蒸発気化することで、発熱体や空気等から熱を吸収する。これにより発熱体、または空気等が冷却される。また、感温筒5には、吸着チャージ等によりガスが封入されており、この感温筒5はキャピラリチューブ6により駆動アクチュエータ3に連結されている。
【0020】
図1は実施形態の弁装置としての温度式膨張弁を備えた冷却装置の一部断面図、
図2は実施形態におけるねじの嵌合構造の作用効果を説明する図、
図3は同温度式膨張弁における調整ねじ機構の要部拡大断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応しており、一点鎖線で示す軸線Xは後述の弁ポート29の中心線であるとともに、作動軸38及び弁体4の移動方向に対応している。
【0021】
この実施形態の冷却装置は、ハウジング20に実施形態の温度式膨張弁10を搭載したものである。弁ハウジング20は全体が金属部材によって構成され、このハウジング20には、弁ユニット装着孔20A、流入通路20B及び流出通路20Cが形成されている。弁ユニット装着孔20Aは、軸線X方向下方で軸線Xを中心とする円柱状の小径室20A1と、この小径室20A1の上方で軸線Xを中心とする円柱状の大径室20A2と、大径室20A2の上方で軸線Xを中心とする薄型円柱状の駆動アクチュエータ室20A3とを有している。そして、弁ユニット装着孔20A内に温度式膨張弁10が嵌合されている。
【0022】
温度式膨張弁10は、弁本体2と、駆動アクチュエータ3と、弁体4と、感温筒5(
図5参照)と、によって構成される。なお、弁本体2とハウジング20との間には、小径室20A1の大径室20A2側の端部と、大径室20A2の駆動アクチュエータ室20A3側の端部とには、OリングP,Qが設けられており、OリングPにより流入通路20Bと流出通路20Cとの間の気密性が保たれている。また、OリングQにより弁本体2とハウジング20との外部空間に対する気密性が保たれている。
【0023】
弁本体2は、ステンレス製の金属部材によって構成され、ハウジング20の小径室20A1と大径室20A2とに収容されている。弁本体2のうち小径室20A1に収容される下側部分2Aは、軸線X方向を軸方向とする円筒状に形成され、その側面に側部開口21を有するとともに下端に下端開口22を有している。また、この下側部分2Aの上部内周には弁ガイド孔23が形成され、この弁ガイド孔23内に弁体4が収容されている。そして、この下側部分2Aの下端開口22の軸線X方向内側において、雌ねじ部11が形成されるとともに、その内側にステンレス製の金属部材で構成された調整ねじ13が配設されている。調整ねじ13の外周には雄ねじ部12が形成されており、この雄ねじ部12は雌ねじ部11に螺合されるとともに、調整ねじ13と弁体4との間に調整ばね14が配設されている。この雌ねじ部11と調整ねじ13及び調整ばね14は調整ねじ機構1を構成している。なお、調整ねじ13の中心には貫通孔13aとレンチ孔13bとが形成されている。
【0024】
また、弁本体2のうち大径室20A2に収容される上側部分2Bは、後述する弁座部32aの上方において軸線X方向に沿って延びる筒状の作動軸ガイド孔24と、作動軸ガイド孔24に直交するように延びる冷媒通過部25と、駆動アクチュエータ室20A3側から作動軸ガイド孔24の回りにリング状の深溝として形成されたばね室26と、ばね室26と冷媒通過部25とを連通する均圧孔27と、を有している。
【0025】
弁本体2の上部に構成された駆動アクチュエータ3は、薄型円盤状の上蓋3Aと下蓋3Bとによりケース体を構成している。下蓋3Bは上蓋3Aと対向するフランジ部31と、このフランジ部31に連結され軸線Xを中心とする円筒状の形状となる円筒部32とを有している。また、下蓋3Bは、円筒部32で弁本体2と溶接またはロウ付けにて接合され、弁座部28が弁本体2の上側部分2Bの作動軸ガイド孔24の下端側に配置されている。そして、この弁座部28の中央には軸線Xを中心とする弁ポート29が形成されている。
【0026】
なお、ハウジング20の駆動アクチュエータ室20A3には抜け止め部材3Cが取り付けられており、駆動アクチュエータ3の上蓋3Aの外縁部の上面が抜け止め部材3Cによって係止されることにより、駆動アクチュエータ3および弁本体2が弁ユニット装着孔20Aから脱落しないようになっている。
【0027】
また、上蓋3Aと下蓋3Bの間にはダイヤフラム34を備えており、このダイヤフラム34によってダイヤフラム室35と均圧室36が区画されている。下蓋3B内には当金37が配設されており、この当金37に作動軸38が接続されている。なお、ばね室26内において、ばね室26の底部と当金37との間にはコイルばね39が圧縮した状態で配設されている。これにより、コイルばね39は作動軸38をダイヤフラム34側に付勢している。
【0028】
作動軸38は作動軸ガイド孔24内に摺動可能に挿通されている。また、作動軸38の下端部38aは、弁ポート29を通過可能な外径を有するようにピン状になっており、この作動軸38の下端部38aは弁ポート29を貫通している。そして、この作動軸38の下端部38aはダイヤフラム34の動作を弁体4に伝達する。
【0029】
弁体4は、上面が閉塞されて下面が開口した有底筒状に形成され、その内側に内空間41を有している。また、上面の一部に弁ポート29と内空間41を連通する貫通孔42が形成されるとともに、上面の中央にニードル部43を有している。そして、このニードル部43が弁座部28に対して接近または離隔することで弁ポート29の開度が制御される。また、このニードル部43の上端には作動軸38の下端部38aが当接されている。
【0030】
以上の構成により、流入通路20Bは凝縮器200から冷媒を受け入れ、この冷媒は、20Aに導入された後、下側部分2Aの側部開口21及び調整ねじ13のレンチ孔13b及び貫通孔13a、弁体4の内空間41及び貫通孔42、弁ポート29および冷媒通過部25をこの順で通過し、流出通路20Cから蒸発器300に送り出される。また、感温筒5の感知温度に応じてダイヤフラム室35の内圧が上昇または低下すると、ダイヤフラム室35が膨張または収縮するようにダイヤフラム34が変形する。そして、このダイヤフラム34の変形に伴い、作動軸38が軸線X方向に移動し、弁ポート29と弁体4のニードル部43との隙間すなわち弁開度が変化する。
【0031】
そして、温度式膨張弁10の調整ねじ機構1において、調整ばね14は、弁体4に対して下方に設けられて上方への付勢力を付与するよう構成されるとともに、雌ねじ部11に対する調整ねじ13のねじ込み量によって、この弁体4に対する付勢力が調整可能となっている。すなわち、調整ねじ13のねじ込み量を調整することで、弁体4が作動軸38を押圧する力を調整することができるので、ダイヤフラム室35の導入圧力に応じて弁ポート29が開き始める圧力、すなわち設定圧力を調整することができる。なお、調整ねじ13のねじ込み(回転)を行うときは、調整ねじ13のレンチ孔13bにレンチ等を嵌合して回転させる。
【0032】
温度式膨張弁10は、上記のように設定圧力を調整したあと、弁本体2の下側部分2Aの雌ねじ部11において、調整ねじ13が固着されている。弁本体2と調整ねじ13とは、それぞれステンレス製の金属部材であり、
図2のようにして抵抗溶接されている。なお、抵抗溶接は両部材間に電圧を印加してその接触部位に高いジュール熱を発生させて、接触部位を溶融させることにより溶着するものである。
【0033】
ここで、
図2に示すように、この実施形態では、下側部分2Aの雌ねじ部11のねじ溝(谷)は軸線Xに沿った断面での断面形状が三角の形状をしており、調整ねじ13の雄ねじ部12のねじ山は軸線Xに沿った断面での断面形状が台形の形状をしている。なお且つ、雌ねじ部11のねじ溝の谷の頂角θ1より、雄ねじ部12のねじ山の頂角θ2が小さい状態である。これにより、調整ねじ13の雄ねじ部12との接触部分は、両者を螺合しただけの状態で、図に一点鎖線の丸で示すように、軸線X周りに螺旋状に線接触するよう構成されている。そして、抵抗溶接を施すことにより、
図3に示すように接触部分に溶融固化層D(楕円の細かいハッチングの部分)が形成されている。例えば、従来のねじでは、雄ねじ部と雌ねじ部とは面接触するのに対して、この実施形態のように、雄ねじ部12と雌ねじ部11とが線接触するので、抵抗溶接する時にその接触部分での接触抵抗が従来よりも十分に大きくなり、容易に抵抗溶接することができる。
【0034】
なお、
図2に示す実施形態では、弁本体2の下側部分2Aと調整ねじ13とを径方向(軸線Xに対し直角の方向)に挟み込んで押さえ付けた状態で抵抗溶接させる例である。通常、雄ねじ部12と雌ねじ部11との径方向には隙間がある為、弁本体2の径方向に押さえ付けた側の雄ねじ部12と雌ねじ部11には隙間が無く線接触している為、溶着するが、押さえ付けていない側(180°反対側)の雄ねじ部12と雌ねじ部11との間には隙間がある為、溶着しない。従って、雄ねじ部12と雌ねじ部11とが中心の軸線X周りに螺旋状の一部に線接触することにより、螺旋状の一部のみで溶着される。螺合状の一部が溶融されずに残ることで、溶融時の軸線X方向のズレが抑制される為、調整ばね14(弾性体)の圧縮量を精度よく調整する場合には、好ましい。一部のみにて溶着により固定されているが、一部でも、溶融条件により、固定強度は十分にある。
【0035】
また、
図2に示す実施形態では、弁本体2の下側部分2Aと調整ねじ13とを径方向に挟み込んで押さえこんでいる例であるが、径方向ではなく、軸線X方向に押え込んで雄ねじ部12と雌ねじ部11とが中心の軸線X周りに螺旋状の全周に線接触させることにより、螺旋状の全周で溶着することもできる。この場合も、雄ねじ部12と雌ねじ部11とが軸線X方向に螺旋状の全周で線接触するので、抵抗溶接する時にその接触部分での接触抵抗が従来よりも十分に大きくなり、容易に抵抗溶接することができる。
【0036】
なお、
図2の実施形態では、θ1よりθ2が小さい関係にある場合を説明したが、θ1よりθ2が大きい関係にある場合も、軸線X周りに螺旋状に線接触する為、同様の効果が得られる。また、
図2の実施形態では、雌ねじ部のねじ溝(谷)の断面が三角形状で、雄ねじ部のねじ山の断面が台形形状の例を示したが、これに限定するものではなく、雌ねじ部のねじ溝(谷)の断面が台形形状で、雄ねじ部のねじ山の断面が三角形状(台形と角度は異なる)であるような、
図2と逆の組み合わせの場合でも同様の効果が得られる。また、雌ねじ部のねじ溝(谷)の断面と雄ねじ部のねじ山の断面の両方共が角度の異なる台形形状であっても、同様の効果が得られる。
【0037】
図2の実施形態では、下側部分2Aの雌ねじ部11のねじ溝(谷)の前記断面形状が三角形状で、雄ねじ部12のねじ山の断面が台形形状の例であるが、この雄ねじ部のねじ山の断面形状は台形形状でなく矩形形状でもよい。また、雌ねじ部のねじ溝(谷)の前記断面形状が矩形形状で、雄ねじ部のねじ山の断面が三角形状となる、逆の組み合わせとしても、同様の効果が得られる。また、雌ねじ部のねじ溝(谷)の前記断面形状が矩形形状で、雄ねじ部のねじ山の断面が台形形状としてもよいし、雌ねじ部のねじ溝(谷)の前記断面形状が台形形状で、雄ねじ部のねじ山の断面が矩形形状となる、逆の組み合わせとしても、同様の効果が得られる。また、この実施形態では、雄ねじ部12と雌ねじ部11とは、両者とも熱伝導率の低いステンレス製であり、ジュール熱が拡散するのを低減でき、さらに容易に抵抗溶接できる。
【0038】
上述した様な、三角形状ねじに対し、嵌合する相手のねじを台形形状や、矩形形状とした例や、台形形状ねじ同士の嵌合や、矩形形状ねじと台形形状ねじとの嵌合等の各実施形態では、ねじ山の1山あたり2点にて接触させる形状であり、ねじ山頂点と、ねじ谷底部との径方向に間隔があるため空隙がある。また、雄ねじと雌ねじの角度が異なる為、ねじの軸線X方向にも嵌合時に隙間があるため空隙がある。これにより、空隙に溶融したねじ部材が溜まることで、溶融バリを抑制でき、溶融バリが外れて、冷凍サイクルシステムの流路内に異物として流出し不具合となる事を防止することができる。
【0039】
図4は実施形態における調整ねじの変形例を示す図であり、この変形例の調整ねじ13′の雄ねじ部12′の前記断面形状は三角形状であり、このねじ山の頂角θ2′を雌ねじ部11′の前記断面形状は三角形状のねじ溝(谷)の対向角θ1′より小さくし、この雄ねじ部12′のねじ山の頂部と雌ねじ部11′のねじ溝の底部とを線接触させるようにしたものである。この変形例でも、容易に抵抗溶接することができる。なお、この
図4の実施形態では、ねじ山の頂点部分とねじ溝(谷)の底部分は鋭角同士で示されている(図に一点鎖線の丸で示す部分)が、ねじ溝(谷)の底部分にR加工がされている場合、ねじ山の頂点部分はねじ溝(谷)の底部分にR寸法よりも小さなR加工がされていることが好ましい。これにより、大R部と小R部で確実に線接触とすることができる。また、雌ねじ部11のねじ溝(谷)の底部分にR加工がされている場合、雄ねじ部12′のねじ山の頂部をR加工なしとしてもよく、また、逆に、ねじ溝(谷)の底部分をR加工なしとし、ねじ山の頂部をR加工ありとしても、同様に線接触となり同様の効果が得られる。なお、
図4の実施形態では、θ2′をθ1′より小さ関係の場合を説明したが、θ2′をθ1′より大きくした場合も、軸線X周りに螺旋状に線接触する為、同様の効果が得られる。また、この三角形状ねじ同士の嵌合の各実施形態でも雄ねじと雌ねじとの角度が異なる為、ねじの軸線X方向にも嵌合時に隙間があるため空隙がある。これにより、空隙に溶融したねじ部材が溜まることで、溶融バリを抑制でき、溶融バリが外れて、冷凍サイクルシステムの流路内に異物として流出し不具合となる事を防止することができる。
【0040】
各実施形態の雄ねじと雌ねじの形状として、三角形状、台形形状、矩形形状について説明してきたが、各形状の角部は角形状のままでも良いが、R形状としても、同様の効果が得られる。
【0041】
以上、弁装置としての温度式膨張弁について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。前記実施形態では弁装置として温度式膨張弁の例を示したが、例えば、ダイヤフラムで弁ポートを開閉するとともに調整ばね等の弾性体の圧縮量を調整して設定圧力を調整するような圧力調整弁に適用してもよい。また、温度式膨張弁や、圧力調整弁に限らず、調整ばね等の弾性体の圧縮量を調整する機構を設けたその他の電磁弁や電動弁等の弁装置に適用してもよい。また、弁装置以外のスチッチ等の機器に適用しても良い。また、雄ねじと雌ねじの螺合による調整ねじ機構に適用してもよい。なお、上記嵌合構造を用いれば、上記実施形態の様な金属部材同士の抵抗溶接に限定する必要はなく、例えば、樹脂部材同士の超音波溶着等の接触部の発熱を利用した他の接合方法等にも適用できる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述し、その他の実施形態についても詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 調整ねじ機構
11 雌ねじ部
12 雄ねじ部
13 調整ねじ
14 調整ばね
2 弁本体
2A 下側部分
2B 上側部分
21 側部開口
22 下端開口
23 弁ガイド孔
24 作動軸ガイド孔
25 冷媒通過部
26 ばね室
27 均圧孔
3 駆動アクチュエータ
3A 上蓋
3B 下蓋
3C 抜け止め部材
31 フランジ部
32 円筒部
28 弁座部
29 弁ポート
34 ダイヤフラム
35 ダイヤフラム室
36 均圧室
37 当金
38 作動軸
38a 下端部
39 コイルばね
4 弁体
41 内空間
42 貫通孔
43 ニードル部
5 感温筒
X 軸線
10 温度式膨張弁
20 ハウジング
20A 弁ユニット装着孔
20B 流入通路
20C 流出通路
100 圧縮機
200 凝縮器
300 蒸発器
400 アキュムレータ