(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】地盤調査装置、地盤調査装置用器具、及びこれらを用いた方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20230627BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
E02D1/00
E02D5/80 A
(21)【出願番号】P 2020062198
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000121844
【氏名又は名称】応用地質株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】窪塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高柳 剛
(72)【発明者】
【氏名】児島 達也
(72)【発明者】
【氏名】山内 政也
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-036390(JP,A)
【文献】特開2016-136121(JP,A)
【文献】特開昭62-108182(JP,A)
【文献】特開2001-013257(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02527538(EP,A1)
【文献】実開平06-058388(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0108124(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105386446(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/115
E02D 5/22-5/80
E02D 17/00-17/20
G01N 33/24
G01H 1/00
G01V 1/20
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
E21D 20/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング孔に設置される地盤調査装置であって、
地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体と、を備え、
前記固定体は、
前記内側体の外側に位置する中間体と、当該中間体の外側に位置する外側体とを含んで構成され、
前記中間体は、内周面に前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部を有し、
前記外側体は、前記中間体を回り止めしていて、周方向に間隔をあけて複数配置され径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部と、前記ボーリング孔の奥側であって前記固定体雌ねじ部の正面に設けられ当該アンカー部に連結する支持部と、を有し、
前記中間体の外周面及び前記アンカー部の内周面の少なくとも一方は、前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって前記中間体の中心軸に近づくように傾斜する傾斜面であり、
前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、
前記中間体に対して前記内側体を、前記固定体雌ねじ部に対して前記内側体雄ねじ部が締め付けられる第一の向きに回転させた際に、当該中間体が当該内側体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側へ向かって移動し、これにより複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられて前記外側体が当該ボーリング孔に固定されるように構成した地盤調査装置。
【請求項2】
前記ボーリング孔に設置された請求項1に記載の地盤調査装置から前記内側体を取り外すための地盤調査装置用器具であって、
中空状をなし、一端部に前記内側体雌ねじ部に螺合する器具雄ねじ部を有
し、前記内側体雌ねじ部に対して前記器具雄ねじ部が締め付けられる第二の向きに回転させると、前記器具雄ねじ部が前記内側体雌ねじ部に螺合するとともに前記内側体が前記中間体に対して前記第二の向きに回転し、前記内側体が前記中間体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって移動することによって前記固定体雌ねじ部と前記内側体雄ねじ部との螺合を解除する地盤調査装置用器具。
【請求項3】
前記器具雄ねじ部の先端側にテーパー部を有する請求項
2に記載の地盤調査装置用器具。
【請求項4】
地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体とを備え、当該固定体によってボーリング孔に固定させた地盤調査装置から地盤調査装置用器具で当該内側体を取り外す方法であって、
前記地盤調査装置において、
前記固定体は、前記内側体の外側に位置する中間体と、当該中間体の外側に位置する外側体とを含んで構成され、
前記中間体は、内周面に前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部を有し、
前記外側体は、前記中間体を回り止めしていて、周方向に間隔をあけて複数配置され径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部と、前記ボーリング孔の奥側であって前記固定体雌ねじ部の正面に設けられ当該アンカー部に連結する支持部と、を有し、
前記中間体の外周面及び前記アンカー部の内周面の少なくとも一方は、前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって前記中間体の中心軸に近づくように傾斜する傾斜面であり、
前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、
前記地盤調査装置は、前記中間体に対して前記内側体を、前記固定体雌ねじ部に対して前記内側体雄ねじ部が締め付けられる第一の向きに回転させた際に、当該中間体が当該内側体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側へ向かって移動し、これにより複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられて前記外側体が当該ボーリング孔に固定されるように構成されていて、
前記地盤調査装置用器具は、中空状をなし、一端部に前記内側体雌ねじ部に螺合する器具雄ねじ部を有するものであって、
前記地盤調査装置用器具を前記ボーリング孔に挿入する工程と、
前記内側体雌ねじ部に対して前記器具雄ねじ部が締め付けられる
第二の向きに当該地盤調査装置用器具を回転させ
ると、前記器具雄ねじ部が前記内側体雌ねじ部に螺合するとともに前記内側体が前記中間体に対して前記第二の向きに回転し、前記内側体が前記中間体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって移動することによって前記固定体雌ねじ部と前記内側体雄ねじ部との螺合を解除する工程と、を含む方法。
【請求項5】
地盤調査装置を地盤調査装置用器具でボーリング孔に設置する方法であって、
前記地盤調査装置は、地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体と、を備え、
前記固定体は、
前記内側体の外側に位置する中間体と、当該中間体の外側に位置する外側体とを含んで構成され、
前記中間体は、内周面に前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部を有し、
前記外側体は、前記中間体を回り止めしていて、周方向に間隔をあけて複数配置され径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部と、前記ボーリング孔の奥側であって前記固定体雌ねじ部の正面に設けられ当該アンカー部に連結する支持部と、を有し、
前記中間体の外周面及び前記アンカー部の内周面の少なくとも一方は、前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって前記中間体の中心軸に近づくように傾斜する傾斜面であり、
前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、
前記地盤調査装置は、前記中間体に対して前記内側体を、前記固定体雌ねじ部に対して前記内側体雄ねじ部が締め付けられる第一の向きに回転させた際に、当該中間体が当該内側体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側へ向かって移動するように構成されていて、
前記地盤調査装置用器具は、中空状をなし、一端部に前記内側体雌ねじ部に螺合する器具雄ねじ部を有するものであって、
前記内側体雌ねじ部に前記器具雄ねじ部を螺合させて、前記地盤調査装置と前記地盤調査装置用器具とを結合させる工程と、
結合した前記地盤調査装置を前記ボーリング孔の所定深さまで挿入する工程と、
前記第一の向きに前記地盤調査装置用器具を回転させることによって、前記内側体に対して前記中間体を前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって移動させて複数の前記アンカー部を径方向外側に向けて押し広げて前記外側体を当該ボーリング孔に固定する工程と、
前記第一の向きに前記地盤調査装置用器具を更に回転させることによって、
前記器具雄ねじ部と、前記中間体に対して前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって移動し前記支持部に接触して移動が停止した前記内側体の前記内側体雌ねじ部との螺合を解除して、前記地盤調査装置から前記地盤調査装置用器具を取り外す工程と、を含む方法。
【請求項6】
ボーリング孔に設置される地盤調査装置であって、
地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体と、を備え、
前記固定体は、筒状体と楔体とを含んで構成され、
前記筒状体は、内周面に設けられ前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部と、当該筒状体における前記ボーリング孔の奥側に複数設けられ径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部とを備え、
前記楔体は、前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって拡径していて、前記筒状体に対して当該ボーリング孔の奥側において端部を当該筒状体に挿入した状態で当該筒状体に保持され、
前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、
前記楔体が前記ボーリング孔の孔底に至るまで挿入された状態で前記筒状体を当該ボーリング孔の入口側から奥側に向かって押し込むと、前記楔体によって複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられて当該筒状体が当該ボーリング孔に固定されるように構成した地盤調査装置。
【請求項7】
地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体とを備え、当該固定体によってボーリング孔に固定させた地盤調査装置から地盤調査装置用器具で当該内側体を取り外す方法であって、
前記地盤調査装置において、
前記固定体は、筒状体と楔体とを含んで構成され、
前記筒状体は、内周面に設けられ前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部と、当該筒状体における前記ボーリング孔の奥側に複数設けられ径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部とを備え、
前記楔体は、前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって拡径していて、前記筒状体に対して当該ボーリング孔の奥側において端部を当該筒状体に挿入した状態で当該筒状体に保持され、
前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、
前記地盤調査装置は、前記楔体が前記ボーリング孔の孔底に至るまで挿入された状態で前記筒状体を当該ボーリング孔の入口側から奥側に向かって押し込むと、前記楔体によって複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられて当該筒状体が当該ボーリング孔に固定されるように構成されていて、
前記地盤調査装置用器具は、中空状をなし、一端部に前記内側体雌ねじ部に螺合する器具雄ねじ部を有するものであって、
前記地盤調査装置用器具を前記ボーリング孔に挿入する工程と、
前記内側体雌ねじ部に対して前記器具雄ねじ部が締め付けられる第二の向きに当該地盤調査装置用器具を回転させると、前記器具雄ねじ部が前記内側体雌ねじ部に螺合するとともに前記内側体が前記筒状体に対して前記第二の向きに回転し、前記内側体が前記筒状体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって移動することによって前記固定体雌ねじ部と前記内側体雄ねじ部との螺合を解除する工程と、を含む方法。
【請求項8】
地盤調査装置をボーリング孔に設置する方法であって、
前記地盤調査装置は、地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体と、を備え、
前記固定体は、筒状体と楔体とを含んで構成され、
前記筒状体は、内周面に設けられ前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部と、当該筒状体における前記ボーリング孔の奥側に複数設けられ径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部とを備え、
前記楔体は、前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって拡径していて、前記筒状体に対して当該ボーリング孔の奥側において端部を当該筒状体に挿入した状態で当該筒状体に保持され、
前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、
前記地盤調査装置は、前記筒状体を前記楔体に向かって押し込むと、当該楔体によって複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられるように構成されていて、
前記地盤調査装置を、前記楔体が前記ボーリング孔における孔底に至るまで挿入する工程と、
長尺のロッドを前記ボーリング孔に挿入して当該ロッドで前記筒状体を前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって押し込むことによって、前記楔体が複数の前記アンカー部を径方向外側に向けて押し広げて当該筒状体を当該ボーリング孔に固定する工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔に設置される地盤調査装置、設置した地盤調査装置からセンサを取り外す場合等に使用される地盤調査装置用器具、及びこれらを用いた方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の強度や構造等の調査を行うにあたり、地盤に設けたボーリング孔を利用する手法が知られている。その一つであるPS検層では、地表から下方に向かって削孔したボーリング孔にセンサ(加速度計)を設置し、地表で発生させた弾性波動(P波、S波)をセンサで検知することによって弾性波動が地盤を伝播する速度を測定し、この速度から地盤強度や地盤構造に関する情報を得ている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-31576号公報
【文献】特開2015-7321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、PS検層を行うにあたっては、比較的大径のボーリング孔(例えばφ60~70mm程度)を地表から下方に向けて削孔し、またボーリング孔に対してセンサを地表から吊り下げるようにして設置している。このため、大型の機材(ボーリングマシン等)や作業用やぐら等が必要であり、またこれらを設置するために地表に広いスペースを要していて、作業が大掛かりになっている。
【0005】
また、このようなPS検層を地山の法面で実施する場合は、斜面上に大型の機材や作業用やぐらを搬入してこれらを設置しなければならないため、水平な地表で実施する場合よりも作業は更に大掛かりで且つ難しい。また縦方向にボーリング孔を削孔する工法は、深さの深い位置での地盤調査には有効であるものの、例えば法面における地盤の風化や侵食を抑える吹付工を行う際の地盤調査では、法面から比較的浅い位置での測定で済むことが多く、このような場合に縦方向に削孔する工法を適用すると大掛かりすぎて無駄が多くなる。
【0006】
なお、ボーリング孔を安価に削孔できる工法を適用することができたとしても、地盤調査に使用するセンサは一般に高価であるため、地盤調査に要する費用を抑制するには、調査終了後にセンサを回収することが可能であることが重要である。
【0007】
このような従来の問題点に鑑み、本発明では、地盤調査を作業性よく安価に行うことが可能であって、特に法面から比較的浅い位置での地盤調査を行う際に好適となる地盤調査装置に関連する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ボーリング孔に設置される地盤調査装置であって、地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体と、を備え、前記固定体は、前記内側体の外側に位置する中間体と、当該中間体の外側に位置する外側体とを含んで構成され、前記中間体は、内周面に前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部を有し、前記外側体は、前記中間体を回り止めしていて、周方向に間隔をあけて複数配置され径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部と、前記ボーリング孔の奥側であって前記固定体雌ねじ部の正面に設けられ当該アンカー部に連結する支持部と、を有し、前記中間体の外周面及び前記アンカー部の内周面の少なくとも一方は、前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって前記中間体の中心軸に近づくように傾斜する傾斜面であり、前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、前記中間体に対して前記内側体を、前記固定体雌ねじ部に対して前記内側体雄ねじ部が締め付けられる第一の向きに回転させた際に、当該中間体が当該内側体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側へ向かって移動し、これにより複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられて前記外側体が当該ボーリング孔に固定されるように構成した地盤調査装置である。
【0010】
また本発明は、前記ボーリング孔に設置された地盤調査装置から前記内側体を取り外すための地盤調査装置用器具であって、中空状をなし、一端部に前記内側体雌ねじ部に螺合する器具雄ねじ部を有し、前記内側体雌ねじ部に対して前記器具雄ねじ部が締め付けられる第二の向きに回転させると、前記器具雄ねじ部が前記内側体雌ねじ部に螺合するとともに前記内側体が前記中間体に対して前記第二の向きに回転し、前記内側体が前記中間体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって移動することによって前記固定体雌ねじ部と前記内側体雄ねじ部との螺合を解除する地盤調査装置用器具でもある。
【0011】
このような地盤調査装置用器具においては、前記器具雄ねじ部の先端側にテーパー部を有することが好ましい。
【0012】
また本発明は、地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体とを備え、当該固定体によってボーリング孔に固定させた地盤調査装置から地盤調査装置用器具で当該内側体を取り外す方法であって、前記地盤調査装置において、前記固定体は、前記内側体の外側に位置する中間体と、当該中間体の外側に位置する外側体とを含んで構成され、前記中間体は、内周面に前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部を有し、前記外側体は、前記中間体を回り止めしていて、周方向に間隔をあけて複数配置され径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部と、前記ボーリング孔の奥側であって前記固定体雌ねじ部の正面に設けられ当該アンカー部に連結する支持部と、を有し、前記中間体の外周面及び前記アンカー部の内周面の少なくとも一方は、前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって前記中間体の中心軸に近づくように傾斜する傾斜面であり、前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、前記地盤調査装置は、前記中間体に対して前記内側体を、前記固定体雌ねじ部に対して前記内側体雄ねじ部が締め付けられる第一の向きに回転させた際に、当該中間体が当該内側体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側へ向かって移動し、これにより複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられて前記外側体が当該ボーリング孔に固定されるように構成されていて、前記地盤調査装置用器具は、中空状をなし、一端部に前記内側体雌ねじ部に螺合する器具雄ねじ部を有するものであって、前記地盤調査装置用器具を前記ボーリング孔に挿入する工程と、前記内側体雌ねじ部に対して前記器具雄ねじ部が締め付けられる第二の向きに当該地盤調査装置用器具を回転させると、前記器具雄ねじ部が前記内側体雌ねじ部に螺合するとともに前記内側体が前記中間体に対して前記第二の向きに回転し、前記内側体が前記中間体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって移動することによって前記固定体雌ねじ部と前記内側体雄ねじ部との螺合を解除する工程と、を含む方法でもある。
【0013】
また本発明は、地盤調査装置を地盤調査装置用器具でボーリング孔に設置する方法であって、前記地盤調査装置は、地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体と、を備え、前記固定体は、前記内側体の外側に位置する中間体と、当該中間体の外側に位置する外側体とを含んで構成され、前記中間体は、内周面に前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部を有し、前記外側体は、前記中間体を回り止めしていて、周方向に間隔をあけて複数配置され径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部と、前記ボーリング孔の奥側であって前記固定体雌ねじ部の正面に設けられ当該アンカー部に連結する支持部と、を有し、前記中間体の外周面及び前記アンカー部の内周面の少なくとも一方は、前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって前記中間体の中心軸に近づくように傾斜する傾斜面であり、前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、前記地盤調査装置は、前記中間体に対して前記内側体を、前記固定体雌ねじ部に対して前記内側体雄ねじ部が締め付けられる第一の向きに回転させた際に、当該中間体が当該内側体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側へ向かって移動するように構成されていて、前記地盤調査装置用器具は、中空状をなし、一端部に前記内側体雌ねじ部に螺合する器具雄ねじ部を有するものであって、前記内側体雌ねじ部に前記器具雄ねじ部を螺合させて、前記地盤調査装置と前記地盤調査装置用器具とを結合させる工程と、結合した前記地盤調査装置を前記ボーリング孔の所定深さまで挿入する工程と、前記第一の向きに前記地盤調査装置用器具を回転させることによって、前記器具雄ねじ部と、前記中間体に対して前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって移動し前記支持部に接触して移動が停止した前記内側体の前記内側体雌ねじ部との螺合を解除して、前記地盤調査装置から前記地盤調査装置用器具を取り外す工程と、を含む方法でもある。
また本発明は、ボーリング孔に設置される地盤調査装置であって、地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体と、を備え、前記固定体は、筒状体と楔体とを含んで構成され、前記筒状体は、内周面に設けられ前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部と、当該筒状体における前記ボーリング孔の奥側に複数設けられ径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部とを備え、前記楔体は、前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって拡径していて、前記筒状体に対して当該ボーリング孔の奥側において端部を当該筒状体に挿入した状態で当該筒状体に保持され、前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、前記楔体が前記ボーリング孔の孔底に至るまで挿入された状態で前記筒状体を当該ボーリング孔の入口側から奥側に向かって押し込むと、前記楔体によって複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられて当該筒状体が当該ボーリング孔に固定されるように構成した地盤調査装置である。
また本発明は、地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体とを備え、当該固定体によってボーリング孔に固定させた地盤調査装置から地盤調査装置用器具で当該内側体を取り外す方法であって、前記地盤調査装置において、前記固定体は、筒状体と楔体とを含んで構成され、前記筒状体は、内周面に設けられ前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部と、当該筒状体における前記ボーリング孔の奥側に複数設けられ径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部とを備え、前記楔体は、前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって拡径していて、前記筒状体に対して当該ボーリング孔の奥側において端部を当該筒状体に挿入した状態で当該筒状体に保持され、前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、前記地盤調査装置は、前記楔体が前記ボーリング孔の孔底に至るまで挿入された状態で前記筒状体を当該ボーリング孔の入口側から奥側に向かって押し込むと、前記楔体によって複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられて当該筒状体が当該ボーリング孔に固定されるように構成されていて、前記地盤調査装置用器具は、中空状をなし、一端部に前記内側体雌ねじ部に螺合する器具雄ねじ部を有するものであって、前記地盤調査装置用器具を前記ボーリング孔に挿入する工程と、前記内側体雌ねじ部に対して前記器具雄ねじ部が締め付けられる第二の向きに当該地盤調査装置用器具を回転させると、前記器具雄ねじ部が前記内側体雌ねじ部に螺合するとともに前記内側体が前記筒状体に対して前記第二の向きに回転し、前記内側体が前記筒状体に対して前記ボーリング孔の奥側から入口側に向かって移動することによって前記固定体雌ねじ部と前記内側体雄ねじ部との螺合を解除する工程と、を含む方法でもある。
また本発明は、地盤調査装置をボーリング孔に設置する方法であって、前記地盤調査装置は、地盤調査に使用されるセンサを有する内側体と、当該内側体が取り付けられる固定体と、を備え、前記固定体は、筒状体と楔体とを含んで構成され、前記筒状体は、内周面に設けられ前記内側体を取り付けるための固定体雌ねじ部と、当該筒状体における前記ボーリング孔の奥側に複数設けられ径方向外側に向けて広がり可能なアンカー部とを備え、前記楔体は、前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって拡径していて、前記筒状体に対して当該ボーリング孔の奥側において端部を当該筒状体に挿入した状態で当該筒状体に保持され、前記内側体は、前記固定体雌ねじ部に螺合する内側体雄ねじ部と、当該内側体雄ねじ部とは逆回りであって当該内側体雄ねじ部の中心軸と共通する中心軸を有する内側体雌ねじ部と、を有し、前記地盤調査装置は、前記筒状体を前記楔体に向かって押し込むと、当該楔体によって複数の前記アンカー部が径方向外側に向けて押し広げられるように構成されていて、前記地盤調査装置を、前記楔体が前記ボーリング孔における孔底に至るまで挿入する工程と、長尺のロッドを前記ボーリング孔に挿入して当該ロッドで前記筒状体を前記ボーリング孔の入口側から奥側に向かって押し込むことによって、前記楔体が複数の前記アンカー部を径方向外側に向けて押し広げて当該筒状体を当該ボーリング孔に固定する工程と、を含む方法でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の地盤調査装置は、アンカー部を径方向外側に向けて押し広げる作業を行うことでこれをボーリング孔に設置することが可能であって、作業用やぐらを設置する等の大掛かりな作業は不要であるため、従来に比して作業性よく安価に地盤調査を行うことができる。またセンサを有する内側体は、内側体雌ねじ部を利用して内側体に連結させた部材を回転させることによって、ボーリング孔に固定されている固定体から取り外すことが可能であり、比較的高価なセンサを再使用することができるため、より安価に地盤調査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る地盤調査装置の一実施形態を示す、(a)は断面図((c)におけるA-Aに沿う断面図)であり、(b)は正面図であり、(c)は背面図である。
【
図2】本発明に係る地盤調査装置用器具の一実施形態を示す半断面図及び背面図である。
【
図3】(a)は、
図2に示した地盤調査装置用器具に
図1に示した内側体を取り付けた状態を示す図であって、(b)は、内側体に対して中間体を取り付けた後、更に外側体を取り付ける状態について示す図である。
【
図4】地盤調査装置をボーリング孔に設置する方法について説明するための図であって、(a)は、吹付法面に対して横方向に削孔してボーリング孔を設けた図であり、(b)は、
図3(b)に示した地盤調査装置用器具によって地盤調査装置をボーリング孔の所定の深さまで挿入した状態を示した図である。
【
図5】(a)は、地盤調査装置用器具を右回りに回転させて地盤調査装置をボーリング孔に設置した状態を示す図であり、(b)は、地盤調査装置用器具を更に右回りに回転させた状態を示すである。
【
図6】(a)は、
図5(b)に示す状態から更に地盤調査装置用器具を右回りに回転させて内側体から地盤調査装置用器具を取り外した状態を示す図であり、(b)は、地盤調査装置で地盤調査を実行する状態を示した図である。
【
図7】地盤調査装置用器具で内側体を取り外す方法について説明するための図であって、(a)は、ボーリング孔に挿入した地盤調査装置用器具を左回りに回転させて地盤調査装置用器具を内側体に取り付ける状態を示す図であって、(b)は、地盤調査装置用器具を更に左回りに回転させて中間体から内側体を取り外した状態を示す図である。
【
図8】(a)は、本発明に係る地盤調査装置の他の実施形態をボーリング孔に設置する方法について説明するための図であって、(b)は、設置した地盤調査装置から地盤調査装置用器具で内側体を取り外す方法について説明するための図である。
【
図9】本発明に係る地盤調査装置用器具の他の実施形態を示す、部分拡大半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る地盤調査装置、地盤調査装置用器具、及びこれらを用いた方法の一実施形態について説明する。なお、以下の説明においては便宜上、地盤調査装置をボーリング孔に設置した状態での向きで説明することとする。また、
図4(a)に示すようにボーリング孔の入口に近い側は単に「入口側」と称し、ボーリング孔の奥に近い側は単に「奥側」と称して説明する。
【0017】
図1は本発明に係る地盤調査装置の一実施形態を示した図である。本実施形態の地盤調査装置1は、内側体2と、内側体2が取り付けられる固定体K1とで構成されていて、固定体K1は、中間体3と、外側体4で構成されている。
【0018】
内側体2は、概略、一端部が閉鎖された筒状となる形態をなすものである。内側体2の中心には円形の孔5が設けられていて、孔5の内周面には、雌ねじ部(内側体雌ねじ部)6が設けられている。また、内側体2における孔5と同心となる円形の外周面には、雄ねじ部(内側体雄ねじ部)7が設けられている。すなわち、内側体雌ねじ部6と内側体雄ねじ部7は、共通の中心軸を有する。内側体雄ねじ部7は、内側体雌ねじ部6に対して逆回りになる(ねじ山が螺旋状に回転する方向が逆になる)ものである。本実施形態においては、内側体雌ねじ部6は左ねじ(雄ねじ状の相手物を内側体雌ねじ部6に対して左回りに回転させると両者が螺合する)であって、内側体雄ねじ部7は右ねじ(雌ねじ状の相手物に対して内側体2を右回りに回転させると両者が螺合する)である。なお、内側体雌ねじ部6と内側体雄ねじ部7は、互いに逆回りになる関係であればよく、呼び径やピッチは同じでもよいし異なっていてもよい。
【0019】
また内側体2の奥側には、地盤調査に使用されるセンサ8が取り付けられている。本実施形態のセンサ8は、地盤調査装置1をボーリング孔に設置した際にボーリング孔の延在する向きにおける振動を検出することが可能な1軸の加速度計を使用している。なお、他の向きの振動を検出できるセンサ(2軸や3軸の加速度計)を使用してもよい。またセンサ8は、地盤調査に使用されるものであればよく、加速度計以外の計測器具でもよい。そして本実施形態のセンサ8には、検知した振動に基づいて変換した電気信号を記録装置等に伝えるためのケーブル9が設けられている。
【0020】
中間体3は、概略、筒状となる形態をなすものである。中間体3の中心には円形の孔10が設けられていて、孔10の内周面には、雌ねじ部(中間体雌ねじ部)11が設けられている。なお中間体雌ねじ部11は、本明細書等において「固定体雌ねじ部」と称することもある。中間体雌ねじ部11は、内側体雄ねじ部7に螺合するものであり、その長さは、内側体雄ねじ部7よりも長くなっている。なお本実施形態における内側体2は、
図1(a)に示すように中間体3の奥側に位置するように(内側体雄ねじ部7は中間体雌ねじ部11に対して奥側で螺合するように)して中間体3に取り付けられている。そして、中間体3の外周面12のおける入口側は、横断面形状が多角形状になるように形作られていて、本実施形態では、
図1(c)に示すように正五角形状になっている。また外周面12の縦断面形状は、
図1に示すように、ボーリング孔に設置した状態において奥側から入口側に向かって先細りになる(奥側から入口側に向かって中間体3の中心軸に近づくように傾斜する)テーパー状となっている。
【0021】
外側体4は、概略、柱状になるアンカー部13を備えている。アンカー部13は、中間体3の外側を取り囲むように、周方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、
図1(c)に示すように、中間体3の中心軸周りに等間隔で合計5個設けられている。
図1(a)のアンカー部13の内周面14は、中間体3の外周面12に対向していて、その縦断面形状は、奥側から入口側に向かって中間体3の中心軸に近づくように傾斜している。本実施形態の内周面14は、外周面12と略同角度で傾斜している。アンカー部13の外周面15は、
図1(c)に示すように5個配置した際に円形状になるように、それぞれが円弧状に形作られている。
【0022】
また外側体4は、アンカー部13に対して奥側に位置する支持部16を備えている。本実施形態の支持部16は、所定の形状にカットされた板金を折り曲げることにより形成されている。具体的に説明すると、
図1(b)に示すように本実施形態の支持部16は、正面視において円板状をなす基部17に対して、基部17の外周部において周方向に等間隔で5つ設けられた板状片18を、それらの連結部で略直角に折り曲げるようにして形成されている。ここで板状片18のそれぞれには、アンカー部13が固定されている。
【0023】
図2は、本発明に係る地盤調査装置用器具の一実施形態である地盤調査装置用器具51を示した図である。
【0024】
地盤調査装置用器具51は、概略、中空状となる形態をなすものである。地盤調査装置用器具51の奥側の端部には、内側体雌ねじ部6に螺合する雄ねじ部(器具雄ねじ部)52が設けられている。本実施形態では地盤調査装置用器具51を左回りに回転させると、内側体雌ねじ部6に対して器具雄ねじ部52を締め付けることができる。また地盤調査装置用器具51の先端側には、本実施形態では六角ボルトの如き形状になるヘッド部53が設けられている。
【0025】
次に、
図3~
図7を参照しながら、地盤調査装置1を地盤調査装置用器具51によってボーリング孔に設置する方法と、ボーリング孔に設置した地盤調査装置1から地盤調査装置用器具51によって内側体2を取り外す方法について説明する。
【0026】
地盤調査装置1を地盤調査装置用器具51によってボーリング孔に設置するにあたって、まず、地盤調査装置1と地盤調査装置用器具51とを結合させる。本実施形態においては、
図3(a)に示すように、内側体2に対して地盤調査装置用器具51を左回りに回転させて、内側体雌ねじ部6に器具雄ねじ部52を締め付ける。この際、内側体2に設けたセンサ8のケーブル9は、中空状となる地盤調査装置用器具51の内側に挿通させておく。更に、内側体2を取り付けた地盤調査装置用器具51を中間体3に対して右回りに回転させて、
図3(b)に示すように内側体雄ねじ部7と中間体雌ねじ部11を螺合させる。その後は、地盤調査装置用器具51等に結合させた中間体3を外側体4の内側に挿入する。なお、地盤調査装置1と地盤調査装置用器具51とを結合させる手順は上記に限られず、例えば内側体2、中間体3、外側体4を先に組み合わせておき、その後に内側体雌ねじ部6と器具雄ねじ部52とを螺合させてもよい。
【0027】
なお、このような地盤調査装置1によって本実施形態では、
図4(a)に示すような吹付法面100の地盤調査を行うこととする。吹付法面100は、地山101の法面102に吹付材(例えばコンクリートやモルタル)を吹き付けて吹付層103を形成したものである。そしてドリル等を使用し、吹付法面100に対して横方向(水平方向)にボーリング孔104を削孔する。本実施形態のボーリング孔104は、φ25~35mm程度のドリルを使用して深さ1m程度に削孔されたものであり、従前のPS検層で使用するボーリング孔に比して直径も深さも小さいため、小型の機材で削孔することが可能である。ボーリング孔104を削孔した後は、必要に応じて、ボーリング孔104の内側やボーリング孔104の入口付近に残った削孔屑をブロアー等によって除去しておく。
【0028】
そして
図4(b)に示すように、地盤調査装置用器具51に取り付けた地盤調査装置1をボーリング孔104の入口に挿入し、更に地盤調査装置用器具51を奥側に向けて動かして、地盤調査装置1をボーリング孔104の所定の位置まで押込む。
【0029】
地盤調査装置1を所定の位置まで押込んだ後は、地盤調査装置用器具51を奥側から入口側へ多少(数cm程度)引張って、地盤調査装置1をボーリング孔104の壁面に引っ掛ける。なお、ボーリング孔104の削孔具合によっては、地盤調査装置1を押込んだ際にこれがボーリング孔104に引っ掛かった状態になるため、上述した地盤調査装置用器具51の引張は省略してもよい。次いで
図5(a)に示すように、地盤調査装置用器具51を右回りに回転させる。これにより、地盤調査装置用器具51とともに内側体2も右回りに回転するため、図示したように中間体3は、内側体2に対して相対的に奥側から入口側へ移動し、それに伴って中間体3の外周面12がアンカー部13の内周面14を押圧する。その結果、アンカー部13を固定している板状片18が基部17に対して径方向外側に撓み、複数のアンカー部13が拡径するように押し広げられるため、アンカー部13の外周面15がボーリング孔104の壁面に押し当たり、地盤調査装置1をボーリング孔104に固定することができる。なお、
図2(a)に示すように地盤調査装置用器具51は、六角ボルトの如き形状になるヘッド部53を備えているため、これに適合するスパナやレンチ等の工具を使用することによって、地盤調査装置用器具51を軽い力で回転させることができる。
【0030】
アンカー部13を拡径させた後も地盤調査装置用器具51を右回りに回転させると、
図5(b)に示すように内側体2は、中間体3に対して相対的に入口側から奥側へ移動して、基部17に当接する。すなわち、内側体2の移動は停止するものの、地盤調査装置用器具51を右回りに回転させているため、内側体雌ねじ部6と器具雄ねじ部52との螺合が解除されて、地盤調査装置1から地盤調査装置用器具51を取り外すことができる(
図6(a)参照)。
【0031】
地盤調査装置用器具51を取り外した後は、不図示の記録装置等にケーブル9を接続して、PS検層等の地盤調査を実行する。なお、地盤調査装置用器具51が地盤調査装置1に連結した状態で地盤調査を行うと、地盤調査装置用器具51の剛性の影響がセンサ8に及ぶことになり、伝播する弾性波動を正確に測定することは難しい。一方、
図6(b)に示すように、上記のような手順で地盤調査装置用器具51を取り外す場合は、このような影響が取り除かれるため、地盤調査をより正確に行うことができる。
【0032】
地盤調査が終了した後は、下記に説明する手順で内側体2を中間体3から取り外すことができる。本実施形態においては、
図7(a)に示すように、ケーブル9を中空状の地盤調査装置用器具51に挿通させて、地盤調査装置用器具51をボーリング孔104に挿入して内側体2に近づける。そして地盤調査装置用器具51を左回りに回転させて、内側体雌ねじ部6と器具雄ねじ部52とを螺合させる。
【0033】
そして、内側体雌ねじ部6と器具雄ねじ部52とが完全に螺合した後も地盤調査装置用器具51の回転を継続すると、地盤調査装置用器具51に連結した内側体2も左回りに回転する。上述したように内側体雌ねじ部6と内側体雄ねじ部7とは逆ねじの関係であるため、内側体2が左回りに回転すると、内側体雄ねじ部7と中間体雌ねじ部11との螺合が緩んで、内側体2を中間体3から取り外すことができる(
図7(b)参照)。このように本実施形態の地盤調査装置1及び地盤調査装置用器具51によれば、内側体2をボーリング孔104から回収することができるため、内側体2に設けたセンサ8を再利用することができる。すなわち、一般にセンサ8は高価であるものの、繰り返し使用できるために地盤調査に要する費用を抑えることができる。
【0034】
本発明に係る地盤調査装置は、上述した地盤調査装置1に限られず、例えば
図8に示す地盤調査装置21として具現化することも可能である。地盤調査装置21は、上述した内側体2と、内側体2が取り付けられる固定体K2を備えている。また固定体K2は、筒状体22と楔体23で構成されている。
【0035】
図8(a)に示すように筒状体22の中心には、円形の孔24が設けられていて、孔24の内周面における入口側には、雌ねじ部(固定体雌ねじ部)25が設けられている。本実施形態の固定体雌ねじ部25は、右ねじである。また筒状体22の奥側には、これを奥側から入口側に向けて切り欠くスリット26が複数設けられている。ここで、筒状体22における隣り合うスリット26の間の部分(以下、この部分をアンカー部27と称する)は、後述する手順で径方向外側に向けて押し広げられ、筒状体22をボーリング孔104に固定する機能を有する。
【0036】
楔体23は、入口側から出口側に向かって拡径する円錐台状をなすものであって、筒状体22の奥側において、その先端部が孔24に挿入された状態で筒状体22に保持される。
【0037】
このような地盤調査装置21は、
図8(a)に示すように、楔体23を奥側に位置させた状態でボーリング孔104における孔底に楔体23が至るまで挿入される。そして、筒状体22の入口側端部を奥側に向けて押込む(例えば長尺のロッドをボーリング孔104に挿入し、ロッドの一端部を筒状体22の入口側端部に当てた状態でロッドの他端部をハンマー等で叩く)ことによって、アンカー部27が楔体23によって押し広げられ、アンカー部27の外周面28がボーリング孔104の壁面に押し当たるため、地盤調査装置21をボーリング孔104に固定することができる。なお、内側体2を地盤調査装置21に取り付ける作業は、地盤調査装置21をボーリング孔104に固定する前(地盤調査装置21をボーリング孔104に挿入する前、又は地盤調査装置21をボーリング孔104に挿入してアンカー部27を押し広げる前)に行ってもよいし、地盤調査装置21をボーリング孔104に固定した後に行ってもよい。このようにしてボーリング孔104に地盤調査装置21を設置することによって、先に述べた地盤調査装置1と同様にPS検層等の地盤調査を行うことができる。
【0038】
地盤調査が終了した後は、地盤調査装置用器具51を使用して、内側体2を筒状体22から取り外すことができる。具体的には、ケーブル9を中空状の地盤調査装置用器具51に挿通させ、地盤調査装置用器具51を内側体2に近づけつつ、これを左回りに回転させて、内側体雌ねじ部6と器具雄ねじ部52とを螺合させる。そして、内側体雌ねじ部6と器具雄ねじ部52とが完全に螺合した後も地盤調査装置用器具51の回転を継続すると、地盤調査装置用器具51に連結した内側体2も左回りに回転する。ここで、内側体雌ねじ部6と内側体雄ねじ部7とは逆ねじの関係であるため、内側体2が左回りに回転すると、内側体雄ねじ部7と固定体雌ねじ部25との螺合が緩んで、内側体2を筒状体22から取り外すことができる(
図8(b)参照)。従って本実施形態の地盤調査装置21も、内側体2をボーリング孔104から回収して、内側体2に設けたセンサ8を再利用することができる。
【0039】
ところで、地盤調査装置用器具51の器具雄ねじ部52は、
図2に示すように、地盤調査装置用器具51の先端部まで雄ねじ状に形成されるものであったが、
図9に示すように、地盤調査装置用器具51の先端部には、テーパー部54を設けることが好ましい。上述したように、ボーリング孔104に設置した地盤調査装置1、21から内側体2を取り外すにあたって内側体雌ねじ部6に器具雄ねじ部52を螺合させる際は、ボーリング孔104に地盤調査装置用器具51を挿入した状態において、内側体雌ねじ部6と器具雄ねじ部52との位置を合わせる必要がある。この場合、テーパー部54を設けた地盤調査装置用器具51によれば、ボーリング孔104に地盤調査装置用器具51を挿入した際、テーパー部54が内側体雌ねじ部6の内側に入りやすくなるため、内側体雌ねじ部6と器具雄ねじ部52との位置を合わせが容易になって作業性がよくなる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0041】
例えば本実施形態では、
図1(a)に示すように中間体3の外周面12とアンカー部13の内周面14はともに傾斜面であったが、何れか一方だけが傾斜面(例えば外周面12は
図1(a)の通りに傾く一方で内周面14は段差面(奥側と入口側との間に段差があって入口側の方が中間体3の中心軸寄りに位置する)である場合や、内周面14は
図1(a)の通りに傾く一方で外周面12は水平方向に延在する面である場合)でもよい。また本発明は、横方向(水平方向)に削孔したボーリング孔のみに適用されるものではなく、入口側に対して奥側が上下方向や左右方向に傾くボーリング孔や、縦方向(垂直方向)に削孔したボーリング孔に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1:地盤調査装置
2:内側体
3:中間体
4:外側体
5:孔(内側体の孔)
6:内側体雌ねじ部
7:内側体雄ねじ部
8:センサ
9:ケーブル
10:孔(中間体の孔)
11:中間体雌ねじ部(固定体雌ねじ部)
12:外周面(中間体の外周面)
13:アンカー部
14:内周面(アンカー部の内周面)
15:外周面(アンカー部の外周面)
16:支持部
17:基部
18:板状片
21:地盤調査装置
22:筒状体
23:楔体
24:孔(筒状体の孔)
25:固定体雌ねじ部
26:スリット
27:アンカー部
28:外周面(アンカー部の外周面)
51:地盤調査装置用器具
52:器具雄ねじ部
53:ヘッド部
54:テーパー部
100:吹付法面
101:地山
102:法面
103:吹付層
104:ボーリング孔
K1:固定体
K2:固定体