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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】パターン測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230627BHJP
   G01B 15/00 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01B15/00 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020088016
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021182601
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】中澤 伸一
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243993(JP,A)
【文献】特開2007-149055(JP,A)
【文献】特開2008-235575(JP,A)
【文献】特開2014-025700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01B 15/00-15/04
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計データ内に定義された座標系上の測定点がCADパターン内にあるか否かを決定し、
前記測定点と前記CADパターンとの相対位置、および前記CADパターンの面積に基づいて前記CADパターンのタイプおよび測定レシピを決定し、
前記CADパターンに対応する画像上の実パターンと、前記CADパターンとの位置合わせを行い、
前記決定された測定レシピに従って前記実パターンの特徴量を測定する、方法。
【請求項2】
前記CADパターンのタイプは、孤立パターン、直線パターン、曲線パターン、および終端パターンを少なくとも含む複数のタイプから選択された1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定レシピは、前記画像上の実パターンの幅の測定、前記画像上の実パターン間の距離の測定、および前記画像上の実パターンのエッジの位置ずれの測定を少なくも含む複数の測定レシピから選択された1つである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記CADパターンの面積が予め定められた面積よりも小さいときは、前記CADパターンは孤立パターンであると決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記測定点に最も近い前記CADパターンの第1エッジと、前記測定点を越えて前記第1エッジとは反対側にある第2エッジが所定の探索領域内において頂点を有してないときは、前記CADパターンは直線パターンであると決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1エッジおよび前記第2エッジのうちの少なくとも一方が前記所定の探索領域内において頂点を有しているときは、前記CADパターンは曲線パターンであると決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記測定点に最も近い前記CADパターンのエッジの長さが所定の長さよりも短く、かつ前記CADパターンの面積が予め定められた面積よりも大きいときは、前記CADパターンは終端パターンであると決定される、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡などの画像生成装置により生成された画像上のパターンの寸法(Critical Dimension)などの特徴量を測定する方法に関し、特に、ウェーハ、マスク、パネル、基板などのワークピースに形成されたパターンの寸法などの特徴量の測定レシピを自動的に決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ、マスク、パネル、基板などのワークピースに形成されたパターンは、通常、直線的なエッジやコーナーエッジなどの様々な形状のエッジを有している。パターンは、設計データ(CADデータともいう)に従ってワークピースの表面に形成される。CD(Critical Dimension)測定では、ワークピース上に形成されたパターンの画像を走査電子顕微鏡で生成し、画像上のパターンの寸法を測定する。
【0003】
寸法の測定は、パターン欠陥が起こりやすい多くの測定点で実施される。これら測定点は、設計データ内に定義された座標系上に特定される。このような寸法測定では、測定対象となるパターンに適した測定レシピが測定点ごとに手動で設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-235575号公報
【文献】特開2013-92440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロセスの微細化に伴い、測定の精度を上げるために多数の測定点においてパターン寸法を測定することが要求されている。しかしながら、従来の測定方法では、すべての測定点に対して手動で測定レシピの設定が必要になり、寸法測定のための準備に膨大な時間がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、パターンの幅寸法などの特徴量の測定レシピを自動的に決定することができるパターン測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、設計データ内に定義された座標系上の測定点がCADパターン内にあるか否かを決定し、前記測定点と前記CADパターンとの相対位置、および前記CADパターンの面積に基づいて前記CADパターンのタイプおよび測定レシピを決定し、前記CADパターンに対応する画像上の実パターンと、前記CADパターンとの位置合わせを行い、前記決定された測定レシピに従って前記実パターンの特徴量を測定する、方法が提供される。
【0008】
一態様では、前記CADパターンのタイプは、孤立パターン、直線パターン、曲線パターン、および終端パターンを少なくとも含む複数のタイプから選択された1つである。
一態様では、前記測定レシピは、前記画像上の実パターンの幅の測定、前記画像上の実パターン間の距離の測定、および前記画像上の実パターンのエッジの位置ずれの測定を少なくも含む複数の測定レシピから選択された1つである。
【0009】
一態様では、前記CADパターンの面積が予め定められた面積よりも小さいときは、前記CADパターンは孤立パターンであると決定される。
一態様では、前記測定点に最も近い前記CADパターンの第1エッジと、前記測定点を越えて前記第1エッジとは反対側にある第2エッジが所定の探索領域内において頂点を有してないときは、前記CADパターンは直線パターンであると決定される。
一態様では、前記第1エッジおよび前記第2エッジのうちの少なくとも一方が前記所定の探索領域内において頂点を有しているときは、前記CADパターンは曲線パターンであると決定される。
一態様では、前記測定点に最も近い前記CADパターンのエッジの長さが所定の長さよりも短く、かつ前記CADパターンの面積が予め定められた面積よりも大きいときは、前記CADパターンは終端パターンであると決定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設計データ上の測定点とCADパターンとの相対位置、およびCADパターンの面積に基づき、CADパターンのタイプを決定し、かつ最適な測定レシピを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像生成システムの一実施形態を示す模式図である。
図2】設計データ内に定義された座標系上の測定点とCADパターンの一例を示す模式図である。
図3】CADパターンに対応するワークピース上の実パターンの画像を示す模式図である。
図4】CADパターンと、画像上の対応する実パターンとの位置合わせを説明する模式図である。
図5図5(a)および図5(b)は、孤立パターン間の距離を測定する一実施形態を表す模式図である。
図6】直線パターンの幅を測定する一実施形態を説明する模式図である。
図7】直線パターン間の距離を測定する一実施形態を説明する模式図である。
図8】曲線パターンの幅を測定する一実施形態を説明する模式図である。
図9】曲線パターンの測定箇所と測定方向を決定する方法の一実施形態を説明する模式図である。
図10】曲線パターン間の距離を測定する一実施形態を説明する模式図である。
図11】終端パターンのエッジの位置ずれを測定する一例を説明する模式図である。
図12】上述したCADパターンのタイプおよび測定レシピの決定を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、画像生成システムの一実施形態を示す模式図である。画像生成システムは、ワークピースWの画像を生成する走査電子顕微鏡1と、走査電子顕微鏡1の動作を制御する動作制御部5を備えている。ワークピースWの例としては、半導体デバイスの製造に使用されるウェーハ、マスク、パネル、基板などが挙げられる。
【0013】
動作制御部5は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。動作制御部5は、プログラムが格納された記憶装置5aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する処理装置5bを備えている。記憶装置5aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。処理装置5bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部5の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0014】
走査電子顕微鏡1は、電子ビームを放出する電子銃15、電子銃15から放出された電子ビームを集束する集束レンズ16、電子ビームをX方向に偏向するX偏向器17、電子ビームをY方向に偏向するY偏向器18、電子ビームを試料の一例であるワークピースWにフォーカスさせる対物レンズ20、ワークピースWを支持するステージ31を有する。
【0015】
電子銃15から放出された電子ビームは集束レンズ16で集束された後に、X偏向器17、Y偏向器18で偏向されつつ対物レンズ20により集束されてワークピースWの表面に照射される。ワークピースWに電子ビームの一次電子が照射されると、ワークピースWからは二次電子および反射電子などの電子が放出される。ワークピースWから放出された電子は電子検出器26により検出される。電子検出器26の電子検出信号は、画像取得装置28に入力され画像に変換される。このようにして、走査電子顕微鏡1は、ワークピースWの表面の画像を生成する。画像取得装置28は動作制御部5に接続されており、ワークピースWの画像は動作制御部5に送られる。
【0016】
以下、走査電子顕微鏡1によって生成された画像上の実パターンの特徴量を測定する方法ついて説明する。以下の説明では、ワークピースW上のパターンは、設計データ(CADデータともいう)に基づいて形成されている。CADは、コンピュータ支援設計(computer-aided design)の略語である。以下に説明するように、画像上の実パターンの特徴量の例としては、実パターンの幅の寸法、実パターン間の距離、実パターンのエッジの位置ずれ、実パターン全体の位置ずれ、実パターン(特に孤立パターン)の面積、実パターン(特に孤立パターン)の扁平率、実パターン(特に直線パターンまたは曲線パターン)のラインエッジラフネス、実パターン(特に曲線パターン)の曲率などが挙げられる。
【0017】
ワークピースWに形成されているパターンの設計データは、記憶装置5aに予め記憶されている。設計データは、ワークピースW上に形成されたパターンの頂点の座標、パターンの位置、形状、および大きさ、パターンが属する層の番号などのパターンの設計情報を含む。動作制御部5は、記憶装置5aからパターンの設計データを読み込むことが可能である。
【0018】
設計データは、ワークピースWに形成されたパターンの設計情報を含むデータである。以下に説明する設計データ上のCADパターンは、設計データに含まれるパターンの設計情報によって定義される仮想パターンであり、ポリゴン形状を有している。以下の説明では、ワークピースWに実際に形成されているパターンを実パターンということがある。
【0019】
画像上のパターンの特徴量の測定位置を特定するための測定点は、動作制御部5に入力され、記憶装置5a内に記憶される。一実施形態では、測定点は、ワークピースWに形成されたパターンの欠陥が生じやすい点である。例えば、測定点におけるパターンの幅の寸法(CDまたはCritical Dimension)が長すぎる、または短すぎる場合には、動作制御部5はパターンに欠陥があると判断することができる。
【0020】
測定点の位置は、設計データ内に定義された座標系上の点を表す座標(X座標、Y座標)によって特定される。設計データ上のCADパターンの位置、形状、および大きさも、上記座標系上のCADパターンの頂点によって特定することができる。通常、多数の測定点が上記座標系上に設定される。
【0021】
動作制御部5は、設計データ内に定義された座標系上の測定点とCADパターンとの相対位置、およびCADパターンの面積に基づいてCADパターンのタイプおよび測定レシピを決定するように構成されている。CADパターンのタイプには、孤立パターン、直線パターン、曲線パターン、および終端パターンが少なくとも含まれる。
【0022】
図2は、設計データ内に定義された座標系上の測定点とCADパターンの一例を示す模式図である。CADパターン101は、孤立パターンの一例であるホールパターンであり、CADパターン102は、直線パターンである。図2に示す例では、3つの測定点111,112,113が設定され、座標系上にプロットされている。
【0023】
走査電子顕微鏡1は、上記CADパターン101,102に対応する実パターンの画像を生成する。図3は、CADパターン101,102に対応するワークピースW上の実パターン121,122の画像130を示す模式図である。対応する実パターン121,122は、上記CADパターン101,102に従ってワークピースWに実際に形成されたパターンである。実パターン121,122の画像130は動作制御部5に送信される。
【0024】
図4に示すように、動作制御部5は、CADパターン101,102と、ワークピースWの画像130上の対応する実パターン121,122との位置合わせを行う。位置合わせを行うことで、画像生成時に起こる位置ずれを修正し、測定点の座標で指定された正確な位置での特徴量測定が可能になる。画像130上の実パターン121,122と、CADパターン101,102との位置合わせには、公知のパターンマッチングの技術が使用できる。
【0025】
動作制御部5は、座標系上の測定点とCADパターンとの相対位置、およびCADパターンの面積に基づいてCADパターンのタイプおよび測定レシピを決定し、決定された測定レシピに従って画像上の実パターンの特徴量の測定を実行する。以下、CADパターンのタイプおよび測定レシピを決定する方法の一実施形態を説明する。
【0026】
図2に示す例において、動作制御部5は、まず、与えられた測定点111,112,113が、設計データ上のCADパターン101,102の内側にあるかどうかを判別する。図2では、測定点111,113は、CADパターン101,102の内側にそれぞれ位置しており、測定点112はこれらCADパターン101,102の外側にある。
【0027】
動作制御部5は、CADパターン101,102の面積を算定する。動作制御部5は、CADパターンの面積が予め定められた面積よりも小さいときは、そのCADパターンは孤立パターンであると決定する。図2に示す例では、CADパターン101の面積は予め定められた面積よりも小さく、したがって動作制御部5は、CADパターン101は孤立パターンであると決定する。これに対して、CADパターン102の面積は予め定められた面積よりも大きく、したがって動作制御部5は、CADパターン102は孤立パターンではないと決定する。
【0028】
動作制御部5は、孤立パターンであると決定されたCADパターン101に対応する実パターンの幅を測定する。具体的には、図3に示す画像130上の実パターン121(図2のCADパターン101に対応する)の幅の寸法(Critical Dimension)を測定する。一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として実パターン121の面積および/または扁平率をさらに算定してもよい。また、一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として、実パターン121の全体の位置ずれ、すなわち、実パターン121と、対応するCADパターン101とのずれ量を測定してもよい。
【0029】
図5(a)および図5(b)は、特徴量として孤立パターン間の距離を測定する一実施形態を表す模式図である。図5(a)に示すように、測定点211がCADパターン212,213,214,215の外側にある場合、動作制御部5は、測定点211を中心とする所定の半径Rの円形の領域220内に位置するCADパターン212,213,214を決定する。動作制御部5は、領域220内にあるCADパターン212,213,214の面積をそれぞれ算定する。図5(a)に示す例では、測定点211は、CADパターン212,213の間に位置し、CADパターン213,214の間に位置し、さらにCADパターン214,212の間に位置する。
【0030】
CADパターン212,213,214の面積のそれぞれが、予め定められた面積よりも小さい場合は、動作制御部5は、CADパターン212,213,214を孤立パターン間の距離測定対象のCADパターンに決定する。次に、動作制御部5は、図5(b)に示すように、CADパターン212,213,214の重心位置G1,G2,G3を求め、さらに各重心位置G1、G2、G3間を結ぶ線分上の中点222,223,224を求める。動作制御部5は、測定点211から中点222,223,224までの距離L1,L2,L3を測定する。測定された距離が、予め定められた距離よりも短い場合、動作制御部5は、その中点を含む線分の両端に位置するCADパターンに対応する画像上の実パターン間の距離を測定する。
【0031】
図6は、特徴量として直線パターンの幅を測定する一実施形態を説明する模式図である。動作制御部5は、CADパターン231の面積が、予め定められた面積よりも大きいときは、CADパターン231は孤立パターンでないと決定する。動作制御部5は、測定点232に最も近い設計データ上のCADパターン231の第1エッジ233を決定する。さらに、動作制御部5は、測定点232を越えて第1エッジ233とは反対側にある第2エッジ234を決定する。第2エッジ234は、第1エッジ233と平行である。測定点232は、第1エッジ233と第2エッジ234との間に位置する。
【0032】
第1エッジ233と第2エッジ234との距離L5がしきい値よりも短く、かつ所定の探索領域T1内に第1エッジ233および第2エッジ234が頂点を有していないときは、動作制御部5は、CADパターン231は直線パターンであると決定する。探索領域T1は、測定点232から延び、第1エッジ233に垂直な第1垂線237と、第1エッジ233との第1交点238を囲み、さらに、測定点232から延び、第2エッジ234に垂直な第2垂線240と、第2エッジ234との第2交点241を囲む領域である。探索領域T1のサイズは、パラメータとして設定することができる。
【0033】
動作制御部5は、測定点232がCADパターン231内にあることを決定し、さらに、直線パターンであるCADパターン231に対応する画像上の実パターンの幅の寸法(Critical Dimension)を測定する。一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として実パターンのラインエッジラフネスをさらに算定してもよい。また、一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として、実パターンの全体の位置ずれ、すなわち、実パターンと、対応するCADパターン231とのずれ量を測定してもよい。
【0034】
設計データ上のエッジには、半導体デバイス設計の補正過程で生成される微細な段差243が存在することがある。動作制御部5は、エッジの頂点の有無を判定する際に、予め定められた大きさよりも小さい段差を無視するように構成されている。したがって、微小な段差がエッジにある場合には、CADパターンは直線パターンであると決定される。
【0035】
図7は、特徴量として直線パターン間の距離を測定する一実施形態を説明する模式図である。特に説明しない本実施形態の動作は、図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図7に示す本実施形態では、動作制御部5は、測定点232が設計データ上のCADパターン231,245の外側に位置し、かつCADパターン231,245の間に位置することを決定し、さらに、CADパターン231,245に対応する画像上の実パターン間の距離を測定する。
【0036】
図8は、特徴量として曲線パターンの幅を測定する一実施形態を説明する模式図である。動作制御部5は、測定点251に最も近い設計データ上のCADパターン252の第1エッジ253を決定する。動作制御部5は、測定点251を越えて第1エッジ253とは反対側にある第2エッジ255を決定する。第2エッジ255は、第1エッジ253と平行である。測定点251は、第1エッジ253と第2エッジ255との間に位置する。
【0037】
第1エッジ253と第2エッジ255との距離L6がしきい値よりも短く、かつ所定の探索領域T2内に第1エッジ253および第2エッジ255のうちの少なくとも一方が頂点を有しているときは、動作制御部5は、CADパターン252は曲線パターンであると決定する。探索領域T2は、測定点251から延び、第1エッジ253に垂直な第1垂線257と、第1エッジ253との第1交点258を囲み、さらに、測定点251から延び、第2エッジ255に垂直な第2垂線260と、第2エッジ255との第2交点261を囲む領域である。探索領域T2のサイズは、パラメータとして設定することができる。図8に示す実施形態では、第1エッジ253は、探索領域T2内に頂点264を有しているので、動作制御部5は、CADパターン252は曲線パターンであると決定する。
【0038】
図9は、曲線パターンの測定箇所と測定方向を決定する方法の一実施形態を説明する模式図である。ウェーハなどのワークピースに形成される実パターンは、露光やエッチング等のプロセスにより、丸まった形状のコーナーエッジを有する。この形状を模すために、図9の符号267,268に示すような丸め処理をCADパターン252に対して施す。この丸め処理には、円弧、ベジェ曲線等を用いる。
【0039】
動作制御部5は、測定点251から曲線267までの距離が最も短い最短点270を決定する。動作制御部5は、最短点270から曲線267の法線271を引き、対向する曲線268と法線271との交点275を決定する。動作制御部5は、法線271の延びる方向における実パターンの幅を測定する。一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として実パターンの曲率および/またはラインエッジラフネスをさらに算定してもよい。
【0040】
図10は、特徴量として曲線パターン間の距離を測定する一例を説明する模式図である。特に説明しない本実施形態の動作は、図8および図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図10に示す本実施形態では、動作制御部5は、測定点251が設計データ上のCADパターン252,278の外側に位置し、かつCADパターン252,278の間に位置することを決定し、さらに、CADパターン252,278に対応する画像上の実パターン間の距離を測定する。
【0041】
図11は、特徴量として終端パターンのエッジの位置ずれを測定する一例を説明する模式図である。測定点281の最も近くに位置するCADパターン283が前記のいずれのタイプにも該当しなかった場合、動作制御部5は、以下の判定方法でCADパターン283が終端パターンか否かの判定を行う。すなわち、動作制御部5は、測定点281の最も近くに位置するCADパターン283のエッジ284を決定する。エッジ284の長さL7が所定の長さよりも短く、かつCADパターン283の面積が予め定められた面積よりも大きいときは、動作制御部5は、CADパターン283は終端パターンであると決定する。
【0042】
動作制御部5は、終端パターンであるCADパターン283のエッジ284に対応する画像上の実パターンのエッジを検出し、実パターンのエッジの位置ずれ、すなわち実パターンのエッジとCADパターン283のエッジ284との距離を測定する。
【0043】
図12は、上述したCADパターンのタイプおよび測定レシピの決定を説明するフローチャートである。
ステップS1では、画像上のパターンの特徴量(例えば寸法)の測定位置を特定するための測定点は、動作制御部5に入力される。測定点は、測定対象の実パターンに対応するCADパターン内またはその近傍に位置する。測定点は記憶装置5a内に記憶される。
ステップS2では、動作制御部5は、走査電子顕微鏡1に指令を発して、CADパターンに対応する実パターンの画像を生成させる。動作制御部5は、走査電子顕微鏡1から実パターンの画像を取得する。
ステップS3では、動作制御部5は、CADパターンに対応する画像上の実パターンと、CADパターンとの位置合わせを行う。画像上の実パターンと、CADパターンとの位置合わせには、公知のパターンマッチングの技術が使用できる。
【0044】
ステップS4では、動作制御部5は、CADパターンの面積が予め定められた面積よりも小さいときは、CADパターンは孤立パターンであると決定する。さらに、動作制御部5は、測定点がCADパターン内にあるか否かを判断する。測定点がCADパターン内に位置している場合は、ステップS5において、動作制御部5は、孤立パターンであるCADパターンに対応する画像上の実パターンの幅を測定する。一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として実パターンの面積および/または扁平率をさらに算定してもよい。また、一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として、実パターンの全体の位置ずれ、すなわち、実パターンと、対応するCADパターンとのずれ量を測定してもよい。
【0045】
ステップS6では、測定点が孤立パターン間に位置しているか否かを判定する。測定点が孤立パターン間に位置している場合は、ステップS7において、動作制御部5は、孤立パターンであるCADパターンに対応する画像上の実パターン間の距離を測定する。
【0046】
CADパターンが孤立パターンではない場合、動作制御部5は、CADパターンが直線パターンであるか否かを判定する。すなわち、動作制御部5は、ステップS8において、測定点に最も近いCADパターンの第1エッジと、測定点を越えて第1エッジとは反対側にある第2エッジが所定の探索領域内において頂点を有してないときは、動作制御部5は、CADパターンは直線パターンであると決定する。さらに、動作制御部5は、測定点がCADパターン内にあるか否かを判断する。測定点がCADパターン内に位置している場合は、ステップS9において、動作制御部5は、直線パターンであるCADパターンに対応する画像上の実パターンの幅を測定する。一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として実パターンのラインエッジラフネスをさらに算定してもよい。また、一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として、実パターンの全体の位置ずれ、すなわち、実パターンと、対応するCADパターンとのずれ量を測定してもよい。
【0047】
ステップS10では、測定点が直線パターン間に位置しているか否かを判定する。測定点が直線パターン間に位置している場合は、ステップS11において、動作制御部5は、直線パターンであるCADパターンに対応する画像上の実パターン間の距離を測定する。
【0048】
ステップS12では、上記第1エッジおよび上記第2エッジのうちの少なくも一方が所定の探索領域内において頂点を有しているときは、動作制御部5は、CADパターンは曲線パターンであると決定する。さらに、動作制御部5は、測定点がCADパターン内にあるか否かを判断する。測定点がCADパターン内に位置している場合は、ステップS13において、動作制御部5は、曲線パターンであるCADパターンに対応する画像上の実パターンの幅を測定する。一実施形態では、動作制御部5は、パターンの特徴量として実パターンの曲率および/またはラインエッジラフネスをさらに算定してもよい。
【0049】
ステップS14では、測定点が曲線パターン間に位置しているか否かを判定する。測定点が曲線パターン間に位置している場合は、ステップS15において、動作制御部5は、曲線パターンであるCADパターンに対応する画像上の実パターン間の距離を測定する。
【0050】
ステップS16では、測定点に最も近いCADパターンのエッジの長さが所定の長さよりも短く、かつCADパターンの面積が予め定められた面積よりも大きいときは、動作制御部5は、CADパターンは終端パターンであると決定する。
ステップS17では、動作制御部5は、終端パターンであるCADパターンのエッジに対応する画像上の実パターンのエッジを検出し、実パターンのエッジの位置ずれ、すなわち実パターンのエッジとCADパターンのエッジとの距離を測定する。
CADパターンが、孤立パターン、直線パターン、曲線パターン、および終端パターンのいずれにも該当しない場合には、動作制御部5は、特徴量測定動作を終了する。
【0051】
上述した実施形態によれば、設計データ上の測定点とCADパターンとの相対位置、およびCADパターンの面積に基づき、最適な測定レシピを決定することができる。
【0052】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 走査電子顕微鏡
5 動作制御部
15 電子銃
16 集束レンズ
17 X偏向器
18 Y偏向器
20 対物レンズ
26 電子検出器
31 ステージ
図1
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