(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】切削工具、及び偏心取り付けのための補完係合特徴を有する切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23C 5/08 20060101AFI20230627BHJP
B23C 5/20 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B23C5/08 A
B23C5/20
(21)【出願番号】P 2020542244
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(86)【国際出願番号】 IL2019050237
(87)【国際公開番号】W WO2019186528
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-13
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アーリン,セルゲイ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-521767(JP,A)
【文献】特開2014-121772(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02617505(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0056928(US,A1)
【文献】特表2013-508173(JP,A)
【文献】特表2009-534199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/00 - 5/28
B23B 27/00 - 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具(20)であって、前記切削工具(20)は、第1インサート受け入れポケット(24)を有する工具本体(22)と、前記第1インサート受け入れポケット(24)内に取り外し可能に取り付けられる割り出し可能切削インサート(26)とを備え、
前記第1インサート受け入れポケット(24)は、第1座面(28)と、前記第1座面(28)を横断する第1支持壁(30)とを備え、前記第1座面(28)は、複数の雄又は雌第1係合要素(32a、32b)を有し、
前記切削インサート(26)は、対向する上側面(36)及び下側面(38)と、前記上側面(36)と前記下側面(38)との間に延在する連続境界面(40)とを備え、
前記境界面(40)は、複数のN1個の第1外周面(48a、48b)を有し、前記第1外周面(48a、48b)は、複数のN1個の第2外周面(50a、50b)と円周方向に交互であり、
各前記第1外周面(48a、48b)は、前記上側面(36)に交差して第1上側切れ刃(52a、52b)を形成し、
各前記第2外周面(50a、50b)は、前記上側面(36)に交差して第2上側切れ刃(54a、54b)を形成し、
前記下側面(38)は、複数の別個の離間する雌又は雄下側係合要素(64a、64b)を有し、
前記切削インサート(26)は、前記上側面(36)及び前記下側面(38)を通過する第1軸(A1)を中心として刃先交換可能であり、前記第1軸(A1)に直交する正中面(M)は、前記境界面(40)に交差し、
前記切削インサート(26)は、前記下側面(38)が前記第1座面(28)と接触するN1個の刃先交換位置を有し、各前記刃先交換位置において、
前記第1支持壁(30)は、前記境界面(40)に接触し、前記切削インサート(26)が第1方向(D1)で前記第1座面(28)に沿って平行移動しないようにし、
前記複数の第1係合要素(32a、32b)は、前記複数の下側係合要素(64a、64
b)に偏心接触し、同時に、前記切削インサート(26)が前記第1方向(D1)に直交する第2方向(D2)で前記第1座面(28)に沿って平行移動しないようにする、切削工具(20)。
【請求項2】
各前記刃先交換位置において、
各前記雌第1係合要素(32a、32b)又は前記雌下側係合要素(64a、64b)は、前記第2方向(D2)で第1長さ(L1)を有し、
各前記雄下側係合要素(64a、64b)又は前記雄第1係合要素(32a、32b)は、前記第2方向(D2)で第2長さ(L2)を有し、
前記第1
長さ(L1)は、前記第2
長さ(L2)より大きい、請求項1に記載の切削工具(20)。
【請求項3】
各前記下側係合要素(64a、64b)は、雄突出要素であり、
各前記第1係合要素(32a、32b)は、雌陥没要素である、請求項1又は2に記載の切削工具(20)。
【請求項4】
前記複数の第1係合要素(32a、32b)は、前記第2方向(D2)とは反対の第3方向(D3)で前記切削インサート(26)の平行移動を同時に防止するように構成されていない、請求項1~3のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項5】
各前記下側係合要素(64a、64b)は、前記境界面(40)から離間し、前記境界面(40)に交差しない、請求項1~4のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項6】
前記下側面(38)が前記第1座面(28)と接触する各前記刃先交換位置において、
前記第1外周面(48a、48b)の一方のみが前記第1支持壁(30)と接触し、
前記境界面(40)の他の部分は、前記第1インサート受け入れポケット(24)と接触しない、請求項1~5のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項7】
前記下側面(38)が前記第1座面(28)と接触する第1刃先交換位置において、各前記下側係合要素(64a、64b)の第1下側接触区域(ZL1)は、前記第1係合要素(32a、32b)の一方と接触し、
前記下側面(38)が前記第1座面(28)と接触する第2刃先交換位置において、各前記下側係合要素(64a、64b)の第2下側接触区域(ZL2)は、前記第1係合要素(32a、32b)のもう一方と接触し、
各前記下側係合要素(64a、64b)の前記第1下側接触区域(ZL1)及び前記第2下側接触区域(ZL2)は、互いに異なる、請求項1~6のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項8】
各前記下側係合要素(64a、64b)の前記第1下側接触区域(ZL1)及び前記第2下側接触区域(ZL2)は、互いから離間している、請求項7に記載の切削工具(20)。
【請求項9】
各前記下側係合要素(64a、64b)の前記第1下側接触区域(ZL1)及び前記第2下側接触区域(ZL2)は、非平坦である、請求項7又は8に記載の切削工具(20)。
【請求項10】
各前記下側係合要素(64a、64b)は、下側二等分線(BL)を有し、
各前記下側係合要素(64a、64b)の前記第1下側接触区域(ZL1)及び前記第2下側接触区域(ZL2)は、それぞれの前記下側二等分線(BL)の両側に完全に位置する、請求項7~9のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項11】
各前記下側二等分線(BL)は、前記第1刃先交換位置及び前記第2刃先交換位置の両方において、前記第1方向(D1)に平行である、請求項10に記載の切削工具(20)。
【請求項12】
前記切削工具(20)は、回転方向(R)で工具軸(AT)を中心として回転可能であり、
前記
工具本体(22)は、前記切削インサート(26)を前記第1インサート受け入れポケット(24)内に取り外し可能に取り付けるホルダ部分(72)を有し、前記ホルダ部分(72)は、軸方向前向き前端部(74)を有し、
前記第1方向(D1)は、径方向内側であり、
前記第2方向(D2)は、軸方向後方である、請求項1~11のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項13】
前記切削工具(20)は、溝削り工具である、請求項12に記載の切削工具(20)。
【請求項14】
前記工具軸(AT)に直交する第3平面(P3)は、前記切削インサート(26)の第1中点(M1)において、前記第1支持壁(30)、及び前記切削インサート(26)の有効な第1上側切れ刃(52a’、52b’)に交差し、
前記切削インサート(26)の有効な第2上側切れ刃(54a’、54b’)は、前記第3平面(P3)の軸方向前方に位置する、請求項12又は13に記載の切削工具(20)。
【請求項15】
前記ホルダ部分(72)は、円周方向に離間する複数の第1インサート受け入れポケット(24)を有し、前記切削インサート(26)は、前記第1インサート受け入れポケット(24)のそれぞれの中に取り外し可能に取り付けられる、請求項12~14のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項16】
前記ホルダ部分(72)は、円周方向に離間する複数の第2インサート受け入れポケット(76)を有し、前記複数の第2インサート受け入れポケット(76)は、前記円周方向に離間する複数の第1インサート受け入れポケット(24)と交互であり、
各前記第2インサート受け入れポケット(76)は、第2座面(78)と、前記第2座面(78)を横断する第2支持壁(80)とを備え、前記第2座面(78)は、複数の雄又は雌第2係合要素(82a、82b)を有し、
切削インサート(26)は、前記第2インサート受け入れポケット(76)のそれぞれの中に取り外し可能に取り付けられ、
各前記切削インサート(26)は、前記下側面(38)が関連する前記第2座面(78)と接触するN1個の刃先交換位置を有し、各前記刃先交換位置において、
前記第2支持壁(80)は、前記境界面(40)に接触し、前記切削インサート(26)が前記第2座面(78)に沿って径方向内側に平行移動しないようにし、
前記複数の第2係合要素(82a、82b)は、前記複数の下側係合要素(64a、64a)に偏心接触し、同時に、前記切削インサート(26)が前記第2座面(78)に沿って軸方向前方に平行移動しないようにする、請求項15に記載の切削工具(20)。
【請求項17】
前記工具軸(AT)に直交する第4平面(P4)は、前記切削インサート(26)の第2中点(M2)において、前記第2支持壁(80)、及び関連する前記切削インサート(26)の有効な第2上側切れ刃(54a’、54b’)に交差し、
関連する前記切削インサート(26)の有効な第1上側切れ刃(52a’、52b’)は、前記第4平面(P4)の軸方向後方に位置する、請求項16に記載の切削工具(20)。
【請求項18】
各前記第1外周面(48a、48b)は、前記下側面(38)に交差して第1下側切れ刃(86a、86b)を形成し、各前記第2外周面(50a、50b)は、前記下側面(38)に交差して第2下側切れ刃(88a、88b)を形成し、前記上側面(36)は、複数の別個の離間する雌又は雄上側係合要素(90a、90b)を有し、
前記切削インサート(26)は、前記上側面(36)が前記第1座面(28)と接触するN1個の刃先交換位置を有し、各前記刃先交換位置において、
前記第1支持壁(30)は、前記境界面(40)に接触し、前記切削インサート(26)が前記第1方向(D1)で前記第1座面(28)に沿って平行移動しないようにし、
前記複数の第1係合要素(32a、32b)は、前記複数の上側係合要素(90a、90b)に偏心接触し、同時に、前記切削インサート(26)が前記第2方向(D2)で前記第1座面(28)に沿って平行移動しないようにする、請求項1~17のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項19】
前記上側面(36)及び前記下側面(38)は同一である、請求項18に記載の切削工具(20)。
【請求項20】
前記正中面(M)で取った断面において、前記切削インサート(26)は、前記第1軸(A1)を中心としてN1×2回対称を呈する、請求項1~19のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項21】
前記正中面(M)で取った断面において、前記複数の第1外周面(48a、48b)及び前記複数の第2外周面(50a、50b)は、仮想正方形(S)を規定する、請求項20に記載の切削工具(20)。
【請求項22】
前記境界面(40)は、複数のN1個の第3外周面(56a、56b)を含み、前記第3外周面(56a、56b)は、複数のN1個の第4外周面(58a、58b)と円周方向に交互であり、
各前記第3外周面(56a、56b)は、前記上側面(36)に交差して第3上側縁部(60a、60b)を形成し、各前記第4外周面(58a、58b)は、前記上側面(36)に交差して第4上側縁部(62a、62b)を形成し、
前記第1軸(A1)に沿って取った前記切削インサート(26)の上面図において、前記第3上側縁部(60a、60b)及び前記第4上側縁部(62a、62b)は、湾曲している、請求項1~21のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項23】
前記複数の第4上側縁部(62a、62b)は、前記複数の第3上側縁部(60a、60b)よりも前記正中面(M)に近く位置する、請求項22に記載の切削工具(20)。
【請求項24】
前記第1軸(A1)を含む第1平面(P1)は、前記複数の第3上側縁部(60a、60b)に交差し、前記複数の下側係合要素(64a、64b)のいずれにも交差しない、請求項
22又は23に記載の切削工具(20)。
【請求項25】
前記第1軸(A1)を含み、前記第1平面(P1)に直交する第2平面(P2)は、前記複数の下側係合要素(64a、64b)の少なくとも2つに交差する、請求項24に記載の切削工具(20)。
【請求項26】
前記切削インサート(26)は、前記上側面(36)及び前記下側面(38)に交差するインサート穴(46)を更に備える、請求項1~25のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項27】
第1軸(A1)を中心として刃先交換可能な正方形両側使用可能切削インサート(26)であって、前記正方形両側使用可能切削インサート(26)は、前記第1軸(A1)に沿って見るとそれぞれが正方形形状を有する、対向する上側面(36)及び下側面(38)と、
前記第1軸(A1)に直交し、前記上側面(36)と前記下側面(38)との間の中間を通過する正中面(M)と、
前記上側面(36)及び前記下側面(38)に交差し、前記正中面(M)を通過するインサート穴(46)と、
前記上側面(36)と前記下側面(38)との間に延在する連続境界面(40)と
を備え、前記境界面(40)は、2つの第1外周面(48a、48b)を有し、前記2つの第1外周面(48a、48b)は、複数のコーナ面(56a、56b、58a、58b)を介して2つの第2外周面(50a、50b)と円周方向に交互であり、
前記上側面(36)は、第1直径方向に対向する一対のコーナ面(56a、56b)との前記上側面(36)の交線に形成された、一対の直径方向に対向する隆起コーナ縁部(60a、60b)と、第2直径方向に対向する一対のコーナ面(58a、58b)との前記上側面(36)の交線に形成された、一対の直径方向に対向する下降コーナ縁部(62a、62b)とを有し、
前記下側面(38)は、前記第1直径方向に対向する一対のコーナ面(56a、56b)との前記下側面(38)の交線に形成された、一対の直径方向に対向する下降コーナ縁部(96a、96b)と、前記第2直径方向に対向する一対のコーナ面(58a、58b)との前記下側面(38)の交線に形成された、一対の直径方向に対向する隆起コーナ縁部(98a、98b)とを有し、
第1平面(P1)は、前記第1軸(A1)を含み、前記上側面(36)の前記隆起コーナ縁部(60a、60b)及び前記下側面(38)の前記下降コーナ縁部(96a、96b)に交差し、
第2平面(P2)は、前記第1軸(A1)を含み、前記上側面(36)の前記下降コーナ縁部(62a、62b)及び前記下側面(38)の前記隆起コーナ縁部(98a、98b)に交差し、
前記上側面(36)は、2つの個別の上側係合要素(90a、90b)を備え、前記上側係合要素(90a、90b)は、前記上側面(36)の傾斜部分上に形成され、互いに離間し、前記インサート穴(46)及び前記境界面(40)の両方からも離間し、
前記下側面(38)は、2つの個別の下側係合要素(64a、64b)を備え、前記下側係合要素(64a、64b)は、前記下側面(38)の傾斜部分上に形成され、互いに離間し、前記インサート穴(46)及び前記境界面(40)の両方からも離間し、
前記第1平面(P1)は、前記上側係合要素(90a、90b)に交差するが、前記下側係合要素(64a、64b)には交差せず、
前記第2平面(P2)は、前記下側係合要素(64a、64b)に交差するが、前記上側係合要素(90a、90b)には交差せず、
前記切削インサート(26)は、前記第1軸(A1)を中心として180°の回転対称のみを有する、正方形両側使用可能切削インサート(26)。
【請求項28】
切削工具(20)であって、前記切削工具(20)は、
第1座面(28)及び前記第1座面(28)を横断する第1支持壁(30)を備える第1インサート受け入れポケット(24)であって、前記第1座面(28)は、複数の第1係合要素(32a、32b)を有する、第1インサート受け入れポケット(24)と、
前記第1インサート受け入れポケット(24)内に取り外し可能に取り付けられる、請求項27に記載の切削インサート(26)と
を備え、前記第1支持壁(30)は、前記境界面(40)に接触し、前記切削インサート(26)が第1方向(D1)で前記第1座面(28)に沿って平行移動しないようにし、
前記複数の第1係合要素(32a、32b)は、前記複数の下側係合要素(64a、64a)に偏心接触し、同時に、前記切削インサート(26)が前記第1方向(D1)に直交する第2方向(D2)で前記第1座面(28)に沿って平行移動しないようにする、切削工具(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、金属切削工程で使用する、偏心取り付け切削インサートを有する切削工具に関し、より詳細には、溝削り作業で使用する、複数の偏心取り付け切削インサートを有する回転切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
溝削り作業で使用される回転切削工具の分野において、軸方向前方向及び後方向の両方で「オープンな」、インサート受け入れポケット内に取り外し可能に取り付けられる切削インサートには、多くの例がある。
【0003】
米国特許第7,090,443号は、円板の形態のインサート・ホルダを備える溝削り工具を開示しており、複数の非割り出し可能(non-indexable)切削インサートは、円板の外周部周囲に配置された同一のインサート・ポケット内に取り外し可能に保持される。各切削インサートは、貫通穴を有し、保持ねじを貫通穴に通し、関連するインサート・ポケット内にねじ孔を係合する。インサート・ホルダに対する各切削インサートの側方安定性は、概ねV字形状の凹形(又は凸形)断面を有する切削インサートの下側面及び後面によってもたらされ、概ねV字形の凹形(又は凸形)断面は、関連するインサート・ポケットの、下側及び後当接面の対応する概ねV字形状の凸形(又は凹形)断面と対合する。
【0004】
米国特許第8,905,683号は、回転切削工具を開示しており、回転切削工具は、前向き端部面に隣接する複数の座面を有する工具本体と、工具本体内に取り外し可能に固着される、等しい数の割り出し可能(indexable)切削インサートとを備える。各切削インサートは、それぞれの座面上で、4つの逃げ面のうち1つの当接部分のみが工具本体上の径方向外向き支持面と当接接触するように向けられ、インサートの外周側面と切削本体との間で、他の点又は領域は、当接接触しない。各切削インサートは、非円形締め付け穴と、非円形締め付け穴を通る剛性締め付けねじとを有し、剛性締め付けねじは、関連する座面内のねじ孔を係合する。締め付けねじの非ねじ部分は、同時に、非円形締め付け穴の4つの有効締め付け部分で4つの締め付け力を印加し、切削インサートに軸方向支持を与える。
【0005】
割り出し可能切削インサートを有する、改善された切削工具を提供することは、本発明の一目的である。
【0006】
複数の割り出し可能切削インサートを有する、改善された切削工具を提供することも、本発明の一目的である。
【0007】
インサート切削幅に対して溝幅が低減した溝を生成し得る、複数の小型割り出し可能切削インサートを有する、改善された溝削り工具を提供することは、本発明の更なる目的である。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、切削工具を提供し、切削工具は、第1インサート受け入れポケットを有する工具本体と、第1インサート受け入れポケット内に取り外し可能に組み付けられる割り出し可能切削インサートとを備え、
第1インサート受け入れポケットは、第1座面と、第1座面を横断する第1支持壁とを備え、第1座面は、複数の雄又は雌第1係合要素を有し、
切削インサートは、対向する上側面及び下側面と、上側面と下側面との間に延在する連続境界面とを備え、
境界面は、複数のN1個の第1外周面を有し、第1外周面は、複数のN1個の第2外周面と円周方向に交互であり、
各第1外周面は、上側面に交差して第1上側切れ刃を形成し、
各第2外周面は、上側面に交差して第2上側切れ刃を形成し、
下側面は、複数の別個の離間する雌又は雄下側係合要素を有し、
切削インサートは、上側面及び下側面を通過する第1軸を中心として刃先交換可能であり、第1軸に直交する正中面は、境界面に交差し、
切削インサートは、下側面が第1座面と接触するN1個の刃先交換位置を有し、
各刃先交換位置において、
第1支持壁は、境界面に接触し、切削インサートが第1方向で第1座面に沿って平行移動しないようにし、
複数の第1係合要素は、複数の下側係合要素と偏心接触し、同時に、切削インサートが第1方向に直交する第2方向で第1座面に沿って平行移動しないようにする。
【0009】
また、本発明によれば、第1軸を中心として刃先交換可能な正方形両側使用可能切削インサートを提供し、切削インサートは、
第1軸に沿って見るとそれぞれが正方形形状を有する、対向する上側面及び下側面と、
第1軸に直交し、上側面と下側面との間の中間を通過する正中面と、
上側面及び下側面に交差し、正中面を通過するインサート穴と、
上側面と下側面との間に延在する連続境界面と
を備え、境界面は、2つの第1外周面を有し、2つの第1外周面は、複数のコーナ面を介して2つの第2外周面と円周方向に交互であり、
上側面は、第1直径方向に対向する一対のコーナ面との上側面交線に形成された、一対の直径方向に対向する隆起コーナ縁部と、第2直径方向に対向する一対のコーナ面との上側面交線に形成された、一対の直径方向に対向する下降コーナ縁部とを有し、
下側面は、第1直径方向に対向する一対のコーナ面との下側面交線に形成された、一対の直径方向に対向する下降コーナ縁部と、第2直径方向に対向する一対のコーナ面との下側面交線に形成された、一対の直径方向に対向する隆起コーナ縁部とを有し、
第1平面は、第1軸を含み、上側面の隆起コーナ縁部及び下側面の下降コーナ縁部に交差し、
第2平面は、第1軸を含み、上側面の下降コーナ縁部及び下側面の隆起コーナ縁部に交差し、
上側面は、2つの個別の上側係合要素を備え、上側係合要素は、上側面の傾斜部分上に形成され、互いに離間し、インサート穴及び境界面の両方からも離間し、
下側面は、2つの個別の下側係合要素を備え、下側係合要素は、下側面の傾斜部分上に形成され、互いに離間し、インサート穴及び境界面の両方からも離間し、
第1平面は、上側係合要素に交差するが、下側係合要素には交差せず、
第2平面は、下側係合要素に交差するが、上側係合要素には交差せず、
切削インサートは、第1軸を中心として180°の回転対称のみを有する。
【0010】
次に、より良好に理解するため、単に例として、添付の図面を参照しながら本発明を説明する。一点鎖線は、部材の部分図のための境界線を表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による切削工具の斜視図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による切削インサートの斜視図である。
【
図8】
図7に示す切削インサートの線VIII-VIIIに沿って取った断面図である。
【
図10】隠れていた細部を伴う、
図3に示す切削工具の詳細図である。
【
図11】
図10に示す切削工具の線XI-XIに沿って取った断面図である。
【
図12】切削インサートを組み付けた、
図3に示す切削工具の第1インサート受け入れポケットの正面図である。
【
図13】切削インサートを取り外した、
図3に示す切削工具の第1インサート受け入れポケットの正面図である。
【
図14】隠れていた細部を伴う、
図4に示す切削工具の詳細図である。
【
図15】
図14に示す切削工具の線XV-XVに沿って取った断面図である。
【
図16】切削インサートを組み付けた、
図4に示す切削工具の第2インサート受け入れポケットの正面図である。
【
図17】切削インサートを取り外した、
図4に示す切削工具の第2インサート受け入れポケットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図4に示すように、本発明は、切削工具20に関し、切削工具20は、第1インサート受け入れポケット24を有する工具本体22と、第1インサート受け入れポケット24内に取り外し可能に取り付けられる割り出し可能切削インサート26とを備える。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、切削インサート26は、好ましくは、炭化タングステン等の超硬合金の成形プレス及び焼結によって製造することができ、被覆しても、被覆しなくてもよい。
【0014】
図2に示すように、第1インサート受け入れポケット24は、第1座面28と、第1座面28を横断する第1支持壁30とを備え、第1座面28は、複数の雄又は雌第1係合要素32a、32bを有する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、各第1係合要素32a、32bは、部分的に球形とすることができる。
【0016】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第1座面28及び第1支持壁30は、応力除去溝34によって離間させることができる。
【0017】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、第1座面28は、第1インサート受け入れポケット24内に取り外し可能に保持されるシム上に形成することができる。
【0018】
図5に示すように、切削インサート26は、対向する上側面36及び下側面38と、上側面36と下側面38との間に延在する連続境界面40とを備え、切削インサート26は、上側面36及び下側面38を通過する第1軸A1を中心として刃先交換可能である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、境界面40は、上側面36及び下側面38に交差し、連続する上側境界縁部42及び下側境界縁部44をそれぞれ形成することができる。
【0020】
また、本発明のいくつかの実施形態では、インサート穴46は、上側面36及び下側面38に交差することができる。
【0021】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、インサート穴46は、第1軸A1と同軸である第2軸A2を有することができる。
【0022】
図5~
図7に示すように、境界面40は、複数のN1個の第1外周面48a、48bを有し、複数のN1個の第1外周面48a、48bは、複数のN1個の第2外周面50a、50bと円周方向に交互であり、各第1外周面48a、48bは、上側面36に交差して第1上側切れ刃52a、52bを形成し、各第2外周面50a、50bは、上側面36に交差して第2上側切れ刃54a、54bを形成する。
【0023】
複数の第1上側切れ刃52a、52b及び第2上側切れ刃54a、54bは、上側境界縁部42の個別の部分であることは了解されよう。
【0024】
N1は、1よりも大きい整数、即ち、N1>1であることも了解されよう。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、N1は、厳密に2とすることができる。
【0026】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第1軸A1に沿って取った切削インサート26の上面図において、
図6に示すように、複数の第1上側切れ刃52a、52b及び第2上側切れ刃54a、54bは、まっすぐであってよい。
【0027】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、複数の第1外周面48a、48b及び第2外周面50a、50bは、逃げ面として説明することができる。
【0028】
図7に示すように、第1軸A1に直交する正中面Mは、境界面40に交差することができる。インサート穴46は、正中面Mを通過することができ、正中面Mは、上側面36と下側面38との間の中間を通過することができる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、
図8に示すように、正中面Mで取った断面において、切削インサート26は、第1軸A1を中心としてN1×2回対称を呈することができる。
【0030】
また、本発明のいくつかの実施形態では、
図8に示すように、正中面Mで取った断面において、複数の第1外周面48a、48b及び複数の第2外周面50a、50bは、仮想正方形Sを規定することができる。
【0031】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、
図8に示すように、正中面Mで取った断面において、インサート穴46は、円形とすることができる。
【0032】
正中面Mで取った断面においてインサート穴46が円形である本発明の実施形態に関し、切削インサート26は、小型サイズで構成し得ることは了解されよう。
【0033】
図5~
図7に示すように、境界面40は、複数のN1個の第3外周面56a、56bを含むこともでき、複数のN1個の第3外周面56a、56bは、複数のN1個の第4外周面58a、58bと円周方向に交互であり、各第3外周面56a、56bは、上側面36に交差して第3上側縁部60a、60bを形成し、各第4外周面58a、58bは、上側面36に交差して第4上側縁部62a、62bを形成する。
【0034】
図6に示すように、第1軸A1に沿って取った切削インサート26の上面図において、第3上側縁部60a、60b及び第4上側縁部62a、62bは、湾曲していてよい。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、各第3上側縁部60a、60bは、第1上側切れ刃52a、52bの一方と、第2上側切れ刃54a、54bの一方との間に延在することができ、各第4上側縁部62a、62bは、第1上側切れ刃52a、52bの一方と、第2上側切れ刃54a、54bの一方との間に延在することができる。
【0036】
図6に示すように、第1軸A1に沿って取った切削インサート26の上面図において、湾曲する各第3上側縁部60a、60b及び第4上側縁部62a、62bは、90度のコーナ角度β1の範囲を定めることができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の第3外周面56a、56b及び第4外周面58a、58bは、コーナ面として説明することができ、複数の第3上側縁部60a、60b及び第4上側縁部62a、62bは、コーナ縁部として説明することができる。
【0038】
図7に示すように、複数の第4上側縁部62a、62bは、複数の第3上側縁部60a、60bよりも正中面Mに近く位置することができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の第3上側縁部60a、60bは、直径方向に対向する隆起コーナ縁部として説明することができ、複数の第4上側縁部62a、62bは、直径方向に対向する下降コーナ縁部として説明することができる。「隆起」及び「下降」は、正中面Mに対して規定され、隆起コーナ縁部は、下降コーナ縁部よりも正中面Mから遠いことは理解されよう。
【0040】
同様に、下側面38も、第1直径方向に対向する一対のコーナ面56a、56bとの下側面38の交線に形成された、一対の直径方向に対向する下降コーナ縁部96a、96bと、第2直径方向に対向する一対のコーナ面58a、58bとの下側面38の交線に形成された、一対の直径方向に対向する隆起コーナ縁部98a、98bとを有することができる。
【0041】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の第3上側縁部60a、60bは、切れ刃とすることができる。
【0042】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、第1軸A1を含む第1平面P1は、複数の第3上側縁部60a、60bに交差することができる。
【0043】
図9に示すように、下側面38は、複数の別個の離間する雌又は雄下側係合要素64a、64bを有する。雌又は雄下側係合要素64a、64bは、下側面38の傾斜部分上に形成することができ、傾斜部分は、正中面Mに対して傾斜している。更に、下側係合要素64a、64bは、インサート穴46及び境界面40の両方から離間することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、下側面38は、複数のN1×N2個の下側係合要素64a、64bを有することができる。
【0045】
N2は、1以上の整数、即ち、N2≧1であることは了解されよう。
【0046】
また、本発明のいくつかの実施形態では、N2は、厳密に1とすることができる。
【0047】
図9に示すように、第1平面P1は、複数の下側係合要素64a、64bのいずれとも交差しなくてよい。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、下側面38は、第1軸A1を中心としてN1×N3回の回転対称を呈することができる。
【0049】
N3は、1以上の整数、即ち、N3≧1であることは了解されよう。
【0050】
また、本発明のいくつかの実施形態では、N3は、厳密に1とすることができる。
【0051】
図9に示すように、第1軸A1を含み、第1平面P1に直交する第2平面P2は、複数の下側係合要素64a、64bの少なくとも2つに交差することができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の第1係合要素32a、32bは、複数の下側係合要素64a、64bの数と等しくてよい。
【0053】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bは、境界面40に交差しなくてよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bは、下側境界縁部44から完全に離間し得ることは了解されよう。
【0055】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bは、部分的に球形とすることができる。
【0056】
本発明によれば、切削インサート26は、下側面38が第1座面28と接触するN1個の刃先交換位置を有する。
【0057】
また、本発明によれば、
図3及び
図10~12に示すように、下側面38が第1座面28と接触する各刃先交換位置において、
第1支持壁30は、境界面40に接触し、切削インサート26が第1方向D1で第1座面28に沿って平行移動しないようにし、
複数の第1係合要素32a、32bは、複数の下側係合要素64a、64aと偏心接触し、同時に、切削インサート26が第1方向D1に直交する第2方向D2で第1座面28に沿って平行移動しないようにする。
【0058】
用語「偏心(的に)接触」の使用は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたり、雄要素と雌要素との間の接触に関するものであり、これら雄要素と雌要素は、互いにずれた中心軸(インサートの第1軸A1に平行な方向で延在する中心軸)及び/又は延在軸(場合によっては、インサートの第1軸A1に直交し、雄又は雌要素の最長寸法に沿った方向で延在する延在軸)を有することは了解されよう。
【0059】
複数の第1係合要素32a、32bは、第2方向D2とは反対の第3方向D3で切削インサート26の平行移動を同時に防止するものではないことも了解されよう。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、下側面38が第1座面28と接触する各刃先交換位置において、締め付け部材66は、インサート穴46に接触し、切削インサート26が第3方向D3で平行移動しないようにすることができる。
【0061】
図1~
図4に示すように、締め付け部材66は、締め付けねじとすることができ、締め付けねじは、インサート穴46を通じて延在し、第1座面28内の第1座穴68を螺合することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、第1座穴68は、第2軸A2と同軸ではない第3軸A3を有することができる。
【0063】
また、本発明のいくつかの実施形態では、締め付け部材66は、規格の締め付けねじとすることができる。
【0064】
本発明のそのような実施形態の場合、切削インサート26は、工具本体22に取り外し可能に単純で費用対効果よく取り付けることができる。
【0065】
図10に示すように、下側面38が第1座面28と接触する各刃先交換位置において、各雌第1係合要素32a、32b又は雌下側係合要素64a64bは、第2方向D2で第1長さL1を有し、各雄下側係合要素64a、64b又は雄第1係合要素32a、32bは、第2方向D2で第2長さL2を有する。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態では、第1長さL1は、第2長さL2よりも大きくてよい。
【0067】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各第1係合要素32a、32bは、雌陥没要素とし、各下側係合要素64a、64bは、雄突出要素とすることができる。
【0068】
雌第1係合要素32a、32bを設けることによって、第1座面28は、単純で費用対効果よく製造し得ることは了解されよう。
【0069】
図13に示すように、第1座面28は、2つの離間する平坦な第1支承面70a、70bを有することができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態では、2つの第1支承面70a、70bは、相互に傾斜させることができる。より詳細には、2つの第1支承面70a、70bは、第1座面28上で合致する平面上にあることができる。
【0071】
また、本発明のいくつかの実施形態では、下側面38が第1座面28と接触する各刃先交換位置において、下側面38は、2つの第1支承面70a、70bに接触することができる。
【0072】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、複数の第1係合要素32a、32bのそれぞれは、2つの第1支承面70a、70bの一方又はもう一方の上に少なくとも部分的に位置することができる。
【0073】
下側面38が第1座面28と接触する第1刃先交換位置において、
図10及び
図11に示すように、各下側係合要素64a、64bの第1下側接触区域ZL1は、第1係合要素32a、32bの一方と接触する。
【0074】
下側面38が第1座面28と接触する第2刃先交換位置において、各下側係合要素64a、64bの第2下側接触区域ZL2は、第1係合要素32a、32bのもう一方と接触する。
【0075】
第2刃先交換位置は
図10及び
図11には図示しないが、有効ではない第2下側接触区域ZL2の一方が、第2下側接触区域ZL2に関連しない第1係合要素32a、32bから離間した状態で、
図10及び
図11に図示されている。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bの第1下側接触区域ZL1及び第2下側接触区域ZL2は、互いに異なってよい。
【0077】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bの第1下側接触区域ZL1及び第2下側接触区域ZL2は、重ならず、したがって、互いに離間することができる。
【0078】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bの第1下側接触区域ZL1及び前記第2下側接触区域ZL2は、平坦でなくてよい。
【0079】
図10に示すように、各下側係合要素64a、64bは、下側二等分線BLを有し、各下側係合要素64a、64bの第1下側接触区域ZL1及び第2下側接触区域ZL2は、それぞれの下側二等分線BLの両側に完全に位置することができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態では、各下側二等分線BLは、第1刃先交換位置及び第2刃先交換位置の両方において第1方向D1に平行とすることができる。
【0081】
下側面38が第1座面28と接触する各刃先交換位置において、境界面の第1外周面48a、48bの一方のみが第1支持壁30と接触することができ、境界面40の他の部分は、第1インサート受け入れポケット24と接触することがない。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、下側面38が第1座面28と接触する各刃先交換位置において、
図12に示すように、境界面の第1外周面48a、48bの一方の平坦な第1外周接触区域ZP1のみが、第1支持壁30と接触することができる。
【0083】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第1外周接触区域ZP1は、第1軸A1に平行とすることができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態では、第1支持壁30は、2つの離間する支持領域を有することができ、したがって、第1外周接触区域ZP1は、2つの離間する副区域を備え得ることは了解されよう。
【0085】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、境界面40全体は、第1軸A1に平行に延在することができる。
【0086】
図1~
図4に示すように、切削工具20は、回転方向Rで工具軸ATを中心として回転可能であり、切削本体22は、切削インサート26を第1インサート受け入れポケット24内に取り外し可能に取り付けるホルダ部分72を有し、ホルダ部分72は、軸方向前向き前端部74を有する。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態では、シャンク部分75は、工具軸ATに沿ってホルダ部分72から後方に延在することができる。
【0088】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第1方向D1は、径方向内側とすることができ、第2方向D2は、軸方向後方とすることができる。
【0089】
本発明のそのような実施形態に関し、第3方向D3は、軸方向前方とすることができ、第1支持壁30は、径方向外向き第1支持壁と説明することができる。
【0090】
図3に示すように、工具軸ATに直交する第3平面P3は、切削インサート26の第1中点M1で、第1支持壁30、及び切削インサート26の有効な第1上側切れ刃52a’、52b’に交差することができ、切削インサート26の有効な第2上側切れ刃54a’、54b’は、第3平面P3の軸方向前方に位置することができる。
【0091】
有効な第2上側切れ刃54a’、54b’が第3平面P3の軸方向前方に位置する本発明の実施形態に関し、関連する軸方向切削力は、軸方向後方に向けられることは了解されよう。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態では、関連する切削インサート26の有効な第1上側切れ刃52a’、52b’は、正の第1軸方向すくい角α1を有することができる。
【0093】
また、本発明のいくつかの実施形態では、有効な第1上側切れ刃52a’、52b’と第2上側切れ刃54a’、54b’との間に延在する有効な第3上側縁部60a’、60b’は、第3平面P3の軸方向前方に位置することができる。
【0094】
図1~
図4に示すように、ホルダ部分72は、複数の円周方向に離間した第1インサート受け入れポケット24を有することができ、それぞれの中に、切削インサート26が取り外し可能に取り付けられる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態では、切削工具20は、溝削り工具とすることができる。
【0096】
本発明は、各切削インサート26に対する、当該切削インサート26に関連する第1インサート受け入れポケット24内での軸方向支持が、第1座面28上の複数の第1係合要素32a、32bによってもたらされ、こうして、第1インサート受け入れポケット24が軸方向前向き支持壁を有する必要性をなくし、溝削り工具が、例えば、インサート切削幅に対して溝幅の低減した溝を生成することを可能にするという点で有利である。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、ホルダ部分72は、複数の円周方向に離間する第2インサート受け入れポケット76を有することができ、第2インサート受け入れポケット76は、複数の円周方向に離間する第1インサート受け入れポケット24と円周方向に交互であり、複数の第2インサート受け入れポケット76それぞれの中に、切削インサート26が取り外し可能に取り付けられる。
【0098】
図2に示すように、各第2インサート受け入れポケット76は、第2座面78と、第2座面78を横断する第2支持壁80とを備えることができ、第2座面78は、複数の雄又は雌第2係合要素82a、82bを有することができ、関連する切削インサート26は、下側面38が第2座面78と接触するN1個の刃先交換位置を有することができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態では、
図4及び
図14~
図16に示すように、関連するインサート下側面38が第2座面28と接触する各刃先交換位置において、
第2支持壁80は、境界面40に接触し、切削インサート26が第2座面78に沿って径方向内側に平行移動しないようにすることができ、
複数の第2係合要素82a、82bは、複数の下側係合要素64a、64aに偏心接触し、同時に、切削インサート26が第2座面78に沿って軸方向前方に平行移動しないようにする。
【0100】
本発明のそのような実施形態に関し、第2支持壁80は、径方向外向き第2支持壁と説明することができる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態では、各第2係合要素82a、82bは、雌陥没要素とすることができる。
【0102】
雌第2係合要素82a、82bを設けることによって、第2座面78は、単純で費用対効果よく製造し得ることは了解されよう。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態では、関連する下側面38が第2座面78と接触する各刃先交換位置において、関連する締め付けねじ66は、インサート穴46に接触し、切削インサート26が軸方向後方に平行移動しないようにすることができる。
【0104】
図1~
図4に示すように、締め付けねじ66は、インサート穴46を通して延在し、第2座面78内の第2座穴83を螺合することができる。
【0105】
図17に示すように、第2座面78は、2つの離間する平坦な第1支承面84a、84bを有することができる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態では、2つの第2支承面84a、84bは、相互に傾斜させることができる。より詳細には、2つの第2支承面84a、84bは、第2座面78上で合致する平面上にあることができる。
【0107】
また、本発明のいくつかの実施形態では、関連するインサート下側面38が第2座面78と接触する各刃先交換位置において、下側面38は、2つの第2支承面84a、84bに接触することができる。
【0108】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、複数の第2係合要素82a、82bのそれぞれは、2つの第2支承面84a、84bの一方又はもう一方の上に少なくとも部分的に位置することができる。
【0109】
関連するインサート下側面38が第2座面78と接触する第1刃先交換位置において、
図14及び
図15に示すように、各下側係合要素64a、64bの第3下側接触区域ZL3は、第2係合要素82a、82bの一方と接触する。
【0110】
関連するインサート下側面38が第2座面78と接触する第2刃先交換位置において、各下側係合要素64a、64bの第4下側接触区域ZL4は、第2係合要素82a、82bのもう一方と接触する。
【0111】
第2刃先交換位置は
図14及び
図15には図示しないが、有効ではない第4下側接触区域ZL4の一方は、第4下側接触区域ZL4に関連しない第2係合要素82a、82bから離間した状態で
図14及び
図15に図示されている。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bの第3下側接触区域ZL3及び第4下側接触区域ZL4は、互いに異なってよい。
【0113】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bの第3下側接触区域ZL3及び下側接触区域ZL4は、重ならず、したがって、互いに離間することができる。
【0114】
更に、本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bの第3下側接触区域ZL3及び第4下側接触区域ZL4は、平坦でなくてよい。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態では、各下側係合要素64a、64bの第3下側接触区域ZL3及び第4下側接触区域ZL4は、何らかの重なりがあり得るが、同じ下側係合要素64a、64bの第1下側接触区域ZL1及び第2下側接触区域ZL2と一致することがないことは了解されよう。
【0116】
関連するインサート下側面38が第2座面78と接触する各刃先交換位置において、第2外周面50a、50bの一方のみが第2支持壁80と接触することができ、境界面40の他の部分は、第2インサート受け入れポケット76と接触することがない。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態では、関連するインサート下側面38が第2座面78と接触する各刃先交換位置において、
図16に示すように、境界面の第2外周面50a、50bの一方の平坦な第2外周接触区域ZP2は、第2支持壁80と接触することができる。
【0118】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第2外周接触区域ZP2は、第1軸A1に平行とすることができる。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態では、第2支持壁80は、2つの離間する支持領域を有することができ、したがって、第2外周接触区域ZP2は、2つの離間する副区域を備え得ることは了解されよう。
【0120】
図4に示すように、工具軸ATに直交する第4平面P4は、切削インサート26の第2中点M2で、第2支持壁80の1つ、及び関連する切削インサート26の有効な第2上側切れ刃54a’、54b’に交差することができ、関連する切削インサート26の有効な第1上側切れ刃52a’、52b’は、第4平面P4の軸方向後方に位置することができる。
【0121】
有効な第1上側切れ刃52a’、52b’が第4平面P4の軸方向後方に位置する本発明の実施形態に関し、関連する軸方向切削力は、軸方向前方に向けられることは了解されよう。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態では、関連する切削インサート26の有効な第2上側切れ刃54a’、54b’は、負の第2軸方向すくい角α2を有することができる。
【0123】
また、本発明のいくつかの実施形態では、第4平面P4は、第3平面P3から軸方向後方にずらすことができる。
【0124】
本発明は、各切削インサート26に対する、当該切削インサート26に関連する第2インサート受け入れポケット76内での軸方向支持が、第2座面78上の複数の第2係合要素82a、82bによってもたらされ、こうして、第2インサート受け入れポケット76が軸方向後向き支持壁を有する必要性をなくし、溝削り工具が、例えば、割り出し可能切削インサート26の切削幅に対して溝幅の低減した溝を生成することを可能にするという点で有利である。
【0125】
図5~
図7及び
図9に示すように、各第1外周面48a、48bは、下側面38に交差し、第1下側切れ刃86a、86bを形成することができ、各第2外周面50a、50bは、下側面38に交差し、第2下側切れ刃88a、88bを形成することができる。
【0126】
複数の第1下側切れ刃86a、86b及び第2下側切れ刃88a、88bは、下側境界縁部44の個別の部分であり得ることは了解されよう。
【0127】
図6に示すように、上側面36は、複数の別個の離間する雌又は雄上側係合要素90a、90bを有することができる。雌又は雄上側係合要素90a、90bは、上側面36の傾斜部分上に形成することができ、この傾斜部分は、正中面Mに対して傾斜している。更に、上側係合要素90a、90bは、インサート穴46及び境界面40から離間することができる。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態では、上側面36は、厳密に2つの上側係合要素90a、90bを有することができる。
【0129】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各上側係合要素90a、90bは、境界面40に交差しなくてよい。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態では、各上側係合要素90a、90bは、上側境界縁部42から完全に離間し得ることは了解されよう。
【0131】
図5~
図7に示すように、各上側係合要素90a、90bは、雄突出要素とすることができる。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態では、各上側係合要素90a、90bは、部分的に球形とすることができる。
【0133】
また、本発明のいくつかの実施形態では、上側面36及び下側面38は、同一とすることができる。そのような場合、切削インサート26は、「リバーシブル」又は「両側使用可能」とみなすことができる。更に、図示する両側使用可能切削インサート26の上側面36及び下側面38は、第1軸A1に沿って見ると正方形形状を有するが、切削インサートは、各側で2つの様式でのみ刃先交換可能である、即ち、切削インサートは、各側に180°の回転対称のみを有する。
【0134】
図6に示すように、第1平面P1は、複数の雌又は雄上側係合要素90a、90bの少なくとも2つに交差することができ、第2平面P2は、複数の雌又は雄上側係合要素90a、90bのいずれにも交差することがない。
【0135】
切削インサート26の1つがその下側面38で第1座面28の1つと接触する各刃先交換位置において、第1平面P1が交差し、第3平面P3の軸方向前側に位置する複数の上側係合要素90a、90bの少なくとも1つは、有効な第1上側切れ刃52a’、52b’、第2上側切れ刃54a’、54b’、第3上側切れ刃60a’、60b’が形成する切削チップを有利に偏向し得ることは了解されよう。
【0136】
各切削インサート26は、その上側面36が第1座面28の1つと接触するN1個の刃先交換位置を有することができ、各刃先交換位置において、
第1支持壁30は、境界面40に接触し、切削インサート26が第1方向D1で第1座面28に沿って平行移動しないようにすることができ、
複数の第1係合要素32a、32bは、複数の上側係合要素90a、90bに偏心接触し、同時に、切削インサート26が第2方向D2で第1座面28に沿って平行移動しないようにすることができることも了解されよう。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態では、上側面36が第1座面28と接触する各刃先交換位置において、境界面の第1外周面48a、48bの一方の平坦な第1外周接触区域ZP1のみが、第1支持壁30と接触することができる。
【0138】
各切削インサート26は、その上側面36が第2座面78の一方と接触するN1個の刃先交換位置を有し得ることも了解されよう。
【0139】
N1=2である本発明の実施形態に関し、各切削インサート26は、有利には、工具本体22に対し合計8個の取り付け位置を有し、合計8個の取り付け位置は、第1インサート受け入れポケット24の1つに関連する4つの取り付け位置、及び第2インサート受け入れポケット76の1つに関連するあと4つの取り付け位置から構成されることは了解されよう。
【0140】
本発明は、ある程度の詳細まで説明しているが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な代替形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。