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特許7303218エポキシドにCO2を付加することによりカーボネートを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】エポキシドにCO2を付加することによりカーボネートを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/36 20060101AFI20230627BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
C07D317/36
C07B61/00 300
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020568700
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019064911
(87)【国際公開番号】W WO2019238548
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】18176920.9
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルツェル トレスコフ
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター グレフ
(72)【発明者】
【氏名】マイク カスパリ
(72)【発明者】
【氏名】トアベン シュッツ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
(72)【発明者】
【氏名】ティム ブライト
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-128382(JP,A)
【文献】CHEMCATCHEM,2014年,Vol. 7, No. 3,pp. 459-467
【文献】Journal of CO2 Utilization,2014年,Vol. 7,pp. 39-45
【文献】プロセス化学 ―医薬品合成から製造まで,丸善株式会社,2008年,pp. 120-121, 176-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリシジルメタクリレートからグリセロールカーボネートメタクリレートを製造する方法であって、まずCOの存在下でエポキシドを装入し、次いで臭化トリアルキルヒドロキシアルキルホスホニウムおよびハロゲン化トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムからなる群から選択される触媒を添加すること、および前記反応のスケールが5molより大きく、かつ反応温度が10℃~85℃であり、最終生成物中のジメタクリレート副生成物の含有量が1質量%未満であることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記エポキシドが転化される前に、触媒に対するCOのモル比が0.01超である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応温度が15℃~80℃であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
反応温度が20℃~70℃であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
温度を段階的に上げることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
温度を段階的に、15分ごとに10℃ずつ上昇させることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記COを、1~10barの圧力で導入することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記CO を、2~8barの圧力で導入することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記CO を、3~7barの圧力で導入することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が、臭化トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムの群から選択されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、臭化トリブチルヒドロキシエチルホスホニウムであることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
反応混合物における前記触媒の含有量が、0.05mol%~25mol%であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
反応混合物における前記触媒の含有量が、0.5mol%~10mol%であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
反応混合物における前記触媒の含有量が、2mol%であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記触媒を反応混合物から分離し、任意で前記触媒を少なくとも1つの追加の反応に供給することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
極性固定相に通して濾過することにより前記触媒の塩が吸収される程度に溶媒を添加することで、生成物溶液の極性を低下させ、その結果として生成物から前記触媒が連続的に除去されることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
臭化アンモニウム、臭化アルキルホスホニウム、臭化ヒドロキシアルキルアンモニウム、臭化ヒドロキシアルキルホスホニウム、臭化アルキルスルホニウムの群から選択される臭化物塩の添加により、前記触媒を再活性化させることを特徴とする、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
フェノチアジン、tempo、tempol、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの安定剤が使用されることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
置換フェノール誘導体、および置換フェノール誘導体の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの安定剤を使用することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
ヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、4-メトキシフェノール(HQ)、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの安定剤を使用することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記安定剤含有量が、20ppm~700ppmであることを特徴とする、請求項18または19記載の方法。
【請求項22】
前記安定剤含有量が、100ppm~300ppmであることを特徴とする、請求項118または19記載の方法。
【請求項23】
生成物の色数が、DIN ISO 6271に準拠して白金-コバルトの色数として光度計により測定して、500未満であることを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
生成物の色数が、DIN ISO 6271に準拠して白金-コバルトの色数として光度計により測定して、100未満であることを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COの挿入により、環状有機カーボネート、特にはグリセロールカーボネート(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。
【0002】
従来技術
欧州特許第1894922号明細書には、グリセロールカーボネートエステルの製造方法が記載されている。この文献には、MMAとグリセロールカーボネートアセテートとの交差エステル交換を行うことでメチルアセテートとグリセロールカーボネートメタクリレートが得られることが記載されている。この方法は、手間のかかる蒸留工程、その後の中和、およびその後の相分離による後処理を必要とする。収率はわずか87%である。さらに、生成物混合物中には、わずか67%しか生成物(グリセロールカーボネートメタクリレート)が存在せず、依然として27%のグリセロールカーボネートアセテートが存在する。
【0003】
Buettnerら(ChemCatChem, 2015, vol. 7, p. 459-467)は、アンモニウム塩に基づく様々な二官能性有機触媒の合成と、1,2-ブチレンオキシドとCOとの反応におけるその使用について説明している。転化は、45℃、1.0MPaで18時間かけて行われる。
【0004】
Wernerら(ChemSuSChem, 2014, vol. 7, p. 3268-3271)は、ヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウムの存在下で1,2-ブチレンオキシドをCOと反応させる方法を説明している。
【0005】
課題および解決手段
CO挿入によるグリセロールカーボネートメタクリレートの製造において、グラムスケールでは99%の理想的な収率が可能である。しかしながら、より大きなスケールでは、公知のいずれのプロセスも選択性を失い、副生成物の形成と変色が生じる。副生成物は、特にこれらが架橋剤である場合に重要である。グリセロールカーボネートメタクリレートの使用を可能にするためには、架橋剤含有量は最小限でなければならない。1%を超える架橋剤含有量は、あらゆる用途で禁止される。さらに、このルートによるカーボネートの製造においては、高圧が一般的に必要とされる。従来の製造プラントでは高圧は不可能であるため、製造には特殊な高圧タンクが必要になる。
【0006】
グラムスケールを超える大きなバッチにおけるWernerらの場合の手順では、望ましくない副生成物が生じることになる。
【0007】
ミリモル範囲の小スケールでは、Wernerの場合のように、反応系にCOを十分に迅速に供給することができる。Wernerの方法では、バッチサイズの増加に伴って副生成物が明らかに増加する。
【0008】
よって、工業スケールの実施では、上述したプロセスで十分な純度の製品を製造することが不可能になる。
【0009】
加えて、Wernerらの場合では、プロセスの不利な発熱が存在する。追加のエネルギー供給がなくても、大スケールのバッチは75℃を大きく上回る温度まで加熱され、最終的な温度は主にバッチサイズによって決定される。しかし、85℃を超えると、再び架橋剤の形成を招く副反応が始まる。文献では90℃でこの実験を行っていることから、これは驚くべきことに小スケール(数グラム)では関係がないようである。
【0010】
Wernerらは、ChemSusCem, 2014, vol. 7, # 12, p. 3268-3271において、臭化物含有触媒の使用について述べている。しかしながら、その低い活性ゆえ、これはあまり適切ではないと分類されており、より活性なヨウ化物系触媒が好ましい。しかしながら、商業的観点からは、ヨードエタノールの場合、触媒の調製に必要な反応物が商業規模の量では入手できず、精密化学品としてしか入手できないため、より活性の高い触媒はさらに不適切である。これは、商業的スケールでの合成のコスト(生成物と触媒との双方)を明らかに増加させる。
【0011】
取り組まれる課題は、上述した欠点を克服する方法を開発することであった。
【0012】
この課題は、まずCOの存在下でエポキシドを装入してから触媒を添加することを特徴とする環状有機カーボネートの製造方法によって解決される。
【0013】
より具体的には、まずCOの存在下でグリシジル(メタ)アクリレートを装入してから触媒を添加することを特徴とする、グリセロールカーボネート(メタ)アクリレートの製造方法が特許請求される。
【0014】
驚くべきことに、反応の成分が互いに遭遇する順序は極めて重要であることが見出された。触媒は室温で既に活性であり、COがない状態では、架橋剤が形成され生成物が黄変する。そのため、本発明による方法の体系では、触媒はCOの後にのみ反応器混合物に供給されるべきであると規定されている。
【0015】
90℃未満の温度での反応は、副生成物の形成が明らかに少ない状態で実施できることが見出された。
【0016】
したがって、本発明によれば、反応は、10~85℃、好ましくは15~80℃、より好ましくは20~75℃の温度で行われる。
【0017】
温度が段階的に上げられる場合に特に有利であることが見出された。典型的には、15分ごとに10℃ずつ上げられる。任意で、温度はさらにゆっくりと、例えば3時間以内に70℃から85℃まで段階的に上げられる。
【0018】
本発明による方法は、反応スケールが5molより大きい場合に特に有利である。
【0019】
本方法は、1~10bar、好ましくは2~8bar、より好ましくは3~7bar、最も好ましくは5barの圧力でエポキシドにCOを挿入することによるカーボネートの製造に関する。標準の鋼製タンクは-1~+6barの圧力用に設計されているため、5barの合成圧力であれば、従来の装置でも実行することができる。低圧の既存の方法は、商業規模での製造の妨げとなる非常に長い反応時間を有している。
【0020】
本明細書における「(メタ)アクリレート」という表記は、例えばメチルメタクリレートやエチルメタクリレートなどであるメタクリレートと、例えばメチルアクリレートやエチルアクリレートなどであるアクリレートの双方、および2種の混合物を意味する。
【0021】
反応物
適切な反応物は多数のエポキシドである。適切な例は、プロペンオキシド、1-ブテンオキシド、オクテンオキシド、3-クロロ-1-プロペンオキシド、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキセンオキシド、イソブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、エテンオキシド、およびヘキセンオキシド、ならびにこれらの混合物である。
【0022】
特に適切なエポキシドは、グリシジルメタクリレート、イソブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、エテンオキシド、およびヘキセンオキシドの群から選択される。
【0023】
触媒
適切な触媒は、典型元素5族のハロゲン化物塩および擬ハロゲン化物塩の群から選択することができる。
【0024】
特に適切な触媒は、直接結合している少なくとも1つのジ(シクロ)アルキルアミノ基をそれぞれ有するルイス酸、ならびに塩化ベンジルトリエチルアンモニウムおよびトリスジメチルアミノボランの群から選択される。
【0025】
それらに加えて適切なものは、ハロゲン化トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウム、好ましくは臭化トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムの群からの触媒である。
【0026】
触媒は、より好ましくは、ハロゲン化トリアルキルヒドロキシアルキルホスホニウムの群から、特に好ましくは臭化トリアルキルヒドロキシアルキルホスホニウムの群から選択され、最も好ましくは臭化トリブチルヒドロキシエチルホスホニウムである。
【0027】
臭化トリブチルヒドロキシエチルホスホニウム触媒の調製は、合成に必要なブロモエタノールが商業規模の量で入手可能なため、ヨウ素含有触媒と比較してはるかに低コストである。
【0028】
本発明による方法では、触媒は最初に分離される。その後、触媒は任意で、変化していない形態で反応に戻すことができる。触媒は繰り返し再利用することもできる。ただし、数サイクル後に反応性および選択性が低下することが観察された。
【0029】
この方法は、触媒の再活性化により明らかに改善される。
【0030】
これは、反応混合物から触媒を分離し、可溶性ハロゲン化物塩を添加することによってハロゲン化物成分を元の化学量論量に調整することで行われる。
【0031】
より具体的には、触媒は、臭化アンモニウム、臭化アルキルアンモニウム、臭化アルキルホスホニウム、臭化ヒドロキシアルキルアンモニウム、臭化ヒドロキシアルキルホスホニウム、臭化アルキルスルホニウムの群から選択される臭化塩を添加することによって再活性化される。
【0032】
反応混合物中の触媒含有量は、0.05~25mol%、好ましくは0.5~10mol%、より好ましくは約2mol%である。
【0033】
再活性化された触媒の使用は、方法の経済的実行可能性に特に有利であることが見出された。反応性が大きな制約を受けることなく、処理された触媒の1回の再使用も複数回の使用も可能である。
【0034】
驚くべきことに、極性を有する固定相に通して濾過することにより触媒塩が吸収される程度に溶媒を添加することで、生成物溶液の極性を下げることができ、その結果として生成物を連続的に触媒から分離できることも見出された。
【0035】
極性の低下に適した溶媒は、特に、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、トルエン、MTBE、アルカン、塩化アルカン、好ましくはヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサン、ならびにメチルシクロヘキサンまたはこれらの混合物の群からのものである。
【0036】
使用される固定相は、好ましくはシリカゲル、珪藻土、アルミナ、またはモンモリロナイトである。
【0037】
安定剤
適切な安定剤は当業者に公知である。適切な安定剤は、限定するものではないが、例えばフェノチアジン、tempol、tempo、およびこれらの混合物である。
【0038】
環状有機カーボネートの用途では、一般的に無色の製品が必要とされる。したがって、不飽和化合物については、色がついていない安定剤が好ましい。
【0039】
好ましくは、安定剤は、置換フェノール誘導体の群、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、4-メトキシフェノール(HQ)、およびこれらの混合物から選択され、任意で上で示された安定剤と併用されてもよい。
【0040】
HQMEの使用が特に好ましい。
【0041】
tempolとHQMEとの組み合わせも、本発明による方法に特に適している。
【0042】
使用される安定剤の量は、出発物質および環状有機カーボネートの性質に依存する。
【0043】
20~700ppm、より好ましくは100~300ppmの安定剤を使用することが好ましい。
【0044】
本発明による方法に溶媒は不要である。結果として、生成物は反応タンク内で最適な空時収率を達成する。
【0045】
今回、架橋剤の含有量が大幅に低減された結果、特にCO挿入による生成物が100未満の色数を有しているため、クリアコート配合物における樹脂成分として生成物を使用することが可能である。さらに、多数の副反応が防止された結果として、生成物の純度の向上がみられる。
【0046】
したがって、本発明の方法に従って製造され、生成物の色数が500未満、より好ましくは100未満、より好ましくは50未満であることを特徴とする環状有機カーボネートも特許請求される。
【0047】
また、本発明の方法に従って製造される、最終生成物中の不飽和エポキシドの濃度が1000ppm未満である環状有機カーボネートも特許請求される。
【0048】
さらに、本発明の方法に従って製造される、最終生成物中のジメタクリレート副生成物の含有量が1質量%未満である環状有機カーボネートも特許請求される。
【0049】
転化が完了していることから、生成物は貯蔵安定性を有していることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】サンプルの質量減少を示す図。
図2】サンプルの質量減少を示す図。
図3】サンプルの質量減少を示す図。
図4】サンプルの質量減少を示す図。
図5】触媒成分の有無を示す図。
【0051】
以下の実施例は、本発明を明らかにすることを目的としている。
【0052】
実施例1:DIN ISO 6271に準拠した光度計による白金-コバルトの色数の決定
白金-コバルトスケールにおける色標準溶液との視覚的な比較は、460nmおよび620nmの波長でのサンプルの吸光度の測定に置き換えられる。吸光度差E460nm-E620nm=ΔEは、白金-コバルト標準の色純度と直線関係にある。色数をΔEの関数としてプロットすると検量線が得られ、その傾きが直接、色数の計算の「係数」としての役割を果たす。必要条件は、調査するサンプルが、色特性の点で、つまり色相の点で白金-コバルトスケールにほぼ対応していることである。白金-コバルトの色数の同義語は、APHA(American Public Health Association)またはハーゼン数である。
【0053】
手順
UV/VIS分光光度計(例えばVarianのCary100)、光学用特殊ガラスのキュベット(経路長50mm)、天秤(d=1mg)、標準フラスコ、ホールピペット、100mlの広口ねじ蓋式ガラス瓶、10mlの使い捨てPEピペット。
【0054】
実際の測定の前に、サンプルがPt/Coカラースケールの色特性(例えば標準比較溶液との比較による黄色の色相)に対応するか、または異なるかを視覚的に調べる必要がある。
【0055】
光度測定
分析する液体を5cmのキュベットに入れ、キュベットを密閉する。これには気泡や縞があってはならない。次いで、サンプル(前部キュベットシャフト)の吸光度を、脱塩水が入っているキュベット(後部キュベットシャフト)に対して460nmおよび620nmで分光光度計により測定し、吸光度差を計算する。bとmとの値は検量線から得ることができる。
【0056】
【数1】
b=軸切片、m=傾き
係数は装置に固有の形式で異なる値をとることが想定できるため、これらは検量線を記録することにより決定する必要がある。係数は毎年確認しなければならない。620nmで0未満の吸光度が生じた場合、同様に差が形成される。つまり、460nmの吸光度に620nmの吸光度の数値が加えられる。負の吸光度は、状況によっては最終結果に現れる可能性があるため、無視してはならない。
【0057】
比較例1:ヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒の調製
【化1】
【0058】
開始質量:
267g(TBP-50EA)(酢酸エチル中の50~51%溶液として最小99%のトリブチルホスフィン)
(133.5g、0.66mol)のトリ-n-ブチルホスフィン(HOKKO ChemicalsのTBP-50EA中)
(133.5g、49~50%)の酢酸エチル(HOKKO ChemicalsのTBP-50EA中)
180g(0.686mol)の2-ヨードエタノール(99%)
装置:
1リットルの四ツ口丸底フラスコ、液相温度計、ガス導入管、精密ガラススターラースリーブとスターラーモーターとを備えたサーベルスターラー、100mlの滴下漏斗、ジャケット付きコイルコンデンサー、閉ループ温度制御付き油浴
手順:
窒素パージした装置に酢酸エチル中のトリブチルホスフィンを量り入れた。窒素の導入および撹拌を行いながら、溶液を60℃まで加熱した。58℃の液相温度で、61分以内に2-ヨードエタノールを滴下し(発熱反応;大幅な温度上昇を避けるために、油浴を時々外すか、少し下げた)、反応温度を約60℃(Tmax=64℃)に保った。60℃で24時間後、反応混合物(エマルション)を室温まで冷却した。透明な黄色味を帯びた液状反応混合物(375.3g)をロータリーエバポレーターで濃縮することで(100℃/5mbar)、254.9g=理論値の103.2%の透明で黄色味を帯びた粘ちょうな液体が得られた。これは冷却の過程で白い塊として結晶化した。
【0059】
分析:
31P NMR:
94.1mol%のトリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム塩
H NMR(二次的なリン成分は無視した):
97.5/2.5のトリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム塩/2-ハロエタノール(mol%)
【0060】
実施例1:臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒の調製
【化2】
【0061】
開始質量:
202.3g(TBP-50EA)(酢酸エチル中の50~51%溶液として最小99%のトリブチルホスフィン)
(101.2g、0.50mol)のトリ-n-ブチルホスフィン(HOKKO ChemicalsのTBP-50EA中)
(101.1g、49~50%)の酢酸エチル(HOKKO ChemicalsのTBP-50EA中)
65g(0.52mol)の2-ブロモエタノール(97%)
装置:
500mlの四ツ口丸底フラスコ、液相温度計、ガス導入管、精密ガラススターラースリーブとスターラーモーターとを備えたサーベルスターラー、50mlの滴下漏斗、ジャケット付きコイルコンデンサー、閉ループ温度制御付き油浴
手順:
TBP-50EA(酢酸エチル中のトリブチルホスフィン)を、その自然発火性のため窒素パージした装置の中に最初に入れた。窒素の導入および撹拌を行いながら、溶液を約60℃まで加熱した。56℃の液相温度で、2-ブロモエタノールを40分以内に滴下し(発熱反応)、反応温度を約60℃に保った(油浴を時々外すか、少し下げた)。約60℃で24時間後、反応混合物(260.0gのわずかに濁った無色の液体)をロータリーエバポレーターで濃縮することで(100℃/2mbar)、167.6g(=理論値の102.4%)の無色透明の粘ちょうな液体が得られた。これは30℃未満まで冷却した後にスラリーを形成するが、均一な結晶化はしない。
【0062】
分析:
31P NMR:
89.5mol%のトリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム塩
H NMR(二次的なリン成分は無視した):
95.2/4.8のトリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム塩/2-ハロエタノール(mol%)
【0063】
実施例2:臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム触媒の調製
【化3】
【0064】
開始質量:
139.01g(0.75mol)のトリ-n-ブチルアミン
93.72g(0.75mol)の2-ブロモエタノール(97%)
装置:
500mlの四ツ口丸底フラスコ、液相温度計、精密ガラススターラースリーブとスターラーモーターとを備えたサーベルスターラー、50mlの滴下漏斗、ジャケット付きコイルコンデンサー、閉ループ温度制御付き油浴
手順:
トリ-n-ブチルアミンを最初に装置に入れ、約80℃まで加熱した。約80℃の液相温度で、2-ブロモエタノールを約65分以内に滴下し(非発熱反応)、反応温度を約80℃に保った。(反応混合物は二相性であり、撹拌している間は濁った液体(エマルション)の形態である。)約80℃で24時間後、反応混合物を室温まで冷却した。反応(80℃で24時間の追加の反応)後、上側の相(36.4g、96%のトリ-n-ブチルアミン)を除去し、得られた粗生成物をロータリーエバポレーター(90℃/16mbar)で脱気した。これにより反応混合物の質量が4.5g減少した。純度が約88.5%の粘ちょうな褐色の液体が得られた。
【0065】
比較例2:ヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウムとの反応
(Wernerら ChemSuSChem, 2014, vol. 7, p. 3268-3271)
装置:
0.05リットルの反応器、温度センサー、磁気結合を有するスターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴
バッチ:
4.00g(24.2ミリモル)のグリシジルメタクリレート
208mg(0.556ミリモル、エポキシドを基準として2mol%)のヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
500ppm(エポキシド基準)のHQME安定剤
10barのCO
手順:
45mlのガラス反応器に、208mg(0.556ミリモル)のヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒および4.00gのグリシジルメタクリレート(24.2ミリモル)を最初に入れる。反応器を90℃の油浴に浸し、COで1回パージし、次いで加圧し(pCO=1.0MPa、10bar)、合計3時間加熱する。続いて、氷浴で反応器を室温まで冷却し、COを徐々に排出する。粗生成物のサンプルをGC用に採取する。残りの反応混合物を、Wernerらの方法と同様にしてシリカゲルに通して濾過し、全ての揮発性成分を減圧下で除去する。(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレート反応生成物が黄色オイルとして得られる(4.58g、23.6ミリモル、98%(NMRより))。
【0066】
【表1】
【0067】
この反応は、小スケールで優れた反応時間と選択性とを有している。生成物は、色数と架橋剤との基準における製品要件を満たしていない。予め分離した粗生成物はこの分析で明確に異なっていたため、シリカゲルに通した濾過により、触媒だけでなく、ヒドロキシ官能化架橋剤などの極性副生成物などの副生成物も除去される。しかしその一方で、シリカゲルなどのGCで見えない化合物が反応生成物の中に取り込まれる。
【0068】
反応スケールは工業的使用のためには小さすぎ、これは本発明による実施例ではない。
【0069】
比較例3:ヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を用いた、5molのエポキシドのスケールでのWernerらによる方法
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
37.4g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)のヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.356g(エポキシドを基準として500ppm)のHQME安定剤
10barのCO
手順:
混合物(COなし)をオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、撹拌しながら約90℃まで加熱し、次いでCOを10barまで充填した(最大99℃の発熱反応)。約22時間後、油浴を停止し/取り外し、COの供給を止めた。
【0070】
【表2】
【0071】
Wernerらによって記述された実験が20倍にスケールアップされた場合、生成物の純度が大幅に低下し、副生成物の形成レベルが増大される。同等の転化を得るためには、反応時間をさらに少なくとも12時間に延長しなければならない(分析が遅れたため22時間を要した)。色数は依然として非常に悪く、1.24%のグリセロールカーボネートとΣ2.45%の架橋剤とによる汚染が存在する。生成物は製品要件を満たしておらず、支障なくスケールアップすることは不可能である。
【0072】
反応スケールは増加したが、純度が低すぎ、架橋剤が多すぎ、色数が大きすぎる。本発明による実施例ではない。
【0073】
比較例4:ヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を用いた5molのエポキシドのスケールでのCO挿入、COを室温で先に添加
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
37.4g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)のヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.356g(エポキシドを基準として500ppm)のHQME安定剤
10barのCO
手順:
混合物(COなし)をオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、COを10barまで注入し、撹拌しながらオートクレーブを加熱した。70℃で、混合物は約90℃まで発熱する(発熱反応)。続いて、混合物を油浴でこの温度に保った。約22時間後、油浴を停止し/取り外し、COの供給を止めた。
【0074】
【表3】
【0075】
室温で先にCOを添加することにより、Wernerらによる実験の20倍のスケールアップを改善することができる。純度は上がるものの、色数は依然として非常に悪い。0.42面積%のグリセロールカーボネートとΣ0.79%の架橋剤とによる汚染が存在する。さらに、生成物は、その色のため製品要件を満たしていない。
【0076】
反応スケールが増加し、架橋剤は許容できるものの、色数が大きすぎ、純度は中程度である。本発明による実施例ではない。
【0077】
比較例5:ヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を用いた5molのエポキシドのスケールでのCO挿入、5barのCOを室温で添加
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
37.4g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)のヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.356g(エポキシドを基準として500ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物(COなし)をオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、COを5barまで注入し、撹拌しながらオートクレーブを90℃まで加熱(有意な発熱反応なし)し、その後混合物を油浴でこの温度に保った。約24時間後、油浴を停止し/取り外し、COの供給を止めた。
【0078】
【表4】
【0079】
ヨウ化物触媒と併用した5barのCOは、転化率の明らかな低下と非常に深刻な品質の低下とをもたらす。この触媒は反応性が高すぎる。これはCOの分圧が低いことにより、COで反応溶液を均一に飽和させたりCOを反応溶液に均一に供給したりすることができないことを意味する。
【0080】
反応スケールが増加し、CO圧力は優れているものの、架橋剤、色数、および純度は許容できない。本発明による実施例ではない。
【0081】
比較例6:4mol%のヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を用いた5molのエポキシドのスケールでのCO挿入、5barのCOを室温で添加
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
74.8g(0.10mol=エポキシドを基準として4mol%)のヨウ化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.356g(エポキシドを基準として500ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物(COなし)をオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、COを5barまで注入し、撹拌しながらオートクレーブを90℃まで加熱した。90℃で、混合物は約95℃まで発熱する(わずかに発熱反応)。続いて、混合物を油浴で90℃に保った。約24時間後、油浴を停止し/取り外し、COの供給を止めた。
【0082】
【表5】
【0083】
触媒添加量の増加は、CO供給不足の影響を裏付ける。COがない場合に生じる副反応は、生成物の品質を大幅に悪化させ、さらに転化率が大幅に低下する。
【0084】
反応スケールが増加し、CO圧力は優れているものの、架橋剤、色数、および純度は許容できない。本発明による実施例ではない。
【0085】
比較例7:2mol%の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を用いた5molのエポキシドのスケールでのCO挿入、10barのCOを室温で添加
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
32.7g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.356g(エポキシドを基準として500ppm)のHQME安定剤
10barのCO
手順:
混合物(COなし)をオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、COを10barまで注入し、撹拌しながらオートクレーブを90℃まで加熱した。80℃を超えると、混合物は約106℃まで発熱する(強い発熱反応)。続いて、混合物を油浴で90℃に保った。約24時間後、油浴を停止し/取り外し、COの供給を止めた。
【0086】
【表6】
【0087】
文献に記載されているように、臭化物触媒の反応は、一見最初は選択性が低く、わずかに活性が低い。しかしながらこれとは全く対照的に、反応ははるかに発熱的である。反応は、触媒が変更されたことを除いては形式的には同じ反応であり、同じ反応熱が突然放出されることから、臭化物触媒は、ヨウ化物触媒で可能な程度まで活性化エネルギーを下げないようである。これは、室温で反応があまり目立たないという利点を有しているものの、必要な活性化エネルギーに到達すると、(まだ反応が起こっていないため)非常に多量の反応物が存在し、その結果短時間で大量のエネルギーが放出されるという欠点を有している。結果として、反応器系の106℃への過熱が観察される。さらに、色数の非常に顕著かつ明確な減少がみられる。ヨウ化物触媒は、生成物の色数に明らかな悪影響を有する。
【0088】
反応スケールが増加し、臭化物触媒が使用され、色数はとてもよいものの、架橋剤および純度は許容できない。本発明による実施例ではない。
【0089】
比較例8:2mol%の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を用いた5molのエポキシドのスケールでのCO挿入、10barのCOを室温で添加
注:比較例7では発熱性が高かったことから、これ以降の実験ではかなりの重合の危険性があった。そのため、これ以降ではオートクレーブにガラスインレイを使用した。これにより、混合物の重合時にオートクレーブを開くことができ、その完全な損失を防ぐことができる。それと同時に、重合のリスクをさらに高めることになったとしても、より低い安定化をこの方法で安全に試験することができた。したがって、比較例7からの変更は、装置および安定剤含有量である。
【0090】
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、オートクレーブ用インサートとしての平底ガラス容器、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
32.7g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.356g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
10barのCO
手順:
混合物を平底ガラス容器に量り入れた。平底ガラス容器内の混合物をガラス棒で溶液にし、無色の溶液を形成した。混合物(COなし)が入っている平底ガラス容器をオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、COを10barまで注入し、撹拌しながらオートクレーブを90℃まで加熱した。90℃を超えると、混合物は約113℃まで発熱する(強い発熱反応、ガラスインレイによる熱の除去がより不十分)。続いて、混合物を油浴で90℃に保った。約24時間後、油浴を停止し/取り外し、COの供給を止めた。
【0091】
【表7】
【0092】
オートクレーブにガラスインレイを使用した結果、反応の過熱が再び7℃上昇した。これは、熱の除去が今回は不十分になったことから全く妥当である。安定化がより低いにもかかわらず、強い発熱反応であってもバッチは重合しなかった。そのため、150ppmのHQMEによる安定化は、予期しない事象に対しても十分に大きい。最終生成物は、さらに少ないHQMEで安定化することもできる。7℃の追加の温度ピークにより、架橋剤成分の形成が再び認識できるほど増加する。ただし、生じる発熱を直ちに除去し、過熱を防止する必要がある。
【0093】
反応スケールが増加し、臭化物触媒が使用され、色数はとてもよいものの、架橋剤および純度は許容できない。温度が高すぎる。本発明による実施例ではない。
【0094】
比較例9:2mol%の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を用いた5molのエポキシドのスケールでのCO挿入、5barのCOを室温で添加
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、オートクレーブ用インサートとしての平底ガラス容器、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
32.7g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.356g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物を平底ガラス容器に量り入れた。平底ガラス容器内の混合物をガラス棒で溶液にし、無色の溶液を形成した。混合物(COなし)が入っている平底ガラス容器をオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、COを5barまで注入し、撹拌しながらオートクレーブを90℃まで加熱した。90℃で20分後、混合物は約98℃まで発熱する(発熱反応、ガラスインレイによる熱の除去が不十分)。続いて、混合物を油浴で90℃に保った。約24時間後、油浴を停止し/取り外し、COの供給を止めた。
【0095】
【表8】
【0096】
全く驚くべきことには、臭化物触媒を用いると、COの分圧が半分にされても、実験結果に明らかな悪影響はなかった。ヨウ化物触媒では明らかな悪化を引き起こしていた。対照的に、架橋剤の含有量が減少した結果、生成物の品質はわずかに向上する。測定精度の範囲内で色数は変わらない。
【0097】
反応スケールが増加し、臭化物触媒が使用され、CO圧力が最適化され、色数はとてもよいものの、架橋剤および純度は許容できない。温度が高すぎる。本発明による実施例ではない。
【0098】
実施例3:グリセロールカーボネートメタクリレートの分解温度の決定
グリセロールカーボネートメタクリレートのサンプルを、最初に5K/分の加熱速度で室温から500℃までの範囲で、熱質量分析によりその質量減少について調べた。図1を参照のこと。
【0099】
明らかな質量減少は、100℃を僅かにのみ下回った温度で既に開始する。これは標準圧力の沸点でかなり高いため、グリセロールカーボネートの分解反応は100℃で既に始まっていると推測することができる。
【0100】
2回目の熱質量分析において、グリセロールカーボネートメタクリレートのサンプルを、それぞれの場合で、60℃で16時間、100℃で4時間、および130℃で1時間、等温で保管した。図2を参照のこと。
【0101】
130℃で保管すると、60分以内に20質量%を超える質量減少が生じる。生成物は130℃で不安定である。
【0102】
100℃で保管すると、240分以内に約12質量%の質量減少が生じる。生成物は100℃で不安定ある。図3を参照のこと。
【0103】
60℃で保管すると、1000分以内に約1質量%の質量減少が生じる。図4を参照のこと。生成物はこの温度で安定である。TGA分析における最初の質量減少は5K/分の加熱速度で60~100℃の範囲で始まるため、分解温度は60~100℃の範囲であり、おそらく90℃を僅かにのみ下回っている。したがって、グリセロールカーボネートメタクリレートの合成は、90℃未満の温度に制限する必要がある。
【0104】
比較例10:2mol%の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を用いた5molのエポキシドのスケールでのCO挿入、5barのCOを室温で添加、発熱制限
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、オートクレーブ用インサートとしての平底ガラス容器、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
32.7g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.356g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物を平底ガラス容器に量り入れた。平底ガラス容器内の混合物をガラス棒で溶液にし、無色の溶液を形成した。混合物(COなし)が入っている平底ガラス容器をオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、COを5barまで注入し、撹拌しながらオートクレーブを70℃まで加熱した。70℃で5分後、混合物は油浴の温度を超えて発熱する。5分後の温度は81℃である。83℃で8分後、油浴を取り外す。合計20分後、約91℃の最高温度に到達した。30分間空冷したにもかかわらずこの温度が維持されたため、水浴で15分以内に混合物を65℃まで冷却した。混合物を油浴で70℃に保った。約24時間の総反応時間の後、油浴を停止し/取り外し、COの供給を止めた。
【0105】
【表9】
【0106】
約90℃の反応温度と比較すると、最高温度が制限されている場合には反応ははるかに選択的になる。予期した通り、今回反応温度が低下した結果として転化率が低下し、架橋剤の含有量が明らかに低下し、加水分解生成物が形成されない。反応が速く進行すると副反応が起こり、結果として非常にわずかしかCOが存在しなくなることが現在十分に周知であることから、これ以降では冷却によってさらに低い温度(75℃)で反応をクエンチするが、他方でCO飽和度を回復するのに十分遅い場合は、さらなる反応のためにより高温で作用させる。CO飽和度が十分に高い場合は、90℃より高い温度で分解反応を抑制できることも必要であろう。
【0107】
反応スケールが増加し、臭化物触媒が使用され、CO圧力が最適化され、色数はとてもよいものの、架橋剤および純度は十分ではない。本発明による実施例ではない。
【0108】
比較例9:2mol%の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を用いた5molのエポキシドのスケールでのCO挿入、5barのCOを室温で添加、85℃の発熱制限、90℃で追加の反応
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、オートクレーブ用インサートとしての平底ガラス容器、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
32.7g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.356g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物を平底ガラス容器に量り入れた。平底ガラス容器内の混合物をガラス棒で溶液にし、無色の溶液を形成した。混合物(COなし)が入っている平底ガラス容器をオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、COを5barまで注入し、撹拌しながらオートクレーブを70℃まで加熱した。内部温度が70℃となる直前に油浴を取り外した。混合物はさらに自発的に発熱する。25分後には温度は85℃であり、そのため水浴で短時間(15分)冷却して77℃に戻した。その後、混合物を70℃の油浴によってわずかに加熱し、その結果、最大82℃の別の温度ピークが観察された。その減少の後、油浴温度を90℃に上げ、追加の反応段階を開始した。約24時間の総反応時間の後、油浴を停止し/取り外し、COの供給を止めた。
【0109】
【表10】
【0110】
温度の制限は、生成物の品質に非常に有益であり、色数が明らかに改善され、三重架橋剤を排除し、製品の純度を高め、さらに高い反応温度の結果としてより高い転化率も達成する。その他の点に関しては非常に改善されているにもかかわらず、架橋剤の含有量は依然として製品仕様の範囲外である。しかし、30分後の反応のサンプリングからは、事実上全ての架橋剤成分がこの時点で既に形成されていたことが示された。触媒は室温で既に活性を有しているものの、ヨウ化物触媒よりもはるかに小さい。このため、COは触媒の上流の反応溶液と接触する必要がある。
【0111】
反応スケールが増加し、臭化物触媒が使用され、CO圧力が最適化され、色数は非常に良好なものの、架橋剤および純度は依然としてよくない。本発明による実施例ではない。
【0112】
実施例4:事前にドライアイスを添加した結果として、臭化ホスホニウム触媒がCOの後にのみ反応溶液と接触
注:反応器が5barのCOに達した後にのみ触媒を添加することが望ましいであろう。
【0113】
粘度、低い触媒質量、およびオートクレーブ内の上昇管のデッドボリュームのため、これは小スケールでは不可能であったものの、より大きなスケールでは極めて重要である。実施例10:実施例8の22.5mol(6l)バッチへのスケールアップおよび20molを超えるスケールのその他を参照のこと。
【0114】
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、オートクレーブ用インサートとしての平底ガラス容器、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
32.7g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.107g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物を平底ガラス容器に量り入れたが、触媒の量を添加する前に、約6gのドライアイスを平底ガラス容器に入れた。ガラス棒による均質化は行わなかった。混合物が入っている平底ガラス容器を直ちにオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、撹拌のスイッチを入れた。反応するCOを置き換えるために、COを5barまでオートクレーブに持続的に入れた。オートクレーブを段階的に(15分ごとに+10℃)70℃まで加熱した。70℃に到達すると、混合物の反応エンタルピーは、それ以上加熱しなくても混合物を85℃まで昇温させるのに十分であり、温度を75℃に制限する必要がある場合には、逆に水浴で冷却する。5時間の反応時間後に、追加の反応(溶液中に存在する約25質量%のエポキシド)を行うために、オートクレーブを85℃まで加熱した。約24時間後、油浴を取り外し、反応を冷却し、CO供給を止めた。
【0115】
【表11】
【0116】
色数はとてもよく、グリセロールカーボネートと架橋剤とによる汚染がなく、仕様範囲内の0.51GC面積%である。生成物は製品要件を満たしている。したがって、追加の反応の温度は90℃未満でなければならない。ただし、これは生成物に固有のパラメータである可能性があり、反応条件で十分な生成物の品質が得られない場合は、各事例で分解温度に関してTGAを使用して他の生成物を調べる必要があるであろう。COとの接触後まで溶液に触媒が添加されない手順は不可欠である。
【0117】
反応スケールが増加し、臭化物触媒が使用され、CO圧力が最適化され、色数、架橋剤、および純度がとてもよい。本発明による実施例である。
【0118】
実施例5:臭化アルキルアンモニウム触媒
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、オートクレーブ用インサートとしての平底ガラス容器、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
32.7g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム
0.107g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物を平底ガラス容器に量り入れたが、触媒の量を添加する前に、約6gのドライアイスを平底ガラス容器に入れた。ガラス棒による均質化は行わなかった。混合物が入っている平底ガラス容器を直ちにオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、撹拌のスイッチを入れた。反応するCOを置き換えるために、COを5barまでオートクレーブに持続的に入れた。オートクレーブを段階的に(15分ごとに+10℃)70℃まで加熱した。70℃に到達すると、混合物の反応エンタルピーは、それ以上加熱しなくても混合物を85℃まで昇温させるのに十分であり、温度を75℃に制限する必要がある場合には、逆に水浴で冷却する。5時間の反応時間後に、追加の反応(溶液中に残存する約25質量%のエポキシド)を行うために、オートクレーブを85℃のままにした。約24時間後、油浴を取り外し、反応を冷却し、CO供給を止めた。
【0119】
【表12】
【0120】
色数はあまりよくはなく、0.17GC面積%のグリセロールカーボネートと0.22GC面積%の架橋剤とによるわずかな汚染があり、以前よりもさらに低いが、仕様範囲内でもある。エポキシド含有量が高いため、生成物は製品の要求を満たしていないものの、反応時間を長くすることにより製造コストを犠牲にして転化率を上げることができる。触媒は実際に適しているものの、わずかに遅い。今回のこの新しい添加の手順により、リン塩以外の触媒系が可能になる。
【0121】
反応スケールが増加し、触媒系が拡張され、CO圧力が最適化され、色数、架橋剤、および純度がとてもよい。本発明による実施例である。
【0122】
実施例6:臭化トリシクロヘキシル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を、事前のドライアイス添加の結果としてCOの後にのみ反応溶液と接触させる
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、オートクレーブ用インサートとしての平底ガラス容器、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
40.5g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリシクロヘキシル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム(実施例1:臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒の調製と同様にして調製)
0.107g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物を平底ガラス容器に量り入れたが、触媒の量を添加する前に、約6gのドライアイスを平底ガラス容器に入れた。ガラス棒による均質化は行わなかった。混合物が入っている平底ガラス容器を直ちにオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、撹拌のスイッチを入れた。反応するCOを置き換えるために、COを5barまでオートクレーブに持続的に入れた。オートクレーブを段階的に(15分ごとに+10℃)70℃まで加熱した。70℃に到達すると、混合物の反応エンタルピーは、それ以上加熱しなくても混合物を85℃まで昇温させるのに十分であり、温度を75℃に制限する必要がある場合には、逆に水浴で冷却する。5時間の反応時間後に、追加の反応(溶液中に残存する約25質量%のエポキシド)を行うために、オートクレーブを70℃のままにした。約24時間後、油浴を取り外し、反応を冷却し、CO供給を止めた。
【0123】
【表13】
【0124】
本発明による実施例4との関連する相違はない。
【0125】
反応スケールが増加し、触媒系の配位子が拡張され、CO圧力が最適化され、色数、架橋剤、および純度がとてもよい。本発明による実施例である。
【0126】
実施例7:臭化トリ-n-オクチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を、事前のドライアイス添加の結果としてCOの後にのみ反応溶液と接触させる
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、オートクレーブ用インサートとしての平底ガラス容器、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
49.56g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-オクチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム(実施例1:臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒の調製と同様にして調製)
0.107g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物を平底ガラス容器に量り入れたが、触媒の量を添加する前に、約6gのドライアイスを平底ガラス容器に入れた。ガラス棒による均質化は行わなかった。混合物が入っている平底ガラス容器を直ちにオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、撹拌のスイッチを入れた。反応するCOを置き換えるために、COを5barまでオートクレーブに持続的に入れた。オートクレーブを段階的に(15分ごとに+10℃)70℃まで加熱した。70℃に到達すると、混合物の反応エンタルピーは、それ以上加熱しなくても混合物を85℃まで昇温させるのに十分であり、温度を75℃に制限する必要がある場合には、逆に水浴で冷却する。5時間の反応時間後に、追加の反応(溶液中に残存する約25質量%のエポキシド)を行うために、オートクレーブを70℃のままにした。約24時間後、油浴を取り外し、反応を冷却し、CO供給を止めた。
【0127】
【表14】
【0128】
本発明による実施例4との関連する相違はない。
【0129】
反応スケールが増加し、ここでも触媒系の配位子が拡張され、CO圧力が最適化され、色数、架橋剤、および純度がとてもよい。本発明による実施例である。
【0130】
実施例8:アセトニトリル中の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム触媒を、CO圧力5barでHPLCポンプを介してオートクレーブに移送:
装置:
2.0リットルのオートクレーブ、オートクレーブ用インサートとしての平底ガラス容器、温度センサー、スターラーモーター、閉ループ温度制御付き油浴、サンプリング用上昇管、フィッティング(<60bar、逆止弁)、天秤、HPLCポンプ(50mlのTIポンプヘッドを備えたKnauer Smartline 100HPLCポンプ)
バッチ:
710.8g(5.00mol)のグリシジルメタクリレート
32.7g(0.10mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-オクチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
0.107g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順:
混合物を平底ガラス容器に量り入れた。混合物が入っている平底ガラス容器を直ちにオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、撹拌のスイッチを入れた。オートクレーブに5barまでCOを入れ、反応するCOを置き換えるために、COリザーバーに開放した。触媒をアセトニトリルに溶解し、5barに加圧したオートクレーブにサンプリングするために、HPLCポンプで上昇管を介して移送した。ポンプおよび導管を1.5当量のデッドボリュームのアセトニトリルでパージした。オートクレーブを段階的に(15分ごとに+10℃)70℃まで加熱した。70℃に到達すると、混合物の反応エンタルピーは、それ以上加熱しなくても混合物を85℃まで昇温させるのに十分であり、温度を75℃に制限する必要がある場合には、逆に水浴で冷却する。5時間の反応時間後に、追加の反応(溶液中に残存する約25質量%のエポキシド)を行うために、オートクレーブを70℃のままにした。約31時間後、油浴を取り外し、反応を冷却し、CO供給を止めた。
【0131】
【表15】
【0132】
本発明による実施例4との関連する相違はない。
【0133】
さらに反応時間が延長されることで、グリシジルメタクリレートが約100ppmの生成物が得られ、結果としてラベル表示の義務がなくなる。
【0134】
実施例9:触媒(臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム)の連続除去
生成物から触媒を分離するために、シリカゲルとの接触で触媒が溶出しないよう、最初に混合物の極性を調整した。様々な無極性溶媒を試験し、グリセロールカーボネートメタクリレートと無限に混和した溶媒を優先した。生成物/溶媒混合物が十分に無極性であるか否かを評価するために、シリカゲルがコーティングされている薄層クロマトグラフィーカード(アルミニウムTLC箔5×7.5cm、シリカゲル60F254)に触媒(アセトニトリル溶液として)を塗布し、その位置に鉛筆で印を付け、次いで試験する溶媒でクロマトグラフを展開した。溶媒の最上端に印を付け、乾燥したTLCカードに10%硝酸銀水溶液を軽く塗った。カードを再び乾燥させてから、254nmおよび365nmのUV光の下で10秒間現像した。すると、触媒または形成されたハロゲン化銀が茶色のスポットとして見える。適切な溶媒の場合、触媒は開始点の印から移動していない。これは、特にトルエン、MTBE、およびジクロロメタンについてのグリセロールカーボネートメタクリレートの場合である。
【0135】
極性を調整するために、ジクロロメタンを用いたシリカゲルを使用するクロマトグラフィーによって生成物を精製した。このようにして得られた無触媒のグリセロールカーボネートメタクリレートを使用して、溶媒(トルエン、MTBE、ジクロロメタンなど)で希釈することにより、極性系列(1:1から1:10(体積部単位での生成物対溶媒))を形成した。シリカゲルがコーティングされている薄層クロマトグラフィーカード(アルミニウムTLC箔5×7.5cm、シリカゲル60F 254)に、触媒(アセトニトリル溶液として)を再度塗布し、その位置に鉛筆で印を付けた。ただし、このTLCカードは、いずれの場合も上で確認した極性系列で展開した。その結果、溶媒自体との混合物としての生成物が、固定シリカゲル相から触媒自体を溶出させないほど十分に無極性である各溶媒の濃度を決定することができた。
【0136】
グリセロールカーボネートメタクリレートの場合、このようにして確認された最小混合比は、トルエン2体積部に対してカーボネート1体積部であり、そのためトルエン中の33.3体積%のグリセロールカーボネートメタクリレートの溶液が得られる。
【0137】
装置:
160.0gのシリカゲル(シリカゲル60[0.035~0.07mm])[乾燥(供給されたままのもの)]
生成物溶液またはMeOH(パージ溶液)の搬送用のHPLCポンプ(チタン製の50mlのポンプヘッドを備えたKNAUER Smartline 100 HPLCポンプ)、圧力開放バルブ(開放圧力:約24bar(Swagelok圧力開放バルブ、公称開口圧力:3.5~24bar)、カラム供給圧力を表示するマノメーター(0~100bar)、ガラスクロマトグラフィーカラム(Goetec Labortechnik GmbH、名称:「SC」600-26、製品番号:G.20253、カラム容量:283~326ml、最大圧力:50bar、フィルターフリット付き入口、フィルターフリット付き出口、およびフィルター[タイプ:F、>25μm=>0.025mm])、サーモスタット(ガラスクロマトグラフィーカラムの温度を制御するため)、ドライブ付き16倍バルブ(時間制御サンプリング用のKnauer SmartLine AWA 30 BK)、天秤(供給物の質量の減少を確認するため)
手順:
カラム温度制御:なし(RT);流量:10ml/分;滞留時間:約21.85分(カラムの容量[305ml]から充填量[160g/1.85g/ml=86.5ml]を引いたものを流量[10.0ml/分]で割ったもの)
MeOHの中に入れたシリカゲルをガラスカラムに移した(充填物の充填高さ:120mm=12ml)。室温でカラム充填物を約670ml(使用可能な容量の3倍)=530gのMeOHで洗い流した(10ml/分)。カラム充填物は、室温で約610ml(使用可能な容量の2.8倍)=530gのトルエンで洗い流す(10ml/分)ことにより準備を整えた。生成物溶液(約740ml、トルエン中の33.3体積%のグリセロールカーボネートメタクリレートの溶液)を、室温で10ml/分でカラムにかけ、得られた溶出液を4分サイクルで回収した。室温でカラム充填物を約610ml(使用可能な容量の2.8倍)=530gのトルエンで洗い流し(10ml/分)、溶出液を4分サイクルで回収した。その後、触媒を約720ml(使用可能な容量の3.3倍)=570gのMeOHで洗い流し(10ml/分)、溶出液を4分サイクルで回収した。
【0138】
【表16-1】
【0139】
【表16-2】
【0140】
【表16-3】
【0141】
シリカゲルプレート(アルミニウムTLC箔5×7.5cm、シリカゲル60F254)に少量の溶出液を塗布し、乾燥後、10%硝酸銀溶液を垂らし、再度乾燥させる。その後のUV光による照射において、触媒または形成されたハロゲン化銀が褐色の点として見えるようになり、その結果、触媒成分を有するバッチが見えるようになる。図5を参照のこと。
【0142】
無触媒の溶出液(10-A6~10-C3)を合わせ(1224.9g)、減圧下(80℃/1mbar)で濃縮した。
【0143】
触媒(臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム)は、連続クロマトグラフィー(連続的に生成物をカラムにかける)によるカラムクロマトグラフィーによって生成物混合物から分離可能であった。このようにして得られた生成物のGC純度は、96.8面積%から97.9面積%に上昇し、HPLC純度は93.6%から96.1%に上昇し、リン含有量は約0.319%から<10ppmに低下し、色数は22から6に低下した。
【0144】
触媒が入っている溶出液(10-C4~10-C11)を合わせ(255.9g)、ロータリーエバポレーター(80℃/1mbar)で濃縮することで、白色の固体を含む淡い黄色味を帯びた液体が得られた。
【0145】
AASまたは31PNMRによるリン含有量:4.45質量%。サンプルには、さらに、多量のグリセロールカーボネートメタクリレートと、グリセロールモノメタクリレート(エポキシドの加水分解生成物)やグリセロールジメタクリレート(二重架橋剤)などの極性不純物とが含まれる。
【0146】
使用したシリカゲル(乾燥形態で160g)から、1回目のパスで250gの濃縮生成物が得られ、繰り返しの2回目のパスで295gの濃縮生成物が得られ(P含有量:<15ppm)、そして3回目のパスでは、生成物フラクションにハロゲン化物が検出される前に、141gの濃縮された2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレート(P含有量:<15ppm)のみが得られた。これは、カラム充填物の貫通(流路形成)を示唆している。カラム充填物をメタノールで洗い流し、固定相を3.0の使用可能な容量の水で洗い流し、固定相を最初にメタノール、次いでトルエンに調整した後、元の容量に回復させることができた。メタノールによる洗浄は極性が十分であるようには思われず、メタノールでは、触媒またはその転化生成物は固定相から不十分にしか流し出されない。
【0147】
実施例10:実施例8の22.5mol(6l)バッチへのスケールアップ
装置:
ベースコンセントタップ付き6.4リットル反応タンク/圧力容器、マノメーター[0~40bar]、データ記録付き圧力センサー、圧力開放バルブ、プロペラスターラー、データ記録付きNiCrNi熱電対、PT100熱電対[内部温度制御]、2×のタップ付き導入口[CO導入、通気]、タップ付き導入口/上昇管[蓋の下約135mm、触媒の添加/サンプリング]、スターラーモーター[粘度が上昇した場合の速度制御とオフスイッチ付き]、低温サーモスタット[内部タンク温度による温度制御]、COバルブ[最大20l/分=約<8bar、逆止弁]、天秤[CO消費量のデータの記録]、触媒添加用のHPLCポンプ[50mlのTIポンプヘッド付き]
バッチ:
3198.4g(22.5mol)のグリシジルメタクリレート
196.4gの臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウムのアセトニトリル溶液
147.3g(0.45mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
49.1gのアセトニトリル
0.48g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順
グリシジルメタクリレートとHQME安定剤とをタンクに入れ、これを閉じて撹拌した(125rpm)。タンクをCOで5barまで加圧し、圧力を5barに一定に保つためにCOリザーバーに開放した。触媒溶液を、HPLCポンプにより上昇管を介してタンクに添加し、導管をもう一度アセトニトリルでタンクに向けて洗い流した。反応混合物を約70℃に加熱した(循環温度:約60℃)。発熱反応は約70℃で開始するものの、あまり目立たない。混合物は3時間以内に70℃から85℃まで段階的に加熱する。温度の上昇のたびにタンク内で発熱が生じる。さらに反応させるために、混合物を90℃まで段階的に加熱した。約35.5時間の反応時間(70~90℃の反応温度)の後、反応を終了した。混合物を通気して取り出した。黄色のわずかに曇ったグリセロールカーボネートメタクリレート(4369.5g=理論値の98.9%)が得られた。
【0148】
【表17】
【0149】
本発明の方法による反応の実施にもかかわらず、反応を再度スケールアップすることはできない。生成物は淡黄色であるものの、架橋剤の区分の仕様を満たしていない。35.5時間の反応時間にもかかわらず、混合物はそれ以上、完全に転化されることはない。その他の点では高品質である架橋剤が形成されたことは、ここでもまた、COの供給不足を示唆している。考えられる原因の1つはCOの反応相への拡散であるため、消費を減らすことでCOの供給の遅さを打ち消すために、これ以降では反応をよりゆっくりと加熱する。
【0150】
最適化されたCO圧力で反応スケールが再度上げられ、許容できる色数であるものの、架橋剤および純度が不十分である。本発明による実施例ではない。
【0151】
実施例11:臭化ホスホニウム触媒30molのバッチ、より低温、異なるスターラー
装置:
ベースコンセントタップ付き6.4リットル反応タンク/圧力容器、マノメーター[0~40bar]、データ記録付き圧力センサー、圧力開放バルブ、プロペラスターラー、データ記録付きNiCrNi熱電対、PT100熱電対[内部温度制御]、2個のタップ付き導入口[CO導入、通気]、タップ付き導入口/上昇管[蓋の下約135mm、触媒の添加/サンプリング]、スターラーモーター[粘度が上昇した場合の速度制御とオフスイッチ付き]、低温サーモスタット[内部タンク温度による温度制御]、COバルブ[最大20l/分=約<8bar、逆止弁]、天秤[CO消費量のデータの記録]、触媒添加用のHPLCポンプ[50mlのTIポンプヘッド付き]
バッチ:
3695.9g(26.0mol)のグリシジルメタクリレート
226.9gの臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウムのアセトニトリル溶液
170.2g(0.52mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
56.7gのアセトニトリル
0.554g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順
グリシジルメタクリレートとHQME安定剤とをタンクに入れ、これを閉じて撹拌した(125rpm)。タンクをCOで5barまで加圧し、圧力を5barで一定に保つためにCOリザーバーに開放した。上昇管を介してHPLCポンプにより触媒溶液をタンクに添加し、導管をもう一度アセトニトリルでタンクに向けて洗い流した。反応混合物を約50℃に加熱した。発熱反応は約50℃の滞留時間中に開始するものの、あまり目立たない(約56℃)。混合物は6時間以内に75℃まで段階的に加熱する。ここでは発熱が観察されない。さらに反応させるために、混合物を80℃まで段階的に加熱した。約28時間の反応時間の後、反応を終了した。混合物を通気して取り出した。黄色のわずかに曇ったグリセロールカーボネートメタクリレート(5086.9g=理論値の98.9%)が得られた。
【0152】
【表18】
【0153】
ここでは反応開始時に温度を管理することのみで、より大きなスケールの反応を行うことも可能である。特に反応の反応初期段階では反応が十分に遅く、CO供給を考慮に入れることが確実な場合には、架橋剤を明らかに減らすことができる。反応はCOガス供給に大きく依存するため、ガス吸引スターラーの使用または下からスパージングする反応タンクの使用が選択肢となる。
【0154】
反応スケールが再度上げられ、CO圧力が最適化され、反応温度が段階的に上げられ、色数、架橋剤、および純度はとてもよい。本発明による実施例である。
【0155】
実施例12:臭化ホスホニウム触媒の除去および再利用;選択性と活性の低下
ベースコンセントタップ付き6.4リットル反応タンク/圧力容器、マノメーター[0~40bar]、データ記録付き圧力センサー、圧力開放バルブ、プロペラスターラー、データ記録付きNiCrNi熱電対、PT100熱電対[内部温度制御]、2個のタップ付き導入口[CO導入、通気]、タップ付き導入口/上昇管[蓋の下約135mm、触媒の添加/サンプリング]、スターラーモーター[粘度が上昇した場合の速度制御とオフスイッチ付き]、低温サーモスタット[内部タンク温度による温度制御]、COバルブ[最大20l/分=約<8bar、逆止弁]、天秤[CO消費量のデータの記録]、触媒添加用のHPLCポンプ[50mlのTIポンプヘッド付き]
バッチ:
3695.9g(26.0mol)のグリシジルメタクリレート
226.9gの臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウムのアセトニトリル溶液
170.2g(0.52mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
56.7gのアセトニトリル
0.554g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順
グリシジルメタクリレートとHQME安定剤とをタンクに入れ、これを閉じて撹拌した(125rpm)。タンクをCOで5barまで加圧し、圧力を5barで一定に保つためにCOリザーバーに開放した。上昇管を介してHPLCポンプにより触媒溶液をタンクに添加し、導管をもう一度アセトニトリルでタンクに向けて洗い流した。反応混合物を約50℃に加熱した。発熱反応は約50℃の滞留時間中に開始するものの、あまり目立たない(約56℃)。混合物は6時間以内に75℃まで段階的に加熱する。ここでは発熱が観察されない。さらに反応させるために、混合物を80℃まで段階的に加熱した。約28時間の反応時間の後、反応を終了した。混合物を通気して取り出した。得られた粗生成エステルを、31P NMRおよびAAS/ICP-MSにより、その触媒含有量について調べ、次いで触媒を分離するために実施例9に従って後処理した。続いて、分離された触媒を用いて反応を繰り返した。
【0156】
【表19】
【0157】
実施例9と同様に、シリカゲルを使用した精製の結果として、最初は(最初の実験で)生成物の純度が向上する。しかしながら、触媒の再利用の結果として、極性不純物が触媒と共に後続のバッチに再度移されるため、それに応じて生成物の品質はクロマトグラフィーなしの、または粗生成物の純度まで戻って低下する約3回目の。触媒のリサイクルから、転化率および選択率の明らかな低下が始まる。それと同時に、沈殿滴定によって決定される可溶性ハロゲン化物の値が低下する。したがって、おそらく有機的に結合した臭化物による、ハロゲン化物のなだらかな減少が存在するようである。臭化物の損失は、これ以降、臭化アンモニウムの添加によって再び補われる。臭化アルキルアンモニウムは触媒溶液中に永続的に残るため、1つの選択肢は臭化アンモニウムの使用である。これは、わずかに生成物の窒素汚染を生じる可能性があるものの、外来の塩で触媒を持続的に希釈することはない。
【0158】
シリカゲルを使用して触媒を分離した後の触媒溶液の組成はおおよそ以下に対応する:
【表20】
【0159】
反応スケールが再度上げられ、CO圧力が最適化され、反応温度が段階的に上げられ、最初は色数、架橋剤および純度はとてもよい。触媒のリサイクルを継続するに伴い、色数、転化率、および純度が低下する。本発明による実施例ではない。
【0160】
実施例13:臭化ホスホニウム触媒の除去および再利用;ハロゲン化物含有量の調整による選択性および活性の保持
ベースコンセントタップ付き6.4リットル反応タンク/圧力容器、マノメーター[0~40bar]、データ記録付き圧力センサー、圧力開放バルブ、プロペラスターラー、データ記録付きNiCrNi熱電対、PT100熱電対[内部温度制御]、2個のタップ付き導入口[CO導入、通気]、タップ付き導入口/上昇管[蓋の下約135mm、触媒の添加/サンプリング]、スターラーモーター[粘度が上昇した場合の速度制御とオフスイッチ付き]、低温サーモスタット[内部タンク温度による温度制御]、COバルブ[最大20l/分=約<8bar、逆止弁]、天秤[CO消費量のデータの記録]、触媒添加用のHPLCポンプ[50mlのTIポンプヘッド付き]
バッチ:
3695.9g(26.0mol)のグリシジルメタクリレート
226.9gの臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウムのアセトニトリル溶液
170.2g(0.52mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
56.7gのアセトニトリル
0.554g(エポキシドを基準として150ppm)のHQME安定剤
5barのCO
手順
グリシジルメタクリレートとHQME安定剤とをタンクに入れ、タンクを閉じて撹拌した(125rpm)。タンクをCOで5barまで加圧し、圧力を5barで一定に保つためにCOリザーバーに開放した。上昇管を介してHPLCポンプにより触媒溶液をタンクに添加し、導管をもう一度アセトニトリルでタンクに向けて洗い流した。反応混合物を約50℃に加熱した。発熱反応は約50℃の滞留時間中に開始するものの、あまり目立たない(約56℃)。混合物は6時間以内に75℃まで段階的に加熱する。ここでは発熱が観察されない。さらに反応させるために、混合物を80℃まで段階的に加熱した。約28時間の反応時間の後、反応を終了した。混合物を通気して取り出した。得られた粗製エステルを、31P NMRおよびAASによりそのリン含有量について調べた。Mohrの沈殿滴定により、可溶性臭化物を測定した。続いて、触媒を分離するために、実施例9に従って粗製エステルを後処理した。分離した触媒溶液を、臭化アンモニウムの添加により、リン含有量に対して必要な化学量論に調整し、このようにして得た触媒溶液をその後の実験で使用した。
【0161】
【表21】
【0162】
反応スケールが再度上げられ、CO圧力が最適化され、反応温度が段階的に上げられ、最初は色数、架橋剤および純度はとてもよく、また触媒を繰り返しリサイクルした後もそのままである。本発明による実施例である。
【0163】
実施例14:イソブテンオキシドの例を使用する理想的な反応パラメータを用いた臭化トリブチルホスホニウム触媒
装置:
ベースコンセントタップ付き6.4リットル反応タンク/圧力容器、マノメーター[0~40bar]、データ記録付き圧力センサー、圧力開放バルブ、プロペラスターラー、データ記録付きNiCrNi熱電対、PT100熱電対[内部温度制御]、2個のタップ付き導入口[CO導入、通気]、タップ付き導入口/上昇管[蓋の下約135mm、触媒の添加/サンプリング]、スターラーモーター[粘度が上昇した場合の速度制御とオフスイッチ付き]、低温サーモスタット[内部タンク温度による温度制御]、COバルブ[最大20l/分=約<8bar、逆止弁]、天秤[CO消費量のデータの記録]、触媒添加用のHPLCポンプ[50mlのTIポンプヘッド付き]
バッチ:
2882.4g(40.0mol)のイソブテンオキシド
348.2gの臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウムのアセトニトリル溶液
261.8g(0.8mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
86.4gのアセトニトリル
5barのCO
手順
イソブテンオキシドをタンクに入れ、タンクを閉じて撹拌した(125rpm)。タンクをCOで5barまで加圧し、圧力を5barで一定に保つためにCOリザーバーに開放した。上昇管を介してHPLCポンプにより触媒溶液をタンクに添加し、導管をもう一度アセトニトリルでタンクに向けて洗い流した。反応混合物を約50℃に加熱した。発熱反応は50℃での滞留時間中に開始するものの、あまり目立たない。混合物は6時間以内に75℃まで段階的に加熱する。さらに反応させるために、混合物を80℃まで段階的に加熱した。約28時間の反応時間の後、反応を終了した。混合物を通気して取り出した。無色のイソブチルカーボネート(4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン)(4974g=理論値の99.6%)が得られた。
【0164】
【表22】
【0165】
触媒塩は不揮発性であるため、触媒による汚染はGCでは見えない。したがって、実際の純度はそれより低い。
【0166】
99%を超える収率と優れた色数の優れた反応である。この生成物は、グリセロールカーボネートメタクリレートよりもかなり労力が少ない。このプロセスは、他のエポキシドにも問題なく適用可能である。本発明による実施例である。
【0167】
実施例15:イソブテンオキシドの例を使用した触媒のリサイクル
ベースコンセントタップ付き6.4リットル反応タンク/圧力容器、マノメーター[0~40bar]、データ記録付き圧力センサー、圧力開放バルブ、プロペラスターラー、データ記録付きNiCrNi熱電対、PT100熱電対[内部温度制御]、2個のタップ付き導入口[CO導入、通気]、タップ付き導入口/上昇管[蓋の下約135mm、触媒の添加/サンプリング]、スターラーモーター[粘度が上昇した場合の速度制御とオフスイッチ付き]、低温サーモスタット[内部タンク温度による温度制御]、COバルブ[最大20l/分=約<8bar、逆止弁]、天秤[CO消費量のデータの記録]、触媒添加用のHPLCポンプ[50mlのTIポンプヘッド付き]
バッチ:
2882.4g(40.0mol)のイソブテンオキシド
348.2gの臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウムのアセトニトリル溶液
261.8g(0.8mol=エポキシドを基準として2mol%)の臭化トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)ホスホニウム
86.4gのアセトニトリル
5barのCO
手順
イソブテンオキシドをタンクに入れ、タンクを閉じて撹拌した(125rpm)。タンクをCOで5barまで加圧し、圧力を5barで一定に保つためにCOリザーバーに開放した。上昇管を介してHPLCポンプにより触媒溶液をタンクに添加し、導管をもう一度アセトニトリルでタンクに向けて洗い流した。反応混合物を約50℃に加熱した。発熱反応は50℃での滞留時間中に開始するものの、あまり目立たない。混合物は6時間以内に75℃まで段階的に加熱する。さらに反応させるために、混合物を80℃まで段階的に加熱した。約28時間の反応時間の後、反応を終了した。混合物を通気して取り出した。無色のイソブチルカーボネートが得られ、触媒を分離するためにこれを実施例9に従って後処理した。分離した触媒溶液を、31P NMRおよびAASによりそのリン含有量(0.5質量%)について調べた。Mohrの沈殿滴定により可溶性臭化物(1.28質量%)を決定し、各実験後に臭化アンモニウムを添加することによってこれらをリン含有量に対して計算された化学量論量に調整した。このようにして得た触媒をその後の実験で触媒として再利用した。
【0168】
【表23】
【0169】
99%を超える収率と優れた色数の優れた反応である。この生成物は、触媒のリサイクルを繰り返しても、グリセロールカーボネートメタクリレートよりもかなり労力が少ない。このプロセスは、他のエポキシドにも問題なく適用可能である。本発明による実施例である。
【0170】
好ましい項目
項目1.エポキシドが転化される前の触媒に対するCOのモル比が>0.01であることを特徴とする、環状有機カーボネートの製造方法。
【0171】
項目2.まずCOの存在下でエポキシドを装入してから触媒を添加することを特徴とする、項目1記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0172】
項目3.前記反応のスケールが5molより大きいことを特徴とする、項目1記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0173】
項目4.前記反応の温度が90℃未満であることを特徴とする、項目1記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0174】
項目5.前記温度を段階的に上げることを特徴とする、項目4記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0175】
項目6.まずCOの存在下でグリシジル(メタ)アクリレートを装入してから触媒を添加することを特徴とする、グリセロールカーボネート(メタ)アクリレートの製造方法。
【0176】
項目7.前記反応の温度が90℃未満であることを特徴とする、項目6記載のグリセロールカーボネート(メタ)アクリレートの製造方法。
【0177】
項目8.前記COの分圧が、1~10bar、好ましくは2~8bar、より好ましくは3~7barであることを特徴とする、項目1から5までのいずれか1つに記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0178】
項目9.前記触媒が、臭化トリアルキルヒドロキシアルキルホスホニウムおよびハロゲン化トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムの群から、好ましくは臭化トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムの群から選択され、より好ましくは臭化トリブチルヒドロキシエチルホスホニウムであることを特徴とする、項目1から5までのいずれか1つに記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0179】
項目10.前記触媒を前記反応混合物から分離することを特徴とする、項目1から5までのいずれか1つに記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0180】
項目11.前記触媒を少なくとも1つの追加の反応に供給することを特徴とする、項目10記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0181】
項目12.可溶性ハロゲン化物塩を添加することにより、前記ハロゲン化物成分を元の化学量論量に調整することを特徴とする、項目10または11記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0182】
項目13.可溶性ハロゲン化物塩を添加することによりハロゲン化物成分を元の化学量論量に調整し、これを少なくとも1つの追加の反応に供給することを特徴とする、項目10から12までのいずれか1つに記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0183】
項目14.前記触媒を、臭化アンモニウム、臭化アルキルホスホニウム、臭化ヒドロキシアルキルアンモニウム、臭化ヒドロキシアルキルホスホニウム、臭化アルキルスルホニウムの群から選択される臭化物塩の添加により再活性化させることを特徴とする、項目10から13までのいずれか1つに記載の環状有機カーボネートの製造方法。
【0184】
項目15.極性固定相に通して濾過することにより触媒塩が吸収される程度に溶媒を添加することで生成物溶液の極性を低下させ、結果として前記生成物を前記触媒から連続的に分離することを特徴とする、触媒塩の除去方法。
【0185】
項目16.前記生成物の色数が、<500、より好ましくは<100、より好ましくは<50である、項目1から14までに従って製造された環状有機カーボネート。
【0186】
項目17.最終生成物中の不飽和エポキシドの濃度が1000ppm未満である、項目1から14までに従って製造された環状有機カーボネート。
【0187】
項目18.最終生成物中のジメタクリレート副生成物の含有量が1質量%未満である、項目1から14までに従って製造された環状有機カーボネート。
図1
図2
図3
図4
図5