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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
F02M25/08 311F
F02M25/08 311E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021069775
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164345
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-264273(JP,A)
【文献】米国特許第5861050(US,A)
【文献】特許第6591955(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、
前記1又は複数の室の各々に配される、燃料蒸気を吸着する吸着材と、
前記車両の燃料タンクから、前記1又は複数の室に前記燃料蒸気を流入させる流入ポートと、
前記車両の外部から、前記1又は複数の室に大気を流入させる大気ポートと、
前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した前記燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させる流出ポートと、
棒状の複数の棒状部、及び複数の結合部を有する調整部材と、
を備え、
前記1又は複数の室のうちの少なくとも1つは、前記流入ポート、前記大気ポート及び前記流出ポートのうちの少なくとも1つのポートが接続された対象室であり、
前記調整部材は、前記対象室に前記吸着材と共に配されており、
前記対象室には、前記少なくとも1つのポート側の領域である緩衝領域が設けられ、
前記大気及び前記燃料蒸気の流れ方向と直交する断面に関して、前記緩衝領域の前記断面における前記棒状部の面積は、前記緩衝領域よりも前記少なくとも1つのポートから離れた位置の前記断面における前記棒状部の面積よりも小さくなるように構成され、
前記複数の結合部は、前記複数の棒状部の長手方向の異なる複数の位置に分散して配置され、それぞれの結合部が前記複数の棒状部の一部を連結することで、前記複数の棒状部を一体の部材として結合させるように構成された、キャニスタ。
【請求項2】
エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、
前記1又は複数の室の各々に配される、燃料蒸気を吸着する吸着材と、
前記車両の燃料タンクから、前記1又は複数の室に前記燃料蒸気を流入させる流入ポートと、
前記車両の外部から、前記1又は複数の室に大気を流入させる大気ポートと、
前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した前記燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させる流出ポートと、
棒状の複数の棒状部、及び複数の結合部を有する調整部材と、
を備え、
前記1又は複数の室のうちの少なくとも1つは、前記流入ポート、前記大気ポート及び前記流出ポートのうちの少なくとも1つのポートが接続された対象室であり、
前記調整部材は、前記対象室に前記吸着材と共に配されており、
前記対象室には、前記少なくとも1つのポート側の領域において前記調整部材が配置されない領域であるである緩衝領域が設けられ、
前記複数の結合部は、前記複数の棒状部の長手方向の異なる複数の位置に分散して配置され、それぞれの結合部が前記複数の棒状部の一部を連結することで、前記複数の棒状部を一体の部材として結合させるように構成された、キャニスタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記調整部材には、第1当接部が設けられ、
前記対象室の側壁には、前記第1当接部と当接し、前記対象室の内部における前記調整部材の位置を固定する第2当接部が設けられる、キャニスタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記対象室の側壁には、前記調整部材と当接することで、前記調整部材が前記少なくとも1つのポート側に移動するのを抑制する当接面が形成されている、キャニスタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記調整部材は前記対象室に圧入されている、キャニスタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記対象室は前記大気ポートが接続された室である、キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭等の吸着材が配されたキャニスタが知られている。特許文献1には、吸着材と共に配置される調整部材を有するキャニスタが開示されている。調整部材は、細長い複数の棒状部と結合部とを有している。結合部は、複数の棒状部の一端に設けられ、複数の棒状部を一体の部材として結合させる。各棒状部の付近では、流入した燃料蒸気、及び、パージエアが流れ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6591955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャニスタにおける吸着材が充填される室の広さ方向(つまり、ガス流れ方向と直交する方向)に関して、ガス流速の一様度が高いほど、燃料蒸気の吸着性能が高くなる。なぜならば、流速の大きい箇所に配置された吸着材は、早期に多くの燃料蒸気を吸着することとなるため、早期に吸着可能量が小さくなる。そのため、他の位置に配置された吸着材の吸着可能量に余裕があっても、その流速の大きい箇所では燃料蒸気が吸着されずに破過してしまうためである。ここで、ガス流速の一様度は、ガス流れ方向と直交する方向の断面において調整部材の占める割合が大きいほど低くなる。特許文献1のキャニスタでは、通気抵抗は十分に低下されている。しかしながら、燃料蒸気の破過をより低減することが望まれる。
【0005】
本開示の一局面は、燃料蒸気の破過を抑制しつつ、キャニスタの通気抵抗を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、吸着材と、流入ポートと、大気ポートと、流出ポートと、調整部材と、を備える。吸着材は、1又は複数の室の各々に配され、燃料蒸気を吸着する。流入ポートは、車両の燃料タンクから、1又は複数の室に燃料蒸気を流入させる。大気ポートは、車両の外部から、1又は複数の室に大気を流入させる。流出ポートは、大気ポートから流入した大気により、吸着材に吸着した燃料蒸気をエンジンに向けて流出させる。調整部材は、棒状の複数の棒状部を有する。1又は複数の室のうちの少なくとも1つは、流入ポート、大気ポート及び流出ポートのうちの少なくとも1つのポートが接続された対象室である。調整部材は、対象室に吸着材と共に配されている。対象室には、少なくとも1つのポート側の領域である緩衝領域が設けられる。大気及び燃料蒸気の流れ方向と直交する断面に関して、緩衝領域の断面における棒状部の面積は、緩衝領域よりも少なくとも1つのポートから離れた位置の断面における棒状部の面積よりも小さい。
【0007】
このような構成によれば、少なくとも1つのポートに通じる側の緩衝領域に配置される調整部材が少ないため、緩衝領域において大気及び燃料蒸気の流れの一様度を高く保つことができる。もし仮に、上述した一様度が低く、調整部材の近傍を相対的に多くの燃料蒸気が通過する場合では、調整部材近傍の吸着材が破過してこれ以上吸着できない状態に、相対的に早期に到達してしまう。しかし、上記構成であれば、吸着材に吸着されずに緩衝領域を通過してしまう燃料蒸気の量を良好に低減できる。ここで、緩衝領域がポートに通じる側にある場合、緩衝領域がポートに通じる側にない場合と比較して燃料蒸気の破過をより低減することが可能となる。よって、燃料蒸気の破過を抑制しつつ、キャニスタの通気抵抗を抑制することができる。
【0008】
本開示の一態様では、緩衝領域とは、調整部材が配置されない領域であってもよい。このような構成によれば、緩衝領域に調整部材が配置されないため、棒状部による一様度の低下を好適に抑制できる。よって、より好適に燃料蒸気の破過を抑制できる。
【0009】
本開示の一態様では、調整部材には、第1当接部が設けられてもよい。対象室の側壁には、第1当接部と当接し、対象室の内部における調整部材の位置を固定する第2当接部が設けられてもよい。このような構成によれば、第1当接部と第2当接部とを当接させることで調整部材を所定の位置に固定することができる。よって、調整部材がポート側にずれてしまい、それにより緩衝領域が小さくなってしまうことを抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様では、対象室の側壁には、調整部材と当接することで、調整部材が少なくとも1つのポート側に移動するのを抑制する当接面が形成されていてもよい。このような構成によれば、調整部材がポート側に移動するのを抑制することができる。よって、調整部材がポート側にずれてしまい、それにより緩衝領域が小さくなってしまうことを抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様では、調整部材は対象室に圧入されていてもよい。このような構成によれば、取り付けた位置から調整部材がずれるのを抑制することができる。よって、調整部材がポート側にずれてしまい、それにより緩衝領域が小さくなってしまうことを抑制することができる。また、圧入することにより、調整部材を差し込むだけで、簡便に固定することができる。
【0012】
本開示の一態様では、対象室は大気ポートが接続された室であってもよい。このような構成によれば、大気ポートの近くに緩衝領域が設けられため、燃料蒸気が吸着材に吸着されずに対象室を通過して大気ポートから大気中に放出されてしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のキャニスタを側方から見た断面図である。
図2】第1当接部及び第2当接部を説明するための図である。
図3図3A,3Bは、変形例の調整部材の斜視図である。
図4図4A~4Fは、変形例の調整部材の斜視図である。図4Gは、ペレットの斜視図である。
図5】実施形態のキャニスタの第2室の内部空間を概略的に示した図1のV-V断面図である。
図6】変形例のキャニスタを側方から見た断面図である。
図7】変形例の第2当接部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す実施形態のキャニスタ1は、エンジンを有する車両に搭載される。以後、キャニスタ1が搭載された車両を、自車両と記載する。キャニスタ1は、合成樹脂製の容器10を有する。容器10は、内部空間を有する第1室20及び第2室30を備える。各室の内部空間には、燃料蒸気を吸着するための吸着材60が配される。吸着材60は、粉状又は粒状の複数の物体の集合体である。複数の物体とは、例えば、活性炭であっても良いし、活性炭から生成された物体であっても良い。また、複数の物体とは、例えば、燃料蒸気を吸着できるものであれば、活性炭以外の物質であっても良い。
【0015】
容器10の一端には、流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられている。流入ポート11及び流出ポート12は、第1室20の内部空間と容器10の外部とを繋ぐ。また、大気ポート13は、第2室30の内部空間と容器10の外部とを繋ぐ。
【0016】
流入ポート11は、自車両の燃料タンクに接続され、キャニスタ1の各室に燃料蒸気を流入させる。燃料タンクには、自車両のエンジンに供給される燃料が蓄積されている。該燃料から生じた燃料蒸気は、流入ポート11を介してキャニスタ1の内部に流入し、各室に配された吸着材に吸着する。これにより、キャニスタ1の内部に燃料が蓄積される。
【0017】
また、流出ポート12は、自車両のエンジンの吸気管に接続されている。流出ポート12は、大気ポート13から流入した大気により、吸着材60に吸着した燃料蒸気をエンジンに向けて流出させる。また、大気ポート13は、自車両の外部に繋がっている。そして、エンジンの吸気負圧により、大気ポート13を介して大気(以後、パージエア)がキャニスタ1の各室に流入する。パージエアの流入により、吸着材に吸着した燃料が脱離する。脱離した燃料は、パージエアと共に流出ポート12から吸気管に向けて流出する。これにより、活性炭に吸着していた燃料が除去され、活性炭が再生される。このようにして活性炭を再生することは、パージと呼ばれている。
【0018】
次に、キャニスタ1の構成について詳しく説明する。以後、キャニスタ1の容器10における流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられた側を、ポート側と記載する。また、容器10は、ポート側の反対側に開口を有している。該開口は、蓋部材14により閉鎖されている。以後、ポート側の反対側(換言すれば、蓋部材14が設けられた側)を、蓋側と記載する。
【0019】
第1室20及びその内部空間は、一例として、略直方体形状、又は、円柱状である。該内部空間は、ポート側の端部が、流入ポート11及び流出ポート12に繋がっている。また、該内部空間のポート側の端部と蓋側の端部とには、それぞれ、フィルタ21,22が配されている。これらのフィルタ21,22の間は、吸着材60が配されている。なお吸着材60はフィルタ21,22の間の空間全体に充填されているが、一部の吸着材60のみを図示する。他の室についても同様である。
【0020】
また、第1室20の内部空間は、蓋側の端部が連通路15に繋がっている。連通路15は、蓋部材14に沿って延び、第1室20の内部空間と第2室30の内部空間とを繋ぐ。そして、第1室20の蓋側のフィルタ22と連通路15との間には、透過性を有する多孔板23が配されている。また、多孔板23と蓋部材14との間には、コイルばね16が配されている。コイルばね16は、多孔板23をポート側に向けて押し付けている。このため、キャニスタ1の内部では、流体は、連通路15を介して、第1室20の内部空間と第2室30の内部空間とを往来できる。
【0021】
第2室30及びその内部空間は、連通路15から大気ポート13に延びる細長い形状を有する。本実施形態では、第2室30及びその内部空間は、一例として直方体状である。しかし、第2室30及びその内部空間は、他の形状を有していても良い。一例として、第2室30及びその内部空間は、円柱状であっても良い。
【0022】
第2室30の内部空間は、ポート側の端部が大気ポート13に繋がっている。また、第2室30の蓋側の端部、及び、ポート側の端部には、それぞれ、フィルタ31,41が配されている。そして、第2室30の内部空間におけるフィルタ31,41の間には、吸着材60が配されている。
【0023】
また、第2室30の蓋側に配されたフィルタ31と連通路15との間には、透過性を有する多孔板32が配されている。そして、多孔板32と蓋部材14との間には、コイルばね17が配されている。コイルばね17は、多孔板32をポート側に向けて押し付けている。
【0024】
図2Aに示されるように、第2室30の側壁44には、第2当接部91が設けられる。側壁44とは、第2室30の内部空間(以後、第2空間42)の側面に接する壁部である。図2A,2Cでは、上側が蓋側であり、下方がポート側である。第2当接部91は、第2室30の側壁44の蓋側寄りの位置に設けられる。第2当接部91は、後述する第1当接部90と当接し、後述する調整部材50の位置を決める。本実施形態では、第2当接部91として、スリットが形成されている。
【0025】
[1-2.調整部材]
本開示のキャニスタ1において、当該キャニスタに設けられた1又は複数の室のうちの少なくとも1つが対象室となる。対象室とは、吸着材と共に調整部材50が配される室である。また対象室とは、流入ポート11、流出ポート12及び大気ポート13のうちの少なくとも1つのポートが接続されている室である。本実施形態では、一例として、第2室30が対象室となっており、対象室には、大気ポート13が接続されている。無論、第2室30に替えて、第1室20が対象室であっても良い。第1室20及び第2室30の両方が対象室であっても良い。以下では、第2室30に配された調整部材50について説明する。
【0026】
図1に示すように、第2室30の内部空間である第2空間42には、吸着材60と共に調整部材50が配される。
図2Bに示すように、調整部材50は、棒状の複数の棒状部51と結合部52とを有する。
【0027】
複数の棒状部51は、直線状、又は、略直線状に延びる。略直線状とは、全体としておおよそ直線状である形態を意味する。例えば、棒状部51の一部又は全部が小さい曲率で曲がっていても良い。別の言い方をすると、複数の棒状部51が一見して直線状であるように見えるものが含まれる。また、複数の棒状部51は、同一方向、又は、略同一方向に延びる。より詳しくは、複数の棒状部51は、第2室30のポート側から蓋側に向かう方向、又は、該方向と略同一の方向に延びる。換言すれば、複数の棒状部51は、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向、又は、該方向と略同一の方向に沿って配置される。すなわち、複数の棒状部51の長手方向が、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向と同一であっても良いし、当該方向に対して小さい角度を有していても良い。
【0028】
また、各棒状部51は、一例として、図1、2Bのように円柱状となっている。しかし、各棒状部51は、他の形状であっても良い。具体的には、図3A,3Bのように、棒状部51は先端ほど徐々に直径が小さくなる形状であってもよい。また例えば、各棒状部51は多角柱状であっても良い。より詳しくは、各棒状部51は、図4Aのように三角柱状であっても良いし、図4B,4Cのように、底面が正方形又は長方形である四角柱状であっても良い。また、各棒状部51は、例えば、図4Dのように底面が楕円である円柱状であっても良い。また、各棒状部51は、例えば、図4Eのように帯状の形状を有していても良いし、図4Fのように先細りの形状を有していても良い。
【0029】
一方、結合部52は、複数の棒状部51に分散して設けられ、複数の棒状部51を一体の部材として結合させる。本実施形態では、結合部52は、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向に関して、異なる2つの位置に分散して配置される。
【0030】
また、各棒状部51の周囲の空間(換言すれば、側方の空間)は、互いに連通した状態となる。すなわち、各棒状部51は、他の棒状部に対し一定以上の距離を隔てて配されている。このため、第2空間42には、複数の棒状部51により囲まれることにより、第2空間42における他の空間から隔離された状態となる空間が存在しない。
【0031】
また、図5に示すように、複数の棒状部51は、第2室30の長手方向に直交する断面に沿って、均等又は略均等に分布するように配される。また、複数の棒状部51は、第2空間42の側面に接する壁部である側壁44から一定以上の距離を隔てた状態で配される。また、複数の棒状部51は、第2空間42の幅方向の中央、及び、中央周辺を通過する状態で配される。
【0032】
また、図2Bに示すように、調整部材50には、第1当接部90が設けられる。本実施形態では、第1当接部90は、複数の棒状部51のうちの所定の棒状部から突出する板状の部位である。第1当接部90は、調整部材50の所定の2箇所に設けられる。図2Cに示すように、第1当接部90は、第2当接部91のスリットに圧入されることにより位置決めされている。ここでいう圧入とは、相対的に小さな幅の空間に、相対的な大きな幅のものを挿入すること、又は、同じ大きさの幅のものを挿入することである。これにより、空間を形成する被挿入体と、空間に入る挿入体と、の間に摩擦力が生じ、挿入体の脱落が抑制される。本実施形態では、第2空間42の幅よりも僅かに大きい調整部材50を第2室30に圧入すると共に、スリットの幅よりも幅の大きな第1当接部90をスリットに嵌め込んで圧入する。これにより、第1当接部90が第2当接部91のスリットから抜けることを抑制することができる。また、スリットに第1当接部90が嵌め込まれることにより、調整部材50の位置が決まる。なお、図2Bでは1つの棒状部51に1つの第1当接部90が設けられる構成を例示した。しかしながら第1当接部90は、例えば図3A,3Bに示すように、2つの棒状部51から延び出す板が合流して、断面が略Y字状の形状となる構成であってもよい。
【0033】
また、図1に示すように、第2室30は、第2空間42のポート側の領域に、緩衝領域93を備える。本実施形態では、緩衝領域93とは、複数の棒状部51が配置されない領域である。一例として、フィルタ41の下方10mmの位置よりも上の部分の全域を空けて、調整部材50が配される。パージエア及び燃料蒸気の流れ方向に関して、緩衝領域93は、調整部材50が配される領域よりも狭くなっている。なお、複数の棒状部51が配置されない領域は、例えば2mm程度であっても良いし、吸着材60の粒や粉の平均粒径程度であっても良い。また、緩衝領域93は、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向に関して、対象室の長さの30%以下となるように対象室のポート側に設けられていても良い。
【0034】
なお、第2室30に配される吸着材60は、予め定められた形状を有する粒状の複数の物体の集合体であっても良い。具体的には、例えば、吸着材60は、複数のペレット61の集合体であっても良い。ペレット61とは、粒状の活性炭である。ペレット61は、粉状の活性炭をバインダと共に混練し、所定の形状に成形することで生成される。なお、図4Gに示すように、本実施形態では、ペレット61は、一例として円柱状となっている。そして、ペレット61の底面の径は、一例として2mm程度であっても良い。また、ペレット61の2つの底面の間隔(換言すれば、長さ)は、一例として3~5mm程度であっても良い。なお、ペレット61は、他の形状を有していても良い。また、第2室30には、例えば、粉状の活性炭等、ペレット61以外の吸着材が配されても良い。
【0035】
そして、隣り合う複数の棒状部51の間隔(一例として、図5のD0)は、ペレット61のサイズに基づき定められる。具体的には、該間隔は、例えば、ペレット61の底面の径、又は、ペレット61の長さのいずれかよりも長くても良い。
【0036】
また、各棒状部51の側部と第2空間42の側壁44との間の距離(一例として、図5のD1)の最小値もまた、ペレット61のサイズに基づき定められる。具体的には、該最小値は、例えば、ペレット61の底面の径、又は、ペレット61の長さのいずれかよりも長くても良い。換言すれば、複数の棒状部51のうちの最も外側に位置する1又は複数の棒状部の側面と、第2空間42の側壁44との間の距離は、例えば、ペレット61の底面の径、又は、ペレット61の長さのいずれかよりも長くても良い。
【0037】
ここで、第2空間42において、燃料又はパージエア等の流体の流下方向(換言すれば、第2空間42の蓋側の端面とポート側の端面とが対面する方向)に直交する断面を、交差断面とする。図5の42aは、第2空間42の交差断面を示している。また、交差断面における複数の棒状部51の断面の面積の総和を、総和断面面積とする。なお、図5の51aは、交差断面42a上の棒状部51の断面を示している。そして、複数の棒状部51の数、及び、各棒状部51の太さは、総和断面面積が、交差断面42aの全体面積の1%以上30%以下となるように構成されていても良い。これにより、第2室30にて、燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、通気抵抗を抑制できる。
【0038】
なお、一例として、図5に示された交差断面42aにおいては、総和断面面積は、交差断面42aの全体面積の7.5%程度となっている。
また、本実施形態では、第2空間42は、幅が一定である細長い空間である。また、各棒状部51は、円柱状であり、その幅が一定である。つまり、第2空間42のいずれの位置に交差断面42aを設けたとしても、交差断面42aの大きさ、及び、各棒状部51の断面の大きさは、一定となる。
【0039】
しかし、第2空間42の幅、及び/又は、各棒状部51の幅は、一定でなくても良い。つまり、第2空間42のどの位置に交差断面42aを設けるかによって、交差断面42aの大きさ、及び/又は、各棒状部51の断面の大きさが、変動しても良い。そして、このような場合においても、複数の棒状部51の数、及び、各棒状部51の太さは、どの場所に交差断面を設けても、総和断面面積が、交差断面42aの全体面積の1%以上30%以下となるように構成されていても良い。本実施形態の緩衝領域93においては、総和断面面積は交差断面42aの全体面積の0%となるように構成されており、緩衝領域93にはペレット61が敷き詰められている。なお、緩衝領域93における総和断面面積は、緩衝領域93以外における総和断面面積よりも小さければ良い。
【0040】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)キャニスタ1は、複数の棒状部51が配置されない緩衝領域93を備える。このような構成によれば、複数の棒状部51による一様度の低下を好適に抑制できる。よって、より好適に燃料蒸気の破過を抑制できる。
【0041】
(1b)調整部材50は第1当接部90を備え、第2室30の側壁44には第2当接部91が設けられる。このような構成によれば、第1当接部90と第2当接部91とを当接させることで調整部材50を所定の位置に固定することができる。よって、調整部材50がポート側にずれてしまい、それにより緩衝領域93が小さくなってしまうことを抑制することができる。
【0042】
(1c)調整部材50は第2室30に圧入される。このような構成によれば、取り付けた位置から調整部材50がずれるのを抑制することができる。よって、調整部材50がポート側にずれてしまい、それにより緩衝領域93が小さくなってしまうことを抑制することができる。また、圧入することにより、調整部材50を差し込むだけで、簡便に固定することができる。
【0043】
(1d)隣り合う複数の棒状部51の間隔は、ペレット61のサイズに基づき定められる。これにより、各棒状部51の間に適度な間隔が設けられる。その結果、各棒状部51の間の空間全体に、複数のペレット61が行き渡る。このため、該空間を充填する複数のペレット61の中に、過度に大きい隙間が生じるのが抑制される。したがって、該空間が、複数のペレット61により適度に充填される。
【0044】
(1e)複数の棒状部51の各々における側部と、第2空間42の側壁44との間の距離の最小値は、ペレット61のサイズに基づき定められる。これにより、各棒状部51と該側壁44との間に、適度な間隔が設けられる。その結果、各棒状部51と該側壁44との間の空間全体に、複数のペレット61が行き渡る。このため、該空間を充填する複数のペレット61の中に、過度に大きい隙間が生じるのが抑制される。したがって、該空間が複数のペレット61により適度に充填される。
【0045】
(1f)複数の棒状部51の数、及び、各棒状部51の太さは、総和断面面積が、第2空間42の交差断面42aの全体面積の1%以上30%以下となるように構成されている。このため、第2室30において、燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、通気抵抗を抑制できる。なお、緩衝領域93における総和断面面積が緩衝領域93以外における総和断面面積の3分の1以下であれば、顕著に上記(1a)の効果が向上する。本実施形態のように、緩衝領域93以外における総和断面面積が交差断面42aの全体面積の7.5%程度の場合では、緩衝領域93における総和断面面積は、交差断面42aの全体面積の2.5%以下のときに顕著に効果が向上する。
【0046】
(1g)緩衝領域93は、大気ポート13が接続された第2室30に設けられる。このような構成によれば、大気ポート13の近くに緩衝領域93が設けられるため、燃料蒸気が吸着材60に吸着されずに対象室を通過して大気ポート13から大気中に放出されてしまうのを抑制することができる。
【0047】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0048】
(2a)上記実施形態では、キャニスタ1は、2つの室を有する。しかし、1つの室、又は、3つ以上の室を有するキャニスタにおいても、少なくとも1つの室を、調整部材50が配される対象室として構成しても良い。例えば図6に示すように、キャニスタ1が3つの室を有する場合を例示する。第2室300及び第3室40は、第1室20に隣接して配され、蓋側からポート側に延びる細長い形状を有する。第2室300及び第3室40は、端部が隣接した状態で、蓋側からポート側に並ぶ。第2室300の内部空間と第3室40の内部空間とは、板状の仕切り部材18により隔てられている。仕切り部材18は、透過性を有している。仕切り部材18は、例えば、多孔板及び/又はフィルタ等を含んでいても良い。このため、キャニスタ1の内部では、流体は、仕切り部材18を通過して、第2室300の内部空間と第3室40の内部空間とを往来できる。第3室40の内部空間は、ポート側の端部が大気ポート13に繋がっている。本変形例では、第3室40が対象室となっている。第3室40の内部空間(第3空間43)には、吸着材60と共に調整部材56が配される。調整部材56の構成は、上記実施形態の調整部材50と同様である。
【0049】
(2b)上記実施形態では、複数の棒状部51は、燃料蒸気及びパージエアの流下方向に沿って延びた状態で、少なくとも1つの対象室に配される。また、複数の棒状部51は、直線状又は略直線状に延びる。しかしながら、複数の棒状部51は、例えば、1か所以上で湾曲又は屈曲した状態で、流下方向に延びていても良い。また、複数の棒状部51は、例えば、流下方向に螺旋状に延びていても良い。また、複数の棒状部51は、それぞれ、異なる形状を有していても良い。
【0050】
また、複数の棒状部51は、燃料蒸気及びパージエアの流下方向とは異なる方向に沿って延びていても良い。また、複数の棒状部51の各々が延びる方向は、互いに異なっていても良い。また、複数の棒状部51の各々は、2種類以上の方向のうちのいずれかに沿って延びていても良い。
【0051】
(2c)上記実施形態では、大気ポート13側に緩衝領域93が設けられる構成を例示した。しかし、緩衝領域が設けられる位置はこれに限定されるものではない。例えば、緩衝領域93は、流入ポート11側又は流出ポート12側が配される室に設けられても良い。より詳しくは、図1の第1室20の内部空間には、調整部材が備えられていても良い。調整部材は、流入ポート11又は流出ポート12から離れた位置に配されていても良い。例えば、フィルタ21の下方10mmの位置よりも上の部分の全域を空けて、調整部材50が配されていても良い。
【0052】
(2d)上記実施形態では、緩衝領域93に調整部材50が配置されない構成を例示した。しかし、緩衝領域の構成はこれに限定されるものではない。緩衝領域93は、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向と直交する断面に関して、緩衝領域93の断面における棒状部51の面積が、緩衝領域93よりも大気ポート13から離れた位置の断面における棒状部51の面積よりも小さければ良い。例えば、緩衝領域93は、大気ポート13から離れた位置と比較して相対的に複数の棒状部51の数が少ない構成であっても良い。また、緩衝領域93は、大気ポート13から離れた位置と比較して相対的に複数の棒状部51の太さが細くなっている構成であっても良い。
【0053】
このような構成によれば、大気ポート13に通じる側の緩衝領域93に配置される複数の棒状部51が少ないため、緩衝領域93においてパージエア及び燃料蒸気の流れの一様度を高く保つことができる。もし仮に、上述した一様度が低く、調整部材50の近傍を相対的に多くの燃料蒸気が通過する場合では、調整部材50近傍の吸着材60が破過してこれ以上吸着できない状態に、相対的に早期に到達してしまう。しかし、上記構成であれば、吸着材60に吸着されずに緩衝領域93を通過してしまう燃料蒸気の量を良好に低減できる。ここで、緩衝領域93がポートに通じる側にある場合、緩衝領域93がポートに通じる側にない場合と比較して燃料蒸気の破過をより低減することが可能となる。よって、燃料蒸気の破過を抑制しつつ、キャニスタ1の通気抵抗を抑制することができる。
【0054】
(2e)上記実施形態では、第1当接部90が、調整部材50の所定の2箇所に設けられる構成を例示した。しかし、第1当接部90及び第2当接部91の個数はこれに限定されるものではない。例えば、第1当接部90及び第2当接部91は、所定の1箇所に設けられても良いし、3箇所以上に設けられても良い。
【0055】
(2f)上記実施形態では、スリットが形成された第2当接部91に第1当接部90が嵌め込まれる構成を例示した。また、調整部材50が対象室に圧入されている構成を例示した。しかし、調整部材50が対象室に固定される構造はこれに限定されるものではない。例えば、調整部材50は、爪を穴部に係合して固定する、いわゆるスナップフィット構造を有していても良い。また、図7A,7Bに示すように、調整部材50と当接することで、調整部材50が大気ポート13側に移動するのを抑制する当接面95が形成されていても良い。このような構成によれば、当接面95に第1当接部90がひっかかることにより、調整部材50が大気ポート13側にずれるのを抑制できる。これにより、調整部材50がポート側にずれてしまい、それにより緩衝領域93が小さくなってしまうことを抑制することができる。よって、緩衝領域93においてパージエア及び燃料蒸気の流れの一様度を保つことができる。
【0056】
(2g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…キャニスタ、10…容器、11…流入ポート、12…流出ポート、13…大気ポート、14…蓋部材、15…連通路、16,17…コイルばね、18…仕切り部材、20…第1室、21,22,31,41…フィルタ、23,32…多孔板、30…第2室、40…第3室、42…第2空間、42a…交差断面、43…第3空間、44…側壁、50,56…調整部材、51…棒状部、52…結合部、60…吸着材、61…ペレット、90…第1当接部、91…第2当接部、93…緩衝領域、95…当接面、300…第2室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7