IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライカ カメラ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許-カメラアダプタ 図1
  • 特許-カメラアダプタ 図2
  • 特許-カメラアダプタ 図3
  • 特許-カメラアダプタ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】カメラアダプタ
(51)【国際特許分類】
   G03B 13/18 20210101AFI20230627BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20230627BHJP
   G02B 23/00 20060101ALI20230627BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20230627BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20230627BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20230627BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20230627BHJP
【FI】
G03B13/18
G02B13/00
G02B23/00
G02B21/36
G03B17/56 Z
G02B7/02 G
G02B7/02 J
G02B7/04 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021121564
(22)【出願日】2021-07-26
(62)【分割の表示】P 2018521393の分割
【原出願日】2016-10-25
(65)【公開番号】P2021167978
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】102015118250.5
(32)【優先日】2015-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597114889
【氏名又は名称】ライカ カメラ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】カマンス、シーグルン
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-043519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 13/18
G02B 13/00
G02B 23/00
G02B 21/36
G03B 17/56
G02B 7/02
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的拡大装置の観察者の視力に応じて光学的拡大装置の結像システムの後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正のためのジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための、光学的拡大装置のジオプトリ補正の補償のための装置を備えたカメラアダプタであって、カメラアダプタは、
a)カメラアダプタ(8)内に位置固定的に嵌め込まれた、前記接眼レンズ(3)の結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ(9)と、
b)撮像センサ(12)を有するカメラハウジング(11)のための結合部を有し、前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償するために前記撮像センサ(12)が前記アダプタ対物レンズ(9)によって変化された前記接眼レンズ(3)の結像位置に位置するよう、前記結合部に結合された前記カメラハウジング(11)をスライドさせるようにスライド可能なスリーブ(10)と、を含み、
c)アダプタハウジング(16)には、シフト距離Δをジオプトリ単位Dptで表示する目盛りが配されている、
カメラアダプタ。
【請求項2】
光学的拡大装置の観察者の視力に応じて光学的拡大装置の結像システムの後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正のためのジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための、光学的拡大装置のジオプトリ補正の補償のための装置を備えたカメラアダプタであって、カメラアダプタは、
a)カメラアダプタ(8)内に位置固定的に嵌め込まれた、接眼レンズ(3)の結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ(9)を含み、
b)該アダプタ(8)は、光方向において該アダプタ対物レンズ(9)の前方に、ジオプトリ補正によって引き起こされる該後側焦点距離の変化を補償するための補償レンズ(13、14)のための挿入取付部(Einschubfach)を含み、更に、撮像センサ(12)を有するカメラハウジング(11)のための結合部を含み、
c)該補償レンズ(13、14)の焦点距離は、前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離変化の符号を逆にした値に等しい、
カメラアダプタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカメラアダプタであって、
前記アダプタ対物レンズ(9)の焦点距離fは、前記撮像センサ(12)の対角線長の大きさ、視野径2αの大きさ及び光学的拡大装置の拡大倍率Γの大きさに依存して、
f=センサ対角線長/(拡大倍率×tanα)
によって決定される、
カメラアダプタ。
【請求項4】
請求項3に記載のカメラアダプタであって、
前記焦点距離fは
f=30mm±30%
である、
カメラアダプタ。
【請求項5】
請求項1に記載のカメラアダプタであって、
前記シフト距離Δは、
によって決定される、
カメラアダプタ。
【請求項6】
光学的拡大装置のジオプトリ補正を補償する方法であって、
・光学的拡大装置(1)の結像システム(2、3)の後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正用装置(6)を用いて、光学的拡大装置(1)の観察者の視力に応じて光学的拡大装置(1)の結像システム(2、3)の後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正を実行すること、
・光学的拡大装置(1)の結像システム(2、3)の接眼レンズ(3)に、カメラアダプタ(8)を装着すること、但し、カメラアダプタ(8)は、
a)カメラアダプタ(8)内に位置固定的に嵌め込まれ、接眼レンズ(3)の結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ(9)、及び、
b)撮像センサ(12)を有するカメラハウジング(11)のための結合部を有し、結合部に結合されたカメラハウジング(11)をスライドさせるスライド可能なスリーブ(10)
を含み、
・スリーブ(10)の結合部に結合されたカメラハウジング(11)の撮像センサ(12)が、ジオプトリ補正された光学的拡大装置(1)の結像システム(2、3)の接眼レンズ(3)の、アダプタ対物レンズ(9)によって変化された結像位置に位置するよう、スリーブ(10)をスライドさせること
を含むこと
を特徴とする、方法。
【請求項7】
光学的拡大装置(1)と、カメラアダプタ(8)と、撮像センサ(12)を有するカメラとを含む、撮像システムであって、
・光学的拡大装置(1)は、
a)結像システム(2、3)、及び、
b)光学的拡大装置(1)の観察者の視力に応じて結像システム(2、3)の後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正のためのジオプトリ補正用装置(6)
を含むこと、
・カメラアダプタ(8)は、
a)光学的拡大装置(1)の結像システム(2、3)の接眼レンズ(3)に装着するための装着部、
b)カメラアダプタ(8)内に位置固定的に嵌め込まれ、接眼レンズ(3)の結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ(9)、及び、
c)カメラのカメラハウジング(11)のための結合部を有し、結合部に結合されたカメラハウジング(11)をスライドさせるスライド可能なスリーブ(10)、
を含み、
・スリーブ(10)は、結合部に結合されたカメラハウジング(11)の撮像センサ(12)が、ジオプトリ補正されかつ装着部に装着された光学的拡大装置の結像システム(2、3)の接眼レンズ(3)の、アダプタ対物レンズ(9)によって変化された結像位置に位置するよう、スライド可能であること
を特徴とする、撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオプトリ補正用装置(Dioptrie-Ausgleich-Vorrichtung)を有する光学的拡大装置の接眼レンズに(外嵌的に)装着するためのカメラアダプタ(Foto-Adapter)に関する。
【背景技術】
【0002】
スポッティングスコープ(Spektiv)、望遠鏡、顕微鏡又は測定装置の接眼レンズの後側(下流)には、人間の眼の代わりに、交換可能な対物レンズを備えたカメラが使用されることが益々増えている。
【0003】
カメラの対物レンズは、平行に入射する光路に対し即ち0ジオプトリに対し適合化されている。大抵は、(カメラ)対物レンズは近距離(Nahbereich)に焦点を合わせることができるが、その場合にもなお許容可能な結像性能はしばしば提供される。このことは、近視の観察者はその視力の欠陥をカメラの対物レンズで補正できること、更には、リフォーカス無しで又は僅かなリフォーカスだけで、観察と撮像(画像記録)とを切り替えることができることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】EP 2 674 811 A2
【文献】US 6 069 651 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラ対物レンズは無限遠にわたる超過作動距離(Ueberhub)を提供しないか又は長い焦点距離の場合にのみ極めて小さい超過作動距離を提供するため、遠視の観察者は、カメラを用いた撮像を可能にするためには、その観察装置を常に0ジオプトリにセットしなければならない。
【0006】
それゆえ、本発明の課題は、カメラ対物レンズの焦点距離に依存することなく観察と撮像(画像記録)との間の移行(切換え)を簡単な方法で可能にするカメラアダプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、冒頭に掲げた種類のカメラアダプタにおいて、本発明に応じ、請求項1又は請求項2の特徴部に記載の特徴によって解決される。
即ち、本発明の第1の視点により、光学的拡大装置の観察者の視力に応じて光学的拡大装置の結像システムの後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正のためのジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための、光学的拡大装置のジオプトリ補正の補償のための装置を備えたカメラアダプタが提供される。カメラアダプタは、
a)カメラアダプタ内に位置固定的に嵌め込まれた、前記接眼レンズの結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズと、
b)撮像センサを有するカメラハウジングのための結合部を有し、前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離の変化を補償するために前記撮像センサが前記アダプタ対物レンズによって変化された前記接眼レンズの結像位置に位置するよう、前記結合部に結合された前記カメラハウジングをスライドさせるようにスライド可能なスリーブと、を含み、
c)アダプタハウジングには、シフト距離Δをジオプトリ単位Dptで表示する目盛りが配されている(形態1)。
更に、本発明の第2の視点により、光学的拡大装置の観察者の視力に応じて光学的拡大装置の結像システムの後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正のためのジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための、光学的拡大装置のジオプトリ補正の補償のための装置を備えたカメラアダプタであって、カメラアダプタは、
a)カメラアダプタ(8)内に位置固定的に嵌め込まれた、接眼レンズの結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズを含み、
b)該アダプタ(8)は、光方向において該アダプタ対物レンズの前方に、ジオプトリ補正によって引き起こされる該後側焦点距離の変化を補償するための補償レンズのための挿入取付部(Einschubfach)を含み、更に、撮像センサを有するカメラハウジングのための結合部を含み、
c)該補償レンズの焦点距離は、前記ジオプトリ補正によって引き起こされる前記光学的拡大装置の前記結像システムの後側焦点距離変化の符号を逆にした値に等しい(形態2)。
更に、本発明の第3の視点により、光学的拡大装置のジオプトリ補正を補償する方法が提供される。該方法は、
・光学的拡大装置の結像システムの後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正用装置を用いて、光学的拡大装置の観察者の視力に応じて光学的拡大装置の結像システムの後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正を実行すること、
・光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに、カメラアダプタを装着すること、但し、カメラアダプタは、
a)カメラアダプタ内に位置固定的に嵌め込まれ、接眼レンズの結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ、及び、
b)撮像センサを有するカメラハウジングのための結合部を有し、結合部に結合されたカメラハウジングをスライドさせるスライド可能なスリーブ
を含み、
・スリーブの結合部に結合されたカメラハウジングの撮像センサが、ジオプトリ補正された光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズの、アダプタ対物レンズによって変化された結像位置に位置するよう、スリーブをスライドさせること
を含む(形態6)。
更に、本発明の第4の視点により、光学的拡大装置と、カメラアダプタと、撮像センサを有するカメラとを含む、撮像システムが提供される。該撮像システムにおいて、
・光学的拡大装置は、
a)結像システム及び、
b)光学的拡大装置の観察者の視力に応じて結像システムの後側焦点距離を変化させるジオプトリ補正のためのジオプトリ補正用装置
を含むこと、
・カメラアダプタは、
a)光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズに装着するための装着部、
b)カメラアダプタ内に位置固定的に嵌め込まれ、接眼レンズの結像位置を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズ、及び、
c)カメラのカメラハウジングのための結合部を有し、結合部に結合されたカメラハウジングをスライドさせるスライド可能なスリーブ、
を含み、
・スリーブは、結合部に結合されたカメラハウジングの撮像センサが、ジオプトリ補正されかつ装着部に装着された光学的拡大装置の結像システムの接眼レンズの、アダプタ対物レンズによって変化された結像位置に位置するよう、スライド可能である(形態7)。
有利な実施形態は従属請求項の特徴から得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここに、本発明の好ましい実施の形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)上記本発明の第2の視点参照。
(形態3)形態1又は2のカメラアダプタにおいて、
前記アダプタ対物レンズの焦点距離fは、前記撮像センサの対角線長の大きさ、視野径2αの大きさ及び光学的拡大装置の拡大倍率Γの大きさに依存して、
f=センサ対角線長/(拡大倍率×tanα)
によって決定されることが好ましい。
(形態4)形態3のカメラアダプタにおいて、
前記焦点距離fは
f=30mm±30%
であることが好ましい。
(形態5)形態1に記載のカメラアダプタにおいて、
前記シフト距離Δは、
によって決定されることが好ましい。
(形態6)上記本発明の第3の視点参照。
(形態7)上記本発明の第4の視点参照。
【0009】
個人の非正視を考慮して観察装置において調節(設定)されたシャープネス調節(状態)(Scharfeinstellung)を維持すること、及び、観察装置の接眼レンズの後側焦点距離を変化させる一定の焦点距離を有する対物レンズと、スライドスリーブ又は交換可能な補償(補正)レンズとの組み合わせによって、ジオプトリ調節(補正状態)を補償することが、本発明に応じたカメラアダプタによって可能になる。
【0010】
非正視の補正は、観察装置においては、対物レンズにおけるフォーカシングによっても、接眼レンズにおける調節によっても、行うことができる。個人の非正視のジオプトリ値の大きさ(範囲)は、観察者にとっては、眼鏡屋等によって測定された当該観察者の眼鏡レンズのジオプトリ値によって既知であり、そのため、カメラアダプタにおいて、スライドスリーブのシフト(引き出し)距離を相応に変化することによって、又は、符号が逆の焦点距離を有する補償(補正)レンズを嵌め込む(装着する)ことによって補償する(kompensieren)ことができる。
【0011】
カメラアダプタを変化する(夫々異なる)個人の非正視に適合化するために、上記2つの解決策を組み合わせることも可能であり、これによれば、既存の非正視に対し固定的な補償(補正)レンズによって補償されたジオプトリ調節(即ち補正状態)が、更に、スライドスリーブの位置変化(シフト)によって補償(補正)される。
【0012】
ジオプトリ値が既知でない場合、ジオプトリ値は、例えばジオプトリ望遠鏡(Dioptrie-Fernrohr)によって測定することが可能であり、又は、ディスプレイを有するカメラの場合は、シャープネス調節の際におけるスライドスリーブの引き出し距離の変化及びその固定(決定)に依存して決定することができる。何れの場合でも、必要なジオプトリ補正は、カメラアダプタの目盛り(Skala)を介して再現可能に調節及び設定(決定)することができる。
【0013】
カメラアダプタに、観察装置の接眼レンズに(外嵌的に)装着するための締付リングを結合することによって、更なる焦点合わせを要することなく、観察と(カメラ)撮像との簡単な切換えが可能になる。
【0014】
カメラアダプタに嵌め込まれている対物レンズの焦点距離fは一定であり、カメラのセンサ対角線長の大きさ、観察装置の対物レンズ視角(objektiv Sehwinkel)αの大きさ及び拡大倍率Γに依存して決定される。拡大倍率が可変(ズーム)の場合、少なくとも1つの倍率について、撮像センサを対物レンズ視野(objektiv Sehfeld)によって照明することが望まれる。
【0015】
対物レンズ視角αは、観察装置の光軸と観察される視野の縁との間の角度であり、従って、視野の直径は2αによって決定される。この場合、カメラアダプタにおける対物レンズの焦点距離fは以下の式から得られる。
遠距離光学観察装置の場合、その典型的な値はf=30mm±30%である。
【0016】
スライドスリーブを必要なジオプトリ値に調節する際のシフト距離Δは以下の式から得られる。
シフト距離Δの最大値は凡そ10mm±30%である。
【0017】
本発明に応じたカメラアダプタの実施例は図面に模式的に示されており、以下において図面を用いて詳細に説明される。
なお、特許請求の範囲に付した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】正視、近視及び遠視の観察者についての、望遠鏡におけるジオプトリ補正の例。
図2】スライドスリーブの複数の異なる引き出し距離を示す、望遠鏡の接眼レンズに取り付けられたカメラアダプタの例。
図3】対物レンズの前側に付加的な(追加の)補償(補正)レンズが嵌め込まれている例。
図4】望遠鏡のためのスライドスリーブを有するカメラアダプタの一例の断面。
【実施例
【0019】
図1(a)は、望遠鏡対物レンズ2と望遠鏡接眼レンズ3とを有する望遠鏡1の一例を模式的に示す。正視の眼4は、接眼レンズ側において、中間像面5に生成される望遠鏡の画像を観察する。望遠鏡接眼レンズ3から出射する(1つの)像点についての光線は互いに対し平行に推移する。位置調節可能な負レンズ6は、眼4が非正視の場合にジオプトリ補正のために必要な、望遠鏡1の結像システムの目盛り7に対する位置調節の可能性を象徴的に示す。
【0020】
図1(b)は、眼4が近視の場合の光線推移の例を示す。眼4の網膜に合焦(Scharfstellung)するためには、望遠鏡接眼レンズ3から出射する光線束は僅かに収束されている必要がある。これは、負レンズ6を目盛り7において望遠鏡接眼レンズ3側にシフトされた位置へ移動し、かつ、中間像面5を望遠鏡対物レンズ2側に移動することによって行われる。
【0021】
図1(c)は、眼4が遠視の場合の光線推移の例を示す。この場合、望遠鏡接眼レンズ3から出射する光線束は僅かに拡開して推移する必要がある。これは、負レンズ6を目盛り7において望遠鏡対物レンズ2側にシフトされた位置へ移動し、かつ、中間像面5を接眼レンズ3側に移動することによって行われる。
【0022】
図2(a)は、眼4の代わりに、望遠鏡1の接眼レンズ3に外嵌的に装着されたカメラアダプタ8の一例を示す。このカメラアダプタ8はアダプタ対物レンズ9と、スライドスリーブ10と、カメラハウジング11と、カメラセンサ12とを含む。負レンズ6の図示のニュートラル位置では、スライドスリーブ10は、中間引き出し距離及び望遠鏡接眼レンズ3の新たな後側焦点距離にある。
【0023】
図2(b)は、近視の眼4に対応して深く押し込まれた位置にあるスライドスリーブ10と、望遠鏡接眼レンズ3の短縮された後側焦点距離とを示す。
【0024】
図2(c)は、遠視の眼4に対応して大きく引き出された位置にあるスライドスリーブ10と、望遠鏡接眼レンズ3の伸長された後側焦点距離とを示す。
【0025】
図3(a)~図3(c)は、スライドスリーブ10を備えず、その代わりに望遠鏡接眼レンズ3とアダプタ対物レンズ9の間に補償(補正)レンズを有するカメラアダプタ8の一例を示す。図3(b)では、近視の眼4の場合のジオプトリ補正に応じて、負の屈折力(屈折率)を有する補償(補正)レンズ13が設けられており、図3(c)では、遠視の眼4の場合のジオプトリ補正に応じて、正の屈折力(屈折率)を有する補償(補正)レンズ14が設けられている。
【0026】
図4は、望遠鏡1の接眼レンズ3に外嵌的に装着するためのシリンダリング15と、アダプタ対物レンズ9を有するアダプタハウジング16と、スライドスリーブ10とを有するカメラアダプタ8の一例を(縦)断面で示す。シリンダリング15は締付ネジ18を有する締付リング17を含み、これらによって、シリンダリング15は望遠鏡接眼レンズ3のハウジングに固定されることができる。
【0027】
シリンダリング15は、螺合ネジ19を介してアダプタハウジング16に結合されるか又はその他の方法でアダプタハウジング16に結合される。アダプタ8内には、アダプタ対物レンズ9が位置固定的に嵌め込まれている。アダプタハウジング16(の外周面)上において、スライドスリーブ10は、長手方向にシフト可能に(軸受)支持されており、締付ネジ18’を有する締付リング17’を介して、任意の引き出し位置に設定されることができる。締付ネジ18、18’は、有利には、互いに対し90°だけずらされて配置されることができる。
【0028】
スライドスリーブ10は、その自由端に、カメラハウジング11のためのカメラハウジングのための取付部(結合部)22を有する。取付部は、螺合ネジ又はバヨネット(Bajonett)から構成されることができる。
【0029】
アダプタ8にはピン20が結合されており、該ピン20はスライドスリーブ10のスリット21内で滑動する。スリット21には、ピン20の位置を従ってスライドスリーブ10の引き出し位置を表示するための(更には説明しない)目盛りが配されている。
【0030】
スライドスリーブ10の直線的な長手方向シフトの代わりに、(スライドスリーブ10の)螺旋状の位置変化又は曲線的案内も可能である。この場合、ピン/スリット式表示20、21の代わりに、スライドスリーブ10とアダプタハウジング16の間に、カメラ対物レンズの距離目盛りに類似する相応のマーキングを設けることも可能である。
【0031】
ここに、本発明の可能な形態を付記する。
[付記1]ジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の接眼レンズに装着するための、該ジオプトリ補正の補償のための装置を備えたカメラアダプタ。カメラアダプタは、
a)カメラアダプタ内に位置固定的に嵌め込まれた、前記接眼レンズの後側焦点距離を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズと、
b)撮像センサを有するカメラハウジングのための結合部を有し、ジオプトリ補正によって引き起こされる該後側焦点距離の変化を補償するようスライド可能なスリーブと、を含む。
c)アダプタハウジングには、シフト距離Δをジオプトリ単位Dptで表示する目盛りが配されている。
[付記2]ジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の接眼レンズに装着するための、該ジオプトリ補正の補償のための装置を備えたカメラアダプタ。カメラアダプタは、
a)カメラアダプタ内に位置固定的に嵌め込まれた、接眼レンズの後側焦点距離を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズを含む。
b)該アダプタは、光方向において該アダプタ対物レンズの前方に、ジオプトリ補正によって引き起こされる該後側焦点距離の変化を補償するための補償レンズのための挿入取付部(Einschubfach)を含む。
c)該補償レンズの焦点距離は、前記ジオプトリ補正のために必要な光学的拡大装置の焦点距離変化の符号を逆にした値に等しい。
[付記3]上記のカメラアダプタにおいて、
前記アダプタ対物レンズの焦点距離fは、前記撮像センサの対角線長の大きさ、視野径2αの大きさ及び光学的拡大装置の拡大倍率Γの大きさに依存して、
f=センサ対角線長/(拡大倍率×tanα)
によって決定される。
[付記4]上記のカメラアダプタにおいて、
前記焦点距離fは
f=30mm±30%
である。
[付記5]付記1のカメラアダプタにおいて、
前記シフト距離Δは、
によって決定される。
[付記6]ジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の接眼レンズに装着するための、カメラアダプタ。
a)カメラアダプタ内には、前記接眼レンズの後側焦点距離を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズが位置固定的に嵌め込まれている。
b)撮像センサを有するカメラハウジングのための結合部を有するスライド可能なスリーブが設けられている。
c)アダプタハウジングには、シフト距離Δをジオプトリ単位Dptで表示する目盛りが配されている。
[付記7]ジオプトリ補正用装置を有する光学的拡大装置の接眼レンズに装着するための、カメラアダプタ。
a)カメラアダプタ内には、接眼レンズの後側焦点距離を変化させる、一定の焦点距離fを有するアダプタ対物レンズが位置固定的に嵌め込まれている。
b)該アダプタは、光方向において該アダプタ対物レンズの前方に補償レンズのための挿入取付部(Einschubfach)を含む。
c)該補償レンズの焦点距離は、前記ジオプトリ補正のために必要な光学的拡大装置の焦点距離変化の符号を逆にした値に等しい。
[付記8]上記のカメラアダプタにおいてて、
前記アダプタ対物レンズの焦点距離fは、前記撮像センサの対角線長の大きさ、視野径2αの大きさ及び光学的拡大装置の拡大倍率Γの大きさに依存して、
f=センサ対角線長/(拡大倍率×tanα)
によって決定される。
[付記9]上記のカメラアダプタにおいて、
前記焦点距離fは
f=30mm±30%
である。
[付記10]付記6のカメラアダプタにおいて、
前記シフト距離Δは、
によって決定される。
【符号の説明】
【0032】
1 望遠鏡
2 望遠鏡対物レンズ
3 望遠鏡接眼レンズ
4 眼
5 中間像面
6 負レンズ
7 目盛り
8 カメラアダプタ
9 アダプタ対物レンズ
10 スライドスリーブ
11 カメラハウジング
12 撮像(画像記録)センサ
13 負の屈折率を有する補償(補正)レンズ
14 正の屈折率を有する補償(補正)レンズ
15 シリンダリング
16 アダプタハウジング
17、17’ 締付リング
18、18’ 締付ネジ
19 螺合ネジ(Schraubgewinde)
20 ピン
21 スリット
22 カメラハウジングのための取付部(結合部)
図1
図2
図3
図4