(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】動脈網における流量および圧力勾配を患者特定コンピュータ断層撮影アルゴリズムに基づくコントラスト分布から判断するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
A61B6/03 370Z
A61B6/03 375
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021131324
(22)【出願日】2021-08-11
(62)【分割の表示】P 2019223773の分割
【原出願日】2015-03-11
【審査請求日】2021-08-31
(32)【優先日】2014-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ラジャット ミッタル
(72)【発明者】
【氏名】アルバート シー ラルド
(72)【発明者】
【氏名】チュンヘー ソ
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534154(JP,A)
【文献】特開2006-247388(JP,A)
【文献】特開2004-097665(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0281650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
A61B 8/00-8/15
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠状動脈狭窄の機能的有意性を決定するためのシステムであって、
命令を格納する少なくとも1つのメモリと、
非一時的なコンピュータ可読媒体を使用して、ペイシェントの画像スキャンから画像データを取得し、
該画像データから、ペイシェントの冠状動脈についてのペイシェント特定の経管的減衰勾配(TAG)を取得し、
部分的容量効果によりもたらされるTAG値を補正するための部分的容量平均化補正係数を決定し、
前記画像データから動脈入力関数を決定し、ここで、前記動脈入力関数は、ペイシェントの冠状動脈内の所定の位置での造影剤の時間変動として定義されるものであり、
前記画像データから冠状動脈の管腔エリアおよび冠状動脈に沿った距離を決定し、
アルゴリズムを使用して冠動脈流速(CFV)および冠状動脈内の流量を決定し、ここで、アルゴリズムの用語は、TAG、動脈入力関数、冠状動脈管腔面積、および冠状動脈に沿った距離であり、
CFV、動脈入力関数、および冠状動脈の管腔エリアに関連する情報に基づいて、冠状動脈内の圧力勾配(PG)の推定値を決定し、
前記PGの推定値に基づいて前記冠状動脈狭窄の機能的有意性を決定する、
ことを含む操作を実行するための命令を実行するように構成された前記少なくとも1つのメモリに動作可能に接続された少なくとも1つのプロセッサと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記操作は、さらに、ペイシェントの冠状動脈内の造影剤の濃度に関連するペイシェント特定データを収集することが含む、請求項
1のシステム。
【請求項3】
得られた前記画像データは、心臓コンピュータ断層撮影スキャンを使用して取得されたものである、請求項
1のシステム。
【請求項4】
前記部分的容量平均化補正係数の決定は、仮想ボクセル格子へのシミュレーションドメインの埋め込みと、特定の軸方向位置での平均減衰値の再評価を含む、請求項
1のシステム。
【請求項5】
CFVと冠状動脈管腔エリアに基づいて血流予備量比(FFR)を推定することをさらに含む、請求項
1のシステム。
【請求項6】
前記機能的有意性を決定することは、
心臓安静条件のペイシェントからのデータから狭窄に関連する損失係数を推定すること、
推定された前記損失係数に基づいて前記機能的有意性を決定すること、
を含む、請求項
1のシステム。
【請求項7】
前記操作は、
冠状血管のテーパに基づいてCFVとTAGを修正すること、
得られた画像データを取得するために使用される医療用画像装置の解像度に基づいてCFVおよびTAGを修正すること、または
冠状血管の弯曲に基づいてCFVとTAGを修正すること、
のいずれか1つをさらに含む、請求項
1のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照について説明する。
この出願は2014年3月11日付け出願の米国特許出願第14/204264号の利益を請求し、それ
はここに参照することによりその完全な形で組み込まれる。
【0002】
本発明の分野について説明する。本発明は概して心臓学に関する。さらに詳しくは、本
発明は、動脈網(動脈ネットワークとも言う)における流量、圧力勾配および血流予備量
比(フラクショナルフローリザーブ)を定めるためのコンピュータ断層撮影心臓イメージ
ングに基づく方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景について説明する。冠状動脈は心筋、または心臓の筋肉に酸素および栄養
を供給する。時間が経つにつれて、冠状動脈はプラークとして知られるコレステロールお
よび他の物質によりブロックされることがある。冠状動脈疾患は、冠状動脈の壁内のプラ
ークのこの蓄積からもたらされる。過度のプラークの蓄積は、心筋への冠状動脈を通して
胸痛、虚血、および心臓発作につながる減少血流および低血流量をもたらすことがある。
冠動脈疾患(CAD)はまた、心筋を弱め、そして心不全、ポンプとしての心臓の効率が損
なわれている状態の一因となることがある。この状態は、心臓突然死について可能性を増
加させる心臓の電気的障害につながることがある。冠動脈疾患は、米国の男性および女性
の双方について主要な死亡原因である。CADは、1760万人のアメリカ人に影響を与え、お
よび年間ほぼ50万人の死亡をもたらす。年間63億ドルのコストでの高性能な画像診断テス
トへのアクセスにもかかわらず、1,000,000を超える米国の患者は、固有のリスクおよび
米国の医療システムへの驚異的な8Bドルの財政負担に患者をさらす不要な侵襲的カテーテ
ル法の手順に回される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目下、冠動脈疾患およびその重症度を評価するために用いられるいくつかの異なる診断
法がある。非侵襲的テストには、心電図、血液テストからバイオマーカーの評価、トレッ
ドミルテスト、心エコー検査、単一陽電子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)、およ
びポジトロン放出断層撮影(PET)が含まれる。残念ながら、これらの非侵襲的なテスト
は、冠動脈損傷(病変)のサイズまたは冠動脈血流量、圧力勾配(圧較差)および血流予
備量比に対するその特異的な効果に関連するデータを提供しない。
【0005】
定量的冠動脈造影(QCA)は、たとえば、冠動脈疾患に関連するもののような動脈損傷
の大きさを視覚化し、および定量化するために十分に確立された侵襲的な方法である。こ
の方法では、放射線(X線)不透過性コントラスト剤(造影剤)は、血液中に注入され、
およびコントラスト剤が冠動脈内へ移動したとき、X線スキャン動画が取得される。臨床
医は、視覚的に検討するため、および閉塞の程度を定量化するために、この情報を使用す
ることができる。70%よりも多くのエリア閉塞は、流れ制限および経皮的冠動脈インター
ベンション(PCI)(また、冠動脈形成術としても知られる)の候補と伝統的に考えられ
ている。
【0006】
上記の手順は、損傷の大きさまたは閉塞(障害とも言う)の程度を視覚化し、および定
量化するために使用することができるが、それは必ずしも損傷が、損傷の機能的有意性(
機能的意義とも言う)、すなわち、動脈を通した血液の流れの速度に影響を及ぼす程度に
まで相関するものでない。したがって、追加的な評価は冠動脈損傷の機能的有意性を定め
るために開発された。この点において、カテーテル測定した冠動脈流速(CFV)、圧力勾
配(PG)、すなわち、様々な動脈セグメントを横切る圧差、冠血流予備比(CFR、coronar
y flow reserve)、および血流予備量比(FFR、fractional flow reserve)は、冠動脈狭
窄の機能的有意性の評価のためのゴールドスタンダード(究極の判断基準)である。これ
らのメトリクス(測定基準)は目下、診断的心臓カテーテル検査で、侵襲的手順を用いて
定められ、そこではカテーテルが末梢動脈内(たとえば、患者の脚)に挿入され、および
冠状動脈の関連エリアへの脈管構造に通される。FFRは、損傷から下流の平均血圧を同じ
損傷の上流平均血圧で割った比を算出することによって定められる。これらの圧力は、診
断的心臓カテーテル検査手順中に患者へ圧力ワイヤを挿入することによって測定される。
この手順は冠動脈狭窄の機能的重症度を決定するためにFFRの正確な測定を提供する一方
で、それは侵襲的手技のリスクおよびコストを招く。
【0007】
多検出器コンピュータ断層撮影(CT)技術の進歩は目下、冠動脈イベントリスク、すな
わち、全体的な冠状動脈プラーク負担、冠状動脈狭窄の重症度、プラークの位置および硬
度(location and consistency)、およびプラーク構成に関して、いくつかの重要なファ
クターへの非侵襲的なアクセスを可能にする。CTによるCADでの解剖学的情報が重要であ
り、およびペイシェントアウトカム(患者転帰)と相関することが示されているが、心外
膜の血流減少および誘発型(provocable)心筋虚血の範囲および重症度を含め、CHD(冠
動脈疾患)を伴う患者アウトカムの他の重要な決定因子が存在する。CTは、冠動脈の解剖
、冠動脈血流量、および心筋灌流の評価を可能にし、そして従って、疑わしいCHDを有す
る患者の評価および管理を導くために総合的な情報を取得するように一意的に配置される
。
【0008】
冠状動脈CTAは、冠状動脈アテローム性動脈硬化およびパーセント狭窄(percent steno
sis)の存在を診断するための正確なテストであることが示されているが、侵襲的および
非侵襲的な標準と比較して心筋虚血を不十分にしか予測することができないことを示され
ている。ポジトロン放出断層撮影と比較すると、CTAによる50%の狭窄が多くの研究にお
いて再現された26%の知見の心筋虚血について陽性予測値をもつ。FFRに比較して、狭窄
の生理学的有意性を定めるための侵襲性のゴールドスタンダード、CTAによるパーセント
狭窄は中程度の全体的な相関(r=0.55)だけを示し、および長さ≦10mmの損傷を有する有
意な相関をまったく示さない(r=0.16)。
【0009】
FFRはまた、CT導出した、患者特定の冠動脈モデルにおいて高度に複雑な計算(数値)
流体力学(CFD)モデリングに基づいて推定することができる。HeartFlow Inc.(ハート
フロー社)のこのアプローチおよびいわゆるFFRCT
TM(FFRCT
商標)は、複雑さの高い度合
(a high level of sophistication)を必要とし、計算法上集約的であり、および概して
患者特定データがサードパーティベンダーに病院環境から送信される必要がある。それは
また、高価であり、および結果を得るために数日かかることがある。さらに、多施設試験
において実際のFFRを予測するためにこのアプローチをテストする最近のデータは期待に
反する。たとえば、研究は、その予め指定された主要評価項目(pre-specified primary
endpoint)を満たしておらず、それは片側95%CIの下限の>70%の診断精度であった。計
算の複雑さだけでなく、このアプローチの精度低下に寄与する要因の一つは、関心ある動
脈について速度/流量の正確な境界および入力条件の欠如である。これを克服しようとす
る任意の試みは、患者特定の心室質量を含め、さまざまな情報を組み合わせることによっ
てFFRCT
TMにおいて行われ、冠状動脈抵抗の集団派生関係(population derived relation
ship)および集団派生尺度から冠血流量がとどめられる。上記情報は、たとえば、血圧、
心拍数ならびに上行大動脈およびすべての主要な冠状血管の計算流体力学(CFD)モデリ
ングのような生理学的データと組み合わせられる。このCFDモデルはまた、集団由来の多
数のパラメータを含むランプエレメント(lumped-element、集中要素)(または「ウイン
ドケッセル(ふいご)」)モデルを介して循環システムの残りの部分に接続される。しか
しながら、このアプローチは、アドホックパラメータおよび一般的な(非患者特異的な)
ファクターの使用を必要とし、それは計算されたFFRの精度を低下させることがある。CFD
ソリューションの品質は、採用される計算格子に高度に感受性であり、および循環システ
ム(上行大動脈および冠状動脈)の大部分にわたりグリッドを生成する必要性もまた、CF
D計算からの結果において不正確および不確実性の追加の原因を導入する。
【0010】
したがって、たとえば、与えられた患者の冠状動脈について、CFV、PG、CFR、および/
またはFFRを決定することのような血行動態パラメータを評価するための代替的な非侵襲
性のCTベースの方法を提供することが有利であろう。そのような方法は計算が簡単で、お
よび比較的安価である場合、スキャナにおいて、または局所的に走査施設のコンピュータ
にて実装され、およびその結果は、スキャンが完了した後、比較的短時間(数分のオーダ
ー)以内に利用可能にすることができる。このことはまた、放射線科医/臨床医が分析ツ
ールによりほぼリアルタイムに相互作用することを可能にする。そのようなアプローチは
、基本的に、臨床心臓病学の実践を変更し、および臨床医が正確かつ迅速に心筋への血流
が低下している特定の血管を識別できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の概略、上記の必要性は、本発明によって、かなりの程度まで満たされ、そこで
は、一態様において、動脈狭窄または損傷の機能的有意性をペイシェント(受動体、主と
して患者を意味する)において定めるための方法には、ペイシェントの関心ある動脈網の
エリアを定めることが含まれる。本方法には、血管造影手順中にペイシェントのCTスキャ
ンを取得することであり、関心あるエリアでのデータがもたらされること、および関心あ
るエリアについて動脈入力関数(AIF)を算出するためにCTスキャンから取得されたデー
タを用いることが含まれる。追加的に、本方法には、関心あるエリアについてコントラス
ト分布および経管的減衰勾配(TAG)を定めるためにCTスキャンから取得されたデータを
用いること、およびコントラスト分布、TAG、およびAIFを用いて経管的減衰フローエンコ
ーディング(TAFE)を算出することが含まれる。本方法にはまた、TAFEを用いて流速をモ
デル化することが含まれる。
【0012】
本発明のある態様によれば、本方法には、CTスキャンを取得するために用いるスキャナ
の特性に関するデータによりTAFEの算出を増強すること、および本方法を実行するために
非一時的な(持続性の)コンピュータ可読媒体をプログラミングすることが含まれる。本
方法にはまた、ペイシェントのCTスキャンを取得する前に血管造影中にペイシェントを安
静条件にすること、およびペイシェントについて安静条件にて関心あるエリアのための冠
血流速度(coronary flow velocity)を算出することが含まれる。本方法にはまた、ペイ
シェントのCTスキャンを取得する前に血管造影中にペイシェントをストレス条件にするこ
と、およびペイシェントについてストレス状態にて関心あるエリアの冠血流速度を算出す
ることが含まれる。さらに加えて、本方法には、ペイシェントを安静にして血管造影中に
CTスキャンを取得すること、およびペイシェントをストレス下にして血管造影中にCTスキ
ャンを取得すること、および安静でのおよびストレス下のペイシェントについて流量を算
出することが含まれる。本方法にはまた、Qストレス対Q安静(Qstress対Qrest)の比とし
て関心あるエリアについて冠血流予備比を算出することが含まれる。
【0013】
本発明の別の態様によれば、動脈狭窄または損傷の機能的有意性をペイシェントにおい
て定めるための方法には、ペイシェントの関心ある動脈網のエリアを定めること、および
血管造影手順中にペイシェントのCTスキャンを取得することであり、関心あるエリアでの
データがもたらされることが含まれる。本方法には、関心あるエリアについて動脈入力関
数(AIF)を算出するためにCTスキャンから取得されるデータを用いること、および関心
あるエリアについてコントラスト分布および経管的減衰勾配(TAG)を定めるためにCTス
キャンから取得されるデータを用いることが含まれる。本方法はまた、コントラスト分布
、TAG、およびAIFを用いて経管的減衰フローエンコーディング(TAFE)を算出することが
含まれる。追加的に、本方法には、TAFEを用いて流速をモデル化すること、および関心あ
るエリアについて流入および流出量、および境界条件を定めるために冠血流速度を用いる
ことが含まれる。本方法には、3D動脈内腔形状(3D動脈内腔幾何学的形状)を定めること
、境界条件、流入および流出量、および3D動脈内腔形状を用いて関心あるエリアについて
CFDモデリングを行うこと、およびCFDモデルを用いて関心あるエリアについて圧力勾配を
算出することが含まれる。本方法にはまた、関心あるエリアの損失係数を定めるために圧
力勾配を用いることが含まれる。
【0014】
本発明の別の態様によれば、本方法には、CTスキャンを取得するために用いるスキャナ
の特性に関するデータによりTAFEの計算を増強することが含まれる。本方法にはまた、本
方法を実行するために非一時的なコンピュータ可読媒体をプログラミングすることが含ま
れる。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、動脈狭窄または損傷の機能的有意性をペイシェント
において定めるための方法には、ペイシェントの関心ある動脈網のエリアを定めることが
含まれる。本方法には、血管造影手順中にペイシェントのCTスキャンを取得することであ
り、関心あるエリアでのデータがもたらされること、および関心あるエリアについて動脈
入力関数(AIF)を算出するためにCTスキャンから取得されるデータを用いることが含ま
れる。本方法にはまた、関心あるエリアについてコントラスト分布および経管的減衰勾配
(TAG)を決定するためにCTスキャンから取得されるデータを用いること、コントラスト
分布、TAG、およびAIFを用いて経管的減衰フローエンコーディング(TAFE)を算出するこ
と、およびTAFEを用いて流速をモデル化することが含まれる。さらに加えて、本方法には
、関心あるエリアについて流入および流出量、および境界条件を定めるために冠血流速度
を用いること、3D動脈内腔形状を定めること、境界条件、流入および流出量、および3D動
脈内腔形状を用いて関心あるエリアについてCFDモデリングを行うこと、CFDモデルを用い
て関心あるエリアの圧力勾配を算出すること、および関心あるエリアの損失係数を定める
ために圧力勾配を用いることが含まれる。本方法にはまた、上腕圧力を測定すること、絶
対動脈圧を算出すること、およびペイシェントについて安静にて血流予備量比(フラクシ
ョナルフローリザーブ)を算出することが含まれる。
【0016】
本発明の別の態様によれば、本方法には、CTスキャンを取得するために用いるスキャナ
の特性に関するデータによりTAFEの計算を増強することが含まれる。本方法にはまた、本
方法を実行するために非一時的なコンピュータ可読媒体をプログラミングすることが含ま
れる。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、動脈狭窄または損傷の機能的有意性をペイシェント
において定めるためのシステムには、ペイシェントの関心ある動脈網のエリアに関連する
ペイシェント特定データを取得するために設定可能なCTスキャナが含まれる。本方法には
また、以下のためにプログラムされる非一時的なコンピュータ可読媒体が含まれ、それは
、ペイシェントの関心ある動脈網のエリアを定めること、関心あるエリアでのペイシェン
ト特定データを取得すること、および関心あるエリアについて動脈入力関数(AIF)を算
出するためにCTスキャンから取得されるペイシェント特定データを使用することのためで
ある。非一時的なコンピュータ可読媒体はまた、以下のためにプログラムされ、それは、
関心あるエリアについてコントラスト分布および経管的減衰勾配(TAG)を定めるためにC
Tスキャンから取得されるペイシェント特定データを用いること、コントラスト分布、TAG
、およびAIFを用いて経管的元帥フローエンコーディング(TAFE)を算出すること、およ
びTAFEを用いて流速をモデル化することのためである。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、本方法には、ペイシェントを安静にして血管造影中
にペイシェント特定データを取得すること、およびペイシェントをストレス下にして血管
造影中にペイシェント特定データを取得することが含まれる。本方法にはまた、安静およ
びストレス下のペイシェントについて流量を算出することが含まれる。さらに、本方法に
は、関心あるエリアについて冠血流予備比をQstress対Qrestの比として算出することが含
まれる。本方法にはまた、関心あるエリアの流入および流出量、および境界条件を定める
ために冠血流速度を用いること、3D動脈内腔形状を定めること、境界条件、流入および流
出量、および3D動脈内腔形状を用いて関心あるエリアについてCFDモデリングを行うこと
、CFDモデルを用いて関心あるエリアの圧力勾配を算出すること、および関心あるエリア
について損失係数を定めるために圧力勾配を用いることが含まれる。加えて、本方法には
、上腕圧力を測定すること、絶対動脈圧を算出すること、およびペイシェントについて安
静にて血流予備量比を算出することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付する図面は視覚的表現を提供し、ここに開示する模範的な具体化をより一層十分に
説明するために使用され、そして本技術において熟練した者によってより一層良好にそれ
らおよびそれらの固有の利益を理解するために用いることができる。これらの図において
、同様の参照番号は対応する要素を明らかにする。
【0020】
【
図1】1Aおよび1Bは、経管的減衰フローエンコーディング(TAFE)フォーミュレーション(定式化)の導出のために考慮することができる多くの可能な動脈入力関数のうちの2つを例示する。
【
図2】本発明の実施態様に従って血管の模式図を例示する。
【
図3】3A-3Bは、本発明の実施態様に従って流量および経管的減衰勾配(TAG)およびTAGおよびボーラス持続時間の関係を例示する。
【
図4】本発明の実施態様に従ってセグメント化された動脈網の選定された部分の模範的な概略図を例示する。
【
図5-1】5Aは、本発明の実施態様に従ってTAFEフォーミュレーションからQを定める定量的な例を示す。
【
図5-2】5B-5Cは、本発明の実施態様に従ってTAFEフォーミュレーションからQを定める定量的な例を示す。
【
図6】本発明の方法500に従って、ステップを詳述するフローダイヤグラムを例示する。
【
図7】7A-7Bは、本発明の実施形態に従ってCFDデータから部分的な容量平均化効果を評価するための方法を例示する。
【
図8】本発明の実施態様に従って異なるボクセル分解能について70%エリア絞扼(area constriction)を伴う狭窄のためのCFDシミュレートされたコントラスト濃度プロファイルを例示する。
【
図9】本発明の実施態様に従って、目下の方法を実践するためのプロセスの概要を例示する。
【
図10】本発明の実施態様に従って特定の患者データについて結果をモデル化するグラフを例示する。
【
図11】本発明の実施態様に従って、CFDモデルの境界条件を提供する目的のために、QまたはTAFEを定める量的な例を示す。
【
図12】本発明の実施態様に従って、計算モデル(すなわちCFD算出)について目下の方法を実践するためのプロセスの概要を例示する。
【
図13】選定された動脈網についてコントラストCT血管造影画像データのTAFE対応TAG情報(TAFE-ready TAG information)への変換に関連するステップのフローダイヤグラムを例示する。
【
図14】動脈網の関心ある選定されたエリアについてTAFEからCFVを得ることに関連するステップのフローダイヤグラムを例示する。
【
図15】選定された動脈網において動脈についてTAFEから冠血流予備比を決定することに関連するステップのフローダイヤグラムを例示する。
【
図16】[0035]選定された動脈網における関心あるエリアにおいて動脈についてTAFEから圧力勾配(PG)および損失係数(K)を得ることに関連するステップのフローダイヤグラムを例示する。
【
図17】選定された動脈網の関心あるエリアにおける動脈についてTAFEからFFRを取得するプロセスを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な記載、今回ここに開示する主題は次に添付図面を参照してより一層十分に説明す
るが、そこでは、本発明の、すべてではないが、いくらかの実施態様を示す。同様な番号
は全体を通して同様な要素に言及する。本開示の主題は、多くの異なる形態で具体化する
ことができ、そしてここに記載された実施態様に制限されると解釈されるべきではなく、
むしろ、これらの実施態様は、この開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される
。実際、多くの修飾およびここに記載される本開示の主題の他の実施態様は、本開示の主
題が前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有することに関係するこの
技術における熟練者(当業者)に思い浮かぶであろう。したがって、本開示の主題は、開
示された特定の実施態様に制限されず、および修飾および他の実施態様が添付の請求の範
囲内に含まれると意図されていることが理解されるべきである。
【0022】
本発明に従う実施態様は動脈網の選定された部分において動脈狭窄の機能的な重症度を
非侵襲的に定めるための方法を提供する。本方法には、冠動脈コンピュータ断層撮影血管
造影スキャン(CCTA)を用いてペイシェントの動脈網内のコントラスト剤の濃度に関連す
るペイシェントの特定のデータを集めることが含まれる。ペイシェント特定データは安静
からか、またはストレス下に収集することができる。代わりに、損失係数(K)の推定の
使用は、ストレス下に収集されたデータについての必要性を排除するために用いることが
できる。ペイシェント特定データは、ペイシェントの動脈網の選定された部分についてペ
イシェント特定の経管的減衰勾配(TAG)を計算するために用いられる。データは分析の
任意の段階にて撮像アーティファクトを修正することができる。ペイシェント特定TAGは
(The patient specific TAGis)、ペイシェントについて動脈血流速度、圧力勾配、動脈
血流予備比(arterial flow reserve)、および/または血流予備量比(fractional flow
reserve)の推定を定めるのに用いられる。次いで、動脈血流速度、圧力勾配、動脈血流
予備比、および血流予備量比は、狭窄の機能的な重症度を推定するのに用いることができ
る。
【0023】
より一層具体的には、方程式(1)は、CTCAにおいてHU(ハウンズフィールド単位)に
よって測定される動脈の減衰に概して比例する断面平均されたコントラスト(造影剤)濃
度Cについての一次元移流方程式を表す。
【数1】
式中、C
(t, s)は時間(t)および動脈における軸方向位置(s)の関数である。
[外1]
が定数であると仮定すると、式(1)の解は次のように近似することができる。
【数2】
式中、C
小孔はs=0、すなわち、冠動脈口での濃度の時間変動であり、そして本発明者ら
は、C
小孔(t)を動脈入力関数(AIF)と称し、およびV(s)は
[外2]
によって与えられる管容量である。Eq. (1)〔式(1)〕に基づき、二つの軸方向位置S
1お
よびS
2の間の濃度勾配は、実際それはTAGであり、以下をもたらす。
【数3】
式中、
[外3]
は平均断面積であり、および
[外4]
は動脈における二つの軸方向位置の間の点への軸方向距離である。このように、TAGは平
均流速、
[外5]
に反比例するが、また、動脈入力関数(AIF)、C
小孔(t)に関連する。
図1Aおよび1Bは
、本発明者らが考えているAIFモデルの二つの特定のタイプを示す。AIFプロファイルはCT
スキャンから入手可能であり、およびまた他の代表的なプロファイルを採用することもで
きる。
AIFの最も単純な近似は線形ランプ関数である(
図1A)。
【数4】
式中、C
最大およびC
最小は小孔での最大および最小濃度であり、t
sはボーラスの到達時
間であり、およびT
dはボーラスの到達および最大強化の間の時間遅延である。方程式(3
)中に方程式(4)を代入すると、TAGは、t=t
s+T
dにて以下のように推定される。
【数5】
式中、TAG*は、cm
-1の単位を有する小孔での密度上昇によって正規化されるTAGである
。本発明者らは、
[外6]
について解くことで、TAG*、平均断面積(
[外7]
)の関数として動脈流(ml/分)についての簡単な式に到達する。
【数6】
いくつかのケースでは、AIFは、非線形関数、たとえば、コサイン(余弦)関数のよう
なものによって(
図1B)以下のように記述することができる。
【数7】
式中、C
maxおよびC
minは、小孔にて最大および最小濃度であり、t
sはボーラスの到達時
間であり、およびT
dはボーラスの到達および最大強化の間の時間遅延である。方程式(3
)中に方程式(7)を代入すると、TAGは、t=t
s+T
dにて以下のように推定される。
【数8】
式中、TAG*は、cm
-1の単位を有する小孔での密度上昇によって正規化されるTAGである
。本発明者らは、
[外8]
について解くことで、TAG*、平均断面積(
[外9]
)、管容量(
[外10]
)およびボーラス持続時間T
dの関数として動脈流(ml/分)についての簡単な式に到達す
る。
【数9】
【0024】
上記の方程式中のすべてのパラメータは、目下の、慣習的なCTA試験を用いて難なく入
手可能である。式(6)および(9)(ならびに他の関連する方程式)でのように、
[外11]
の計算もまた、経管的減衰フローエンコーディング(TAFE)として言及することができる
。
図2は血管の概略図を示し、上記のパラメータを用いて標識される。
図2において例示す
るように。管セグメント(10)は近位端(12)および遠位端(14)、および少なくとも部
分的にそれらの間に延在する血管の長さ
[外12]
を有する。平均断面積
[外13]
は、合計の管容量および管長さにより算出することができる。管容量Vはまた、全体の管
について、および特に、管長さ(16)にわたって定めることができる。
【0025】
一例として、コントラスト分散ダイナミクスのCFDシミュレーションは、TAGおよびAIF
の間の提案された関係ならびに流れおよびTAGの間の基本的な関係を確認するために、生
理学的な流れの条件の下で、
図3A-3Bに示すように、冠状動脈狭窄の単純なモデルにおい
てコサインAIF(式7)を用いて実行された。これらのデータは、TAGでのAIF持続時間(T
d
)の効果を実証し、ならびにTAGおよび方程式(8)に詳述される1/Q
2の間の線形関係を確
認する。
【0026】
動脈網についてTAFEを定式化するために、最初、動脈網の選定される部分のセグメント
の接続性が識別されるべきである。
図4は、動脈網の選定された部分で、本発明の実施態
様に従って、セグメント化された模範的な概略図を示す。
図4に示すように。動脈網(100
)には、(1)-(5)により標識されるセグメントが含まれる。線形ランプ関数AIF(式4
)について、式(5)および(6)は修飾することなく任意のセグメントに適用することが
できる。コサイン関数AIF(式7)のために、各セグメントについて遅延時間を考慮すべき
である。方程式(10)は、コサインAIFのための動脈網内の任意のセグメント(n)につ
いてTAGの表示を示す。
【数10】
ここで、上流セグメントについての和は、冠動脈小孔までのすべてのセグメントを含む
必要がある。方程式(11)は模範的な動脈網において標識されるセグメント(3)につい
てのTAGの表示を示す。なお、冠動脈小孔までの(3)の上流セグメントが(1)および(2
)であることは注目される。
【数11】
【0027】
上記の表示に基づいて、以下の方程式で説明するように、TAFEに基づくQはまた、動脈
網の選定される部分について定めることができる。式(10)から、TAGは、セグメント(n
)について方程式(12)によって与えられる。
【数12】
ここで、本発明者らは、スケーリングされるTAGを規定し、それは単位(sec
2/mL)、
【数13】
および分枝遅延時間、τ(秒)を有する。
【数14】
最後に、特定の動脈セグメントを通る流量は次によって与えられる。
【数15】
方程式(12)は、動脈網のセグメント、nの選定された部分における流れ推定のための
式を表す。
【0028】
断面積の変動、A(s)での詳細情報が入手可能でない場合、管容量は線形テーパを仮定す
ることによって近位および遠位の断面積のみにより推定することができる。
図2に概略的
に示されるテーパ管のために、全体の管容量を以下によって推定することができる。
【数16】
式中、A
近位およびA
遠位はそれぞれ、近位端(12)および遠位端(12)での断面積であ
る。軸方向
[外14]
において最大で中間までだけの管容量が次式で与えられる。
【数17】
【0029】
ここで、冠状動脈流量推定の例は、
図4に示す典型的な動脈網について与えられる。線
形ランプ関数AIFについて、各セグメントを通る流量は、式(6)と同じ定式化を用いるこ
とによって推定することができる。
【数18】
コサイン関数AIFについて、流量は式(15)を適用することによって推定される。標識さ
れた最初のセグメント(1)は上流のセグメントをもっていないので、流量Q
1は、次のよ
うにTAFEによって与えられる。
【数19】
式中、
[外15]
は方程式(14)を用いて定めることができ、およびTAG
1
”は方程式(13)を用いて定めら
れる。式(19)がτ=0を有する式(15)から導かれることは注目される。今回、標識され
たセグメントについてのQ
2(2)は式(15)から直接、以下のように与えられることは注
目される。
【数20】
式中、τ
1は、標識された最初の管セグメント(1)が標識された第二の管セグメント(
2)に先行するように、V
1およびQ
1を用いて式(14)を使用して定められる。同様に(Sim
ilary)、標識された第三のセグメント(3)についてQ
3は以下によって定められる。
【数21】
τ
2は、最初のセグメント(1)および第二のセグメント(2)の双方が第3セグメント(
3)に先行するように、V
jおよびQ
jの和を用いて算出される。標識されたセグメント(4)
のためのQ
4は以下によって定められる。
【数22】
セグメント(4)についての小孔に対する上流セグメントがセグメント(1)だけである
ため、セグメント(4)についての分枝遅延時間はτ
1と同じである。最後に、標識された
セグメント(5)についてのQ
5は、次式で与えられる。
【数23】
セグメント(5)について上流セグメントが(1)および(2)であることは注目される
。
【0030】
図5は実際の冠動脈モデルシミュレーションについてQを定める定量的な例を示す。
図5A
は、CTスキャンデータにより作成された実際の冠動脈モデルにおける流れおよびコントラ
スト分散の計算流体力学(CFD)シミュレーション結果を示す。主要なLAD〔左前下行(le
ft anterior descending)〕ブランチ(400)には、3分枝部を伴う四つのセグメントS1~
S4が含まれる。
図5Bは、LADブランチ(400)に沿って正規化されたコントラスト分散を示
す。
図5Cは、定式化(12)を用いて、各セグメント(S1~S4)を通した流量の推定を示す
表であり、および推定流量、Q
TAFEはフルCFDシミュレーション、Q
CFDによって得られる実
際の流量と比較される。
【0031】
図6は本発明の方法(500)に従いステップの詳細なフローダイヤグラムを例示する。ス
テップ(502)には、ペイシェントの動脈網の関心ある少なくとも一のセクションを定め
ることが含まれる。次に、ステップ(504)には、動脈網内の各動脈セグメントについて
少なくとも一の上流セグメントの識別が含まれる。各選定されたセグメントについての平
均面積および容量は、ステップ(506)において冠動脈血管造影データを用いて定められ
る。各セグメントにおける流量は、ステップ(508)において、式(13)、(14)、(15
)と共に最も上流の分枝から順に定められるべきである。各セグメントにおいて圧力勾配
は、ステップ(510)において流量および幾何学情報を用いることによって算出すること
ができる。圧力勾配は、動脈狭窄の機能的有意性を定めるために用いることができる。こ
れらのステップは、安静およびストレス条件において所定のペイシェントについて行うこ
とができ、およびこれらの二つの条件から得られた流量および/または圧力情報は、狭窄
の機能的有意性の別の尺度を提供する。これらのステップはまた、コンピュータ、非一時
的なコンピュータ可読媒体、または代わりに、CTスキャナに組み込まれたコンピューティ
ングデバイスまたは非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて行うことができる。実際に
、この技術における熟練の者(当業者)に知られ、またはその者によって考えられる計算
の任意の適切な方法を使用することができる。また、特定の式がここに詳述されているが
、これらの式の変形をも誘導することができることに留意すべきであり、およびこの適用
には、当業者にとって知られ、またはその者によって考えられうる任意のそのような式が
含まれる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、コンピュータによって読み取ることがで
きる製品の任意の物品を意味すると理解される。そのような非一時的なコンピュータ可読
媒体には、これらに制限されないが、磁気媒体で、たとえば、フロッピーディスク、フレ
キシブルディスク、ハードディスク、リールツーリール(オープンリール式の)テープ、
カートリッジテープ、カセットテープまたはカードなどのようなもの、光媒体で、たとえ
ば、CD-ROM、書き込み可能なコンパクトディスク、ディスク、テープまたはカード形式で
の磁気光学媒体などのようなもの、紙媒体で、たとえば、パンチカードおよび紙テープな
どのようなものが含まれる。コンピューティングデバイスは、この目的のために特別に設
計された特殊なコンピュータであることができる。コンピューティングデバイスは、本発
明にとって特有であり、および本発明の方法を実行するように特別に設計することができ
る。すべての操作上のコンピュータ断層撮影(CT)スキャナは、スキャナの操作を行い、
およびスキャナによって作り出される撮像データを受けとるために特別に設計されたCTス
キャナの独自のマスターコントロールセンター(proprietary master control center)
であるコンソールをもつ。典型的には、このコンソールは、専用コンピュータ、カスタム
キーボード、およびマルチプルモニタで構成される。二種の異なるタイプのコントロール
コンソールがありえ、一つはCTスキャナのオペレータによって使用され、および他は医師
によって使用される。オペレータのコンソールは、画像の厚さ、チューブ電流/電圧の量
、ペイシェントテーブルの機械的な動きおよび他の放射線技術要素などのような変数をコ
ントロールする。医師の視聴コンソール(viewing console)は、通常のスキャナ動作に
干渉することなく画像を見ることを可能にする。このコンソールは基本的な画像解析(ru
dimentary image analysis)が可能である。オペレーティングコンソールのコンピュータ
は、スキャナとの両側性(入出力)通信についてスキャナメーカーによって特別に設計さ
れた非汎用的なコンピュータである。それは、地元の小売店で購入することができる標準
的なビジネスまたはパーソナルコンピュータではない。さらに、このコンソールのコンピ
ュータは、スキャナのハードウェアを具体的に動作させるためにコンピュータハードウェ
アについてスキャナメーカーによって設計され、および書かれている独自のカスタム構築
されたソフトウェアの履行を介して、スキャナとの通信を行う。
【0032】
CT血管造影法において、CT画像の空間分解能は、スキャナのボクセルサイズによって制
限され、それは近代的なマルチディテクタCTスキャナ用に約0.5mm
3である。このことは、
たとえば、
図7Bに示すように、動脈の直径2mmセクションの内腔がわずか約12ボクセルに
よって解決されることを意味する。内腔の外側のエッジでのボクセルは任意の所定の断面
での平均減衰率の推定における誤差につながる管腔の外側に部分的に配置されてもよい。
異なる構造から同じボクセルへの密度のこの「混合」は、部分的な容量平均化(PVA、par
tial volume-averaging)として知られ、およびすべての断層イメージングモダリティ(t
omographic imaging modalities)についての固有の限界(inherent limitation)である
。
【0033】
CFDデータからこれらの効果を評価するために、シミュレーションドメインは仮想ボク
セル格子(virtual voxel lattice)中に埋め込まれ、および
図7に例示するように、平均
減衰値は所定の軸方向位置(S)にて再評価される。この手順はCTCAにおいて減衰の推定
を擬態し、およびHU*
ボクセルは、これらの測定において内在するPVAの効果を組み込む。
このアプローチを使用することにより、
図5Aおよび5Bに例示するように、単純な初期シミ
ュレーションが、70%のエリア収縮を有するケースについてPVAの効果およびTAGでのその
効果を推定するために実行される。より一層具体的には、
図7A-7BはCFDデータから部分的
な容量平均化効果を評価するための方法を例示する。
図7Aは減少する管腔エリアを伴うCF
Dモデル化された管において複数の断面スライスを例示する。
図7Bに例示した二つの断面
図は、それぞれ以下の式を用いて、部分的な容量平均化を伴わない、および伴う0.5mm
3の
ボクセルサイズを考慮した理論的な減衰結果について式に従ってシミュレートされたCTの
減衰を表す。
【数24】
式中、HU
ボクセル(s)は所定の軸方向位置、sでの平均減衰値である。N
管腔は軸方向位
置、sで管腔をカバーするボクセルの数であり、およびHU
iはi番目のボクセルについての
平均減衰であり、Viはボクセルの容量であり、HU*
ボクセルは正規化平均減衰値であり、
およびCはヨウ素濃度である。結果は、PVA効果が、測定されるTAGを増加するように管テ
ーパと組み合わされ、およびPVAと管の弯曲/蛇行の組合せが、減衰プロファイルにおいて
スプリアス動揺(spurious fluctuations)を発生させることを指し示した。しかし、CFD
モデリングは、エクスビボと連動させることができるが、ファントム研究はPVA効果につ
いてTAFE定式化を補償するために使用することができ、ここでは、さらに説明される。
【0034】
図8は、CFDが0.5 mm
3、0.25 mm
3のボクセル解像度について70%のエリア絞扼(エリア
緊縮、area constriction)のための正規化された減衰プロファイル、および無限の空間
分解能を伴う理論的プロファイルについてのケースをシミュレートしたことを示す。空間
分解能(増加した部分的な容量平均化)を減少させることにより、TAGの過大評価が生じ
る傾向がある。部分的な容量効果によりもたらされる人工的に一層高いTAG値を説明する
ために、
図8に示すように、補正率、δ
1およびδ
2を履行することができ、それはCTAのボ
クセル分解能を説明する。複数の空間解像度および固定されたテーパでの計算シミュレー
ションから、δ
1は、最も典型的に使用されるボクセル解像度のための3.5にほぼ等しい(
ほぼ0.4×0.4×0.4mm)。
【数25】
【0035】
一例として、このセクションでは、
図9に例示するように、LAD疾患を有するペイシェン
トにおける絶対的な流量測定のための実在のCT血管造影データに、式(25)を適用するプ
ロセスを概説する。方程式(25)に示すように、3D(三次元)CT取得後、流量計算のため
にCTデータから抽出される必要がある合計で4つの変数がある。これらの変数のうち3つ(
[外16]
、
[外17]
、TAG*)は、(704)および(706)に示すように、管の静的CTCA画像から直接的に生じ、
および一の変数(T
d)は、(708)および(710)に示すコントラスト注入後にAIF(一時
的なコントラスト濃度)から導き出される。
図9においてプロセスを要約するため、心臓
全体の3Dアイソテンポラル(isotemporal)が(702)において示されてから、三つの主要
な冠状血管の多面再編成(multiplanar reformations)が生成され、それは(704)に例
示されるように、ストレート管ビューを提供する。次いで、ソフトウェアは、管腔密度を
測定するために二つのユーザ定義の近位および遠位の境界位置の間の管長さの関数として
用いられる。変数
[外18]
は、小孔からユーザ定義の点までの管容量として定義され、および
[外19]
は管の長さにわたって平均断面積として規定される。TAGは、(706)に例示するように、
正規化された管腔密度対距離プロットの傾きとして規定される。方程式(21)について必
要なコントラスト分散の時間的な要素を(710)に示される時間密度曲線から取得し、そ
れは、CTA取得の最適なタイミングまたはトリガリングを可能にするため、スキャンニン
グに先立って、(708)に例示するように、下行大動脈において測定される。それは通常
、標準CTCAにおいて用いられないが、この一時的AIFデータは、CT生データにおいて蓄え
ることができ、およびT
dの決定について難なく再構成される。スキャナおよびボクセル解
像度に依存するPVA修正、δ
1およびδ
2についてパラメータは、キャリブレーションテス
ト(較正試験)を行うことによって定めうる。一旦すべてのパラメータが分離されると、
方程式(25)は動脈流を計算するために用いることができる。
【0036】
CFDシミュレーションに加え、上記の定式化を導くため、方程式(25)はまた、たとえ
ば、絶対血流量を計算するために、LAD狭窄の虚血性イヌのモデルにおいて、ならびに閉
塞性および非閉塞性冠動脈疾患を有するペイシェントにおいて用いることができる。しか
しながら、これらの適用は、単純に例であり、および制限的と考えるべきではない。
【0037】
一例として、[0035]に説明するアプローチはイヌ科動物のCT測定に適用した。このデー
タセットは、同時にマイクロスフェア注入を伴うプロトタイプ256-CTスキャナを用いてCT
撮影を行ったLAD狭窄の4体のイヌ科動物のモデルで構成された。このプロトタイプスキャ
ナの制限された時間分解能にもかかわらず、方程式(25)の画像解析およびアプリケーシ
ョンは、29±10ml/分の安静時(resting)冠血流量(LAD+LCx)を実証した。冠血流プロ
ーブはこの研究で使用されなかったが、この結果は以前に出版された同様のサイズのイヌ
での直接的なプローブ由来の測定値、31±8 ml/分と非常に類似する。
【0038】
さらに、式(25)から導き出される流れおよびマイクロスフェアMBFの間に良好な相関
関係があった(R=0.89、p<0.001)。このように、制限された前臨床パイロットデータセ
ットにおいて、方程式(21)はLADおよびLCxによって供給されるテリトリアル(縄張り)
フローを正確に定める能力を提供すると考えられ、および文献に報告されたものと一致す
る絶対合計冠血流値を提供する。
【0039】
一例として、[0035]に説明するアプローチは、ペイシェントのデータセットに適用した
。この臨床データセットは、Johns Hopkins University(ジョンズ・ホプキンス・ユニバ
ーシティー)で行われるCORE320多施設試験において登録された9体のペイシェントから成
った。CORE320におけるペイシェントは冠動脈CTA、ストレスCTおよびSPECT心筋かん流イ
メージングを受けた。すべてのAIFデータを収集した。
図1はこの分析に含まれるペイシェ
ントについてAIF関数を示し、線形または余弦AIFモデルの完全な一致が実証され、それは
さらにデータセットに方程式(25)を適用するためにコンフィデンス(信頼)を与えた。
平均合計冠血流(LAD+LCX+RCA)は123.4±66ml/分であった。心筋質量のために修正した
場合、合計心筋流は0.86±0.39ml/g/分であった。これらのデータは、O15-PETによってヒ
トにおいて見られる安静MBFとほぼ同じである。参照標準によって正常対異常な灌流(SPE
CT心筋血流イメージング)のペイシェントを比較したとき、TAGは単独で虚血性および非
虚血性テリトリー(地域)(p=0.93)の有意な差を示さなかった。しかし、TAGが小孔に
て密度上昇によって正規化され、および方程式(25)が適用されたとき、統計学的に有意
な差が合計冠血流において存在し、正常および虚血ペイシェントにおいて、それぞれ、14
2ml/分対71ml/分であった(p=0.04、
図9を参照)。人間のCT研究におけるこれらの予備的
データからの結果は、式(25)が正確に冠血流量を測定し、およびSPECTによって決定さ
れる心筋かん流異常を予測することができる一方、TAGはAIFを説明することなく、そうす
ることはできないことを示す。
【0040】
方程式(25)は、簡略化された計算モデルからAIFの特定のタイプのために導出され、
およびイヌとヒトのデータの限られたセットに対するこの式の予備的な評価は非常に有望
であり、そして実現可能性を実証する。しかしながら、その表現はさらに、任意のAIFお
よび流量波形関数(flow wave form function)を組み込むために一般化することができ
る。概して、対流方程式、式(1)の解は以下によって与えられる。
【数26】
式中、τは遅延時間およびQ(t)は流量が変動する任意の時間である。あるものは流量が
変動する時間および次の形態によるその時間積分を表することができる。
【数27】
式中、
[外20]
は平均流量である。式(3)、(26)および(27)から、本発明者らは平均流量について
次の式を得ることができる。
【数28】
式中、τ′=t-τである。方程式の上記システムが二つの未知数、τ′、
[外21]
を有するので、TAGが測定される場合、任意のAIFおよび流量波形について平均流量
[外22]
を見出すためにそれを解くことができる。そのようにして、方程式、式(28)のシステム
は、任意のAIFおよび流量波形について一般的なTAFE式である。
【0041】
FFRは、狭窄の評価におけるゴールドスタンダードと考えられる一方、上述する方法は
、狭窄重症度の他の指標を得るために適用することができる。特に、ペイシェントの動脈
網の関心あるセクション内の圧力勾配(PG)の推定は、動脈血流速度、動脈入力関数、動
脈内の動脈管腔エリア、位置および配置の情報を用いて取得することができ、そして一旦
狭窄を横切る圧力降下および流速が上記の方法を用いて定められると、狭窄の機能的重症
度はまた、以下で定義される損失係数の観点から定めることができる。
【数29】
式中、Qは狭窄の上流の流量(TAFEから入手される)であり、およびAは狭窄の上流の管
腔エリアである。上記の手段の利益は、それが事実上流量独立性であり、および安静の条
件での単一スキャンにより取得することができることである(すなわち、最大充血にて第
二のスキャンについて必要性はない)。また、狭窄を横切る圧力降下の推定はFFRに変換
しうる。
【0042】
本発明に係る方法は、動脈のカルシウムフリーセクションにわたってペイシェントの特
定の経管的減衰勾配(TAG)を取得すること、および所定の血管または心室の配置でのコ
ントラストの時間変動を定める(動脈入力関数または入力ボーラスプロファイルと呼ばれ
る)ことを提供する。本方法にはまた、TAGおよびAIFを用いて動脈内の血流予備量比(FF
R)の推定値を算出すること、および重度石灰化を伴う血管における動脈狭窄の機能的有
意性を定めるためにFFRを用いることが含まれる。この技術は、CT空間的分解能および部
分容量平均化の効果についてTAG値を修正するための方法を含むことができる。この技術
にはまた、管の蛇行、弯曲および部分的容量平均化の効果についてTAG値を修正するため
の方法が含まれる。本方法にはまた、動脈狭窄の機能的有意性を定めるためのプロトコル
が含まれ、流速を算出するためにダイナミックCT取得を介してコントラスト濃度対時間デ
ータを取得することが含まれる。
【0043】
流速は、主動脈ならびに同様にコントラストの測定が利用可能なサブブランチの全てで
得ることができる。したがって、本方法は、様々なブランチにおいて流量の相対的な大き
さを提供することができ、およびこの情報は、冠動脈狭窄の機能的有意性の別の尺度を開
発するために、他の情報または数学的モデルと組み合わせることができる。
【0044】
TAGから(TAFEを介して)得られる流速は、脈管構造の計算モデル〔たとえば、計算流
体力学(CFD)モデル〕について境界または初期条件を提供するために用いられうる。次
いで、計算モデルは、圧力分布および関連する評価指標で、たとえば、FFRおよびPGのよ
うなものを予測するために用いることができた。このことは、上流(大動脈など)および
下流脈管構造のモデル化の必要性を排除し、およびCFDベースのモデル化の計算費用およ
び複雑さを低減する。
図10および11は、このアプローチの実施態様を示し、TAFEはCTAか
らコントラスト分散データを取得し、および関連するすべての管についてそれを流量に変
換する(coverts)。これらの流量は次に、計算モデルについて流入および流出境界条件
を生成する。
【0045】
ここで説明する方法は、正常血管において、異常な血管ならびに投薬、ステント、移植
片などのような薬物療法に供される管において用いることができる。本方法は、安静にお
いてだけでなく、たとえば、ストレスなどのような他の条件においても適用することがで
きる(運動または投薬を経て誘導される)。
【0046】
コントラストの測定は、同時に測定されるECG(心電図)を含め、様々な入力によって
引き起こされることができる。
【0047】
図12は、本発明の実施態様に従う計算機モデル化(すなわち、CFD計算)のためのこの
方法を履行するためのプロセスの概要を例示する。ステップ800はCTAから関心ある損傷ま
たは動脈セグメントを定めることである。ステップ802においては、関心あるセグメント
での流れまたは圧力をもたらすローカル(局所)動脈網において隣接する動脈が定められ
る。ステップ804には、上記で識別されるローカル動脈網について流入および流出の境界
条件を定めるためにTAFEを用いることが含まれる。ステップ806において、境界条件は、
ローカル動脈ネットワークにおいて血流をシミュレートするために用いられ、そしてステ
ップ808において、ローカル動脈網において圧力が定められ、およびFFR、PG、損失係数は
関心ある各セグメントまたは損傷について定められる。
【0048】
図13は、選定される動脈網についてコントラストCT血管造影撮像データのTAFE対応TAG
情報(TAFE-ready TAG information)への変換に関連するステップのフローダイヤグラム
を例示する。ステップ902は関心ある領域904および関心ある領域内に配置される動脈網90
6を例示する。動脈網906はTAFE分析について識別される。ステップ908において、中心線
は、分析のために確認される動脈網について識別される。管腔分析はステップ910におい
て行われる。ステップ912では、この情報はTAG推定を算出するために使用され、およびス
テップ914においてTAFE分析がデータに対して実行される。
【0049】
図14は、動脈網の関心ある選定されるエリアについてTAFEからCFVを得ることに関連す
るステップのフローダイヤグラムを例示する。フローダイヤグラム1000では、CTスキャン
は、ペイシェントに関連するデータを収集するために、ステップ1002において実行される
。ステップ1004では、血管造影はペイシェントに関連するデータを用いて生成され、そし
てステップ1006では、AIFが算出され、およびペイシェントに関連するデータを用いてグ
ラフ化される。ステップ1008において、コントラスト分布およびTAGは血管造影法から算
出される。TAGおよびAIFはステップ1010においてTAFE分析を計算するために用いられる。
また、ステップ1010のTAFE分析は、ステップ1012において述べるように、スキャナ特性で
、たとえば、解像度などのようなものに基づく入力を含むことができる。TAFE分析はステ
ップ1014において冠状流速を決定するために使用される。
【0050】
図15は、選定される動脈網において動脈についてTAFEから冠血流予備量比の決定に関連
するステップのフローダイヤグラムを例示する。フローダイヤグラム1100において、デー
タは、安静およびストレスの双方で、関心ある動脈網についてペイシェントから取得され
なければならない。ステップ1102において、ペイシェントは安静状態にされる。この状態
では、上述のように、ステップ1104において、冠動脈流速はTAFE分析から取得される。ス
テップ1106において、Q
安静はまた上述のように定められる。ステップ1108において、ペ
イシェントはストレス状態にされる。ストレス状態では、上記のように、ステップ1110に
おいて、冠動脈流速はTAFE分析から取得される。また、上述のように、ステップ1112にお
いて、Q
ストレスは定められる。冠血流予備(CFR)は、ステップ1114において、Q
ストレ
スおよびQ
安静の間の比として定められる。
【0051】
図16は、選定される動脈網において関心あるエリアにおける動脈についてTAFEからの圧
力勾配(PG)および損失係数(K)を取得することに関連するステップのフローダイヤグ
ラムを例示する。フローダイヤグラム1200において、上述されるTAFE分析プロセスはステ
ップ1202で実行される。ステップ1204において、上述のように、TAFE分析はまた、冠動脈
流速を定めるために用いられる。ステップ1206において、流入および流出速度の境界条件
は選定された動脈網において関心ある領域について定められる。3D動脈内腔形状は、血管
造影法から算出され、およびステップ1208において、3D動脈内腔形状、ならびにCFVおよ
び流入と流出の速度の境界条件に関する情報が、ステップ1210において、関心ある動脈網
の計算流体力学(CFD)モデリングを実行するために用いられる。コンピューティングデ
バイス、サーバ、タブレット、スマートフォン、または他のコンピュータは、ステップ12
12に例示するように、これらのステップを実行するために使用することができる。圧力勾
配(ΔP)は、ステップ1214において算出され、および損失係数は、ステップ1216におい
てEQ.(式)29を用いて算出される。
【0052】
図17は、選定される動脈網の関心あるエリアにおいて動脈についてTAFEからのFFRの取
得のプロセスを例示する。フローダイヤグラム1300において、上述のTAFE分析プロセスは
ステップ1302において実行される。ステップ1304では、また、上述のように、TAFE分析は
冠動脈流速を定めるために用いられる。ステップ1306では、流入および流出の速度境界条
件は、選定される動脈網において関心あるエリアについて定められる。3D動脈内腔形状は
血管造影法から、およびステップ1308においては計算され、3D動脈内腔形状ならびにCFV
および流入と流出の速度境界条件に関する情報は、ステップ1310において、計算流体力学
(CFD)モデリングを実行するために用いられる。ステップ1312に例示するように、コン
ピューティングデバイス、サーバ、タブレット、スマートフォン、または他のコンピュー
タはこれらのステップを実行するために用いることができる。圧力勾配(ΔP)はステッ
プ1314で算出される。ステップ1316において、生理学的圧力測定値で、たとえば、上腕圧
力などのようなものが得られる。圧力勾配(ΔP)および生理学的圧力測定は、冠動脈小
孔にて絶対圧力を推定するために使用され、およびステップ1318において関心ある動脈に
おいて絶対動脈圧を算出するためにCFDモデルと組み合わされる。ステップ1320において
、FFRはP
遠位およびP
近位の間の比率として算出される。
【0053】
本発明の多くの特徴および利益は、詳細な明細書から明らかであり、そしてそのように
して、本発明の真の精神および範囲内に入る本発明のすべてのそのような特徴および利益
をカバーすることが、添付の請求の範囲によって意図される。さらに、膨大な数の修飾お
よび変形が当業者に難なく想起されるので、本発明が図示および説明される厳格な構成お
よび動作に制限されることは望まれず、そして結果的にすべての適切な修飾および等価物
に頼ってもよく、本発明の範囲内に入る。