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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】透明抗菌フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20230627BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230627BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20230627BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A01N59/16 A
A01P3/00
A01N59/16 Z
A01N59/00 B
A01N25/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021146337
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2022165893
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】110114067
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲トー▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】▲ライ▼ 振和
【審査官】大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-057893(JP,A)
【文献】特開2007-039444(JP,A)
【文献】特開平08-104605(JP,A)
【文献】特開2005-179607(JP,A)
【文献】特開2007-039442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
C08L
C08K
C08J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル材料と、
前記ポリエステル材料に分散する抗菌複合体と、を含み、
前記抗菌複合体の屈折率が1.46~1.66であり、
前記抗菌複合体の粒子径は、20~700nmであり、
前記透明抗菌フィルムの総重量を100重量%として、前記抗菌複合体の含有量は、0.1~2重量%であり、
前記抗菌複合体は、ナノ粉体と抗菌剤とを含み、
前記ナノ粉体は、ケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カルシウム及びリン酸アルミニウムからなる群から選択され、
前記抗菌剤は、リン酸銀、酸化亜鉛及び二酸化チタンを同時に含み、前記リン酸銀の添加重量は、前記二酸化チタンの添加重量の1.2~2.8倍であり、前記酸化亜鉛の添加重量は、前記二酸化チタンの添加重量の25~35倍である、透明抗菌フィルム。
【請求項2】
前記抗菌複合体の粒子径は、50~400nmである、請求項1に記載の透明抗菌フィルム。
【請求項3】
前記リン酸銀の添加重量は、前記二酸化チタンの添加重量の1.5~2.5倍であり、前記酸化亜鉛の添加重量は、前記二酸化チタンの添加重量の28~32倍である、請求項1に記載の透明抗菌フィルム。
【請求項4】
ヘイズ値が2.2%以下であり、光透過率が88%以上であり、屈折率が1.5~1.9である、請求項1に記載の透明抗菌フィルム。
【請求項5】
ポリエステル材料と粒子径が20~700nmである抗菌複合体とを混合することにより、抗菌マスターバッチを製造することと、
前記抗菌マスターバッチを用いて透明抗菌フィルムを形成すること、を含み、
前記抗菌複合体の屈折率が1.46~1.66であり、
前記透明抗菌フィルムの総重量を100重量%として、前記抗菌複合体の含有量は、0.1~2重量%であり、
前記抗菌複合体は、ナノ粉体と抗菌剤とを含み、
前記ナノ粉体は、ケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カルシウム及びリン酸アルミニウムからなる群から選択され、
前記抗菌剤は、リン酸銀、酸化亜鉛及び二酸化チタンを同時に含み、前記リン酸銀の添加重量は、前記二酸化チタンの添加重量の1.2~2.8倍であり、前記酸化亜鉛の添加重量は、前記二酸化チタンの添加重量の25~35倍である、透明抗菌フィルムの製造方法。
【請求項6】
ナノ粉体及び抗菌前駆体を焼結することにより、前記抗菌複合体を得ることを更に含み、
前記抗菌複合体は、前記ナノ粉体と、前記抗菌前駆体で形成された抗菌剤とを含み、
前記抗菌剤は、前記抗菌前駆体と同一の金属を含む、請求項に記載の透明抗菌フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明抗菌フィルム及びその製造方法に関し、特に、ポリエステルを材料として製造された透明抗菌フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル材料は、優れた曲げ強度及び熱変形温度を有すると共に、無毒でリサイクル可能という利点があるので、ポリエステル材料は、様々な分野に応用されており、複数の用途を持っている。例えば、生鮮、若しくは果物や野菜の包装材料、医療スタッフが使用する保護マスク、又はスクリーン保護フィルムが挙げられる。
【0003】
最近、全世界で感染性疾患が流行しているために、環境衛生及び個人伝染病予防は重要とみなされているので、プラスチック材料に抗菌効果を付与する研究は進んでいる。このように、プラスチック材料は、一定時間において、表面のバクテリアを殺すか、バクテリアの成長を抑制することによって、抗菌効果を果たせる。従来の物理や化学消毒に比べて、抗菌プラスチック材料を使用することは、長時間作用性(long-acting property)を有すると共に、抗菌効果が比較的に優れる。
【0004】
従来の抗菌プラスチック材料は殆ど、有機抗菌剤を含むが、有機抗菌剤は、高温に耐えられず、高温環境において割れやすいと共に、揮発性物質が発生する。揮発性物質は、人体や環境に有害であり、食品の包装や人体に接触する製品に適していない。
【0005】
また、ポリエステル材料として、ポリエステル材料の加工温度(270~290℃)は、ポリエチレン又はポリプロピレンの加工温度(170~240℃)より高いので、抗菌のポリエステル材料を製造する時に、抗菌剤の耐熱性が要求されている。尚、抗菌剤を添加した後に、ポリエステルの光透過率、ヘイズ値及び屈折率に影響するため、市販の抗菌ポリエステル材料は、未だ改良する余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、透明抗菌フィルム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的問題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、透明抗菌フィルムを提供することである。前記透明抗菌フィルムは、ポリエステル材料と抗菌複合体を含む。前記抗菌複合体は、前記ポリエステル材料に分散すると共に、前記抗菌複合体の屈折率が1.46~1.66である。
【0008】
一つの実施形態において、前記抗菌複合体の粒子径は、50~400nmである。
【0009】
一つの実施形態において、前記透明抗菌フィルムの総重量を100重量%として、前記抗菌複合体の含有量は、0.1~2重量%である。
【0010】
一つの実施形態において、前記抗菌複合体は、ナノ粉体と無機抗菌剤である抗菌剤とを含む。
【0011】
一つの実施形態において、前記ナノ粉体は、ケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カルシウム及びリン酸アルミニウムからなる群から選択される。
【0012】
一つの実施形態において、前記抗菌剤は、銀、亜鉛、銅及びチタンの中の少なくとも1種を含む。
【0013】
一つの実施形態において、前記抗菌複合体の重量を100重量%として、前記抗菌剤において、銀の含有量は0~10重量%であり、亜鉛の含有量は0~50重量%であり、銅の含有量は0~30重量%であり、且つチタンの含有量は0~10重量%である。
【0014】
一つの実施形態において、前記透明抗菌フィルムのヘイズ値が2.2%以下であり、前記透明抗菌フィルムの光透過率が88%以上であり、前記透明抗菌フィルムの屈折率が1.5~1.9である。
【0015】
上記の技術的問題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、透明抗菌フィルムの製造方法を提供することである。前記透明抗菌フィルムの製造方法は、ポリエステル材料と抗菌複合体とを混合することにより、抗菌マスターバッチを製造し、次に、前記抗菌マスターバッチを用いて透明抗菌フィルムを形成することを含み、なかでも、前記抗菌複合体の屈折率が1.46~1.66である。
【0016】
一つの実施形態において、前記透明抗菌フィルムの製造方法は、ナノ粉体及び抗菌前駆体を焼結することにより、前記抗菌複合体を得ることを更に含む。なかでも、前記抗菌複合体は、前記ナノ粉体と、前記抗菌前駆体で形成された抗菌剤とを含み、前記抗菌剤及び前記抗菌前駆体は、同様の金属を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有利な効果として、本発明に係る透明抗菌フィルム及びその製造方法は、「前記抗菌複合体は、前記ポリエステル材料に分散する」及び「前記抗菌複合体の屈折率が1.46~1.66である」といった技術特徴により、透明抗菌フィルムは、抗菌効果及び本来の光学特性を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る透明抗菌フィルムの断面模式図である。
図2】本発明に係る透明抗菌フィルムの製造方法のフローチャートである。
図3】本発明に係る透明抗菌フィルムを基材に応用することを示す断面模式図である。
図4】本発明に係る透明抗菌フィルムの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0020】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明に係る「透明抗菌フィルム及びその製造方法」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0021】
[透明抗菌フィルム]
図1に示すように、本発明に係る第1の実施形態において、ポリエステル材料1と、ポリエステル材料1に均一に分散する抗菌複合体2とを含む、透明抗菌フィルムZを提供する。
【0022】
本実施形態において、透明抗菌フィルムZは単層フィルムである。本発明の抗菌複合体2は、良好な温度許容度を有することにより、ポリエステル材料1の加工温度に耐える。故に、抗菌複合体2は、ポリエステル材料1に直接に添加して、簡単なプロセスにより透明抗菌フィルムZを大量に製造することができる。
【0023】
一般的に、一定量の抗菌性化合物を添加した後に、透明抗菌フィルムの光学特性(例えば、ヘイズ値、光透過率及び屈折率)に悪影響を与える。透明抗菌フィルムの光学特性に影響しないために、本発明において、抗菌複合体の成分、屈折率及び粒子径に対して工夫する。このように、透明抗菌フィルムは、本来の光学特性を維持した上で、抗菌効果を更に有する。
【0024】
本発明において、抗菌複合体の屈折率は、1.46~1.66であり、1.50~1.66であることが好ましく、1.60~1.66であることがより好ましく、1.64~1.66であることが更により好ましい。抗菌複合体の屈折率は、標準測定方法JIS K0062で測定される。
【0025】
本発明において、抗菌複合体の粒子径は、20~700nmであり、40~600であることが好ましく、50~400であることがより好ましい。
【0026】
抗菌複合体の屈折率及び粒子径を制御することにより、本発明に係る透明抗菌フィルムは、本来の光学特性、例えば、ヘイズ値、光透過率及び屈折率を維持することができる。例えば、透明抗菌フィルムを食材の包装や医療従事者用保護シールドに応用する時に、可視性を維持するために、ある程度の光透過率を有する必要があると共に、ヘイズ値が高すぎるといけない。透明抗菌フィルムは、スクリーンプロテクターに応用する時に、光透過率及びヘイズ値が規格を満たす以外に、屈折率も要求されている。
【0027】
一つの実施形態において、透明抗菌フィルムのヘイズ値は、2.5%以下であり、2.2%以下であることが好ましく、2.1%以下であることがより好ましい。一つの実施形態において、透明抗菌フィルムの光透過率は、88%以上であり、89%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。一つの実施形態において、透明抗菌フィルムの屈折率は、1.4~2.0であり、1.5~1.9であることが好ましい。
【0028】
尚、透明抗菌フィルムの総重量を100重量%として、抗菌複合体の含有量は、0.1~2重量%であり、0.1~1.5重量%であることが好ましく、0.1~1重量%であることがより好ましい。このように、抗菌複合体が、透明抗菌フィルムの光学特性に悪影響を与えることを回避した上で、抗菌効果と透明抗菌フィルムの製造コストとのバランスが取れる。
【0029】
本発明の抗菌複合体は、ナノ粉体と抗菌剤とを含む。キャリアとしてのナノ粉体は、抗菌剤が付着するための担体として機能する。抗菌複合体は、良好な耐熱性を有し、ポリエステル材料の加工温度の範囲(260~290℃)に置かれたとしても、割れることや揮発性物質を生成することはない。
【0030】
ナノ粉体は、ケイ酸塩またはリン酸塩である。一つの実施形態において、ナノ粉体は、ケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カルシウム及びリン酸アルミニウムからなる群から選択されるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0031】
ナノ粉体及び抗菌複合体の粒子径は類似するか、又はほぼ同一である。即ち、ナノ粉体の粒子径は、20~700nmであり、40~600nmであることが好ましく、50~400nmであることがより好ましい。
【0032】
抗菌剤は、金属イオン又は金属酸化物である。即ち、本発明の抗菌剤は無機抗菌剤であり、より優れた耐熱性を有すると共に、揮発性物質を生成することはない。具体的に、抗菌剤は、銀、亜鉛、銅及びチタンの中の少なくとも1種を含む。抗菌複合体の重量を100重量%として、抗菌剤において、銀の含有量は0~10重量%であり、亜鉛の含有量は0~50重量%であり、銅の含有量は0~30重量%であり、且つチタンの含有量は0~10重量%である。
【0033】
一つの実施形態において、抗菌剤は、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、リン酸銀、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、酸化銅及び二酸化チタンの中の少なくとも1種を含むが、本発明はこれらに制限されるものではない。もう一つの実施形態において、抗菌剤は、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、リン酸銀、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、酸化銅及び二酸化チタンの中の少なくとも2種を含む。好ましくは、抗菌剤は、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、リン酸銀、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、酸化銅及び二酸化チタンの中の任意の3種を含む。一つの好ましい実施形態において、抗菌剤は、リン酸銀、酸化亜鉛及び二酸化チタンの中の少なくとも2種を含む。
【0034】
一つのより好ましい実施形態において、抗菌剤は、リン酸銀、酸化亜鉛及び二酸化チタンを同時に含む。また、リン酸銀の添加重量は、二酸化チタンの添加重量の1.2~2.8倍であり、酸化亜鉛の添加重量は、二酸化チタンの添加重量の25~35倍である。好ましくは、リン酸銀の添加重量は、二酸化チタンの添加重量の1.5~2.5倍であり、酸化亜鉛の添加重量は、二酸化チタンの添加重量の28~32倍である。
【0035】
抗菌複合体の添加により、本発明に係る透明抗菌フィルムは抗菌効果を有する。具体的に、本発明に係る透明抗菌フィルムは、肺炎桿菌(Pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、薬剤耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin resistant staphylococcus aureus)、サルモネラ(Salmonellosis)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して抗菌効果を奏し、詳細な試験結果は以下にて説明する。
【0036】
尚、本発明に係る透明抗菌フィルムは防カビ効果を有する。具体的に、本発明に係る透明抗菌フィルムは、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、ペニシリウム・ピノフィラム(Penicillium pinophilum)、カエトミウム グロボスム(Chaetomium globosum)、グリオクラディウム・ビレンス(Gliocladium virens)、及びアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)の成長を抑制することができ、詳細な試験結果は以下にて説明する。
【0037】
[透明抗菌フィルムの製造方法]
図2に示すように、本発明は、ナノ粉体及び抗菌前駆体を焼結することにより、前記抗菌複合体を得ること(ステップS1)と、ポリエステル材料と抗菌複合体とを混合することにより、抗菌マスターバッチを製造すること(ステップS2)と、前記抗菌マスターバッチを用いて透明抗菌フィルムを形成すること(ステップS3)と、を少なくとも含む、透明抗菌フィルムの製造方法を提供する。
【0038】
ステップS1において、ナノ粉体及び抗菌前駆体を高温炉に投入して焼結し、焼結した後に、抗菌前駆体で抗菌剤を形成すると共に、抗菌複合体を得る。ナノ粉体は、前記ケイ酸塩またはリン酸塩であってもよく、抗菌前駆体は、銀、亜鉛、銅及びチタンの中の少なくとも1種を含む。
【0039】
一つの実施形態において、抗菌前駆体は金属イオンであり、例えば、硝酸銀又は硝酸亜鉛である。抗菌剤は、抗菌前駆体で形成されたものであるので、抗菌前駆体と同様の金属を含む。即ち、抗菌剤は、銀、亜鉛、銅及びチタンの中の少なくとも1種を含む。
【0040】
一つの実施形態において、抗菌前駆体は金属酸化物であり、例えば、酸化亜鉛である。抗菌前駆体は、ナノ粉体と共に焼結しても、自身が変わらない。即ち、抗菌前駆体は、抗菌剤と同一である。
【0041】
焼結して得た抗菌複合体の粒子径は、1~20μmであるので、抗菌複合体が透明抗菌フィルムの光学特性に悪影響を与えることを回避するため、一つの実施形態において、焼結した抗菌複合体に対して更に精製ステップ及び細粒化ステップを行うことにより、抗菌複合体は、20~700nmの粒子径を有すると共に、より高い純度を有する(96%以上)。
【0042】
ステップS2において、均一に混合したポリエステル材料及び抗菌複合体を押出機に投入して造粒を行うことにより、抗菌マスターバッチを製造する。一つの実施形態において、ポリエステル材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートの中の1種又はその混合物であってもよい。好ましくは、ポリエステル材料は、リサイクルのポリエステル材料であり、特に、リサイクルのポリエチレンテレフタレートである。
【0043】
ステップS3において、キャスティング成形により抗菌マスターバッチから透明抗菌フィルムを製造する。透明抗菌フィルムは、様々な抗菌機能を必要する透明製品に応用することができる。
【実施例
【0044】
[抗菌特性の測定]
本発明に係る透明抗菌フィルムが、抗菌効果を有することを証明するために、上述した透明抗菌フィルムの製造方法に基づいて実施例1~3に係る透明抗菌フィルムを製造し、また、比較例1として抗菌剤を含まない透明フィルムを製造したと共に、比較例2として抗菌剤を含むものの抗菌複合体の屈折率が1.66より高い透明抗菌フィルムを製造した。実施例1~3及び比較例2の透明抗菌フィルムの成分は、表1に示す通りである。
【0045】
前記実施例1~3と比較例2に係る透明抗菌フィルム、及び比較例1に係る透明抗菌フィルムに対して、光透過率(Visible light transmission,VLT)、ヘイズ値(Haze)及び抗菌性試験の測定を行い、その結果は、表1に示す通りである。表1において、黄色ブドウ球菌及び大腸菌に関する抗菌性試験は、ISO 22196の規格の測定方法に基づいて行い、抗菌活性値(R)が2.0以上である時に、抗菌効果を有することを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示した結果によると、本発明に係る透明抗菌フィルム(実施例1~3)は、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対して抗菌効果を有する。また、本発明に係る透明抗菌フィルムは、本来の光学特性(光透過率及びヘイズ値)を維持し、抗菌複合体の添加によって悪影響を与えることはない。
【0048】
更に言うと、透明抗菌フィルムの特性は、ニーズに応じて適切に調整することができる。透明抗菌フィルムの抗菌効果に対する要求が高い場合に、抗菌複合体の添加量を増加することができる。このような場合に、透明抗菌フィルムの光透過率は88~90.5%であり、透明抗菌フィルムのヘイズ値は1.9~2.2%である。一方、透明抗菌フィルムの光学特性に対する要求が高い場合に、適量の抗菌複合体を添加することにより、透明抗菌フィルムの光学特性を維持することができる。このような場合に、透明抗菌フィルムの光透過率は90.5~92%であり、透明抗菌フィルムのヘイズ値は0.8~1.9%である。
【0049】
実施例1~3の結果によると、抗菌複合体が複数の抗菌剤を含む場合、特に、リン酸銀、酸化亜鉛及び二酸化チタンを同時に含む場合に、より良好な抗菌効果を得られる。
【0050】
比較例2の実験結果によると、抗菌複合体の屈折率が1.46~1.66の範囲を超える場合に、透明抗菌フィルムは、悪くない抗菌効果を有するが、そのヘイズ値は2.2%以下であることを満たさない。
【0051】
尚、実施例2に係る透明抗菌フィルムは、検査センターに搬送されて抗菌性評価及び防カビ性評価を更に行った。
【0052】
抗菌性評価において、大腸菌及び黄色ブドウ球菌は、ISO 22196の規格試験方法に基づいて抗菌活性値を測定し、サルモネラ、肺炎桿菌、薬剤耐性黄色ブドウ球菌及び緑膿菌は、JIS Z2801規格試験方法に基づいて抗菌活性値を測定した。測定結果は、表2に示す通りである。抗菌活性値が2.0以上である時に、抗菌効果を有することを示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示した結果によると、抗菌活性値はいずれも2より高いので、本発明に係る透明抗菌フィルムは、抗菌効果を有する。注目すべきことは、本発明に係る透明抗菌効果フィルムは、肺炎桿菌及び緑膿菌に対して顕著な抗菌効果を発揮する。
【0055】
クロコウジカビ、ペニシリウム・ピノフィラム、カエトミウム グロボスム、グリオクラディウム・ビレンス及びアウレオバシジウム・プルランスに対する防カビ性評価は、ASTM G21規格試験方法に基づいて行った。試験結果は、表3に示す通りである。ASTM G21規格試験方法によると、防カビ性レベル0は、カビの成長がない。防カビ性レベル1は、カビが微量に成長する(カビの成長面積<10%)ことである。防カビ性レベル2は、カビが軽度に成長することである(カビの成長面積が10~30%である)。防カビ性レベル3は、カビが中度に成長することである(カビの成長面積が30~60%である)。防カビ性レベル4は、カビが厳重に成長することである(カビの成長面積>60%)。
【0056】
【表3】
【0057】
表3に示した結果によると、本発明に係る透明抗菌フィルムは、カビの成長を抑制する効果を奏し、表3に列記したカビはいずれも、本発明に係る透明抗菌フィルムにおいて成長することができない。
【0058】
[透明抗菌フィルムの応用]
図3に示すように、本発明に係る透明抗菌フィルムZは、基材9の両面にそれぞれ透明抗菌フィルムZが設置されるように、基材9に積層されることにより、透明抗菌基材Yが形成されることができる。それによって、基材9にも抗菌及び防カビ効果を与える。透明抗菌フィルムZは、上述と類似するポリエステル1及び抗菌複合体2を含むので、ここでその説明を省略する。
【0059】
一つの実施形態において、基材9の材料は、ポリエステル材料であると共に、透明抗菌フィルムZにおけるポリエステル材料1と類似若しくは同一である。このように、積層する時に、2つの透明抗菌フィルムZは、基材9と一体成形され、図4に示すような透明抗菌基材Yを形成する。
【0060】
図4に示すように、透明抗菌基材Yは、2つの透明抗菌フィルムZ及び基材9で形成されるので、抗菌複合体2は、透明抗菌基材Yに均一に分散することがなく、透明抗菌基材Yの両面に偏在する。このように、透明抗菌基材Yの抗菌効果に悪影響を与えない前提で、抗菌複合体2の使用量を低減して、コストを低減する効果を果たせる。
【0061】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る透明抗菌フィルム及びその製造方法は、「前記抗菌複合体は、前記ポリエステル材料に分散する」及び「前記抗菌複合体の屈折率が1.46~1.66である」といった技術特徴により、透明抗菌フィルムは、抗菌効果及び本来の光学特性を両立することができる。
【0062】
更に言うと、「前記抗菌複合体の粒子径は、50~400nmである」といった技術特徴により、透明抗菌フィルムは、抗菌効果及び本来の光学特性を両立することができる。
【0063】
更に言うと、「前記透明抗菌フィルムの総重量を100重量%として、前記抗菌複合体の含有量は、0.1~2重量%である」といった技術特徴により、透明抗菌フィルムは、抗菌効果及び本来の光学特性を両立することができる。
【0064】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
Z...透明抗菌フィルム
1...ポリエステル材料
2...抗菌複合体
9...基材
Y...透明抗菌基材
図1
図2
図3
図4