(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20230627BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20230627BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230627BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20230627BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230627BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230627BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230627BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20230627BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20230627BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M10/6554
H01M10/6556
H01M10/647
H01M10/625
H01M10/613
H01M50/209
H01M50/291
H01M50/204 401H
(21)【出願番号】P 2021161572
(22)【出願日】2021-09-30
(62)【分割の表示】P 2020547915の分割
【原出願日】2019-03-06
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2018180478
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 修
(72)【発明者】
【氏名】青木 定之
(72)【発明者】
【氏名】小島 和則
(72)【発明者】
【氏名】綿引 祥隆
(72)【発明者】
【氏名】入江 晃
(72)【発明者】
【氏名】菅原 辰夫
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060595(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061894(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013020861(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扁平な電池セルと、個々の前記電池セルを厚さ方向の両側から保持して該厚さ方向に積層させる複数のセルホルダと、該セルホルダを介して前記複数の電池セルを積層方向の両側から支持する複数のプレートと、前記電池セルの底面を覆い、前記複数の電池セルを冷却する冷却部に形成された熱伝導シートに接して設けられる絶縁層と、を備えた電池パックであって、
前記プレートの下端部は、前記絶縁層の下面よりも下方へ突出し、
複数の前記プレートの間には、前記電池セルの前記底面の前記絶縁層に面して、前記熱伝導シートが収容される空間を有し、
前記セルホルダは、前記電池セルの側面を支持する支持部と、前記絶縁層の前記下面の全体を前記冷却部に対して露出させる開口部と、を有し、
前記プレートは、前記冷却部に締結される締結部を有することを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記プレートを前記冷却部に締結する締結部材をさらに備え、
前記プレートは、前記締結部材を挿通させる貫通孔を有していることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記絶縁層と前記冷却部との間に配置された熱伝導シートをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記複数の電池セルの幅方向の両側に配置され、前記セルホルダの側部を介して前記複数の電池セルの狭側面に対向する一対のサイドプレートをさらに備え、
一対の前記サイドプレートの上端部は、前記電池セルの前記幅方向の中央部に向けて屈曲され、前記複数のセルホルダの前記側部の上端部に係合していることを特徴とする請求項
1に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の電池セルを積層した電源装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照。)。この従来の電源装置は、複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、各電池セル同士の間に配置された絶縁性を有するセパレータと、電池積層体を積層方向に締結するための固定部材と、を備えている。
【0003】
この従来の電源装置は、電池セルの外装缶を金属製とし、隣接する電池セルの外装缶同士が接触して短絡するのを防止するために、各電池セルの間に絶縁性のセパレータを介在させている。また、電池セルの外装缶は、結露等による短絡を防止するために、絶縁フィルムで覆われる場合がある(同文献、第0028段落等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、複数の電池セルを備えた電池パックは、製造過程で電池セルの底面を覆う絶縁フィルムが損傷しやすいという課題がある。前記従来の電源装置は、セパレータが電池セルの底面の両端部を被覆する突出片を有している(同文献、第0048段落、
図6、
図7、および
図12等を参照。)。
【0006】
そのため、この従来の電源装置の製造過程で、セパレータを介在させて積層させた複数の電池セルを、たとえば作業台の上に配置すると、電池セルの底面の両端部を被覆するセパレータの突出片が作業台に接する。そして、電池セルの底面と作業台との間に空間が形成される。そのため、作業台と電池セルの底面との間の異物によって、電池セルの底面を覆う絶縁フィルムが損傷することが防止される。
【0007】
また、この従来の電源装置は、セパレータの下端に設けられる突出片が、冷却プレートと電池セルとの間に介在されて電池セルを冷却プレートから絶縁している(同文献、第0048段落、
図6、
図7、および
図12等を参照。)。さらに、この従来の電源装置は、電池セルの底面と冷却プレートとの間に熱伝導性を有する熱伝導シートが配置され(同文献、第0082段落、
図2、
図3、および
図5等を参照。)、冷却プレートによる電池セルの冷却性能を高めることができる。
【0008】
しかしながら、この従来の電源装置は、セパレータが電池セルの底面の両端部を被覆する突出片を有しているため、電池セルの冷却性能に課題がある。
【0009】
本開示は、電池セルの底面に設けられた絶縁層の損傷を防止することができ、かつ、従来よりも電池セルの冷却性能を向上させることが可能な電池パックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、複数の扁平な電池セルと、個々の前記電池セルを厚さ方向の両側から保持して該厚さ方向に積層させる複数のセルホルダと、該セルホルダを介して前記複数の電池セルを積層方向の両側から支持する複数のプレートと、前記電池セルの底面の全体に設けられた絶縁層と、該絶縁層の下面に接する熱伝導シートと、該熱伝導シートを介して前記複数の電池セルを冷却する冷却部と、を備えた電池パックであって、前記プレートの下端部は、前記絶縁層の前記下面よりも下方へ突出し、前記セルホルダは、前記電池セルの側面を支持する支持部と、前記絶縁層の前記下面の全体を前記熱伝導シートに対して露出させる開口部と、を有することを特徴とする電池パックである。
【発明の効果】
【0011】
本開示の上記一態様によれば、電池セルの底面に設けられた絶縁層の損傷を防止することができ、かつ、従来よりも電池セルの冷却性能を向上させることが可能な電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電池パックの構成を概略的に示す分解斜視図。
【
図2】
図1に示す電池パックを構成する電池モジュールの分解斜視図。
【
図3】
図2に示す電池モジュールを構成する電池セルの斜視図。
【
図4】
図2に示す電池モジュールを構成する各部材の斜視図。
【
図5】
図1に示す電池パックの電池セルの積層方向に沿う模式的な拡大断面図。
【
図6】
図1に示す電池パックの変形例に係る電池パックを概略的に示す分解斜視図。
【
図7】
図6に示す電池パックの電池セルの積層方向に沿う模式的な拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示に係る電池パックの実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態に係る電池パック100の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2は、
図1に示す電池パック100を構成する電池モジュール90の分解斜視図である。
図3は、
図2に示す電池モジュール90を構成する電池セル10の斜視図である。
図4は、
図2に示す電池モジュール90を構成する各部材の斜視図である。
図5は、
図1に示す電池パック100の電池セル10の積層方向に沿う模式的な拡大断面図である。なお、本開示における上下左右は、電池パック100の各部を説明するための便宜的な方向であり、電池パック100の使用時の方向を限定するものではない。
【0015】
本実施形態の電池パック100は、たとえば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両に搭載され、車両用の蓄電装置を構成する。詳細については後述するが、本実施形態の電池パック100は、次の構成を主要な特徴としている。
【0016】
本実施形態の電池パック100は、複数の扁平な電池セル10と、複数のセルホルダ20と、複数のプレート30と、絶縁層40と、熱伝導シート50と、冷却部60と、を備えている。複数のセルホルダ20は、個々の電池セル10を厚さ方向Dtの両側から保持して厚さ方向Dtに積層させている。複数のプレート30は、セルホルダ20を介して複数の電池セル10を積層方向(厚さ方向Dt)の両側から支持している。絶縁層40は、個々の電池セル10の底面10bの全体に設けられている。熱伝導シート50は、絶縁層40の下面40bに接している。冷却部60は、熱伝導シート50を介して複数の電池セル10を冷却する。プレート30の下端部30bは、絶縁層40の下面40bよりも下方へ突出している。セルホルダ20は、電池セル10の側面を支持する支持部21と、絶縁層40の下面40bの全体を熱伝導シート50に対して露出させる開口部22と、を有する。
【0017】
以下、本実施形態の電池パック100の各部をより詳細に説明する。電池パック100は、前述の電池セル10、セルホルダ20、プレート30、絶縁層40、熱伝導シート50、および冷却部60に加えて、たとえば、サイドプレート70と、複数のボルト80とを有している。本実施形態では、たとえば、電池セル10、セルホルダ20、プレート30、絶縁層40、およびサイドプレート70によって、電池モジュール90が構成されている。なお、図示は省略するが、電池パック100は、複数の電池セル10の監視および制御を行う電子回路基板、その他の電装品、および各部材を収容する筐体などを有してもよい。
【0018】
電池セル10は、たとえば、おおむね直方体の形状を有する扁平な角形のリチウムイオン二次電池である。電池セル10は、側面として、電池セル10の厚さ方向Dtを向く最大面積の一対の広側面10wと、電池セル10の幅方向Dwを向く最小面積の一対の狭側面10nとを有している。また、電池セル10は、電池セル10の高さ方向Dhを向く細長い長方形の底面10bと上面10tとを有している。
【0019】
電池セル10は、たとえば、電池缶11と、電池蓋12と、一対の外部端子13とを有している。電池缶11は、高さ方向の一端に開口部を有する有底角筒状の容器である。電池缶11は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属材料によって製作されている。電池缶11の内部には、たとえば、帯状の正極電極と帯状の負極電極とを帯状のセパレータを介在させて重ね合せて巻回した蓄電要素が、絶縁シートに覆われた状態で収容されている。電池缶11は、たとえば、上端に設けられた開口部の全周にわたって電池蓋12がレーザ溶接によって溶接されて密閉されている。
【0020】
電池蓋12は、電池缶11の開口部を閉塞するおおむね長方形の板状の部材である。電池蓋12は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属材料によって製作されている。電池蓋12は長手方向の両端部に一対の外部端子13を挿通させるための貫通孔を有し、長手方向の中間部にガス排出弁15と注液孔16を有している。
【0021】
外部端子13は、おおむね直方体形状の矩形のブロック状の形状を有し、電気絶縁性を有するガスケット14を介して電池蓋12の外面すなわち電池セル10の上面10tに配置される。外部端子13は、電池蓋12に対向する底面から電池蓋12を貫通する方向に延びる円柱状または円筒状の接続部を有している。一対の外部端子13のうち、一方の外部端子13は、電池缶11内の正極集電板を介して蓄電要素の正極電極に接続された正極外部端子であり、他方の外部端子13は、電池缶11内の負極集電板を介して蓄電要素の負極電極に接続された負極外部端子である。
【0022】
ガス排出弁15は、たとえば、電池蓋12の一部をプレス加工して薄肉化し、スリットを形成した部分である。ガス排出弁15は、電池セル10の内圧が所定の圧力まで上昇したときに開裂して、電池セル10の内部のガスを排出することで、電池セル10の内圧を低減して安全性を確保する。
【0023】
注液孔16は、電池缶11の内部に電解液を注入するために設けられ、電解液の注入後に、たとえばレーザ溶接によって注液栓17を接合することによって封止される。電池缶11内に注入される電解液としては、たとえば、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩が溶解された非水電解液を使用することができる。
【0024】
セルホルダ20は、たとえばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネイト(PC)等のエンジニアリングプラスチックやゴム等の樹脂材料によって構成されている。セルホルダ20は、個々の電池セル10を厚さ方向Dtの両側から挟み込むように保持している。セルホルダ20は、電池セル10の側面を支持する支持部21と、電池セル10の底面10bに設けられた絶縁層40の下面40bの全体を熱伝導シート50に対して露出させる開口部22と、を有している。
【0025】
支持部21は、たとえば、電池セル10の厚さ方向Dtを向く広側面10wに向けて突出する凸部である。支持部21は、たとえば、電池セル10の幅方向Dwを長手方向、電池セル10の高さ方向Dhを短手方向、電池セル10の厚さ方向Dtを突出方向とする長方形の突起である。支持部21は、たとえば、電池セル10の広側面10wの幅方向Dwの両端部に対向する位置に設けられている。また、セルホルダ20は、複数の支持部21が、電池セル10の高さ方向Dhに間隔をあけて設けられている。本実施形態において、支持部21は、セルホルダ20の幅方向Dwの各端部に二つずつ、合計四つが設けられている。
【0026】
複数のセルホルダ20は、たとえば、複数の中間セルホルダ20Mと、複数の端部セルホルダ20Eとを含んでいる。中間セルホルダ20Mは、厚さ方向Dtに積層された複数の電池セル10の隣り合う二つの電池セル10の間に介在されている。端部セルホルダ20Eは、中間セルホルダ20Mを介在させて積層された複数の電池セル10の積層方向(厚さ方向Dt)の両端部に配置されている。
【0027】
端部セルホルダ20E、たとえば、電池パック100の入出力用ケーブル101を固定するための固定部23を有している。固定部23は、たとえば、プレート30に向けて突出させて設けられている。固定部23は、たとえば、入出力用ケーブル101を固定するためのナット23aまたはボルトがインサート成形されている。
【0028】
セルホルダ20は、たとえば、電池セル10の広側面10wに対向する平板状の平面部24と、電池セル10の狭側面10nに対向する平板状の側部25とを有している。
【0029】
中間セルホルダ20Mの平面部24は、隣り合う二つの電池セル10の間に配置され、隣り合う二つの電池セル10の接触を防止してこれらを電気的に絶縁する。端部セルホルダ20Eの平面部24は、積層方向の端部に配置された電池セル10とプレート30との間に配置され、電池セル10とプレート30との接触を防止してこれらを電気的に絶縁する。平面部24は、電池セル10の幅方向Dwにおける両端部に、複数の突起状の支持部21を有している。平面部24の下端部24bと、電池セル10の底面10bを覆う絶縁層40の下面40bとは、たとえば、電池セル10の高さ方向Dhにおける位置がおおむね等しくなっている。
【0030】
各セルホルダ20の側部25は、電池セル10の厚さ方向Dtに沿って、電池セル10の狭側面10nにおおむね平行に狭側面10nの中央部まで延びている。端部セルホルダ20Eの側部25は、平面部24から電池セル10の厚さ方向Dtに沿って片側へ延びている。中間セルホルダ20Mの側部25は、平面部24から電池セル10の厚さ方向Dtに沿って両側へ延びている。各セルホルダ20の側部25は、上端部と下端部に、それぞれ、サイドプレート70の上端部と下端部を係合させる溝25a,25aを有している。側部25の下端部25bと、電池セル10の底面10bを覆う絶縁層40の下面40bとは、たとえば、電池セル10の高さ方向Dhにおける位置がおおむね等しくなっている。
【0031】
電池セル10を挟み込むように電池セル10の厚さ方向Dtの両側に配置される一対のセルホルダ20は、それぞれの側部25に互いに係合する凹凸を有している。これら一対のセルホルダ20の側部25の凹凸を互いに係合させることで、一対のセルホルダ20の下端部20bに開口部22が形成される。セルホルダ20の下端部20bの開口部22は、電池セル10を取り囲む筒状に組み合わされた一対のセルホルダ20の平面部24と側部25の下端部24b,25bによって画定され、電池セル10の底面10bに設けられた絶縁層40の下面40bの全体を露出させる長方形である。
【0032】
プレート30は、たとえば、金属製の矩形板状の部材であり、複数の電池セル10の積層方向の両端に配置された一対のエンドプレートである。一対のプレート30は、セルホルダ20を介して複数の電池セル10を積層方向すなわち電池セル10の厚さ方向Dtの両側から支持している。プレート30は、たとえば、端部セルホルダ20Eの固定部23を受容する凹部31と、サイドプレート70を締結するねじ穴32と、ボルト80を挿通させる貫通孔33と、を有している。プレート30の凹部31によって端部セルホルダ20Eの固定部23を受容することで、入出力用ケーブル101を固定部23に締結する際に、プレート30によって固定部23を支持および補強することができる。
【0033】
絶縁層40は、少なくとも個々の電池セル10の底面10bの全体を覆うように設けられている。絶縁層40は、たとえば、電気絶縁性を有するフィルムやコーティングによって形成することができる。絶縁層40の素材としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やゴム等の電気絶縁性を有する樹脂材料を使用することができる。絶縁層40は、たとえば、少なくとも電池セル10の底面10bの全体に設けられていれば、広側面10wおよび狭側面10nを含む電池セル10の側面の一部または全部に設けられていてもよく、電池セル10の外部端子13を除く外表面全体に設けられていてもよい。
【0034】
図5に示すように、プレート30の下端部30bは、絶縁層40の下面40bよりも下方へ突出している。プレート30の下端部30bは、たとえば、冷却部60の上面60aに接し、冷却部60の上面60aに支持されている。電池セル10の高さ方向Dhにおける絶縁層40の下面40bと冷却部60との間隔G、すなわち、絶縁層40の下面40bからプレート30の下端部30bまでの距離である突出高さは、たとえば、0.1[mm]以上かつ1.0[mm]以下とすることができる。
【0035】
熱伝導シート50は、たとえば、シリコーン、アクリル、セラミックなどの電気絶縁性および熱伝導性に優れた素材からなる放熱シートである。熱伝導シート50は、たとえば、セルホルダ20の下端部20bおよび絶縁層40の下面40bと、冷却部60の上面60aとの間で圧縮されている。これにより、電池セル10の底面10bの全体に設けられた絶縁層40は、下面40bの全体が熱伝導シート50の上面50aに接している。また、熱伝導シート50は、セルホルダ20の下端部20bおよび絶縁層40の下面40bによって冷却部60の上面60aに押しつけられている。これにより、熱伝導シート50の下面50bの全体が、冷却部60の上面60aに接している。
【0036】
冷却部60は、たとえば、金属製の矩形平板状の部材であり、内部に冷媒を流通させる冷媒流路を備えている。冷却部60は、たとえば、ボルト80を締結するためのねじ穴61を有している。冷却部60は、電池パック100の筐体の一部であってもよい。
【0037】
サイドプレート70は、たとえば、金属製の矩形平板状の部材である。サイドプレート70は、複数の電池セル10の積層方向を長手方向とし、電池セル10の高さ方向Dhを短手方向とする長方形の板状に設けられている。また、一対のサイドプレート70が、複数の電池セル10の幅方向Dwの両側に配置され、セルホルダ20の側部25を介して複数の電池セル10の狭側面10nに対向している。
【0038】
サイドプレート70の上端部は、電池セル10の幅方向Dwの中央部に向けて屈曲され、複数のセルホルダ20の側部25の上端部の溝25aに係合している。サイドプレート70の下端部は、電池セル10の高さ方向Dhに沿って延び、複数のセルホルダ20の側部25の下端部25bの溝25aに係合している。
【0039】
サイドプレート70の長手方向の両端部は、ボルト71を挿通させる貫通孔を有している。サイドプレート70は、両端部の貫通孔に挿通させたボルト71をプレート30のねじ穴32に締結することで、複数の電池セル10の積層方向の両端に配置された一対のプレート30に固定されている。これにより、一対のプレート30の間隔が規定され、複数の電池セル10がそれぞれセルホルダ20の間で所定の範囲で圧縮されて保持される。なお、プレート30に対するサイドプレート70の固定方法は、ボルト71に限定されず、リベット、かしめ、溶接などによってサイドプレート70をプレート30に固定してもよい。
【0040】
ボルト80は、プレート30の貫通孔33に挿通されて冷却部60のねじ穴61に締結される。これにより、熱伝導シート50が、セルホルダ20の下端部20bおよび絶縁層40の下面40bと冷却部60との間で圧縮され、絶縁層40の下面40bと冷却部60の上面60aに押しつけられて接した状態になる。
【0041】
電池モジュール90は、たとえば、複数の電池セル10と、複数のセルホルダ20、一対のプレート30と、個々の電池セル10の底面10bに設けられた絶縁層40と、一対のサイドプレート70と、を備えている。また、電池モジュール90は、複数のバスバー91を備えている。バスバー91は、導電性を有する金属製の板状の部材であり、複数の電池セル10を直列に接続する中間バスバー91Mと、直列に接続された複数の電池セル10を入出力用ケーブル101に接続する端部バスバー91Eとを含む。
【0042】
電池モジュール90において、複数の電池セル10は、正極の外部端子13と負極の外部端子13の位置を交互に反転させて厚さ方向Dtに積層させて配置される。そして、積層方向(厚さ方向Dt)に隣り合う一方の電池セル10の正極の外部端子13と他方の電池セル10の負極の外部端子13とを、中間バスバー91Mによって順次接続することで、複数の電池セル10が直列に接続される。
【0043】
そして、直列に接続された複数の電池セル10のうち、積層方向の一端の電池セル10の正極の外部端子13と積層方向の他端の電池セル10の負極の外部端子13に接続された一対の端部バスバー91Eを、それぞれ、入出力用ケーブル101に接続する。入出力用ケーブル101は、たとえば、入出力用ケーブル101の端部の端子部に挿通させたボルト92を、端部バスバー91Eの貫通孔に挿通させ、端部セルホルダ20Eの固定部23のナット23aに締結することで、端部バスバー91Eに接続される。
【0044】
以下、本実施形態の電池パック100の作用について説明する。
【0045】
前述のように、本実施形態の電池パック100は、複数の扁平な電池セル10と、個々の電池セル10を厚さ方向Dtの両側から保持して厚さ方向Dtに積層させる複数のセルホルダ20と、を備えている。また、電池パック100は、セルホルダ20を介して複数の電池セル10を積層方向の両側から支持する複数のプレート30と、電池セル10の底面10bの全体に設けられた絶縁層40と、を備えている。さらに、電池パック100は、絶縁層40の下面に接する熱伝導シート50と、その熱伝導シート50を介して複数の電池セル10を冷却する冷却部60と、を備えている。そして、プレート30の下端部30bは、絶縁層40の下面40bよりも下方へ突出している。また、セルホルダ20は、電池セル10の側面を支持する支持部21と、絶縁層40の下面40bの全体を熱伝導シート50に対して露出させる開口部22と、を有している。
【0046】
この構成により、電池パック100の製造過程で、たとえば、電池モジュール90を作業台などの支持面に載置したときに、セルホルダ20を介して複数の電池セル10を積層方向の両側から支持する複数のプレート30の下端部30bが、支持面によって支持される。また、プレート30の下端部30bが、絶縁層40の下面40bよりも下方へ突出しているため、絶縁層40の下面40bと電池モジュール90を支持する支持面との間に空間が形成される。したがって、支持面上に存在する異物が電池セル10の底面10bに設けられた絶縁層40の下面40bに押し付けられることがなく、絶縁層40の損傷を防止することができる。これにより、電池セル10の底面10bを介した短絡をより確実に防止して、電池パック100の安全性を向上させることができる。
【0047】
さらに、前述のように、セルホルダ20は、電池セル10の側面を支持する支持部21を有している。そのため、セルホルダ20によって個々の電池セル10を厚さ方向Dtの両側から保持して厚さ方向Dtに積層させることで、個々の電池セル10の側面を支持部21によって支持し、電池セル10をセルホルダ20に固定することができる。これにより、セルホルダ20による電池セル10の底面10bの支持が不要になり、電池セル10の底面10bの全体に設けられた絶縁層40の下面40bの全体を露出させる開口部22を設けることが可能になる。
【0048】
そして、セルホルダ20が、絶縁層40の下面40bの全体を熱伝導シート50に対して露出させる開口部22を有していることで、絶縁層40および熱伝導シート50を介して電池セル10の底面10bの全体を冷却部60によって冷却することが可能になる。これにより、従来の電源装置のようにセパレータが電池セルの底面の両端部を被覆する突出片を有している場合と比較して、電池セル10の冷却性能を向上させることが可能になる。
【0049】
また、本実施形態の電池パック100において、セルホルダ20の支持部21は、電池セル10の厚さ方向Dtを向く広側面10wに向けて突出する凸部である。
【0050】
この構成により、電池セル10の厚さ方向Dtの両側から、電池セル10の広側面10wに支持部21を押し付け、支持部21の間に電池セル10を挟み込んで支持および固定することができる。より具体的には、電池モジュール90の製造過程で、セルホルダ20によって個々の電池セル10を厚さ方向Dtの両側から保持して厚さ方向Dtに積層させ、両端に配置したプレート30に対して積層方向の両側から力を加え、セルホルダ20の間の電池セル10に所定の圧縮力をかける。
【0051】
この状態で、電池セル10の積層方向の両端に配置された一対のプレート30にサイドプレート70を締結して、一対のプレート30の間隔を固定する。これにより、セルホルダ20の支持部21が、電池セル10の厚さ方向Dtの両側から広側面10wに押し付けられ、電池セル10が支持部21の間に挟まれて所定の変形量で圧縮された状態で、支持および固定される。これにより、セルホルダ20によって電池セル10の底面10bを支持することなく、セルホルダ20によって電池セル10を保持し、支持し、固定することができる。
【0052】
また、本実施形態の電池パック100において、電池セル10の底面10bに設けられた絶縁層40の下面40bと冷却部60との間隔Gは、たとえば0.1[mm]以上かつ1.0[mm]以下である。
【0053】
このように、間隔Gを0.1[mm]以上にすることで、経時的な劣化によって下面40bに孔やひび割れが生じても、電池セル10の底面10bと冷却部60との間での放電を防止することができる。より詳細には、空気の絶縁破壊電圧は、約3[MV/m]である。そのため、間隔Gを0.1[mm]以上にすることで、たとえば300[V]程度の電圧の電池パック100において、放電を防止することができる。また、間隔Gを1.0[mm]以下にすることで、電池セル10の底面10bと冷却部60との間が必要以上に離隔することを防止して、電池セル10の冷却性能が低下するのを防止できる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、電池セル10の底面10bに設けられた絶縁層40の損傷を防止することができ、かつ、従来よりも電池セル10の冷却性能を向上させることが可能な電池パック100を提供することができる。なお、本開示に係る電池パックは、本実施形態の電池パック100の構成に限定されない。
【0055】
たとえば、本実施形態では、電池パック100の支持部21が凸部である構成について説明した。しかし、本開示に係る電池パックにおいて、セルホルダの支持部は、凸部に限定されない。具体的には、本開示に係る電池パックにおいて、セルホルダの支持部は、電池セルの側面を粘着させて支持する粘着材によって構成されていてもよい。また、本開示に係る電池パックにおいて、セルホルダの支持部は、電池セルの側面を接着させて支持する接着剤によって構成されていてもよい。
【0056】
ここで、粘着材は、たとえば、粘着テープなどに使用されるアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤を含む粘着性を有する部材である。また、接着剤としては、たとえば、合成系接着剤を使用することができる。セルホルダの支持部が粘着材又は接着剤で構成されている場合、支持部によって電池セル10の幅方向Dwを向く狭側面10nを支持してもよい。
【0057】
図6は、
図1に示す電池パック100の変形例に係る電池パック100Aを概略的に示す分解斜視図である。
図7は、
図6に示す変形例に係る電池パック100Aの電池セル10の積層方向(厚さ方向Dt)に沿う模式的な拡大断面図である。
【0058】
本変形例の電池パック100Aは、電池モジュール90Aが、電池セル10の積層方向の中央部に中間プレート30Mを備えている点で、
図1に示す電池パック100と異なっている。本変形例の電池パック100Aのその他の構成は、
図1に示す電池パック100と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
本変形例の電池パック100Aにおいて、中間プレート30Mの下端部30Mbは、プレート30の下端部30bと同様に、絶縁層40の下面40bよりも下方へ突出している。したがって、本変形例に係る電池パック100Aにおいても、前述の実施形態に係る電池パック100と同様の効果を奏することができる。
【0060】
以上、図面を用いて本開示に係る電池パックの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
10 電池セル
10b 底面
10n 狭側面(側面)
10w 広側面(側面)
20 セルホルダ
21 支持部
22 開口部
30 プレート
30b 下端部
30M 中間プレート(プレート)
40 絶縁層
40b 下面
50 熱伝導シート
60 冷却部
100 電池パック
100A 電池パック
Dt 厚さ方向
G 間隔