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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】栄養組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/19 20160101AFI20230627BHJP
   A61K 38/40 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230627BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A23L33/19
A61K38/40
A61P43/00 121
A61P31/00
A61P1/00
A61K31/702
A61K35/20
A61P3/02
A61P31/12
A23C9/152
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021524930
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022294
(87)【国際公開番号】W WO2020246585
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2019105506
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 泰明
(72)【発明者】
【氏名】江原 達弥
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0092373(US,A1)
【文献】特開2014-210801(JP,A)
【文献】国際公開第2018/041803(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109337883(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106578134(CN,A)
【文献】特表2017-515455(JP,A)
【文献】稲垣 瑞穂、金丸 義敬,乳成分を用いた受動免疫素材の可能性,ビタミン,日本ビタミン学会,2018年,92巻、9号,pp. 424-426
【文献】浦島 匡,ミルクオリゴ糖の機能研究における最近の進歩,応用糖質科学,2014年,第4巻、第4 号,pp. 273-286
【文献】織田 浩嗣,ラクトフェリンの生体防御作用に関する研究,ミルクサイエンス,2013年,Vol. 62, no. 3,pp. 105-109
【文献】稲垣 瑞穂、金丸 義敬,ロタウイルス下痢症に対する牛乳タンパク質の利用性,ミルクサイエンス,2011年,Vol. 60, no. 1,pp. 25-38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有し、
ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物に対するヒトミルクオリゴ糖の質量比が、1/5以上50以下である、栄養組成物。
【請求項2】
前記ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物に対するヒトミルクオリゴ糖の質量比が、1以上5以下である、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項3】
ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の組成物全体に対する含有量が、0.1~1mg/mLである、請求項1又は2に記載の栄養組成物
【請求項4】
ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の組成物全体に対する含有量が、0.001~5.0質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項5】
ヒトミルクオリゴ糖の組成物全体に対する含有量が、0.001~10.0質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項6】
ヒトミルクオリゴ糖が、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトースからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項7】
ロタウィルスの感染予防用に用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項8】
消化器感染予防用に用いられる、請求項に記載の栄養組成物。
【請求項9】
調製粉乳である、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項10】
調製液状乳である、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項11】
乳幼児又は高齢者に投与される、請求項1~1のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有する栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界には、ヒトや動物に感染症を引き起こす種々の微生物が存在する。それらの微生物は、細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、真菌、原虫、ウィルスに分類される。ウィルスの遺伝物質はデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)であるが、細菌やその他の微生物がエネルギー代謝系を持ち、従属栄養で増殖するのに対し、ウィルスは、宿主細胞に寄生することによってのみ増殖が可能である(例えば、非特許文献1)。
【0003】
インフルエンザウィルス感染症は、冬期に流行するが、乳幼児、老人、又は悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患等を基礎疾患に持つ患者はインフルエンザ感染のハイリスク群であり、命にかかわる重篤な感染につながることも多い。
【0004】
微生物による感染症の中でも、特に細菌感染症に対しては、有効な抗生物質が開発されており、効果的な治療が行なわれているが、ウィルス感染症には抗生物質が有効に作用しない。抗生物質による化学療法の急速な進歩に比べると、ウィルス感染症の治療薬としての抗ウィルス剤の開発は、現在でもそれほど進んでいないのが現状である。
これまでに開発された抗ウィルス剤には、ウィルス核酸の複製をターゲットとする核酸類似体のアシクロビル、アジドチミジン、リバビリン、ノイラミニダーゼ阻害剤のザナミビル(4-グアニジノノイラミン酸)、プロテアーゼ阻害剤のインジナビル等がある。これらの医薬品である抗ウィルス剤は薬効が強いものの、投与による副作用は臨床上の大きな問題を有している。
このような状況から、安全で副作用が少なく、長期間にわたって摂取することが可能な抗ウィルス作用を示す有効成分の探索が続けられてきた。
【0005】
ところで、乳タンパク質であるラクトフェリン(以下、LFとも記す)には、抗菌性、抗ウィルス活性、腸管からの鉄吸収調節作用、細胞増殖作用、免疫調節作用等の多様な生物機能があることが報告されており(非特許文献2)、すでにインフルエンザウィルス感染防御剤としての用途も提案されている(特許文献1)。また、ラクトフェリン分解物(ラクトフェリン由来ペプチド)についても、インフルエンザウィルスやRSウィルスに対する抗ウィルス活性を示すことが報告されている(特許文献2)。
【0006】
また、ヒトの初乳に含まれる多種類のオリゴ糖の総称であるヒトミルクオリゴ糖(以下、HMOとも記す)についても、ウィルス感染を予防しうることが報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3061376号
【文献】特開2005-272438号公報
【文献】特表2017-515455号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】医科ウィルス学、改訂第2版、大里外誉郎編、南江堂発行、2000年、p.15-24
【文献】B. Lonnerdal et. al., Ann. Rev. Nutr., Vol.15, 1995, pp. 93-110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ヒトを含む動物の感染症の原因となる病原性ウィルス等への感染を予防する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含む栄養組成物に感染予防効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有する栄養組成物である。
本発明において、好ましくはラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物に対するヒトミルクオリゴ糖の質量比が、1/100以上100以下である。
本発明において、好ましくはラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の栄養組成物全体に対する含有量は、0.001~10.0質量%である。
本発明において、好ましくはヒトミルクオリゴ糖の栄養組成物全体に対する含有量は、0.001~10.0質量%である。
本発明におけるヒトミルクオリゴ糖は、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、3’-シアリルラクトース、及び6’-シアリルラクトースからなる群から選択される一種又は二種以上を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の栄養組成物は、好ましくは感染予防用途に適用でき、より好ましくは消化器感染予防用途に適用できる。
本発明の栄養組成物は、調製粉乳又は調製液状乳の態様とすることが好ましい。
本発明の栄養組成物は、乳幼児又は高齢者に好ましく投与される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感染予防用途に好適な栄養組成物が提供される。かかる栄養組成物は、添加物等の態様で、飲食品や医薬品に含有させることができる。また、本発明の栄養組成物自体を飲食品として利用することにより、特に乳幼児や高齢者の健康維持に役立つことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ラクトフェリン及び/又は2’-フコシルラクトースを添加した細胞におけるロタウィルスに対する感染抑制率を示すグラフ。
図2】ラクトフェリン及び/又は3-フコシルラクトースを添加した細胞におけるロタウィルスに対する感染抑制率を示すグラフ。
図3】ラクトフェリン及び/又は3-フコシルラクトースを添加した細胞におけるロタウィルスに対する感染抑制率を示すグラフ。
図4】ラクトフェリン及び/又は3’-シアリルラクトースを添加した細胞におけるロタウィルスに対する感染抑制率を示すグラフ。
図5】ラクトフェリン及び/又は6’-シアリルラクトースを添加した細胞におけるロタウィルスに対する感染抑制率を示すグラフ。
図6】ラクトフェリン及び/又は6’-シアリルラクトースを添加した細胞におけるロタウィルスに対する感染抑制率を示すグラフ。
図7】ラクトフェリン及び/又はヒトミルクオリゴ糖(混合物)を添加した細胞におけるロタウィルスに対する感染抑制率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0016】
本発明の栄養組成物は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有する。
【0017】
ラクトフェリンは、哺乳動物、例えば、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトの乳、涙、唾液、血液等に含まれる鉄結合性の糖タンパク質である。
本発明におけるラクトフェリンは、いずれの哺乳動物に由来するものであってもよく、特に限定されないが、含有量や入手容易性の点から、例えば、ウシ、ヒト等の乳由来のラクトフェリンが好ましい。前記乳としては、初乳、移行乳、常乳、末期乳のいずれでもよい。
また、本発明におけるラクトフェリンは、前記乳の処理物である脱脂乳、ホエイ等から常法(例えば、イオンクロマトグラフィー等)によって分離されたラクトフェリン、遺伝子操作によって微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等から産生された組換えラクトフェリン、合成ラクトフェリン、又はそれらの混合物でもよい。また、ラクトフェリンは、非グリコシル化又はグリコシル化されたものでもよい。このようなラクトフェリンとして、工業的規模で製造されている市販のラクトフェリン(例えば、森永乳業社製等)を使用することができる。
【0018】
本発明におけるラクトフェリン中の金属含有量は特に限定されず、ラクトフェリンを塩酸やクエン酸等により脱鉄したアポ型ラクトフェリン;該アポ型ラクトフェリンを、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の金属でキレートさせて得られる飽和度100%以上の状態の金属飽和型ラクトフェリン;及び100%未満の各種飽和度で金属が結合している状態の金属部分飽和型ラクトフェリンからなる群から選ばれる、いずれか1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0019】
ここで、本技術に用いられるラクトフェリンの調製(乳等の原料からのラクトフェリンの分離、精製)方法の一例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
ウシ由来の乳原料を陽イオン交換カラムに通液し、この通過液を回収し、適宜この通過液を繰り返しカラムに通液する。このカラムに脱イオン水を通液し、食塩水を通液し、この陽イオン交換カラムに吸着した塩基性タンパク質の溶出液を得る。この溶出液に硫酸アンモニウム沈殿法にて、これを回収し、適宜洗浄する。回収された沈殿物を脱イオン水にて溶解し、この溶解液を限外ろ過膜にてろ過する。さらに、脱塩処理、凍結乾燥することで、粉末状のラクトフェリンが得られる。
【0020】
より詳細には、まず、イオン交換体をカラムに充填し、塩酸を通液し、水洗してイオン交換体を平衡化する。続いて、4℃に冷却したpH6.9の脱脂乳をカラムに通液し、透過液を回収し、再度同様にカラムに通液する。次いで、脱イオン水をカラムに通液し、食塩水を通液し、イオン交換体に吸着した塩基性タンパク質の溶出液を得る。この溶出液に飽和度80%の硫酸アンモニウムを添加し、タンパク質を沈殿させ、遠心分離して沈殿物を回収する。回収した沈殿物を、飽和度80%の硫酸アンモニウム溶液で洗浄し、脱イオン水を添加して溶解し、得られた溶液を限外ろ過膜モジュールを用いて脱塩し、凍結乾燥して、粉末状ウシラクトフェリンを得る。このようにして、純度が95質量%以上のウシラクトフェリンが得られる。
【0021】
ラクトフェリンにおいては、種、属、個体等の違いによって、1又は複数の位置での1又は複数の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位等の遺伝子変異が当然存在し、このような変異を有する遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸においても変異が生じている場合がある。本発明における本技術に用いることができるラクトフェリンには、本発明の効果を損なわない限りにおいて、このような変異を含むものも含有される。
また、本発明におけるラクトフェリンには、本発明の効果を損なわない限りにおいて、熱処理、酸処理、又はアルカリ処理を行ったラクトフェリン処理物も含まれてもよい。
【0022】
本発明におけるラクトフェリン加水分解物は、前述のラクトフェリンを加水分解処理したものをいう。
加水分解処理としては、例えば特開2012-235768号公報に記載された方法が挙げられる。
具体的には、ラクトフェリン溶液を酵素反応処理を行う前に、塩酸、クエン酸、酢酸等の酸によりpHを2~4、好ましくは2.5~3.5、特に好ましくはpH3に調整する。
pHを調整したラクトフェリン溶液に、キモシンを含有する酵素組成物を所望の量で添加した後、酵素反応の温度を35~55℃、好ましくは40~50℃、より好ましくは42~48℃に保持して、6時間~24時間、好ましくは12~18時間、攪拌しながらラクトフェリンを加水分解させる。
次いで、例えば反応溶液を80℃に昇温して10分間維持し、酵素を加熱失活させる。さらに、好ましくは、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ溶液を添加して、pHを5~7、例えば6に調整する。
なお、pH調整後の反応溶液(ラクトフェリン加水分解物)は、溶液のままでもよいが、凍結乾燥等を行って粉末化することが好ましい。また、ラクトフェリン加水分解物は、クロマトグラフィー、又は限外濾過等により、分画したものを用いることもできる。
【0023】
本発明の栄養組成物において、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の栄養組成物全体に対する含有量は、好ましくは0.001~5.0質量%、より好ましくは0.005~1.0質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%、特に好ましくは0.01~0.2質量%である。
これは、通常、栄養組成物として流通するときの含有量の範囲であってよい。
【0024】
本発明におけるヒトミルクオリゴ糖は、ヒトの乳に通常含まれるオリゴ糖であれば特に限定されないが、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクトジフコテトラオース、2’,3-ジフコシルラクトース、ラクト-N-トリオースII、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオース、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ラクト-N-ネオフコペンタオースV、ラクト-N-ジフコヘキサオースI、ラクト-N-ジフコヘキサオースII、6’-ガラクトシルラクトース、3’-ガラクトシルラクトース、ラクト-N-ヘキサオース及びラクト-N-ネオヘキサオース等の中性ヒトミルクオリゴ糖、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、3-フコシル-3’-シアリルラクトース、ジシアリル-ラクト-N-テトラオースなどの酸性ヒトミルクオリゴ糖が好ましく挙げられる。これらのうち、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、3’-シアリルラクトース、及び6’-シアリルラクトースが好ましく、2’-フコシルラクトースが特に好ましい。
【0025】
なお、本発明におけるヒトミルクオリゴ糖は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、精製されたものであっても、混合物であってもよい。また、前述したヒトミルクオリゴ糖の一種又は二種以上を含んでいてもよい。
【0026】
本発明の栄養組成物において、ヒトミルクオリゴ糖の栄養組成物全体に対する含有量は、好ましくは0.001~10.0質量%、より好ましくは0.005~5.0質量%、さらに好ましくは0.005~2.0質量、特に好ましくは0.01~2.0質量%である。
また、本発明の組成物において、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物に対する、ヒトミルクオリゴ糖の質量比は、好ましくは1/100以上100以下、より好ましくは1/10以上100以下、さらに好ましくは1/5以上50以下である。
である。
これは、通常、栄養組成物として流通するときの含有量の範囲であってよい。
【0027】
本発明の栄養組成物を摂取(投与)するときの含有量としては、上記の範囲としてもよいし、適宜希釈等してもよい。例えば、摂取(投与)時のラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物の組成物全体に対する含有量は、0.0001~10.0質量%とすることができる。また、経口摂取(投与)時のヒトミルクオリゴ糖の組成物全体に対する含有量は、0.0001~10.0質量%とすることができる。経口摂取(投与)時のラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物に対する、ヒトミルクオリゴ糖の質量比は、1/100以上100以下とすることができる。
【0028】
本発明の栄養組成物は、さらに、プロバイオティクスを含んでいてもよい。
本発明におけるプロバイオティクスとしては、ヒト消化管内の常在乳酸菌であるラクトバシラス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ビフィドバクテリウム属細菌を主に用いることが可能である。特にラクトバシラス属乳酸菌の使用が最も多い。中でもLactobacillus rhamnosus GG株(特開昭61-280433号公報)、Lactobacillus caseiシロタ株(ヤクルト社より市販)、Lactobacillus johnsonii La1株(特開平6-315373号公報)、Lactobacillus plantarum 299株(DSM6595)(特表平6-501624号公報)、L. plantarum 299v株(DSM9843)(特表平11-502703号公報)、Lactobacillus salivarius UCC 1株(NCIMB 40830)、L. salivarius UCC 118株(NCIMB 40829)(WO98/35014)などの菌株がプロバイオティクス製品に適した菌株として使用できる。
ラクトバシラス属細菌としては、特に制限されないが、Lacticaseibacillus casei、Lacticaseibacillus paracasei、Lacticaseibacillus rhamnosus、Lactiplantibacillus plantarum、Levilactobacillus brevis、Ligilactobacillus salivarius、Limosilactobacillus fermentum、Limosilactobacillus reuteriが挙げられる。
【0029】
さらに本発明では、ビフィドバクテリウム属細菌をプロバイオティクスとして用いることが好ましい。
ビフィドバクテリウム属細菌としては、特に制限されないが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスに再分類されている)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、及びビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)が挙げられる。これらのうち、好ましくはビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、及びビフィドバクテリウム・ロンガムからなる群から選択される一種又は二種以上である。
【0030】
本発明において、プロバイオティクス、より好ましくはビフィドバクテリウム属細菌としては、生菌であっても、死菌であってもよい。生菌を含む場合は、栄養組成物1mL当たり好ましくは1.0×106cfu以上、より好ましくは1.0×107cfu以上、さらに好ましくは2.0×107cfu以上の生菌を含有する。なお、生菌を含有する場合、死菌も含まれていても構わない。
なお、cfuはコロニー形成単位(Colony forming unit)を指す。本明細書においては、例えば、還元脱脂粉乳10質量%を含む固体培地にて38℃で培養したときの値とすることができる。
【0031】
本発明において栄養組成物に含有させるビフィドバクテリウム属細菌としては、好ましくはビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、及びビフィドバクテリウム・ロンガムからなる群から選択される一種又は二種以上である。
【0032】
ビフィドバクテリウム・ブレーベとしてより具体的には、ビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16Vが挙げられる。ビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16Vは、2018年1月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、受託番号NITE BP-02622で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。市販品として入手可能な、例えば、森永乳業社製の「ビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V」を用いてもよい。
また、ビフィドバクテリウム・ブレーベとしてより具体的には、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274も挙げられる。ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274は、2009年8月25日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現・独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(IPOD)(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM BP-11175で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0033】
ビフィドバクテリウム・インファンティスとしてより具体的には、ビフィドバクテリウム・インファンティス M63も挙げられる。ビフィドバクテリウム・インファンティス M63は、2018年1月26日付で、NPMDに、受託番号NITE BP-02623で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0034】
ビフィドバクテリウム・ロンガムとしてより具体的には、ビフィドバクテリウム・ロンガムNITE BP-02621、(別名:BB536又はBifidobacterium longum subsp. longum ATCC BAA-999)を用いることが出来る。ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536は、NPMDに、2018年1月26日にNITE BP-02621の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。これと同一の細菌であるBifidobacterium longum subsp. longum ATCC BAA-999(番号:ATCC BAA-999)は、American Type Culture Collection(ATCC:米国、20110、ヴァージニア州、マナサス、ユニバーシティ ブルバード10801(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110,United States of America))から、ATCC BAA-999として入手可能である(例えば、特開2012-223134号公報等参照)。
【0035】
なお、上記例示した細菌名で特定される細菌には、当該細菌名で所定の機関に寄託や登録がなされている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託株」ともいう)に限られず、それと実質的に同等な株(「派生株」又は「誘導株」ともいう)も包含される。各細菌について、「上記寄託株と実質的に同等の株」とは、上記寄託株と同一の種に属し、腸内細菌叢改善効果が得られ、さらにその16SrRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託株の16SrRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは99.86%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは100%の同一性を有し、かつ、好ましくは上記寄託株と同一の菌学的性質を有する株をいう。各細菌について、上記寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。育種方法としては、遺伝子工学的手法による改変や、突然変異処理による改変が挙げられる。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、エチルメタンスルフォネート、及びメチルメタンスルフォネート等の変異剤による処理が挙げられる。寄託株から自然に生じた株としては、寄託株の使用の際に自然に生じた株が挙げられる。そのような株としては、寄託株の培養(例えば継代培養)により自然に生じた変異株が挙げられる。派生株は、一種の改変により構築されてもよく、二種又はそれ以上の改変により構築されてもよい。
【0036】
本発明の栄養組成物に含有し得るビフィドバクテリウム属細菌の菌体としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
また、本発明の栄養組成物に含有し得るビフィドバクテリウム属細菌の菌体は、前述のビフィドバクテリウム属細菌を培養することにより容易に取得することができる。培養方法は、ビフィドバクテリウム属細菌が増殖できる限り、特に制限されない。培養方法としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる方法を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。培養温度は、例えば、25~50℃であってよく、35~42℃であることが好ましい。培養は、好ましくは嫌気条件下で実施することができ、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら実施することができる。また、培養は、液体静置培養等の微好気条件下で実施することもできる。培養は、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌が所望の程度に増殖するまで実施することができる。
【0037】
培養に用いる培地は、ビフィドバクテリウム属細菌が増殖できる限り、特に制限されない。培地としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。すなわち、炭素源としては、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩類や硝酸塩類を用いることができる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地として、具体的には、強化クロストリジア培地(Reinforced Clostridial medium)、MRS培地(de Man, Rogosa, and Sharpe medium)、mMRS培地(modified MRS medium)、TOSP培地(TOS propionate medium)、TOSP Mup培地(TOS propionate mupirocin medium)が挙げられる。
【0038】
本発明の栄養組成物に含有し得るビフィドバクテリウム属細菌としては、その菌体又はそれを含有する画分を、特に制限されず用いることができる。すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌としては、例えば、培養により得られた培養物をそのまま用いてもよく、培養物を希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。また、腸内細菌叢改善効果を損なわない限り、加熱や凍結乾燥等の種々の追加操作を培養後に行うことができる。追加操作は、菌体の生残性が高いものであるのが好ましい。すなわち、本発明の栄養組成物に含有し得るビフィドバクテリウム属細菌として、具体的には、ビフィドバクテリウム属細菌の培養物、又は前記培養物から回収した菌体、それらの処理物が挙げられ、前記処理物としては希釈物、濃縮物、又は乾燥物等が挙げられる。なお、菌体は、通常は生菌体を含有する形態で使用されるのが好ましい。菌体は、例えば、生菌体からなるものであってもよく、生菌体と死菌体の混合物であってもよい。
【0039】
本発明の栄養組成物は、さらにプレバイオティクスを含んでいてもよい。
「プレバイオティクス」とは、腸管内で有益な細菌を選択的に増殖させることを可能にする難消化性の食品成分を意味してよい。有益な細菌としては、ビフィドバクテリウム属細菌が挙げられる。すなわち、プレバイオティクスとしては、特に、ビフィドバクテリウム属細菌を選択的に増殖させる成分が好ましい。プレバイオティクスとしては、一種の成分を用いてもよく、二種又はそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
プレバイオティクスは、所望の効果が得られる限り、具体的にはプロバイオティクスとの併用により特に制限されない。プレバイオティクスとしては、オリゴ糖、食物繊維、グルコン酸が挙げられる。オリゴ糖としては、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、ラクトスクロース、大豆オリゴ糖、コーヒーオリゴ糖が挙げられる。
【0041】
本発明の栄養組成物は、感染性の疾患や病態の対象者に対して、感染予防用栄養組成物、免疫賦活用栄養組成物として使用することが出来る。特にウィルス感染予防用栄養組成物として使用することが出来る。
【0042】
本発明におけるウィルス感染予防用とは、抵抗力の低い乳幼児、高齢者が感染しやすいウィルス感染の予防あるいは感染防御効果を発揮させるための用途を、通常、意味する。かかる感染防御効果を奏しうるウィルスとしては、ロタウィルス及びロタウィルスが属するレオウィルス科のウィルス全般、インフルエンザウィルス、ノロウィルス、サイトメガロウィルス、RSウィルス、ポリオウィルス、並びにHIVが挙げられる。
【0043】
本明細書において感染予防とは、流行期間又は流行が予測される期間において、ウィルスに感染する前に本発明の栄養組成物を摂取することで、ウィルス感染を防ぐことができる作用、あるいは、感染した場合でも症状を軽度にとどめることができる作用を示す。
本発明の栄養組成物は、ウィルスの消化器感染予防により好ましく適用できる。消化器感染しうるウィルスとしては、ロタウィルス及びノロウィルスが具体的に挙げられる。本発明の栄養組成物の感染予防の作用機序としては、これらのウィルスと細胞、具体的には消化器の細胞、より具体的には腸管上皮細胞との接着を抑制することによると考えられる。また、ウィルス感染後の生体内におけるウィルスの遺伝子複製を抑制することも、感染予防(軽症化を含む)の作用機序と考えられる。
該栄養組成物は、防御能の発達が未熟な乳幼児の育児用栄養組成物、あるいは感染に対する防御能の低下した高齢者向けの食品又は栄養組成物としてその有効量を添加して、感染予防用栄養組成物とすることができる。
【0044】
本発明の別の態様は、感染予防用栄養組成物の製造における、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物、並びにヒトミルクオリゴ糖の使用である。
本発明の別の態様は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有する栄養組成物の、感染予防のための使用である。
本発明の別の側面は、感染予防のために用いられる、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物と、ヒトミルクオリゴ糖とを含有する栄養組成物である。
本発明の別の態様は、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリン加水分解物、並びにヒトミルクオリゴ糖を動物に投与することを含む、感染予防法である。ここで、動物は、特に限定されないが、通常はヒトである。
本発明の栄養組成物の摂取(投与)時期は、特に限定されず、投与対象の状態に応じて適宜選択することが可能である。
【0045】
本発明の栄養組成物の摂取(投与)量は、摂取(投与)対象の年齢、性別、状態、その他の条件等により適宜選択される。
【0046】
本発明の栄養組成物は、飲食品の態様とすることが好ましい。
飲食品としては、本発明の効果を損なわないものであれば形態や性状は特に制限されず、通常飲食品に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。
なお、飲食品に添加する添加物の態様も本発明の組成物に含まれる。かかる態様としては、例えば、搾乳された母乳や調製乳に添加する添加物が挙げられ、添加後の乳を新生児や乳児に摂取させることが想定される。
飲食品は、通常は経口摂取されるものであるが、これに限られず、例えば経鼻摂取されるもの、胃瘻や腸瘻により摂取されるものでもよい。例えば、新生児や乳児に対し、後述の本発明の組成物である乳幼児用調製乳や、本発明の組成物を添加した母乳を、経鼻胃栄養チューブ等によって摂取させることが想定される。
【0047】
飲食品としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、例えば、錠菓;流動食(経管摂取用栄養食);パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;サプリメント、調製乳(粉乳、液状乳等を含む)等の栄養組成物;育児用サプリメント、育児用調製乳(粉乳、液状乳等を含む)等の育児用栄養組成物;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
【0048】
これらのうち、育児用栄養組成物が好ましく挙げられる。
日本国においては、育児用栄養組成物とは、0~12か月の乳児を対象とする乳児用栄養組成物(乳児用調製乳ともいう)、6~9か月以降の乳児及び幼児(6歳まで)を対象とするフォローアップミルク(幼児用調製乳ともいう)、出生時の体重が2500g未満の新生児(低出生体重児)を対象とする低出生体重児用栄養組成物(低出生体重児用調製乳ともいう)、牛乳アレルギーや乳糖不耐症等の病的状態を有する児の治療に用いられる各種治療用ミルクなどを指す。さらに、該栄養組成物を保健機能食品や病者用食品に適用することができる。
日本国外においては一般的に、育児用栄養組成物とは、0~6か月の乳児を対象とする栄養組成物(乳児用調製乳ともいう)、6~12か月の乳児及び1~3歳の幼児を対象とする栄養組成物(フォローアップフォーミュラともいう)、3~6歳の幼児を対象とする栄養組成物(グローイングアップミルクともいう)、出生時体重が2500g未満の低出生体重児向けの栄養組成物(低出生体重児用調製乳ともいう)、牛乳アレルギーや乳糖不耐症等の病的状態を有する児の治療に用いられる各種治療用ミルクなどを指す。さらに、該栄養組成物を保健機能食品や病者用食品に適用することができる。
【0049】
また、本発明の栄養組成物としては、妊娠期・授乳期の母親向けのママ用ミルク(妊娠・授乳期に必要な栄養をバランスよく配合した調製乳)、学童期以降の調製乳や成人向け調製乳、高齢者向け流動食などの栄養調整食品や、栄養補助食品、リン低減粉末ミルクなど病者用食品(特別用途食品)も挙げることができる。
【0050】
また、飲食品の一態様として飼料とすることもできる。飼料としては、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
飼料の形態としては特に制限されず、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を含有するものであってよい。
【0051】
本発明の栄養組成物を飲食品の態様とする場合、保健機能食品や特別用途食品に適用することができる。保健機能食品制度は、内外の動向、従来の特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず、錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたもので、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品の3種類がある。特別用途食品は、病気の人や、乳幼児、高齢者など、通常の食事を食べることができない人のための特別な用途を目的とした食品であり、病者用食品(許可基準型、個別評価型)、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製乳、えん下困難者用食品がある。
【0052】
本発明の組成物が飲食品(飼料を含む)の態様である場合、感染予防用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。
【0053】
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0054】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0055】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一年内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
かかる表示としては、例えば、「感染予防のために」、「ウィルス感染対策」、「乳幼児の健康のために」等と表示することが挙げられる。
【0056】
本発明の組成物は、医薬品の態様とすることもでき、その場合、その投与経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが経口が好ましい。また、非経口摂取(投与)としては、直腸投与等が挙げられる。
医薬品の形態としては、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、非経口投与の場合、座剤、軟膏剤、注射剤等に製剤化することができる。
製剤化に際しては、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、他の薬効成分や、公知の又は将来的に見出されるビフィドバクテリウム属細菌に対するプレバイオティクスなどを併用することも可能である。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
【0057】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0058】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0059】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0060】
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0061】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0062】
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤等が挙げられる。
【実施例
【0063】
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]ラクトフェリン、ヒトミルクオリゴ糖又はそれらの組み合わせによって発揮される、サル・ロタウィルスに対する抗ウィルス作用の検討
ラクトフェリン、ヒトミルクオリゴ糖、あるいはそれらの組み合わせによる、ロタウィルスに対する抗ウィルス作用を評価するため、以下の実験を行った。
Minimum essential medium (シグマ・アルドリッチ社, 以下、培地)で維持したアフリカミドリザル腎臓由来のMA104細胞(シグマ・アルドリッチ社)に対し、サル・ロタウィルスSA11株(株式会社日本バイオリサーチセンター)を播種した。サル・ロタウィルスSA11株は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)から、ATCC VR-1565として入手可能である。培地には予め、ラクトフェリン(LF)及び以下に示すヒトミルクオリゴ糖を、それぞれ以下の濃度で、単独あるいは組み合わせて添加した(n=3)。
LF(森永乳業社製):0、0.1、又は1.0 mg/mL
2’-フコシルラクトース(2’-FL、フナコシ):0、0.1,0.5、又は2.5 mg/mL
3-フコシルラクトース(3-FL、フナコシ):0、0.1、又は0.5 mg/mL
3’-シアリルラクトース(3’-SL、フナコシ):0、0.1、又は0.5 mg/mL
6’-シアリルラクトース(6’-SL、フナコシ):0、0.1、又は0.5 mg/mL
ヒトミルクオリゴ糖(混合物)(HMO mix:2’-FL(2.5 mg/mL)、3-FL(0.5 mg/mL)、3’-SL(0.25 mg/mL)、及び6’-SL(0.5 mg/mL)の混合物)
なお、1.0mg/mLは質量百分率に換算すると0.1質量%である。
【0065】
感染の程度の評価は、細胞にウィルスが感染することによって生じる「プラーク」のカウントにより行った。具体的には、ラクトフェリンとヒトミルクオリゴ糖のいずれも添加しない場合のプラーク発生数と添加した場合のプラーク発生数とを比較することにより、算出したプラーク抑制率(%)を感染抑制率(%)とし、ラクトフェリン及びヒトミルクオリゴ糖の抗ウィルス効果を評価した。
【0066】
結果を図1~7に示す。
図1に示すように、感染抑制率は、LFを単独で0.1mg/mL用いた場合は8.7%、2’-FLを単独で0.1mg/mL用いた場合は1.2%であったのに対し、LF 0.1mg/mLと2’-FL 0.1mg/mLとを組み合わせて用いた場合は15%であった。
【0067】
図2に示すように、感染抑制率は、LFを単独で0.1mg/mL用いた場合は8.7%、3-FLを単独で0.1mg/mL用いた場合は6.6%であったのに対し、LF 0.1mg/mLと3-FL 0.1mg/mLとを組み合わせて用いた場合は20%であった。
【0068】
図3に示すように、感染抑制率は、LFを単独で0.1mg/mL用いた場合は8.7%、3-FLを単独で0.5mg/mL用いた場合は21%であったのに対し、LF 0.1mg/mLと3-FL 0.5mg/mLとを組み合わせて用いた場合は32%であった。
【0069】
図4に示すように、LFを単独で0.1mg/mL用いた場合は8.7%、3’-SLを単独で0.5mg/mL用いた場合は33%であったのに対し、LF 0.1mg/mLと3’-SL 0.5mg/mLとを組み合わせて用いた場合は41%であった。
【0070】
図5に示すように、感染抑制率は、LFを単独で0.1mg/mL用いた場合は8.7%、6’-SLを単独で0.1mg/mL用いた場合は4.5%であったのに対し、LF 0.1mg/mLと6’-SL 0.1mg/mLとを組み合わせて用いた場合は14%であった。
【0071】
図6に示すように、感染抑制率は、LFを単独で0.1mg/mL用いた場合は8.7%、6’-SLを単独で0.5mg/mL用いた場合は23%であったのに対し、LF 0.1mg/mLと6’-SL 0.5mg/mLとを組み合わせて用いた場合は30%であった。
【0072】
図7に示すように、感染抑制率は、LFを単独で0.1mg/mL用いた場合は8.7%、HMO mixを単独で用いた場合は37%であったのに対し、LF0.1mg/mLとHMO mixとを組み合わせて用いた場合は46%であった。また、LFを単独で1.0mg/mL用いた場合は39%であったのに対し、LF 1.0mg/mLとHMO mixとを組み合わせて用いた場合は60%であった。
【0073】
以上より、ラクトフェリンとヒトミルクオリゴ糖とを組み合わせて添加した場合は、ラクトフェリン又はヒトミルクオリゴ糖を単独で添加した場合よりも高いプラーク抑制率(感染抑制率)を示した。よって、ラクトフェリンとヒトミルクオリゴ糖とを組み合わせることにより、ロタウィルスに対する相乗的又は相加的な抗ウィルス作用を発揮できることが認められた。
【0074】
[製造例1]
ラクトフェリン (森永乳業社製)とヒトミルクオリゴ糖を同時に水に溶解させたものを凍結乾燥に供し、ラクトフェリン・ヒトミルクオリゴ糖混合物の凍結乾燥粉末を得る。粉末と、ホエイタンパク質濃縮物(Whey protein concentrate; WPC, 森永乳業社製)とを均一に混合して組成物を得る。当該組成物20 gを200 gの水に溶かし、ウィルスへの感染の予防のための栄養組成物を得る。
上述のようにして得られた栄養組成物を対象者に投与することにより、対象者のウィルスへの感染を予防することができる。
【0075】
[製造例2]
ラクトフェリン (森永乳業社製)とヒトミルクオリゴ糖とを同時に水に溶解させたものを凍結乾燥に供し、ラクトフェリン・ヒトミルクオリゴ糖混合物の凍結乾燥粉末を得る。粉末と、乳タンパク質濃縮物の乾燥粉末(MPC480、フォンテラ社製、タンパク質含量80質量%、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質=約8:2)とを均一に混合して、組成物を得る。当該組成物20 gを200 gの水に溶かし、ウィルスへの感染の予防のための栄養組成物を得る。
上述のようにして得られた栄養組成物を対象者に投与することにより、対象者のウィルスへの感染を予防することができる。
【0076】
[製造例3]
ラクトフェリン (森永乳業社製)とヒトミルクオリゴ糖を同時に水に溶解させたものを凍結乾燥に供し、ラクトフェリン・ヒトミルクオリゴ糖混合物の凍結乾燥粉末を得る。次に、結晶セルロースを撹拌造粒機に投入し混合する。その後、精製水を加え造粒、造粒物を乾燥し、ラクトフェリン及びヒトミルクオリゴ糖を含有し、賦形剤を含有してなる造粒された栄養組成物を得る。
上述のようにして得られた栄養組成物を対象者に投与することにより、対象者のウィルスへの感染を予防することができる。
【0077】
[製造例4]
ラクトフェリン及びヒトミルクオリゴ糖を添加した発酵乳の製造法を下記に示す。
まず、乳原料、ラクトフェリン (森永乳業社製)、ヒトミルクオリゴ糖及び必要に応じた水、その他の成分等を混合し、好ましくは均質化処理を行い、加熱殺菌処理する。均質化処理及び加熱殺菌処理は常法により行うことができる。加熱殺菌された殺菌調乳液に乳酸菌スターターを添加(接種)し、所定の発酵温度に保持して発酵させ、発酵物を得る。発酵によりカードが形成される。
乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌を用いることができる。pHが目標の値に達したら、形成されたカードを撹拌により破砕し、10℃以下に冷却して発酵乳を得る。10℃以下に冷却することにより、乳酸菌の活性を低下させて酸の生成を抑制することができる。
【0078】
さらに以下の方法で濃縮発酵乳を得られる。濃縮工程は公知の濃縮方法を適宜用いて行うことができる。例えば遠心分離法又は膜分離法を用いることができる。遠心分離法では、被濃縮物(ラクトフェリン及びヒトミルクオリゴ糖が添加された発酵物)中のホエイが除去されて、固形分濃度が高められたラクトフェリン及びヒトミルクオリゴ糖入り濃縮発酵乳が得られる。
上述のようにして得られた本技術のラクトフェリン及びヒトミルクオリゴ糖を含む発酵乳を製造することが出来る。
上述のようにして得られた発酵乳を対象者に投与することにより、対象者のウィルスへの感染を予防することができる。
【0079】
[製造例5]
ラクトフェリン及びヒトミルクオリゴ糖を添加した栄養組成物の製造法を下記に示す。
脱塩牛乳乳清蛋白質粉末(ミライ社製)10 kg、牛乳カゼイン粉末(フォンテラ社製)6 kg、乳糖(ミライ社製)48 kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920 g、ビタミン混合物(田辺製薬社製)32 g、ラクトフェリン (森永乳業社製) 17-690 g及びヒトミルクオリゴ糖 68-1698 gを温水300 kgに溶解し、さらに90 ℃で10分間加熱溶解し、調製脂肪(太陽油脂社製)28 kgを添加して均質化する。その後、殺菌、濃縮の工程を行って噴霧乾燥し、ラクトフェリン・ヒトミルクオリゴ糖配合栄養組成物約95 kgを調製する。得られた栄養組成物を水に溶解して、標準調乳濃度である総固形分濃度14 %(w/V)の調乳液としたとき、調乳液中のラクトフェリン濃度及びヒトミルクオリゴ糖濃度は、それぞれ0.025~1 mg/mL及び0.1~5 mg/mLとなる。上述のようにして得られた栄養組成物を乳幼児へ投与することにより、その乳幼児のウィルスへの感染を予防することができる。
【0080】
[製造例6]
ラクトフェリン(森永乳業社製)を精製水にて5質量%となるように溶解し、塩酸溶液にてpHを3に調整してラクトフェリン溶液を調製する。調製したラクトフェリン溶液を45℃に加温し、次いでラクトフェリンの質量に対して3%のカーフレンネット(RENCO社製、キモシンを92質量%、ペプシンを8質量%含有)を添加して、攪拌しながら24時間反応させて、加水分解を行う。
加水分解終了後、反応液を80℃に加温し、10分間保温して酵素を失活させる。
反応液を氷冷後、水酸化ナトリウム溶液を添加して反応液のpHを6に調整し、その後反応液を凍結乾燥してラクトフェリン加水分解物粉末を製造する。
得られたラクトフェリン加水分解物粉末とヒトミルクオリゴ糖を同時に水に溶解させたものを凍結乾燥に供し、ラクトフェリン加水分解物・ヒトミルクオリゴ糖混合物の凍結乾燥粉末を得る。粉末と、ホエイタンパク質濃縮物(Whey protein concentrate; WPC, 森永乳業社製)とを均一に混合して組成物を得る。当該組成物20 gを200 gの水に溶かし、ウィルスへの感染の予防のための栄養組成物を得る。
上述のようにして得られた栄養組成物を対象者に投与することにより、対象者のウィルスへの感染を予防することができる。
【0081】
[製造例7]
前記製造例6のラクトフェリン加水分解物粉末の製造方法と同様の方法を行い、ラクトフェリン加水分解物粉末を製造する。
脱塩牛乳乳清蛋白質粉末(ミライ社製)10 kg、牛乳カゼイン粉末(フォンテラ社製)6 kg、乳糖(ミライ社製)48 kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920 g、ビタミン混合物(田辺製薬社製)32 g、得られたラクトフェリン加水分解物17-690 g及びヒトミルクオリゴ糖 68-1698 gを温水300 kgに溶解し、さらに90 ℃で10分間加熱溶解し、調製脂肪(太陽油脂社製)28 kgを添加して均質化する。その後、殺菌、濃縮の工程を行って噴霧乾燥し、ラクトフェリン加水分解物・ヒトミルクオリゴ糖配合栄養組成物約95 kgを調製する。得られた栄養組成物を水に溶解して、標準調乳濃度である総固形分濃度14 %(w/V)の調乳液としたとき、調乳液中のラクトフェリン加水分解物濃度及びヒトミルクオリゴ糖濃度は、それぞれ0.025~1 mg/mL及び0.1~5 mg/mLとなる。
上述のようにして得られた栄養組成物を乳幼児へ投与することにより、その乳幼児のウィルスへの感染を予防することができる。
図1
図2
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図5
図6
図7