(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】ポリマー含有複合セキュリティ物品
(51)【国際特許分類】
B42D 25/355 20140101AFI20230627BHJP
A44C 21/00 20060101ALI20230627BHJP
B42D 25/29 20140101ALI20230627BHJP
B42D 25/324 20140101ALI20230627BHJP
B42D 25/369 20140101ALI20230627BHJP
B42D 25/382 20140101ALI20230627BHJP
B42D 25/387 20140101ALI20230627BHJP
【FI】
B42D25/355
A44C21/00
B42D25/29
B42D25/324
B42D25/369
B42D25/382
B42D25/387
(21)【出願番号】P 2021543500
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 RU2020050008
(87)【国際公開番号】W WO2020159406
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-16
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】521329361
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー “ゴズナク“
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】トラチャック、 アルカディ ウラジミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリャトニコフ、 アンドレイ ボリソヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】スチェピン、 ビクトル ジェナディエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】パブロフ、 イゴール ワシリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】コルニロフ、 ゲオルギー バレンティノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】フェドロバ、 エレナ ミハイロブナ
(72)【発明者】
【氏名】イワンツォフ、 アンドレイ ヴィクトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】カルラモフ、 コンスタンチン ウラジミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】アキニン、 アレクセイ ボリソヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ツルキナ、 エレナ サムイノロブナ
(72)【発明者】
【氏名】チェクニン、 ドミトリ ボリソヴィチ
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517389(JP,A)
【文献】特開2018-089872(JP,A)
【文献】米国特許第6616983(US,B1)
【文献】特開2006-185397(JP,A)
【文献】特開平11-232416(JP,A)
【文献】特開2004-021649(JP,A)
【文献】特開2006-127141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0106690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/355
A44C 21/00
B42D 25/29
B42D 25/324
B42D 25/369
B42D 25/382
B42D 25/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー含有複合セキュリティ物品であって、
外側金属リングと、
各シートの表面がポリマー層で覆われるように、体積全体にわたってポリマーバインダーを含浸させた積層された紙シートを含む、積層プラスチック製の内側ディスクインサートと
を含み、
前記金属リングと前記ディスクインサートとはプレスによって永久的に接合され、
前記ディスクインサートは、前記ディスクインサートの
両面にギロシェ要素の形態で形成されたセキュリティ特徴を有し、
前記ギロシェ要素は、対応する積層された紙シート上に、前記シートを含浸する工程の前にオフセット印刷されたものであり、前記金属リングは、前記金属リングの表面上に付与された、彫り込まれた識別画像の形態のエンボスを有し、
以下の関係を満たすように、前記金属リングの最大厚さは、前記ディスクインサートの最大厚さより大きい、ポリマー含有複合セキュリティ物品。
0.8≦δ2/δ1<1
(式中、
δ1は前記金属リングの最大厚さ(mm)であり;
δ2は前記ディスクインサートの最大厚さ(mm)である。)
【請求項2】
前記物品の寸法は、以下の関係にさらに適合する、請求項1に記載の物品。
D1-D2≧8mm;
0.3≦S1/S2<0.9;
D2>16mm;
Δ≦1
(式中、
D1はエッジ表面を除く前記金属リングの外径(mm)であり;
D2は前記ディスクインサートの直径(mm)であり;
S1はエッジ表面を除く前記金属リングの面積(mm
2)であり;
S2は前記ディスクインサートの面積(mm
2)であり;
Δは前記物品の金属構成要素の最大突出要素と最小突出要素との差(mm)である。)
【請求項3】
前記積層プラスチックは、強化繊維を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記金属リングが、金属または金属合金製である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記エンボスが、幾何学的図形、英数字記号、またはこれらグラフィック要素の組み合わせを含む
グラフィック要素の形態で形成され
ている、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ディスクインサートが印刷箔および/またはセキュリティスレッドを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記ディスクインサートが、強磁性材料、IR吸収物質、UVおよびIR発光物質を用いて形成された真正性特徴を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記金属リング及び前記ディスクインサートのうちの少なくとも1つが、所定の導電性および/または磁気特性を有する材料からなる、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記ディスクインサートは、非接触および/または接触データ読み取りおよび書き込みのためのマイクロチップを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
重要書類であり、所有者を識別する情報を含む、請求項1記載の物品。
【請求項11】
前記金属リングと前記ディスクインサートは、幾何学的に相補的なものである、請求項1記載の物品。
【請求項12】
請求項1に記載の物品であって、メダル若しくはコイン、又はトークン、又はバッジである、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合物品および積層ポリマー材料、例えば、トークン用の紙およびプラスチックをベースとする材料に関するものであり、コイン、トークン、メダル、ラベルなどのセキュリティ物品の製造に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
現在、この技術分野の開発者は、一方では偽造することが困難であり、かつ、他方ではその真正性を容易に確認することができる複合物品の製造を可能にするプロセス及び材料の開発又は使用に努力している。
【0003】
添加剤として、活性アモルファスカーボン及び二酸化チタンを含有する、コイン式機械のトークン用のポリスチレン組成物が知られている(RU2111987、27.05.1998)。この組成物は、ポリスチレンとして、高衝撃UPS-825Eポリスチレンを含み、スペクトルのIR領域において調整可能な光学特性を有するポリマー組成物を提供する。
【0004】
コイン式装置用のトークンの大量生産のための様々なプラスチック(ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルなど)から作られる類似のトークン物品が、US3153469(18.09.1961)から知られている。
【0005】
ポリスチレンおよび金属をベースとするポリマー含有複合物品が、US3542180(24.11.1970)に開示されている。この物品は、添加剤として、金属を、微細に分散された金属フィラーの形態で含む。
【0006】
SU1147344(30.05.1985)は、穴と、穴を覆う弾性ポリマー/ゴムガスケットとを有する二層プレートの形態の複合物品であるコインシミュレータを開示している。弾性ガスケットは、少なくとも1つのフィルム層によって形成される。
【0007】
地下鉄、公衆電話、自動販売機およびゲーム機における料金の支払いのためのトークンであって、ポリマー材料をベースに構成され、その平坦な表面上に、拡散体、発光物質、吸収体、および付加的なマークなどのコーディング要素が付与されたものが、当該技術分野で知られている。このトークンは、射出成形によって、平らな円形ディスク、長方形、三角形、または別の形状に作製することができる(RU2121285、10.11.1998)。しかし、このトークンは単一の材料でできているため、偽造されやすい。
【0008】
ポリマー材料の上部および下部半透明層、半透ポリマー材料の基板、および基板の輪郭層を形成する層からなる永久的に接合された文書要素の積層体を含む、積層された識別文書が知られており、情報インサートは、上部半透明層の下の基板上に配置され、その中に窓が形成され、文書所有者に関する情報を含む。写真領域を除いた文書全面にわたって、情報インサートの全面に、微分散したテフロンコーティングがスポットスプレイされる。文書の所有者の詳細に加えて、情報インサートは、文書のカテゴリ、その範囲と用途などを識別するコードの銘、記号および符号のセットを含む。半透明材料の前面カバーの内面全体は、分子表面層を有する写真領域を除いて、接着コーティングでコーティングされており、それにより、圧力下での熱処理後の識別文書の永久的な接合が確保される。識別文書は、上部および下部半透明層の内面にセキュリティ発光マークを有し、その基板の輪郭層の表面に発光コーティングを有する。情報インサートは基板上に配置され、オーナー写真窓は、分子表面層とともに上部半透明層の内面領域の下に位置する(RU2128587、10.04.1999)。この既知のソリューションの不利な点は、セキュリティレベルが不十分であることである。
【0009】
外側リングと、2つのインサートであって1つのインサートのうえに他方のインサートが積み上げられ、外側リングの内側に配置された2つのインサートと、2つのインサートを互いに接着させるために2つのインサートの間に配置された少なくとも1つの中間層とを含む現金コインが知られている。外側リングと2つのインサートのそれぞれは異なる材料でできている。外側リング及び2つのコインインサートは、多層のコーティングされた材料でできており、各インサートは、2つの対向する面及び外周表面を有する表面を有し、外側リング及び各インサートは、各インサートの外周表面に形成された複数の凹部を介して互いに固定され、各凹部は、外周表面に穴の形で形成され、穴は挿入方向に対して傾斜し、穴は、前記対向する面と同一平面に対して傾斜している(RU2608290、17.01.2017)。この硬貨の不利な点は、セキュリティレベル、およびその真正性の確認が不十分であることである。
【発明の概要】
【0010】
技術的本質および達成される効果に関して最も近い先行技術は、WO2012156006(22.11.2012)に記載されている解決手段であり、これは、一緒にプレスされた外側金属リングおよびディスク状プラスチックコアを含む複数の構成要素からなるトークン状物品を教示している。物品のコアは、マイクロチップを含むセキュリティ特徴を含む。
【0011】
公知の技術的解決手段は、物品内に紙層をベースとするプラスチック材料を使用する可能性も、物品の金属構成要素上に、彫り込まれた識別画像、触感及び類似の要素の形態のエンボスを付与する可能性も記載していない。この事実は、一方では、物品のセキュリティのレベルを損ない、他方では、物品の真正性を検証することを困難にする。
【0012】
本発明の目的は、製造および認証の両方において簡単であり、セキュリティレベルが向上した識別物品を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、ポリマー含有複合物品であって、外側金属リングと、各シートの表面がポリマー層で覆われるように、体積全体にわたってポリマーバインダーを含浸させた積層された紙シートを含む、積層プラスチック製の内側ディスクインサートとを含み、可視および/または隠しセキュリティ特徴を含み、、物品の構成要素の少なくとも1つはエンボスを有し、リングとディスクインサートはプレスによって永久的に接合され、物品の寸法は以下の関係に適合する、ポリマー含有複合物品によって達成される。
0.8≦δ2/δ1<1;
D1-D2≧8;
0.3≦S1/S2<0.9;
D2>16mm;
Δ≦1
(D1は金属リングの外径(mm)であり;
D2はディスクインサートの直径(mm)であり;
S1はエッジ表面を除く金属リングの面積(mm2)であり;
S2はディスクインサートの面積(mm2)であり;
δ1は金属リングの最大厚さ(mm)であり;
δ2はディスクインサートの最大厚さ(mm)であり;
Δは物品の金属構成要素の最大突出要素と最小突出要素との差(mm)である。)
【0014】
特定の実施形態では、積層プラスチックは強化繊維を含み、金属リングは金属または金属合金製であり、例えば、粉末冶金によって製造されているもの等が挙げられる。
【0015】
特定の実施形態では、エンボスは、幾何学的図形、英数字記号、一定および/または異なる幅ストローク、ギロシェ要素、またはこれらグラフィック要素の組み合わせを含むグラフィックマーキングの形態で形成される。
【0016】
特定の実施形態では、ディスクインサートは、印刷箔および/またはセキュリティスレッドを含む。
【0017】
特定の実施形態では、インサートディスクは、強磁性材料、IR吸収物質、UVおよびIR発光物質を用いて形成された真正性特徴を含む。
【0018】
特定の実施形態では、物品構成要素のうちの少なくとも1つは、所定の導電性または磁気特性を有する材料からなる。
【0019】
特定の実施形態では、ディスクインサートは、RFIDタグなどの、非接触および/または接触データ読み取りおよび書き込みのためのマイクロチップを含む。
【0020】
物品は、所有者を個人的に識別する情報を含んでもよい。
【0021】
特定の実施形態では、物品の金属材料製の構成要素と物品の積層プラスチック製の構成要素とは、幾何学的に相補的である。
【0022】
特定の実施形態では、物品は、メダル若しくはコイン、又はトークン若しくは重要書類、又はバッジである。
【0023】
以下に説明するように、他の寸法では、複合物品を製造するプロセス自体が不可能であるため、実際の物品に必要な材料の技術的特性に基づいて、その関係を実験的に決定した。
【0024】
D1-D2≧8は、生成エッジ表面(リム端面との界面に位置する、コインまたはトークン物品の表面)を得て、金属に彫刻の形で最小数の刻印を配置するのに十分な最小関係である。
【0025】
D2>16mmとしたのは、その値が小さくなるにつれて、パターンを有する表面積が視覚的に知覚されにくくなるため、技術的効率を考慮したものである。
【0026】
エッジ表面には、セキュリティマイクロテキスト特徴を付与することができ、これは、以下のパラメータΔ≦1が観察される場合に、激しい摩耗を受けない。
【0027】
Δ≦1は、物品の金属構成要素の最大突出要素と最小突出要素との差である。
【0028】
0.8≦δ2/δ1<1では、ディスクインサートは摩耗領域の外側にあり、これは寿命を向上させ、表面上に存在するセキュリティ特徴の機械的損傷からの保護を強化する。本発明の物品における最大摩耗領域は、金属リングと非金属ディスクインサートとの間の接触領域内にある。
【0029】
0.3≦S1/S2<0.9の条件が満たされる場合、金属リング表面の、コイン特有の可視及び隠しセキュリティ特徴、非金属ディスクインサート表面の、紙幣特有の可視及び隠しセキュリティ要素等のセキュリティ特徴を提供することが可能となり、非金属インサート及び金属リングの固有特性に応じた総重量特性を組み合わせることができる。
【0030】
非金属ディスクインサートは、次の特徴を有する。非金属ディスクインサートは、各シートの表面がポリマー層で覆われるように、体積全体にわたってポリマーバインダーを含浸させた積層された紙シートを含む、多層押出積層材料からなり、ディスクインサートは、可視および/または隠しセキュリティ特徴を有する。
【0031】
さらに、セキュリティ特徴は、紙幣または識別文書などの、紙およびプラスチック印刷セキュリティ物品に典型的な要素の形状で作ることができる。
【0032】
セキュリティ特徴はまた、その製造中に紙に導入され、および/または、仕上げられた紙層の表面に印刷することによって作られ、セキュリティストリップ、セキュリティ繊維、透かし、印刷によって生成される光学的に可変な画像(例えば、磁気特性を有するもの等)、UV励起下で可視となる潜像、特に、量子ドットをベースとするナノ結晶材料を含有する塗料およびワニスによって形成されるもの、の形態を有することができる。非金属ディスクインサートは、器具検出可能および/または機械読み取り可能なセキュリティ要素、チップを含有してもよい。
【0033】
独立クレームに含まれる一連の基本的特徴の範囲内での発明品の実施は、伝統的な物品、特に最も適切な先行技術の物品に対して、セキュリティの観点から明らかな利点を提供する。
【0034】
本発明の物品は、以下の利点を有する。
-トークン、金属コイン、プラスチックカードを超える、偽造に対する高いレベルのセキュリティ;
-採用されている革新的な方法は、原始的なシミュレーションの努力には手が届かない;
-物品の耐摩耗性は紙幣の数十倍と高く、硬貨への流通に近づいている;
-加えて、低重量、高い装飾性、様々な形状やサイズを使用する能力など、一般消費者のための高い品質を有する物品;
-物品は、製造が容易で、低コストであり、非公開の高度な機器認証セキュリティ特徴を使用することができ、計数および分類装置において信頼性の高い検証を提供することができる。
【0035】
積層プラスチックと金属との組み合わせから物品を製造する方法は、概して、以下の工程を含む。
-特殊な特性を持つ紙ベースを製造すること;
-紙幣の印刷に使用される特殊なインク(可変カラー、UV、IR、およびその他のインクを含む)を使用して、前面層と裏面層をセキュア印刷すること;
-外層および内層に特殊なポリマー組成物を含浸させること;
-高温高圧で層をプレスして、物品の特定の視覚的(斜めおよび/または透過光で現れる)および触覚的特性を提供する特殊なエンボスを表面に形成する能力を有するモノリスを形成すること;
-積層プラスチックワークピースを金属合金製フレーム内にプレスすること;
-物品を、仕上げ、数え、及び包装すること。
【0036】
上述した複合識別物品の製造方法の説明から、各タイプの物品は、その印刷に関してだけでなく、内側紙層の組成、リングの金属合金の組成に関しても独特であり得る。各層の組成およびセキュリティ特徴は、顧客によって指定され得、紙ウェブおよび金属ワークピースの両方を製造する段階で形成され得る。
【0037】
半製品をプレスする場合、金型表面に設けられた特殊なレリーフを使用することにより、特殊なエンボス模様が物品の前面及び後面に形成され、物品の特定の視覚的及び触覚的特性を提供する。
【0038】
機械加工およびレーザ切断を含み得る従来の加工方法を使用して、最終的な製造工程において様々な形状を得ることができる。
【0039】
必要に応じて、物品に付与されたシリアル番号又は他の情報の非接触および/または接触読み取りのためのRFID(チップ)を物品に埋め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の本質は、図面に示された具体例および図によって説明される。
図1は、物品の断面図である。
図2は、
図1のAからみた図を示す。
図3は、物品の外観のバージョンを示す。
図4は、物品のバージョンの断面図である。
【0042】
物品は、ディスクインサート1と外側リング2とから構成される(
図3、
図4)。ディスクインサート1の表面は、セキュリティ特徴3と、コイン物品の種類記号4と、コインの通し番号5とを備える。外側リング2の表面には、エンボス文字の形態の彫刻6が施されている。
【0043】
例1
積層プラスチックのディスクインサート1(
図3、4)と、銅-ニッケル合金の外側リング2(
図3、4)とからトークンコイン物品を作製した。
【0044】
熱可塑性樹脂を含浸させ、200℃でプレスした7枚の紙層から積層プラスチックを作製した。製造工程では、Sr4Al14O25:Eu,Dyをベースとする、波長300~370nmの紫外線照射により青緑色の発光を示す無色の無機発光化合物10%を、紙層の組成に導入した。
【0045】
印刷工程では、積層プラスチック製のディスクインサートベースの両面に、グリッドとギロシェ要素3をオフセット印刷し(
図3)、コイン種類記号4を色可変塗料で付与した。さらに、前面では、塗料は、700~900nmの波長範囲で選択的なIR吸収を有する青色フタロシアニン染料をベースとしたIR吸収体を含む。
【0046】
特定の導電率を有する銅-ニッケル合金の外側リングワークピースを、シート材料からコールドスタンプによって作製した。
【0047】
最終製造工程では、ディスクインサート1(
図2)と外側金属リング2(
図2)をプレスによって接合し、永久的な接合を形成した。物品の金属構成要素の表面に、エンボス文字6の形態で彫刻を施した(
図3)。物品の形状寸法は次のとおりであった(
図1、2)。
D1-26.5mm、
D2-19mm、
S1-267.9mm
2、
S2-283.4mm
2、
δ1-2.0mm、
δ2-1.6mm。
【0048】
例2
ディスクインサート1(
図3)の形態の積層プラスチックと、純金属または金属合金から粉末冶金によって形成された外側リング2(
図3)とから、トークンコイン物品を作製した。
【0049】
積層プラスチックは、熱硬化性樹脂を含浸させた5枚の紙層を200℃でプレスしたものである。製造工程では、ユウロピウムのキレート錯体をベースとする、波長300~370nmの範囲の紫外線照射により赤色発光を示す、無色の発光化合物2%を、紙層の組成に導入した。
【0050】
抄紙工程では、積層プラスチックベースの表面の外層にホログラフィック箔を付与した。
【0051】
印刷工程では、積層プラスチック製のディスクインサートベースの両面にグリッドとギロシェ要素3をオフセット印刷し(
図3)、透過光での認証のために前面と裏面に照準合わせ要素を形成した。
【0052】
特定の導電性および/または磁気特性を有するリングワークピースを、純金属または金属合金から粉末冶金によって作製した。
【0053】
最終製造工程では、プラスチックディスクインサート1(
図4)と外側金属リング2(
図4)をプレス接合し、永久的な接合を形成した。物品の金属構成要素の表面に、エンボス文字5の形態で彫刻を施した(
図3)。物品の形状寸法は次のとおりであった(
図1、2)。
D1-39mm、
D2-28mm、
S1-578.6mm
2、
S2-615.4mm
2、
δ1-2.8mm、
δ2-1.5mm。
【0054】
例3
積層プラスチックのディスクインサート1(
図3)と、銅-亜鉛合金製の外側リング2(
図3)とから、トークンコイン物品を作製した。
【0055】
熱可塑性樹脂を含浸させ、200℃でプレスした6枚の紙層から積層プラスチックを作製した。製造工程では、Sr4Al14O25:Eu,Dyをベースとする、波長300~370nmの範囲の紫外線照射により青緑色の発光を示す、無色の無機発光化合物5%を、紙層の組成に導入した。
【0056】
印刷工程では、積層プラスチック製のディスクインサートのベースの両面に、グリッド及びギロシェ要素3をオフセット印刷した(
図3)。
【0057】
また、印刷工程では、インクジェット印刷により、プラスチックベースにコインの個別通し番号6を付与した(
図3)。
【0058】
特定の導電率を有する外側リングワークピースは、シート材料からコールドスタンプにより作製した。
【0059】
最終的な製造工程では、ディスクインサート1(
図4)と外側金属リング2(
図4)をプレス接合し、永久的な接合を形成した。物品の金属構成要素の表面にマイクロテキスト6の形態で彫刻を施した(
図3)。物品の形状寸法は次のとおりであった(
図1、2)。
D1-31mm、
D2-22mm、
S1-374.5mm
2、
S2-379.9mm
2、
δ1-2.2mm、
δ2-1.8mm。
【0060】
例4
積層プラスチック1のディスクインサート1(
図3)と錫青銅の外側リング2(
図3)とから、ユーザの個人情報3を有するトークンコイン物品(
図3)を作製し、非接触型ルームアクセス検証のためのRFIDを埋め込んだ。
【0061】
熱硬化性樹脂を含浸し、200℃でプレスした9枚の紙層から積層プラスチックを作製した。製造工程では、Sr4Al14O25:Eu,Dyをベースとする、波長300~370nmの紫外線照射により青緑色の発光を示す、無色の無機発光化合物20%を、紙層の組成に導入した。
【0062】
印刷工程では、積層プラスチック製のディスクインサートのベースの両面に、グリッド及びギロシェ要素3をオフセット印刷した(
図3)。
【0063】
さらに、印刷工程では、メダルのユーザの個別のシリアル番号及び/又は個人データ5を、ディスクインサートのプラスチックベース上にインクジェット印刷によって付与した(
図3)。
【0064】
所定の導電率を有する錫青銅の外側リングワークピースを、シート材料からコールドスタンプによって作製した。
【0065】
最終製造工程では、ディスクインサート1(
図4)と外側金属リング2(
図4)をプレス接合し、永久的な接合を形成した。物品の金属構成要素の表面に、エンボス文字6の形態の彫刻を施した(
図3)。物品の形状寸法は次のとおりであった(
図1、2)。
D1-33mm、
D2-24mm、
S1-402.7mm
2、
S2-452.2mm
2、
δ1-2.6mm、
δ2-2.2mm。
【0066】
上記の例から明らかなように、簡単な方法で製造することができ、セキュリティレベルが向上し、その真正性を容易に検証することができる複合識別物品がデザインされた。
<付記>
項1
ポリマー含有複合セキュリティ物品であって、
外側金属リングと、
各シートの表面がポリマー層で覆われるように、体積全体にわたってポリマーバインダーを含浸させた積層された紙シートを含む、積層プラスチック製の内側ディスクインサートと
を含み、
可視および/または隠しセキュリティ要素を含み、
前記物品の構成要素の少なくとも1つはエンボスを有し、前記リングと前記ディスクインサートとはプレスによって永久的に接合され、前記物品の寸法は以下の関係に適合する、ポリマー含有複合セキュリティ物品。
0.8≦δ2/δ1<1;
D1-D2≧8;
0.3≦S1/S2<0.9;
D2>16mm;
Δ≦1
(D1はエッジ表面を除く前記金属リングの外径(mm)であり;
D2は前記ディスクインサートの直径(mm)であり;
S1はエッジ表面を除く前記金属リングの面積(mm
2
)であり;
S2は前記ディスクインサートの面積(mm
2
)であり;
δ1は前記金属リングの最大厚さ(mm)であり;
δ2は前記ディスクインサートの最大厚さ(mm)であり;
Δは前記物品の金属構成要素の最大突出要素と最小突出要素との差(mm)である。)
項2
前記積層プラスチックは、強化繊維を含むことを特徴とする、項1に記載の物品。
項3
前記金属リングが、金属または金属合金製であり、特に粉末冶金により製造されることを特徴とする、項1に記載の物品。
項4
前記エンボスが、幾何学的図形、英数字記号、一定および/または異なる幅ストローク、ギロシェ要素、またはこれらグラフィック要素の組み合わせを含むグラフィックマーキングの形態で形成されることを特徴とする、項1に記載の物品。
項5
前記ディスクインサートが印刷箔および/またはセキュリティスレッドを含むことを特徴とする、項1に記載の物品。
項6
前記ディスクインサートが、強磁性材料、IR吸収物質、UVおよびIR発光物質を用いて形成された真正性特徴を含むことを特徴とする、項1に記載の物品。
項7
その構成要素の少なくとも1つが、所定の導電性および/または磁気特性を有する材料からなることを特徴とする、項1に記載の物品。
項8
前記ディスクインサートは、RFIDタグなどの、非接触および/または接触データ読み取りおよび書き込みのためのマイクロチップを含むことを特徴とする、項1に記載の物品。
項9
所有者を識別する情報を含むことを特徴とする、項1記載の物品。
項10
前記物品の金属材料製の構成要素と前記物品の積層プラスチック製の構成要素とは、幾何学的に相補的なものであることを特徴とする、項1記載の物品。
項11
項1に記載の物品であって、メダル若しくはコイン、又はトークン、又は重要書類、又はバッジであることを特徴とする、物品。