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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
B43K29/02 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022126020
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2018206145の分割
【原出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2022145792
(43)【公開日】2022-10-04
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】光崎 嘉人
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-023272(JP,A)
【文献】特開2013-188922(JP,A)
【文献】特開2015-033773(JP,A)
【文献】特開2011-079206(JP,A)
【文献】特開2011-230440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の内部に熱変色性インキを収容し、前記軸筒の前端のペン先より前記熱変色性インキが吐出可能に構成し、前記軸筒の後端に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具であって、
前記軸筒と、前記軸筒の後端に螺合により着脱自在に装着される頭冠と、前記摩擦体と、を備え、
前記軸筒は後方に突出する第1の頭冠装着部が設けられ、前記第1の頭冠装着部外面には第1の雄ねじ部を有し、前記頭冠は前方に開口する軸筒装着孔が設けられ、前記軸筒装着孔内面には前記第1の雄ねじ部に螺合可能な第1の雌ねじ部を有し、
前記頭冠は後端に径方向内方に突出する縮径部が設けられ、前記摩擦体は両端に摩擦部及び予備摩擦部が設けられ、前記摩擦部と前記予備摩擦部の外形状が異なり、
前記摩擦体は軸方向中央部に径方向外方に突出する鍔部が設けられ、前記鍔部は前記第1の頭冠装着部の後端部と前記縮径部により挟持され、前記摩擦体は頭冠により抜け止めされる熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記摩擦体の外面の前記摩擦部側に、前記軸筒の前記第1の頭冠装着部に挿着可能な第1の挿着部を設け、前記予備摩擦部側に、前記軸筒の前記第1の頭冠装着部に挿着可能な第2の挿着部を設け、前記第1の頭冠装着部に前記第1の挿着部または前記第2の挿着部を挿着し、前記縮径部に前記第1の挿着部または前記第2の挿着部が挿着した請求項1に記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記第1の挿着部の外径と前記第2の挿着部の外径が等しく、前記摩擦部と前記予備摩擦部は前後反転して装着可能である請求項2に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関する。詳細には、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所望する熱変色面積に適した外形状を有する摩擦部を選択して使用することができる摩擦具が開示されている。当該摩擦具の構成は、一端に第1の摩擦部を備え且つ他端に挿着孔を備えた第1のホルダーと、一端に第2の摩擦部を備え且つ他端に第3の摩擦部を備えた第2のホルダーと、一端に挿着孔を備えた第3のホルダーとからなり、前記第2のホルダーの第2の摩擦部側の外面に第1の挿着部を設け、前記第1の挿着部が、第1のホルダーの挿着孔に挿着可能であるとともに第3のホルダーの挿着孔に挿着可能であり、前記第2のホルダーの第3の摩擦部側の外面に第2の挿着部を設け、前記第2の挿着部が、第1のホルダーの挿着孔に挿着可能であるとともに第3のホルダーの挿着孔に挿着可能であり、前記第1の摩擦部、第2の摩擦部、及び第3の摩擦部のいずれによっても熱変色性インキの筆跡を摩擦熱で熱変色可能としたものである。当該摩擦具によれば、所望する熱変色面積に適した外形状を有するなど、複数の摩擦部を選択して使用することができる。
【0003】
また、特許文献2には、軸筒の後端部に、頭冠をネジ嵌合によって着脱自在に装着した出没式筆記具が開示されている。当該出没式筆記具によれば、移動時には、頭冠を取り外すことができ、筆記具全長を短くすることができる。また、所望の頭冠に取り換えも可能となる。
【0004】
【文献】特開2009-66892号公報
【文献】特開2013-188922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開事された技術では、第2のホルダーの貫通孔に、低摩耗性の弾性材料(例えば、SBS樹脂、SEBS樹脂)よりなる第2の軟質部材(即ち芯体)が挿着されるため、第2のホルダーと第2の軟質部材を組み立てるためには、第2のホルダーの貫通孔と第2の軟質部材の間に径方向の隙間が必要となり、その結果、摩擦の際には第2の軟質部材がぐらつき、安定した適切な摩擦ができないおそれがある。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術では、出没式筆記具に摩擦体を1種類しか設けていないため、摩擦体が摩耗、破損又は汚損等した場合に、容易に摩擦体を交換することができない。また、摩擦体単体を予備として出没式筆記具外に所有していた場合でも、頭冠と摩擦体が摩擦時にぐらつかないように強固に装着されているため、頭冠に係合された摩擦体を予備の摩擦体に交換することが困難となるおそれがある。
【0007】
本発明は、以上のような知見に鑑みてなされたものであり、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができ、装着された摩擦体を容易に予備の摩擦体に交換することができる熱変色性筆記具を提供することである。なお、本発明
において、「前」とは、ペン先側を指し、「後」とは、その反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明は、軸筒の内部に熱変色性インキを収容し、前記軸筒の前端のペン先より前記熱変色性インキが吐出可能に構成し、前記軸筒の後端に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具であって、前記軸筒と、前記軸筒の後端に螺合により着脱自在に装着される頭冠と、前記頭冠の後端に螺合により着脱自在に装着される前記摩擦体と、前記軸筒内部及び前記頭冠内部に収容される予備摩擦体と、を備え、前記軸筒は後方に突出する第1の頭冠装着部が設けられ、前記第1の頭冠装着部外面には第1の雄ねじ部を有し、前記頭冠は前方に開口する軸筒装着孔が設けられ、前記軸筒装着孔内面には前記第1の雄ねじ部に螺合可能な第1の雌ねじ部を有し、前記頭冠は後方に開口する摩擦体装着孔が設けられ、前記摩擦体装着孔内面には第2の雌ねじ部を有し、前記摩擦体及び前記予備摩擦体は前方に突出する第2の頭冠装着部が設けられ、前記第2の頭冠装着部外面には第2の雄ねじ部を有し、前記第2の頭冠装着部は前記摩擦体装着孔に螺合により装着可能であり、前記摩擦体は前記予備摩擦体と交換可能であることを要件とする。
【0009】
前記第1の発明の熱変色性筆記具は、前記軸筒と、前記軸筒の後端に螺合により着脱自在に装着される頭冠と、前記頭冠の後端に螺合により着脱自在に装着される前記摩擦体と、前記軸筒内部及び前記頭冠内部に収容される予備摩擦体と、を備え、前記軸筒は後方に突出する第1の頭冠装着部が設けられ、前記第1の頭冠装着部外面には第1の雄ねじ部を有し、前記頭冠は前方に開口する軸筒装着孔が設けられ、前記軸筒装着孔内面には前記第1の雄ねじ部に螺合可能な第1の雌ねじ部を有し、前記頭冠は後方に開口する摩擦体装着孔が設けられ、前記摩擦体装着孔内面には第2の雌ねじ部を有し、前記摩擦体及び前記予備摩擦体は前方に突出する第2の頭冠装着部が設けられ、前記第2の頭冠装着部外面には第2の雄ねじ部を有し、前記第2の頭冠装着部は前記摩擦体装着孔に螺合により装着可能であり、前記摩擦体は前記予備摩擦体と交換可能であるため、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができ、装着された摩擦体を、容易に予備の摩擦体に交換することができる。
【0010】
本願の第2の発明は、軸筒の内部に熱変色性インキを収容し、前記軸筒の前端のペン先より前記熱変色性インキが吐出可能に構成し、前記軸筒の後端に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具であって、前記軸筒と、前記軸筒の後端に螺合により着脱自在に装着される頭冠と、前記摩擦体と、を備え、前記軸筒は後方に突出する第1の頭冠装着部が設けられ、前記第1の頭冠装着部外面には第1の雄ねじ部を有し、前記頭冠は前方に開口する軸筒装着孔が設けられ、前記軸筒装着孔内面には前記第1の雄ねじ部に螺合可能な第1の雌ねじ部を有し、前記頭冠は後端に径方向内方に突出する縮径部が設けられ、前記摩擦体は両端に摩擦部及び予備摩擦部が設けられ、前記摩擦体は軸方向中央部に径方向外方に突出する鍔部が設けられ、前記鍔部は前記第1の頭冠装着部の後端部と前記縮径部により挟持され、前記摩擦体は頭冠により抜け止めされ、前記摩擦部と前記予備摩擦部は前後反転して装着可能であることを要件とする。
【0011】
前記第2の発明の熱変色性筆記具において、前記軸筒と、前記軸筒の後端に螺合により着脱自在に装着される頭冠と、前記摩擦体と、を備え、前記軸筒は後方に突出する第1の頭冠装着部が設けられ、前記第1の頭冠装着部外面には第1の雄ねじ部を有し、前記頭冠は前方に開口する軸筒装着孔が設けられ、前記軸筒装着孔内面には前記第1の雄ねじ部に螺合可能な第1の雌ねじ部を有し、前記頭冠は後端に径方向内方に突出する縮径部が設けられ、前記摩擦体は両端に摩擦部及び予備摩擦部が設けられ、前記摩擦体は軸方向中央部に径方向外方に突出する鍔部が設けられ、前記鍔部は前記第1の頭冠装着部の後端部と前記縮径部により挟持され、前記摩擦体は頭冠により抜け止めされ、前記摩擦部と前記予備摩擦部は前後反転して装着可能であるため、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができ、装着された摩擦部を、容易に予備の摩擦部に交換することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができると共に、装着された摩擦体を、容易に予備の摩擦体又は摩擦部に交換することができるため、商品価値の高い熱変色性筆記具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態を示す正面図である。
図2図1の要部拡大縦断面図である。
図3図1の摩擦体交換の状態を示す分解図である。
図4図1の摩擦体及び予備摩擦体の斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態を示す正面図である。
図6図5の要部拡大縦断面図である。
図7図5の摩擦体交換の状態を示す分解図である。
図8図5の摩擦体及び予備摩擦体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の2つの実施の形態について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1乃至図4に、本発明の第1実施形態を示す。図1は、本発明の第1実施形態における熱変色性筆記具1の正面図であって、ペン先(筆記体)が突出していない状態を示す図である。図2は、本実施形態の熱変色性筆記具1の後端部分の拡大縦断面図である。図3は、本実施形態の摩擦体4を交換する際の状態を示す分解図である。図4は、本実施形態の摩擦体4の斜視図である。
【0016】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は多芯式出没式筆記具であり、軸筒3側壁外面にスライド操作部を有し、該スライド操作部又はクリップ部を操作部としてスライドさせることにより筆記体の筆記先端部を軸筒3先端開口部から出没させる構成である。筆記体は、軸筒3内に収納され、出没機構の作動によって筆記体の筆記先端部が軸筒3先端開口部から出没する筆記具を構成できる。軸筒3内に複数本(具体的には3本)の筆記体が前後方向に移動可能に収容され、各々の筆記体は、弾発体(具体的には圧縮コイルスプリング)により、後方に付勢されている。
【0017】
出没機構は、これ以外にも、軸筒後端に設けた操作部を前方に押圧することによりペン先が出没する後端ノック式、軸筒側壁外面より突出する操作部を径方向内方に押圧することによりペン先が出没するサイドノック式、軸筒後部の操作部を回転操作することによりペン先が出没する回転式等が挙げられる。
【0018】
・筆記体
筆記体は、ペン先と、該ペン先が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管と、該インキ収容管内に充填される熱変色性インキと、該熱変色性インキの後端に充填され且つ該熱変色性インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。本実施の形態の熱変色性筆記具1に適用される筆記体のうち、熱変色性インキ組成物を収容した筆記体は、軸筒3内に1本又は2本以上で収容される。
【0019】
ペン先は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、またはボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成が挙げられる。また、インキ収容管の後端開口部に、インキ収容管と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓が取り付けられる。ペン先の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0020】
・熱変色性インキ
尚、本発明において、熱変色性インキは、可逆熱変色性インキが好ましい。可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0021】
また、可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が好適に用いられる。
【0022】
・軸筒
図1及び図3に示すように、本実施形態の熱変色性筆記具1は、先細状の円筒体からなる前軸3aと、当該前軸3aの後端部と螺合または圧入により取り付けられる円筒状の後軸3bと、からなる軸筒3を備えている。前軸3aの前端には、筆記体のペン先が突出可能な開口が軸方向に貫設されている。前軸3a及び後軸3bは、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト等)または金属により形成される。
【0023】
後軸3bの後部の側壁には、例えば3本(2~6本から選択され得る)の前後方向に延びる細長状の窓孔33が、径方向に貫設されている。3本の窓孔33は、例えば、周方向に等間隔に形成されている。
【0024】
軸筒3の後端部には後方に突出する第1の頭冠装着部31が設けられ、第1の頭冠装着部31外面には第1の雄ねじ部32を有する。第1の頭冠装着部31には、頭冠2が螺合により着脱自在に装着される。
【0025】
・頭冠
図2又は図3に示すように、本実施形態の熱変色性筆記具1の後端には頭冠2が螺合により着脱自在に設けられる。頭冠2は、前方に開口する軸筒装着孔21が設けられ、軸筒装着孔21内面には第1の雌ねじ部23を有する。
【0026】
また、頭冠2は後方に開口する摩擦体装着孔22が設けられ、摩擦体装着孔22内面には第2の雌ねじ部24を有する。頭冠2は、摩擦体4の前端に設けられた第2の頭冠装着部41と螺合により着脱自在に装着される。装着された軸筒3と頭冠2との内部には、予備摩擦体4aが収容される。
【0027】
本実施の形態の熱変色筆記具1は、頭冠2の外面には、二面幅部やローレット部よりなる回転操作部が形成されることが好ましい。回転操作部を回転操作することにより、軸筒3と頭冠2との螺合状態が解除され、軸筒3と頭冠2との容易な着脱が可能になる。回転操作部とは、例えば、スパナ掛け可能な6角形や8角形等の二面幅部、又はローレット部等を挙げることができる。
【0028】
・摩擦体
熱変色性筆記具1は摩擦体4を備える。本実施の形態において、摩擦体4は内部に熱変色性インキを内蔵し且つ該熱変色性インキを筆記体より吐出可能な筆記具の後端に設ける構成が好ましい。
【0029】
本実施の形態において、摩擦体4を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)又は2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物等が挙げられる。摩擦体4を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料である。摩擦体4は筆記具と別体の任意形状の部材である摩擦具とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦体4を設けることにより、携帯性に優れたものとなる。
【0030】
摩擦体4は、ポリプロピレン樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物、またはポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの混合物から形成されてもよい。混合物の配合比率がそれぞれ重量比で1:1~1:4であり、研磨剤、可塑剤、充填剤を含有せず、JIS K6251に規定されたデュロメータ硬度Aが70°~100°となる材質からなり、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%以下のものである可塑剤を含有しない低摩耗性の弾性材料から形成される。それによって摩擦体4は、擦過時に消しカスが生じにくく、熱変色性も優れているので有効である。
【0031】
摩擦体4は、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料から形成されるが、摩擦する面の種類若しくは状態又は摩擦の方法によっては、少しずつ摩耗又は破損する可能性がある。摩耗又は破損した摩擦体4では適切な摩擦ができず、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で熱変色性インキの筆跡を熱変色させることが困難となるおそれがある。
【0032】
また、摩擦体4は、摩擦する面に鉛筆等で筆記された筆跡があった場合又は摩擦する面が汚れていた場合は、鉛筆等の芯のカス又は汚れが摩擦体4に転写され、摩擦体4が汚損する可能性がある。汚損した摩擦体4では、別の紙面等を摩擦した際に摩擦体4に付着した汚れ等を紙面に転写してしまい、紙面を汚してしまうおそれがある。
【0033】
摩擦体4が摩耗若しくは破損又は汚損等した場合に、摩耗若しくは破損又は汚損等した摩擦体4を新しい摩擦体4に交換することで再度適切な摩擦をすることが可能となる。
【0034】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、頭冠2の後端に螺合により着脱自在に装着される摩擦体4と、軸筒3内部及び頭冠2内部に収容される予備摩擦体4aの2つの摩擦体を備え、摩擦体4は予備摩擦体4aと交換可能である。
【0035】
摩擦体4及び予備摩擦体4aは共に、前方に突出し摩擦体装着孔22に着脱自在に装着される第2の頭冠装着部41が設けられる。第2の頭冠装着部41外面には第2の雄ねじ部42を有する。
【0036】
摩擦体4の交換の前後で同一の摩擦性能を得る場合は、摩擦体4と予備摩擦体4aは同一形状であることが好ましい。これにより、摩擦体4が摩耗等して予備摩擦体4aに交換した後でも交換前と同じ一定の摩擦性能を得ることができ、安定した筆記性能が維持できる。また、摩擦範囲を摩擦体形状により変える場合は、摩擦体4と予備摩擦体4aの摩擦部は異なる形状であることが好ましい。これにより、1本の筆記具で、広い範囲と狭い範囲を共に摩擦することができる。
【0037】
摩擦体4は、軸心方向に空気流路43を備えることが好ましい。これにより、摩擦体4を幼児が誤って飲み込んだ場合でも、摩擦体5の空気流路43が通気可能となり気道を確保することができ、窒息事故を回避できる。
【0038】
本実施の形態の熱変色筆記具1は、摩擦体4の外面には、二面幅部やローレット部よりなる回転操作部が形成されることが好ましい。回転操作部を回転操作することにより、摩擦体4と頭冠2との螺合状態が解除され、摩擦体4と頭冠2との容易な着脱が可能になる。回転操作部とは、例えば、スパナ掛け可能な6角形や8角形等の二面幅部、又はローレット部等を挙げることができる。
【0039】
以上のような構成の熱変色性筆記具1は、以下のように作用する。
【0040】
摩擦体4使用時(すなわち摩擦時)においては、図2に示すように、摩擦体4の第2の頭冠装着部41が頭冠2の摩擦体装着孔22に螺合により装着され、頭冠2の軸筒装着孔21が軸筒3の第1の頭冠装着部31に螺合により装着される。これにより、摩擦体4が熱変色性筆記具1に安定して装着されるため、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができる。
【0041】
一方、摩擦体4交換時は、図3に示すように、摩擦体4の第2の頭冠装着部41が頭冠2の摩擦体装着孔22より取り外され、頭冠2の軸筒装着孔21が軸筒3の第1の頭冠装着部31より取り外される。摩擦体4と頭冠2及び頭冠2と軸筒3は着脱自在に螺合により装着されているため、容易に分解することができる。
【0042】
また、頭冠2の軸筒装着孔21が軸筒3の第1の頭冠装着部31より取り外されることに伴い、軸筒3と頭冠2との内部に収容されていた予備摩擦体4aが取り外される。これにより、摩耗若しくは破損又は汚損等した摩擦体4は、予備摩擦体4aと容易に交換可能となる。
【0043】
また、摩耗若しくは破損又は汚損等した摩擦体4は、予備摩擦体4aが収容されていた軸筒3と頭冠2との内部に収容することが可能である。これにより、軸筒3と頭冠2との内部空間を使用済みの摩擦体4を廃棄するまでの収容場所として利用できる。
【0044】
以上の通り、本実施形態の熱変色性筆記具1によれば、摩擦の際に摩擦体4がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができると共に、頭冠2に装着された摩擦体4を、容易に予備摩擦体4aに交換することができるため、熱変色性筆記具における摩擦性能を長期間維持することができ、商品価値の高い熱変色性筆記具を提供することができる。
【0045】
<第2実施形態>
図5乃至図8に、本発明の第2実施形態を示す。これは、第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と異なる点は、摩擦体4と予備摩擦体4aが一体となった、両端に摩擦部を設けた摩擦体5を備えた点である。また、第2実施形態の摩擦体5の装着方法が、頭冠2と軸筒3の挟み込みとなった点である。他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであるため、その説明は省略する。
【0046】
図5は、本発明の第2実施形態における熱変色性筆記具1の正面図であって、ペン先(筆記体)が突出していない状態を示す図である。図6は、本実施形態の熱変色性筆記具1の後端部分の拡大縦断面図である。図7は、本実施形態の摩擦体5の摩擦部5aと予備摩擦部5bを入れ替える際の状態を示す分解図である。図8は、本実施形態の摩擦体5の斜視図である。
【0047】
・頭冠
頭冠2は後端に径方向内方に突出する縮径部25が設けられる。後述する摩擦体5は、両端に縮径部25から後方に突出する摩擦部5a及び予備摩擦部5bが設けられ、摩擦体5は軸方向中央部に径方向外方に突出する鍔部が設けられる。鍔部は第1の頭冠装着部31の後端部と縮径部25により挟持されることにより、摩擦体5は頭冠2により抜け止めされ、摩擦部5aと予備摩擦部5bは前後反転して装着可能である。
【0048】
・摩擦体
摩擦体5は、両端に縮径部25から後方に突出する摩擦部5a及び予備摩擦部5bが設けられ、摩擦体5は軸方向中央部に径方向外方に突出する鍔部51が設けられ、鍔部51は第1の頭冠装着部31の後端部と縮径部25により挟持されることにより、摩擦体5は頭冠2により抜け止めされ、摩擦部5aと予備摩擦部5bは前後反転して装着可能である。
【0049】
摩擦部5aと予備摩擦部5bを前後反転して装着する前後で同一の摩擦性能を得る場合は、摩擦部5aと予備摩擦部5bは同一形状であることが好ましい。また、摩擦範囲を摩擦体形状により変える場合は、摩擦部5aと予備摩擦部5bは異なる形状であることが好ましい。
【0050】
摩擦体5の外面の摩擦部5a側に、軸筒3の第1の頭冠装着部31に挿着可能な第1の挿着部52を設け、予備摩擦部5b側に、軸筒3の第1の頭冠装着部31に挿着可能な第2の挿着部53を設ける。これにより、軸筒3の第1の頭冠装着部31に第1の挿着部52または第2の挿着部53を挿着することができる。また、頭冠2の縮径部25に第1の挿着部52または第2の挿着部53を挿着することができる。また、第1の挿着部52の外径と第2の挿着部53の外径は等しいことが好ましい。
【0051】
摩擦体5は、軸心方向に空気流路54を備えることが好ましい。これにより、摩擦体5を幼児が誤って飲み込んだ場合でも、摩擦体5の空気流路54が通気可能となり気道を確保することができ、窒息事故を回避できる。
【0052】
摩擦体5は、摩擦体5にホルダー等を係止させる事無く、摩擦体5の鍔部51を第1の頭冠装着部31の後端部と縮径部25により直接挟持させることが好ましい。これにより、ホルダーの貫通孔に摩擦体を装着する工程が削減でき、また部品点数も減りコストを下げることができる。
【0053】
以上のような構成の熱変色性筆記具1は、以下のように作用する。
【0054】
摩擦体5使用時(すなわち摩擦時)においては、図6に示すように、軸筒装着孔21が第1の頭冠装着部31に螺合により装着されることにより、鍔部51は第1の頭冠装着部31の後端部と縮径部25により挟持され、摩擦体5は頭冠2により抜け止めされる。これにより、摩擦体5が熱変色性筆記具1に安定して装着されるため、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができる。
【0055】
また、摩擦体5の摩擦部5aと予備摩擦部5bを入れ替える際は、図7に示すように、頭冠2の軸筒装着孔21が軸筒3の第1の頭冠装着部31より取り外される。頭冠2と軸筒3は着脱自在に螺合により装着されているため、容易に分解することができる。
【0056】
また、頭冠2の軸筒装着孔21が軸筒3の第1の頭冠装着部31より取り外されることに伴い、摩擦体5も取り外し可能となる。これにより、摩擦部5aと予備摩擦部5bは前後反転して装着可能となり、摩耗若しくは破損又は汚損等した摩擦部5aは、予備摩擦部5bと容易に入れ替えることが可能となる。
【0057】
また、摩耗若しくは破損又は汚損等した摩擦体5は、同一部材に摩擦部5aと予備摩擦部5bを備える。これにより、軸筒3と頭冠2との内部空間に予備摩擦体を収容する必要が無く、使用済みの摩擦体の収容場所も必要としない。
【0058】
以上の通り、本実施形態の熱変色性筆記具1によれば、摩擦の際に摩擦体5がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができると共に、頭冠2に装着された摩擦体5を、摩擦部5aから容易に予備摩擦部5bに入れ替えることができるため、熱変色性筆記具における摩擦性能を長期間維持することができ、商品価値の高い熱変色性筆記具を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 熱変色性筆記具
2 頭冠
21 軸筒装着孔
22 摩擦体装着孔
23 第1の雌ねじ部
24 第2の雌ねじ部
25 縮径部
3 軸筒
3a 前軸
3b 後軸
31 第1の頭冠装着部
32 第1の雄ねじ部
33 窓孔
4 摩擦体
4a 予備摩擦体
41 第2の頭冠装着部
42 第2の雄ねじ部
43 空気流路
5 摩擦体
5a 摩擦部
5b 予備摩擦部
51 鍔部
52 第1の挿着部
53 第2の挿着部
54 空気流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8