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特許7303365検出値のストリングに基づいたセンサ較正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】検出値のストリングに基づいたセンサ較正
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20230627BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20230627BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230627BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20230627BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
G01S7/40 130
G01S7/497
G01S13/931
G01S17/931
G08G1/16 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022500001
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2020068561
(87)【国際公開番号】W WO2021001444
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-03
(31)【優先権主張番号】19184424.0
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522279737
【氏名又は名称】アライバー ソフトウェア エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】クロツブチャー、ダーク
(72)【発明者】
【氏名】エイセンマン、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シミッド、ジュリアン
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-014748(JP,A)
【文献】特開2003-057334(JP,A)
【文献】特開2018-025485(JP,A)
【文献】国際公開第2007/015288(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第19962997(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015119660(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03290945(EP,A1)
【文献】原 六蔵 ほか,移動速度の外部計測を要しないオンボードレーダオフセット角推定法,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会,2009年02月01日,第J92-B巻 第2号,Pages: 469-474,ISSN: 1344-4697
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の制御ユニット(130)によって実行される、前記車両内の車両センサ(110)の角度測定(122)を較正するための方法であって、前記方法が、
静止標的(140)に関連する検出値のシーケンス(210)を取得する(S1)ことであって、
前記車両センサ(110)に関連する標的リスト内の静止物体を検出する(S11)ことと、
前記車両(100)が走行しているときに検出値を取得する(S12)ことと
を含む、ことと、
前記静止標的(140)に関連する対応するグラウンドトゥルース値のシーケンス(220)を決定する(S2)ことであって、前記グラウンドトゥルース値は、前記検出値のシーケンス(210)に基づいて決定された前記車両(100)から前記静止標的(140)までの最小検出距離に基づいて、かつ前記車両(100)の軌跡に基づいて決定される、ことと、
前記検出値のシーケンス(210)と前記グラウンドトゥルース値のシーケンス(220)との間の差(250)を推定する(S3)ことと、
推定された前記差(250)に基づいて、前記角度測定(122)を較正する(S4)ことと、を含む方法。
【請求項2】
前記取得することは、前記車両(100)が所定の較正領域に入るときに検出値を取得する(S13)ことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記取得することは、前記車両センサ(110)のサイドローブに関連する検出値を拒否する(S14)ことをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両(100)の推定軌跡に基づいて前記グラウンドトゥルース値を調整する(S21)ことを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記差(250)を推定することは、移動中央値ウィンドウ又はノイズ抑制フィルタによって差をフィルタリングする(S31)ことを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記較正することは、取得された前記検出値のシーケンスに基づいて、加重する(S41)ことを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記較正することは、前記検出値を取得する間に前記車両軌跡に基づいて加重する(S42)ことを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記較正することは、拡張メモリフィルタ又はノイズ抑制フィルタによって、フィルタリングする(S43)ことを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記車両センサ110は、Lidarセンサ、つまり光検出及び測距センサ、レーダセンサ、カメラセンサ、又は超音波センサのうちのいずれかを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータプログラムであって、コンピュータ上で実行されているときに、請求項1~のいずれか一項に記載の方法を実行するためのものである、コンピュータプログラム
【請求項11】
車両(100)内の車両センサ(110)の角度測定(122)を較正するための制御ユニット(130)であって、前記制御ユニット(130)が、
静止標的(140)に関連する検出値のシーケンス(210)を取得するように構成された取得ユニット(S1x)であって、
前記車両センサ(110)に関連する標的リスト内の静止物体を検出する(S11)ことと、
前記取得することは、前記車両(100)が走行しているときに検出値を取得する(S12)ことと
を行うように構成される、ことと、
前記静止標的(140)に関連する対応するグラウンドトゥルース値のシーケンス(220)を決定するように構成された決定ユニット(S2x)であって、前記グラウンドトゥルース値は、前記検出値のシーケンス(210)に基づいて決定された前記車両(100)から前記静止標的(140)までの最小検出距離に基づいて、かつ前記車両(100)の軌跡に基づいて決定される、決定ユニット(S2x)と、
前記検出値のシーケンス(210)と前記グラウンドトゥルース値のシーケンス(220)との間の差(250)を推定するように構成された推定ユニット(S3x)と、
推定された前記差(250)に基づいて、前記角度測定(122)を較正するように構成された較正ユニット(S4x)と、を備える制御ユニット(130)。
【請求項12】
請求項11に記載の前記制御ユニット(130)を備える、車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本開示は、車両センサに関し、いくつかの態様によれば、車両と共に使用するための無線検出及び測距(レーダ)トランシーバに関する。
【0002】
現代の車両は、多くの場合、車両付近の物体を検出するように配置された1つ以上のレーダトランシーバを備える。物体は、ガードレール及び道路安全地帯などの静止物体であり得るか、又は他の車両などの移動物体であり得る。
【0003】
レーダトランシーバは、例えば、周波数変調連続波(frequency modulated continuous wave、FMCW)信号の伝送に基づいて、トランシーバと検出された物体との間の距離を推定するように構成されている。レーダトランシーバに対する検出された物体の相対速度はまた、受信された波形のドップラーシフトに基づいて決定され得る。
【0004】
いくつかのレーダトランシーバはまた、距離及び相対速度に加えて、検出された物体に対する方位を推定するように配置される。この方位推定は、アンテナアレイ内の異なるアンテナ素子で受信された波形成分の相対位相を決定するように構成されたアレイアンテナを使用することによって達成することができる。方位推定、すなわち、例えば、レーダトランシーバのボアサイト方向に関して検出された物体に対する相対角度を推定することは、一般的には困難な問題である。この問題を特に困難にする1つの側面は、方位推定が正確であるためには、レーダトランシーバの慎重な較正を必要とすることである。
【0005】
方位推定精度を改善するためにレーダトランシーバを較正するための既知のアルゴリズムは、レーダトランシーバの速度、例えば、レーダトランシーバが取り付けられている車両の速度と比較した、検出された静止物体の相対速度間の比率を使用する方法を含む。方位θは、次いで、次式から推定又は取得することができる。
【数1】
式中、vは、ドップラー測定から得られた相対速度を表し、vは、例えば、全地球測位システム(Global Positioning System、GPS)受信機又は車輪速度センサから得られたレーダトランシーバ速度を表す。
【0006】
上記の手法の問題は、較正精度が車両速度精度に強く依存することである。vの決定におけるわずか数パーセントの誤差が、数等の方位の較正の誤差を生じる場合がある。そのような誤差は、多くの場合、レベル4(L4)自律運転、先進運転支援システム(advanced driver assistance systems、ADAS)などの安全重視の用途では許容されない。
【0007】
レーダトランシーバを較正するためのより正確な方法、並びにLidar(Light Detection and Ranging、光検出及び測距)センサ、カメラセンサ、又は超音波センサなどの他のタイプの車両センサが、方位の観点から必要とされる。そのような方法では、好ましくは、制約のあることが多いレーダトランシーバ処理リソースを節約するために、計算複雑性は制限されるべきである。
【0008】
本開示の目的は、上述の欠点の少なくともいくつかを軽減する車両内の車両センサの角度測定を較正するための方法を提供することである。また、本開示の目的は、対応する制御ユニット、コンピュータプログラム製品、及び車両を提供することである。
【0009】
この目的は、車両内の車両センサの角度測定を較正するための方法によって得られる。この方法は、静止標的に関連する検出値のシーケンスを取得すること、及び静止標的に関連する、対応するグラウンドトゥルース値のシーケンスを決定することを含み、グラウンドトゥルース値は、車両から静止標的までの最小検出距離に基づいて、かつ車両の軌跡に基づいて決定される。この方法はまた、検出値のシーケンスとグラウンドトゥルース値のシーケンスとの間の差を推定すること、及び推定された差に基づいて角度測定を較正することを含む。
【0010】
この方法は、車両速度に依存することなく角度較正を達成し、このことは利点である。この方法は、代わりに、比較的高い精度で取得することができるデータである、静止物体までの最小検出距離を使用する。したがって、車両センサを較正するための堅実かつ正確な方法が提供される。
【0011】
この方法は、車両を動作させながらオンラインで実行することができ、これは、経時的に車両センサ較正を継続的に維持することを可能にするため、利点である。
【0012】
いくつかの態様によれば、取得することは、車両センサに関連する標的リスト内の静止物体を検出することを含む。この方法が車両センサから取得された通常の標的リストに適用できることは、利点である。較正ルーチンを実行可能にするために、車両センサにおいて大幅な再設計が必要とされることはない。
【0013】
いくつかの態様によれば、取得することは、車両が直線を走行しているときに検出値を取得することを含む。方法を直線状、又は少なくとも実質的に直線状の走行シナリオに限定することによって、車両のより複雑な運動パターン及びそのようなパターンの最終結果への影響を無視することができる。こうした方法の複雑性は更に限定され、これは、車両センサ又はいくつかの関連する処理システムの処理リソースが節約されるため、利点である。
【0014】
いくつかの態様によれば、取得することは、車両が所定の較正領域に入るときに検出値を取得することを含む。いくつかの領域は、提案された方法を実行するのに他の領域よりも好適であり得る。そのような領域は、事前に識別されてもよく、この情報は車両に通信されてもよい。したがって、好ましくはこれらのタイプの較正領域で方法を実行することによって、全体的な較正性能を改善することができる。
【0015】
いくつかの態様によれば、取得することは、車両センサのサイドローブに関連する検出値を拒否することを含む。例えば、レーダ検出値などのセンサ検出値は、多くの場合、センサメインローブの両側に延在するサイドローブを含む。サイドローブ検出値は、方法の性能を低下させる恐れがある。しかしながら、サイドローブ検出値を拒否することによって、サイドローブ検出値の影響を低減することができ、これは利点である。
【0016】
いくつかの態様によれば、方法はまた、車両の推定軌跡に基づいてグラウンドトゥルース値を調整することを含む。このようにして、例えば、方法が直線走行シナリオに限定されないため、追加の較正データを取得することができる。最小距離に加えて車両運動を考慮することにより、この方法は、より広範囲の走行シナリオに適用可能であり、このことは利点である。
【0017】
いくつかの態様によれば、方法は、移動中央ウィンドウによって差異をフィルタリングすることを含む。このようにして、外れ値測定の影響が低減され、これは利点である。
【0018】
いくつかの態様によれば、較正することは、取得された検出値のシーケンスに基づいて加重することを含む。一部の検出値のシーケンスは他よりも良好である可能性が高く、すなわち、より正確な較正データをもたらす可能性が高い。例えば、提案された方法に基づく較正に適していることが知られている特定の領域で取得されたデータシーケンスは、較正に不適切であることが知られている領域で取得されたシーケンスと比較して、より高い重みをもたらし得る。このようにして、提案された方法の堅実性が改善される。
【0019】
いくつかの態様によれば、較正することは、検出値を取得する間に車両軌跡に基づいて加重することを含む。最も可能性の高い直線走行シナリオは、車両が操縦するより複雑な較正シナリオと比較して、より高い較正性能に関連する。車両の運動を考慮することにより、方法の性能が向上する。
【0020】
本明細書には、上述の利点に関連する車両、制御ユニット、及びコンピュータプログラム製品も開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本開示は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
図1】センサシステムを有する車両を示す。
図2】例示的なセンサ検出値を示すグラフである。
図3】例示的な検出距離を示すグラフである。
図4】方法を示すフローチャートである。
図5】例示的な制御ユニットを示す。
図6】例示的な制御ユニットを示す。
図7】例示的なコンピュータプログラム製品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の態様は、添付の図面を参照して以下により十分に説明される。しかしながら、本明細書に開示される異なる配置、デバイス、システム、コンピュータプログラム、及び方法は、多くの異なる形態で実現することができ、本明細書に記載の態様に限定されるものとして解釈されるべきではない。図面中の同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0023】
本明細書で使用される用語は、本開示の態様のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0024】
図1は、車両センサシステム110、130を備えた車両100を示す。車両は、速度ベクトルVegoである方向に移動する。車両センサシステムは、車両センサ110及びセンサデータ処理システム130を備える。任意選択の記憶モジュールはまた、車両センサシステムに含まれ得る。記憶モジュールは、車両100の周囲環境に関する情報を含むマップデータを記憶することができる。記憶モジュールは、以下でより詳細に論じられる。
【0025】
センサデータ処理システムは、車両センサ110の動作を制御し、検出値又は車両100付近の物体140に対応するデータ点などの、車両センサ110からのデータを取得するように配置されている。
【0026】
車両センサ110は、潜在的に異なるタイプ及び/又は異なる構成の単一のセンサユニット又は複数のセンサユニットを備え得る。例えば、車両センサ110は、Lidar(光検出及び測距)センサ、レーダセンサ、カメラセンサ、又は超音波センサのうちのいずれかを含み得る。車両センサ110はまた、TOFカメラシステム、構造化光システム、及び立体視システムのうちのいずれかを備え得る。本開示の焦点は、レーダタイプセンサにあるが、本技術はまた、他のタイプのセンサ、特にLidarセンサにも適用可能である。
【0027】
一例によれば、車両センサ110は、相対座標系における座標、すなわち車両センサ110の位置及び配向に対する座標を含むいくつかのデータ点を生成するように配置されている。座標は、デカルト座標であってもよく、又は極座標であってもよい。車両センサ110はまた、生データ、又はセンサデータから抽出されたより精密な特徴ベクトルを生成するように配置され得る。
【0028】
データ点はまた、信号強度値又は信号対雑音比(SNR)の測定値などの追加情報を含み得る。
【0029】
1つ以上のタイムスタンプはまた、車両センサ110とセンサデータ処理システム130との間を通過する情報に関連し得る。タイムスタンプは、データ点ごとに割り当てられ得るか、又はデータ点のセットに共通であり得る。
【0030】
車両センサシステム110、130は、無線リンク150を介してリモートサーバ160に接続され得、リモートサーバ160は、リモートネットワーク170に含まれ得る。
【0031】
車両センサ110は、視野120に関連する。車両センサ110が前方レーダトランシーバである場合、センサ110のボアサイト方向121は、視野120の中心線と一致することが多い。車両センサが代わりにサイドセンサとして構成されている場合、ボアサイト方向は、車両100の方向と比較していくらかの別の角度に向き得る。
【0032】
いくつかのレーダトランシーバは、物体までの距離だけでなく、方位、すなわちセンサボアサイト方向121から検出された物体140までの測定された角度122もまた推定することを可能とするアンテナアレイを備える。
【0033】
上述のように、そのような角度の推定値は、多くの場合、比較的大きな誤差に関連している。図2は、レーダトランシーバ測定データ200の例を示す。レーダトランシーバの位置は、座標(0,0)で星240によって示される。検出値のシーケンス210は、レーダトランシーバの付近の静止物体に関して生成されている。ここで、車両は、直線に沿って、すなわち図2のx軸に沿って走行した。しかしながら、較正誤差により、検出された物体に対する方位の推定値に広がりが存在し、グラフ200の上部215においていくらかの偏差となって表れる。レーダトランシーバ110を較正することによって、この誤差を補償することが望ましい。
【0034】
較正を実行するために、角度誤差がない場合に検出値のシーケンスがどのように見なされるかを推定することによって、一連のグラウンドトゥルース検出値220を生成することが本明細書で提案される。特に、この推定又は予測は、車両と障害物との間で検出された最小距離に基づく。多くのタイプのレーダで、車両と障害物との間で検出される最小距離dminは、車両が障害物を通過する時点、すなわち障害物が車両の真横に位置する時点に対応する。次いで、この点は、車両運動に基づいて、すなわち、最小距離が検出されたときに車両がその点まで移動する方法に基づいて外挿され得る。例えば、車両が直線で走行している場合、グラウンドトゥルース値の合理的なシーケンスは、最小検出距離において車両の真横の点221から開始する検出値の直線として推定することができる。直線は、最小距離検出値が行われた時点までの車が向かっていた方向に平行に延在する。
【0035】
以下では、いくつかの静止物体に関連する検出値のシーケンス310における例示的な距離を概略的に示す図3も参照する。最小距離dminが示されている。いくつかの態様によれば、距離測定値310は、最小距離を決定する前にノイズを抑える(supress)ために、フィルタリングされる(320)、すなわち、平滑化される。フィルタリングされた距離推定値は、図3において破線で示されている。
【0036】
静止物体に対して検出された最小距離dminは、車両の真横であると想定され、この場所221は、グラウンドトゥルース値のシーケンス220の基準点である。次いで、一連のグラウンドトゥルース値を生成するために、車両経路をバックトラックする。車両が直線に沿って走行していた場合、グラウンドトゥルース値もまた、車両の軌跡と平行に、図2に示されるように直線に沿って分布することになる。しかしながら、車両がいくつかの他の経路に続く場合、この経路は一連のグラウンドトゥルース値に反映されることになる。例えば、最小距離が検出される前に旋回を実行した車両は、例えば、車両旋回レート又はヨーレートに基づく車両運動、及びまた潜在的に車両速度に基づく車両運動のバックトラッキングに対応する曲率を有する一連のグラウンドトゥルース値をもたらす。
【0037】
実際のレーダ検出値210及び対応する推定グラウンドトゥルース220を有するので、較正誤差は、検出値210と対応する推定グラウンドトゥルース値とを比較することによって決定することができる。これら2つのデータセット間の差を使用して、レーダトランシーバデータを補正し、したがってレーダ方位を較正することができる。補正値230は図2に示されており、誤差は大幅に低減されていることに留意されたい。
【0038】
いくつかの態様によれば、センササンプルは、規則的に幾何学的間隔を置くのではなく、規則的に時間間隔を置いて取得される。この場合、グラウンドトゥルース値間の距離は、最小距離が検出された時点までの車両速度の関数として変化する必要があり得る。
【0039】
また、センササンプルと推定グラウンドトゥルース値との間の時間オフセットを補償するために、推定グラウンドトゥルース値間を内挿することが可能である。
【0040】
要約すると、図4を参照すると、車両100内の車両センサ110の角度測定122を較正するための方法が本明細書に開示される。この方法は、静止標的140に関連する検出値のシーケンス210を取得すること(S1)を含む。レーダ検出値などのセンサ検出値を、(移動物体であるのとは対照的に)静止として分類するためのいくつかの既知の方法がある。例えば、分類は、車両運動に基づくことができる。静止物体は、車両が移動すると同じ地理的位置に留まるが、動的物体は自分の運動軌道を有する。車両運動をセンサ検出値と比較することにより、静止物体を少なくとも~から経時的に識別することができる。静止物体はまた、物体を検出し、物体を経時的に追跡するように構成された追跡アルゴリズムからのデータに基づいて識別され得る。分類の問題は時間平均を含み、したがって、例えば車両速度における誤差に過度に敏感ではないことに留意されたい。
【0041】
いくつかの態様によれば、取得することは、車両センサ110に関連する標的リスト内の静止物体を検出する(S11)ことを含む。静止物体を使用することにより、2つの移動物体間の相対運動を推定することに関連する問題が回避される。したがって、較正性能が向上する。
【0042】
いくつかの態様によれば、取得することは、車両110が直線で走行しているときに検出値を取得する(S12)ことを含む。図2に関連して例示及び説明されるように、直線走行シナリオは、グラウンドトゥルースデータの特に効率的な生成を可能にする。
【0043】
いくつかの態様によれば、取得することは、車両110が所定の較正領域に入るときに検出値を取得する(S13)ことを含む。道路の一部の直線コースは、他と比較して、方法を実行するのにより好適であり得る。例えば、いくつかの領域は、本方法で使用することができる強力なセンサ検出値を与える適切な静止物体を含み得る。そのような適切な静止物体は、センサ較正を容易にするために、オペレータ又は他のサードパーティによって更に配置され得る。図1を参照すると、リモートサーバ160は、適切な較正領域に関する情報を記憶し、この情報を無線リンク150上で車両100に通信するように構成することができる。車両は、方法を実行することが推奨される領域に車両が入るときを検出することを可能にするGPS受信機などを含み得、良好な結果が予想され得る。例えば、適切な較正領域は、良好な視界及び適切な静止標的を有する道路の直線部分を含み得る。標的取り違えなどに関連する問題を回避するために、限られた数の頑丈な静止標的を有する環境で較正を行うことが好ましい場合がある。
【0044】
いくつかの態様によれば、取得することは、車両センサ110のサイドローブに関連する検出値を拒否する(S14)ことを含む。サイドローブ検出値は、ボアサイトメインローブ方向に基づいて取得されないため、より大きな角度誤差に関連する。
【0045】
この方法はまた、静止標的140に関連するグラウンドトゥルース値の対応するシーケンス220を決定する(S2)ことを含む。特に、グラウンドトゥルース値は、車両110から静止標的140までの最小検出距離に基づいて、かつ車両110の軌跡に基づいて決定される。最小検出距離は、図3に関連して上述した。
【0046】
いくつかの態様によれば、方法はまた、車両110の推定軌跡に基づいてグラウンドトゥルース値を調整する(S21)ことを含む。この方法は、図2に関連して説明された例の場合にそうであったように、直線での走行を必要としないが、むしろ、任意の車両軌跡を方法で使用することができる。次いで、最小距離が検出された時点まで、また潜在的にはその時点を超えて、センサ検出値の収集中に車両経路を考慮するようにグラウンドトゥルース値を調整する。センサ検出値のストリングの基準点は、繰り返しになるが、最小距離を有するポイントであり、これは、車両の真横の位置(少なくともフロントレーダシステムの場合)であると想定され得る。
【0047】
上述のように、この方法はまた、検出値のシーケンス210とグラウンドトゥルース値のシーケンス220との間の差250を推定する(S3)こと、及び推定された差250に基づいて角度測定122を較正する(S4)ことを含む。
【0048】
いくつかの態様によれば、差を推定することは、移動中央ウィンドウによって差をフィルタリングする(S31)ことを含む。移動中央値ウィンドウは、個々の結果をウィンドウ上の中央値に置き換える。中央値ウィンドウ又はフィルタの本旨は、エントリごとに信号を要約し、各エントリを隣接するエントリの中央値と置き換えることである。近隣のパターンは、「ウィンドウ」と呼ばれ、信号全体にわたってエントリごとにスライドする。1D信号の場合、最も明らかなウィンドウは、最初のいくつかの前のエントリ及び後のエントリである。このように測定誤差、及び外れ値の結果が抑制される。当然ながら、他のタイプのウィンドウもまた、この文脈で適用され得る。
【0049】
いくつかの態様によれば、較正することは、取得された検出値のシーケンスに基づいて加重する(S41)ことを含む。検出値のいくつかのシーケンスは、例えば、高い信号対雑音比に関連し得、したがって、より弱い検出値により依存し得る。
【0050】
いくつかの態様によれば、較正することは、検出値を取得する間に車両軌跡に基づいて加重する(S42)ことを含む。例えば、直線は、多くの場合、より複雑な車両操縦軌跡よりも良好な結果をもたらす。
【0051】
いくつかの態様によれば、較正は、拡張メモリフィルタ(growing memory filter)によってフィルタリングする(S43)ことを含む。このフィルタリングは、ノイズの影響を低減し、したがって最終結果を改善する。フィルタリングは、拡張メモリフィルタによる必要はなく、最も既知のノイズ抑制フィルタを、効果良く使用して較正結果を改善することができる。
【0052】
図5は、車両100内の車両センサ110の角度測定122を較正するための制御ユニット130を概略的に示す。制御ユニットは、
静止標的140に関連する検出値のシーケンス210を取得するように構成された取得ユニットS1xと、
静止標的140に関連する対応するグラウンドトゥルース値のシーケンス220を決定するように構成された決定ユニットS2xであって、グラウンドトゥルース値は、車両100から静止標的140までの最小検出距離に基づいて、かつ車両100の軌跡に基づいて決定される、決定ユニットS2xと、
検出値のシーケンス210とグラウンドトゥルース値のシーケンス220との間の差250を推定するように構成された推定ユニットS3xと、
推定された差250に基づいて、角度測定122を較正するように構成された較正ユニットS4xと、を備える。
【0053】
図6は、本明細書に説明の一実施形態による、無線トランシーバ130の構成要素を、いくつかの機能ユニットの観点から概略的に示す。処理回路610は、コンピュータプログラム製品に記憶されたソフトウェア命令を、例えば、記憶媒体630の形態で実行することができる好適な中央処理装置(central processing unit、CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)などのうちの1つ以上の任意の組み合わせを使用して提供される。処理回路610は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)として更に提供されてもよい。したがって、処理回路は、複数のデジタル論理構成要素を備える。
【0054】
特に、処理回路610は、システム130に、一連の動作又はステップを実行させるように構成されている。例えば、記憶媒体630は一連の動作を記憶することができ、処理回路610は、記憶媒体630から一連の動作を取り出してシステム130に一連の動作を実行させるように構成することができる。動作のセットは、実行可能命令のセットとして提供されてもよい。したがって、処理回路610は、本明細書に開示される方法を実行するように構成される。
【0055】
記憶媒体630はまた、例えば、磁気メモリ、光学メモリ、固体メモリ、若しくは遠隔搭載メモリのいずれか1つ又はその組み合わせであり得る永続的ストレージを備え得る。
【0056】
センサ信号処理システム130は、少なくとも1つの外部デバイスと通信するためのインターフェース620を更に備える。したがって、インターフェース620は、アナログ及びデジタル構成要素、並びに無線通信のための好適な数のポートを備える、1つ以上の送信機及び受信機を備えてもよい。
【0057】
処理回路610は、例えばデータ及び制御信号をインターフェース620及び記憶媒体630に送信することにより、インターフェース620からデータ及びレポートを受信することにより、並びに記憶媒体630からデータ及び命令を取り出すことにより、システム130の一般的な動作を制御する。本明細書で提示される概念を不明瞭にしないために、制御ノードの他の構成要素、並びに関連する機能は省略されている。
【0058】
図7は、本明細書に開示される方法のうちのいずれかを実行するためのコンピュータ実行可能命令710を含むコンピュータプログラム製品700を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7