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特許7303400大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関用燃料バルブ
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  • 特許-大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関用燃料バルブ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関用燃料バルブ
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/10 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
F02M61/10 P
F02M61/10 G
F02M61/10 Q
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003437
(22)【出願日】2023-01-13
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】PA202200135
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー ステファン
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-240805(JP,A)
【文献】特開2018-096377(JP,A)
【文献】特開2010-236536(JP,A)
【文献】独国特許発明第482591(DE,C)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 61/00~61/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関の燃料バルブであって、
後端と前端とを有する細長い燃料バルブハウジングと、
ノズル孔面積を有する少なくとも1つのノズル孔に開口する少なくとも1つのボアを有し、前記燃料バルブハウジングの前記前端に配されるノズルと、
前記後端から前記前端に向かって延び、加圧された燃料の供給源に接続される燃料チャネルと、
軸方向に変位可能なバルブニードルと、
を備え、
前記バルブニードルは、前記バルブニードルがバルブシートに座して燃料がノズルに流れるのを防ぐ閉位置と、該バルブニードルが前記バルブシートからリフトされる開位置とを有し、前記開位置では、前記バルブニードルと前記バルブシートとの間にバルブニードル流れエリアが露出し、燃料は、前記燃料チャネルと前記バルブニードル流れエリアと前記ノズル内の前記少なくとも一つのボアとによって少なくとも規定される流路を介して、前記燃料バルブを通って前記ノズル孔に流れることができ、
前記燃料バルブは更に、前記燃料の前記流路に、前記ボアに挿入されるインサートである流量制限部を備え、前記流量制限部は、前記流路において、前記バルブシートと前記ノズル孔との間の配されていることを特徴とする、
燃料弁。
【請求項2】
前記ノズルは、少なくとも1つのノズル孔に開口する複数のボアを有することを特徴とする請求項1に記載の燃料バルブ。
【請求項3】
前記ノズルは、少なくとも1つのノズル孔に開口するボアを1つしか有さないことを特徴とする請求項1に記載の燃料バルブ。
【請求項4】
前記ノズル孔は前記ノズルの周方向に分布し、好ましくは軸方向にも分布しており、前記ノズル孔は、前記ノズルの軸方向先端付近に配置され、該先端は好ましくは閉じられている、請求項1に記載の燃料バルブ。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の燃料バルブを備える、大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関の燃料バルブに関する。この燃料バルブは、後端と前端とを有する細長い燃料バルブハウジングと、ノズル孔面積を有する少なくとも1つのノズル孔に開口する少なくとも1つのボアを有し、前記燃料バルブハウジングの前記前端に配されるノズルと、前記後端から前記前端に向かって延び、加圧された燃料の供給源に接続される燃料チャネルと、軸方向に変位可能なバルブニードルと、を備え、前記バルブニードルは、前記バルブニードルがバルブシートに座して燃料がノズルに流れるのを防ぐ閉位置と、該バルブニードルが前記バルブシートからリフトされる開位置とを有し、前記開位置では、前記バルブニードルと前記バルブシートとの間にバルブニードル流れエリアが露出し、燃料は、前記燃料チャネルと前記バルブニードル流れエリアと前記ノズル内の前記少なくとも一つのボアとによって少なくとも規定される流路を介して、前記燃料バルブを通って前記ノズル孔に流れることができる。前記燃料バルブは、前記流路に設けられた流量制限部を備える。
【発明の背景】
【0002】
大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関は、通常、コンテナ船などの大型外航船や発電所の原動機として使用される。このタイプのエンジンは、重油や燃料油で運転されることが非常に多い。
【0003】
近年、大型2ストロークディーゼルエンジンにおいて、別の種類の燃料を使用できるようにしたいという要望が生じている。例えば、メタノール、LPG、LNG、エタン、アンモニアなどのガス燃料に対応することが求められている。
【0004】
このような燃料は、大型低速ユニフローターボ過給式2ストローク内燃機関の燃料として使用した場合、例えば重油を燃料として使用した場合と比較して、排ガス中の亜硫酸成分、NOx、CO2が大幅に低減されるため、比較的クリーンな燃料であると言える。
【0005】
しかし、大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関でこのような燃料を使用することには問題がある。その問題の1つは、燃料の自己着火の意思と予測可能性であり、このような機関ではどちらも制御下に置くことが不可欠である。そのため、既存の大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関では、ガス燃料の確実かつ適切なタイミングでの点火を確保するために、ガス燃料の噴射と同時にオイルのパイロット噴射を行うのが一般的である。
【0006】
これらの機関は、通常、各シリンダカバーに配置された2つまたは3つの燃料バルブを備える。この燃料バルブは、可動弁部材として機能する、ばね付勢された軸方向可動バルブニードルを備えてもよい。燃料の圧力が予め設定された圧力(典型的には約350バール)を超えると、軸方向に可動なバルブニードルはそのバルブシートからリフトされ、燃料は、燃料バルブの前部のノズルを介して燃焼室内に流入することが可能にされる。燃料バルブニードルは、外部の油圧や電気で作動させ、制御されることも可能である。
【0007】
現在、アンモニアは内燃機関の燃料として非常に高い関心を集めている。その主な理由は、太陽、風、波エネルギーなどの再生可能エネルギー源からの電力を使用して環境にやさしい方法で製造できること、またアンモニアの燃焼自体が二酸化炭素などの温室効果ガスを含まないためである。
【0008】
内燃機関の燃料としてアンモニアを使用する場合、ピストンの圧縮行程でアンモニア燃料を比較的低い圧力で導入するオットー原理で動作させる場合と、ピストンが上死点(TDC)に近づいたときにアンモニア燃料を高圧で燃焼室に噴射するディーゼル原理で動作させる場合がある。ピストンサイクルのアンモニア燃料噴射・燃焼段階では、燃焼室の圧縮・膨張と燃焼により、シリンダ圧力が劇的に変化する。
【0009】
現在のディーゼル内燃機関用燃料噴射システムは、燃料噴射時にシリンダ内の燃料量を安定的に制御するために、シリンダの燃焼室内の最大圧力よりもかなり高い噴射圧力が必要とされている。主な圧力低下は、常に、燃料が高速で燃焼室に噴射されるノズル孔に位置している。従って、噴射圧力レベルと有効ノズル面積が燃料噴射量を決定している。
【0010】
多くの燃料ではこれが望ましいが、内燃機関のシリンダの燃焼室にアンモニアを噴射する場合、燃焼を妨げず、燃料バルブやインジェクタの近くで火炎を安定させるために、噴射圧力と速度をかなり低くする必要がある場合がある。アンモニアの層流燃焼速度は、多くの炭化水素の約1/10であるため、乱流レベルが低くても火炎の消炎/消滅が発生する可能性がある。さらに、燃料ジェットの速度が高すぎると、ノズル穴の出口から限られたリフトオフ長で炎が安定するチャンスがないまま、下流に炎を追い払う又は変形させてしまう可能性がある。これは、ろうそくを吹き消すようなものである。
【0011】
現在の燃料噴射システムは、噴射継続時間中にダウンストリーム圧力が大きく変化するため、低圧で安定した噴射量での燃料噴射ができない。(例えば、ブースターの油圧駆動圧やコモンレールシステムの燃料圧を数ミリ秒以内に制御することによる、)噴射圧の過渡的な制御は不可能である。
【0012】
冒頭で述べた種類の燃料バルブは、WO2015/091180A1(JP2017/507269に相当)及びUS2009/0032622から知られている。これらの公知の燃料バルブでは、バルブシートの上流側の流路に流量制限部が設けられている。このため、これらの公知の燃料バルブにおいて、バルブニードルに作用する燃料媒体からの力(これは、ばねやアクチュエータ(電気、油圧等)によって対抗される必要がある)は、流量制限部または流量制限部の変化の影響を受ける。それゆえ、バルブニードルに対する作動力の要求と、バルブニードルの作動の制御は、流量制限部に依存する。さらに、これらの先行技術の燃料バルブにおいて、バルブニードルの開放は、バルブニードルに作用する圧力の急減を直ちにもたらし、その結果、バルブニードルの開放を維持するために、非常に大きな作動力を必要とすることになる。
【0013】
本発明はまた、上に説明され添付の特許請求の範囲に記載される燃料バルブを備える大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関に関する。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、冒頭に述べたようなタイプの燃料バルブであって、消炎や、バルブニードルに作用する燃料媒体からの力に関する上記の課題が少なくとも大幅に低減される、燃料バルブを提供することである。
【0015】
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や発明の詳細な説明、図面から明らかになるだろう。
【0016】
第1の捉え方によれば、大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関の燃料バルブが提供される。この燃料バルブは、
後端と前端とを有する細長い燃料バルブハウジングと、
ノズル孔面積を有する少なくとも1つのノズル孔に開口する少なくとも1つのボアを有し、前記燃料バルブハウジングの前記前端に配されるノズルと、
前記後端から前記前端に向かって延び、加圧された燃料の供給源に接続される燃料チャネルと、
軸方向に変位可能なバルブニードルと、
備え、前記バルブニードルは、前記バルブニードルがバルブシートに座して燃料がノズルに流れるのを防ぐ閉位置と、該バルブニードルが前記バルブシートからリフトされる開位置とを有し、前記開位置では、前記バルブニードルと前記バルブシートとの間にバルブニードル流れエリアが露出し、燃料は、前記燃料チャネルと前記バルブニードル流れエリアと前記ノズル内の前記少なくとも一つのボアとによって少なくとも規定される流路を介して、前記燃料バルブを通って前記ノズル孔に流れることができる。
前記燃料バルブは更に、前記燃料の前記流路に流量制限部を備え、前記流量制限部は、前記流路において、前記バルブシートと前記ノズル孔との間の配されていることを特徴とする。
【0017】
バルブシートと1つ又は複数のノズル孔との間の流路に(従ってノズル孔自体とは異なる位置に)流量制限部を導入することによって、噴射流量は噴射圧力と流量制限部の有効開口流路面積によって決まる。このため、1つ又は複数のノズル孔において、シリンダへの高い出口速度を回避することができる。つまり燃料は、低い噴射速度で内燃機関のシリンダの燃焼室に噴射されうる。従って、燃料噴射システムにおいて、高い燃料供給圧力を維持しながら、火炎の消滅のリスクを低くすることを容易にすることができる。このため、アンモニアなどの燃料は、制御された質量速度でシリンダ内に噴射されうる。それによって、火炎の消滅の危険性が排除されるか、少なくとも低下させることができる。加えて、バルブニードルに作用する燃料媒体からの力は、流量制限部の影響を受けない。
【0018】
噴射システムは、コモンレールシステムの圧力を制御することやブースターバルブを駆動する油圧を常に高く保つことによって、高い供給圧力を維持することができる。
【0019】
流量制限部は、選択された圧力レベルによって与えられる正しい燃料流量を保証する流路面積を提供することが好ましい。従って、流量制限部の流路面積は、ノズル孔面積より著しく小さいことが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、流量制限部の流路面積は、ノズル孔面積の3/4未満、好ましくは1/2未満、最も好ましくは1/3未満である。従って、この手法では、燃料は、シリンダ圧力に依存しない一定の質量速度及び速度でノズル孔から噴射され得る。
【0020】
ノズルは、少なくとも1つのノズル孔に開口する2つ以上のボアを有してもよい。このような実施形態では、各ノズル孔は、好ましくは互いに等しいノズル孔面積を有する。しかし、それぞれ異なるノズル孔面積である複数のノズル孔を有するノズルも考えられる。別の実施形態では、ノズルは、すべてのノズル孔に燃料を供給する1つのボアを有してもよい。複数のノズル孔を有するノズルを備える実施形態において、流量制限部の流域面積に対して比較され大きさが決められる必要があるのは、全てのノズル孔の合計ノズル孔面積である。
【0021】
本発明の一実施形態では、流量制限部がバルブシートとノズル孔の間の流路に設けられる場合、ボアの少なくとも一部の断面積が減少させられうる。実際には、そのような制限部は、バルブシートからノズル孔まで延びるボア内に流量制限インサート(挿入物)を導入することによって提供され得る。燃料が、各ノズル孔のための個別のボアを介して各ノズル孔に供給される場合、流量制限インサートは、全てのボアに設けられなければならない。
【0022】
このとき、流量制限インサートの流量制限面積は、そのボアから燃料が供給される個々のノズル孔のノズル孔面積より小さい。
【0023】
本発明の別の実施形態では、流量制限部がバルブシートとノズル孔の間の流路にも設けられる場合、燃料バルブのノズルは1つのボアのみを有し、その1つのボアは複数のノズル孔に燃料を供給する。流量制限インサートは1つだけ必要で、その流量制限面積は、全てのノズル孔流路面積の合計よりも小さい。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態では、燃料バルブはスライド弁の一種であってもよい。
【0025】
かかる実施形態では、ノズルは、複数のノズル孔に燃料を供給するただ一つのボアを有し、バルブニードルは、閉位置にあるときにボア内に延びてノズル孔を遮断する、カットオフシャフトとして形成される。この種のバルブでは、バルブニードルがその開位置にあるとき、燃料は少なくとも一つのオリフィスを介してカットオフシャフトを通過する。従って、このようなバルブにおける流量制限部は、前記少なくとも一つのオリフィスに設けられてもよい。
【0026】
ノズルのノズル孔は、ノズルの径方向に、好ましくは軸方向にも分布してもよい。これらのノズル孔は、ノズルの軸方向先端付近に配置されてもよい。この先端は好ましくは閉じられている。これらのノズル孔は好ましくは、ノズルの外周の比較的狭い範囲に位置していてもよい。例えば約50°~120°の間に位置していてもよい。またノズル孔の径方向の向きは、シリンダライナによって画定される燃焼室の壁から離れる方向に向いてもよい。さらにノズル孔は、掃気ポートの構造によって引き起こされる燃焼室内の掃気の渦の方向とほぼ同じ方向になるように方向付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
図1】本発明に係る燃料バルブの一実施形態を示す図である。ここでは流量制限部がノズルのボアに設けられているので、ボアの少なくとも一部の流路面積はノズル孔面積より小さくなる。
図2】本発明に係る燃料バルブの一実施形態を示す図である。ここではノズルがボアを1つのみ有し、このボアに流量制限部が設けられているため、ボアの少なくとも一部の流路面積がノズル孔面積よりも小さくなっている。
図3】本発明の参考例を示す図である。ここでは燃料バルブはスライド弁である。ノズルのボアは1つだけで、バルブニードルはカットオフシャフトとして形成されている。カットオフシャフトのオリフィスに流量制限部が設けられている。
【詳細説明】
【0028】
以下の詳細説明では、本発明による燃料バルブを、クロスヘッド式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関で使用するように説明する。ただし内燃機関は他のタイプであってもよいことは理解されたい。
【0029】
図1には、本発明による燃料バルブ1の例示的な実施形態が示されている。この実施形態例と、図2及び図3に示す実施形態とは、異なる断面で示されており、従って同じ構造要素が全ての図に示されてはいないが、3つの図において、対応する要素には同じ参照番号が使用されている。
【0030】
図1に示す燃料バルブ1は、後端3と前端4とを有する細長い燃料バルブハウジング2を有する。ハウジング2の前端部には、保持要素6によってノズル5が取り付けられている。図1に見られるように、ノズル5は5つのボア7を有し、これらのボアはすべてバルブシート8から延伸して、燃焼室10に燃料を噴射するためのノズル孔9に開口している。ボア7は、その流路面積を規定する直径Xを有し、ノズル孔9の直径Yによってノズル孔面積が規定される。燃料バルブ1は、図1には描かれていないが燃料チャネルをさらに有する。この燃料チャネルは、燃料バルブ1の後端3から前端4に向かって延びている。この燃料チャネルは、加圧燃料の供給源(図示されていない)に接続されている。また燃料バルブは、これも図示されていないが、燃料戻りチャネルを備える。燃料バルブ1は、燃料バルブ1を通る燃料の流れを制御するために、軸方向に変位可能なバルブニードル12を有する。バルブニードル12は閉位置と開位置とを有する。閉位置において、バルブニードル12はバルブシート8に接触しており、燃料がノズル5へ流れるのを防いでいる。閉位置において、バルブニードル12はバルブシート8から持ち上げられており、それによって、燃料が燃料バルブ1を通ってノズル孔9へ流れることを可能にするバルブニードル流れエリア13が露出される。このように、燃料バルブ1は、燃料チャネル、バルブニードル流れエリア13、及びノズル5内のボア7によって規定される流路を有している。
【0031】
軸方向に変位可能なバルブニードル12は、細長いバルブハウジング2内の長手方向ボア14内に、狭いクリアランスで摺動可能に受容されている。図示のバルブニードル12は、バルブシート8に適合する形状の円錐部を有する。上記閉位置において、バルブニードル12の円錐部はバルブシート8に座している。この円錐部は、上記開位置においてバルブシート8から持ち上がっており、バルブニードル12は、予め張られた螺旋ばね15によって閉位置に向かって弾性的に付勢されている。予め張力をかけられた螺旋ばね15は、バルブニードル12に作用し、バルブニードル12を、円錐部がバルブシート8に座しているその閉位置に向かって付勢する。螺旋ばね15は、細長い燃料バルブハウジング2内のばね室16に受容されている螺旋ワイヤーばねである。
【0032】
図2及び図3に示す燃料バルブ1は、基本的に図1に示す燃料バルブと同じ要素から構成されるが、以下に説明するようにいくつかの相違点がある。図2及び図3において、燃料バルブのノズル5は、ノズル孔9に燃料を供給するボア7を1つしか有さない。この単一のボア7が、全てのノズル孔9に燃料を供給する。位置決めピン22によってノズル5がハウジング2に対して位置決めされることが示されているが、これは図1のバルブにも当てはまる。また、これらの燃料バルブにおいて、ノズル5は、図1にのみ示される保持要素6によってハウジング2に取り付けられる。
【0033】
図3に示す燃料バルブはスライド弁であり、その特徴は、バルブニードル12が特別な設計になっていることである。スライド弁のバルブニードル12は、単一ボア7内に突出する細長い部材を有する。この部材は、中実の第1部分23と、バルブシート8から最も遠い部分である中空の第2部分24を有する。この中空部分は少なくとも1つのオリフィス26を有し、その自由端25で開口している。動作中、バルブニードルがバルブシート8から離れたその開弁位置までリフトされると、前記細長い部材の自由端25もノズル孔9から自由に持ち上げられ、燃料が細長い部材とボア7の壁の間でボア7内を1つ又は複数のオリフィス26まで流れ、そして中空部分24内部へ流れ込む。そこから燃料は開いた自由端25へと流れ出して、ノズル孔9内へと流れていく。
【0034】
細長いバルブハウジング2や燃料バルブ1の他の構成要素、またノズル5は、好ましい実施形態では、例えば工具鋼(Tool Steel)やステンレス鋼のような鋼製である。
【0035】
ノズル5は、前述のように複数のノズル孔9を備えている。これらのノズル孔9は、ノズル5の上で径方向に分布しており、好ましくは軸方向にも分布している。ノズル孔9は、軸方向においてノズル5の先端部17の近傍に配置されている。図示された実施形態では、この先端部17は閉じられている。図示された実施形態では、複数のノズル孔9は、ノズル5の外周の比較的狭い範囲に分布しており、例えば約50°から120°の間にわたって分布している。そのような実施形態では、ノズル孔9の径方向の向きは、シリンダライナによって画定される燃焼室の壁から離れる方向に向いてもよい。またノズル孔9は、掃気ポートの構造によって引き起こされる燃焼室内の掃気の渦の方向とほぼ同じ方向になるように方向付けられてもよい。この渦は、ユニフロー式大型2ストロークターボ過給式内燃機関の周知の特徴である。
【0036】
本発明によれば、燃料バルブは、バルブシート(8)と1つ又は複数のノズル孔(9)との間の流路に設けられた流量制限部部20を有する。これによって、燃料は、低い噴射速度で内燃機関のシリンダの燃焼室に噴射されうる。従って、燃料噴射システムにおいて、高い燃料供給圧力を維持しながら、火炎の消滅のリスクを低くすることを容易にすることができる。このため、アンモニアなどの燃料は、制御された質量速度でシリンダ内に噴射されうる。それによって、火炎の消滅の危険性が排除されるか、少なくとも低下させることができる。
【0037】
図1に示す実施形態では、流量制限部20は、バルブシート8とノズル孔9との間の流路に設けられている。実際には、ボア7の少なくとも一部に断面積の減少部が設けられる。しかし、ノズル5の製造を容易にするために、図示されるように、ボア7はその全長に亘って同じ直径を有し、インサートの形態の流量制限部20が各ボア7に装着されることが好ましい。ここで流量制限部20は、ノズル孔面積よりも小さい流路面積を有している。
【0038】
図2に示す実施形態でも、流量制限部20は、バルブシート8とノズル孔9との間の流路に設けられている。ボア7の一部の断面積の縮小は、ボア7にインサートを装着することによって実現されている。インサートの形態の流量制限部20は、ノズル孔9の総面積よりも小さい流路面積を有する。
【0039】
図3に示す参考例でも、流量制限部20は、バルブシート8とノズル孔9との間の流路に設けられている。この実施形態では、1つ又は複数のオリフィス26にインサートを取り付けるか、又は1つ又は複数のオリフィス26の総流路面積がノズル孔9の総面積よりも小さくなるようにオリフィス26を小さい直径で作ることによって、流量制限部20がオリフィス26に設けられる。
【要約】      (修正有)
【課題】バルブニードルに作用する燃料媒体からの力に関する課題が少なくとも大幅に低減される、燃料バルブを提供することである。
【解決手段】大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関の燃料バルブ1が開示される。この燃料バルブは、燃料バルブハウジングの前端に配されるノズル5と、加圧燃料供給源に接続される燃料チャネルと、バルブニードル12と備える。ノズルはノズル孔9に開口するボア7を有する。バルブニードルの開位置では、バルブニードルとバルブシート8との間にバルブニードル流れエリア13が露出し、燃料は、燃料チャネルとバルブニードル流れエリアとノズル内ボアに規定される流路を通じてノズル孔に流れる。また燃料バルブは、前記流路に設けられた流量制限部20を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3