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特許7303407腫瘍の診断および治療におけるAkt2の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】腫瘍の診断および治療におけるAkt2の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/711 20060101AFI20230628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230628BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20230628BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A61K31/711 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/113 Z
C12Q1/6883 Z
G01N33/574 D
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021181430
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2018546727の分割
【原出願日】2015-11-30
(65)【公開番号】P2022028749
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】518189334
【氏名又は名称】シェ、ヤンホイ
【氏名又は名称原語表記】XIE YANHUI
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】シェ、ヤンホイ
(72)【発明者】
【氏名】シェ、ミシュエ
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0043023(US,A1)
【文献】Leukemia and Lymphoma,2005年,Vol.46,p.1765-1773
【文献】Blood,2009年,Vol.113,p.2014-2021
【文献】Cell Death and Differentiation,2004年,Vol.11,p.S65-S72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/711
A61P 35/00
A61P 35/02
C12N 15/113
C12Q 1/6883
G01N 33/574
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Akt2検出剤を含む、グルココルチコイド耐性腫瘍を検出するためのキットであって、前記Akt2検出剤が、配列番号3または4で表されるヌクレオチド分子から選択される、前記キット
【請求項2】
前記グルココルチコイドが、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ブデソニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、シクレソニド、コルチゾン、メチルプレドニゾロン、酪酸クロベタゾール、フルオシノニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、フロ酸モメタゾン、ハルシノニド、プロピオン酸クロベタゾール、ハルシノニド、ハロメタゾンおよび二酢酸ジフロラゾンからなる群から選択される、請求項に記載のキット。
【請求項3】
前記グルココルチコイドがデキサメタゾンである、請求項に記載のキット。
【請求項4】
前記腫瘍がリンパ球由来腫瘍である、請求項1~のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記腫瘍が、リンパ球性白血病、リンパ腫および骨髄腫からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記腫瘍がT細胞由来腫瘍である、請求項1~のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記腫瘍が、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、Tリンパ球性白血病、T細胞リンパ腫および骨髄腫からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
前記腫瘍が、バーキットリンパ腫、急性Tリンパ球性白血病および骨髄腫からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学と医学の分野に属し、腫瘍の診断および治療、特に、グルココルチコイド耐性腫瘍を診断するための、AktキナーゼサブタイプであるAkt2の検出剤、ならびに、腫瘍、特に、リンパ球性白血病、骨髄腫およびリンパ腫を治療するための、Akt2阻害剤とグルココルチコイドとの組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内に広く存在するPI3K/Akt経路は、細胞の成長、増殖および分化の調節に関与するシグナル伝達経路であり、ヒトの様々な腫瘍の発生率と発達に密接に関連する。AktサブタイプとしてのAkt1およびAkt2は、両方とも、細胞の成長および増殖の調節と、血糖レベルの調節とにおいて役割を果たす。研究により、Akt1は細胞におけるグルココルチコイド耐性の原因となる重要な標的であることが示されている。しかしながら、Akt2と、リンパ球由来腫瘍の発生/発達、薬物耐性および予後との相関に関する報告はない。
【0003】
グルココルチコイド(GC)は、様々な血リンパ系腫瘍の第一選択化学療法として使用される、リンパ球のアポトーシスを誘導することができる臨床的に有効な薬物の1つである。グルココルチコイド耐性は、リンパ系腫瘍の臨床的処置における一般的な問題であり、処置の失敗の重要な原因である。現在、グルココルチコイド耐性についての研究においていくつかの進歩があったが、耐性の詳しい分子機構は依然として不明である。最近の研究では、グルココルチコイド耐性は、グルココルチコイド受容体(GR)数の増加、GRの構造的機能、分子シャペロンの発現および遺伝子突然変異と関連しておらず、GR突然変異は極めてまれであり;プレドニゾン耐性は、多剤耐性遺伝子(ABCB1、ABCB4、ABCC1、ABCG2およびMVPなど)と関連していないことが見出された。他の研究では、多くの標的遺伝子がグルココルチコイド耐性をもたらす可能性があることが見出され、グルココルチコイドの感受性および耐性は異なる細胞シグナル伝達経路によって媒介されると予備的に考えられている。それに従って、グルココルチコイド耐性腫瘍を治療するための新しい方法が必要である。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本発明は、腫瘍細胞におけるAkt2の発現を測定することを含んでなる、グルココルチコイド耐性腫瘍を診断するための方法であって、グルココルチコイド感受性腫瘍細胞に対して、測定された腫瘍細胞におけるAkt2発現の上昇がその腫瘍はグルココルチコイド耐性であることを示す方法を提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、グルココルチコイド耐性腫瘍を診断するための組成物またはキットの調製における、Akt2の検出のための検出剤、例えば、Akt2タンパク質に対する抗体、またはAkt2 mRNAの検出のためのプローブもしくはプライマーなどの使用を提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、グルココルチコイド耐性腫瘍の診断における使用のための、Akt2の検出のための検出剤、例えば、Akt2タンパク質に対する抗体、またはAkt2 mRNAの検出のためのプローブもしくはプライマーなどを提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、腫瘍を治療するため、例えば、グルココルチコイド療法に対する腫瘍の感受性を向上させるためまたはグルココルチコイド耐性腫瘍を治療するための方法であって、その腫瘍を有する患者に治療上有効な量のAkt2阻害剤およびグルココルチコイドを投与することを含んでなる方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、腫瘍を治療するため、例えば、グルココルチコイド療法に対する腫瘍の感受性を向上もしくは増強するためまたはグルココルチコイド耐性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、Akt2阻害剤およびグルココルチコイドと、所望により、薬学的に許容可能な担体、賦形剤および/または希釈剤とを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、腫瘍を治療するため、例えば、グルココルチコイド療法に対する腫瘍の感受性を向上させるためまたはグルココルチコイド耐性腫瘍を治療するためのの医薬組成物の調製におけるAkt2阻害剤の使用を提供する。ある実施形態では、前記医薬組成物は、グルココルチコイドと、所望により、薬学的に許容可能な担体、賦形剤および/または希釈剤とを含んでなる。
【0010】
別の態様では、本発明は、腫瘍の治療における使用のため、例えば、グルココルチコイド療法に対する腫瘍の感受性を向上させるためまたはグルココルチコイド耐性腫瘍を治療するためのAkt2阻害剤を提供する。
【0011】
本発明のある実施形態では、前記腫瘍は、リンパ球由来腫瘍、例えば、リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫もしくはT細胞リンパ腫などのリンパ腫、または骨髄腫などである。本発明のある実施形態では、前記腫瘍は、Tリンパ球性白血病、T細胞リンパ腫および骨髄腫などのT細胞由来腫瘍である。本発明のある実施形態では、前記リンパ球性白血病は、急性リンパ球性白血病および慢性リンパ球性白血病からなる群から選択される。ある実施形態では、前記腫瘍は、急性Tリンパ球性白血病である。
【0012】
本発明のある実施形態では、前記グルココルチコイドは、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ブデソニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、シクレソニド、コルチゾン、メチルプレドニゾロン、酪酸クロベタゾール、フルオシノニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、フロ酸モメタゾン、ハルシノニド、プロピオン酸クロベタゾール、ハルシノニド、ハロメタゾン、二酢酸ジフロラゾンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】デキサメタゾンとAkt/FoxO3a経路におけるタンパク質発現との相関。図1A:CCRF-CEMフローサイトメトリー:異なる濃度のデキサメタゾンによって誘導されたCCRF-CEM細胞のアポトーシス。図1B:デキサメタゾンで処理した後のCCRF-CEM細胞におけるAkt/FoxO3a/Bimシグナル伝達経路でのタンパク質発現のウエスタンブロット。p-Akt:リン酸化Akt、p-FoxO3a:リン酸化FoxO3a。図1C:異なる濃度のデキサメタゾンによって誘導されたCEM-DR細胞のアポトーシス。図1D:CCRF-CEM細胞およびCEM-DR細胞におけるAkt/FoxO3a/Bimシグナル伝達経路のタンパク質発現。
図2-1】グルココルチコイドと組み合せた細胞経路阻害剤のアポトーシスに対する効果。図2A:Akt阻害剤およびPI3K阻害剤LY294002で処理した各群のCCRF-CEM細胞のアポトーシス。図2B:Akt阻害剤およびPI3K阻害剤LY294002で処理した各群のCCRF-CEM細胞におけるAkt/FoxO3a/Bimシグナル伝達経路のタンパク質発現のウエスタンブロット。図2C:デキサメタゾンと組み合せた異なる濃度のAkt阻害剤で処理したCCRF-CEM細胞のアポトーシス。図2D:Akt阻害剤で処理したCCRF-CEM細胞のアポトーシス。図2E:Akt阻害剤およびPI3K阻害剤LY294002で処理した各群のMolt-4細胞のアポトーシス。図2F:Akt阻害剤およびPI3K阻害剤LY294002で処理した各群のJurkat細胞のアポトーシス。
図2-2】グルココルチコイドと組み合せた細胞経路阻害剤のアポトーシスに対する効果。図2G:2-DGで処理した各群のCCRF-CEM細胞のアポトーシス。図2H:2-DGで処理した各群のCCRF-CEM細胞におけるAkt/FoxO3a/Bimシグナル伝達経路のタンパク質発現。図2I:Notch1経路阻害剤daptで処理した各群のCCRF-CEM細胞におけるFoxO3aタンパク質発現のウエスタンブロット。図2J:Notch1経路阻害剤daptで処理した各群のCCRF-CEM細胞のアポトーシス。
図2-3】グルココルチコイドと組み合せた細胞経路阻害剤のアポトーシスに対する効果。図2K:SGK阻害剤GSKで処理した腫瘍リンパ球のアポトーシス。図2L:他の細胞増殖経路阻害剤と比較した、Akt阻害剤で処理したCCRF-CEM細胞のアポトーシス。図2M:Akt阻害剤で処理したSP2/0細胞のアポトーシス。図2N:Akt阻害剤で処理したRaji細胞のアポトーシス。
図3】ヌードマウスにおけるグルココルチコイドに対するAkt阻害剤の感作。図3A:各群のCCRF-CEM担癌マウスの腫瘍形成。図3B:各群のCCRF-CEM担癌マウスの皮下腫瘍サイズ。図3C:各群のCCRF-CEM担癌マウスの腫瘍HE染色。図3D:各群の担癌マウスの全生存期間の比較。図3E:各群の担癌マウスにおける脾臓細胞のアポトーシス。図3F:薬物投与後の各群の担癌マウスの肝臓トランスアミナーゼALTおよびASTのレベル。
図4-1】グルココルチコイドと組み合せたAkt阻害剤の効果。図4A:異なる濃度のAkt1、Akt2またはAkt1/2阻害剤と組み合せた0.1μMデキサメタゾンによって誘導されたCCRF-CEM細胞のアポトーシス。図4B:Aktサブタイプ阻害剤と組み合せた異なる濃度のデキサメタゾンで処理したCCRF-CEM細胞の生存率。図4C:Aktサブタイプ阻害剤で処理した各群のCCRF-CEM細胞のアポトーシス。図4D:Aktサブタイプ阻害剤で処理した各群のCCRF-CEM細胞のアポトーシス。
図4-2】グルココルチコイドと組み合せたAkt阻害剤の効果。図4E:一定濃度比でデキサメタゾンと組み合せたAktサブタイプ阻害剤で処理した各群のCCRF-CEM細胞の生存率。図4F:Aktサブタイプ阻害剤で処理した各群のCCRF-CEM細胞のデキサメタゾンIC50値。図4G:Aktサブタイプ阻害剤と組み合せた異なる濃度のデキサメタゾンで処置したCEM-DR細胞の生存率。図4H:Aktサブタイプ阻害剤で処理した各群のCEM-DR細胞のアポトーシス。図4I:一定濃度比でデキサメタゾンと組み合せたAktサブタイプ阻害剤で処理した各群のCEM-DR細胞の生存率。
図4-3】グルココルチコイドと組み合せたAkt阻害剤の効果。図4J:Aktサブタイプ阻害剤で処理した各群のJurkat細胞のアポトーシス。図4K:一定濃度比でデキサメタゾンと組み合せたAktサブタイプ阻害剤で処理した各群のJurkat細胞の生存率。図4L:Aktサブタイプ阻害剤で処理した各群のDaudi細胞のアポトーシス。図4M:一定濃度比でデキサメタゾンと組み合せたAktサブタイプ阻害剤で処理した各群のDaudi細胞のアポトーシス。図4N:Aktサブタイプ阻害剤で処理したCEM-DR細胞、Jurkat細胞、Daudi細胞のデキサメタゾンIC50値。
図5-1】グルココルチコイドと組み合せたAktサブタイプ阻害剤の細胞生存率に対する効果。図5A:各群のCCRF-CEM細胞における総Akt1およびAkt2タンパク質ならびにリン酸化Akt1およびAkt2タンパク質の発現。図5B:各群のCCRF-CEM細胞における総FoxO3aタンパク質の発現。図5C:各群のCCRF-CEM細胞におけるリン酸化FoxO3aタンパク質の発現。図5D:各群のCCRF-CEM細胞におけるBimタンパク質の発現。
図5-2】グルココルチコイドと組み合せたAktサブタイプ阻害剤の細胞生存率に対する効果。図5E:様々なリンパ腫細胞および肝細胞におけるAkt1およびAkt2の発現レベル。図5F:siRNAトランスフェクトJurkat細胞の蛍光図。図5G:各群のsiRNAトランスフェクトJurkat細胞におけるAkt1およびAkt2タンパク質の発現。図5H:各群のsiRNAトランスフェクトJurkat細胞のアポトーシス。図5I:初回治療を受けた患者または難治性再発性急性のリンパ球性白血病を有する患者のリンパ球におけるAkt1 mRNAおよびAkt2 mRNAの発現レベル。
図5-3】グルココルチコイドと組み合せたAktサブタイプ阻害剤の細胞生存率に対する効果。図5J:初回治療を受けた患者または難治性急性のリンパ球性白血病を有する患者のリンパ球におけるAkt2 mRNAのROC分析。
図6-1】デキサメタゾンと組み合せたAkt1阻害剤およびAkt2阻害剤の健康な肝細胞に対する効果。図6A:デキサメタゾンと組み合せたAkt1阻害剤およびAkt2阻害剤の健康な肝細胞L-02の細胞生存率に対する阻害。図6B:Akt1阻害剤およびAkt2阻害剤で処理したL-02細胞における総Aktサブタイプタンパク質ならびにリン酸化Aktサブタイプタンパク質の発現。図6C:Aktサブタイプ阻害剤で処理した24時間後のL-02細胞における総FoxO3aタンパク質の発現。図6D:Aktサブタイプ阻害剤で処理した24時間後のL-02細胞におけるリン酸化FoxO3aタンパク質の発現。
図6-2】デキサメタゾンと組み合せたAkt1阻害剤およびAkt2阻害剤の健康な肝細胞に対する効果。図6E:Aktサブタイプ阻害剤で処理した24時間後のL-02細胞におけるBimタンパク質の発現。図6F:Aktサブタイプ阻害剤で処理した24時間後の肝細胞L-02の生存率の比較。図6G:各群のヌードマウスの末梢血アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベル。図6H:各群のヌードマウスの末梢血アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベル。図6I:各群のヌードマウスの末梢血総ビリルビン(TBIL)のレベル。
図6-3】デキサメタゾンと組み合せたAkt1阻害剤およびAkt2阻害剤の健康な肝細胞に対する効果。図6J:各群のヌードマウスの末梢血白血球の計数。図6K:各群のヌードマウスの末梢血赤血球の計数。図6L:各群のヌードマウスの末梢血ヘモグロビンのレベル。図6M:各群のヌードマウスの末梢血血小板の計数。図6N:各群のヌードマウスの血糖のレベル。図6O:各群のヌードマウスの末梢血クレアチニンのレベル。
図7-1】ヌードマウスにおけるデキサメタゾンと組み合せたAkt阻害剤の効果。図7A:薬物投与後の各群のCCRF-CEM担癌マウスの皮下腫瘍サイズ。図7B:薬物投与後の各群のCCRF-CEM担癌マウスの皮下腫瘍サイズ。図7C:薬物投与後の各群のCCRF-CEM担癌マウスの脾臓サイズ。図7D:薬物投与後の各群のCCRF-CEM担癌マウス全生存期間。図7E:各群のヌードマウスの腫瘍HE染色:矢印は腫瘍内の壊死領域を指している。図7F:各群のヌードマウスの腫瘍Ki-67染色。
図7-2】ヌードマウスにおけるデキサメタゾンと組み合せたAkt阻害剤の効果。図7G:各群のヌードマウスの脾臓HE染色。図7H:各群のヌードマウスの脾臓CD3染色。図7I:各群のヌードマウスの脾臓TDT染色。
図8-1】ヌードマウスの器官の病理学的切片。図8A:各群のヌードマウスの肝臓の病理学的切片(HE:1020)。図8B:各群のヌードマウスの肝臓の病理学的切片(HE:1040)。
図8-2】ヌードマウスの器官の病理学的切片。図8C:各群のヌードマウスの心臓の病理学的切片(HE:1020)。図8D:各群のヌードマウスの肺の病理学的切片(HE:1020)。
図8-3】ヌードマウスの器官の病理学的切片。図8E:各群のヌードマウスの腎臓の病理学的切片(HE:1020)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
特に断りのない限り、総ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に使用されている意味を有する。特に断りのない限り、総ての特許、特許出願、刊行物、GenBank配列、ウェブサイト、および他の刊行物は、引用することにより本明細書の一部とされる。本明細書で使用される用語にいくつかの定義がある場合、本節の定義が優先される。URLまたは別の識別子またはアドレスを記述するときは、いつでもインターネット上の情報に従って変更および更新することができ、関連情報はインターネットを検索することによって見つけられ得ることを理解されたい。本開示は、公に利用できるようにするための基礎として使用し得る。
【0015】
本発明者は、グルココルチコイド耐性腫瘍細胞におけるAkt2の発現が、グルココルチコイド感受性細胞と比較して増加していることを見出した。Akt2阻害剤を用いてAkt2タンパク質を阻害することにより、グルココルチコイドに対するグルココルチコイド耐性腫瘍細胞の感受性が増大する。Tリンパ系腫瘍細胞では、Akt2サブタイプ阻害剤は、グルココルチコイド誘導性リンパ球アポトーシスの感受性を著しく増大させる。薬剤耐性細胞株では、Akt2サブタイプ阻害剤とグルココルチコイドとの組合せは、良好な相乗作用を示し、グルココルチコイド耐性を逆転させることができる。Akt2サブタイプ阻害剤は、細胞内p-FoxO3a/総FoxO3a比を著しくダウンレギュレートすることができ、アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現をアップレギュレートすることができ、細胞内FoxO3a/Bimシグナル伝達経路を増強し、それによって、グルココルチコイドに対するリンパ球の感受性を増大させることにより、グルココルチコイド誘導性リンパ球アポトーシスを改善することができる。
【0016】
いかなる理論にも限定されるものではないが、本発明者は、Akt2タンパク質の発現は、グルココルチコイドに対する細胞の感受性に関連し、細胞におけるAkt2タンパク質の過剰発現は、リンパ球におけるグルココルチコイド耐性の原因となる重要な機構であり得ると考えている。Akt2は、リンパ系腫瘍のグルココルチコイド耐性を逆転させるためのより正確な治療標的として、またグルココルチコイド処置に対するリンパ系腫瘍の感受性を増強するための標的としても、またリンパ球がグルココルチコイド耐性であるかどうかを予測するための指標としても使用し得る。
【0017】
in vivoおよびin vitro試験により、Akt2サブタイプ阻害剤は、最小限の毒性を有し、マウスの血液系、肝機能、腎機能および血糖レベルに影響を及ぼさないことが確認された。Akt2サブタイプ阻害剤は、グルココルチコイド(デキサメタゾンなど)と相乗作用を示して、担癌マウスの腫瘍サイズおよび脾臓サイズを効果的に減少させ、腫瘍の液状化および壊死を引き起こし、全生存時間を増加させることができた;Akt2サブタイプ阻害剤は、最良のグルココルチコイド感作効果と最小限の毒性副作用を有する医薬である。
【0018】
それに従って、一態様において、本発明は、腫瘍細胞におけるAkt2のレベルを測定することを含んでなる、グルココルチコイド耐性腫瘍を診断するための方法であって、グルココルチコイド感受性腫瘍細胞に対して、測定された腫瘍細胞におけるAkt2のレベルの上昇がその腫瘍はグルココルチコイド耐性であることを示す方法を提供する。
【0019】
本発明では、Akt2レベルの増加とは、Akt2タンパク質の発現の上昇および/またはAkt2タンパク質の活性の増加を指す。Akt2発現レベルの測定は、当技術分野で公知の様々な発現測定方法、例えば、核酸レベルでのmRNAのレベルの測定またはタンパク質のレベルでのタンパク質のレベルの測定によって行うことができる。Akt2タンパク質の活性の測定はまた、リン酸化活性などのAkt2活性を測定するための当技術分野で公知の様々な方法によって行うこともできる。
【0020】
本発明では、グルココルチコイド感受性腫瘍とは、腫瘍細胞に対する50%阻害濃度(IC50)の値10μM未満(<10μM)を示す、グルココルチコイド処置を含むレジメンを臨床的に適用することによって効果的に緩和され得る腫瘍を指す。例えば、腫瘍細胞に対する50%阻害濃度(IC50)の値が10μM未満(<10μM)であるならば、その腫瘍はデキサメタゾン感受性腫瘍である。
【0021】
本発明では、グルココルチコイド耐性腫瘍とは、腫瘍細胞に対する50%阻害濃度(IC50)の値10μM以上(≧10μM)を示す、グルココルチコイドに対する耐性を示し、グルココルチコイドの治療効果が低下する腫瘍を指す。グルココルチコイド感受性腫瘍と比較して、グルココルチコイド耐性腫瘍は、同じ治療効果を達成するためにより多くのグルココルチコイドを必要とするか、またはグルココルチコイドで効果的に処置することさえできない。例えば、腫瘍細胞に対する50%阻害濃度(IC50)の値が10μM以上(≧10μM)であるならば、その腫瘍はデキサメタゾン耐性腫瘍である。
【0022】
本発明では、前記グルココルチコイドは、腫瘍処置のために当業者によって使用され得る任意のグルココルチコイド薬物である。本発明のある実施形態では、前記グルココルチコイドは、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ブデソニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、シクレソニド、コルチゾン、メチルプレドニゾロン、酪酸クロベタゾール、フルオシノニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、フロ酸モメタゾン、ハルシノニド、プロピオン酸クロベタゾール、ハルシノニド、ハロメタゾン、二酢酸ジフロラゾンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。本発明のある実施形態では、前記グルココルチコイドは、デキサメタゾンまたはその誘導体である。
【0023】
本明細書において使用される場合、「レベルの上昇または増加」は、以下のように決定され得る。例えば、グルココルチコイド感受性腫瘍細胞が対照群として使用され、対照群の細胞におけるAkt2タンパク質レベルの範囲が決定され、次いで、測定された腫瘍細胞におけるAkt2タンパク質の対応レベルが、対照群の細胞におけるAkt2タンパク質レベルの範囲より高いならば、測定された腫瘍細胞におけるAkt2タンパク質のレベルは「上昇したまたは増加した」と考えられる。
【0024】
本明細書において使用される場合、「レベルの上昇または増加」とは、基準値(例えば、グルココルチコイド感受性腫瘍細胞において観察された中央値または平均値)と比較して、測定された値が、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%またはそれを超えて増加していることを指す。
【0025】
本発明では、Akt2レベルは、Akt2検出剤を用いることにより測定することができる。Akt2検出剤とは、タンパク質および/または核酸レベルで、特に、mRNAレベルでAkt2を検出することが可能な分子または化合物を指し、これは、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、低分子量化合物、オリゴヌクレオチド、オリゴペプチド、RNA干渉体(RNAi)、アンチセンスRNA、組換えタンパク質、抗体、またはそれらのコンジュゲートもしくは融合タンパク質であり得る。RNAi体については、Milhavet O、Gary DS、Mattson MP.(Pharmacol Rev. 2003 Dec;55(4):629-48.総説)を参照、アンチセンスRNAについては、Opalinska JB、Gewirtz AM.(Sci STKE.2003 Oct 28;2003(206):pe47)を参照。例えば、グルココルチコイド耐性腫瘍を有すると疑われる患者におけるAkt2タンパク質のレベルを決定するために、本発明による方法は、Akt2タンパク質結合リガンドを用いて、その患者からの腫瘍サンプルにおけるAkt2タンパク質のレベル(濃度または絶対量)を決定することができ、ここで、そのサンプル中のAkt2タンパク質のレベルの上昇は、その患者におけるグルココルチコイド耐性腫瘍の存在を示す。
【0026】
本明細書において使用される場合、前記リガンドは、受容体標的化薬剤、サイトカイン、ホルモン、増殖因子、受容体特異的抗体、およびパターン認識受容体(PRR)リガンドであり得る。ある実施形態では、前記リガンドは、抗体(またはその抗原結合フラグメント)である。サンプル中のAkt2タンパク質は、当業者に公知の任意の技術を用いて、特に、例えば、抗体またはフラグメントまたは抗体誘導体などの特異的リガンドを用いて、明らかにされ得るかまたは分析され得る。好ましくは、前記リガンドは、Akt2タンパク質特異的抗体またはそのフラグメント(Fab、Fab’、CDRなど)またはその誘導体(一本鎖抗体、ScFvなど)である。サンプル中の標的タンパク質の存在または量は、例えば、標識されたリガンドを用いて、第2の標識された検出リガンドを用いてなど、標的-リガンド複合体を検出することにより検出することができる。ELISA、RIAなどを含む周知の免疫学技術を用いることができる。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「抗体」、「抗原結合フラグメント」または「免疫原性部分」は、当業者に一般的に知られている意味を有する。例えば、抗体の「抗原結合フラグメント」は、無傷抗体の組換えDNA技術または酵素消化または化学的切断によって作出され、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、および一本鎖抗体(svFc)が含まれる。前記抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および標識され得る抗体、ならびにそれらのフラグメント、変異体または誘導体であり得る。前記抗体標識は、放射性標識、蛍光標識、酵素標識、化学発光標識、またはビオチン基標識であり得る。
【0028】
抗体またはそのフラグメントの調製または使用はよく知られている。標的タンパク質に特異的な抗体は、従来の技術、特に、そのタンパク質(またはその免疫原性フラグメント)を含んでなる免疫原で非ヒト動物を免疫し、抗体(ポリクローナル)を回収するかまたは(モノクローナル抗体を産生する)細胞を作製することによって作出することができる。ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、ScFvフラグメントおよびヒト抗体またはヒト化抗体を調製するための技術は、例えば、下記に記載されている:Harlow et al.、Antibodies:A Laboratory Manual、CSH Press、1988;Ward et al.、Nature 341 (1989) 544;Bird et al.、Science 242 (1988) 423;Harlow、E. and Lane、D.、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold SpringHarbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1999;WO94/02602、US5,223,409、US5,877,293、WO93/01288。
【0029】
前記タンパク質はまた、質量分析技術の当業者に公知の技術を用いて検出することもでき、そのような技術は、サンプル中の特定の特徴的な配列を検出するために、一般に、プロテオーム解析下に分類される。
【0030】
あるいは、本発明の方法は、Akt2 mRNAの量を検出するための任意の方法を用いて、腫瘍中のAkt2 mRNAのレベルを決定することができ、ここで、腫瘍中におけるA kt2 mRNAのレベルの上昇がその腫瘍はグルココルチコイド耐性腫瘍であることを示している。上記の検出方法には、サンプル中の核酸を検出することが可能な様々な技術、例えば、ノーザンブロット法、選択的ハイブリダイゼーション、例えば、RT-PCR、定量的PCRまたはPCR関連核酸増幅による、核酸分子アレイ、DNAチップなどのような、オリゴヌクレオチドプローブでコーティングされた基質の使用などが含まれる。これらの方法は、サンプル中の核酸標的を選択的または特異的に検出することが可能な核酸プローブまたはプライマーの使用を含むことができる。例えば、ハイブリダイゼーションは、当業者に公知であり、標準的な条件を参照して行われ得る(Sambrook、Fritsch、Maniatis(1989)Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory Press)、例えば、ハイブリダイゼーションは、高い、中程度または低いストリンジェンシー条件下で行われ得る。あるいは、増幅は、当業者ならば、様々な公知の方法、例えば、PCR、LCR、転写介在増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)、NASBA、および対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)、対立遺伝子特異的増幅、サザンブロット、一本鎖コンフォメーション分析(SSCA)、in situハイブリダイゼーション(例えば、FISH)、ゲルシフト法、ヘテロ二重鎖分析などを用いて行うことができる。
【0031】
本発明のある実施形態では、前記Akt2検出剤は、配列番号3または4に記載の配列などの、Akt2 mRNAまたはそのcDNAを検出するためのプライマーである。
【0032】
別の態様では、本発明は、グルココルチコイド耐性腫瘍を診断するための組成物またはキットの調製のための、本明細書に記載のAkt2検出剤の使用をさらに提供する。
【0033】
本明細書において使用される場合、用語「キット」とは、本明細書に記載のAkt2検出剤と、限定されるものではないが、Akt2検出剤の、投与、診断およびその活性または特性の評価を含む目的のための別の品目との組合せを指す。このキットには、所望により、使用説明書(am instruction for use)が含まれる。
【0034】
別の態様では、本発明は、腫瘍、特に、Akt2発現の上昇を特徴とするグルココルチコイド耐性腫瘍を有する患者を治療する方法であって、その患者に治療上有効な量のグルココルチコイドおよびAkt2阻害剤、例えば、Akt2阻害剤およびグルココルチコイドを含んでなる医薬組成物を投与することを含んでなる方法を提供する。この投与は、限定されるものではないが、非経口経路、例えば、皮下、口腔または頬または鼻腔の粘膜を含む任意の好適な経路によって行うことができる。ある実施形態では、本発明の方法は、グルココルチコイド(例えば、グルココルチコイド)およびAkt2阻害剤(例えば、CCT128930)を、任意の好適な用量比で、患者に投与することを含んでなり、例えば、それらのモル濃度比は、例えば、1:10~5:1、1:10~4:1、1:10~3:1、1:10~2:1、1:10~1:1、1:10~1:2、1:10~1:3、1:10~1:4または1:10~1:5などの1:10~10:1であり得る。ある実施形態では、本発明の方法は、患者にグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)およびAkt2阻害剤(例えば、CCT128930)を、モル濃度比1:8で投与することを含んでなる。
【0035】
本明細書において使用される場合、腫瘍を有する対象を「治療すること」とは、その対象の腫瘍が部分的もしくは完全に排除されるか、または処置後にさらに進行することなく安定したままであることを指す。処置には、予防、治療および/または治癒が含まれる。「予防」とは、潜在的腫瘍の発生を防止しかつ/または腫瘍の悪化もしくは進行を防止することを指し、腫瘍発生につながる1以上の危険因子の減少または排除を含む;腫瘍が発生したことがないかどうかを判断することは不可能である場合が多いため、予防には、腫瘍の発症または腫瘍を有する危険性を低減することも含まれる。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「治療上有効な量」または「治療上有効な用量」とは、対象において治療効果をもたらすために少なくとも十分である投薬処方物中の薬剤、化合物または材料の量を指す。本発明のAkt2阻害剤については、当技術分野で公知の様々な技術を用いて、特定の治療上有効な用量を最初に推定することができる。例えば、細胞培養アッセイでは、薬剤を動物モデルで処方して、細胞培養で決定されたIC50を含んでなる循環濃度の範囲を得ることができる。ヒト対象に好適な用量範囲は、例えば、細胞培養実験および他の動物研究から得られたデータを用いて決定することができる。用量およびレジメンは、既知の用量およびレジメンに基づいて決定することができ、必要に応じて、Akt2阻害剤の特性に基づいて推定され、かつ/または様々な因子に基づいて経験的に決定され得る。これらの因子には、対象の体重、全般的健康、年齢、使用される特定の化合物の活性、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、疾患の重篤度および経過、ならびに疾患に対する患者の感受性および医師の判断が含まれる。患者の状態が改善した後、維持量の化合物または組成物を投与し得、必要に応じて、投与の用量、投与形および頻度またはそれらの組合せを変更し得る。正確な用量およびレジメン(regiment)は、医師の判断と患者の具体的な状態に基づいているべきである。
【0037】
本発明では、Akt2阻害剤とは、Akt2の発現および/または活性を核酸レベルおよび/またはタンパク質レベルで阻害することが可能な分子を指す。当技術分野で利用可能なAkt2阻害剤を本発明に使用することができる。例えば、Akt2阻害剤は、小分子化合物、例えば、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)の化合物であり得る。
【化1】
【0038】
あるいは、Akt2阻害剤は、mRNA干渉RNA分子であり得るし、またはAkt2タンパク質のアンタゴニスト、例えば、リガンド、アプタマーもしくは抗体であり得る。ある実施形態では、前記Akt2阻害剤は、Akt2タンパク質に対する抗体である。別の実施形態では、前記Akt2阻害剤は、二本鎖RNA(dsRNA)、例えば、短鎖干渉RNA(siRNA)または短鎖ヘアピンRNA(shRNA)である。二本鎖RNAは、限定されるものではないが、mRNA、snRNA、microRNA、およびtRNAを含む、任意のタイプのRNAであり得る。RNA干渉(RNAi)は、特定のRNAおよび/またはタンパク質の産生を特異的に阻害するために特に有用である。本発明に好適なdsRNA分子の設計および産生は、特に、Waterhouse et al.(1998)、Smith et al.(2000)、WO99/32619、WO99/53050、WO99/49029およびWO01/34815を参照して、当業者の技術の範囲内である。好ましくは、siRNA分子は、標的mRNAと同一の約19~23個の連続したヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を含んでなる。用語「shRNA」とは、約50個未満のヌクレオチドが同じRNA分子上の相補配列と対になっているsiRNA分子を指し、この配列と相補配列は、少なくとも約4~15個のヌクレオチドの不対合領域によって分離されている(2塩基相補領域によって作り出されたステム構造上に一本鎖ループを形成する)。十分に確立されたsiRNA設計基準がある(例えば、Elbashire et al.、2001;Amarzguioui et al.、2004;Reynolds et al.、2004を参照)。詳細については、Ambion、Dharmacon、GenScriptおよびOligoEngineなどの供給業者を参照。いったん設計されると、本発明の方法に使用されるdsRNAは、当技術分野で公知の任意の方法により、例えば、in vitro転写、組換えまたは合成手段によって作り出され得る。SiRNAは、リコンビナーゼ(T7 RNAポリメラーゼなど)およびDNAオリゴヌクレオチド鋳型を用いることによってin vitroで作り出され得るし、またはin vivoで、例えば、培養細胞で調製され得る。好ましい実施形態では、前記核酸分子は合成的に作り出される。
【0039】
本発明のある実施形態では、前記Akt2阻害剤は、Akt2選択的または特異的な阻害剤である。本発明では、阻害剤に使用する場合、用語「選択的」および「特異的」は、互換的に使用することができ、その阻害剤が標的だけに阻害効果を有するか、または他の化合物もしくは分子よりも標的に対して、例えば、少なくとも約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、10000倍高いなど、高い阻害効果を有することを意味する。例えば、式(II)のCCT128930(Selleckchem)は、無細胞アッセイにおいて6nMのIC50値を有し、密接に関連するPKAキナーゼよりもAkt2に対して28倍の高い選択性を示す有効なATP競合的選択的Akt2阻害剤である。本発明のある実施形態では、前記Akt2阻害剤は式(II)の化合物である。
【化2】
【0040】
本発明の別の実施形態では、前記Akt2阻害剤は、例えば、配列番号7または8に記載の、干渉RNA分子である。
【0041】
前記Akt2阻害剤は、限定されるものではないが、別の生物学的小分子化合物および手術を含む別の治療薬または方法の前、その合間に、またはその後に、別の治療薬または方法と組み合せて投与することができる。
【0042】
別の態様では、本発明は、腫瘍、特に、Akt2発現の上昇を特徴とするグルココルチコイド耐性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、本発明のAkt2阻害剤およびグルココルチコイドと、所望により、薬学的に許容可能な担体、賦形剤および/または希釈剤とを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0043】
本発明のある実施形態では、前記Akt2阻害剤および/またはグルココルチコイドは、医薬組成物で処方され得る。この医薬組成物は、任意の好適な投与経路、例えば、経口、鼻腔、非経口、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、口内、吸入、粘膜内、または局所投与のために処方され得る。例えば、本発明の医薬組成物は、カプセル剤、丸剤、錠剤、散剤、顆粒剤(例えば、ビーズ、粒子または結晶)、エアゾール剤、スプレー剤、フォーム剤、液剤、分散剤、チンキ剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤、軟膏剤およびクリーム剤などの当技術分野の任意の医薬投与形であり得る。この医薬組成物は、固体、液体、ゲルまたは他の形態として処方され得る。この組成物が経口投与のために処方される場合、それは錠剤またはカプセル剤、例えば、腸溶コーティング錠剤または腸溶コーティングカプセル剤として処方され得る。
【0044】
ある実施形態では、前記Akt2阻害剤およびグルココルチコイドは、任意の好適な比で、本発明の医薬組成物に処方され得、例えば、グルココルチコイドとAkt2阻害剤とのモル濃度比は、10:1~1:10、例えば、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、または1:5である。ある実施形態では、本発明の医薬組成物におけるグルココルチコイド(デキサメタゾンなど)とAkt2阻害剤(CCT128930など)のモル比は1:0.8である。
【0045】
本発明の医薬組成物は、例えば、限定されるものではないが、ラクトース、スクロース、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、生理食塩水および水を含む薬学的に許容可能な担体、賦形剤および/または希釈剤とともに、添加剤、例えば、増量剤、結合剤、湿潤剤、流動助剤、安定剤、保存剤、乳化剤および別の溶媒または可溶化剤または保存効果のための物質を含んでなり得る。
【0046】
別の態様では、本発明は、腫瘍、特に、Akt2発現の上昇を特徴とするグルココルチコイド耐性腫瘍を治療するための医薬組成物の調製のための本発明によるAkt2阻害剤の使用を提供する。ある実施形態では、前記医薬組成物は、Akt2阻害剤およびグルココルチコイドと、所望により、薬学的に許容可能な担体、賦形剤および/または希釈剤とを含んでなる。
【0047】
本発明のある実施形態では、前記腫瘍は、リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などのリンパ腫または骨髄腫などのリンパ球由来腫瘍である。本発明のある実施形態では、前記腫瘍は、Tリンパ球性白血病、T細胞リンパ腫および骨髄腫などのT細胞由来腫瘍である。本発明のある実施形態では、前記リンパ球性白血病は、急性リンパ球性白血病および慢性リンパ球性白血病からなる群から選択される。本発明のある実施形態では、前記リンパ球性白血病は、B細胞リンパ腫およびT細胞リンパ腫からなる群から選択される。本発明のある実施形態では、前記腫瘍は、骨髄腫である。本発明のある実施形態では、前記腫瘍は、バーキットリンパ腫、急性Tリンパ球性白血病などのTリンパ球性白血病および骨髄腫からなる群から選択される。
【0048】
本発明のある実施形態では、前記B細胞リンパ腫は、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫および濾胞性リンパ腫などのホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0049】
本発明のある実施形態では、前記T細胞リンパ腫は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、末梢性T細胞リンパ腫、非定型(PTCL-U)血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫(SCPTCL)、皮膚γδT細胞リンパ腫(CGD-TCL)、肝脾T細胞リンパ腫(HSTCL)、および腸症型腸管T細胞リンパ腫(EITCL)からなる群から選択される。
【0050】
本発明のある実施形態では、前記腫瘍は急性Tリンパ球性白血病である。
【0051】
本発明では、前記グルココルチコイドは、腫瘍処置のために当業者によって使用され得る任意のグルココルチコイド様薬物である。本発明のある実施形態では、前記グルココルチコイドは、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ブデソニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、シクレソニド、コルチゾン、メチルプレドニゾロン、酪酸クロベタゾール、フルオシノニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、フロ酸モメタゾン、ハルシノニド、プロピオン酸クロベタゾール、ハルシノニド、ハロメタゾン、二酢酸ジフロラゾンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。本発明のある実施形態では、前記グルココルチコイドは、デキサメタゾンまたはその誘導体である。
【0052】
本明細書において使用される場合、範囲および量は、特定の値または範囲の「約」として表され得る。用語「約」には、正確な量も含まれ得る。それに従って、用語「約5%」とは、「約5%」および「5%」を指す。
【0053】
本明細書において使用される場合、用語「任意選択の」または「所望により」とは、以下の記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、その記載はその事象または状況が起こる例およびその事象または状況が起こらない例を含むことを意味する。例えば、任意選択の薬学的に許容可能な担体とは、その薬学的に許容可能な担体を含むまたは含まない場合を指す。
【実施例
【0054】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、任意の例またはその組合せは、本発明の範囲または実装形態を限定するものと解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲に規定された範囲は、本明細書および当技術分野における常識と組み合わせて、当業者により明確に理解され得る。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者は本発明の技術的解決策に対する修飾または変更を行うことができ、そのような修飾および変更も本発明の範囲内に含まれる。
【0055】
実施例1:デキサメタゾン活性と、Akt/FoxO3a経路におけるタンパク質の発現レベルとの相関
CCRF-CEM細胞(ヒト由来の急性Tリンパ球性白血病細胞株、中国科学アカデミー上海生化学細胞生物学研究所(Shanghai Institute of Biochemistry and Cell Biology、Chinese Academy of Sciences)から購入)を、10%ウシ胎仔血清(FBS、Gibco社)を添加したRPMI 1640完全培地(Gibco社)が入った細胞培養皿(CORNING社)に1×10細胞/mlの密度で接種し、対数増殖期に達するまで、5%CO、37℃のインキュベーター(Thermo社)内で培養した;次いで、細胞培養皿に、デキサメタゾン(DEX、Sangon Biotech(上海)Co.、Ltd.)を終濃度0.1μMまたは1μMに添加し、5%COおよび37℃でさらに48時間培養し、細胞を回収した。対照群にはいずれの試薬も添加しなかった。総ての実験を3反復で行った。
【0056】
アネキシンV-FITC PI二重染色法(フローサイトメトリーキット(FITC、PI二重染色)、Sangon Biotech(上海)Co.、Ltd.))によりアポトーシスを検出し、回収した細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(135mM NaCl、2.7mM KCl、1.5mM KHPOおよび8mM KHPO、pH7.2)で1回洗浄した;4×結合バッファーを脱イオン水で1×結合バッファーに希釈し、次いで、細胞を195μlの1×結合バッファーで2~5×10/mlの細胞密度に再懸濁した;5μlのアネキシンV-FITCを、195μlの細胞再懸濁液に添加し、混合し、室温で10分間、暗所でインキュベートした;細胞を200μlの1×結合バッファーで1回洗浄し、次いで、190μlの1×結合バッファー中に再懸濁した;10μlのヨウ化プロピジウム(20μg/ml)を添加した。フローサイトメトリー装置(Beckman社)を検出に使用し、Summitソフトウエアを使用してアポトーシスの速度を分析した。
【0057】
ウエスタンブロットによるタンパク質検出:本発明の実施例では、Akt抗体(ウサギ由来)、リン酸化Akt抗体(ウサギ由来)、FoxO3a抗体(ウサギ由来)、リン酸化FoxO3a抗体(ウサギ由来)およびGAPDH抗体(ウサギ由来)および二次抗体は総てCST社から購入した。細胞を遠心管に回収し、1000rpmで遠心分離し、上清を廃棄し、細胞を、4℃で予冷したPBSで2回洗浄した;細胞溶解バッファー(150mM NaCl、1%NP-40、0.1%SDS、2μg/mlアプロチニン、2μg/mlロイペプチン、1mM PMSF、1.5mM EDTA、1mMバナジウム酸ナトリウム)を添加し、細胞を氷上で40分間溶解させ、細胞溶解物を20000rpmで、4℃で15分間遠心分離し、上清を回収した;ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド(SDS-PAGE)ゲル電気泳動用のタンパク質ローディングバッファー(1.25mL 1MTris-HCl(pH6.8)、0.5g SDS、25mg BPB、2.5mLグリセロール、5mL脱イオン水)を添加し、続いて、5分間煮沸を行って、タンパク質を変性させた;変性したタンパク質を含有するローディングバッファーを、120Vでの電気泳動のために10%SDS-PAGEに適用し、その後、130Vで1.5時間、PVDF膜(Sangon Biotech(上海)Co.、Ltd.)に転写した;膜転写が完了した後、PVDF膜を直ちにウエスタン洗浄溶液(150mmol/L NaCl、50mmol/L Tris-HCl(pH7.5))で1~2分間洗い流した;5%脱脂粉乳(Shanghai Biotechnology Co.,Ltd.)を加え、穏やかに撹拌した後、室温で60分間ブロックした;5%脱脂粉乳で適当に希釈した一次抗体を添加し、穏やかに撹拌しながら室温で一晩インキュベートした;一次抗体を回収し、膜を洗浄溶液で3回、それぞれ5~10分間洗浄した;ウエスタン洗浄溶液で適当に希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体を添加し、穏やかに撹拌しながら室温で1時間インキュベートした;二次抗体を回収し、膜をウエスタン洗浄溶液で3回、それぞれ5~10分間洗浄した。適当な量の現像液(DAB 4mg、30%過酸化水素15μL、0.01M Tris-Cl(pH7.5)5mL)をPVDF膜上に滴下し、生物発光画像比色計およびゲルイメージングシステム(Thermo社)を使用して画像を検出し、Image Labソフトウエアを使用してバンドの定量分析を行った。
【0058】
ExcelおよびStataソフトウエアを使用してデータ処理を行い、t検定を用いてデータ比較を行い、P<0.05は統計的に有意であるとみなした。
【0059】
結果:図1Aに示されるように、デキサメタゾン感受性CCRF-CEMでは、アポトーシスは、デキサメタゾン濃度の増加に伴って徐々に増加した。図1Bに示されるように、ブランク群と比較して、0.1μMデキサメタゾンで処理した細胞におけるリン酸化Aktの発現は、有意にダウンレギュレートされ、リン酸化Akt(Ser473)/総Aktは有意に減少し(p<0.05);それに従って、リン酸化FoxO3a(Ser 253)の発現は減少し、総FoxO3a発現は増加し、リン酸化FoxO3a(Ser 253)/総FoxO3aタンパク質は有意にダウンレギュレートされ(p<0.05);上記の変化はデキサメタゾン濃度の増加に伴ってより明白であった。
【0060】
従って、Aktは、リンパ球におけるリン酸化による不活性化FoxO3aの主要な調節キナーゼであり、FoxO3aは、デキサメタゾン誘導性リンパ球アポトーシス中に不可欠な関与物である。
【0061】
実施例2:Akt経路の異常な活性化は、リンパ系腫瘍細胞においてグルココルチコイド耐性が生じる機構である
CCRF-CEM細胞を、5%COおよび37℃のインキュベーター(Thermo社)内で、10%ウシ胎仔血清(FBS、Gibco社)および1μMデキサメタゾン(DEX、Sangon Biotech(上海)Co.、Ltd.)を含有するRPMI 1640完全培地(Gibco社)で培養し、85%~90%集密度に達したときに、培地の1/2~2/3をピペッティングし新鮮培地を添加することにより継代培養し、20代目の細胞を、1μM、25μM、50μMおよび100μMの濃度のデキサメタゾンで48時間処理した。フローサイトメトリーによって検出されたアポトーシスは有意に増加せず、グルココルチコイド耐性細胞株CEM-DRが得られたことが示唆された。次いで、実施例1に記載のとおり、対数増殖期に達するようにCEM-DR細胞を培養し、異なる濃度のデキサメタゾンを添加した後、アネキシンV-FITC PI二重染色によってアポトーシスを検出し、ウエスタンブロットによってタンパク質を検出した。Bim抗体(ウサギ由来)はCST社から購入した。
【0062】
結果:図1Cに示されるように、25μM、50μM、100μMの濃度のデキサメタゾンで処理した細胞のアポトーシスは有意に増加しなかった;しかし、200μMの濃度のデキサメタゾンで処理した場合、アポトーシスは有意に増加した。図1Dに示されるように、CCRF-CEM細胞と比較して、CEM-DR細胞において総Akt発現は異常に上昇し、リン酸化FoxO3a(Ser253)の発現は異常に増加し、アポトーシスタンパク質Bimの発現はダウンレギュレートされた。CEM:CCRF-CEM細胞。
【0063】
感受性細胞株CCRF-CEMと比較することにより、CEM-DR細胞において総Aktの異常な増加が見出された。
【0064】
実施例3:Akt阻害剤はグルココルチコイドに対する感受性を有意に増強することができる
本発明者らは、Akt阻害剤Akt IVおよび他の細胞増殖経路阻害剤のグルココルチコイド誘導性腫瘍細胞アポトーシスに対する感作効果を比較した。他の細胞増殖経路阻害剤としては、PI3K阻害剤LY294002、Notch1経路阻害剤dapt(異常なNotch経路は、ホルモン誘導性アポトーシスに対する胸腺細胞耐性につながる可能性がある)、解糖阻害剤2-DG(研究により2-DGはグルココルチコイドに対する感受性を高めることができることが確認されている)およびSGKs経路(グルココルチコイド誘導性キナーゼ)阻害剤GSKを含む。
【0065】
方法:細胞CCRF-CEM(ヒト由来の急性Tリンパ球性白血病細胞株)、Jurkat、Molt4(ヒト由来の急性Tリンパ球性白血病細胞株)、Daudi、Raji(ヒト由来のバーキットリンパ腫細胞株)、L1210(マウス由来のリンパ芽球性白血病細胞株)およびSP2/0(マウス由来の骨髄腫細胞株)は総て中国科学アカデミー上海生化学細胞生物学研究所から購入した。
【0066】
細胞を、対数増殖期に達するまで、5%COおよび37℃のインキュベーター(Thermo社)内で、10%ウシ胎仔血清(FBS、Gibco社)を含有するRPMI 1640完全培地(Gibco社)で培養し、次いで、培養培地に、異なる濃度の阻害剤および/またはデキサメタゾン/エタノール/DMSOを添加し、続いて、さらなる培養を行い(デキサメタゾン/エタノール/DMSOの添加では48時間、阻害剤の添加では24時間)、実施例1に記載のとおり、アネキシンV-FITC PI二重染色によってアポトーシスを検出し、ウエスタンブロットによってタンパク質を検出した。
【0067】
結果:図2Aに示されるように、デキサメタゾン単独と比較して、Akt阻害剤Akt IV(Calbiochem社)およびPI3K阻害剤LY294002(Promega社)の両方が、デキサメタゾンによって誘導されるCCRF-CEM細胞のアポトーシスを有意に増加させた(p<0.01)。(Akt阻害剤:1μM;デキサメタゾン:1μM;LY294002:30μM;エタノール:0.1%)。図2B(エタノール:0.1%)に示されるように、唯一のデキサメタゾンの群と比較して、Akt阻害剤+デキサメタゾン群およびPI3K阻害剤LY294002+デキサメタゾン群では、リン酸化FoxO3a(Ser 253)の発現はCCRF-CEM細胞において有意にダウンレギュレートされ、アポトーシス誘導因子Bimの発現はアップレギュレートされた。図2Cに示されるように、CCRF-CEM細胞株では、各濃度のAkt阻害剤は、デキサメタゾンによって誘導されるアポトーシスを増加させることができ、アポトーシス速度はAkt阻害剤の濃度の増加に伴って高まった。図2Eおよび2F(DMSO:0.1%)に示されるように、唯一のデキサメタゾンの群と比較して、高度グルココルチコイド耐性のヒト由来急性Tリンパ球性白血病細胞株Molt4およびJurkatでは、デキサメタゾンと組み合せたAkt阻害剤またはPI3K阻害剤LY294002は細胞のアポトーシス速度を有意に増加させ(p<0.01)、Akt阻害剤は、PI3K阻害剤LY294002よりも、デキサメタゾンとのより良好な相乗作用を示した(p<0.01)。
【0068】
図2Gに示されるように、デキサメタゾン単独と比較して、解糖阻害剤2-DG(Sigma社)はデキサメタゾンによって誘導されるCCRF-CEM細胞のアポトーシスを有意に増加させた(p<0.01)。図2Hに示されるように、デキサメタゾン単独と比較して、2-DG+デキサメタゾン群では、リン酸化FoxO3aの発現は低下し、総FoxO3a発現は増加し、アポトーシス誘導因子Bimの発現は有意にアップレギュレートされた(p<0.01)。
【0069】
図2Jに示されるように、デキサメタゾン単独と比較して、Notch1経路阻害剤dapt(Sigma社)はデキサメタゾンによって誘導されるCCRF-CEM細胞のアポトーシスを有意に増加させた(p<0.01)。図2Iに示されるように、デキサメタゾン単独と比較して、dapt+デキサメタゾン群においてリン酸化FoxO3aの発現は有意に低下した。
【0070】
図2K(エタノール:0.1%)に示されるように、ヒト由来の急性Tリンパ球性白血病細胞株CCRF-CEM、マウス由来のTリンパ芽球性白血病細胞株L1210、ヒト由来のバーキットリンパ腫細胞株RajiおよびDaudiでは、デキサメタゾン群とGSK(Bioscience社)+デキサメタゾン群との間ではアポトーシス速度に有意差はなかった(p>0.05)、SGKs経路阻害剤はデキサメタゾンと相乗作用して腫瘍リンパ球のアポトーシスを増加させることができなかったことが示唆された
【0071】
上記細胞増殖経路阻害剤のグルココルチコイドに対する感作効果を比較することにより、図2Lに示されるように、Akt阻害剤は他の細胞増殖経路阻害剤よりも有意に優れ、デキサメタゾンと組み合せてアポトーシスを誘導する効果が最も高かった(p<0.01)。図2Mおよび2N(DMSO:0.1%)に示されるように、ネズミ由来の骨髄腫細胞株SP2/0およびヒト由来のバーキットリンパ腫細胞株Rajiでは、デキサメタゾン単独と比較して、デキサメタゾンと組み合せたAkt阻害剤は、細胞アポトーシスを有意に増加させ(P<0.01)、それによって、グルココルチコイドに対する感受性を高めた。
【0072】
実施例4:ヌードマウスにおけるグルココルチコイドに対するAkt阻害剤の感作効果
ヌードマウスBalb/c(復旦大学薬学研究所(the Institute of Pharmacy、Fudan University)動物研究センターから購入)を復旦大学薬学研究所動物実験センター特定病原体フリー(SPF)動物飼育室で飼育した。対数増殖期のCCRF-CEM細胞を回収し、無血清RPMI 1640培地中に約1×10/mlの細胞密度に再懸濁した。4週齢の免疫不全雌ヌードマウスを選択し、0.1ml/マウス(約1×10細胞/マウス)での細胞懸濁液の腋窩皮下注射により処置した。4週間成長させ、腫瘍サイズが300~500mmに達したら、実験のためにマウスをランダムにグループ分けした。マウスに0.1mg/マウスのデキサメタゾンと1.25μg/マウスのAkt阻害剤とを、1日1回、連続して7日間腹膜内注射した。担癌マウスの全生存時間、腫瘍サイズおよび脾臓細胞アポトーシスを測定し、腫瘍に対して病理学的HE染色を行った。
【0073】
結果:図3Aおよび3Bに示されるように、単独デキサメタゾン群と比較して、Akt阻害剤は、デキサメタゾンと相乗作用を示して、皮下腫瘍のサイズを減少させた(p<0.01)。図3Dに示されるように、単独デキサメタゾン群と比較して、デキサメタゾンと組み合せたAkt阻害剤は、担癌マウスの全生存期間を有意に増加させた(p<0.05)。また、フローサイトメトリーのためにマウス脾臓リンパ球を単離し、その結果を図3Eに示した。単独デキサメタゾン群と比較して、担癌マウスにおける脾臓リンパ球のアポトーシスは有意に増加した(p<0.01)。
【0074】
担癌マウスにおけるin vivo実験により、Akt阻害剤がグルココルチコイドに対して有意な感作効果を示すことが再び確認された
【0075】
実施例5:Akt阻害剤は重篤な肝臓毒性を有する
肝臓に対してAkt阻害剤IVの毒性が存在するかどうかをさらに調べるために、マウスにおける末梢血肝臓酵素ALTおよびASTのレベルを測定した。
【0076】
方法:実施例4に記載のとおりに調製した担癌マウスの末梢血肝臓酵素ALTおよびASTのレベルを、0.1mg/マウスのデキサメタゾンと、1.25μg/マウスのAkt阻害剤とを、1日1回、連続して7日間腹腔内注射した後に測定した(National Advanced Medicine School Planning Teaching Material:Laboratory Animal Science (第2版))。
【0077】
結果:図3Fに示されるように、生理食塩水群(NC)と比較して、Akt阻害剤で処置したマウスにおける肝臓酵素ALTおよびASTのレベルは有意に増加した(p<0.05、0.01)。それに従って、Akt阻害剤は明らかな肝臓毒性を示した。このことは、臨床的適用の見通しに影響を及ぼす可能性がある。
【0078】
実施例6:グルココルチコイドと組み合せたAkt阻害剤によって誘導されるリンパ系腫瘍細胞アポトーシスに対する相乗作用の比較
実施例3に記載のとおり、細胞を、対数増殖期に達するまで、5%COおよび37℃下の10%ウシ胎仔血清を含有するRPMI 1640完全培地で培養し、次いで、培養培地に、デキサメタゾンおよび異なる濃度のAkt阻害剤を添加し、続いて、さらなる培養を行い(デキサメタゾン/DMSOの添加では48時間、阻害剤の添加では24時間)、実施例1に記載のとおり、アネキシンV-FITC PI二重染色によってアポトーシスを検出し、ウエスタンブロットによってタンパク質を検出し、さらに、CCK-8法によって細胞生存率を検出した。
【0079】
CCK-8(細胞計数キット(CCK-8)キット、Dojindo Chemicals、Inc.)による細胞生存率の検出:(1)細胞を96ウェルプレートのウェルに1×10細胞/ウェル以下の密度で播種し(5反復)、各ウェルに200μl培養培地を補充し、実験条件に従ってそれぞれのウェルに異なる濃度の薬物を添加し、続いて、5%COおよび37℃下のインキュベーター内で48時間培養を行った;(2)光学密度(OD)の読み取りに影響を与え得るウェル内の気泡の形成を避けながら、10μlのCCK-8溶液を各ウェルに添加した;(3)プレートを、5%COおよび37℃下、インキュベーター内で4時間インキュベートした;(4)450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った;(5)細胞生存率の曲線をプロットした:下式に従って細胞生存率を計算し、その後、異なる薬物濃度または処理時間をx軸、細胞生存をY軸と設定し、プロットを作成した;
細胞生存率(%)=[(As-Ab)/(Ac-Ab)]×100%,
As:試験ウェル(細胞、CCK-8、毒性物質を含有する培地)
Ac:対照ウェル(毒性物質を含まない、細胞、CCK-8を含有する培地)
Ab:ブランクウェル(細胞および毒性物質、CCK-8を含まない培地)。
【0080】
結果:研究のために、Akt1阻害剤A-674563(Selleckchem社)(Akt1下流標的のリン酸化活性化を阻害する)、Akt2阻害剤CCT128930(Selleckchem社)(Akt2下流標的のリン酸化活性化を阻害する)およびAkt1/2共阻害剤Akti-1/2(Santa Cruz社)(Akt1およびAkt2の両方の自己リン酸化を阻害する)を使用して、CCRF-CEM細胞を、0.3μM、0.5μM、0.8μMおよび1μMのAktサブタイプ阻害剤と組み合せた0.1μMのデキサメタゾンで処理し、図4Aに示されるように、結果は、アポトーシスに対する効果は、0.8μMのAktサブタイプ阻害剤と組み合せた0.1μMのデキサメタゾンで最も強力であることを示した。図4Bに示されるように、異なる濃度のデキサメタゾン(0.8μMの濃度のAkt1阻害剤、Akt2阻害剤、およびAkt1/2阻害剤の総て)では、Aktサブタイプ阻害剤は、CCRF-CEM細胞の生存率を有意に阻害することができた。図4Cおよび4D(DMSO濃度:0.1%)に示されるように、単独デキサメタゾン群と比較して、Akt阻害剤と組み合せたデキサメタゾンは、CCRF-CEM細胞のアポトーシスを有意に増加させた(p<0.01)。図4Eおよび4Fに示されるように、Akt1阻害剤、Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤を適用することによって、CCRF-CEM細胞の50%生存率(IC50値)を阻害するデキサメタゾンの濃度は、元の0.3μMから、それぞれ、0.18μM、0.13μMおよび0.03μMまで低下した。
【0081】
培養した高度耐性細胞株CEM-DRでは、図4G(0.8μMの濃度のAkt1阻害剤、Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤の総て)に示されるように、総てのAktサブタイプ阻害剤は、異なる濃度のデキサメタゾンでの細胞生存率を有意に阻害することができた。図4H(DMSO濃度:0.1%)に示されるように、単独デキサメタゾン群と比較して、Aktサブタイプ阻害剤と組み合せたデキサメタゾンは、CEM-DR細胞のアポトーシスを有意に増加させた(p<0.01)。図4Iおよび4Nに示されるように、Akt1阻害剤、Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤を適用することによって、CEM-DR細胞の50%生存率(IC50値)を阻害するデキサメタゾンの濃度は、元の138μMから、それぞれ、55μM、25μMおよび11μMまで低下した。
【0082】
耐性のヒト由来Tリンパ球性白血病細胞株Jurkatでは、図4J(DMSO濃度:0.1%)に示されるように、単独デキサメタゾン群と比較して、Akt1、Akt2、およびAkt1/2と組み合せたデキサメタゾンは、細胞アポトーシスを有意に増加させることができた(p<0.05、0.01、0.01);DEX+Akt1群のアポトーシスは、DEX+Akt2群のものより有意に低かった(p<0.01)。図4Kおよび4Nに示されるように、Akt1阻害剤、Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤を適用することによって、Jurkat細胞の50%生存率(IC50値)を阻害するデキサメタゾンの濃度は、元の224μMから、それぞれ、208μM、74μMおよび63μMまで低下した。
【0083】
耐性のヒト由来バーキット細胞株Daudiでは、図4L(DMSO濃度:0.1%)に示されるように、単独デキサメタゾン群と比較して、Akt1、Akt2、およびAkt1/2と組み合せたデキサメタゾンは、細胞アポトーシスを有意に増加させることができた(p<0.05、0.01、0.01);図4Mおよび4Nに示されるように、Akt1阻害剤、Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤を適用することによって、Daudi細胞の50%生存率(IC50値)を阻害するデキサメタゾンの濃度は、元の225μMから、それぞれ、183μM、213μMおよび118μMまで低下した。
【0084】
それに従って、単独デキサメタゾン群と比較して、デキサメタゾンと組み合せたAktサブタイプ阻害剤は、デキサメタゾンのIC50値を低下させた。具体的には、Tリンパ系腫瘍細胞株(CCRF-CEM細胞株、CEM-DR細胞株、Jurkat細胞株)では、単独デキサメタゾン群と比較して、Aktサブタイプ阻害剤は、デキサメタゾンのIC50値を有意に低下させ、グルココルチコイドと著しい相乗作用を示し、Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤は、Akt1阻害剤よりもグルココルチコイドと良好な相乗作用を示した。
【0085】
実施例7:リンパ球生存率の阻害に対する、グルココルチコイドと組み合せたAktサブタイプ阻害剤の組合せ指数の比較
CCK-8法(CCK-8キット)により、様々なリンパ球系に対する2種類の薬物(デキサメタゾンおよび阻害剤)の単独および組合せでの阻害効果を観察し、次いで、各薬物の半阻害濃度(the half-inhibitory concentration)を、メジアン効果式(the median effect equation)を用いて計算し、組合せに使用した2種類の薬物の組合せ指数(CI)を、CompuSynソフトウエアを使用して計算した。
【0086】
(1)対数増殖期のリンパ球を採取し、5×10/mLの細胞懸濁液にし、ブランク対照群(5ウェル)、デキサメタゾン群(各濃度につき3ウェル、3反復)、単一阻害剤群(各濃度につき3ウェル、3反復)、デキサメタゾン+阻害剤群(各組合せ濃度につき3ウェル、3反復)を調製し、180μLの懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、5%COおよび37℃のインキュベーター内で24時間インキュベートした。
【0087】
(2)2種類の薬物を5つの異なる濃度で96ウェルプレートに添加し、細胞の薬物耐性に基づいて、デキサメタゾンを5つの濃度で調製し、Akt1阻害剤A-674563(Selleckchem社)、Akt2阻害剤CCT128930(Selleckchem社)およびAkt1/2阻害剤Akti-1/2(Santa Cruz社)を5つの濃度で調製した。細胞の薬物耐性に基づいて、2種類の薬物の比を固定した。デキサメタゾン群を48時間培養し、一方、阻害剤群を24時間培養した。
【0088】
(3)10μlのCCK-8を、各ウェルに加え、2時間培養し、自動マイクロプレートリーダーを使用して光学密度(OD)を450nmで測定し、細胞に対する薬物の増殖阻害率を計算した。
【0089】
(4)下式に従って増殖阻害率を計算した:細胞増殖阻害率=(1-試験群の平均OD値/対照群の平均OD値)×100%、Chou-Talalay組合せ指数法により2種類の薬物間の相互作用の効果を分析した。
【0090】
結果:Aktサブタイプ阻害剤と組み合せたデキサメタゾンのCIの値は、CompuSynソフトウエアを使用して計算した。CI<1は、2種類の薬物が相乗作用を有することを示し、CI=1は、2種類の薬物が相加作用を有することを示し、CI>1は、2種類の薬物が拮抗作用を有することを示した。表1に示されるように、Tリンパ系腫瘍細胞(CCRF-CEM細胞、CEM-DR細胞、Jurkat細胞)では、デキサメタゾンと組み合せたAktサブタイプ阻害剤は、高い相乗作用を示し、リンパ系腫瘍細胞の生存率を有意に阻害した。Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤は、Akt1阻害剤よりも有意に優れていた;Bリンパ腫細胞では、デキサメタゾンと組み合せたAkt1/2阻害剤は、中程度の相乗作用を示し、デキサメタゾンと組み合せたAkt2阻害剤は、相加作用を示し、デキサメタゾンと組み合せたAkt1阻害剤は、低い程度の相乗作用を示した。
【0091】
【表1】
【0092】
実施例8:リンパ球のグルココルチコイド誘導性アポトーシスを増強するためのAkt2阻害剤の機構:細胞内FoxO3a/Bimシグナル伝達経路のアップレギュレーション
方法:CCRF-CEM細胞を、対数増殖期に達するまで、5%COおよび37℃のインキュベーター(Thermo社)内で、10%ウシ胎仔血清(FBS、Gibco社)を含有するRPMI 1640完全培地(Gibco社)で培養し、次いで、培養培地に、DMSO、デキサメタゾンおよび異なる阻害剤(DMSO:0.1%、デキサメタゾン:0.1μM、阻害剤:0.8μM)を添加し、さらに培養し(デキサメタゾンまたはDMSOの添加では48時間、阻害剤の添加では24時間)、実施例1に記載のとおり、ウエスタンブロットによってタンパク質を検出した。
【0093】
結果:図5Aに示されるように、Akt1阻害剤で処理したCCRF-CEM細胞では、p-Akt1が効果的に阻害され、p-Akt2の代償的増加を伴った。Akt2阻害剤で前処理した後、p-Akt1およびp-Akt2の発現は細胞において増加した。Akt2阻害剤は、Akt2のリン酸化を阻害しないが、Aktの下流標的のリン酸化活性化を阻害し、p-Akt1の代償的増加をもたらした。Akt1/2阻害剤はAkt自体のリン酸化活性化を阻害し、p-Akt1およびp-Akt2の発現をDMSO群と比較して減少させた;しかしながら、p-Akt1およびp-Akt2の発現はDMSO群においてほとんどなかったため、Akt1/2群およびDEX+Akt1/2群におけるp-Akt1およびp-Akt2タンパク質のバンドは現れなかった。
【0094】
図5Bに示されるように、DMSO群と比較して、DEX+Akt1群、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の細胞における総FoxO3aタンパク質のレベルは有意にアップレギュレートされ(P<0.05、0.01、0.05);DEX群と比較して、DEX+Akt1群、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の細胞における総FoxO3aタンパク質のレベルは有意にアップレギュレートされなかった(p>0.05)。図5Cに示されるように、DEX群と比較して、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の細胞における総FoxO3aタンパク質のレベルは有意にダウンレギュレートされ(p<0.01);DEX+Akt1群とDEX群との間では細胞内p-FoxO3aタンパク質の発現に有意差はなかった(p>0.05)。図5Dに示されるように、DMSO群と比較して、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の細胞におけるアポトーシス誘導タンパク質Bimのレベルは有意にアップレギュレートされ(p<0.01)、DEX+Akt1群とDEX群との間では細胞内タンパク質Bimの発現に有意差はなかった(p>0.05)。
【0095】
細胞内のFoxO3a/Bimシグナル伝達経路に影響を及ぼすことにより、Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤は、細胞におけるp-FoxO3a/総FoxO3aの比率を有意にダウンレギュレートし、アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現をアップレギュレートし、グルココルチコイドによって誘導されるリンパ球のアポトーシスを増加させ、それによって、グルココルチコイドに対する感作で役割を果たした。また、ウエスタンブロットの結果により、Akt1阻害剤は、細胞内のFoxO3a/Bimシグナル伝達経路に有意に影響を及ぼさないことが確認された。これは、Akt1阻害剤がグルココルチコイドに対するリンパ球の比較的弱い感作効果を有した理由の説明となった。
【0096】
実施例9:リンパ球におけるAkt2発現とグルココルチコイド耐性との関係
リアルタイム定量的PCRアッセイ
1.mRNAプライマーの配列設計および合成
Akt1およびAkt2プライマー配列は以下のとおりである:
Akt1 センス鎖プライマー:5’-GCTGGACGATAGCTTGGA-3’(配列番号1)
アンチセンスプライマー:5’-GATGACAGATAGCTGGTG-3’(配列番号2)
Akt2 センス鎖プライマー:5’-GGCCCCTGATCAGACTCTA-3’(配列番号3)
アンチセンスプライマー:5’-TCCTCAGTCGTGGAGGAGT-3’(配列番号4)
【0097】
2.RNA抽出
RNArose試薬の指示に基づいて、細胞の全RNAを抽出した:
(1)5×10細胞を1ml TRlZOL試薬に加え、続いて、室温で5分間放置した;
(2)200μlのクロロホルムを添加し(クロロホルムとRNArose試薬との比は1:5であった)、その後、15秒間撹拌し、続いて、15-30℃で2~3分間放置した;
(3)得られた混合物を12000rpmで、4℃で15分間遠心分離した;
(4)400μlの上方の水相を新しいRNアーゼフリー遠心管に移し、40μlの3M酢酸ナトリウム溶液(pH5.5)および1mlの無水エタノールを添加し、続いて、-20℃で4時間以上沈殿させ、全RNAを得た;
(5)生成物を12,000rpmで、4℃で10分間遠心分離し、上清を廃棄した;
(6)ペレットを1000μl(1:1)の75%エタノールで洗浄し、続いて、-20℃で一晩または次の工程のために放置した;
(7)生成物を12,000rpmで、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄し、ペレットを真空乾燥または風乾させた;
(8)RNAを30μlのRNアーゼフリー水に溶解し、撹拌し、数秒間軽く遠心分離し、55℃~60℃で10分間インキュベートし、その後、使用のために-70℃の冷凍庫に入れた。;
(9)UV分光光度計を用いた核酸定量分析のために上記溶液を少量採取し、OD260およびOD280の値を測定して全RNAの濃度および純度を決定し、RNA濃度を調整し、1%アガロースゲル電気泳動により抽出物の質を観察した。RT-PCRによってmRNA発現を検出した。
【0098】
3.cDNAへのmRNAの逆転写
全RNA 1μg
dNTP(0.5mmol) 10mM
RTプライマー(2pmol) 10μM
65℃5分
氷上で2分
5×First strand bull 5μl
DDT(5mM) 0.1M
RNaseOut(4U) 40U/μl
スーパースクリプトTMIII逆転写酵素 100U
水(容量50μlまで添加)
穏やかに混合
55℃60分
70℃15分
cDNA反応産物を得た。
【0099】
4.定量的PCRアッセイのよるmRNA存在量の検出
上記逆転写からのcDNAを1:10に希釈し、鋳型として使用し、Power SYBR Green PCR Master Mix(ABI社)を使用してリアルタイムPCR反応を行った。反応系は以下の通りであった。
【0100】
2×master mix 1μl
センスプライマー(100μM) 1μl
アンチセンスプライマー(100μM) 1μl
cDNA鋳型 2μl
水を全容量20μlまで加え、リアルタイムPCR分析装置7500fast(ABI社)を使用した。反応条件は以下のとおりであった:
1)94℃5分
2)94℃30秒
3)55℃30秒
4)72℃30秒
5)プレート読み取り
6)~2)45サイクル繰返し
7)72℃2分
8)融解曲線:60℃~95℃、0.5℃あたり90秒保持、プレート読み取り。
【0101】
次いで、18s rRNAを正規化内部基準として使用し、結果を、2-△△ct法を用いて分析した。
【0102】
Akt1、Akt2 RNA小干渉法:細胞トランスフェクション
トランスフェクション試薬としてInterferin(商標)を用いて、トランスフェクト細胞を選択し、蘇生後3~5継代の間継代培養した。トランスフェクション手順はトランスフェクション試薬の指示に従って行った。要するに、対数増殖期の細胞を2×10/ウェルで播種し、トランスフェクション中に細胞を新鮮な完全培地(抗生物質を含まない)と交換し、siRNAをOpti-MEMで希釈し、適当な量のINTERFERin(商標)を添加し、混合し、室温で10分間インキュベートした後、細胞に滴下し、適当な時間に細胞を回収した。細胞に緑色フルオレセイン標識siRNA(FAM-siRNA)(終濃度20μMのsiRNA、1.25μl/ウェル)をトランスフェクトし、24時間後に蛍光顕微鏡を用いてトランスフェクション効率を観察した。トランスフェクションの24時間後にデキサメタゾン群を添加し、続いて、さらに24時間培養を行った後、観察のために細胞を回収した;対照群には等量の無水エタノールを添加した。
【0103】
Akt1 siRNA: GGCCCAACACCUUCAUCAUTT(配列番号5)
AUGAUGAAGGUGUUGGGCCTT(配列番号6)
Akt2 siRNA: GGUUCUUCCUCAGCAUCAATT(配列番号7)
UUGAUGCUGAGGAAGAACCTT(配列番号8)
【0104】
結果:図5Eに示されるように、グルココルチコイド感受性CCRF-CEM細胞におけるAkt2タンパク質の発現は非常に低く、Akt2タンパク質のバンドは現れなかった;CCRF-CEM細胞由来の高度耐性細胞株CEM-DRでは、細胞におけるAkt2タンパク質の発現は、CCRF-CEM細胞と比較して有意に増加し、Akt2タンパク質のバンドは明らかに現れた;他の2つのグルココルチコイド耐性細胞株JurkatおよびDaudiならびに正常肝細胞株L-02におけるAkt2タンパク質の発現は、感受性細胞株CCRF-CEMのものよりも有意に高かった。
【0105】
図5Fおよび5Gに示されるように、小干渉RNAを使用して、Jurkat細胞におけるAkt1およびAkt2の発現それぞれを妨害した。図5Hに示されるように、デキサメタゾン群と比較して、デキサメタゾンによって誘導された、Akt2発現の阻害を受けたJurkat細胞のアポトーシスは、有意に増加し(p<0.01)、Akt1発現の阻害を受けたJurkat細胞のアポトーシスは増加しなかった(p>0.05)。NC:対照群、siRNAを含まないエンプティプラスミドをトランスフェクトした。
【0106】
初回治療を受けた患者10例および難治性再発性急性リンパ芽球性白血病を有する患者11例(グルココルチコイドを含む化学療法レジメンを受け、平均7.2の治療コース後に難治性再発した)において、骨髄性リンパ球におけるAkt1 mRNAおよびAkt2 mRNAのレベルを測定した;図5Iに示されるように、初回治療群と比較して、難治性再発群におけるAkt2 mRNAの発現は有意に上昇し(p<0.01)、Akt1 mRNAの発現に有意差はなかった(p>0.05)。ROC曲線分析によれば、図5Jに示されるように、Akt2は、患者におけるグルココルチコイド耐性の程度を検出するためのマーカーとして使用され、ROC曲線下面積は0.9818であり、最良判定閾値は16.39であり、診断感度は90%であり、特異性は100%であった。
【0107】
それに従って、本発明者らは、細胞におけるAkt2の過剰発現が、リンパ球におけるグルココルチコイド耐性を引き起こす重要な機構であり得ることを見出した:リン酸化を通じてFoxO3aを不活性化し、p-FoxO3a/総FoxO3a比をアップレギュレートし、アポトーシス誘導因子Bimの発現をダウンレギュレートすることによって、アップレギュレートされたAkt2は、細胞内FoxO3a/Bimシグナル伝達経路を阻害し、グルココルチコイド耐性の発達につながった。
【0108】
実施例10:肝細胞に対するAkt1阻害剤およびAkt2阻害剤の毒性効果の比較
L-02ヒト由来の健康な肝細胞株は、中国科学アカデミー上海生化学細胞生物学研究所から購入した。ヌードマウスは、復旦大学薬学研究所動物研究センターから購入し、復旦大学薬学研究所動物実験センター特定病原体フリー(SPF)動物飼育室で飼育した。
【0109】
実施例6および7に記載のとおりにCCK-8アッセイを行い、実施例1および2に記載のとおりにウエスタンブロットを行った。
【0110】
対数増殖期のCCRF-CEM細胞を回収し、無血清RPMI 1640培地中に約1×10/mlの細胞密度で再懸濁した。4週齢の免疫不全雌ヌードマウスを選択し、0.1ml/マウス(約1×10細胞/マウス)の量の細胞懸濁液の腋窩皮下注射により処置した。4週間成長させ、腫瘍サイズが300~500mmに達したら、実験のためにマウスをランダムにグループ分けした。マウスに0.1mg/マウスのデキサメタゾンと1.25μg/マウスのAkt1阻害剤、Akt2阻害剤またはAkt1/2阻害剤とを、1日1回、連続して7日間腹膜内注射した。8日目に、血液サンプルを眼窩から採取し、その後、末梢血検査のために上海動物試験センター(Shanghai Animal Testing Center)に送った。
【0111】
結果:L02肝細胞株の試験結果を図6A~6Fに示した。DMSO:0.1%;DEX:0.1μM;Akt1阻害剤、Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤:0.8μM。
【0112】
図6Aに示されるように、デキサメタゾンは肝細胞に損傷を与えなかった;Akt1阻害剤は、肝細胞に最も重篤な損傷を示し、肝細胞活性は投与後48時間以内に回復しなかった;Akt1/2阻害剤は肝細胞にある程度の損傷を示し、肝細胞活性は12時間投与後に50.5%まで低下し、24時間投与後に肝細胞活性は徐々に回復した;Akt2阻害剤は肝細胞への損傷が最も少なく、肝細胞活性は6時間投与後に56.1%に低下し、6時間投与後に肝細胞活性は徐々に回復し、24時間投与後、この群の肝細胞活性はAkt1阻害剤群およびAkt1/2阻害剤群の両方よりも常に高かった。
【0113】
図6Bに示されるように、L-02細胞をAkt1阻害剤またはAkt2阻害剤で前処理した後、細胞におけるp-Akt1およびp-Akt2の発現はそれに対応して増加した。図6Cに示されるように、DMSO群と比較して、DEX+Akt1群、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の細胞における総FoxO3aタンパク質のレベルは総て有意にアップレギュレートされた(p<0.05、0.01、0.05)。図6Dに示されるように、DMSO群と比較して、DEX+Akt1群、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の細胞における総FoxO3aタンパク質の発現は有意にダウンレギュレートされた(p<0.05、0.05、0.05)。図6Eに示されるように、DMSO群と比較して、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の細胞におけるアポトーシス誘導タンパク質Bimの発現は有意にアップレギュレートされ(p<0.05)、DEX+Akt1群とDMSO群との間では細胞内タンパク質Bimの発現に有意差はなかった(p>0.05)。肝細胞株L-02をAktサブタイプ阻害剤で24時間処理した後、図6Fに示されるように、DEX+Akt2群の細胞生存率は、DEX+Akt1群およびDEX+Akt1/2群のものよりも有意に高かった(p<0.01、0.05)。上記の結果は、24時間の投与後、肝細胞におけるAkt2シグナル伝達は阻害されたが、デキサメタゾンはFoxO3aによるBimの発現を誘導して、部分的アポトーシスを引き起こすことができ、一方、Akt1阻害剤およびAkt1/2阻害剤は、肝細胞活性の阻害の点で、Akt2阻害剤に比べてより強力であり、これは、Akt1標的阻害による細胞の成長および増殖に関連するmTOR経路の阻害によって引き起こされる可能性があり、肝細胞活性に対してより大きい効果がもたらされることを示唆した。Akt2の主な標的であるFoxO3a/Bim経路の阻害もまた、グルココルチコイド誘導性肝細胞アポトーシスを調節し、肝細胞活性にある程度の効果をもたらす可能性があるが、肝細胞活性に対するこのプロセスの効果は、Akt1/mTOR経路の阻害から得られるものよりもわずかであり、p-Akt1の代償的増加は、Akt1/mTORシグナル伝達経路を増強して、肝細胞活性の回復を可能にし得る。
【0114】
ヌードマウスにおけるAktサブタイプ阻害剤の毒性を調べた。図6Gに示されるように、NC群と比較して、Akt1/2阻害剤で処置したマウスにおけるALTのレベルは有意に増加した(p<0.01)。図6Hに示されるように、NC群と比較して、Akt1阻害剤およびAkt1/2阻害剤で処置したマウスにおけるASTのレベルは有意に増加した(p<0.05)。図6Iに示されるように、NC群と比較して、Akt1阻害剤およびAkt1/2阻害剤で処置したマウスにおけるTBILのレベルは有意に増加した(p<0.01、0.05)。図6Jおよび6M~6Oに示されるように、NC群と比較して、DEX群、DEX+Akt1群、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群における末梢血白血球、血小板、クレアチニンおよび血糖レベルに有意差はなかった(p>0.05)。図6K~6Lに示されるように、NC群と比較して、DEX群、DEX+Akt1群、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群における末梢血RBCおよびHGBのレベルは有意に増加し、これは、グルココルチコイドの刺激による貯蔵プールから循環プールへの赤血球の移動によって起こり、末梢血赤血球数の増加がもたらされる可能性がある。NC:対照群、生理食塩水を注射した。
【0115】
また、心臓、肺、腎臓および肝臓を含む、各群の担癌マウスの重要な器官の病理学的標本を調製し、続いて、病理学的切片化およびHE染色を行った。図8Aおよび8Bに示されるように、各群の担癌マウスの肝細胞は変性または壊死のない正常形態に見え、線維組織の増殖は観察されず、肝細胞間マトリックスにおいて炎症細胞浸潤は観察されなかった。図8Cに示されるように、各群の担癌マウスの心筋細胞は正常形態に見え、心筋細胞間マトリックスにおいて炎症細胞浸潤は観察されなかった。図8Dに示されるように、各群の担癌マウスは、良好な肺胞充満および正常な肺胞細胞形態を呈し、肺胞腔に明白な出血または滲出はなかった。図8Eに示されるように、各群の担癌マウスは、正常な糸球体構造および管状構造を呈し、メサンギウム細胞増殖はなく、腎間質物質において炎症細胞浸潤は観察されなかった。上記の病理学的結果は、Akt1およびAkt1/2サブタイプ阻害剤は、肝細胞にある程度の損傷をもたらし、マウスの末梢血肝臓酵素および総ビリルビンのレベルを増加させるが、阻害剤は7日の投与期間内に肝臓組織の形態学的変化を引き起こさなかったことを示唆した。
【0116】
実施例11:担癌マウスにおけるAktサブタイプ阻害剤のグルココルチコイド感作効果のin vivoでのバリデーション
対数増殖期のCCRF-CEM細胞を回収し、無血清RPMI1640培地中に約1×10/mlの細胞密度で再懸濁した。4週齢の免疫不全雌ヌードマウスを選択し、0.1ml/マウス(約1×10細胞/マウス)の細胞懸濁液の腋窩皮下注射により処置し、4週間成長させ、腫瘍サイズ300~500mmに到達させたら、実験のためにマウスをランダムにグループ分けした。マウスに0.1mg/マウスのデキサメタゾンと1.25μg/マウスのAkt1阻害剤、Akt2阻害剤またはAkt1/2阻害剤とを、1日1回、連続して7日間腹膜内注射した。担癌マウスの全生存期間、腫瘍サイズおよび脾臓サイズを測定し、腫瘍の病理学的切片はHE染色およびKi-67染色について得、脾臓の病理学的切片はHE染色、CD3染色、およびTdT染色について得た。
【0117】
結果:図7Aおよび7Bに示されるように、NC群(生理食塩水を注射した)と比較して、DEX+Akt1群、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の腫瘍サイズは有意に減少した(p<0.01、0.01、0.01);DEX群と比較して、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の腫瘍サイズは有意に減少し(p<0.01、0.05)、DEX+Akt1群の腫瘍サイズは有意に減少しなかった(p>0.05)。
【0118】
図7Cに示されるように、NC群と比較して、DEX群、DEX+Akt1群、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群の脾臓サイズは有意に減少した(p<0.01、0.01、0.01、0.01);DEX群と比較して、DEX+Akt2群の脾臓サイズは有意に減少し(p<0.05)、DEX+Akt1群およびDEX+Akt1/2群の脾臓サイズは有意に減少しなかった(p>0.05、0.05)。
【0119】
図7Dに示されるように、DEX+Akt2群およびDEX+Akt1/2群における担癌マウスの全生存期間はDEX群のものよりも長かった(p<0.05、0.01)。
【0120】
それに従って、Aktサブタイプ阻害剤は、in vivoでグルココルチコイドと相乗作用して、リンパ球のアポトーシスを効果的に促進することができ、グルココルチコイド感作に対するAktサブタイプ阻害剤の効果は有意であり、Akt2阻害剤およびAkt1/2阻害剤の間では、Akt1阻害剤より良好な感作効果を示した。
【0121】
結論:
1.感受性細胞株と比較して、細胞内Akt2の発現は、グルココルチコイド耐性腫瘍リンパ球系において有意に増加した。リンパ球におけるAkt2の発現の差異は、グルココルチコイドに対する感受性の程度にある程度まで影響を及ぼしかつ反映し得、細胞におけるAkt2タンパク質の過剰発現は、リンパ球におけるグルココルチコイド耐性を生じる重要な機構であり得、Akt2は、リンパ腫におけるグルココルチコイド耐性逆転のより正確な治療標的として使用し得る。Akt2はまた、リンパ球がグルココルチコイド耐性であるか否かを診断するための指標としても使用し得る。
【0122】
2.Tリンパ系腫瘍細胞では、Akt2サブタイプ阻害剤がグルココルチコイド誘導性リンパ球アポトーシスの感受性を有意に増加させた。薬剤耐性細胞株では、Akt2サブタイプ阻害剤とグルココルチコイドとの組合せが、良好な相乗作用を示し、グルココルチコイド耐性を逆転させることができた。
【0123】
3.Akt2サブタイプ阻害剤は、細胞内p-FoxO3a/総FoxO3a比を有意にダウンレギュレートし、アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現をアップレギュレートし、細胞内FoxO3a/Bimシグナル伝達経路を増強し、それによって、グルココルチコイドに対するリンパ球の感受性を高めることによって、グルココルチコイド誘導性リンパ球アポトーシスを改善することができた。
【0124】
4.in vivo試験およびin vitro試験の両方により、Akt2サブタイプ阻害剤が、最小限の毒性を有し、マウスの血液系、肝機能、腎機能および血糖レベルに影響を及ぼさないことが確認された。
【0125】
5.Akt2サブタイプ阻害剤は、デキサメタゾンと相乗作用して、担癌マウスの腫瘍サイズおよび脾臓サイズを効果的に減少させ、腫瘍の液状化および壊死を引き起こし、全生存期間を増加させることができた;Akt2サブタイプ阻害剤は、グルココルチコイドに対する最良の感作および最小限の毒性副作用を示す薬剤である。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
【配列表】
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