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特許7303423フェライトコア組立体および電磁誘導加熱調理器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】フェライトコア組立体および電磁誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20230628BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A47J27/00 103L
H05B6/12 319
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019094227
(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2020188837
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】中井 智彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 真輝
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/176806(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204906755(CN,U)
【文献】特開2013-134841(JP,A)
【文献】特開2005-027965(JP,A)
【文献】特開平08-256904(JP,A)
【文献】中国実用新案第201839469(CN,U)
【文献】特開2014-210167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/64
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フェライトコアと、
第2フェライトコアと、
前記第1フェライトコアを収容する第1収容部と、前記第1収容部に対して屈曲して延び、前記第2フェライトコアを収容する第2収容部とを有するフェライトコアホルダと、が備えられ、
前記第1収容部には、屈曲箇所側に前記第1フェライトコアを挿入可能な第1挿入口が設けられると共に、前記屈曲箇所とは反対側に前記第1フェライトコアの脱落を防止する抜け止め部が設けられ、
前記第1フェライトコアと前記第2フェライトコアとの間に注入される接着剤によって、前記第1フェライトコアおよび前記第2フェライトコアが前記フェライトコアホルダに固定されている、フェライトコア組立体
【請求項2】
前記第2収容部には、前記屈曲箇所とは反対側の端部に前記第2フェライトコアを挿入可能な第2挿入口が設けられる、請求項1に記載のフェライトコア組立体
【請求項3】
前記屈曲箇所に、前記第1収容部から前記第2収容部に向かって延びる延設部がさらに備えられる、請求項1または2に記載のフェライトコア組立体
【請求項4】
前記屈曲箇所の近傍に設けられる整線部がさらに備えられる、請求項1から3のいずれか1項に記載のフェライトコア組立体
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のフェライトコア組立体が備えられる電磁誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記フェライトコアホルダの下側に配設される底壁部がさらに備えられ、
前記フェライトコアホルダは、高さ成分を有する第1方向に沿って前記第1フェライトコアを収容し、
前記底壁部は、前記第1方向における前記第1フェライトコアの下側に配設される第1脱落防止部を有する、請求項5に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項7】
電磁誘導源と、
前記電磁誘導源の内側に位置する壁部と、がさらに備えられ、
前記壁部は、前記第2フェライトコアの脱落を防止する第2脱落防止部を有する、請求項5または6に記載の電磁誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライトコア組立体およびそのようなフェライトコア組立体を備える電磁誘導加熱調理器にも関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「水平部分と傾斜部分が交わる中間部分に、底壁から略直角に立ち上がる閉鎖壁を形成するとともに、保持部材の両端を開放状態するフェライトコア保持部材」が提案されている(例えば、特開2005-027965号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-027965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、組立作業者が上述のフェライトコア保持部材に2本の略直方体状のフェライトコアを挿入しようとする際、組立作業者は、通常、1本目のフェライトコア保持部材の一方の開放端からフェライトコアを挿入した後、フェライトコア保持部材を回転させることによって他方の開放端を自身に向けてそこから2本目のフェライトコアを挿入する。このようにフェライトコア保持部材を一度回転させなければならない作業は、比較的煩わしいと思われる。
【0005】
本発明の課題は、フェライトコアの取付作業を効率良く行うことができるフェライトコア組立体およびそのようなフェライトコア組立体を備える電磁誘導加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフェライトコア組立体には、
第1フェライトコアと、
第2フェライトコアと、
前記第1フェライトコアを収容する第1収容部と、前記第1収容部に対して屈曲して延び、前記第2フェライトコアを収容する第2収容部とを有するフェライトコアホルダと、が備えられ、
前記第1収容部には、屈曲箇所側に前記第1フェライトコアを挿入可能な第1挿入口が設けられると共に、前記屈曲箇所とは反対側に前記第1フェライトコアの脱落を防止する抜け止め部が設けられ、
前記第1フェライトコアと前記第2フェライトコアとの間に注入される接着剤によって、前記第1フェライトコアおよび前記第2フェライトコアが前記フェライトコアホルダに固定されている
【0007】
本構成によれば、第1収容部の屈曲箇所側に第1フェライトコアを挿入可能な第1挿入口が設けられる。かかる場合、第2収容部の屈曲箇所側に第2フェライトコアを挿入可能な第2挿入口がある場合であっても、第2収容部の屈曲箇所側の反対側に第2挿入口がある場合であっても、フェライトコアホルダを回転させることなく(フェライトコアホルダの姿勢を変えることなく)フェライトコアを第1収容部および第2収容部に挿入できる。第2収容部の屈曲箇所側に第2挿入口がある場合、例えば、組立作業者は、フェライトコアホルダの屈曲側を下側に向ける(「へ」の字状にする)と共に、第1収容部を自身の左側に位置させ、第2収容部を自身の右側に位置させた状態とし、左手で第1収容部を把持した状態で右手により物体を第1挿入口に挿入してから、右手で第2収容部を把持した状態で左手により物体を第2挿入口に挿入できる。一方、第2収容部の屈曲箇所側の反対側に第2挿入口がある場合、例えば、組立作業者は、第2挿入口が手前になり、第1挿入口が奥になるように片手でフェライトコアホルダを把持し、もう一方の片手で物体を第1挿入口に挿入してからもう一つの物体を第2挿入口に挿入できる。このため、このフェライトコアホルダでは、フェライトコアの取付作業を効率良く行うことができる。
【0008】
上記構成において、
前記第2収容部には、前記屈曲箇所とは反対側の端部に前記第2フェライトコアを挿入可能な第2挿入口が設けられると好適である。
【0009】
本構成によれば、上述の通り、組立作業者は、例えば、第2挿入口が手前になり、第1挿入口が奥になるように片手でフェライトコアホルダを把持し、もう一方の片手で第1フェライトコアを第1挿入口に挿入してから第2フェライトコアを第2挿入口に挿入できる。このため、このフェライトコアホルダを利用すれば、組立作業者は、フェライトコアホルダを持ち替えることなくフェライトコアの挿入作業を行うことができる。
【0010】
上記構成において、
前記屈曲箇所に、前記第1収容部から前記第2収容部に向かって延びる延設部がさらに備えられると好適である。
【0011】
本構成によれば、フェライトコアホルダに挿入した2つのフェライトコアを接着剤や粘着剤で固定する際に、その接着剤や粘着剤を延設部で受けることができる。このため、このフェライトコアホルダを利用すれば、フェライトコアホルダに挿入した2つのフェライトコアを接着剤や粘着剤で固定する際、必要最小限に近い量の接着剤や粘着剤で効率的に2つのフェライトコアを固定できる。
【0012】
上記構成において、
前記屈曲箇所の近傍に設けられる整線部がさらに備えられると好適である。
【0013】
本構成によれば、フェライトコアホルダが電気製品に搭載される際、フェライトコアホルダを活用してリード線等を整線できる。
【0014】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器には、上記のようなフェライトコア組立体が備えられる。
【0015】
本構成によれば、上述のフェライトコア組立体による作用効果を享受できる電磁誘導加熱調理器を構成できる。
【0016】
上記構成において、
前記フェライトコアホルダの下側に配設される底壁部がさらに備えられ、
前記フェライトコアホルダは、高さ成分を有する第1方向に沿って前記第1フェライトコアを収容し、
前記底壁部は、前記第1方向における前記第1フェライトコアの下側に配設される第1脱落防止部を有すると好適である。
【0017】
本構成によれば、第1フェライトコアがフェライトコアホルダから第1方向の下方に向かって脱落することを防止できる。
【0018】
上記構成において、
電磁誘導源と、
前記電磁誘導源の内側に位置する壁部と、がさらに備えられ、
前記壁部は、前記第2フェライトコアの脱落を防止する第2脱落防止部を有すると好適である。
【0019】
本構成によれば、第2フェライトコアが第2収容部から脱落することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る炊飯器の正面図である。
図2図1のI-I断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る炊飯器から底壁を取り外した状態の底面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る炊飯器の本体から肩部材および底壁等の部材を取り外した状態の下方斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成するフェライトコアホルダの上方斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成するフェライトコアホルダの下方斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成するフェライトコアホルダの平面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成するフェライトコアホルダの底面図である。
図9図7のII-II断面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る炊飯器の本体を、フェライトコア配設方向に沿って切断した際の縦断面図である。なお、ここで、肩部材等のいくつかの部材の描画が省略されている。
図11】変形例(F)に係る大型機種用フェライトコアホルダの平面図である。
図12】変形例(F)に係る大型機種用フェライトコアホルダの底面図である。
図13】変形例(F)に係る大型機種用フェライトコアホルダを適用した大型機種の炊飯器から底壁を取り外した状態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の構造>
本発明の実施の形態に係る炊飯器100は、誘導加熱式の圧力炊飯器であって、図1および図2に示されるように、主に、本体110、内鍋130、蓋体140およびヒンジ機構150から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0022】
1.本体
本体110は、図1図3に示されるように、主に、筐体111、取っ手112、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル113、フェライトコア組立体121、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、操作パネル117、電源回路基板118、制御回路基板119および自動巻取式電源コードユニット120から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0023】
(1)筐体
筐体111は、図1図3に示されるように、主に、側壁111a、底壁111b、肩部材111cおよび保護枠111dから構成されており、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル113、フェライトコア組立体121、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、電源回路基板118、制御回路基板119および自動巻取式電源コードユニット120等を収容している。また、肩部材111cの前側の上側には操作パネル117が配設されている。以下、筐体111の各構成要素について詳述する。
【0024】
側壁111aは、図3に示されるように平面視において略長方形を呈する囲い壁であって、図1および図2に示されるように本体110の側面を覆っている。
【0025】
底壁111bは、略方形の板状体であって、図1および図2に示されるように側壁111aの下側に嵌め込まれており、側壁111aの下側の開口を覆っている。そして、この底壁111bには、図2に示されるように、筐体111の外部の空気を内部に吸い込むための吸気口Os、および、筐体111の内部の空気を外部に排出するための排気口(図示せず)が形成されている。なお、図2に示されるように、吸気口Osの直上には、送風ファン115が配設されている。この送風ファン115が駆動されると、吸気口Osを通って外部の空気が筐体111の内部に吸い込まれ、それによって生じる空気流れにより内部の加熱空気が排気口から系外に排出される。
【0026】
また、図10に示されるように、この底壁111bの内側(上側)には、フェライトコア組立体121から第1フェライトコアFC1が完全に脱落することを防止するための上方突起部ST1が設けられている。
【0027】
肩部材111cは、略方形状の枠体であって、図1および図2に示されるように側壁111aの上側に嵌合されており、側壁111aの上側の開口の縁部を覆っている。そして、図2に示されるように、この肩部材111cの下側には、保護枠111dが取り付けられている。なお、図2に示されるように、保護枠111dは保護枠フランジ部FP(後述)で肩部材111cに取り付けられている。
【0028】
保護枠111dは、内鍋130の外周を保護すると共に肩部材111cの形状を保つ役目を担う部材であって、図2および図3に示されるように、主に、内鍋収容部PAおよび保護枠フランジ部FPから形成されている。内鍋収容部PAは、内鍋130の外周を覆う椀状の部位である。保護枠フランジ部FPは、上述の通り、肩部材111cの下側に配設されており、肩部材111cを外側に向かって張ることにより肩部材111cの形状を維持している。
【0029】
(2)取っ手
取っ手112は、使用者が炊飯器100を手で持ち運ぶために設けられている部材であって、図3に示されるように本体部112aおよび軸部112bから構成されている。本体部112aは、図3に示されるようにコの字状を呈している。軸部112bは、図3に示されるように本体部112aの両端から内側に向かって延びている。なお、この炊飯器100において、この軸部112bは、側壁111aの長手方向中央の上部に形成される孔Px(図4参照)を通って、保護枠111dに形成される嵌合部(図示せず)に嵌合されている。
【0030】
(3)断熱材
断熱材は、保護枠111dの内鍋収容部PAの側壁および誘導加熱コイル113の外周に巻き付けられており、炊飯時において内鍋130から生じる熱が内鍋収容部PAの外側に流出するのを抑制する役割を担っている。
【0031】
(4)誘導加熱コイル
誘導加熱コイル113は、内鍋130を誘導加熱する誘導加熱源であって、図2および図3に示されるように保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁部および側壁下端部の外側に配設されている。
【0032】
(5)フェライトコア組立体
フェライトコア組立体121は、図3および図4に示されるように誘導加熱コイル113の周囲に4つ配設されている。このフェライトコア組立体121は、図10に示されるように第1フェライトコアFC1、第2フェライトコアFC2およびフェライトコアホルダ122から構成されている。第1フェライトコアFC1および第2フェライトコアFC2は、同寸法の直方体状のフェライトコアであって、通電時に誘導加熱コイル113から発生する電磁波が外部に漏れ出るのを抑制する役目を担っている。そして、第1フェライトコアFC1および第2フェライトコアFC2は、図10に示されるようにフェライトコアホルダ122に収容されると共に固定されている。
【0033】
フェライトコアホルダ122は、図5図9に示されるように、略「く」または「へ」の字型の部品であって、主に、第1収容部122A、第2収容部122B、抜け止め壁122e、受け皿部122f、ビス受け部122g、整線部122h、第1誘導加熱コイル支持部122iおよび第2誘導加熱コイル支持部122jから構成されている。
【0034】
第1収容部122Aは、第1フェライトコアFC1を収容する部位であって、図6および図9に示されるように、屈曲箇所側に第1挿入口OI1を有すると共に屈曲箇所側の反対側に抜け止め壁122eを有する。第1挿入口OI1は第1フェライトコアFC1を挿入するための入口であり、抜け止め壁122eは、挿入した第1フェライトコアFC1が第1挿入口OI1の反対側から抜け出ないようにするための壁である。また、図6図9に示されるように、この第1収容部122Aの左右両側壁122aの内側には、第1スライドレール部SD1が配設されている。第1スライドレール部SD1は、樹脂バネの原理で対壁に第1フェライトコアFC1を押し付ける役を担う部位であって、図9に示されるように第1フェライトコアFC1の挿入方向に向かうに従って対壁側に傾斜している。また、第1スライドレール部SD1の対壁は、図9に示されるように第1フェライトコアFC1の挿入方向の反対方向に向かうに従って、第1スライドレール部側に傾斜している。ただし、この傾斜角は僅かであって例えば0.5°~1.5°程度である。
【0035】
第2収容部122Bは、第2フェライトコアFC2を収容するため部位であって、図5図6および図9に示されるように、屈曲箇所側の反対側に第2挿入口OI2を有する。また、図5図7図8および図9に示されるように、この第2収容部122Bの左右両側壁122bの内側には、第2スライドレール部SD2が形成されている。第2スライドレール部SD2は、樹脂バネの原理で対壁に第2フェライトコアFC2を押し付ける役を担う部位であって、図9に示されるように第2フェライトコアFC2の挿入方向に向かうに従って対壁側に傾斜している。また、第2スライドレール部SD2の対壁は、図9に示されるように第2フェライトコアFC2の挿入方向の反対方向に向かうに従って第2スライドレール部側に傾斜している。
【0036】
受け皿部122fは、図5図9に示されるように、第1収容部122Aの屈曲箇所側の壁の端部から第2収容部122Bに向かって延びる部位であって、第1フェライトコアFC1と第2フェライトコアFC2との間に絶縁性接着剤等を流し込む際に絶縁性接着剤等が下方に流れ落ちないようにする役目を担っている。
【0037】
ビス受け部122gは、フェライトコア組立体121を保護枠111dにビス止めするために設けられた部位であって、図5図8に示されるように屈曲箇所近傍の両脇に配設されている。
【0038】
整線部122hは、サーミスタ114や温度フューズ等から延びるリード線等を整線するための鉤形状の部位であって、図5図8に示されるようにビス受け部122gの後側に配設されている。
【0039】
第1誘導加熱コイル支持部122iは、図5図7および図9に示されるように第1収容部122Aの屈曲側に配設される凹状の湾曲部位であって、保護枠111dの内鍋収容部PAの側壁下端部に位置する誘導加熱コイル113を支持する役目を担っている。
【0040】
第2誘導加熱コイル支持部122jは、図5図7および図9に示されるように第2収容部122Bの上側に配設される突起部位であって、保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁部に位置する誘導加熱コイル113を支持する役目を担っている。
【0041】
ところで、フェライトコア組立体121は以下の要領で組み立てられる。
先ず、フェライトコアホルダ122の下側が上方を向くようにフェライトコアホルダ122を把持する(図6参照)。次に、第1フェライトコアFC1を第1挿入口OI1から第1収容部122Aに挿入する。次いで、第2フェライトコアFC2を第2挿入口OI2から第2収容部122Bに挿入する。続いて、第1フェライトコアFC1と第2フェライトコアFC2の間に絶縁性接着剤を注入する。なお、このとき、第1フェライトコアFC1の下側に回り込む程度の量の絶縁性接着剤を使用することが好ましい。絶縁性接着剤が、接着の役目だけでなく、第1フェライトコアFC1の下方への抜けを防止する壁の役目も担うようになるからである。絶縁性接着剤としてシリコーンゴムを採用することが好ましい。シリコーンゴムとしては、室温硬化型のシリコーンゴムを利用することが好ましい。
【0042】
(6)サーミスタ
サーミスタ114は、温度センサであって、図2および図10に示されるように、保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁部の中央部に形成された開口を通って、上方に向かって突出している。なお、このサーミスタ114は、コイルバネ等の付勢部材によって上方に付勢されている。すなわち、このサーミスタ114は、上下方向に沿って出没自在な状態とされている。また、このサーミスタ114は、内鍋検知センサ(図示せず)に組み込まれている。内鍋検知センサは、炊飯器内に内鍋130が存在するか否かを判断するためのものであって、サーミスタ114が下端位置まで下がると、検知信号を制御回路基板119のマイクロコンピュータに送信する。マイクロコンピュータは、検知信号を受信すると、炊飯器内に内鍋130が存在すると判断する。なお、マイクロコンピュータが、炊飯器内に内鍋130が存在しないと判断した場合、炊飯運転が開始されない。ところで、このサーミスタ114は、図2図4および図10に示されるように略円盤状のカバー部材127によって支持されている。このカバー部材127は、保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁にネジ止めされている。また、このカバー部材127は、フェライトコアホルダ122の第2挿入口OI2と対向しており、第2フェライトコアFC2が第2挿入口OI2から完全に脱落することを防止している。
【0043】
(7)送風ファン
送風ファン115は、上述の通り、筐体111の底壁111bに形成される吸気口Osの直上に、回転軸が略上下方向に沿うようにして配設されている(図2参照)。すなわち、この送風ファン115が駆動されると、外部の空気が吸気口Osから吸い込まれて筐体内に流入し、そのまま上方に向かって送られる。上方に向かって送られた外部の空気は、ヒートシンク116を通って電源回路基板118および制御回路基板119などに供給されて、それらの部材等を冷却する。
【0044】
(8)ヒートシンク
ヒートシンク116は、外部の空気と効率よく熱交換を行わせる部品である。
【0045】
(9)操作パネル
操作パネル117は、炊飯器100の運転方法を決定して実行するためのものであって、図1および図2に示されるように、主に、パネル本体117aおよび押圧ボタンBT等から構成されており、上述の通り、肩部材111cの前側の上側に配設されている。
【0046】
(10)電源回路基板
電源回路基板118は、電源回路を構成する基板であって、いくつかの発熱部品を実装している。なお、この電源回路基板118は、図2に示されるように後述する制御回路基板119と同様に筐体111の前側空間SPfに収容されている。
【0047】
(11)制御回路基板
制御回路基板119は、制御回路を構成する基板であって、マイクロコンピュータ等の電子部品を実装している。この制御回路基板119は、図2に示されるように筐体111の前側空間SPfに収容されており、ヒートシンク116の上方、操作パネル117の下側に配設されている。
【0048】
(12)自動巻取式電源コードユニット
自動巻取式電源コードユニット120は、電源コードおよび自動巻取機構(図示せず)等から構成されており、図2図4に示されるように筐体111の後側の空間に収容されている。電源コードは、差込プラグOPおよび電気線(図示せず)から構成されている。差込プラグOPは、電気線の先端に配設されている。電気線は、伸展自在に自動巻取機構に巻回されている。
【0049】
2.内鍋
内鍋130は、上方に開口する椀状の鍋であって、肩部材111cの開口に挿通されると共に、保護枠111dの内鍋収容部PAに所定の隙間をもって収容される。なお、ここで、内鍋130は、種々のアルミニウム合金およびステンレス合金の多層体(クラッド材)であって、誘導加熱コイル113によって誘導加熱され得る。
【0050】
3.蓋体
蓋体140は、図1および図2に示されるように、主に、外装体141、開閉ボタン142、圧力調整機構143、補強部材(図示せず)、内蓋145およびレバー部材146から構成されている。ヒンジ機構150を介して本体110に回動自在に取り付けられている。
【0051】
外装体141は、図1および図2に示されるように、略直方体状の部材であって、開閉ボタン142、圧力調整機構143およびレバー部材146等を収容している。なお、ここで、開閉ボタン142は、図1および図2に示されるように、上面が外装体141の上側に露出するように外装体141に配設されている。また、ここで、この外装体141は、使用時の内圧に耐えることができるように補強部材によって補強されている。さらに、この外装体141の下面には、着脱自在に内蓋145が配設されている。
【0052】
開閉ボタン142は、蓋体140を開閉するための角丸長方形状のボタンであって、レバー部材146の上側に配設されている。なお、この開閉ボタン142は、コイルバネ(図示せず)によって上方に向かって付勢されている。
【0053】
レバー部材146は、当接板部(図示せず)と、当接板部の前側から下方に延びる左右一対の延設板部(図示せず)と、各延設板部の下部から後方に向かって延びる爪部(図示せず)とから形成される金属板部材であって、外装体141に軸支されていると共に、当接板部の後端でコイルバネ(図示せず)によって上方に向かって付勢されている。なお、ここで、使用者によって開閉ボタン142が押し下げられると、開閉ボタン142は、レバー部材146の当接板部のうち回動軸の後側の部位に当接する。
【0054】
そして、使用者が蓋体140を閉状態としようとするとき、使用者は開閉ボタン142を操作する必要がなく、そのまま蓋体140を本体110に向かって倒し込めばよい。このとき、レバー部材146の爪部が、肩部材111cに形成される傾斜面(図示せず)に接触しながら下方に移動していく。この間、レバー部材146は、コイルバネの付勢力に逆らって前方に向かって回動する。そして、爪部が、肩部材111cに形成される爪受孔(図示せず)まで達すると、コイルバネの付勢力により爪部がその爪受孔に嵌り込む。このようにして蓋体140が閉状態となる。一方、蓋体140を開状態とするとき、使用者は、開閉ボタン142を押し下げる。すると、開閉ボタン142の下端部位がレバー部材146の当接部に当接し、レバー部材146がコイルバネの付勢力に逆らって前方に向かって回動する。このとき、爪受孔に嵌り込んでいた爪部が爪受孔から引き出される。そして、ヒンジ機構150の付勢力により蓋体140が上方に持ち上げられ、蓋体140が開状態となる。
【0055】
圧力調整機構143は、蓋体140が閉状態とされ圧力炊飯運転されている状態において、内鍋130の内部の圧力を1.03~1.3気圧に調整する。また、この圧力調整機構143は、圧力炊飯運転中、蓋体140を開状態としないようにレバー部材146の回動を規制する。なお、本実施の形態において、この圧力調整機構としては、特に限定されず、従前のものが採用されてもかまわない。
【0056】
補強部材は、蓋体140の強度を高めるためのものである。なお、本実施の形態において、補強部材は、特に限定されず、金属板そのものであってもよいし、金属板を複雑形状にしたものであってもよい。
【0057】
内蓋145は、図2に示されるように内鍋130の上部を覆って密閉するための部材である。
【0058】
4.ヒンジ機構
ヒンジ機構150は、上述の通り、蓋体140が本体110に対して回動自在となるように蓋体140を本体110に取り付けている。なお、上述の通り、このヒンジ機構150は、蓋体140を開方向に向かって付勢している。
【0059】
<本発明の実施の形態に係るフェライトコアホルダの特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係るフェライトコアホルダ122では、第1収容部122Aの屈曲箇所側に第1挿入口OI1が形成されており、第2収容部122Bの屈曲箇所側の反対側に第2挿入口OI2が形成されている。このため、フェライトコア組立体121の組立作業者は、第2挿入口OI2が手前になり、第1挿入口OI1が奥になるように片手でフェライトコアホルダ122を把持し、もう一方の片手で第1フェライトコアFC1を第1挿入口OI1に挿入してから第2フェライトコアFC2を第2挿入口OI2に挿入することができる。このため、このフェライトコアホルダ122では、フェライトコアFC1,FC2の挿入作業を比較的簡便に行うことができる。
【0060】
(2)
本発明の実施の形態に係るフェライトコアホルダ122には、受け皿部122fが設けられている。このため、このフェライトコアホルダ122に第1フェライトコアFC1と第2フェライトコアFC2が差し込まれた状態で、第1フェライトコアFC1と第2フェライトコアFC2との間に絶縁性接着剤等を流し込む際に絶縁性接着剤等が下方に流れ落ちることを防止することができる。このため、このフェライトコアホルダ122を採用することによって、必要最小限に近い量の絶縁性接着剤等で効率的に第1フェライトコアFC1と第2フェライトコアFC2を固定することができる。
【0061】
(3)
本発明の実施の形態に係るフェライトコアホルダ122には、整線部122hが設けられている。このため、このフェライトコアホルダ122では、サーミスタ114や温度フューズ等から延びるリード線等を整線することができる。
【0062】
(4)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、底壁111bの内側(上側)に、フェライトコア組立体121から第1フェライトコアFC1が脱落することを防止するための上方突起部ST1が設けられている(図10参照)。このため、この炊飯器100では、フェライトコア組立体121から第1フェライトコアFC1が完全に脱落することを防止することができる。
【0063】
(5)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、カバー部材127が、フェライトコアホルダ122の第2挿入口OI2と対向しており、第2フェライトコアFC2が第2挿入口OI2から完全に脱落することを防止している。
【0064】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る炊飯器100では誘導加熱コイル113の周囲に4つのフェライトコア組立体121が配設されたが、フェライトコア組立体121の配設個数は特に限定されず、例えば、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0065】
(B)
先の実施の形態に係るフェライトコア組立体121では第1フェライトコアFC1と第2フェライトコアFC2の間に絶縁性接着剤が注入され、第1フェライトコアFC1と第2フェライトコアFC2が互いに接着されると共に、フェライトコアホルダ122にも接着されたが、絶縁性接着剤等を使用せず、第1収容部122Aの第1挿入口OI1および第2収容部122Bの第2挿入口OI2に、フェライトコアFC1,FC2の脱落防止部材を嵌め込む等してもよい。また、フェライトコアFC1,FC2に突起や凹み等を設け、その突起や凹みを利用してフェライトコアFC1,FC2をフェライトコアホルダ122に係合されてもよい(この場合、接着剤等は不要となる。)。
【0066】
(C)
先の実施の形態に係る炊飯器100では底壁111bの内側(上側)に配設される上方突起部ST1が第1フェライトコアFC1に接触されていなかったが、上方突起部ST1は第1フェライトコアFC1に接触するようにされてもよい。
【0067】
(D)
先の実施の形態に係る炊飯器100では底壁111bの内側(上側)に上方突起部ST1を配設してフェライトコア組立体121から第1フェライトコアFC1が完全に脱落することを防止していたが、この上方突起部ST1を、コイルバネや、ゴム、エラストマー等の弾性部材に置き換えてもよい。また、かかる場合、弾性部材の上側に当接部等を取り付けてもよい。
【0068】
(E)
先の実施の形態に係る炊飯器100ではカバー部材127が、フェライトコアホルダ122の第2挿入口OI2と対向していたが、カバー部材127が第2フェライトコアFC2と当接するように設計されてもよい。これにより、第2フェライトコアFC2の位置ズレを防止することができる。
【0069】
(F)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、フェライトコアホルダとして、図5図9に示されるフェライトコアホルダ122が用いられていたが、炊飯器100の大型機種(例えば、先の実施の形態に係る炊飯器100が5.5合炊き機種であった場合、大型機種が1升炊き機種であることを想定)に対して図11および図12に示されるフェライトコアホルダ222が用いられてもよい。なお、このフェライトコアホルダ222は、図11および図12に示されるように第2収容部222Bの構造のみが先の実施の形態に係るフェライトコアホルダ122と僅かに異なる。具体的には、このフェライトコアホルダ222は、図11および図12に示される構造を有する。ここで、第1収容部、抜け止め壁、受け皿部、ビス受け部、整線部、第1誘導加熱コイル支持部および第2誘導加熱コイル支持部は、先の実施の形態に係るフェライトコアホルダ122のものと同一であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。フェライトコアホルダ222の第2収容部222Bでは、左右両側壁222bが、先の実施の形態に係るフェライトコアホルダ122の左右両側壁122bに対して延長されており、その間に開口Oaが形成されている(図11および図12参照)。
【0070】
ここで、大型機種の保護枠111dに、図13に示されるような下方突起部ST2を設け、保護枠111dにフェライトコアホルダ222を取り付ける際に、開口Oaに下方突起部ST2を嵌め込み、その下方突起部ST2でフェライトコア組立体221中の第2フェライトコアFC2の位置ズレを規制する。これにより、小型、大型を問わず同寸法の第2フェライトコアFC2を利用することができる。
【0071】
(G)
先の実施の形態に係る炊飯器100では第1スライドレール部SD1の対壁が挿入方向の反対方向に向かうに従って第1スライドレール部側に傾斜していたが、このような形状形成はなされなくてもかまわない。
【0072】
(H)
先の実施の形態に係る炊飯器100では第2スライドレール部SD2の対壁が挿入方向の反対方向に向かうに従って第2スライドレール部側に傾斜していたが、このような形状形成はなされなくてもかまわない。
【0073】
(I)
先の実施の形態に係るフェライトコア組立体121では第2収容部122Bの屈曲箇所側の反対側に第2挿入口OI2が形成されていたが、第2収容部122Bの屈曲箇所側に第2挿入口を形成して、第2フェライトコアFC2を屈曲箇所側から第2収容部122Bに挿入することができるようにしてもよい。かかる場合、例えば、フェライトコア組立体の組立作業者は、フェライトコアホルダ122の屈曲側を下側に向ける(「へ」の字状にする)と共に、第1収容部122Aを自身の左側に位置させ、第2収容部122Bを自身の右側に位置させた状態とし、左手で第1収容部122Aを把持した状態で右手により第1フェライトコアFC1を第1挿入口OI1に挿入してから、右手で第2収容部122Bを把持した状態で左手により第2フェライトコアFC2を第2挿入口に挿入することができる。このため、このフェライトコアホルダ122では、フェライトコアFC1,FC2の挿入作業を比較的簡便に行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
100 :炊飯器(電磁誘導加熱調理器)
111b:底壁(底壁部)
113 :誘導加熱コイル(電磁誘導源)
122 :フェライトコアホルダ
122A:第1収容部
122B:第2収容部
122e:抜け止め壁(抜け止め部)
122f:受け皿部(延設部)
122g:整線部
FC1 :第1フェライトコア
FC2 :第2フェライトコア
OI1 :第1挿入口
OI2 :第2挿入口
PA :内鍋収容部(壁部)
ST1 :上方突起部(第1脱落防止部)
ST2 :下方突起部(第2脱落防止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13