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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】給湯装置および給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/212 20220101AFI20230628BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20230628BHJP
   F24H 15/156 20220101ALI20230628BHJP
   F24H 15/174 20220101ALI20230628BHJP
   F24H 15/215 20220101ALI20230628BHJP
   F24H 15/238 20220101ALI20230628BHJP
   F24H 15/325 20220101ALI20230628BHJP
   F24H 15/355 20220101ALI20230628BHJP
【FI】
F24H15/212
F24H1/00 A
F24H15/156
F24H15/174
F24H15/215
F24H15/238
F24H15/325
F24H15/355
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019116283
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001713
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩基
(72)【発明者】
【氏名】林 潤一
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 佑輝
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢一
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-078513(JP,A)
【文献】特開2012-225587(JP,A)
【文献】特開2018-091533(JP,A)
【文献】特開平06-129633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/212
F24H 1/00
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源部と、
前記熱源部からの熱によって低温水を加熱して高温水を出力する熱交換器と、
前記熱交換器に前記低温水を通過させるための加熱流路と、
前記熱交換器の上流側で前記加熱流路から分岐して、前記熱交換器の下流側の結合点で前記加熱流路と合流するバイパス流路と、
前記低温水の入水流量に対する前記バイパス流路の流量比率を制御する流量比率調整部と、
前記熱源部の動作を制御するとともに、前記流量比率調整部の操作量を設定する制御装置とを備え、
前記制御装置は、出湯温度の設定温度に対する前記低温水の温度の温度差が第1の閾値よりも小さい場合には、前記熱源部の作動を禁止するとともに、前記流量比率調整部の前記操作量を、予め定められた前記流量比率の制御可能範囲の最大値に設定し、
前記温度差が前記第1の閾値より大きい第2の閾値よりも大きい場合には、前記熱源部の作動を許可するとともに、前記流量比率調整部の前記操作量を、前記最大値よりも小さい値に設定するように構成され、
記加熱流路は、上流端が入水管に接続され、下流端が前記熱交換器に接続される缶体配管と、上流端が前記熱交換器に接続され、前記結合点で前記バイパス流路と接続される出湯管とを含み、
前記熱交換器は、前記熱源部からの顕熱によって前記低温水を加熱する一次熱交換器を含み、
前記入水管から前記缶体配管に入水される前記低温水の温度を検出する第1の温度検出器をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1の温度検出器による検出温度の履歴に基づいて、前記缶体配管から前記一次熱交換器に入水される前記低温水の温度を推定するとともに、前記低温水の推定温度および前記検出温度のうちの低い方の温度を用いて、前記温度差を算出する、給湯装置。
【請求項2】
前記加熱流路の流量を検出する流量検出器をさらに備え、
前記制御装置は、前記流量検出器による検出流量が大きいほど前記検出温度に対する前記推定温度の時間遅れが小さくなるように、前記推定温度を算出する、請求項に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記結合点の下流側に配置され、前記高温水および前記低温水の混合後の出湯温度を検出する第2の温度検出器をさらに備え、
前記流量比率調整部は、前記バイパス流路の流量を制御するための分配弁を含み、
前記制御装置は、前記温度差が前記第1の閾値よりも小さい場合には、前記分配弁の開度を上限値に設定し、
前記温度差が前記第2の閾値よりも大きい場合には、前記第2の温度検出器による検出温度が前記設定温度と一致するように、前記分配弁の開度を制御する、請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項4】
主熱源によって加熱された湯水を蓄積するための貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの湯水が供給される配管と、
前記配管から供給される湯水を前記設定温度に加熱して出力する補助熱源機とを備え、
前記補助熱源機は、請求項1からのいずれか1項に記載の給湯装置を含む、給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給湯装置および給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-9215号公報(特許文献1)には、貯湯タンクから供給される湯水を再加熱して設定温度で出湯するように構成された補助熱源機が開示される。特許文献1において、補助熱源機は、加熱部を通過した加熱水(高温水)と、加熱部を迂回するバイパス通路を通過した非加熱水(低温水)との混合比率を制御する、いわゆるバイパスミキシング式の給湯器で構成されている。補助熱源機は、入水側通路に流れる湯水温度を検知する入水温度検知手段と、バイパス通路の合流部より上流側において出湯側通路に流れる湯水温度を検知する出湯温度検知手段とを備え、これらの検知手段で検知された温度を用いて、加熱動作の開始/停止を制御するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-9215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の補助熱源機においては、貯湯タンクに貯留されている湯水の温度が低い場合、または貯湯タンクから補助熱源機までの配管が冷えている場合には、出湯と同時に補助熱源機を燃焼させてバックアップ出湯を実行する。その後、補助熱源機への入水温度を監視し、燃焼禁止条件が成立すると、補助熱源機の燃焼を停止させてバックアップ出湯からタンク出湯に切り替える。
【0005】
しかしながら、入水温度検知手段により検知された入水温度を用いて補助熱源機の燃焼を制御する構成では、補助熱源機への入水温度が上昇して設定温度との温度差が小さくなるに従って、燃焼を伴う出湯温度の制御が困難となるため、出湯温度が設定温度を超えるオーバーシュートが生じ得る。また、補助熱源機への入水温度と設定温度との温度差が小さくなる場合には、燃焼制御の実行/停止が頻繁に繰り返されることになり、出湯温度が変動することが懸念される。
【0006】
さらに、従来の補助熱源機においては、タンク出湯の実行中は、補助熱源機の燃焼が不要となるため、補助熱源機は単なる給湯回路における通水抵抗となり得る。その結果、省エネルギの観点で改善の余地がある。
【0007】
それゆえに、この発明の目的は、省エネルギを実現しつつ、出湯温度を設定温度に保つことが可能な給湯装置および給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に係る給湯装置は、熱源部と、熱源部からの熱によって低温水を加熱して高温水を出力する熱交換器と、熱交換器に低温水を通過させるための加熱流路と、熱交換器の上流側で加熱流路から分岐して、熱交換器の下流側の結合点で加熱流路と合流するバイパス流路と、低温水の入水流量に対するバイパス流路の流量比率を制御する流量比率調整部と、熱源部の動作を制御するとともに、流量比率調整部の操作量を設定する制御装置とを備える。制御装置は、出湯温度の設定温度に対する低温水の温度の温度差が第1の閾値よりも小さい場合には、熱源部の作動を禁止するとともに、流量比率調整部の操作量を、予め定められた流量比率の制御可能範囲の最大値に設定する。制御装置は、上記温度差が第1の閾値より大きい第2の閾値よりも大きい場合には、熱源部の作動を許可するとともに、流量比率調整部の操作量を、最大値よりも小さい値に設定する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、省エネルギを実現しつつ、出湯温度を設定温度に保つことが可能な給湯装置および給湯システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る給湯システムの概略構成図である。
図2図1に示した補助熱源機の作動原理図である。
図3】分配弁におけるステップ数と流量比率との対応関係を示す図である。
図4】補助熱源機において実行される給湯最適化処理を説明するための図である。
図5】一次熱交換器への入水温度の推定を説明するための概略図である。
図6】推定入水温度の算出例を示す図である。
図7】補助熱源機において実行される給湯最適化処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明が原則的に繰返さないものとする。
【0012】
[給湯システムの構成]
図1は、実施の形態に係る給湯システムの概略構成図である。
【0013】
図1を参照して、給湯システム100は、主熱源装置1と、タンクユニット2と、補助熱源機3とを備える。給湯システムは、貯湯および給湯機能を有するとともに、図示しない浴槽への湯張りおよび浴槽の追い焚き、床暖房パネル等の温水暖房端末への暖房水の供給等の機能を有している。
【0014】
主熱源装置1は、タンクユニット2の貯湯タンク21内の湯水を加熱するように構成される。主熱源装置1は、例えば燃料電池から発生する排熱を熱源とし、排熱と、タンクユニットの貯湯タンクの底部から蓄熱循環経路を経由して供給される湯水との熱交換を行なう。なお、熱源として、燃料電池以外に、ガスエンジン等の作動に伴い発生する排熱を用いるもの、ヒートポンプを用いるもの、または集熱パネルにより集熱した太陽熱を用いるもの等を採用することができる。
【0015】
タンクユニット2は、貯湯タンク21と、蓄熱循環回路22と、給水回路23と、給湯回路24と、高温回避部25と、タンクコントローラ5と有する。
【0016】
貯湯タンク21は、主熱源装置1によって加熱された高温の湯水を貯湯する。貯湯タンク21は密閉タンクであり、タンクの周囲が断熱材で覆われている。貯湯タンク21の外周部には、少なくとも頂部位置を含む高さ方向の複数箇所に複数の残湯水量センサ211が設けられる。各残湯水量センサ211は、各高さ位置における貯湯の湯温を検出可能に構成される。
【0017】
蓄熱循環回路22は、貯湯タンク21と主熱源装置1との間に湯水を循環させて湯水を加熱する閉回路である。蓄熱循環回路22は、上流端が貯湯タンク21の底部に接続され、下流端が貯湯タンク21の頂部に接続されている。蓄熱循環回路22は、蓄熱用循環ポンプ(図示せず)が作動すると、貯湯タンク21の底部から貯湯タンク21内の比較的低温の湯水を取り出し、主熱源装置1内の排熱回収用熱交換器(図示せず)を通過することで加熱された湯水を貯湯タンク21の頂部に戻すように構成される。これにより、貯湯タンク21内で温度成層を形成しつつ所定温度(例えば65℃以上)の湯水として蓄熱されることになる。
【0018】
給水回路23は、上水源から水道水等の低温水を貯湯タンク21等に供給する。給水回路23は、主給水管231と、混合用給水管232とに分岐される。主給水管231は、下流端が貯湯タンク21の底部に接続されている。主給水管231は、貯湯タンク21内の湯水が頂部から出力されるのに伴い、貯湯タンク21の底部に水道水が供給されるように構成される。混合用給水管232の下流端は、混合部27に対して流量調整弁233を介して給水可能に接続されている。
【0019】
給湯回路24は、貯湯タンク21から供給される湯水を給湯栓Kに供給する。具体的には、給湯回路24は、給湯管241と、流量調整弁242と、混合部27とを有する。給湯管241は、上端端が貯湯タンク21の頂部に接続され、下流端がタンクユニット2の接続口201に接続される。混合部27が、給湯管241の途中位置に、流量調整弁242を介して設けられる。混合部27は、給湯管241の上流側から供給されて流量調整弁242を経由して流量が調整された高温水と、混合用給水管232から供給されて流量調整弁233を経由して流量が調整された低温水とを所定の割合で混合させる。混合部27における制御は、タンクコントローラ5によって実行される。なお、図1の例では、混合部27を挟んで設けた流量調整弁242および流量調整弁233によって湯水を混合する構成について説明したが、これら2つの流量調整弁に代えて、混合部27に混合制御弁を設ける構成としてもよい。
【0020】
高温回避部25は、給湯回路24からの高温出湯を回避する。高温回避部25は、バイパス管251と、高温回避弁252とを有する。バイパス管251は、混合用給水管232と、混合部27の下流側の給湯管241とを接続する。高温回避弁252は、バイパス管251を開閉する。
【0021】
補助熱源機3は、タンクユニット2のバックアップ熱源として機能し得る。補助熱源機3には、専用の給湯器あるいは、図1に示す給湯システム100が設置される住宅に既に設置されている給湯器を用いることができる。本実施の形態において、補助熱源機3はバイパスミキシング式の給湯器で構成されている。
【0022】
タンクユニット2と補助熱源機3とは離隔して(例えば1.5m~10m程度)設置されている。タンクユニット2の接続口201と補助熱源機3の入水接続口311とは接続配管41を介して接続される。
【0023】
補助熱源機3は、タンクユニット2の貯湯タンク21に高温の湯水が十分にある場合、燃焼禁止状態に設定される。一方、タンクユニット2から供給される湯水の温度が低い場合には、補助熱源機3は燃焼禁止状態が解除されて作動することにより、設定温度Tr*まで補助的に加熱することができる。図2には、図1に示した補助熱源機3の作動原理図が示される。図1および図2を用いて、補助熱源機3の構成について説明する。
【0024】
[補助熱源機の構成]
補助熱源機3は、入水接続口311と、熱交換器32および燃焼バーナ33等が格納された燃焼缶体4(以下、単に「缶体」とも称する)と、送風ファン340と、入水管30と、缶体配管31と、バイパス管38と、出湯管34と、分配弁381と、給湯器コントローラ6とを有する。
【0025】
入水接続口311には接続配管41の下流端が接続される。入水管30には、入水接続口311を介してタンクユニット2からの湯水が供給される。入水管30の湯水は、分配弁381を経由して、缶体配管31およびバイパス管38へ分配される。
【0026】
缶体配管31は、熱交換器32に接続される。熱交換器32は、燃焼ガスの主として顕熱を回収するように構成される。入水管30から缶体配管31へ導入された低湯水は、燃焼バーナ33の発生熱量により、熱交換器32を通過することによって加熱される。図1の構成例では、熱交換器32は、湯水の流れ方向の下流側に設けられ、燃焼ガスの主として顕熱を回収する一次熱交換器32aと、湯水の流れ方向の上流側に設けられ、顕熱回収後の燃焼排気ガスの主として潜熱を回収する二次熱交換器32bとを有する。熱交換器32には、一次熱交換器32aのみを有するものを採用してもよい。
【0027】
燃焼バーナ33へのガス供給管331には、元ガス電磁弁332、ガス比例弁333および能力切換弁335a~335cが配置される。元ガス電磁弁332は、燃焼バーナ33へ燃焼ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管331のガス流量は、ガス比例弁333の開度に応じて制御される。
【0028】
能力切換弁335a~335cは、燃焼バーナ33のうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数を切換えるために開閉制御される。燃焼バーナ33の発生熱量は、燃料が供給されて燃焼対象となるバーナ本数と、ガス流量との組み合わせによって決まる、燃焼バーナ33全体での燃焼ガス量に比例する。したがって、要求発生熱量に対応させて、能力切換弁335a~335cの開閉パターン(燃焼バーナ本数)およびガス比例弁333の開度(ガス流量)の組み合わせを決定する設定マップを予め作成することができる。
【0029】
缶体4において、燃焼バーナ33から出力された燃料ガスは、送風ファン340からの燃焼用空気と混合される。送風ファン340による送風量は、燃焼バーナ33全体からの供給ガス量との空燃比が所定値(例えば、理論空燃比)となるように制御される。送風ファン340の回転速度は、供給ガス量の変化に応じて設定される目標回転速度に従って制御される。送風ファン340には、回転速度を検出するための回転速度センサ345が設けられる。
【0030】
燃料ガスと燃焼用空気との混合気が図示しない点火装置によって着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。燃焼バーナ33からの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体4での熱交換器32へ与えられる。燃焼バーナ33は「熱源」の一実施例に対応する。
【0031】
二次熱交換器32bは、燃焼バーナ33からの燃焼排ガスの潜熱によって、通流された低温水を熱交換によって予熱する。一次熱交換器32aは、二次熱交換器32bによって予熱された低温水を、燃焼バーナ33からの燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)による熱交換によってさらに加熱する。これにより、熱交換器32によって加熱された高温水が、出湯管34へ出力される。缶体4の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気通路40が設けられる。
【0032】
バイパス管38および出湯管34は、合流点39において接続される。したがって、補助熱源機3からは、缶体4から出力された高温水と、バイパス管38からの低温水との混合によって調温された適温の湯水が、給湯配管42を経由して給湯栓Kまたは、図示しない風呂への注湯回路等の所定の給湯箇所に供給される。
【0033】
分配弁381は、給湯器コントローラ6からの制御指令に従って弁開度が制御されることにより、缶体配管31の流量およびバイパス管38の流量の比率を制御する。例えば、分配弁381による流量比率は、図示しない弁体を開閉駆動するステッピングモータのステップ数Xによって制御することができる。すなわち、分配弁381は「流量比率調整部」の一実施例に対応し、分配弁381のステップ数Xは「操作量」に相当する。
【0034】
以下では、入水管30から缶体配管31への缶体流量q1(すなわち、高温水流量)および、入水管30からバイパス管38へのバイパス流量q2(すなわち、低温水流量)の比を用いて、分配弁381によって制御される流量比率kを、次式(1)に従って定義する。
【0035】
k=q2/q1 …(1)
図3には、分配弁381におけるステップ数Xと流量比率kとの対応関係が示される。
【0036】
図3を参照して、分配弁381では、ステップ数Xに従って弁開度が変化することに応じて、高温水および低温水の流量比率k(k=q2/q1)が変化する。ステップ数Xは、給湯器コントローラ6により、最小値X0および最大値X1までの範囲内で制御される。
【0037】
図3の例では、分配弁381は、ステップ数Xの増加に応じて、流量比率kが低下(すなわち、バイパス流量q2が低下)するように構成される。最小ステップ数X0において流量比率k=kmaxとなり、最大ステップ数X1において流量比率k=kminとなる。
【0038】
なお、ステップ数Xおよび流量比率kの対応関係を示す基準特性線400は、事前の実機試験結果等に基づいて予め定めることができる。基準特性線400に従って、ステップ数Xから流量比率kを算出するための関数およびその逆関数を設定することにより、ステップ数Xから流量比率kへの換算、および流量比率kからステップ数Xへの換算の両方が可能となる。基準特性線400、関数および逆関数を規定するデータは、給湯器コントローラ6内のメモリ(図示せず)に予め記憶することができる。
【0039】
給湯器コントローラ6は、後述するように、タンクユニット2の出湯中は、バイパス流量q2が最大となるように、すなわち流量比率k=kmaxとなるように、分配弁381のステップ数Xが最小ステップ数X0に設定する。一方、補助熱源機3によるバックアップ出湯中は、給湯器コントローラ6は、熱交換器32で加熱された高温水とバイパス管38に流れる低温水とを混合して設定温度Tr*の湯水が補助熱源機3から出力されるように、分配弁381のステップ数Xを設定する。給湯器コントローラ6は「制御装置」の一実施例に対応する。
【0040】
図2に戻って、缶体配管31には温度センサ35および流量センサ36が配置される。温度センサ35は、タンクユニット2から入水される湯水の温度Tw(以下、「入水温度」とも称する)を検出する。温度センサ35は、図2に示されるように缶体配管31に設けることが可能であるが、入水管30またはバイパス管38に設けられてもよい。流量センサ36は、分配弁381よりも下流側(缶体側)に配置され、入水管30から缶体配管31への缶体流量q1を検出する。
【0041】
出湯管34の上流端は熱交換器32に接続され、出湯管34の下流端は出湯接続口341に接続される。出湯管34のバイパス管38が接続される合流点39の上流側(缶体側)には温度センサ342が配置される。温度センサ342は、高温水の温度Tb(以下、「缶体温度」とも称する)を検出する。
【0042】
出湯管34のバイパス管38が接続される合流点39の下流側には温度センサ37および流量調整弁343が配置される。温度センサ37は、高温水および低温水が混合された後の出湯温度Thを検出する。流量調整弁343は、缶体4での加熱能力の不足により設定温度に従って給湯することが困難な場合に、給湯流量を絞るように制御される。
【0043】
温度センサ35によって検出された入水温度Tw、温度センサ342によって検出された缶体温度Tbおよび、温度センサ37によって検出された出湯温度Thは、給湯器コントローラ6へ伝送される。
【0044】
図1および図2の構成例において、熱交換器32は「熱交換器」の一実施例に対応する。さらに、缶体配管31と、出湯管34のうちの合流点39よりも上流側(缶体側)の部分とによって「加熱流路」の一実施例が構成される。バイパス管38は「バイパス流路」の一実施例に対応する。
【0045】
図1に戻って、タンクコントローラ5は、図示しないマイクロコンピュータおよび通信部を有する。マイクロコンピュータは、メモリならびにCPU(Central Processing Unit)および入出力インターフェイスを内蔵する。通信部は通信機能を有する。マイクロコンピュータは、メモリに記憶されたプログラムを実行することによって、リモコン51へ入力されたユーザ指令に従って、給湯システム100の動作を制御する。
【0046】
給湯器コントローラ6は、マイクロコンピュータおよび通信部を有する。マイクロコンピュータは、タンクコントローラ5のマイクロコンピュータと同様に構成されて、メモリを内蔵する。通信部は通信機能を有する。
【0047】
主熱源装置1およびリモコン51の各々は、図示しないマイクロコンピュータおよび通信部を有する。タンクコントローラ5、給湯器コントローラ6、主熱源装置1およびリモコン51の各々は、通信部を用いて互いに双方向に通信することができる。
【0048】
図1の構成例において、タンクコントローラ5は、リモコン51から設定温度等の操作信号ならびに各種温度センサおよび流量センサ等の出力信号(検出値)を受けて、給湯システム100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。制御指令には、主熱源装置1への制御指令および補助熱源機3への制御指令が含まれる。
【0049】
補助熱源機3において、給湯器コントローラ6は、主に缶体4での燃焼動作を制御する。具体的には、給湯器コントローラ6は、タンクユニット2から入水される湯水の温度(入水温度Tw)に応じて、給湯最適化処理を実行する。本願明細書において、給湯最適化処理とは、タンクユニット2からの入水温度Twが変化することに応じて、出湯温度Thが設定温度Tr*に保たれるよう給湯を最適化するための処理である。
【0050】
[給湯最適化処理]
次に、本実施の形態に係る補助熱源機3において実行される給湯最適化処理について説明する。
【0051】
図4は、補助熱源機3において実行される給湯最適化処理を説明するための図である。図4には、タンクユニット2からの入水温度Twが時間の経過に従って変化するときの補助熱源機3の動作例を示す波形図が示される。
【0052】
図4を参照して、時刻t0において、ユーザにより給湯栓Kが開かれることによって流量センサ36が最低作動流量(MOQ)以上の流量を検出すると、給湯器コントローラ6は、給湯最適化処理の実行を開始する。
【0053】
時刻t0において、入水温度Twが設定温度Tr*よりも低いものとする。図4の動作例では、タンクユニット2の貯湯タンク21には高温水があるが、接続配管41内に冷えた湯水が滞留している場合、高温水が接続配管41を通して補助熱源機3に供給される前に、接続配管41の滞留湯水が先に補助熱源機3に入水される場合を想定している。
【0054】
給湯器コントローラ6は、タンクユニット2からの入水温度Twに応じて、補助熱源機3の燃焼制御を実行する。給湯器コントローラ6は、燃焼を許可する場合は燃焼禁止フラグを「0」にリセットし、燃焼禁止の場合は燃焼禁止フラグを「1」とする。
【0055】
時刻t0では、給湯器コントローラ6は、燃焼を許可するために燃焼禁止フラグを「0」とする。給湯器コントローラ6は、缶体4での燃焼動作を開始し、入水される滞留湯水を設定温度Tr*まで加熱して給湯栓Kに給湯する。具体的には、給湯器コントローラ6は、燃焼動作が開始されると、出湯温度Thが設定温度Tr*に制御されるように、缶体4での発生熱量および分配弁381の弁開度(すなわち、分配弁381による流量比率k)を制御する。
【0056】
缶体4での発生熱量は、燃焼バーナ33全体からの供給ガス量によって制御される。したがって、燃焼バーナ33全体からの供給ガス量を決めるために、缶体4での要求発生熱量P*は、缶体温度Tbを缶体目標温度Tb*に一致させるように設定される。具体的には、缶体目標温度Tb*は、設定温度Tr*よりも高く設定される。これにより、バイパス管38の低温水との混合によって、出湯温度Thを設定温度Tr*に制御できる。また、缶体4での必要昇温量ΔTbは、缶体目標温度Tb*と、温度センサ35によって検出された入水温度Twとの差で示される(ΔTb=Tb*-Tw)。したがって、缶体4での要求発生熱量P*は、缶体流量q1および必要昇温量ΔTbの積に従って算出することができる(P*=q1・ΔTb)。
【0057】
給湯器コントローラ6は、算出された要求発生熱量P*に対応させて、燃焼バーナ33全体からの供給ガス量を設定する。例えば、当該供給ガス量を実現するようなバーナ本数およびガス流量の組合せが実現されるように、給湯器コントローラ6は、ガス比例弁333の開度および能力切換弁335a~335cの開閉を制御する。
【0058】
分配弁381の弁開度は、出湯温度Thを設定温度Tr*に一致させるように制御される。具体的には、給湯器コントローラ6は、設定温度Tr*と、温度センサ35,342,37による検出温度(Tw,Tb,Th)とに基づいて、出湯温度Thを設定温度Tr*に制御するための分配弁381のステップ数Xを設定する。
【0059】
補助熱源機3では、低温水から出湯温度への温度上昇に係る熱量と、高温水から出湯温度への温度低下に係る熱量とが均衡する。したがって、缶体流量q1、バイパス流量q2、缶体温度Tb、入水温度Twおよび出湯温度Thの間には次式(2)の関係が成立する。
【0060】
q2・(Th-Tw)=q1・(Tb-Tw) …(2)
式(2)から、式(1)に示した流量比率kは、缶体温度Tb、入水温度Twおよび出湯温度Thによって次式(3)で示すことができる。
【0061】
k=q2/q1=(Tb-Th)/(Th-Tw) …(3)
したがって、給湯器コントローラ6は、式(3)から算出される流量比率kに従って分配弁381のステップ数Xを設定することにより、出湯温度Thを設定温度Tr*に従って制御することができる。さらに、式(3)による算出値をフィードフォワード制御項とした上で、出湯温度の温度差ΔTh(=Tr*-Th)を補償するためのフィードバック制御項を算出し、両者の和に従って流量比率k、すなわち分配弁381のステップ数Xを設定することも可能である。
【0062】
図4の例では、接続配管41の滞留湯水が通過すると、続いてタンクユニット2の貯湯タンク21から設定温度Tr*に調温された高温水が補助熱源機3に入水される。これにより、時刻t1以降、入水温度Twが上昇し、設定温度Tr*に近づいていく。
【0063】
バックアップ出湯からタンクユニット2の出湯に遷移するために、給湯器コントローラ6は、設定温度Tr*と入水温度Twとの温度差ΔTw(=Tr*-Tw)に基づいて燃焼禁止の制御を実行する。具体的には、給湯器コントローラ6は、温度差ΔTwと第1の閾値A℃とを比較する。時刻t2にて、温度差ΔTwが第1の閾値A℃よりも小さくなると、給湯器コントローラ6は、燃焼禁止フラグを「1」とすることにより燃焼を禁止する。
【0064】
燃焼が禁止されると、給湯器コントローラ6は、補助熱源機3の燃焼を停止させるとともに、バイパス流量q2が最大となるように、すなわち流量比率k=kmaxとなるように、分配弁381のステップ数Xを最小ステップ数X0に設定する。このようにすると、燃焼を停止している缶体4内を流れる湯水の流量が制限されるため、給湯回路における補助熱源機3の通水抵抗を低減することができる。その結果、省エネルギ効果を得ることができる。
【0065】
タンクユニット2の出湯中、貯湯タンク21内の高温水が減少して湯切れが生じると、タンクユニット2から補助熱源機3に低温水が供給される。これにより、時刻t4以降、入水温度Twが徐々に低下する。給湯器コントローラ6は、タンクユニット2の出湯からバックアップ出湯に遷移するために、設定温度Tr*と入水温度Twとの温度差ΔTwに基づいて燃焼を許可する。具体的には、給湯器コントローラ6は、温度差ΔTwと第2の閾値B℃とを比較する。第2の閾値B℃は、ハンチングを避けるために、第1の閾値A℃よりも大きい値に設定されている(A℃<B℃)。
【0066】
時刻t5にて、温度差ΔTwが第2の閾値B℃よりも大きくなると、給湯器コントローラ6は、燃焼禁止フラグを「0」にリセットすることにより燃焼禁止を解除する。燃焼禁止が解除されると、給湯器コントローラ6は、缶体4での燃焼動作を再び開始し、入水される低温水を設定温度Tr*まで加熱して給湯栓Kに給湯する。上述したように、給湯器コントローラ6は、燃焼動作が開始されると、出湯温度Thが設定温度Tr*に制御されるように、缶体4での発生熱量および分配弁381の弁開度(分配弁381による流量比率k)を制御する。
【0067】
このように給湯器コントローラ6は、バックアップ出湯中に入水温度Twが上昇し、設定温度Tr*と入水温度Twとの温度差ΔTw<A℃になると、補助熱源機3の燃焼を禁止するとともに、分配弁381のステップ数Xを最小ステップ数X0(流量比率k=kmax)に設定することにより、タンクユニット2の出湯に遷移する。また、給湯器コントローラ6は、タンクユニット2の出湯中に入水温度Twが低下し、温度差ΔTw>B℃になると、補助熱源機3の燃焼を許可するとともに、出湯温度Thを設定温度Tr*に制御するための分配弁381のステップ数Xを設定することにより、バックアップ出湯に遷移する。
【0068】
このように入水温度Twと設定温度Tr*との温度差ΔTwに基づいて補助熱源機3の燃焼の許可/禁止を制御することにより、入水温度Twが上昇したときの燃焼制御の困難さが解消されるため、出湯温度Thのオーバーシュートを抑制することができる。また、入水温度Twと設定温度Tr*との温度差ΔTwが小さくなる場合において燃焼制御の実行/停止が頻繁に繰り返されることを防止することができる。その結果、出湯温度Thの変動を抑制することができる。
【0069】
さらに、補助熱源機3の燃焼が不要となるタンク出湯中は、燃焼を停止している缶体4内を流れる湯水の流量が制限されるため、給湯回路における補助熱源機3の通水抵抗を低減することができる。その結果、省エネルギ効果を得ることができる。
【0070】
一方、上記構成では、入水温度Twの上昇を検出して補助熱源機3の燃焼を停止した時点(図4の時刻t2)において、熱交換器32の一次熱交換器32aに入水される湯水、すなわち、缶体配管31における一次熱交換器32aの上流側(二次熱交換器32bを含む)にある湯水の温度が入水温度Twよりも低い場合が生じ得る。そのため、この時点で補助熱源機3の燃焼を停止すると、その後に一次熱交換器32aに入水された湯水が加熱されず、缶体4から低温水が出力されることになる。その結果、時刻t2直後において、一時的に設定温度Tr*に満たない低温水が給湯栓Kに供給されることになる。したがって、二次熱交換器32b内の低温水が加熱されるまでは、補助熱源機3の燃焼を停止させずに、燃焼を継続させることが求められる。
【0071】
一方、入水温度Twの低下を検出して補助熱源機3の燃焼を開始する時点(図4の時刻t5)では、燃焼禁止を解除してから燃料ガスおよび燃焼用空気の混合気を点火装置によって着火して燃焼バーナ33から燃焼熱を発生させるまでに多少の時間を要する場合がある。この場合、その時間内に加熱されない低温水が缶体4から出力されることになる。したがって、入水温度Twの低下をできるだけ早いタイミングで検出して補助熱源機3の燃焼を開始させることが求められる。
【0072】
そこで、給湯器コントローラ6は、入水温度Twの変化に対応して補助熱源機3の燃焼制御の精度が低下しないように、一次熱交換器32aに入水される水の温度を推定する。
【0073】
図5は、一次熱交換器32aへの入水温度の推定を説明するための概略図である。
図5を参照して、給湯器コントローラ6は、温度センサ35によって検出された入水温度Twに基づいて、一次熱交換器32aにおける推定入水温度Twdを算出する。今回の制御周期における入水温度Twの検出値Tw[n]を用いて、今回の制御周期における推定入水温度Twd[n]は、次式(4)に従って算出される。
【0074】
Twd[n]=K1・Tw[n]+K2・Twd[n-1] …(4)
式(4)において、Twd[n-1]は、前回の制御周期における推定入水温度Twdである。また、係数K1,K2は、K1=1/(L+1)、およびK2=L/(L+1)で示される。K1,K2は、調整パラメータLによって、K1+K2=1.0を維持した上で適正値にチューニングすることができる。
【0075】
なお、調整パラメータLは、缶体配管31における温度センサ35の配置位置から一次熱交換器32aまでの配管(二次熱交換器32bを含む)の距離および配管形状などによって値が異なってくるため、例えば、実機試験やシミュレーションによって機種毎に予め設定することができる。
【0076】
また、調整パラメータLについては、缶体流量q1に応じて可変としてもよい。例えば、缶体流量q1が増えるほど、Lを小さく設定してK1を大きくすることで、TwがTwdに反映される速度を高めることが好ましい。
【0077】
式(4)によれば、一次熱交換器32aへの推定入水温度Twdは、入水温度Twの履歴に基づいて、入水温度Twの変化が係数K1,K2に従う時間遅れを伴って反映されるように、逐次算出されることになる。
【0078】
図6には、式(4)に従って推定入水温度Twdの算出例が示される。
図6を参照して、温度波形L1は、温度センサ35により検出される入水温度Twの変化を時間軸上にプロットしたものである。温度波形L2は、入水温度Twが温度波形L1に従って変化したときの、一次熱交換器32aにおける推定入水温度Twdの、式(4)に従った算出結果を時間軸上にプロットしたものである。温度波形L1,L2の比較から、推定入水温度Twdは、入水温度Twの変化に時間遅れを持たせるように算出されている。
【0079】
温度波形L2は、時刻t1以前では温度波形L1と一致しており、時刻t1以降では、温度波形L1に遅れて緩やかに上昇し、温度波形L1と一致するようになる。また、温度波形L2は、時刻t4以前では温度波形L1と一致しており、時刻t4以降では、温度波形L1に遅れて緩やかに低下し、温度波形L1と一致するようになる。
【0080】
図6には、入水温度Twおよび推定入水温度Twdが時間の経過に従って変化するときの補助熱源機3における給湯最適化処理の動作例がさらに示される。
【0081】
図6において、燃焼禁止フラグの波形L3および分配弁381による流量比率k(分配弁381のステップ数X)の制御の波形L5は、図4に示したものと同様である。燃焼禁止フラグの波形L3および分配弁381における制御の波形L5による出湯温度Thの変化が、温度波形L7に示される。
【0082】
一方、図6において、燃焼禁止フラグの波形L4および分配弁381による流量比率k(分配弁381のステップ数X)の制御の波形L6は、推定入水温度Twdの温度波形L2に基づいて作成したものである。詳細には、時刻t1以降、推定入水温度Twdが上昇すると、給湯器コントローラ6は、バックアップ出湯からタンクユニット2の出湯に遷移するために、設定温度Tr*と推定入水温度Twdとの温度差ΔTwd(=Tr*-Twd)に基づいて燃焼禁止の制御を実行する。給湯器コントローラ6は、温度差ΔTwdと第1の閾値A℃とを比較する。時刻t3にて、温度差ΔTwdが第1の閾値A℃よりも小さくなると、給湯器コントローラ6は、燃焼禁止フラグを「1」とすることにより燃焼を禁止する。
【0083】
燃焼が禁止されると、給湯器コントローラ6は、補助熱源機3の燃焼を停止させるとともに、バイパス流量q2が最大となるように、すなわち流量比率k=kmaxとなるように、分配弁381のステップ数Xを最小ステップ数X0に設定する。
【0084】
時刻t4以降、推定入水温度Twdが徐々に低下すると、給湯器コントローラ6は、タンクユニット2の出湯からバックアップ出湯に遷移するために、設定温度Tr*と入水温度Twdとの温度差ΔTwdに基づいて燃焼許可の制御を実行する。給湯器コントローラ6は、温度差ΔTwdと第2の閾値B℃とを比較する。時刻t5にて、温度差ΔTwdが第2の閾値B℃よりも大きくなると、給湯器コントローラ6は、燃焼禁止フラグを「0」にリセットすることにより燃焼禁止を解除する。燃焼禁止が解除されると、給湯器コントローラ6は、缶体4での燃焼動作を再び開始し、入水される低温水を設定温度Tr*まで加熱して給湯栓Kに給湯する。上述したように、給湯器コントローラ6は、燃焼動作が開始されると、出湯温度Thが設定温度Tr*に制御されるように、缶体4での発生熱量および分配弁381の弁開度(分配弁381による流量比率k)を制御する。燃焼禁止フラグの波形L4および分配弁381における制御の波形L6による出湯温度Thの変化が、温度波形L8に示される。
【0085】
ここで、出湯温度Thの温度波形L7と温度波形L8とを比較すると、入水温度Twの上昇時(時刻t1)には、温度波形L8では出湯温度Thが安定しているのに対して、温度波形L7では一時的な温度低下が生じている。一方で、入水温度Twの低下時(時刻t4)には、温度波形L7では出湯温度Thが安定しているのに対して、波形L8では一時的な温度低下が生じている。これによると、入水温度Twの上昇時および低下時の各々で好適な温度波形を形成することができれば、入水温度Twの上昇および低下のいずれにおいても出湯温度Thを設定温度Tr*に保つことが可能となる。
【0086】
そこで、給湯器コントローラ6は、温度センサ35により検出される入水温度Twおよび推定入水温度Twdのうち低い方の温度を用いて、補助熱源機3の燃焼および燃焼禁止を制御するとともに、分配弁381の開度制御を実行する。このようにすると、出湯温度Thは、入水温度の上昇時には温度波形L8に従って変化するとともに、入水温度の低下時には温度波形L7に従って変化することになる。給湯器コントローラ6は、燃焼制御および分配弁381の開度制御を入水温度の変化に速やかに追従させることができるため、タンクユニット2からの入水温度Twに変化が生じたときにも、出湯温度Thを設定温度Tr*に保つことができる。
【0087】
図7は、補助熱源機3において実行される給湯最適化処理の手順を説明するためのフローチャートである。図7に示すフローチャートは、給湯器コントローラ6により一定の制御周期毎に実行することができる。
【0088】
図7を参照して、給湯器コントローラ6は、ステップS01により、補助熱源機3での流量が最小作動流量(MOQ)を超えているか否かを判定する。以下では、補助熱源機3での流量がMOQを超えている状態を「MOQオン」とも称し、MOQを超えていない状態を「MOQオフ」とも称する。
【0089】
MOQオフのときには(S01にてNO)、給湯器コントローラ6は以降のステップS02~S11の処理をスキップする。一方、MOQオンのときには(S01にてYES)、給湯器コントローラ6は、ステップS02~S11に処理を進める。具体的には、給湯器コントローラ6は、ステップS02により、温度センサ35により検出される入水温度Twを取得すると、ステップS03により、ステップS02で取得された現時点での入水温度Twから、式(4)に従って、現時点での一次熱交換器32aへの推定入水温度Twdを算出する。
【0090】
次に、給湯器コントローラ6は、ステップS04により、現時点での入水温度Twおよび現時点での推定入水温度Twdのうちの低い方の温度を算出する。以下の説明では、入水温度Twおよび推定入水温度Twdのうちの低い方の温度を、最小入水温度min(Tw,Twd)と表記する。
【0091】
続いて、給湯器コントローラ6は、ステップS05により、設定温度Tr*と最小入水温度min(Tw,Twd)との温度差ΔTw(=Tr*-min(Tw,Twd))を算出する。給湯器コントローラ6は、ステップS06により、算出した温度差ΔTwと第2の閾値B℃とを比較する。
【0092】
温度差ΔTw>B℃である場合(S06にてYES)、給湯器コントローラ6は、ステップS07に進み、燃焼禁止フラグを「0」にリセットする。すなわち、給湯器コントローラ6は、補助熱源機3の燃焼を許可する。したがって、給湯器コントローラ6は、缶体4での燃焼動作を実行し、入水される低温水を設定温度Tr*まで加熱して給湯栓Kに給湯する。給湯器コントローラ6は、出湯温度Thが設定温度Tr*に制御されるように、缶体4での発生熱量を制御する。さらに、給湯器コントローラ6は、ステップS08により、分配弁381の弁開度(分配弁381による流量比率k)を制御する。
【0093】
一方、ステップS07にて温度差ΔTw≦B℃である場合(S07にてNO)、給湯器コントローラ6は、ステップS09に進み、温度差ΔTwと第1の閾値A℃とを比較する。温度差ΔTw<A℃である場合(S09にてYES)、給湯器コントローラ6は、ステップS10に進み、燃焼禁止フラグを「1」にセットする。すなわち、給湯器コントローラ6は、補助熱源機3の燃焼を禁止する。したがって、給湯器コントローラ6は、補助熱源機3の燃焼を停止させるとともに、ステップS11により、バイパス流量q2が最大となるように、すなわち流量比率k=kmaxとなるように、分配弁381のステップ数Xを最小ステップ数X0に設定する。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態に係る補助熱源機(給湯装置)によれば、入水温度と設定温度との温度差に基づいて燃焼の許可/禁止を制御することにより、入水温度が変化したときの燃焼制御の困難さが解消されるため、入水温度の変化に対して出湯温度を設定温度に保つことができる。
【0095】
また、補助熱源機の燃焼が不要となるタンク出湯中は、バックアップ給湯時と比較して缶体内を流れる湯水の流量が制限されるため、給湯回路における補助熱源機の通水抵抗を低減することができるため、省エネルギ効果を得ることができる。
【0096】
さらに、温度センサにより検出される入水温度に基づいて熱交換器への入水温度を推定し、検出入水温度および推定入水温度のうち低い方の温度を用いて、補助熱源機の燃焼制御および分配弁の開度制御を実行することで、燃焼制御および分配弁の開度制御を入水温度の変化に速やかに追従させることができるため、安定的に出湯温度を設定温度に保つことが可能となる。
【0097】
なお、補助熱源機3(給湯装置)の構成は図1および図2の例示に限定されるものではなく、バイパス管の配置によって、高温水(加熱水)および低温水(非加熱水)を混合するバイパスミキシング式の給湯装置における高温水および低温水の混合比率の制御に対して、本発明を共通に適用することができる。
【0098】
また、補助熱源機3における熱交換器32として、燃焼ガスの顕熱を吸熱する一次熱交換器および燃焼排ガスからの潜熱を回収する二次熱交換器を組み合わせた潜熱回収型の構成を例示したが、これに限らず、二次熱交換器を有しないものでも本発明を適用することができ、潜熱回収型であることは必須ではない。
【0099】
さらに、熱交換器を加熱する熱源として、燃焼熱を発生させる燃焼バーナを例示したが、これに限らず、電気を用いて熱を発生する熱源等、様々なタイプの熱源を適用することができる。
【0100】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
1 主熱源装置、2 タンクユニット、3 補助熱源機(給湯装置)、4 燃焼缶体、6 給湯器コントローラ、30 入水管、31 缶体配管、32 熱交換器、33 燃焼バーナ、34 出湯管、35,37 342 温度センサ、38 バイパス管、100 給湯システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7