IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-回収方法 図1
  • 特許-回収方法 図2
  • 特許-回収方法 図3
  • 特許-回収方法 図4
  • 特許-回収方法 図5
  • 特許-回収方法 図6
  • 特許-回収方法 図7
  • 特許-回収方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】回収方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/28 20060101AFI20230628BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20230628BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20230628BHJP
   B03C 1/16 20060101ALI20230628BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20230628BHJP
   C21C 1/02 20060101ALI20230628BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20230628BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20230628BHJP
【FI】
C21C5/28 D
B01D21/01 102
B01D21/01 106
B01D21/01 107Z
B01D21/01 111
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/16
B01D21/01 107B
C21C7/00 J
C21C1/02 L
B09B5/00 J ZAB
B09B3/30
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019122189
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008644
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 宗幸
(72)【発明者】
【氏名】空田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岩水 義治
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115366(JP,A)
【文献】特開2018-020292(JP,A)
【文献】特開2016-198702(JP,A)
【文献】特開2003-145168(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163595(WO,A1)
【文献】特開2004-033833(JP,A)
【文献】特開2001-038104(JP,A)
【文献】特開2015-044149(JP,A)
【文献】特開2005-013857(JP,A)
【文献】特開2010-172885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/00,5/28-5/50
C21C 7/00-7/10
C21C 1/00-1/06
B01D 21/01
C02F 1/52-1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼の製造により排出される製鋼スラグに含まれるカルシウム化合物を回収する回収方法であって、
前記製鋼スラグを粉砕して生成したスラリーから、鉄を含む第1化合物を収集する磁選工程と、
前記磁選工程後に残存する前記スラリーに有機凝集剤および無機凝集剤を添加し、当該スラリーから、前記カルシウム化合物が含まれる第1上澄液を収集する第1収集工程と、
前記第1収集工程後に残存する前記スラリーに二酸化炭素水溶液を接触させて当該二酸化炭素水溶液にカルシウムを溶出させつつ、前記スラリーに有機凝集剤および無機凝集剤を添加し、当該スラリーから、前記第1上澄液と異なる、前記カルシウムが溶出した前記二酸化炭素水溶液を含む第2上澄液を収集する第2収集工程と、
前記第1上澄液に、前記第2上澄液、有機凝集剤、および無機凝集剤を添加し、当該第1上澄液に含まれる前記カルシウム化合物を沈降させる沈降工程と、を含み、
前記第1収集工程、前記第2収集工程および前記沈降工程のそれぞれにおいて、前記無機凝集剤は下記の一般式(1)で示される第2化合物を含前記有機凝集剤は下記の一般式(2)で示される第3化合物を含む、回収方法。
[Al2(OH)nCl6-n]・・・(1)
(nは、1以上5以下の整数であり、mは、10以下の整数である。)
【化1】
・・・(2)
(前記有機凝集剤の分子量は、カチオン系で100万以上であるか、またはアニオン系で300万以上である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の製造により排出される製鋼スラグに含まれるカルシウム化合物を回収するための回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工程で生じる製鋼スラグ(転炉スラグ、予備処理スラグ、二次精錬スラグおよび電気炉スラグなど)は、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)などの元素が含まれる。製鋼スラグに含まれるCaは、製鋼工程の間に投入される生石灰(CaO)がそのまま残存もしくは、製鋼スラグの凝固中に析出した遊離石灰が空気中の水蒸気もしくは二酸化炭素と反応して生成する水酸化カルシウム(Ca(OH))もしくは炭酸カルシウム(CaCO)などの形態で存在している。または遊離石灰が製鋼スラグの凝固中にSiやAlなどと反応して生成するケイ酸カルシウム(CaSiOもしくはCaSiOなど)もしくは酸化カルシウム鉄アルミニウム(Ca(Al1-XFe)などの形態で存在している(以下、製鋼スラグ中に存在する上記カルシウムを含む化合物を総称して、「カルシウム化合物」と称する)。
【0003】
炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムは、製鋼工程での主要な製鋼スラグ形成材であり、その製鋼スラグの塩基度および粘性の調整剤、ならびに溶鋼からの脱リン剤などとして使用されている。また、酸化カルシウムに加水して得られる水酸化カルシウムは、排水工程で酸などの中和剤として使用されている。したがって、前記製鋼スラグ内に含まれるカルシウム化合物を回収して製鉄工程に再利用すれば、製鉄のコストを削減できると期待されている。
【0004】
製鋼スラグからカルシウム化合物を回収する方法として、例えば、製鋼スラグに磁選を施して、鉄を含む化合物を製鋼スラグから取り除く工程と、前記磁選を施した製鋼スラグと二酸化炭素を含有する水溶液とを接触させる工程とを行うことにより、製鋼スラグから、多量のカルシウム化合物を製鋼スラグから二酸化炭素を含有する水溶液へ溶出させる方法が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-115366号公報(2018年7月26日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
用いられる製鋼スラグを効率良く固液分離させるために、製鋼スラグに含まれる各成分が沈降するまでの速度(沈降速度)を速める必要がある。特に、前記成分の中でも、沈降速度が比較的遅いカルシウム化合物は、沈降速度を速めることが不可欠であると考えられる。しかしながら、従来から、前記成分の沈降速度に着目し、沈降速度を速めるための技術については知見がなかった。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、製鋼スラグを固液分離する際に、製鋼スラグに含まれる各成分の沈降速度を速めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る回収方法は、鋼の製造により排出される製鋼スラグに含まれるカルシウム化合物を回収する回収方法であって、前記製鋼スラグを粉砕して生成したスラリーから、鉄を含む第1化合物を収集する磁選工程と、前記磁選工程後に残存する前記スラリーから、前記カルシウム化合物が含まれる第1上澄液を収集する第1収集工程と、前記第1収集工程後に残存する前記スラリーから、前記第1上澄液と異なる第2上澄液を収集する第2収集工程と、前記第1上澄液に含まれる前記カルシウム化合物を沈降させる沈降工程と、を含み、前記第1収集工程、前記第2収集工程および前記沈降工程では、添加剤として、下記の一般式(1)で示される第2化合物を含む無機凝集剤、および、下記の一般式(2)で示される第3化合物を含む有機凝集剤の少なくともいずれか一方を用いる。
【0009】
[Al2(OH)nCl6-n]・・・(1)
(nは、1以上5以下の整数であり、mは、10以下の整数である。)
【0010】
【化1】
・・・(2)
(前記有機凝集剤の分子量は、カチオン系で100万以上であるか、またはアニオン系で300万以上である。)
前記構成によれば、無機凝集剤または有機凝集剤を用いることにより、前記製鋼スラグに含まれる成分と前記凝集剤とのフロックが形成される。これにより、前記成分の沈降速度を速めることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る回収方法は、前記有機凝集剤を前記スラリーに対して添加することにより、前記スラリーに含まれる成分を凝集させる凝集工程をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、製鋼スラグを固液分離する際に、製鋼スラグに含まれる各成分の沈降速度を速めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】カルシウム化合物の回収方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図2】第1分離工程の処理の流れの一例を示す概略図である。
図3】符号301に示す図は、フロック径と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号302に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号303に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号304に示す図は、実施例1の結果を示す像である。
図4】符号401に示す図は、フロック径と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号402に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号403に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号404に示す図は、実施例1の結果を示す像である。
図5】符号501に示す図は、フロック径と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号502に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号503に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号504に示す図は、実施例1の結果を示す像である。符号505に示す図は、実施例1の結果を示す像である。
図6】符号601に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号602に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号603に示す図は、フロック径と、凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号604に示す図状は、実施例2の結果を示す像である。
図7】符号701に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号702に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号703に示す図は、フロック径と、凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号704に示す図は、実施例2の結果を示す像である。
図8】符号801に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号802に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号803に示す図は、フロック径と、凝集剤添加量との関係を示すグラフである。符号804に示す図は、実施例2の結果を示す像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔1.製鋼スラグの成分組成〕
以下、図1および図2を用いて、カルシウム化合物の回収方法を説明する。図1は、本実施形態における、カルシウム化合物の回収方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態におけるカルシウム化合物の回収方法は、磁選工程(S1)、第1分離工程(S2)、第2分離工程(S3)および沈降工程(S4)を含む。
【0015】
(磁選工程)
磁選工程S1は、製鋼スラグを破砕して生成したスラリーから、鉄を含む第1化合物を分離(収集)する工程である。なお、本工程における前記製鋼スラグは、鋼の製造により排出されるスラグである。
【0016】
本工程に供される前記製鋼スラグの種類は、鋼の製造により排出されるスラグであれば特に限定されない。前記製鋼スラグの例には、転炉スラグ、予備処理スラグ、二次精錬スラグおよび電気炉スラグなどが挙げられる。
【0017】
前記製鋼スラグは、鋼の製造により排出された後に破砕されたものを使用する。本工程において用いられる製鋼スラグは、磁選を施す前に、水中に分散させてスラリー化する。言い換えれば、磁選を施す前に、製鋼スラグを粉砕してスラリーを生成する。スラリーは、水分子の極性や水流などによってスラグ粒子が分散しやすいため、鉄系化合物および金属鉄が磁力によって選択的に捕捉されやすい。
【0018】
前記製鋼スラグは、磁選を施す前に、加熱処理されることが好ましい。前記製鋼スラグを加熱処理すると、鉄を含む第1化合物の磁化が高まり、磁選によってより多量の、鉄を含む第1化合物を取り除くことができる。
【0019】
本工程は、例えば、公知の磁力選別機を用いて施すことができる。本工程において用いられる磁力選別機の種類は特に限定されない。また、磁力選別機は、ドラム式、ベルト式および固定磁石間流動式などから適宜選択できるが、取扱いが容易であり、かつ、磁力を高めて磁選量を多くしやすいことから、磁力選別機としてドラム式を採用することが好ましい。また、磁力選別機が用いる磁石は、永久磁石でもよいし、電磁石でもよい。
【0020】
前記磁力選別機に備えられる磁石による磁束密度は、製鋼スラグに含まれる他の化合物から鉄を含む化合物および金属鉄を選択的に捕捉できる程度であればよい。本工程が行われる時間および回数は、製造コストに与える影響などに応じて、適宜選択される。
【0021】
磁選工程S1によって、前記第1化合物を取り除いた後に残存する前記スラリーは、後述する第1分離工程において、固液分離される。
【0022】
第1分離工程(第1収集工程)S2では、前記第1化合物を取り除いた後に残存する前記スラリーから、第1上澄液を分離(収集)する工程である。ここで、第1分離工程S2を、図2を用いて説明する。図2は、第1分離工程S2の処理の流れの一例を示す概略図である。
【0023】
図2に示すように、前記スラリーに対して、凝集工程が行われる。第1流入槽1へ、前記スラリーが移送された後、製鋼で排出される各種排水が流入される第2流入槽3へ、前記スラリーがポンプ2により移送される。移送後、ポンプ4により前記スラリーが、第2流入槽3から撹拌装置5へ移送される。
【0024】
本工程において、前記スラリーから第1上澄液を分離するために、無機凝集剤が添加される。前記無機添加剤は、前記スラリーに含まれる、負に帯電したコロイド粒子を中和させて凝縮させる効果を有し、少なくとも、下記の一般式(1)で示された化合物(第2化合物)を含む。
【0025】
[Al2(OH)nCl6-n]・・・(1)
ここで、nは、1以上5以下の整数であり、mは、10以下の整数である。
【0026】
本工程において用いられる前記無機凝集剤は、前記一般式(1)で示される化合物のみが含まれていてもよいし、他の成分が含まれていてもよい。該成分の例としては、負に帯電したコロイド粒子を、中和して凝集させる効果を阻害しない成分であれば特に限定されず、例えば、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸バンド〔硫酸アルミニウム:Al(SO〕および塩化第二鉄液〔FeCl・4HO〕などが挙げられる。前記ポリ硫酸第二鉄は、例えば、下記の一般式(2)で示される。
【0027】
[Fe(OH)(SO3-n/2(0<n≦2、m=f(n))・・・(2)
前記一般式(1)で示される化合物の、前記無機凝集剤全体に対する濃度は特に限定されない。例えば、前記無機凝集剤全体に対して酸化アルミニウムが10%程度含まれるように、前記一般式(1)で示される化合物が前記無機凝集剤に対して含まれればよい。
【0028】
また、前記硫酸第一鉄または前記ポリ硫酸第二鉄の、前記無機凝集剤全体に対するそれぞれの濃度は特に限定されない。例えば、前記硫酸第一鉄の濃度は、前記無機凝集剤全体に対して、鉄イオン(Fe2+)が、4.0%以上含まれるような濃度であればよい。また、前記ポリ硫酸第二鉄の濃度は、鉄イオン(Fe3+)が、11%以上含まれるような濃度であればよい。
【0029】
また、前記硫酸バンドおよび前記塩化第二鉄液の、前記無機凝集剤全体に対するそれぞれの濃度は特に限定されない。例えば、硫酸バンドの濃度は、前記無機凝集剤全体に対して、Alが8%以上含まれるような濃度であれば良い。また、塩化第二鉄液の濃度は、前記無機凝集剤全体に対して、FeClが、37%以上含まれるような濃度であれば良い。本工程において、前記無機凝集剤を添加するために用いられる装置は、特に限定されない。本実施形態においては、該装置の例として、撹拌装置を例に挙げて説明した。
【0030】
本工程において添加された無機凝集剤により、微細なフロック(以降、微細フロックと称する)が形成される。前記微細フロックを含む第1スラリーは、任意構成により、凝集装置6へ移送される。
【0031】
本工程において分離された、第1上澄液は、製鋼スラグから溶出されたカルシウム化合物が含まれる。具体的に、前記第1上澄液は、カルシウム化合物含有の、高アルカリ性の水溶液である。ここで、製鋼スラグからカルシウム化合物を溶出する方法については、特に限定されない。前記第1上澄液は、後の沈降工程に供される。
【0032】
前記無機凝集剤が添加された後、本工程において、前記微細フロックを含む第1スラリーに対して、有機凝集剤が添加される。有機凝集剤の例としては、アニオン系・アクリルアミド系高分子凝集剤(以下、単に「高分子凝集剤」という)を例示することができる。
前記有機凝集剤が該第1スラリーへ添加されることにより、複数の前記微細フロックを凝集させ粗大な凝集フロックが形成される。
【0033】
本工程において用いられる、前記有機凝集剤は、少なくとも、下記の一般式(3)で示された化合物(第3化合物)を含む。なお、前記有機凝集剤の分子量は、カチオン系で100万以上であるか、またはアニオン系で300万以上である。
【0034】
【化1】
・・・(3)
また、前記有機凝集剤は、前記一般式(3)で示される化合物の他に、例えば、アクリル酸ナトリウムを含む高分子化合物、アクリル酸を含む高分子化合物などが好適に用いられる。
【0035】
前記一般式(3)で示される化合物の、前記有機凝集剤全体に対する濃度は特に限定されない。例えば、前記有機凝集剤全体に対して、前記一般式(3)で示される化合物が90%程度含まれるような濃度であればよい。また、前記アクリル酸ナトリウムを含む高分子化合物が含まれる場合の、前記有機凝集剤全体に対する濃度は、例えば、前記有機凝集剤全体に対して、アクリル酸を含む高分子化合物などまたはアクリル酸ナトリウムを含む高分子化合物が、90%程度含まれるような濃度であればよい。
【0036】
本工程において凝集剤として用いられる前記有機凝集剤は、前記一般式(3)で示された化合物のみが含まれていてもよいし、他の成分がさらに含まれていてもよい。該成分の例としては、アニオン性ポリマーであってもよいし、カチオン性ポリマーであってもよいし、ノ二オン性ポリマーであってもよい。前記有機凝集剤が添加される対象の液が有するpHに従って適宜選択される。上述のポリマーのうち、アニオン性ポリマーは、前記液が有するpHが弱酸性、中性またはアルカリ性のいずれであっても、凝集剤として機能する。それ故、本工程において、前記有機凝集剤として、アニオン系ポリマーを用いることが好ましい。
【0037】
本工程において用いられる凝集装置6の種類は特に限定されず、前記有機凝集剤が添加される液に対して添加可能な装置であれば特に限定されない。
【0038】
上述したフロックを回収する回収方法は特に限定されず、例えば、加圧ろ過機、遠心分離機、減圧ろ過機、膜分離装置などの装置を用いることにより、上述したフロックと、該フロック以外の成分とを分離することが可能である。
【0039】
前記第1上澄液に対して、濁度が計測されてもよい。該濁度は、例えば、濁度計などにより計測可能である。具体的に、図2に示すように、前記第1上澄液は、任意構成により、第3流入槽7へ移送される。移送後、第3流入槽7に設けられた濁度計により、前記第1上澄液の濁度を計測することで、該液の濁度が、後続の工程に供することが可能な濁度であるか否かを調べることができる。
【0040】
また、第3流入槽7に、pH測定手段を設けることで、前記第1上澄液のpHを測定してもよい。
【0041】
前記第1上澄液のpHは、凝集工程に後続する工程に供することが可能なpHであればよい。
【0042】
有機凝集剤が添加された後のスラリーに対し、二酸化炭素水溶液を接触させることにより、スラリーに含まれるカルシウムを炭酸水中に溶出させる。ここで、カルシウムを炭酸水中に溶出させる方法は特に限定されない。溶出後に得られたスラリーは、任意構成により、後の第2分離工程(第2収集工程)S3へ移送される。
【0043】
以下、第2分離工程S3における処理について説明する。溶出後に得られたスラリーに対して、本工程において、凝集工程が行われる。凝集工程の詳細は、第1分離工程S2において説明した手順と同様である。簡潔に説明すると、前記溶出後に得られたスラリーに対して無機凝集剤が添加される。無機凝集剤が添加されることにより微細なフロックが形成される。その後、有機凝集剤が添加されることにより前記の微細なフロックが凝集され、粗大な凝集フロックが形成される。
【0044】
各凝集剤が添加されることによりスラリーが固液分離された結果、前記第1上澄液と異なる第2上澄液がスラリーから分離(収集)される。ここで、前記第2上澄液は、カルシウム化合物が含まれる二酸化炭素水溶液である。前記第2上澄液は、任意構成により、後の沈降工程へ移送される。
【0045】
以下に、沈降工程において簡潔に説明する。沈降工程S4は、前記第1上澄液に含まれる前記カルシウム化合物を沈降させる工程である。本工程において、前記第2上澄液と、前記第1上澄液とを混合することにより、二酸化炭素水溶液中のpHが上昇する。即ち、二酸化炭素中の水素イオン(H)量が減少する。二酸化炭素中の水素イオン(H)量が減少するため、下記の平衡式(A)において、炭酸水素イオン(HCO )が水素イオン(H)と炭酸イオン(CO 2-)とに分離する方向に平衡が移動する。
【0046】
HCO →H+CO 2-・・・(A)
増加した炭酸イオン(CO 2-)が、カルシウムイオンと結合して、難溶性の炭酸カルシウム(CaCO)が析出する。
【0047】
前記の工程においては、第1上澄液と第2上澄液との混合液中のCO濃度を低下させることを目的としており、前記の工程は、pHを上昇させることにより前記混合液中のCO濃度を低下させ、カルシウムを析出させる一手法である。なお、カルシウムを析出させる手法としては、前記の工程の手法に限定されない。例えば、その他、混合液中に空気を吹き込むか、または空気中に混合液を噴霧するといった方法で脱COを行いCO溶液中に溶け込んでいるカルシウムを析出させる方法がある。また、以上の方法を組合せても良い。
【0048】
析出後の炭酸カルシウム(カルシウム化合物)を沈澱させるため、前記炭酸カルシウムに対して、凝集工程が行われる。該凝集工程も、上述と同様に行われる。簡潔に説明すると、炭酸カルシウムが含まれる溶液に対して、前記無機凝集剤が添加される。前記無機凝集剤が添加されることにより、微細なフロックが形成される。その後、前記有機凝集剤が添加されることにより前記の微細なフロックが凝集され、粗大な凝集フロックが形成される。各凝集剤により、凝集フロックとして凝集された炭酸カルシウムは、任意構成により回収され、鋼の製造において再利用される。
【0049】
前記第2スラリーは、例えば、各種処理装置で適切に処理された後、排出路を通じて外部に排出されるか、あるいは、鋼の製造において再利用されてもよい。
【0050】
本発明のカルシウム化合物の回収方法は、鉱酸などpHを調整する目的で使用される薬液(pH調整薬液)を使用せず、各工程における固液分離(沈降分離)を可能とする。前記構成により、以下2点の効果が得られる。(1)pH調整薬液不使用に伴うコストの削減。(2)鉱酸を使用した場合と比べ、カルシウム化合物の析出が容易となり、カルシウム化合物の析出のために必要な工程が煩雑とならない。
【0051】
本発明のカルシウム化合物の回収方法は、製鋼スラグからカルシウム化合物を回収するプロセスにおいて、製鋼スラグに含まれる各成分(特に、固液分離が困難な炭酸カルシウム(カルシウム化合物)の沈降速度を速めることができる。
【0052】
本実施形態において、凝集工程において無機凝集剤を添加した後、有機凝集剤を添加した例を説明したが、各凝集剤を添加する順番はこれに限定されない。すなわち、例えば、凝集工程において有機凝集剤を添加した後に、無機凝集剤を添加してもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、前記無機凝集剤および前記有機凝集剤を用いた例を説明した。しかし、本実施形態のカルシウム化合物回収方法においては、前記凝集工程において、前記無機凝集剤または前記有機凝集剤の少なくともいずれか一方が添加されればよい。前記構成によれば、無機凝集剤あるいは有機凝集剤を単独添加することで、添加しない凝集剤を添加する装置を省略することができ、設備面積、イニシャルコストおよびランニングコストを削減できる。
【0054】
さらに、上述の通り、本発明のカルシウム化合物の回収方法は、pH調整薬液を使用しない。それ故、pH調整薬液を添加する装置を省略することができ、設備面積、イニシャルコストおよびランニングコストを削減できる。
【0055】
本発明の実施例について以下に説明する。まず、スラグ(製鋼スラグ)500mlを、製鋼工程を行うことにより得た。
【0056】
スラリー化および磁選工程実施後のスラグに対して、凝集剤を添加した後、撹拌装置(装置名:EUROSTAR 200 digital、IKA社製およびPTFEプロペラ撹拌棒(プロペラ径:52mm、プロペラ枚数:3枚)により、凝集剤が添加されたスラグを撹拌した。具体的に、凝集剤として、前記高分子凝集剤を用いる場合は、該凝集剤を添加後、撹拌装置により1分間急速撹拌を行った(250rpm)。その後、緩速撹拌を3分間行った(150rpm)。なお、前記緩速撹拌開始から2分30秒後に、得られたフロックの粒径(以降、フロック径と称する)を目視で確認した。フロック径の目視確認について、具体的には、予め、計測対象のフロック径と比べて縮尺が1:1となる粒子図面を、ある粒子分布範囲で複数パターン作成した。緩速撹拌時にそれらと照らし合わせて、最も近いものをフロック径とした。
【0057】
前記緩速撹拌後、撹拌機から試料を取り出し、該試料を3分間静置した。前記フロックが、各試料が注入されている容器の底に向かって沈降するまでの時間を測定した。具体的に、前記フロックが、各試料の液面から下方に向かって40mmの位置に到達する迄の時間を測定した。測定結果から、沈降速度を算出した。測定後、各試料の上澄液を採取し、該上澄液を濾過した。濾過後に得られた物質の重量を測定した。
【0058】
一方、凝集剤として、前記無機凝集剤を用いる場合は、該凝集剤を添加後、撹拌装置により3分間緩速撹拌を行った(150rpm)。なお、前記緩速撹拌開始から2分30秒後に、得られたフロックの粒径を目視で確認した。前記緩速撹拌後、撹拌機から試料を取り出し、該試料を3分間静置した。以降、凝集剤として、前記高分子凝集剤を用いる場合と同様の手順で実験を行った。
【0059】
さらに、凝集剤として、前記無機凝集剤および前記有機凝集剤を添加する場合は、無機凝集剤の後に有機凝集剤を添加後、撹拌装置により1分間急速撹拌を行った(250rpm)。その後、緩速撹拌を3分間行った(150rpm)。
【0060】
本実施例において用いる凝集剤の種類を後述の表2に示す。また、本実施例において用いる凝集剤の濃度を表1に示す。表1における「スラリーpH」は、「スラリーの液分pH」を意図する。「スラリー粒径D90%径μm」は、粒子径が小さいものから粒子数を積算していき、粒子全体の90%に達する際の粒子径を示す。ここで、「スラリー粒径D90%径μm」は、公知の、レーザ回折法による粒度分布測定法を用いて測定した。また、「スラリーpH」は、公知のガラス電極法により測定した。また、表1および後述の表3における「磁選残スラグ」は、第1分離工程後に残存したスラリーを、「最終残スラグ」は、第2分離工程後に残存したスラリーを、「炭酸Ca」は、沈降工程において沈降するカルシウム化合物を意図する。
【0061】
【表1】
【0062】
上述の実験を、第1分離工程、第2分離工程および沈降工程の各工程において行った。
【0063】
以下、第1分離工程における本試験結果を、図3を用いて、説明する。図3の符号301に示す図は、フロックの粒径と、凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図3の符号301に示す図のように、高分子凝集剤またはPACのいずれかが添加された場合、いずれにおいても、比較例(具体的に、凝集剤を添加しなかった場合に得られるスラリーの、「スラリー粒径D90%径μm」)に比べて、フロック径が増大した。
【0064】
図3の符号302に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。ここで、上記「SS」は、上澄み液を100cc採取し、その上澄み液をろ過して分離された固体分の重量測定を行い、その重量をmg/L換算することにより算出した。図3の符号302に示す図のように、凝集剤を添加しなかった場合に測定された、スラリーの濁度(目標値50mg/L)に比べ、高分子凝集剤またはPACのいずれかが添加された場合、いずれにおいても、低いSSが確認された。
【0065】
図3の符号303に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図3の符号303に示す図のように、凝集剤を添加しなかった場合に測定された沈降速度(目標値3m/hr)に比べ、高分子凝集剤またはPACが添加された結果、いずれにおいても、沈降速度が高かった。
【0066】
図3の符号304に示す図は、本試験の結果を示す像である。図3の符号304に示す図のように、凝集剤を添加しなかった場合に比べ、各凝集剤を添加した場合において、フロックの沈降が認められた。
【0067】
以下、第2分離工程における本試験結果を、図4を用いて説明する。図4の符号401に示す図は、フロック径と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図4の符号401に示す図のように、高分子凝集剤またはPACのいずれかが添加された場合、いずれにおいても、比較例に比べて、フロック径が増大した。また、高分子凝集剤およびPACが添加された場合においても、比較例に比べて、フロック径が増大した。
【0068】
図4の符号402に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図4の符号402に示す図のように、凝集剤を添加しなかった場合に測定された、スラリーの濁度(目標値50mg/L)よりも低いSSが、高分子凝集剤またはPACのいずれかが添加された場合、いずれにおいても確認された。また、高分子凝集剤およびPACが添加された場合においても、同様の結果が得られた。
【0069】
図4の符号403に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図4の符号403に示す図のように、高分子凝集剤またはPACが添加された結果、特に、高分子凝集剤を添加した場合において、より高い沈降速度が確認された。また、高分子凝集剤およびPACが添加された場合においても、目標値3m/hrより高い沈降速度が確認された。
【0070】
図4の符号404に示す図は、本試験の結果を示す像である。図4の符号404に示す図のように、凝集剤が添加されなかった場合に比べ、各凝集剤を添加した場合において、フロックの沈降が認められた。
【0071】
以下、沈降工程における本試験結果を、図5を用いて説明する。図5の符号501に示す図は、フロック径と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図5の符号501に示す図のように、PACが添加された場合、凝集剤が添加されなかった場合に比べて、フロック径が増大した。また、図5の符号501に示す図のように、高分子凝集剤が添加された場合、凝集剤が添加されなかった場合に比べて、PACを添加した場合と同様に、フロック径が増大した。
【0072】
図5の符号502に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図5の符号502に示す図のように、凝集剤が添加されなかった場合に測定された、スラリーの濁度(目標値50mg/L)よりも低いSSが、高分子凝集剤またはPACのいずれかが添加された場合、いずれにおいても確認された。
【0073】
図5の符号503に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図5の符号503に示す図のように、PACが添加された結果、目標値(3m/hr)より高い沈降速度が確認された。また、高分子凝集剤が添加された場合、PACが添加された場合に比べて、より高い沈降速度が確認された。
【0074】
図5の符号504に示す図は、本試験の結果を示す像である。図5の符号504に示す図のように、凝集剤が添加されなかった場合に比べ、各凝集剤が添加された場合において、フロックの沈降が認められた。
【0075】
図5の符号505に示す図は、本試験の結果を示す像である。図5の符号505に示す図のように、高分子凝集剤が添加された場合において、フロックの沈降が認められた。
【0076】
なお、図5に示すフロック径および沈降速度を算出するにあたり、懸濁粒子が撹拌されている状態では、目視確認を行うことが難しかった。それ故、フロックを別の清澄液に移し替えて、再び撹拌することにより、前記目視確認を行った。
【0077】
本実施例の結果から、無機凝集剤または有機凝集剤を用いることにより、製鋼スラグに含まれる成分の沈降速度が速くなったことが確認された。それ故に、製鋼スラグからカルシウム化合物を回収するプロセスにおいて、固液分離が困難な炭酸カルシウムの分離工程がボトルネックとならないことが実証された。また、本発明におけるカルシウム化合物の回収方法では、カルシウム化合物を容易に析出できることが実証された。
【0078】
〔実施例2〕
前記〔実施例1〕に記載と同様の手順で、(i)無機凝集剤を添加した後に、有機凝集剤を添加した場合、および(ii)有機凝集剤を添加した後に、無機凝集剤を添加した場合において、沈降速度などを調べた。本実施例において用いる凝集剤の濃度を、表3に示す。
【0079】
また、本実施例において用いられる無機凝集剤および有機凝集剤は、表2に示す各凝集剤と同様のものである。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
本実験を、第1分離工程、第2分離工程および沈降工程の各工程において行った。以下、第1分離工程における本試験結果を、図6を用いて、説明する。図6の符号601に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図6の符号601に示す図のように、凝集剤が添加されなかった場合に測定された、スラリーの濁度(目標値50mg/L)に比べ、上記(i)および(ii)のいずれにおいても、低いSSが確認された。
【0083】
図6の符号602に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図6の符号602に示す図のように、特に、上記(i)の場合において、より高い沈降速度が確認された。また、上記(ii)の場合においても、いずれの凝集剤が添加されなかった場合の沈降速度(3m/hr)に比べて高い沈降速度(3.6m/hr)が確認された。
【0084】
図6の符号603に示す図は、フロック径と、凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図6の符号603に示す図のように、上記(i)および(ii)のいずれにおいても、凝集剤が添加されなかった場合に比べて、フロック径が増大した。
【0085】
図6の符号604に示す図は、本試験の結果を示す像である。図6の符号604に示す図のうち、左側の像は、PACを添加した後に、高分子凝集剤を添加した場合の結果を示す。図6の符号604に示す図のうち、右側の像は、高分子凝集剤を添加した後に、PACを添加した場合の結果を示す。図6の符号604に示す図の通り、いずれの場合においても、フロックの沈降が認められた。
【0086】
以下、第2分離工程における本試験結果を、図7を用いて、説明する。図7の符号701に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図7の符号701に示す図のように、凝集剤を添加しなかった場合に測定された、スラリーの濁度(目標値50mg/L)に比べ、上記(i)および(ii)のいずれにおいても、低いSSが確認された。
【0087】
図7の符号702に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図7の符号702に示す図のように、特に、上記(i)の場合において、凝集剤が添加されなかった場合に比べ、高い沈降速度が確認された。
【0088】
図7の符号703に示す図は、フロック径と、凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図7の符号703に示す図のように、上記(i)および(ii)のいずれにおいても、凝集剤が添加されなかった場合に比べて、フロック径が増大した。
【0089】
図7の符号704に示す図は、本試験の結果を示す像である。図7の符号704に示す図のうち、左側の像は、PACを添加した後に、高分子凝集剤を添加した場合の結果を示す。図7の符号704に示す図のうち、右側の像は、高分子凝集剤を添加した後に、PACを添加した場合の結果を示す。図7の符号704に示す図の通り、いずれの場合においても、フロックの沈降が認められた。
【0090】
以下、沈降工程における本試験結果を、図8を用いて、説明する。図8の符号801に示す図は、沈降速度と凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図8の符号801に示す図のように、特に、上記(i)の場合において、非常に高い沈降速度が確認された。また、上記(ii)の場合においても、いずれの凝集剤が添加されなかった場合の沈降速度(3m/hr)に比べて、高い沈降速度(3.6m/hr)が得られた。
【0091】
図8の符号802に示す図は、スラリーの濁度SSと凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図8の符号802に示す図のように、凝集剤を添加しなかった場合に測定された、スラリーの濁度(目標値50mg/L)に比べ、上記(i)および(ii)のいずれにおいても、低いSSが確認された。
【0092】
図8の符号803に示す図は、フロック径と、凝集剤添加量との関係を示すグラフである。図8の符号803に示す図のように、上記(i)および(ii)のいずれにおいても、凝集剤が添加されなかった場合に比べて、フロック径が増大した。
【0093】
図8の符号804に示す図は、本試験の結果を示す像である。図8の符号804に示す図のうち、左側の像は、PACを添加した後に、高分子凝集剤を添加した場合の結果を示す。図8の符号804に示す図のうち、右側の像は、高分子凝集剤を添加した後に、PACを添加した場合の結果を示す。図8の符号804に示す図の通り、いずれの場合においても、フロックの沈降が認められた。
【0094】
本実施例の結果から、無機凝集剤と有機凝集剤とを添加する順番に関わらず、無機凝集剤および有機凝集剤を用いることにより、製鋼スラグに含まれる成分の沈降速度が速くなったことが確認された。それ故に、製鋼スラグからカルシウム化合物を回収するプロセスにおいて、固液分離が困難な炭酸カルシウムの分離工程がボトルネックとならないことが実証された。また、本発明におけるカルシウム化合物の回収方法では、カルシウム化合物を容易に析出できることが実証された。
【0095】
なお、本実施例において行った実験の各条件(例えば、凝集剤の添加量、スラリーの濃度および粒径など)は、あくまで一例の条件を挙げて説明した。また、本実施例において説明した各目標値も一例であり、設備やローカルコンディションにより、目標値は異なる。
【符号の説明】
【0096】
S1 磁選工程
S2 第1分離工程(第1収集工程)
S3 第2分離工程(第2収集工程)
S4 沈降工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8