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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】風呂装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/196 20220101AFI20230628BHJP
   F24H 15/104 20220101ALI20230628BHJP
   F24H 15/246 20220101ALI20230628BHJP
【FI】
F24H15/196 301M
F24H15/196 301V
F24H15/196 301B
F24H15/104
F24H15/246
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019137593
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021021521
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-170746(JP,A)
【文献】特開平01-094855(JP,A)
【文献】特開2019-027640(JP,A)
【文献】特開2001-317805(JP,A)
【文献】特開2018-071857(JP,A)
【文献】特開2004-344361(JP,A)
【文献】特開2001-235226(JP,A)
【文献】特開2002-206796(JP,A)
【文献】特開2000-055457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/196
F24H 1/00
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽を給湯先に含む給湯装置と、
前記浴槽内の浴槽水位を検出する水位検出器と、
前記給湯装置から前記浴槽への注湯経路に設けられた流量検出器と、
前記流量検出器による流量検出値の積算によって示される注湯水量が所定水量に達すると、当該所定水量の注湯前後での前記水位検出器での検出値の変化量から算出される水位上昇量によって前記所定水量を除算することによって浴槽面積を算出する測定モードを実行する制御器とを備え、
前記制御器は、入浴者の体積に相当する標準体積を、前記測定モードで算出された前記浴槽面積で除算することによって、前記浴槽に対する入退浴検知の判定値を予め算出し、かつ、
予め定められた単位時間内に前記判定値を超えて前記浴槽水位が上昇したことを前記水位検出器によって検出すると入浴を検知する一方で、前記入浴の検知後に、前記単位時間内に前記判定値を超えて前記浴槽水位が低下したことを前記水位検出器によって検出すると退浴を検知し、
前記制御器は、前記測定モードにおいて、前記所定水量の注湯による前記浴槽面積の算出を複数回実行して、複数の測定回のそれぞれでの前記浴槽面積の算出値の平均値によって前記所定水量を除算することによって、前記判定値を算出する、風呂装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記複数の測定回のそれぞれでの前記浴槽面積の算出値から、他の測定回での算出値との間の差分値が大きい算出値を除外して、前記平均値を算出する、請求項1記載の風呂装置。
【請求項3】
浴槽を給湯先に含む給湯装置と、
前記浴槽内の浴槽水位を検出する水位検出器と、
前記給湯装置から前記浴槽への注湯経路に設けられた流量検出器と、
前記流量検出器による流量検出値の積算によって示される注湯水量が所定水量に達すると、当該所定水量の注湯前後での前記水位検出器での検出値の変化量から算出される水位上昇量によって前記所定水量を除算することによって浴槽面積を算出する測定モードを実行する制御器とを備え、
前記制御器は、入浴者の体積に相当する標準体積を、前記測定モードで算出された前記浴槽面積で除算することによって、前記浴槽に対する入退浴検知の判定値を予め算出し、かつ、
予め定められた単位時間内に前記判定値を超えて前記浴槽水位が上昇したことを前記水位検出器によって検出すると入浴を検知する一方で、前記入浴の検知後に、前記単位時間内に前記判定値を超えて前記浴槽水位が低下したことを前記水位検出器によって検出すると退浴を検知し、
前記判定値の調整値を正値及び負値の少なくともいずれか1つで入力するための入力装置を更に備え、
前記制御器は、前記調整値の入力時には、前記調整値が加算された前記判定値を用いて、前記入退浴検知を実行する、風呂装置。
【請求項4】
循環ポンプの作動時に、前記浴槽に設けられた循環アダプタ及び追焚運転用の熱交換器を含んで形成される循環路を更に備え、
前記水位検出器は、前記循環路のうちの、前記循環ポンプの停止時にも前記循環アダプタから流入した前記浴槽水が浸入する位置に配置され、
前記制御器は、前記測定モードにおいて、前記浴槽水位が前記循環アダプタの水位よりも高くなるまで注湯した後に、前記所定水量の注湯による前記浴槽面積の算出を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の風呂装置。
【請求項5】
前記測定モードは、ふろ試運転時に起動される、請求項1~4のいずれか1項に記載の風呂装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風呂装置に関し、より特定的には、浴槽内の水位変化に応じて人の入退浴を検知する風呂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水位センサを設けることにより、浴槽内の水位を設定水位に保持制御する風呂装置が公知である。更に、特許第3683938号公報(特許文献1)には、予め定めた単位時間(例えば、30秒)内に現在水位が、予め実験等で求められて記憶部に予め格納された判定値(例えば、3cm)以上上昇したときに、入浴(人が浴槽に入ったこと)を検知する制御が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3683938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、浴槽への入浴及び退浴の際に生じる水位変化は、入退浴する人の体積のみならず、浴槽水面の面積に依存して異なってくる。このため、浴槽形状のバリエーションに対して入浴の判定値を一定値とすると、入退浴の検出漏れが懸念される。特に、浴槽水面の面積は、施工先での浴槽の型式によって変わるので、工場出荷段階で適正な判定値を決めることが困難である。このため、浴槽内の水位変化に基づく入退浴の検知の精度が低下することが懸念される。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、浴槽内の水位変化に基づいて、浴槽への人の入退浴を正確に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面では、風呂装置は、浴槽を給湯先に含む給湯装置と、浴槽内の浴槽水位を検出する水位検出器と、給湯装置から浴槽への注湯経路に設けられた流量検出器と、制御器とを備える。制御器は、流量検出器による流量検出値の積算によって示される注湯水量が所定水量に達すると、当該所定水量の注湯前後での水位検出器での検出値の変化量から算出される水位上昇量によって所定水量を除算することによって浴槽面積を算出する測定モードを実行する。更に、制御器は、入浴者の体積に相当する標準体積を、測定モードで算出された浴槽面積で除算することによって、浴槽に対する入退浴検知の判定値を予め算出する。制御器は、予め定められた単位時間内に判定値を超えて浴槽水位が上昇したことを水位検出器によって検出すると入浴を検知する一方で、入浴の検知後に、単位時間内に判定値を超えて浴槽水位が低下したことを水位検出器によって検出すると退浴を検知する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水位センサを備える風呂装置において、浴槽内の水位変化に基づいて、浴槽への人の入退浴を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る風呂装置の構成を示す概略図である。
図2】本実施の形態に係る風呂装置における入退浴検知に係る状態遷移図である。
図3】浴槽形状の主要なバリエーションを説明する概念図である。
図4】本発明の実施の形態に係る風呂装置の入退浴判定の判定値の測定処理を説明する第1のフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態に係る風呂装置の入退浴判定の判定値の測定処理を説明する第2のフローチャートである。
図6】算出された浴槽面積の変動チェックの目的を説明する概念図である。
図7】入退浴判定の判定値の調整処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る風呂装置の構成を示す概略図である。
図1を参照して、風呂装置300は、給湯装置100を備える。給湯装置100は、図示しない給湯栓等に加えて、浴室200に設置された浴槽20を給湯先に含む。
【0011】
給湯装置100は、筐体1、バーナ2、ファン3、熱交換器4、入水配管5、給湯配管6、バイパス弁7、バイパス配管7a、循環路8、温度センサ9,18,19、循環ポンプ10、水位センサ11、コントローラ12、ふろ注湯弁13、電気配線14、及び、リモコン30,50を備える。
【0012】
筐体1は、筐体1の内部及び外部が連通するように設けられ、燃焼ガスを排気するための排気口1aを有している。筐体1は、バーナ2、ファン3、熱交換器4、入水配管5、給湯配管6、バイパス弁7、バイパス配管7a、温度センサ9,18,19、循環ポンプ10、水位センサ11、コントローラ12、及び、ふろ注湯弁13を収容可能に構成されている。また、筐体1は、循環路8の一部を収容する。
【0013】
バーナ2は、図示しない燃料供給系から燃料ガスの供給を受けて燃焼動作するように構成される。バーナ2は、燃焼ガスを熱交換器4に供給する。バーナ2は、給湯用のバーナ2aと、追焚用のバーナ2bとを有する。
【0014】
ファン3は、バーナ2に燃焼用の空気を供給する。ファン3は、バーナ2aに燃焼用の空気を供給するファン3aと、バーナ2bに燃焼用の空気を供給するファン3bとを有する。ファン3a,3bの各々は、羽根と、羽根を回転させるためのモータとを有する。モータに電流が印加されることにより羽根が回転して燃焼用の空気を供給するように構成されている。ファン3a,3bは、それぞれ、給湯装置100の高さ方向においてバーナ2a,2bの下方に配置されている。尚、ファン3について、図1では、バーナ2a及び2bのそれぞれに1個ずつファン3a及び3bを備える構成を例示したが、複数のバーナ2a,2bに対して、1個のファンを共通に備える構成とすることも可能である。
【0015】
熱交換器4は、給湯用の熱交換器4aと、追焚用の熱交換器4bとを有する。熱交換器4a,4bは、それぞれ、給湯装置100の高さ方向においてバーナ2a,2bよりも上方に配置されている。熱交換器4a,4bは、排気口1aの近傍に配置されている。
【0016】
熱交換器4aは、バーナ2aによって供給された燃焼ガスの熱を回収する。熱交換器4bは、バーナ2bによって供給された燃焼ガスの熱を回収する。熱交換器4a,4bの各々は、バーナ2の燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する、一次熱交換器と、バーナ2からの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する、二次熱交換器とを含んでいてもよい。
【0017】
入水配管5は、入水口5aにおいて、水道配管と接続される。給湯栓の開栓時、及び/又は、ふろ注湯弁13の開放時に、水道水の供給圧力によって、入水口5aから給湯装置100へ低温水が導入される。入水配管5に設けられた温度センサ18は、入水口5aから導入された入水温度Twを検出する。
【0018】
入水配管5は、バイパス弁7を介して、缶体配管5bと、バイパス配管7aとに分岐される。缶体配管5bは、熱交換器4aの一方端と接続される。バイパス弁7の開度によって、入水配管5の全体流量に対する、バイパス配管7a及び缶体配管5bの流量比が制御される。
【0019】
熱交換器4aの他方端は、給湯配管6の一方端と接続される。入水配管5から缶体配管5bに供給された低温水は、熱交換器4aによって所定温度まで加熱されて、給湯配管6へ出力される。缶体配管5bには、流量センサ15が配置される。流量センサ15により、熱交換器4aの流量(缶体流量)を検出することができる。
【0020】
一方で、バイパス配管7aは、熱交換器4aをバイパスして給湯配管6と接続される。従って、入水配管5からバイパス配管7aへ供給された低温水は、熱交換器4aで加熱されることなく、給湯配管6へ出力される。このように、給湯装置100では、熱交換器4aから出力された高温水と、バイパス配管7aを通過した低温水とを混合して、設定温度に従った適温の湯を、給湯配管6から出力することができる。
【0021】
給湯配管6の他方端は、給湯栓(図示せず)等と接続された出湯口6aと接続される。従って、給湯栓の開放に応じて、設定温度に制御された適温の湯が、出湯口6aを経由して、給湯装置100から給湯栓へ供給される。
【0022】
給湯配管6は、浴槽20へ至る注湯配管13aと更に接続される。注湯配管13aには、ふろ注湯弁13が介挿接続される。ふろ注湯弁13は、例えば、開閉制御可能な電磁弁によって構成することができる。ふろ注湯弁13を開放することにより、給湯配管6から注湯配管13aへ湯水が出力される経路を形成することができる。これにより、給湯装置100は、給湯栓等に加えて、給湯先に浴槽20を含むことができる。本明細書では、給湯装置100から浴槽20への給湯については「注湯」と称して、出湯口6a(給湯栓等)への給湯と区別することとする。注湯配管13aには、流量センサ16が設けられる。流量センサ16により、給湯装置100から浴槽20への注湯流量を検出することができる。尚、本実施の形態では、給湯配管6での出湯温度に関わらず、ふろ注湯弁13の開放により、湯又は水が、注湯配管13aを経由して浴槽20へ供給される動作を「注湯」と称する。
【0023】
循環路8は、浴槽20の湯水21(以下、浴槽水21とも称する)を給湯装置100内で循環するためのものであり、戻り配管8a及び往き配管8bと、循環ポンプ10とを有する。戻り配管8aの一方端は、浴槽20内の循環アダプタ25と接続され、他端は、熱交換器4bの入力側と接続される。往き配管8bの一端は、熱交換器4bの出力側と接続され、他端は循環アダプタ25と接続される。
【0024】
循環ポンプ10の作動により、循環アダプタ25から吸入された浴槽水21が、戻り配管8a、熱交換器4b、及び、往き配管8bを経由して、循環アダプタ25から吐出される経路(追焚循環経路)が形成される。追焚循環経路の形成時に、バーナ2bの燃焼動作をオンすると、戻り配管8aから導入された浴槽水21を熱交換器4bで加熱するとともに、加熱後の浴槽水21が往き配管8bによって浴槽20へ供給されることにより、浴槽水21の温度を上昇することができる。
【0025】
戻り配管8aには、温度センサ9及び水位センサ11が接続されている。温度センサ9により、浴槽水21の温度を検出することができる。水位センサ11は、例えば、圧力センサによって構成されて、浴槽水21の水圧に基づいて、浴槽20内での浴槽水21の水位(以下、単に「浴槽水位」とも称する)を検知する。温度センサ9及び水位センサ11は、循環ポンプ10の停止時においても、戻り配管8a内で浴槽水21が浸入する領域に配置される。水位センサ11は「水位検出器」の一実施例に対応する。
【0026】
戻り配管8aは、更に、接続点8cにおいて、注湯配管13aと接続される。この結果、注湯配管13aから、接続点8c及び戻り配管8aを経由して浴槽20へ至る注湯経路、並びに、注湯配管13aから、接続点8c、戻り配管8a、熱交換器4b、及び、往き配管8bを経由して浴槽20へ至る注湯経路を形成することができる。これにより、給湯装置100からの注湯によるふろ湯張り運転を行うことができる。
【0027】
コントローラ12は、例えば、マイクロコンピュータを含んで構成することができる。コントローラ12は、バーナ2a,2b、ファン3a,3b、温度センサ9,18,19、循環ポンプ10、水位センサ11、ふろ注湯弁13、及び、電気配線14と電気的に接続されている。電気配線14は、図示しない電源に接続されることにより、コントローラ12に電力を供給するように構成されている。
【0028】
コントローラ12には、流量センサ15,16、温度センサ9,18,19による検出値が入力される。流量センサ15,16は、例えば、羽根車式の流量計によって構成することができる。温度センサ9,18,19は、例えば、サーミスタによって構成することができる。
【0029】
コントローラ12は、温度センサ18の検出値から入水温度Twを取得し、温度センサ19の検出値から出湯温度Thを取得し、温度センサ9の検出値から浴槽水温度Tbを取得することができる。又、コントローラ12は、流量センサ16によって検出された流量(注湯流量)の積算によって、浴槽20への注湯水量(体積)を算出することができる。即ち、流量センサ16は「流量検出器」の一実施例に対応する。
【0030】
更に、コントローラ12は、リモコン30及びリモコン50と通信可能に接続されている。尚、これらの機器間の通信は、公知のいかなる規格に従ったものであってもよく、又、有線であっても無線であってもよい。
【0031】
リモコン30は、浴室200の壁面に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン30は、情報を表示するための表示部31と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部32とを含む。表示部31は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、浴槽水位及び温度を表示可能に構成されている。操作部32は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、少なくとも、浴槽水位及び温度に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。
【0032】
リモコン50は、浴室200の外部に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン50は、代表的には台所の壁面に設置されている。リモコン50は、情報を表示するための表示部51と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部52とを含む。又、リモコン50には、点灯状態が可変制御されるランプ53が更に設けられる。
【0033】
表示部51は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、給湯設定温度、及び、ふろ設定温度等を表示可能に構成されている。操作部52は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、給湯装置100の運転に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。ランプ53は、例えば、発光ダイオード(LED)によって構成することができる。
【0034】
コントローラ12は、リモコン30,50からのユーザ等の入力設定操作に基づき、風呂装置300がユーザ指示に従って運転されるように、給湯装置100の動作を制御する。
【0035】
例えば、コントローラ12は、リモコン30,50の操作により、ふろ試運転、又は、ふろ自動運転が指示されると、ふろ湯張り運転を実行する。ふろ湯張り運転は、浴槽20において、浴槽水位が設定水位に達し、かつ、温度センサ9によって検出される浴槽水温度がふろ設定温度に達すると終了される。
【0036】
給湯装置100では、ふろ湯張り運転の終了後、浴槽水21の温度及び水位を維持する自動モードを設定することが可能である。当該自動モードの選択時には、温度センサ9によって検出された浴槽水温度が、ふろ設定温度に対応されて設定された基準温度(例えば、ふろ設定温度よりも2~3℃低く設定)よりも低下すると追焚運転が起動される。更に、水位センサ11によって検出された浴槽水位が設定水位よりも低下すると、給湯装置100から浴槽21へ追加的に注湯する足し湯運転が起動される。
【0037】
本実施の形態に係る給湯装置100は、水位センサ11によって検出される浴槽水位に基づいて、浴槽20への人の入退浴をさらに検知することができる。
【0038】
図2には、本実施の形態に係る風呂装置における入退浴判定に係る状態遷移図が示される。
【0039】
図2を参照して、コントローラ12は、ふろ湯張り運転開始前に、「入浴者無し」の状態を初期設定する。「入浴者無し」の状態において、単位時間内(例えば、30秒以内)での判定値Hthを超える浴槽水位の上昇が検出されると、人の入浴を検知して、「入浴者無し」から「入浴者有り」への状態遷移が実行される。尚、ふろ自動運転が指示された場合、浴槽20に残り湯が存在する状態からふろ湯張り運転が実行される場合がある。その場合であって、ふろ湯張り運転の開始前に「入浴者有り」を検知していたときには、ふろ湯張り運転の終了後にも「入浴者有り」の状態が維持される。
【0040】
これに対して、「入浴者有り」の状態において、上記単位時間内での判定値Hthを超える浴槽水位の低下が検出されると、人の退浴を検知して、「入浴者有り」から「入浴者無し」への状態遷移が実行される。
【0041】
尚、追焚運転等で循環ポンプ10が作動している期間では、水位センサ11によって浴槽水位を検出することができない。従って、循環ポンプ10の作動期間を挟んで、循環ポンプ10の作動前及び停止後の間で、水位センサ11によって検出された浴槽水位が判定値Hthを超えて上昇又は低下した場合には、単位時間内での水位変動であるか否かに関わらず、入退浴を検知するようにしてもよい。
【0042】
例えば、リモコン50のランプ53が、「入浴者有り」の状態時に点灯されるように制御されることで、浴室200の外部からの、高齢者等の入退浴状態の見守り機能を実現できる。更に、当該見守り機能の一環として、「入浴者有り」の状態が開始されてから、所定時間(例えば、20分程度)が経過しても、「入浴者有り」の状態が継続している場合には、ユーザの注意を促すメッセージを、リモコン50から出力することも可能である。
【0043】
図2に示された入退浴判定では、水位変化に係る判定値Hthを適切に設定することが重要である。入退浴の際に生じる水位変化は、浴槽水面の面積(以下、単に「浴槽面積」とも称する)に依存して異なってくるが、浴槽形状には種々のバリエーションが存在する。
【0044】
図3は、浴槽形状の主要なバリエーションを説明する概念図である。図3には、浴槽20の概念的な断面図が示される。
【0045】
図3(a)を参照して、いわゆる和式の浴槽20では、浴槽面積が比較的小さく、かつ、浴槽水位に依らず浴槽面積はほぼ一定である。
【0046】
これに対して、図3(b)に示される、いわゆる洋式の浴槽20では、浴槽面積が比較的大きく、かつ、斜面形状によって、浴槽面積が水位によって変化する。図3(a)及び(b)において、循環アダプタ25は、入浴時に想定される標準的な浴槽水位よりも下側領域において浴槽20の壁面に設けられる。
【0047】
更に、図3(c)に示される浴槽20では、半身浴用の腰掛け台としても利用可能な段差部23が設けられる。図3(c)の浴槽20では、段差部23の高さに相当する浴槽水位H0を挟んで浴槽面積が大きく変化する。循環アダプタ25は、段差部23の側面に設けられることが一般的である。
【0048】
図3(a)~(c)に共通して、水位センサ11(図1)によって浴槽水位を検出するには、循環アダプタ25が水没していること、即ち、浴槽水位が循環アダプタ25の設定位置に対応する基準水位Hrよりも高いことが必要である。
【0049】
本実施の形態に係る給湯装置では、図4及び図5に示すフローチャートに従う制御処理により、入退浴判定の判定値の測定モードが実行される。図4及び図5に示された測定モードは、例えば、浴槽20の施工後に、リモコン30,50の操作により、ふろ試運転の起動が指示されると、コントローラ12によって実行される。
【0050】
図4を参照して、コントローラ12は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110によりふろ注湯弁13を開放して、予め定められた水量(体積)Viniの初期注湯を実行する。ふろ注湯弁13の開放時からの流量センサ16による流量検出値の時間積算値(注湯水量)がViniを超えるまで、S110による初期注湯が継続される。
【0051】
浴槽20に残り湯が存在していても、浴槽水位が基準水位Hrより低い状態では、水位センサ11によって浴槽水位を検出できないため、このような場合を考慮して、例えば、Viniを数リットル程度として、初期注湯が実行される。
【0052】
コントローラ12は、初期注湯(S110)が終了すると、S120により、循環判定を実行する。S120では、循環ポンプ10の作動により、循環路8に流量が生じるか否かが、循環路8に設けられた、図示しない、流量センサ又は水流スイッチの検出値によって判定される。コントローラ12は、循環路8での流量の発生が検出されると(S120がYES判定)、S130以降の処理を開始する。S120がYES判定とされて循環判定が終了すると、循環ポンプ10は停止される。
【0053】
一方で、循環路8に流量が検出されないときには(S120がNO判定)、S125により、予め定められた水量(体積)V0の追加注湯が実行される。追加注湯が終了すると、再び、S120による循環判定が実行される。循環判定(S120)がYES判定となるまで、S110による追加注湯は、繰り返し実行される。
【0054】
この結果、初期注湯前に浴槽水が存在していない場合(浴槽水位=0)を含めて、S120がYES判定となる段階では、図3(a)~(c)のいずれの浴槽20においても、水位センサ11によって浴槽水位を検出できる状態となる。浴槽水位が基準水位Hr以上となってからS130以降の測定を行うことで、ふろ自動運転での水位検出用の水位センサ11を共用して、入退浴判定の判定値の測定処理を実行することが可能となる。
【0055】
又、初期注湯(Vini)及び追加注湯(V0)を段階的に実行することで、浴槽20に残り湯がある状態から測定モードが開始される場合に、過剰に注湯されることを防止できる。
【0056】
コントローラ12は、S130では、測定のための初期処理として、測定回数を示すパラメータi(i:自然数)を初期化する(i=1)。更に、コントローラ12は、S140により、当該タイミングでの水位センサ11の検出値に基づき、段階注湯前の浴槽水位Haを記憶する。
【0057】
コントローラ12は、S140による浴槽水位Haの記憶後、S150により、段階的に浴槽水位を上昇させるための段階注湯を実行する。S150では、ふろ注湯弁13の開放時からの流量センサ16による流量検出値の時間積算値(注湯水量)が所定水量(体積)Vxに達すると、ふろ注湯弁13が閉止される。
【0058】
コントローラ12は、S160により、当該タイミングでの水位センサ11の検出値に基づき、段階注湯(S150)終了後の浴槽水位Hbを記憶する。更に、S170では、段階注湯前後での浴槽水位Ha(S140)及び浴槽水位Hb(S160)の差から、水位上昇量ΔHiが算出される。
【0059】
コントローラ12は、S180により、段階注湯(S150)での注湯水量Vxを水位上昇量ΔHi(S170)で除算することによって、第i回目の測定での浴槽面積Siを算出する(Si=Vx/ΔHi)。S190では、S180で算出された浴槽面積Siが正常値であるか否かの上下限チェックが実行される。
【0060】
浴槽面積Siが、予め定められた上限値及び下限値の範囲外の異常値である場合(S190のNO判定時)には、S180で算出された浴槽面積Siを記憶することなく、処理S140に処理が戻される。これにより、S140~S180の処理によって、第i回目の測定が再度実行される。
【0061】
浴槽面積Siが、予め定められた上限値及び下限値の範囲内の正常値である場合(S190のYES判定時)には、S200により、第i回目の測定値が確定されて、S180で算出された浴槽面積Siが記憶される。更に、コントローラ12は、S210により、パラメータiを1増加して、処理を図5のS220に進める。S220では、増加後のiが所定値N(N:2以上の整数)に達したか否かが判定される。
【0062】
i<Nのとき、即ち、S200で記憶された浴槽面積Siの個数がN未満であるときには(S220のNO判定時)、S140に処理が戻されて、S140~S190により、次の(i+1)回目の測定が実行される。
【0063】
S220でi≧Nのときには(S220のYES判定時)、正常に測定された浴槽面積Siが少なくともN個記憶されている。従って、コントローラ12は、S240により、記憶された複数の浴槽面積(例えば、S1~SNのN個)の平均値Savを算出する。
【0064】
コントローラ12は、S250により、入浴者(人間)の体積に対応して予め定められた標準体積Vmを、S240で算出された浴槽面積の平均値Savで除算することにより、基準判定値Htaを算出する。例えば、標準体積Vmは、比較的小柄な高齢者の入退浴を検知できるように、当該高齢者の体格を考慮して定めることが好ましい。コントローラ12は、S260により、S250で算出された基準判定値Htaを記憶して、判定値の測定モードを終了する。
【0065】
測定モードにおいて、コントローラ12は、S240の実行前に、点線で表記したS230により、算出された浴槽面積Siの変動チェック処理を実行することが可能である。
【0066】
図6は、S230による浴槽面積の変動チェック処理の目的を説明する概念図である。
図6では、図3(c)に示された、段差部23を有する浴槽20において、初期注湯(S110)終了後の初期水面400が、循環アダプタ25が水没する水位よりも高く、かつ、浴槽水位H0よりも低い状況が想定される。即ち、初期水面400の状態では、S120での循環判定はYES判定とされる。
【0067】
図6を参照して、初期注湯が完了した状態(初期水面400)から、i=1~5の5回に亘ってS140~S220の処理が実行されて、水位上昇量ΔH1~ΔH5が測定されて、浴槽面積S1~S5が算出される。複数回の測定での平均値を求めることにより、図3(b)及び図3(c)のように、浴槽水位に従って浴槽面積が緩やかに変化する浴槽形状においても、浴槽面積を適切に算出することができる。
【0068】
しかしながら、浴槽水位H0よりも下の領域、及び、浴槽水位H0を含む領域で発生する水位上昇量ΔH1及びΔH2は、浴槽水位H0よりも上の領域内のみでの水位上昇量ΔH3~ΔH5よりも大きい。従って、入退浴の判定値を正確に設定するには、ΔH1及びΔH2に対応する浴槽面積S1及びS2を除外して、平均値Sav(S240)を算出することが好ましい。
【0069】
従って、S230では、N個の水位上昇量ΔH1~ΔHNから算出された浴槽面積S1~SNの各々について、他の浴槽面積(算出値)との差分値が大きいものを除外するための、変動チェック処理が実行される。
【0070】
例えば、S230では、浴槽面積S1~SNの各々について、他の(N-1)個の浴槽面積との間の差分値を算出する。一例として、浴槽面積S1については、ΔS12=S2-S1、ΔS13=S3-S1、…、ΔS1N=SN-S1の(N-1)個の差分値が算出される。
【0071】
更に、当該差分値の基準値ΔSthを設けることで、浴槽面積S1~SNの各々について、(N-1)個の差分値のうち、基準値ΔSthを超える差分値の個数が求められる。そして、基準値ΔSthを超える差分値の個数Nfが、予め定められた判定値以上である場合には、当該浴槽水位を平均値の算出対象から除外することができる。
【0072】
例えば、図6では、浴槽面積S1及びS2では、Nf=4となり、浴槽面積S3~S5の各々では、Nf=2となることが想定される。従って、例えばこのケースでは判定値=4とすると、Nfに基づいて、浴槽面積S1及びS2を除外して、浴槽面積の平均値Savを算出することが可能である。
【0073】
尚、S230の処理による除外後に、平均値Savの算出対象となる浴槽面積の個数が不足する場合には、一時的にS220での判定値Nの値を増大させるとともに、処理をS140に戻してもよい。このようにすると、浴槽水位H0よりも上面領域において、判定値Nの増加分に対応した回数だけ、所定湯量Vxの給湯に伴う水面上昇量を測定して、浴槽面積の算出値を追加的に得ることができる。この結果、平均値Savの算出対象となる浴槽面積の算出値を確保することができる。
【0074】
又、S230の処理による除外後に、平均値Savの算出対象となる浴槽面積の個数が不足する場合において、高水位側の複数の浴槽面積のみから平均値Savを算出してもよく、或いは、平均値算出処理の代わりに、最も高い水位での浴槽面積をそのまま平均値Savとしてもよい。
【0075】
図7には、入退浴判定の判定値の調整処理を説明するフローチャートが示される。
図7を参照して、コントローラ12は、S310により、判定値の調整値αの設定有無を確認する。例えば、調整値αは、リモコン30の操作部32、又は、リモコン50の操作部52の所定操作によって入力することができる。調整値αは、正値(α>0)、及び、負値(α<0)のいずれにも設定することができる。即ち、リモコン30及び50の少なくとも一方は「入力装置」の一実施例に対応する。正の調整値αを入力すると、入退浴が検知され難くなるので、誤検出を抑制することができる。一方で、負の調整値αを入力すると、入退浴が検知され易くなるので、検知感度を高めることができる。
【0076】
コントローラ12は、調整値αが設定されている場合(S310のYES判定時)には、S320により、入退浴検知(図2)での判定値Hthを、基準判定値Hta(図5)と調整値αとの加算によって設定する(Hth=Hta+α)。一方で、調整値αが設定されていない場合(S310のNO判定時)には、S330により、基準判定値Hta(図5)がそのまま判定値Hthに設定される(Hth=Hta)。尚、調整値αが設定されていない場合を、調整値α=0とみなすと、S310~S330の処理は、Hth=Hta+αの算出式の実行によって、一括化することも可能である。
【0077】
尚、上記のように、調整値αを正値及び負値のいずれにも入力可能とする構成の他、正値のみ、或いは、負値のみで調整値αを入力可能としてもよい。即ち、調整値αについては、正値及び負値の少なくともいずれか1つで入力することが可能である。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態に係る風呂装置では、ふろ試運転時に既知水量の注湯に伴う水位上昇量の測定結果から求められた浴槽面積に従って、入退浴検出の判定値を浴槽形状に合わせて適切に設定することができる。この結果、水位センサの出力に基づいて、浴槽への人の入退浴を正確に検知することが可能となる。特に、ふる試運転時に図4及び図5の制御処理を実行することで、入退浴検出の判定値を自動的に算出することが可能であるので、施工者の負荷を増大させることなく、施工される種々の形状の浴槽20に対応して、正確な入退浴検知を実現することができる。
【0079】
更に、循環アダプタ25が水没する水位までの初期注湯後に上記測定を開始することにより、循環路8に設けられた水位センサ11を用いて、即ち、測定用の専用センサを要することなく、浴槽面積を算出するための水位上昇量を測定することが可能である。
【0080】
又、リモコン30,50等からの調整値αの入力によって、入退浴検知の対象となるユーザの体格に合わせた判定値の微調整が可能となるので、入退浴の検知精度を更に高めることが可能である。
【0081】
上述のように、図4及び図5の制御処理時において、浴槽20へは、湯又は水のいずれが「注湯」されても、水位上昇量の測定による浴槽面積の算出が可能である点について、確認的に記載する。即ち、図4及び図5の制御処理時において、バーナ2aは停止状態及び作動状態のいずれであってもよい。又、ふろ試運転とは別個に、本実施の形態に係る測定モードを単独で起動することも可能である。
【0082】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
1 筐体、1a 排気口、2,2a,2b バーナ、3,3a,3b ファン、4,4a,4b 熱交換器、5 入水配管、5a 入水口、5b 缶体配管、6 給湯配管、6a 出湯口、7 バイパス弁、7a バイパス配管、8 循環路、8a 戻り配管、8b 往き配管、8c 接続点、9,18,19 温度センサ、10 循環ポンプ、11 水位センサ、12 コントローラ、13 ふろ注湯弁、13a 注湯配管、14 電気配線、15,16 流量センサ、20 浴槽、21 浴槽水、23 段差部、25 循環アダプタ、30,50 リモコン、31,51 表示部、32,52 操作部、53 ランプ、100 給湯装置、200 浴室、300 風呂装置、400 初期水面、H0,Ha,Hb 浴槽水位、ΔHi 水位上昇量、Hr 基準水位、Hta 基準判定値、Hth 判定値(入退浴検知)、Vx 水量(段階注湯)、Vini 水量(初期注湯)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7