(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】円環状樹脂部を含む成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20230628BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20230628BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20230628BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/27
B29C45/37
B29C33/42
(21)【出願番号】P 2019191875
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】中村 成嘉
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196766(JP,A)
【文献】特開2017-013417(JP,A)
【文献】特開2005-305779(JP,A)
【文献】特開2018-009656(JP,A)
【文献】特開2019-171858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B29C 45/27
B29C 45/37
B29C 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状樹脂部を含む成形品の製造方法であって、
前記成形品は、
1次成形用金型を用いた1次成形工程で成形する、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向肉盗み部を有する円環状内側樹脂部材と、
2次成形用金型を用いた2次成形工程で成形する、前記円環状内側樹脂部材の外径側を被う、前記円環状内側樹脂部材と異材質である円環状外側樹脂部材と、
を含み、
前記製造方法は、
前記1次成形用金型のキャビティ内へ1次成形用溶融樹脂を注入するゲート、及び前記2次成形用金型のキャビティ内へ2次成形用溶融樹脂を注入するゲートを、
ピンゲート、トンネルゲート又はサイドゲートとし、
前記1次成形工程は、
前記円環状内側樹脂部材に前記軸方向肉盗み部を形成するための、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向凸部を有するインサートコアを用い、
前記インサートコアを前記1次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
前記2次成形工程は、
前記1次成形工程を経た前記円環状内側樹脂部材及び前記インサートコアを前記2次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
又は、
前記1次成形工程を経た前記円環状内側樹脂部材及び前記インサートコアから前記インサートコアを取り外して前記円環状内側樹脂部材のみにし、
前記円環状内側樹脂部材の前記軸方向肉盗み部に嵌合する軸方向凸部を有する前記2次成形用金型を用い、
前記円環状内側樹脂部材の前記軸方向肉盗み部を前記2次成形用金型の前記軸方向凸部に嵌合させるように、前記円環状内側樹脂部材を前記2次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
前記2次成形工程における前記2次成形用溶融樹脂の合流部であるウェルドが、隣り合う前記軸方向肉盗み部間のリブ部の外径側に位置するように、前記2次成形用金型の前記キャビティ内へ前記2次成形用溶融樹脂を注入する前記ゲートを前記2次成形用金型に配置してなることを特徴とする、
円環状樹脂部を含む成形品の製造方法。
【請求項2】
円環状樹脂部を含む成形品の製造方法であって、
前記成形品は、
インサート品である金属部材と、
1次成形用金型を用いた1次成形工程で成形する、前記金属部材の外径側を被う、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向肉盗み部を有する円環状内側樹脂部材と、
2次成形用金型を用いた2次成形工程で成形する、前記円環状内側樹脂部材の外径側を被う、前記円環状内側樹脂部材と異材質である円環状外側樹脂部材と、
からなり、
前記製造方法は、
前記1次成形用金型のキャビティ内へ1次成形用溶融樹脂を注入するゲート、及び前記2次成形用金型のキャビティ内へ2次成形用溶融樹脂を注入するゲートを、
ピンゲート、トンネルゲート又はサイドゲートとし、
前記1次成形工程は、
前記円環状内側樹脂部材に前記軸方向肉盗み部を形成するための、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向凸部を有するインサートコアを用い、
前記金属部材に前記インサートコアを嵌合させた連結体を前記1次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
前記2次成形工程は、
前記1次成形工程を経た前記連結体及び前記円環状内側樹脂部材を前記2次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
又は、
前記1次成形工程を経た前記連結体及び前記円環状内側樹脂部材から前記インサートコアを取り外して前記金属部材及び前記円環状内側樹脂部材のみにし、
前記円環状内側樹脂部材の前記軸方向肉盗み部に嵌合する軸方向凸部を有する前記2次成形用金型を用い、
前記円環状内側樹脂部材の前記軸方向肉盗み部を前記2次成形用金型の前記軸方向凸部に嵌合させるように、前記金属部材及び前記円環状内側樹脂部材を前記2次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
前記2次成形工程における前記2次成形用溶融樹脂の合流部であるウェルドが、隣り合う前記軸方向肉盗み部間のリブ部の外径側に位置するように、前記2次成形用金型の前記キャビティ内へ前記2次成形用溶融樹脂を注入する前記ゲートを前記2次成形用金型に配置してなることを特徴とする、
円環状樹脂部を含む成形品の製造方法。
【請求項3】
前記1次成形工程における前記1次成形用溶融樹脂の合流部であるウェルドが、隣り合う前記軸方向肉盗み部間に位置するように、前記1次成形用溶融樹脂を注入する前記ゲートを前記1次成形用金型に配置してなる、
請求項1又は2に記載の円環状樹脂部を含む成形品の製造方法。
【請求項4】
前記1次成形工程における前記ゲートの数及び前記2次成形工程における前記ゲートの数を複数かつ同数として、前記1次成形工程における前記ゲート及び前記2次成形工程における前記ゲートを周方向に配置するとともに、
前記2次成形工程の前記ゲートの位置を、
前記1次成形工程で成形した前記円環状内側樹脂部材のゲート跡及び当該ゲート跡に隣り合うウェルドラインの周方向中間又はその近傍としてなる、
請求項1~3の何れか1項に記載の円環状樹脂部を含む成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次成形工程及び2次成形工程を有する円環状樹脂部を含む成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1次成形工程及び2次成形工程を経て製造される円環状樹脂部を含む成形品として、前記1次成形工程で成形する、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向肉盗み部を有する円環状内側樹脂部材と、前記2次成形工程で成形する、前記円環状内側樹脂部材の外径側を被う、前記円環状内側樹脂部材と異材質である円環状外側樹脂部材とを含むものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような円環状成形品の製造において、前記2次成形工程では、円環状内側樹脂部材(特許文献1では円環状内径側部材4)の軸方向肉盗み部(特許文献1では肉盗み部D)に、インサートコアの軸方向凸部(特許文献1ではインサートコア7の凸部7B)を嵌合させた状態で射出成形を行う。
【0004】
一方、1次成形工程及び2次成形工程を有する円環状成形品の製造方法として、1次成形工程及び2次成形工程に用いる金型のゲートを、ピンゲート、トンネルゲート又はサイドゲートとし、成形品で強度低下が懸念される特異点であるゲート位置及びウェルド位置、又はウェルド位置同士が径方向に重ならないようにするものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-196766号公報
【文献】特開2017-013417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1次成形品である円環状内側樹脂部材が周方向に離間して並ぶ複数の軸方向肉盗み部を有するものである場合において、前記円環状内側樹脂部材の軸方向肉盗み部にインサートコアの軸方向凸部を嵌合させずに、前記軸方向肉盗み部を開放した状態で前記2次成形工程を行うと、2次成形用金型のキャビティ内へゲートから注入される2次成形用溶融樹脂の圧力による、前記軸方向肉盗み部の周りの変形や割れの発生等が懸念される。
【0007】
したがって、1次成形品である円環状内側樹脂部材が、特許文献1のように周方向に離間して並ぶ複数の軸方向肉盗み部を有するものであり、前記円環状内側樹脂部材の軸方向肉盗み部にインサートコアの軸方向凸部を嵌合させた状態で前記2次成形工程において2次成形品を成形する製造方法について検討する。
【0008】
前記2次成形工程に用いる金型のゲートを、特許文献2のように、ピンゲート、トンネルゲート又はサイドゲートとした場合、前記肉盗み部(前記インサートコアの軸方向凸部)の外径側に、溶融樹脂の合流部であるウェルドが位置することがある。
【0009】
溶融樹脂充填後の保圧の際にウェルドには他の部位よりも大きな圧力が掛かり、当該圧力により、1次成形品である円環状内側樹脂部材は外径側から内径側へ押圧され、それによりインサートコアの軸方向凸部にも押圧力が作用する。インサートコアの軸方向凸部は片持ち梁状であるので、前記軸方向凸部の根元部分に大きなせん断力及び曲げモーメントが作用する。したがって、前記保圧の際におけるウェルドに掛かる大きな圧力により、特にインサートコアの軸方向凸部の軸方向の高さに対して径方向の厚みが小さい場合において、前記軸方向凸部が破損又は破断するおそれがある。
【0010】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、1次成形工程及び2次成形工程を経て円環状樹脂部を製造し、前記円環状樹脂部が前記1次成形工程で成形する複数の軸方向肉盗み部を有するものであり、前記軸方向肉盗み部にインサートコアの軸方向凸部を嵌合させた状態で前記2次成形工程を行う製造方法、又は、前記軸方向肉盗み部に2次成形用金型の軸方向凸部を嵌合させた状態で前記2次成形工程を行う製造方法において、前記軸方向凸部の破損又は破断を防止して金型寿命を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0012】
〔1〕
円環状樹脂部を含む成形品の製造方法であって、
前記成形品は、
1次成形用金型を用いた1次成形工程で成形する、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向肉盗み部を有する円環状内側樹脂部材と、
2次成形用金型を用いた2次成形工程で成形する、前記円環状内側樹脂部材の外径側を被う、前記円環状内側樹脂部材と異材質である円環状外側樹脂部材と、
を含み、
前記製造方法は、
前記1次成形用金型のキャビティ内へ1次成形用溶融樹脂を注入するゲート、及び前記2次成形用金型のキャビティ内へ2次成形用溶融樹脂を注入するゲートを、
ピンゲート、トンネルゲート又はサイドゲートとし、
前記1次成形工程は、
前記円環状内側樹脂部材に前記軸方向肉盗み部を形成するための、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向凸部を有するインサートコアを用い、
前記インサートコアを前記1次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
前記2次成形工程は、
前記1次成形工程を経た前記円環状内側樹脂部材及び前記インサートコアを前記2次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
又は、
前記1次成形工程を経た前記円環状内側樹脂部材及び前記インサートコアから前記インサートコアを取り外して前記円環状内側樹脂部材のみにし、
前記円環状内側樹脂部材の前記軸方向肉盗み部に嵌合する軸方向凸部を有する前記2次成形用金型を用い、
前記円環状内側樹脂部材の前記軸方向肉盗み部を前記2次成形用金型の前記軸方向凸部に嵌合させるように、前記円環状内側樹脂部材を前記2次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
前記2次成形工程における前記2次成形用溶融樹脂の合流部であるウェルドが、隣り合う前記軸方向肉盗み部間のリブ部の外径側に位置するように、前記2次成形用金型の前記キャビティ内へ前記2次成形用溶融樹脂を注入する前記ゲートを前記2次成形用金型に配置してなることを特徴とする、
円環状樹脂部を含む成形品の製造方法。
【0013】
〔2〕
円環状樹脂部を含む成形品の製造方法であって、
前記成形品は、
インサート品である金属部材と、
1次成形用金型を用いた1次成形工程で成形する、前記金属部材の外径側を被う、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向肉盗み部を有する円環状内側樹脂部材と、
2次成形用金型を用いた2次成形工程で成形する、前記円環状内側樹脂部材の外径側を被う、前記円環状内側樹脂部材と異材質である円環状外側樹脂部材と、
からなり、
前記製造方法は、
前記1次成形用金型のキャビティ内へ1次成形用溶融樹脂を注入するゲート、及び前記2次成形用金型のキャビティ内へ2次成形用溶融樹脂を注入するゲートを、
ピンゲート、トンネルゲート又はサイドゲートとし、
前記1次成形工程は、
前記円環状内側樹脂部材に前記軸方向肉盗み部を形成するための、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向凸部を有するインサートコアを用い、
前記金属部材に前記インサートコアを嵌合させた連結体を前記1次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
前記2次成形工程は、
前記1次成形工程を経た前記連結体及び前記円環状内側樹脂部材を前記2次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
又は、
前記1次成形工程を経た前記連結体及び前記円環状内側樹脂部材から前記インサートコアを取り外して前記金属部材及び前記円環状内側樹脂部材のみにし、
前記円環状内側樹脂部材の前記軸方向肉盗み部に嵌合する軸方向凸部を有する前記2次成形用金型を用い、
前記円環状内側樹脂部材の前記軸方向肉盗み部を前記2次成形用金型の前記軸方向凸部に嵌合させるように、前記金属部材及び前記円環状内側樹脂部材を前記2次成形用金型内に配置して射出成形を行い、
前記2次成形工程における前記2次成形用溶融樹脂の合流部であるウェルドが、隣り合う前記軸方向肉盗み部間のリブ部の外径側に位置するように、前記2次成形用金型の前記キャビティ内へ前記2次成形用溶融樹脂を注入する前記ゲートを前記2次成形用金型に配置してなることを特徴とする、
円環状樹脂部を含む成形品の製造方法。
【0014】
〔3〕
前記1次成形工程における前記1次成形用溶融樹脂の合流部であるウェルドが、隣り合う前記軸方向肉盗み部間に位置するように、前記1次成形用溶融樹脂を注入する前記ゲートを前記1次成形用金型に配置してなる、
前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の円環状樹脂部を含む成形品の製造方法。
【0015】
〔4〕
前記1次成形工程における前記ゲートの数及び前記2次成形工程における前記ゲートの数を複数かつ同数として、前記1次成形工程における前記ゲート及び前記2次成形工程における前記ゲートを周方向に配置するとともに、
前記2次成形工程の前記ゲートの位置を、
前記1次成形工程で成形した前記円環状内側樹脂部材のゲート跡及び当該ゲート跡に隣り合うウェルドラインの周方向中間又はその近傍としてなる、
前記〔1〕~前記〔3〕の何れかに記載の円環状樹脂部を含む成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る円環状樹脂部を含む成形品の製造方法によれば、主に以下に示すような効果を奏する。
【0017】
2次成形工程における2次成形用溶融樹脂の合流部であるウェルドが、隣り合う軸方向肉盗み部間のリブ部の外径側に位置するように、2次成形用金型のキャビティ内へ2次成形用溶融樹脂を注入するゲートを2次成形用金型に配置している。それにより、溶融樹脂充填後の保圧の際に他の部位よりも大きな圧力が掛かるウェルドが、インサートコアの軸方向凸部の外径側に位置しないことから、片持ち梁状である前記軸方向凸部に作用するせん断力及び曲げモーメントを低減できるので、前記軸方向凸部の破損又は破断を抑制できる。よって、金型寿命を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明の実施の形態に係る円環状樹脂部を含む成形品の製造方法で製造された成形品に対して、その外周面に機械加工で歯を形成したものである芯金入り樹脂歯車(芯金が円環状スリーブである場合)の斜視図である。
【
図1B】
図1Aの芯金入り樹脂歯車を下方から見た斜視図である。
【
図2A】本発明の実施の形態に係る円環状樹脂部を含む成形品の製造方法で製造された成形品(外周面に他の歯車と噛み合う歯を形成する前の芯金入り樹脂歯車)の斜視図である。
【
図3A】円環状スリーブである芯金の斜視図である。
【
図3C】芯金にインサートコアを嵌合した連結体の斜視図である。
【
図4A】1次成形工程で製造された1次成形品をインサートコアとともに1次成形用金型から取り出した状態を示す斜視図である。
【
図4B】2次成形工程で製造された2次成形品をインサートコアとともに2次成形用金型から取り出した状態を示す斜視図である。
【
図5A】分離状態の芯金及びインサートコアを示す縦断面図である。
【
図5B】芯金にインサートコアを嵌合した連結体を示す縦断面図である。
【
図6】縦断面図であり、(a)は
図5Bの連結体を1次成形用金型にセットして型締めした状態、(b)は1次成形用金型に1次成形用溶融樹脂を注入した状態、(c)は1次成形用金型を開いて前記金型から取り出した1次成形品及びインサートコアを示している。
【
図7】縦断面図であり、(a)は
図6(c)の1次成形品及びインサートコアを2次成形用金型にセットして型締めした状態、(b)は2次成形用金型に2次成形用溶融樹脂を注入した状態、(c)は2次成形用金型を開いて前記金型から取り出した2次成形品及びインサートコアを示している。
【
図8】
図7(c)の2次成形品及びインサートコアを分離した状態を示す縦断面図である。
【
図9A】本発明の実施の形態に係る円環状樹脂部を含む成形品の製造方法で製造された成形品の平面図であり、1次成形工程におけるゲート位置及びウェルド位置、並びに2次成形工程におけるゲート位置及びウェルド位置も示している。
【
図9B】本発明の実施の形態に係る円環状樹脂部を含む成形品の製造方法で製造された成形品の底面図であり、1次成形工程におけるゲート位置及びウェルド位置、並びに2次成形工程におけるゲート位置及びウェルド位置も示している。
【
図10A】本発明の実施の形態に係る円環状樹脂部を含む成形品の製造方法で製造された成形品に対して、その外周面に機械加工で歯を形成したものである芯金入り樹脂歯車(芯金がシャフト部を有するものである場合)の斜視図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る円環状樹脂部を含む成形品の製造方法で製造された成形品(外周面に他の歯車と噛み合う歯を形成する前の芯金入り樹脂歯車)の縦断面図である。
【
図12】縦断面図であり、(a)は芯金にインサートコアを嵌合した連結体を1次成形用金型にセットして型締めした状態、(b)は1次成形用金型に1次成形用溶融樹脂を注入した状態、(c)は1次成形用金型を開いて前記金型から取り出した1次成形品及びインサートコアを示している。
【
図13】縦断面図であり、(a)は
図12(c)の1次成形品及びインサートコアを2次成形用金型にセットして型締めした状態、(b)は2次成形用金型に2次成形用溶融樹脂を注入した状態、(c)は2次成形用金型を開いて前記金型から取り出した2次成形品及びインサートコアを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
本明細書において、芯金入り樹脂歯車1の回転軸の方向を「軸方向」といい、前記回転軸の軸芯を基準として「径方向」及び「周方向」を定義する。
【0021】
<円環状樹脂部を含む成形品>
図1A及び
図1Bの斜視図に示す芯金入り樹脂歯車1は、
図2Aの斜視図及び
図2Bの縦断面図に示す本発明の実施の形態に係る円環状樹脂部を含む成形品の製造方法で製造された成形品Aに対して、円環状樹脂部B(円環状外側樹脂部材4)の外周面に、機械加工で、他の歯車と噛み合う歯4Aを形成したものである。芯金入り樹脂歯車1は、例えば、電動パワーステアリングに使われるウォームギヤのウォームホイールとして用いる。
【0022】
芯金入り樹脂歯車1(円環状樹脂部Bを含む成形品A)は、金属部材であり円環状スリーブである芯金2、及び円環状樹脂部Bからなる。円環状樹脂部Bは、芯金2の外径側を被う円環状内側樹脂部材3、及び円環状内側樹脂部材3の外径側を被う円環状外側樹脂部材4とからなる。
【0023】
円環状内側樹脂部材3は、例えばガラス繊維等の強化材で強化した合成樹脂製、円環状外側樹脂部材4は、例えば前記強化材で強化しない合成樹脂製であり、円環状内側樹脂部材3及び円環状外側樹脂部材4は異材質である。「異材質」には、ポリマーが異なる場合だけでなく、ポリマーが同じ場合で強化材の含有量が異なる場合も含む。
【0024】
図1Bの斜視図、及び
図2Bの縦断面図に示すように、芯金入り樹脂歯車1(円環状樹脂部Bを含む成形品A)は、円環状内側樹脂部材3に、周方向に離間して並ぶ複数の軸方向肉盗み部3Aを有する。周方向に隣り合う軸方向肉盗み部3A,3A間にはリブ部3Bがある。
【0025】
このような芯金入り樹脂歯車1(円環状樹脂部Bを含む成形品A)は、円環状樹脂部Bを合成樹脂製としているとともに、複数の軸方向肉盗み部3Aを有するので、全体が金属製のものに対して大幅に軽量化されている。その上、複数の軸方向肉盗み部3Aを有することから、円環状内側樹脂部材3の体積が小さくなり、固化時間が短縮される。その結果成形サイクルを短縮できるとともに、収縮量が小さくなるので、ヒケ、ボイドなどを抑制できる。
【0026】
<円環状樹脂部を含む成形品の製造方法>
次に、本発明の実施の形態に係る円環状樹脂部Bを含む成形品Aの製造方法ついて説明する。
【0027】
成形品Aの製造方法においては、専用の2色成形機を用いずに、1次成形用金型を備えた第1射出成形機、及び2次成形用金型を備えた第2射出成形機の、2台の汎用成形機を用いる。
【0028】
(金属部材にインサートコアを嵌合させた連結体)
図3Aの斜視図に示すように、金属部材であり円環状スリーブである芯金2は、その基体2Bの外周面に歯形状突起(凹凸形状)2Aを備えるとともに、嵌合凹部である内径孔2Cを有する。
【0029】
図3Bの斜視図に示すように、インサートコア5は、その基体5Bが円盤状であり、基体5Bの外径側には、軸方向へ突出する軸方向凸部5Aが周方向に整列しており、基体5Bの径方向中心部には、芯金2の内径孔2Cに嵌合する、嵌合凸部である丸軸5Cを備える。
【0030】
よって、芯金2の内径孔2Cにインサートコア5の丸軸5Cを挿入して嵌合させることにより、
図3Cの斜視図に示すように、金属部材である芯金2にインサートコア5を嵌合させた連結体Eが得られる。
【0031】
(1次成形工程及び2次成形工程で共通使用するインサートコア)
インサートコア5は、1次成形用金型を用いた1次成形工程及び2次成形用金型を用いた2次成形工程で共通使用する。
【0032】
すなわち、
図4Aの斜視図に示す1次成形用金型から取り出した状態では、1次成形品M1にインサートコア5が連結しており、
図4Bの斜視図に示す2次成形用金型から取り出した状態では、2次成形品M2にインサートコア5が連結している。
【0033】
(1次成形品及び2次成形品)
図4Aの斜視図に示す1次成形品M1において、円環状内側樹脂部材3は、その外周面に歯形状突起(凹凸形状)3Cを備える。また、1次成形品M1には、その軸方向の端面の一方に、1次成形工程におけるゲート跡GM1がある。
図4Bの斜視図に示すように2次成形品M2には、その軸方向の端面の一方に、2次成形工程におけるゲート跡GM2がある。
【0034】
(連結工程)
図3A及び
図3Bの斜視図、並びに
図5Aの縦断面図に示す、分離した状態の芯金2及びインサートコア5を、内径孔2Cに丸軸5Cを挿入して嵌合させ、
図3Cの斜視図、及び
図5Bの縦断面図に示す前記連結体Eを形成する。
【0035】
(1次成形工程)
図6(a)及び
図6(b)の縦断面図に示すように、1次成形工程P1において、1次成形用金型D1は、可動側金型6A及び固定側金型7Aを含む。
【0036】
図6(a)に示すように、インサートコア5の基体5Bを1次成形用金型D1の可動側金型6Aに位置決めして連結体Eを1次成形用金型D1にセットし、それによりインサート品である芯金2を位置決めした状態で1次成形用金型D1を型締めする。
【0037】
次に、
図6(b)に示すように、1次成形用金型D1のキャビティC1に、ゲートG1から1次成形用溶融樹脂Q1を注入して円環状内側樹脂部材3を射出成形する。ゲートG1は、ピンゲート、トンネルゲート又はサイドゲートとする。
【0038】
ゲートG1をピンゲート等とすることにより、前記ゲートがフィルムゲートやディスクゲート等である場合と比較して、無駄になる材料が少なくなるため材料費を低減できる。その上、前記ゲートがピンゲート又はトンネルゲートであるものでは、金型が開く際にゲートが自動的に切断されるので、前記ゲートがフィルムゲートやディスクゲート等である場合と比較して、成形品取り出し後のゲートカットが不要になる。
【0039】
(1次成形工程におけるゲート配置)
図9Aの平面図及び
図9Bの底面図に、1次成形工程P1におけるゲートG1(ゲート跡GM1)の位置、及び1次成形用溶融樹脂Q1の合流部であるウェルドW1の位置を示す。ゲートG1の数は、本実施の形態では3である。ゲートG1(ゲート跡GM1)の位置は、G11,G12,G13であり、ウェルドW1の位置であるウェルドラインは、W11,W12,W13である。
【0040】
1次成形工程P1におけるウェルドラインW11,W12,W13は、
図9Bに示すように、周方向に隣り合う軸方向肉盗み部3A,3A間に位置する。すなわち、ゲートG1の位置(G11,G12,G13)を、ウェルドラインW11,W12,W13が周方向に隣り合う軸方向肉盗み部3A,3A間に位置するように配置している。
【0041】
それにより、ウェルドラインが軸方向肉盗み部3A内に位置する場合よりもウェルドW1の断面積が増加するので、強度低下を抑制できる。
【0042】
(1次成形品取出工程)
図6(b)の1次成形用金型D1を冷却して樹脂を固化させた後、1次成形用金型D1を開き、第1射出成形機から
図4Aの斜視図及び
図6(c)の縦断面図に示すインサートコア5及び1次成形品M1を取り出す。1次成形品M1は、芯金2に対して円環状内側樹脂部材3を一体化したものである。
【0043】
(2次成形工程)
図7(a)及び
図7(b)の縦断面図に示すように、2次成形工程P2において、2次成形用金型D2は、可動側金型6B及び固定側金型7Bを含む。
【0044】
図7(a)に示すように、インサートコア5の基体5Bを2次成形用金型D2の可動型6Bに位置決めしてインサートコア5及び1次成形品M1を2次成形用金型D2にセットし、2次成形用金型D2を型締めする。
【0045】
次に、
図7(b)に示すように、2次成形用金型D2のキャビティC2に、ゲートG2から2次成形用溶融樹脂Q2を注入して円環状外側樹脂部材4を射出成形する。ゲートG2は、ピンゲート、トンネルゲート又はサイドゲートとする。
【0046】
ゲートG2をピンゲート等とすることにより、前記ゲートがフィルムゲートやディスクゲート等である場合と比較して、無駄になる材料が少なくなるため材料費を低減できる。その上、前記ゲートがピンゲート又はトンネルゲートであるものでは、金型が開く際にゲートが自動的に切断されるので、前記ゲートがフィルムゲートやディスクゲート等である場合と比較して、成形品取り出し後のゲートカットが不要になる。
【0047】
1次成形工程P1で成形した1次成形品M1の軸方向盗み部3Aにインサートコア5の軸方向凸部5Aを嵌合させた状態で2次成形工程P2を行う。それにより、2次成形用金型D2のキャビティD2内へゲートG2から注入される2次成形用溶融樹脂Q2の圧力による軸方向肉盗み部3Aの周りの変形や割れの発生等を、軸方向盗み部3Aに嵌合しているインサートコア5の軸方向凸部5Aにより抑制できる。
【0048】
(2次成形工程におけるゲート配置)
図9Aの平面図及び
図9Bの底面図に、2次成形工程P2におけるゲートG2(ゲート跡GM2)の位置、及び2次成形用溶融樹脂Q2の合流部であるウェルドW2の位置を示す。ゲートG2の数は、本実施の形態では3である。ゲートG2(ゲート跡GM2)の位置は、G21,G22,G23であり、ウェルドW2の位置であるウェルドラインは、W21,W22,W23である。
【0049】
2次成形工程P2におけるウェルドラインW21,W22,W23は、
図9Bに示すように、周方向に隣り合う軸方向肉盗み部3A,3A間のリブ部3Bの外径側に位置する。すなわち、ゲートG2の位置(G21,G22,G23)を、ウェルドラインW21,W22,W23が周方向に隣り合う軸方向肉盗み部3A,3A間のリブ部3Bの外径側に位置するように配置している。
【0050】
それにより、2次成形用溶融樹脂Q2充填後の保圧の際に他の部位よりも大きな圧力が掛かるウェルドW2が、軸方向肉盗み部3A(インサートコア5の軸方向凸部5A)の外径側に位置しないことから、片持ち梁状である軸方向凸部5Aに作用するせん断力及び曲げモーメントを低減できるので、軸方向凸部5Aの破損又は破断を抑制できる。よって、金型寿命を向上することができる。
【0051】
また、
図9Aの平面図及び
図9Bの底面図に示す例のように、1次成形工程P1におけるゲートG1の数及び2次成形工程P2におけるゲートG2の数を複数かつ同数として、1次成形工程P1におけるゲートG1及び2次成形工程P2におけるゲートG2を周方向に配置するとともに、2次成形工程P2のゲートG2の位置(G21,G22,G23)を、1次成形工程P1で成形した円環状内側樹脂部材3のゲートG1のゲート跡GM1(G11,G12,G13の位置)及び当該ゲート跡GM1に隣り合うウェルドラインW11,W12,W13の周方向中間又はその近傍としている。
【0052】
それにより、2次成形品M2のウェルドW2(ウェルドラインW21,W22,W23)は、1次成形品M1のゲートG1(G11,G12,G13)及びウェルドW1(ウェルドラインW11,W12,W13)の周方向中間付近に発生する。
【0053】
したがって、1次成形工程P1及び2次成形工程P2を経て製造された円環状樹脂部Bを含む成形品Aにおいて、1次成形工程P1により形成された径方向のウェルドラインW11,W12,W13と2次成形工程により形成された径方向のウェルドラインW21,W22,W23が重なったり、近傍に位置することがない。よって、2次成形品M2である円環状樹脂部Bを含む成形品Aの強度低下を抑制できる。
【0054】
(2次成形品取出工程)
図7(b)の2次成形用金型D2を冷却して樹脂を固化させた後、2次成形用金型D2を開き、第2射出成形機から
図4Bの斜視図及び
図7(c)の縦断面図に示すインサートコア5及び2次成形品M2を取り出す。2次成形品M2は、1次成形品M1に対して円環状外側樹脂部材4を一体化したものである。
【0055】
(分離工程)
図7(c)の縦断面図のようにインサートコア5及び2次成形品M2が連結した状態で、インサートコア5及び2次成形品M2を軸方向へ相対移動させることにより、インサートコア5の丸軸5Cと2次成形品M2の芯金2の内径孔2Cとの嵌合を解除する。
【0056】
それにより、
図8の縦断面図に示すように、インサートコア5と2次成形品M2である円環状樹脂部Bを含む成形品Aを分離する。このように分離したインサートコア5は、前記連結工程で再利用する。
【0057】
以上のような円環状樹脂部Bを含む成形品Aの製造方法では、2回に分けて行う、樹脂部である円環状樹脂部B(円環状内側樹脂部材3及び円環状外側樹脂部材4)の射出成形に、特殊成形機である2色成形機を用いずに、1次成形用金型D1を備えた第1射出成形機及び2次成形用金型D2を備えた第2射出成形機を用いる。汎用成形機を用いるので、導入コストが嵩まないとともに汎用性が高く、金型製作が容易になる。
【0058】
以上のような円環状樹脂部Bを含む成形品Aの製造方法によれば、インサートコア5を金属製の芯金2に凹凸嵌合させて連結した連結体Eを、第1射出成形機の1次成形用金型D1を用いて行う1次成形工程P1、及び第2射出成形機の2次成形用金型D2を用いて行う2次成形工程P2で共通使用するので、1次成形工程P1を経て第1射出成形機から取り出した1次成形品M1の成形収縮等の影響による変形を抑制できる。
【0059】
また、1次成形工程P1及び2次成形工程P2で共通使用するインサートコア5の基体5Bを、1次成形用金型D1及び2次成形用金型D2に位置決めするので、1次成形用金型D1への芯金2の位置決め、及び2次成形用金型D2への1次成形品M1の位置決めが容易かつ確実になる。
【0060】
よって、樹脂部を2回に分けて射出成形する円環状樹脂部Bを含む成形品Aの製造において、特殊成形機を用いずに金型製作が容易であることや、1次成形品M1の成形収縮等の影響による変形を抑制できることとも相俟って、製造コストの上昇を抑制しながら量産品質を安定させて歩留まりを向上できる。
【0061】
さらに、インサートコア5に設けた軸方向へ突出する軸方向凸部5A(
図3C及び
図5B参照)により、
図8に示すような軸方向肉盗み部3Aを円環状内側樹脂部材3に容易に設けることができる。
【0062】
さらにまた、1次成形工程P1で円環状内側樹脂部材3に形成された軸方向肉盗み部3Aにはインサートコア5の軸方向凸部5Aが入っており、2次成形工程P2を経て分離工程を行うまで、軸方向肉盗み部3Aに軸方向凸部5Aが入ったままである。
【0063】
よって、1次成形工程P1を経て第1射出成形機から取り出した1次成形品M1の軸方向肉盗み部3Aが成形収縮等の影響により変形することを抑制できる。
【0064】
<インサートコアの軸方向凸部の破損の有無を確認する試験>
図3Bの斜視図に示すような形態のインサートコア5を一般的な金型用材料を用いて製作し、前記1次成形工程P1及び前記2次成形工程P2の射出成形を5000ショット行う。その後におけるインサートコア5の軸方向凸部5Aの破損の有無を確認する。
【0065】
(実施例及び比較例)
実施例は、2次成形工程P2におけるウェルドW2の位置を1次成形品M1のリブ部3Bの外径側とし、
図3Bに示す、軸方向凸部5Aの径方向の厚みFに対する軸方向凸部5Aの高さHの比(H/F)を2とする。
【0066】
比較例1は、2次成形工程P2におけるウェルドW2の位置を1次成形品M1の肉盗み部3Aの外径側とし、前記H/Fを1とする。
【0067】
比較例2は、2次成形工程P2におけるウェルドW2の位置を1次成形品M1の肉盗み部3Aの外径側とし、前記H/Fを2とする。
【0068】
【0069】
(試験結果)
比較例1(2次成形工程P2におけるウェルドW2の位置が1次成形品M1の肉盗み部3Aの外径側で、前記H/F=1)は、2次成形工程P2におけるウェルドW2の位置が1次成形品M1の肉盗み部3Aの外径側であっても、インサートコア5の軸方向凸部5Aの破損は無かった。
【0070】
比較例2(2次成形工程P2におけるウェルドW2の位置が1次成形品M1の肉盗み部3Aの外径側で、前記H/F=2)は、2次成形工程P2におけるウェルドW2の位置でインサートコア5の軸方向凸部5Aの破損が有った。
【0071】
それに対して実施例(2次成形工程P2におけるウェルドW2の位置が1次成形品M1のリブ部3Bの外径側で、前記H/F=2)は、インサートコア5の軸方向凸部5Aの破損は無かった。
【0072】
以上の結果から、隣り合う軸方向肉盗み部3A,3A間のリブ部3Bの外径側にウェルドW2が位置するようにゲートG2を配置し、それにより2次成形用溶融樹脂Q2充填後の保圧の際に他の部位よりも大きな圧力が掛かるウェルドW2が、軸方向肉盗み部3A(インサートコア5の軸方向凸部5A)の外径側に位置しないようにする本願発明は、
図3Bに示す、軸方向凸部5Aの径方向の厚みFに対する軸方向凸部5Aの高さHの比(H/F)が2以上(H/F≧2)である場合に特に有効であることが分かる。
【0073】
以上の説明においては、1次成形用金型D1を備えた第1射出成形機、及び2次成形用金型D2を備えた第2射出成形機の、2台の汎用成形機を用いる構成を示したが、本発明は、このような構成に限定されない。すなわち、生産量が少ない場合には、1台の射出成形機を用いて金型及び樹脂材料を交換しながら、1次成形用金型D1を用いた1次成形工程P1及び2次成形用金型D2を用いた2次成形工程P2を行ってもよい。
【0074】
以上の説明においては、2次成形工程P2でインサートコア5を用いる例を示したが、2次成形工程P2でインサートコア5を用いない場合もある。
【0075】
例えば、1次成形工程P1を行って1次成型品M1を1ロットの数だけ成形した後に、2次成形品M2を1ロットの数だけ成形するバッチ処理を行う場合は、1次成形工程P1と2次成形工程P2とが連続しないので、2次成形工程P2ではインサートコア5を用いない。すなわち、1次成形工程P1を経た連結体E及び円環状内側樹脂部材3からインサートコア5を取り外し、インサートコア5は次の1次成形工程P1で使用する。
【0076】
2次成形工程P2では、1次成形工程P1を経た連結体E及び円環状内側樹脂部材3からインサートコア5を取り外した、金属部材2及び円環状内側樹脂部材3に対し、嵌合凸部である丸軸5Cの形状を有するとともに、円環状内側樹脂部材3の軸方向肉盗み部3Aに嵌合する軸方向凸部を有する2次成形用金型D2を用いる。そして、円環状内側樹脂部材3の軸方向肉盗み部3Aを2次成形用金型D2の前記軸方向凸部に嵌合させるように、金属部材2及び円環状内側樹脂部材3を2次成形用金型D2内に配置して射出成形を行う。
【0077】
前記金属部材である芯金2は、円環状スリーブに限定されない。前記金属部材である芯金2は、例えば、シャフト付きのもの等であってもよい。芯金2がシャフト部2Dを有するものである場合における芯金入り樹脂歯車1の例を、
図10A及び
図10Bの斜視図に示す。芯金2がシャフト部2Dを有するものである場合における、本発明の実施の形態に係る円環状樹脂部Bを含む成形品Aの製造方法で製造された成形品A(外周面に他の歯車と噛み合う歯を形成する前の芯金入り樹脂歯車)を
図11の縦断面図に示す。
【0078】
芯金2がシャフト部2Dを有するものである場合、インサートコア5は、例えば
図12(c)及び
図13(c)の縦断面図に示すような、シャフト部2Dに嵌合する嵌合凹部である内径孔5Dを有するものとする。
【0079】
芯金2がシャフト部2Dを有するものである場合における、
図6(a)及び
図6(b)の縦断面図に相当する1次成形工程P1を
図12(a)及び
図12(b)の縦断面図に示す。また、1次成形品取出工程で1次成形用金型D1を開いて第1射出成形機から取り出した、
図6(c)の縦断面図に相当するインサートコア5及び1次成形品M1を
図12(c)の縦断面図に示す。
【0080】
芯金2がシャフト部2Dを有するものである場合における、
図7(a)及び
図7(b)の縦断面図に相当する2次成形工程P2を
図13(a)及び
図13(b)の縦断面図に示す。また、2次成形品取出工程で2次成形用金型D2を開いて第2射出成形機から取り出した、
図7(c)の縦断面図に相当するインサートコア5及び2次成形品M2を
図13(c)の縦断面図に示す。
【0081】
2次成形工程P2における2次成形用溶融樹脂Q2の合流部であるウェルドW2が、隣り合う軸方向肉盗み部3A,3A間のリブ部3Bの外径側に位置するように、2次成形用金型D2のキャビティC2内へ2次成形用溶融樹脂Q2を注入するゲートG2を2次成形用金型D2に配置する本発明は、円環状樹脂部Bを含む成形品Aに前記金属部材である芯金2が無い場合であっても適用することができる。
【0082】
前記金属部材である芯金2が無く、例えば前記バッチ処理を行う場合は、前記1次成形工程P1を経た円環状内側樹脂部材3及びインサートコア5からインサートコア5を取り外して円環状内側樹脂部材3のみにする。
【0083】
2次成形工程P2では、円環状内側樹脂部材3の軸方向肉盗み部3Aに嵌合する軸方向凸部を有する2次成形用金型D2を用い、円環状内側樹脂部材3の軸方向肉盗み部3Aを2次成形用金型D2の前記軸方向凸部に嵌合させるように、円環状内側樹脂部材3を2次成形用金型D2内に配置して射出成形を行う。
【0084】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0085】
1 芯金入り樹脂歯車
2 芯金(金属部材)
2A 歯形状突起
2B 基体
2C 内径孔(嵌合凹部)
2D シャフト部
3 円環状内側樹脂部材
3A 軸方向肉盗み部
3B リブ部
3C 歯形状突起
4 円環状外側樹脂部材
4A 歯
5 インサートコア
5A 軸方向凸部
5B 基体
5C 丸軸(嵌合凸部)
5D 内径孔(嵌合凹部)
6A,6B 可動側金型
7A,7B 固定側金型
A 円環状樹脂部を含む成形品
B 円環状樹脂部
C1,C2 キャビティ
D1 1次成形用金型
D2 2次成形用金型
E 連結体
F 軸方向凸部の径方向の厚み
G1,G2 ゲート
G11,G12,G13,G21,G22,G23 ゲートの位置
GM1,GM2 ゲート跡
H 軸方向凸部の高さ
M1 1次成形品
M2 2次成形品
P1 1次成形工程
P2 2次成形工程
Q1 1次成形用溶融樹脂
Q2 2次成形用溶融樹脂
W1,W2 ウェルド
W11,W12,W13,W21,W22,W23 ウェルドライン