(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/30 20060101AFI20230628BHJP
B60N 2/07 20060101ALI20230628BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20230628BHJP
B60N 2/75 20180101ALI20230628BHJP
【FI】
B60N2/30
B60N2/07
B60N2/20
B60N2/75
(21)【出願番号】P 2019545584
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2018035782
(87)【国際公開番号】W WO2019065773
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2017185228
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】林 昌男
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0203772(US,A1)
【文献】特開2014-008792(JP,A)
【文献】特開2012-183923(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076318(WO,A1)
【文献】特開2008-030658(JP,A)
【文献】特開2000-333762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0164740(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0216185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバック及びシートクッションを備え、前記シートバックが車体フロアに対して起立して前記シートクッションに着座者を着座させることが可能な着座可能状態と、前記シートバックが前記車体フロアに対して倒伏して前記シートクッションが前記シートバックと前記車体フロアとの間に配置された収納状態との間で状態を切り替えることが可能なシート本体と、
前記状態が前記着座可能状態であるときには前記シートクッションの下部に当接して前記シートクッションを支え、前記状態が前記収納状態へ移行する際には前記シート本体の一部分と摺接することで前記シートバック及び前記シートクッションの移動をガイドするガイド部と、を有
し、
前記シート本体は、前記状態を、前記シートバックが前記車体フロアに対して起立して前記シートクッションが前記シートバックに向かって跳ね上がった跳ね上がり状態へ切り替え可能であり、
前記シートクッションの裏面には、前記状態が前記収納状態であるときに前記車体フロアに当接する凸状突起が設けられており、
該凸状突起は、前記裏面において前記シート本体の幅方向に沿ってスライド移動可能であり、
前記状態が前記跳ね上がり状態にあるときに前記凸状突起が該凸状突起のスライド移動範囲の一端位置に至ると、前記状態が前記跳ね上がり状態でロックされ、前記凸状突起が前記スライド移動範囲の他端位置に向かって移動すると、前記状態のロックが解除されることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
シートバック及びシートクッションを備え、前記シートバックが車体フロアに対して起立して前記シートクッションに着座者を着座させることが可能な着座可能状態と、前記シートバックが前記車体フロアに対して倒伏して前記シートクッションが前記シートバックと前記車体フロアとの間に配置された収納状態との間で状態を切り替えることが可能なシート本体と、
前記シート本体の下方位置に配置され、前記シートバックを支持する支持ベースを覆うベースカバーと、
前記シートバック及び前記シートクッションの移動をガイドするガイド部と、を有
し、
前記ガイド部は、前記ベースカバーにより構成され、前記状態が前記着座可能状態であるときには前記シートクッションの下部に当接して前記シートクッションを支え、前記状態が前記収納状態へ移行する際には前記シート本体の一部分と摺接することで前記シートバック及び前記シートクッションの移動をガイドすることを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
前記ベースカバーには、他の部分よりも上方に向かって隆起した隆起部分が形成され、
前記ガイド部は、前記隆起部分により構成されることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記状態が前記着座可能状態であるとき、前記ガイド部は、前記シート本体の前後方向における前記シートクッションの中央よりも後方位置にて前記シートクッションを支えることを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記シート本体の幅方向において互いに離間した位置に配置された第一ガイド部及び第二ガイド部を有し、
前記第一ガイド部及び前記第二ガイド部は、一部品として一体化されており、
前記第一ガイド部及び前記第二ガイド部を構成する部品には、前記幅方向において前記第一ガイド部及び前記第二ガイド部の間に形成された荷物収容部が設けられていることを特徴とする請求項1
乃至4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記シート本体の前後方向に沿って前記シート本体をスライド移動させるためのスライドレール機構と、
該スライドレール機構によって前記シート本体をスライド移動させる際に操作される操作部材と、を備え、
前記状態が前記着座可能状態であるとき、前記操作部材は、前記シートクッションの下方位置にあり、
前記ガイド部は、前記シート本体の幅方向における前記乗物用シートの両端部のうち、車体の外側により近い方の端部に設けられており、
前記操作部材は、前記幅方向において前記ガイド部が設けられた範囲と差し掛かるように配置されていることを特徴とする請求項1
乃至5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記シート本体の幅方向において前記シート本体の脇位置に配置されたシートベルト装着用のバックルを更に備え、
前記ガイド部は、前記幅方向において前記バックルが設けられた範囲から外れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1
乃至6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シート本体の幅方向において前記シートバックの端部に取り付けられたアームレストを更に備え、
前記ガイド部は、前記幅方向において前記アームレストが設けられた範囲と差し掛かるように配置されていることを特徴とする請求項1
乃至7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記ガイド部は、樹脂成形品の一部が上方に向かって隆起することで構成されており、
前記樹脂成形品において前記ガイド部を構成している隆起部分は、該隆起部分の内側に形成された空洞を囲む内壁面のうち、上端に位置する部分から下方に向かって延出したリブを備えていることを特徴とする請求項1
乃至8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記ガイド部は、樹脂成形品の一部が上方に向かって隆起することで構成されており、
前記樹脂成形品において前記ガイド部を構成している隆起部分の内側には、空洞が設けられており、
該空洞内には、前記隆起部分の上端部を補強するための補強部材が収容されていることを特徴とする請求項1
乃至9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に、シートバックが車体フロアに対して起立してシートクッションに着座者を着座させることが可能な着座可能状態と、シートバックが車体フロアに対して倒伏してシートクッションがシートバックと車体フロアとの間に配置された収納状態との間で状態を切り替えることが可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
着座可能状態と収納状態との間で状態を切り替えることが可能な乗物用シートは既に知られている。このような乗物用シートの中には、状態を収納状態に移行する際にあたり、シートバックを車体フロアに対して倒伏させ、シートクッションをシートバックと車体フロアとの間に配置するように構成されているシートが存在する。その一例としては、特許文献1に記載の乗物用シートが挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の乗物用シートは、いわゆるダイブダウン型の車両用シートであり、シートバックを回動可能に支持する支持ベースと、支持ベースを覆うベースカバーと、シートクッションを支える脚部材と、を有する。また、特許文献1に記載の乗物用シートでは、シートクッションがシートバックに対して回動自在な状態で連結されている。
【0004】
以上のように構成された特許文献1に記載の乗物用シートが着座可能状態にあるとき、脚部材がシートクッションの下方位置で、略C字状の板ばねからなる脚保持部材によって保持されており、シートクッションが脚部材によって下方から支持されている。
【0005】
一方、特許文献1に記載の乗物用シートが着座可能状態から収納状態へ移行する際には、脚部材が脚保持部材から外れ、シートクッションがシートバックに近付く向きに回動する。その上でシートバックが前倒れする結果、シート前方に設けられた収納スペース内にシート本体が収納される。
【0006】
なお、シート本体が収納スペースに向かって移動するとき、シート本体の所定部位(具体的には、シートクッション及びシートバックを連結するためにシート本体の側端部に設けられた連結部材)が、ベースカバーに設けられたガイド部に摺接する。これにより、シート本体は、ガイド部にガイドされながらスムーズに収納スペースに向かって移動するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、乗物用シートについては、シート構成部品の数を削減することが望まれている。したがって、着座可能状態と収納状態との間で状態を切り替えることが可能な乗物用シートを、より少ない数(具体的には、脚部材を有する従来の乗物用シートの構成部品の数よりも少ない数)の部品にて構成することが求められている。
【0009】
また、シート本体の下方位置(より具体的にはシートクッションの下方位置)に荷物を置くためのスペースが確保されていると、好適である。このため、着座可能状態にあるときにシート本体の下方位置に荷物置きスペースを確保することが可能な乗物用シートが望まれている。
【0010】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、着座可能状態と収納状態との間で状態を切り替えられ、より少ない数の構成部品によって構成された乗物用シートを提供することである。
また、本発明の他の目的は、シート本体の下方位置に荷物置きスペースを確保することが可能な乗物用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートバック及びシートクッションを備え、前記シートバックが車体フロアに対して起立して前記シートクッションに着座者を着座させることが可能な着座可能状態と、前記シートバックが前記車体フロアに対して倒伏して前記シートクッションが前記シートバックと前記車体フロアとの間に配置された収納状態との間で状態を切り替えることが可能なシート本体と、前記状態が前記着座可能状態であるときには前記シートクッションの下部に当接して前記シートクッションを支え、前記状態が前記収納状態へ移行する際には前記シート本体の一部分と摺接することで前記シートバック及び前記シートクッションの移動をガイドするガイド部と、を有し、前記シート本体は、前記状態を、前記シートバックが前記車体フロアに対して起立して前記シートクッションが前記シートバックに向かって跳ね上がった跳ね上がり状態へ切り替え可能であり、前記シートクッションの裏面には、前記状態が前記収納状態であるときに前記車体フロアに当接する凸状突起が設けられており、該凸状突起は、前記裏面において前記シート本体の幅方向に沿ってスライド移動可能であり、前記状態が前記跳ね上がり状態にあるときに前記凸状突起が該凸状突起のスライド移動範囲の一端位置に至ると、前記状態が前記跳ね上がり状態でロックされ、前記凸状突起が前記スライド移動範囲の他端位置に向かって移動すると、前記状態のロックが解除されることにより解決される。
【0012】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、シート状態が収納状態へ移行する際に、ガイド部が、シート本体の一部分と摺接することでシート本体の移動をガイドする。また、シート状態が着座可能状態にあるとき、上記のガイド部が、シートクッションの下部に当接してシートクッションを支える。すなわち、本発明の乗物用シートによれば、ガイド部が、着座可能状態においてシートクッションを支持する機能を備えている。このため、シートクッションを支持する別部材(例えば、特許文献1に記載の車両用シートが有する脚部材)を設ける必要がなく、その分、シート構成部品の数が少なくなる。
また、上記の構成では、シートクッションに設けられた凸状突起をスライド移動させることにより、シート本体の状態を跳ね上がり状態にてロックし、また、ロック解除することが可能となる。このように凸状突起を利用してシート状態のロック及びアンロックを切り替えることが可能となるため、状態切り替え用の部材を更に設ける必要がなくなる。すなわち、上記の構成によれば、シート状態を跳ね上がり状態にてロックしたりロック解除したりする構成の乗物用シートを、より少ない数の部品にて構成することが可能となる。
また、前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートバック及びシートクッションを備え、前記シートバックが車体フロアに対して起立して前記シートクッションに着座者を着座させることが可能な着座可能状態と、前記シートバックが前記車体フロアに対して倒伏して前記シートクッションが前記シートバックと前記車体フロアとの間に配置された収納状態との間で状態を切り替えることが可能なシート本体と、前記シート本体の下方位置に配置され、前記シートバックを支持する支持ベースを覆うベースカバーと、前記シートバック及び前記シートクッションの移動をガイドするガイド部と、を有し、前記ガイド部は、前記ベースカバーにより構成され、前記状態が前記着座可能状態であるときには前記シートクッションの下部に当接して前記シートクッションを支え、前記状態が前記収納状態へ移行する際には前記シート本体の一部分と摺接することで前記シートバック及び前記シートクッションの移動をガイドすることにより解決される。
【0013】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記状態が前記着座可能状態であるとき、前記ガイド部は、前記シート本体の前後方向における前記シートクッションの中央よりも後方位置にて前記シートクッションを支えるとよい。
上記の構成では、シート着座時に着座者の大腿部が載るシートクッションの後方部を、ガイド部によって支持する。これにより、シート着座時においてシートクッションをより安定的に支持することが可能となる。
【0014】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記ガイド部は、前記シート本体の幅方向において互いに離間した位置に配置された第一ガイド部及び第二ガイド部を有し、前記第一ガイド部及び前記第二ガイド部は、一部品として一体化されており、前記第一ガイド部及び前記第二ガイド部を構成する部品には、前記幅方向において前記第一ガイド部及び前記第二ガイド部の間に形成された荷物収容部が設けられているとよい。
上記の構成では、シート状態が着座可能状態にあるとき、シートクッションを第一ガイド部及び第二ガイド部によって支える。これにより、シートクッションの支持状態をより安定させることが可能になる。また、第一ガイド部及び第二ガイド部を構成する部品においてガイド部間に位置する部分に、荷物収容部が設けられている。これにより、シート本体の下方位置に荷物置きスペースを確保することが可能となる。
【0015】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記シート本体の前後方向に沿って前記シート本体をスライド移動させるためのスライドレール機構と、該スライドレール機構によって前記シート本体をスライド移動させる際に操作される操作部材と、を備え、前記状態が前記着座可能状態であるとき、前記操作部材は、前記シートクッションの下方位置にあり、前記ガイド部は、前記シート本体の幅方向における前記乗物用シートの両端部のうち、車体の外側により近い方の端部に設けられており、前記操作部材は、前記幅方向において前記ガイド部が設けられた範囲と差し掛かるように配置されているとよい。
上記の構成では、操作部材が、シート幅方向においてガイド部が設けられた範囲に差し掛かるように配置されている。このようにガイド部の配置位置を考慮して操作部材の配置位置を設定することで、操作部材を備えた乗物用シートのサイズをよりコンパクト化することが可能となる。また、操作部材がシート幅方向において車体の外側により近い端部に取り付けられている。このため、車体外側から操作部材を操作することが可能となる。
【0016】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記シート本体の幅方向において前記シート本体の脇位置に配置されたシートベルト装着用のバックルを更に備え、前記ガイド部は、前記幅方向において前記バックルが設けられた範囲から外れた位置に配置されているとよい。
上記の構成では、ガイド部が、シート幅方向においてシートベルト装着用のバックルから離れた位置に配置されている。これにより、バックルとの干渉を抑えつつ、ガイド部を配置することが可能となる。
【0017】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記シート本体の幅方向において前記シートバックの端部に取り付けられたアームレストを更に備え、前記ガイド部は、前記幅方向において前記アームレストが設けられた範囲と差し掛かるように配置されているとよい。
上記の構成では、ガイド部が、シート幅方向においてアームレストが設けられた範囲に差し掛かるように配置されている。換言すると、アームレストのうちの少なくとも一部分は、シート幅方向におけるガイド部の外端よりも内側に位置している。この結果、アームレストの、シート幅方向外側への突出度合いを抑えることが可能となる。
【0018】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記ガイド部は、樹脂成形品の一部が上方に向かって隆起することで構成されており、前記樹脂成形品において前記ガイド部を構成している隆起部分は、該隆起部分の内側に形成された空洞を囲む内壁面のうち、上端に位置する部分から下方に向かって延出したリブを備えているとよい。
上記の構成では、樹脂成形品においてガイド部を構成している隆起部分の内側には、当該隆起部分の上端部から下方に向かってリブが備えられている。これにより、ガイド部の剛性を向上させることが可能となり、シートの状態が着座可能な状態にあるときには、ガイド部によってシートクッションをより適切に支えることが可能となる。
あるいは、上記の乗物用シートにおいて、前記ガイド部は、樹脂成形品の一部が上方に向かって隆起することで構成されており、前記樹脂成形品において前記ガイド部を構成している隆起部分の内側には、空洞が設けられており、該空洞内には、前記隆起部分の上端部を補強するための補強部材が収容されていてもよい。
上記の構成では、樹脂成形品においてガイド部を構成している隆起部分の内側には、隆起部分の上端部を補強するための補強部材が収容されている。これにより、ガイド部の剛性を向上させることが可能となり、シートの状態が着座可能な状態にあるときには、ガイド部によってシートクッションをより適切に支えることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の乗物用シートによれば、シートクッションを支持する別部材を設ける必要がなくなる分、シート構成部品の数がより少なくなる。
また、本発明の乗物用シートによれば、シート着座時に着座者の大腿部が載るシートクッションの後方部を、ガイド部によって支えることにより、シート着座時においてシートクッションがより安定的に支えられるようになる。
また、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションの支持状態をより安定させることが可能になる。また、シート本体の下方位置に荷物置きスペースを確保することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、操作部材を備えた乗物用シートのサイズをよりコンパクト化することが可能となる。また、車体外側から操作部材を操作することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、シートベルト装着用のバックルとの干渉を抑えつつ、ガイド部を配置することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、アームレストのうちの少なくとも一部分が、シート幅方向におけるガイド部の外端よりも内側に位置するようになる結果、アームレストの、シート幅方向外側への突出度合いを抑えることが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、樹脂成形品においてガイド部を構成している隆起部分の内側に、当該隆起部分の上端部から下方に向かってリブが備えられていることで、ガイド部の剛性が向上し、ガイド部がシートクッションをより適切に支えるようになる。
また、本発明の乗物用シートによれば、樹脂成形品においてガイド部を構成している隆起部分の内側に補強部材が収容されていることで、ガイド部の剛性が向上し、ガイド部がシートクッションをより適切に支えるようになる。
また、本発明の乗物用シートによれば、シート状態を跳ね上がり状態にてロックしたりロック解除したりする構成の乗物用シートを、より少ない数の部品にて構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る乗物用シートの斜視図である。
【
図2】シート状態が着座可能状態であるときの乗物用シートの側面図である。
【
図3】シート状態が着座可能状態から収納状態へ移行している途中段階にあるときの乗物用シートの側面図である。
【
図4】シート状態が収納状態であるときの乗物用シートの側面図である。
【
図5】シート状態が跳ね上がり状態であるときの乗物用シートの斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る乗物用シートの正面図である。
【
図7】乗物用シートが有するシートフレームの下側部分及びその周辺機器を示す図である。
【
図10】第一変形例に係るガイド部の内部構造を示す図である。
【
図11】第二変形例に係るガイド部の内部構造を示す図である。
【
図12】第三変形例に係るガイド部の内部構造を示す図である。
【
図13】他の実施形態に係る乗物用シートが備えるクッションロック装置を示す図である。
【
図14】変形例に係る乗物用シートが跳ね上がり状態であるときの斜視図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る乗物用シートの斜視図である。
【
図16】シート状態がチップアップ状態であるときの乗物用シートの斜視図である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る乗物用シートが有するベースカバーの斜視図である。
【
図18】ベースカバーを前側カバーと後側カバーに分離した状態の斜視図である。
【
図19】シート状態が収納状態であるときの乗物用シートの斜視図である。
【
図20】シート状態が収納状態であるときの乗物用シートの上面図である。
【
図24】シート状態が着座可能状態であるときの乗物用シートに着座者が着座した状態の側面図である。
【
図25】オットマンを備える乗物用シートが着座可能状態であるときの側面図である。
【
図26】乗物用シートが着座可能状態であるときにオットマンを上方に移動させた状態の側面図である。
【
図27】乗物用シートが着座可能状態であるときにオットマンをシートクッションに取り付けた状態の側面図である。
【
図28】前列の乗物用シートのシートバックの背面にオットマンを取り付けた状態の側面図である。
【
図29】乗物用シートが着座可能状態であるときにプレート部材をシートクッションに取り付けた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0023】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、車両用シート以外の乗物用シート、例えば、船舶や航空機に搭載されるシートにも適用され得る。
【0024】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向(換言すると、シート本体の前後方向)であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向(換言すると、シート本体の幅方向)であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
【0025】
また、シート幅方向の「車外側」とは、車体の外側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアに近い側)を意味し、「車内側」とは、車体の内側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアから離れている側)を意味している。
また、以下の説明中、「回動」は、特に断る場合を除き、シート幅方向に沿う軸を中心とした回動動作を意味する。
【0026】
なお、以下に説明するシート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが後述する着座可能状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0027】
<<第1実施形態に係る車両用シートの基本構成>>
第1実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、車両用シートSの斜視図である。
【0028】
車両用シートSは、車体フロアの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の後部座席に相当するリアシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0029】
車両用シートSは、
図1に示すように、その本体部分をなすシート本体Shを有する。シート本体Shは、同図に示すように、シートバック1、シートクッション2及びヘッドレスト3を備えている。シートバック1は、後述の支持ベース40を介して、車体フロアに対して回動可能な状態で取り付けられている。
【0030】
また、シートクッション2は、その後端部がシートバック1の下端部に連結されている。なお、シートクッション2の後端部とシートバック1の下端部との間には、
図1に示すように連結部材5が介在している。この連結部材5は、シートバック1に対して回動可能な状態で取り付けられている。これにより、シートクッション2は、連結部材5と共にシートバック1に対して回動することが可能である。
【0031】
また、シート本体Shの下部には、後述のスライドレール機構4が設置されている。このスライドレール機構4により、シート本体Shは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに取り付けられている。
【0032】
また、シート本体Shは、その前方に形成された収納フロアFに折り畳んだ状態で収納することが可能である。収納フロアFは、車体フロアの一部(具体的には、車体フロア中、シート本体Shが着座可能状態にあるときにシート本体Shの前方に位置する部分)を下方に窪ませることで形成された凹型スペースである。
【0033】
<<シート本体の状態変化について>>
本実施形態では、シート本体Shの状態(以下、シート状態)を変更することが可能である。以下では、シート状態の変化について
図2~
図5を参照しながら説明する。
図2~
図4は、車両用シートSの側面図であり、
図2は、シート状態が着座可能状態であるときの図、
図3は、シート状態が着座可能状態から収納状態へ移行している途中段階にあるときの図、
図4は、シート状態が収納状態であるときの図である。
図5は、シート状態が跳ね上がり状態であるときの車両用シートSの斜視図である。
【0034】
本実施形態において、シート状態は、
図2に図示の着座可能状態と、
図4に図示の収納状態と、
図5に図示の跳ね上がり状態との間で切り替え可能である。着座可能状態は、シートバック1が車体フロアに対して起立し、シートクッション2に着座者である乗員を着座させることが可能な状態である。シート状態が着座可能な状態にあるとき、
図1に示すように、シートバック1は、若干後傾しており、シートクッション2は、その着座面(乗員の臀部及び大腿部が載る面)が上方を向いた姿勢となっている。
【0035】
収納状態は、収納フロアF内にシート本体Shが折り畳まれた状態で収納された状態である。シート本体Shが収納状態に移行する際、シートバック1は、
図3に示すように、車体フロアに対して前方に倒伏し、シートクッション2は、シートバック1に近付く向きに回動する。そして、シート状態が収納状態になると、
図4に示すように、シートバック1の後面(背面)が車体フロアのうち、収納フロアF周辺と同じ高さ(レベル)となり、シートクッション2がシートバック1と車体フロアとの間に配置されるようになる。
【0036】
跳ね上がり状態は、
図5に示すように、シートバック1が車体フロアに対して起立している一方で、シートクッション2がシートバック1に向かって跳ね上がった状態である。なお、以下では、跳ね上がり状態を「チップアップ状態」と呼ぶこととする。
【0037】
また、本実施形態に係る車両用シートSには、シート状態をチップアップ状態でロックするためのロック装置が設けられている。なお、本実施形態に係る車両用シートSは、着座可能状態にあるときにはロックされておらず可動自在となっている。
【0038】
次に、シート状態を切り替える際のシート本体Sh各部の動きについて大まかに説明する。シート状態が着座可能状態にあるとき、シートバック1は、車体フロアに対して起立した姿勢にあり、シートクッション2は、車体フロアに対して略水平な姿勢にある。
【0039】
シート状態を着座可能状態から収納可能状態へ切り替える場合、シートバック1が不図示の付勢部材からの付勢力によって前方に倒伏するように、車体フロアに対して回動する。また、シートクッション2は、シートバック1の前倒れ動作に伴って前方に移動しつつ、シートバック1に近付く向きに連結部材5と共に回動する。このとき、
図3に示すように、シート本体Shの連結部材5の下面が、シート本体Shの下方位置に配置されたベースカバー60の所定部位に摺接する。これにより、シートクッション2は、スムーズに前方移動し、やがて収納フロアF内に進入するようになる。
【0040】
その後、シートバック1の更なる前倒れ動作により、シートバック1が収納フロアF内に入り込み、シートクッション2が収納フロアFの底面に沿って前方に移動する。最終的に、シートバック1が収納フロアF内においてシートクッション2に折り重なるようになった時点でシート状態が収納状態に至る。
【0041】
シート状態を収納状態からチップアップ状態に切り替える場合には、収納フロアFに収納されたシート本体Shを、乗員が手動で上方へ起こす。このとき、シートクッション2は、シートバック1に対して折り畳まれた姿勢(すなわち、シートバック1に対して跳ね上がった姿勢)にある。したがって、シートバック1が起立位置(つまり、シート状態が着座可能状態にあるときのシートバック1の位置)に至るまでシート本体Shを起こすことにより、シート状態がチップアップ状態に切り替わるようになる。なお、シート状態がチップアップ状態に切り替わると、シートバック1は、車体フロアに対して起立した姿勢にてロックされるようになる。
【0042】
シート状態をチップアップ状態から着座可能状態に切り替える場合には、乗員がシートクッション2のロックを解除するための操作を行う。本実施形態では、シートクッション2の裏面に設けられた
図5に図示のダンパ26を操作することにより、シートクッション2のロックが解除される。シートクッション2は、ロック解除されると、不図示の付勢部材からの付勢力によってシートバック1から離れる向きに連結部材5と共に回動する。そして、シートクッション2が着座可能位置(つまり、シート状態が着座可能状態にあるときのシートクッション2の位置)に至った時点で、シート状態が着座可能位置に切り替わるようになる。
【0043】
<<シート各部の構成>>
以下、車両用シートS各部の構成について、既出の
図1~
図5と共に、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は、車両用シートSの正面図である。
図7は、車両用シートSの骨格をなすシートフレームの下側部分及びその周辺機器を示す図である。
【0044】
車両用シートSは、
図1や
図6等に示すように、シート本体Shを備えている。シート本体Shは、シートバック1及びシートクッション2を備えている。シートバック1及びシートクッション2は、それぞれ、
図7に図示のフレーム(具体的には、シートバックフレーム10及びシートクッションフレーム20)を備えている。
【0045】
また、シートバック1とシートクッション2とは、連結部材5によって連結されている。連結部材5は、側方視で略L字状の部材であり、
図7に図示の連結部材本体部5aと、
図1に図示の連結部材カバー部5bと、を有する。連結部材本体部5aは、金属板を加工することで構成されており、シート幅方向におけるシート本体Shの端部にて、シートバックフレーム10及びシートクッションフレーム20を連結している。また、連結部材本体部5aの後端部は、回動可能な状態でシートバックフレーム10に取り付けられている。つまり、シートクッション2は、連結部材本体部5aの後端がシートバックフレーム10に対して回動することで、シートバック1に対して連結部材5と共に回動する。連結部材カバー部5bは、樹脂成形品であり、連結部材本体部5aを側方から覆っている。
【0046】
また、連結部材本体部5aの後端部には、ロック装置としてのクッションロック装置25が取り付けられている。クッションロック装置25は、シート幅方向において、連結部材本体部5aとシートバックフレーム10の側端との間に挟まれた位置に配置されている。クッションロック装置25は、公知の構造(一般的なクッションロック装置の構造)となっており、その状態をロック状態及びアンロック状態の間で切り替えることが可能である。クッションロック装置25がロック状態であるとき、連結部材5が回動不能な状態となっており、そのため、シートクッション2がその時点での姿勢にてロックされる。他方、クッションロック装置25がアンロック状態になると、連結部材5がシートバックフレーム10に対して回動可能な状態となり、この結果、シートクッション2をシートバック1に対して自由に回動することが可能となる。
【0047】
シート本体Shの構成についてより詳しく説明すると、本実施形態のシートクッション2の裏面(シート状態が着座可能状態にあるときのシートクッション2の下面)には、
図5に示すように、ダンパ26が設けられている。ダンパ26は、シートクッション2の裏面から下方(シートクッション2の厚み方向において着座面が位置する側とは反対側)に向かって突出した凸状突起である。また、ダンパ26は、正面視で長円形状となっており、
図5に示すように、シートクッション2の裏面中、前端領域のシート幅方向中央部分から突出している。
【0048】
また、ダンパ26は、シート状態が収納状態にあるときに、その先端(下端)にて車体フロアに当接する。これにより、シート状態が収納状態にある間に、シートクッション2の裏面が車体フロアに接触して汚れてしまうのを抑えることが可能となる。
【0049】
また、ダンパ26は、シート状態をチップアップ状態から着座可能状態へ切り替える際に操作される。具体的に説明すると、シートクッション2の裏面の前端領域には、シート幅方向に沿ってシートクッション2の中央部から車外側に向かって延出したスリット2aが設けられている。本実施形態において、ダンパ26は、シート幅方向に沿ってスリット2a内をスライド移動することが可能である。また、ダンパ26は、不図示のケーブルを介して前述のクッションロック装置25に連結されている。
【0050】
上記の構成において、シート状態がチップアップ状態にあるときに、ダンパ26がそのスライド移動範囲の一端位置(具体的には、スリット2aの形成範囲のうち、シート幅方向におけるシートクッション2の中央部分に該当する位置)に至っていると、シートクッション2がロックされ、シート状態がチップアップ状態でロックされている。
また、シート状態がチップアップ状態にあるときに、乗員がダンパ26をスライド範囲の他端位置(具体的には、スリット2aの形成範囲のうち、シート幅方向において車外側に位置する端位置)に向かってスライド移動させると、ダンパ26に接続されたケーブルが牽引され、クッションロック装置25がロック解除動作を行うようになる。この結果、シート状態のロック(厳密には、シートクッション2のロック)が解除されるようになる。
【0051】
なお、シートクッション2のロックを解除するために操作される部品については、ダンパ26に限定されるものではないが、ダンパ26をロック解除用の操作部品として利用すれば、シート状態をチップアップ状態にてロックしたりロック解除したりする構成の車両用シートSを、より少ない数の部品にて構成することが可能となる。
【0052】
また、シート本体Shは、
図1や
図6に示すように、アームレスト6を備えている。アームレスト6は、シート幅方向におけるシートバック1の車内側の端部に取り付けられている。より詳しく説明すると、シートバック1の車内側の端部には、後方に窪むことで形成された格納スペースが設けられている。アームレスト6は、通常時、シートバック1に形成された格納スペース内に格納されており、使用に際して当該格納スペースから取り出される。より詳しく説明すると、アームレスト6は、回動可能な状態でシートバック1に取り付けられており、通常時には格納スペース内で起立しており、使用に際して前方へ倒れるように回動し、最終的に略水平となるまで前倒れする。
【0053】
車両用シートSは、シート本体Shの周辺機器として、シートベルト装着用のバックル7を有する。バックル7は、
図1や
図6に示すように、シート本体Shの脇位置に配置されており、より詳しくは、シート幅方向において車内側でシート本体Shと隣り合う位置に配置されている。本実施形態において、バックル7は、本体部分(シートベルトのタングと結合する部分)を支持するための支持ブラケット7aを有し、支持ブラケット7aは、車体フロアに対して回動可能な状態で設けられている。すなわち、本実施形態のバックル7は、支持ブラケット7aの回動により、車体フロアに対して前倒し可能となるように構成されている。そして、シート状態が収納状態に移行する際、バックル7は、シートバック1の側端部によって後方から押され、シートバック1と共に前倒れする。
【0054】
また、車両用シートSは、シート本体Shの周辺機器として、
図7に図示のスライドレール機構4を有する。スライドレール機構4は、前後方向に沿ってシート本体Shをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。すなわち、スライドレール機構4は、車体フロア上に固定されたロアレール4a、及びロアレール4aに対してスライド移動可能なアッパレール4bを、それぞれ一対備えている。シート本体Shは、アッパレール4bに取り付けられており、アッパレール4bのスライド移動に伴って前後移動する。
【0055】
なお、アッパレール4bは、通常時、スライド移動不能な状態でロックされており、乗員が所定の操作を行うと、ロック解除されてスライド移動可能な状態となる。より具体的に説明すると、本実施形態では、アッパレール4bのロックを解除するために操作される操作部材として、
図1に図示の操作ストラップ8が設けられている。この操作ストラップ8は、無端状に成形された帯状の部材であり、
図6に示すように、シート状態が着座可能状態であるときにはシートクッション2の下方位置にある。また、本実施形態では、シート幅方向における車両用シートSの両端部のうち、車外側の端部に操作ストラップ8が設けられている。これにより、ドアを開けた状態で車外側から操作ストラップ8を操作してアッパレール4bのロックを解除することが可能である。
【0056】
操作ストラップ8は、不図示のケーブルを介してスライドロック機構に接続されている。スライドロック機構については、アッパレール4bをロックするための一般的な機器が利用可能であるため、説明及び図示を省略することとする。そして、操作ストラップ8が前方に引っ張られると、ケーブルが牽引される結果、スライドロック機構がアッパレール4bのロックを解除するように動作する。
【0057】
また、車両用シートSは、
図7に図示の支持ベース40を有する。支持ベース40は、スライドレール機構4の直上位置に配置されてシートバック1を支持する。支持ベース40は、シート幅方向において互いに離間した位置に設けられた左右一対のベースブラケット41と、左右一対のベースブラケット41の各々の前方部同士を連結する前方連結部42と、左右一対のベースブラケット41の各々の前後方向中央部同士を連結する中央連結部43と、を有する。
【0058】
ベースブラケット41は、前後方向に長く延出した板金部材であり、アッパレール4bの上面にボルト止めされている。したがって、アッパレール4bがスライド移動する際、ベースブラケット41を含む支持ベース40がアッパレール4bと一体的に前後移動する。また、左右一対のベースブラケット41のうち、一方のベースブラケット41の前後方向中央部では、当該ベースブラケット41の側壁が山状に隆起しており、その頂き部分には、連結リンク11の下端部が回動可能な状態で取り付けられている。
【0059】
連結リンク11は、略弓形に屈曲したリンク部材であり、シートバックフレーム10の下端部とベースブラケット41との間に介在している。つまり、シート本体Sh(厳密には、シートバック1)は、連結リンク11及び支持ベース40を介してスライドレール機構4のアッパレール4bに固定されている。
【0060】
また、連結リンク11は、シート本体Shのシート幅方向両端部の各々に一つずつ(計2つ)設けられている。一方の連結リンク11の下端部は、シート幅方向において当該連結リンク11と同じ側に位置するベースブラケット41の前後方向中央部の頂き部に、回動可能な状態で支持されている。これにより、上記の連結リンク11が支持ベース40のベースブラケット41に対して前方に向かって回動し、これに伴って、シートバック1が前倒れするようになる。
【0061】
もう一方の連結リンク11の下端部には、リクライニング装置13が取り付けられている。リクライニング装置13は、シート幅方向において、連結リンク11、及び、当該連結リンク11と同じ側に位置するベースブラケット41の間に配置されている。リクライニング装置13は、公知の構造(一般的なリクライニング装置の構造)となっており、その状態をロック状態及びアンロック状態の間で切り替えることが可能である。リクライニング装置13がロック状態であるとき、連結リンク11が回動不能な状態となっており、そのため、シートバック1がその時点での姿勢にてロックされる。他方、リクライニング装置13がアンロック状態になると、連結リンク11がベースブラケット41に対して回動可能な状態となり、この結果、シートバック1を自由に回動することが可能となる。
【0062】
ベースカバー60は、
図1から分かるように、支持ベース40全体及びスライドレール機構4を上方から覆う樹脂成形品である。本実施形態において、ベースカバー60は、支持ベース40及びスライドレール機構4を覆う機能の他に、シート状態を切り替える際にシートクッション2の移動をガイドする機能を備えている。さらに、本実施形態のベースカバー60は、シート状態が着座可能状態であるときにシートクッション2を下方から支える機能を備えている。これらの機能を含め、ベースカバー60の構成については、次の項で詳しく説明することとする。
【0063】
<<ベースカバーの詳細構成>>
以下では、ベースカバー60の詳細構成について、既出の
図1~
図7と共に、
図8~
図12を参照しながら説明する。
図8は、ベースカバー60を上方から見たときの図である。
図9は、ベースカバー60中のガイド部61の内部構造を示す断面図であり、
図8中のX-X断面を模式的に示した図である。
図10~
図12は、変形例に係るガイド部61の内部構造を示す断面図であり、
図9と対応する図である。
【0064】
ベースカバー60は、上面視で
図8に図示の外形形状をなしており、車体フロア上に載置されている。また、ベースカバー60は、全体的に上方に膨出しており、その内側には支持ベース40及びベースカバー60を収容するのに十分な空間が形成されている。また、本実施形態のベースカバー60は、前後二分割されており、二つのピース(ベースカバー60を構成する断片状のピース)を組み合わせることで構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、ベースカバー60が一部品(一つのピース)のみで構成されていてもよい。
【0065】
また、
図1及び
図6に示すように、ベースカバー60のシート幅方向両端部には、他の部分よりも上方に向かって隆起した隆起部分が形成されている。この隆起部分は、ガイド部61を構成しており、前後方向に沿ってベースカバー60の前端から後端に亘って拡がるように設けられている。
【0066】
ガイド部61は、
図2~
図4に示すように、側方視で略山型となっており、その上端面は、上方に突出した円弧をなすように湾曲した平面となっている。また、ガイド部61の前端面は、
図2~
図4に示すように傾斜面となっており、その延長線上には収納フロアFが配置されている。また、ガイド部61は、シート幅方向において若干の広がり(横幅)を有している。
【0067】
以上のように構成されたガイド部61は、シート状態が収納状態へ移行する際に、シート本体Shの一部分と摺接することでシートバック1及びシートクッション2の移動をガイドする。より詳しく説明すると、シート状態が収納状態へ移行する際、シートバック1が前倒れすると、これに伴って、シートクッション2が収納フロアFに向かって前方に移動する。このとき、
図3に示すように、連結部材5の下面が、収納フロアFに向かって傾斜しているガイド部61の前端面上を摺動(具体的には滑走)する。これにより、シートクッション2は、ガイド部61にガイドされて収納フロアFへスムーズに向かう。
【0068】
さらに、本実施形態のガイド部61は、シート状態が着座可能状態であるときには、
図2及び
図6に示すように、シートクッション2の下部に当接してシートクッション2を支える。このようにガイド部61は、シート収納時にシートクッション2の移動をガイドすると共に、シート使用時(着座時)においてシートクッション2を支えるものである。これにより、ダイブダウン型の車両用シートSにおいてシートクッション2を支持するための別部材(例えば、従来のダイブダウン型の車両用シートが有する脚部材)を設ける必要がなく、その分、シート構成部品の数が少なくなる。
【0069】
なお、本実施形態のガイド部61は、シート状態が着座可能状態であるとき、
図2に示すように、シートクッション2の前後方向中央よりも後方位置にてシートクッション2を支える(すなわち、シートクッション2の下部に当接する)。シートクッション2のうち、前後方向中央よりも後方の部分は、乗員が車両用シートSに着座した際に乗員の臀部や大腿部が載る部分である。したがって、ガイド部61がシートクッション2の後方部分を支持することにより、シート使用時には、シートクッション2をより安定的に支えることが可能となる。
【0070】
また、ガイド部61は、シート幅方向において互いに離間した位置に配置された第一ガイド部61L及び第二ガイド部61Rを有する。第一ガイド部61Lは、シート幅方向における車両用シートSの両端部のうち、車外側の端部に設けられている。第二ガイド部61Rは、車内側の端部に設けられている。第一ガイド部61L及び第二ガイド部61Rは、いずれもベースカバー60の一部分をなしており、換言すると、第一ガイド部61L及び第二ガイド部61Rの双方は、一部品として一体化されている。つまり、ベースカバー60は、第一ガイド部61L及び第二ガイド部61Rを構成する部品に相当する。
なお、第一ガイド部61L及び第二ガイド部61Rは、ベースカバー60のシート幅方向中央を境にして左右対称に配置されており、いずれも上述したガイド部61の形状をなしている。
【0071】
そして、シート状態が着座可能状態であるときには、第一ガイド部61L及び第二ガイド部61Rの双方がシートクッション2の下部と当接してシートクッション2を支える。このように左右一対のガイド部61によってシートクッション2を支えることで、シート使用時におけるシートクッション2の支持状態をより安定させることが可能になる。なお、ガイド部61の個数について特に制限はなく、少なくとも一つ以上設けられていればよい。
【0072】
ガイド部61の構造についてより詳しく説明すると、各ガイド部61(第一ガイド部61L及び第二ガイド部61Rの各々)は、樹脂成形品であるベースカバー60のシート幅方向端部に形成された隆起部分によって構成されている。また、各ガイド部61は、
図9に示すように中空状に成形されている。すなわち、ガイド部61を構成する隆起部分の内側には、空洞Vが設けられている。
【0073】
さらに、本実施形態では、
図9に示すように、各ガイド部61の内側に形成された空洞Vを囲む内壁面に補強用のリブが設けられている。このリブは、ガイド部61の内側に形成された空洞Vを囲む内壁面のうち、上端に位置する部分から下方に向かって延出したボス状のリブ(以下、ボス状リブ62)である。ボス状リブ62は、その下端が支持ベース40のベースブラケット41の上面に突き当たる位置まで延出している。このようなボス状リブ62が設けられていることで、中空状のガイド部61の剛性が向上する。この結果、ガイド部61が、シートクッション2の荷重に抗してシートクッション2を適切に支えるようになる。
【0074】
なお、ガイド部61を補強する構成については、上記のボス状リブ62を設ける構成に限定されるものではなく、
図10~
図12に図示した変形例(以下、第一変形例、第二変形例及び第三変形例)が考えられる。第一変形例では、
図10に示すように、ボス状リブ62を設ける代わりに、一対の凸状リブ63が設けられている。各凸状リブ63は、各ガイド部61の内側に形成された空洞Vを囲む内壁面から内側に突出しており、且つ、下方に向かってベースブラケット41の上面に突き当たる位置まで延出している。
【0075】
第二変形例では、
図11に示すように、各ガイド部61の内側に形成された空洞V内に柱状の鉄芯64が収容されている。鉄芯64は、ガイド部61を構成しているベースカバー60の隆起部部分の上端部を補強するための補強部材に相当し、ベースブラケット41の上端面に溶接されており、上方に向かって延出している。より詳しくは、鉄芯64は、各ガイド部61の内側に形成された空洞Vを囲む内壁面のうち、上端面に突き当たる位置まで延出している。
【0076】
第三変形例では、
図12に示すように、鉄芯64の代わりに、略逆さU字状に折り曲げられた補強ワイヤ65がガイド部61内の空洞Vに収容されている。補強ワイヤ65は、ガイド部61を構成しているベースカバー60の隆起部部分の上端部を補強するための補強部材に相当し、ベースブラケット41の上端面に溶接されており、上方に向かって延出している。より詳しく説明すると、補強ワイヤ65は、空洞Vを囲む内壁面のうち、上端面付近まで延出した上で当該上端面に沿うように折れ曲がった後、ベースブラケット41に向かって下方に延出している。一方、
図12に示すように、ガイド部61において空洞Vを囲む内壁面の上端面からは、爪状の保持部66が突出成形されている。保持部66は、補強ワイヤ65のうち、空洞Vを囲む内壁面の上端面に沿って延出している部分と係合して補強ワイヤ65を保持している。
【0077】
ベースカバー60のその他の特徴について説明すると、ベースカバー60のうち、シート幅方向において第一ガイド部61Lと第二ガイド部61Rとの間に位置する部分は、
図6に示すように、第一ガイド部61Lや第二ガイド部61Rよりも下方に落ち込んでおり(凹んでおり)、凹部状のスペースを形成している。このスペースは、荷物収容部67を構成している。これにより、例えば、シート状態が着座可能状態やチップアップ状態にある間に、若干の高さを有する荷物を、シートクッション2の下方に位置するスペース(荷物収容部67内)に置いておくことが可能となる。
【0078】
次に、ガイド部61の構成について、その周辺機器との位置関係を言及しながら説明する。
シート幅方向における車両用シートSの両端部のうち、車内側の端部には、
図6に示すように、ガイド部61(厳密には第二ガイド部61R)が設けられている。また、シート本体Shの車内側の端部(厳密には、シートバック1の車内側の側端部)には、前述したようにアームレスト6が設けられている。そして、本実施形態では、
図6に示すように、第二ガイド部61Rがシート幅方向においてアームレスト6が設けられた範囲と差し掛かるように配置されている。換言すると、アームレスト6のうちの少なくとも一部分は、シート幅方向における第二ガイド部61Rの端(車内側の端)よりも車外側に位置している。このような構成であれば、第二ガイド部61Rとの位置関係により、アームレスト6の車内側への突出度合いを抑えることが可能となる。
【0079】
ただし、上記の位置関係に限定されず、第二ガイド部61Rがシート幅方向においてアームレスト6が設けられた範囲から外れた位置に配置されていてもよい。より具体的に説明すると、アームレスト6が第二ガイド部61Rよりも車内側に位置してもよい。
【0080】
また、
図6に示すように、シート幅方向における車両用シートSの両端部のうち、車外側の端部にはガイド部61(厳密には、第一ガイド部61L)が設けられていると共に、スライドレール機構4のロックを解除するために操作される操作ストラップ8が設けられている。そして、本実施形態では、
図6に示すように、操作ストラップ8がシート幅方向において第一ガイド部61Lが設けられた範囲と差し掛かるように配置されている。より詳しく説明すると、第一ガイド部61Lの前端面のうち、上下方向中央部には、
図8に図示の横長矩形状の開口61aが形成されている。この開口61aに操作ストラップ8が挿通されており、操作ストラップ8の一部分がベースカバー60内に収容され、残りの部分が開口61aよりも前側に位置して露出している。操作ストラップ8は、その露出部分が乗員によって前方へ引っ張られることで操作される。
【0081】
以上の構成であれば、第一ガイド部61Lとの配置位置を考慮して操作ストラップ8の配置位置が設定される結果、操作ストラップ8を備えた車両用シートSのサイズをよりコンパクト化することが可能となる。
なお、上記の位置関係に限定されず、操作ストラップ8がシート幅方向において第一ガイド部61Lが設けられた範囲から外れた位置に配置されていてもよい。より具体的に説明すると、操作ストラップ8が第一ガイド部61Lよりも車内側に位置してもよい。
【0082】
また、
図6に示すように、シート幅方向における車両用シートSの両端部のうち、車内側の端部にはガイド部61(厳密には、第二ガイド部61R)が設けられていると共に、シートベルト装着用のバックル7が設けられている。そして、本実施形態では、
図6及び
図8から分かるように、第二ガイド部61Rは、シート幅方向においてバックル7が設けられた範囲から外れた位置に配置されており、具体的には、バックル7よりも車外側に配置されている。より詳しく説明すると、ベースカバー60において第二ガイド部61Rよりも車内側に位置する部分には、
図8に示すように前後方向に沿って延びたスリット状の挿通孔68が設けられている。この挿通孔68には、バックル7の支持ブラケット7aが挿通されている。バックル7(厳密には、支持ブラケット7a)は、上記挿通孔68が形成された範囲内で回動する。つまり、本実施形態では、バックル7が第二ガイド部61Rからずれた位置に配置され、第二ガイド部61Rよりも車内側で回動する。
【0083】
以上の位置関係であれば、バックル7との干渉を抑えつつ、第二ガイド部61Rを適切に配置することが可能となる。
ただし、上記の位置関係に限定されず、第二ガイド部61Rがシート幅方向においてバックル7が設けられた範囲と差し掛かるように配置されていてもよい。
【0084】
以上までに本発明の乗物用シートの構成について一例を挙げて説明してきたが、上述した実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の実施形態も考えられる。例えば、上述の実施形態において、車両用シートSは、着座可能状態にあるときにロックされず可動自在であることとしたが、これに限定されるものではなく、シート状態が着座可能状態であるときにシートクッション2をロックする構成(以下、他の実施形態)も考えられる。以下、他の実施形態について説明する。
【0085】
他の実施形態に係る車両用シートSは、シート幅方向両端部の各々に
図13に図示のクッションロック装置80を備えている。
図13は、他の実施形態に係る車両用シートSが有するクッションロック装置80を示す側方断面図である。
【0086】
クッションロック装置80は、シート状態が着座可能状態であるときに、シートクッション2をその時点での位置にてロックする。また、クッションロック装置80は、シート状態がチップアップ状態であるときに、シートクッション2をその時点での位置にてロックする。また、クッションロック装置80は、前述した実施形態のクッションロック装置25と同様、連結部材本体部5aの後端部に設けられている。クッションロック装置80は、公知の構造(一般的なクッションロック装置の構造)となっており、その状態をロック状態及びアンロック状態の間で切り替えることが可能である。
また、クッションロック装置80は、前述した実施形態のクッションロック装置25と同様、シートクッション2の下面から突出したダンパ26を操作することで動作する。具体的に説明すると、ダンパ26は、ケーブル70を介してクッションロック装置80に連結されている。かかる構成において、クッションロック装置80のうち、連結部材5に取り付けられたロック片81が、シートバック1に取り付けられた係合部材82の係合孔(詳しくは、第1係合孔82a及び第二係合孔82bのうちのいずれか)に係合していると、シートクッション2がその時点の位置でロックされる。なお、シート状態が着座可能状態であるときには、ロック片81が第1係合孔82aに係合されており、シート状態がチップアップ状態であるときには、ロック片81が第二係合孔82bに係合されている。
そして、シートクッション2がロックされているときに、ダンパ26をスライド移動させると、ダンパ26に接続されたケーブル70が牽引されてクッションロック装置80各部が動作する。この結果、ロック片81が係合孔から脱するようになり、シートクッション2のロックが解除されるようになる。
【0087】
また、
図14に示すように、ベースカバー60の一部がくり貫かれており、シートクッション2の下部を支持するクッションフレーム61LF,61RF(詳細には、ベースブラケット41の頂部)が露出しているように構成することも可能である。このような構成によれば、シートクッション2を剛性の高いクッションフレーム61LF,61RFによって適切かつ安定に支持することが可能となる。
【0088】
<<第2実施形態に係る車両用シート>>
次に、第2実施形態に係る車両用シートついて説明する。第2実施形態に係る車両用シートを説明するにあたり、乗物用シートに関する課題について説明する。
【0089】
着座可能状態から収納状態やチップアップ状態に状態を切り替えることが可能な乗物用シートは既に知られている。例えば、特開2016-88481には、シートバックと、シートクッションと、ヘッドレストとを有するシート本体と、シート本体を下方から支持する脚部材(着脱脚)と、脚部材を下方から支持する支持ベースと、支持ベース上に取り付けられ、脚部材の下端を着脱可能に保持する脚保持部材と、支持ベースを上方から覆うベースカバーと、から主に構成された乗物用シートが記載されている。
【0090】
(第2実施形態に係る乗物用シートが解決しようとする課題)
ところで、乗物用シートについては、シート構成部品の数を削減することが望まれている。したがって、脚部材を廃止することで、着座可能状態から収納状態やチップアップ状態との間で状態を切り替えることが可能な乗物用シートを、より少ない数(具体的には、脚部材を有する従来の乗物用シートの構成部品の数よりも少ない数)の部品にて構成することや構造の簡素化が求められている。
【0091】
脚部材には、シートクッション側からの荷重を保持する機能があるため、脚部材を廃止する場合、シートクッション側からの荷重を保持する機能を、他の構造で補う必要があった。
【0092】
上記の課題は、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、
シートバック及びシートクッションを備える乗物用シートであって、
前記シートバックが車体フロアに対して起立して前記シートクッションに着座者を着座させることが可能な着座可能状態と、前記シートバックが前記車体フロアに対して倒伏して前記シートクッションが前記シートバックと前記車体フロアとの間に配置された収納状態と、前記シートバックが前記車体フロアに対して起立して前記シートクッションが前記シートバックに向かって跳ね上がったチップアップ状態との間で状態を切り替えることが可能なシート本体と、
前記シートバックを前記車体フロア側に対し回動可能に支持する回動軸と、
前記回動軸を覆うカバー部材と、を備え、
前記着座可能状態において、前記カバー部材が前記シートクッションを支持することにより解決される。
【0093】
以上のように構成された乗物用シートでは、着座可能状態から収納状態やチップアップ状態との間で状態を切り替えることが可能な乗物用シートを簡素な構造で提供することが可能となる。
【0094】
また、脚部材には、シートバックに対して後方側から加わる荷重を保持する機能があるため、脚部材を廃止する場合、シートバックに対して後方側から加わる荷重を保持する機能を、他の構造で補う必要があった。
【0095】
上記の課題は、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、
シートバック及びシートクッションを備える乗物用シートであって、
前記シートバックが車体フロアに対して起立して前記シートクッションに着座者を着座させることが可能な着座可能状態と、前記シートバックが前記車体フロアに対して起立して前記シートクッションが前記シートバックに向かって跳ね上がったチップアップ状態との間で状態を切り替えることが可能なシート本体と、
前記シートバックを前記車体フロア側に対し回動可能に支持する回動軸と、
前記回動軸を覆うカバー部材と、を備え、
前記シートバックは、前記乗物用シートの上下方向に延在する左右一対のバックサイドフレームを有するバックフレームを備え、
前記シートクッションは、前記乗物用シートの上下方向に延在する左右一対のクッションサイドフレームを有するクッションフレームを備え、
前記シートバックは、前記着座可能状態において前記シートバックをロック可能なリクライニング装置を前記バックサイドフレームの一方側に備え、
前記バックサイドフレームの他方側は前記車体フロアに対し、フリーヒンジとして構成され、
前記着座可能状態において、前記カバー部材が前記シートクッションを支持し、
前記シートクッションは、前記チップアップ状態において前記シートクッションをロックするチップアップロック装置を、前記クッションサイドフレームの他方側に備えることにより解決される。
【0096】
以上のように構成された乗物用シートでは、着座可能状態において、シートバックフレームに対し、後方側から大きな荷重がかかった際に、一方側はリクライニング装置で荷重を保持し、他方側は、シートバックとシートクッションがチップアップロック装置でロックされており、シートバックフレームがフリーヒンジとなっているため、シートクッション下面側とカバー部材が当接することで荷重を保持することが可能となる。
【0097】
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートにおいて、前記回動軸は、前記バックサイドフレームの一方側に設けられた第1回動軸と、前記バックサイドフレームの他方側に設けられた第2回動軸と、を備え、前記カバー部材は、前記第1回動軸及び前記第2回動軸を一体的に覆っているとよい。
上記の構成では、シートクッションを安定的に支持することが可能となる。
【0098】
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートにおいて、前記乗物用シートの前後方向に沿って前記シート本体をスライド移動させるためのスライドレール機構を備え、前記カバー部材は、前記乗物用シートの幅方向における両端部に、上方に向かって隆起した第1隆起部及び第2隆起部を備え、前記着座可能状態において、前記第1隆起部及び前記第2隆起部が前記シートクッションと当接し、前記乗物用シートの幅方向において、前記第1隆起部及び前記第2隆起部は、前記スライドレール機構よりも外側に配置されているとよい。
上記の構成では、シートクッションを安定的に支持することが可能となる。
【0099】
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートにおいて、前記カバー部材は、前記乗物用シートの前後方向において前方に配置される前側カバー部材と、該前側カバー部材の後方に接続される後側カバー部材と、により構成されており、前記前側カバー部材と前記後側カバー部材は、嵌合部において接続されており、該嵌合部は、前記第1隆起部及び前記第2隆起部よりも後方に設けられているとよい。
上記の構成では、第1隆起部及び第2隆起部が嵌合部よりも後方に配置されており、荷重を支持する部分には嵌合部が設けられないため、効率よく荷重を支持することが可能となる。
【0100】
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートにおいて、前記乗物用シートの前後方向における前記シートクッションの中央部(詳細には、着座者のヒップポイント)が、前記第1隆起部及び前記第2隆起部よりも前方に配置されているとよい。
上記の構成では、追加の付勢部材を用いることなく、シートバックが前方に倒れるようになるため、部品点数が増加してしまうことを抑制することが可能となる。
【0101】
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートにおいて、前記シートクッションは、前記シート本体をスライド移動させるためスライドレール操作レバーを備え、前記スライドレール操作レバーは、上方から下方に向かって回動するとよい。
上記の構成では、スライドレール操作レバーを操作する際にシートクッションがチップアップしてしまうことを抑制することが可能となる。
【0102】
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートにおいて、前記シートクッションはオットマンを備え、前記カバー部材は、物品を収容可能な凹部を備え、前記オットマンは、前記乗物用シートの前面視においての前記凹部の前方を覆うことが可能であるとよい。
上記の構成では、物品を収容する凹部を目隠しすることが可能となる。
【0103】
(第2実施形態に係る乗物用シートの効果)
以上のように、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、着座可能状態から収納状態やチップアップ状態との間で状態を切り替えることが可能な乗物用シートを簡素な構造で提供することが可能となる。
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、着座可能状態において、シートバックフレームに対し、後方側から大きな荷重がかかった際に、一方側はリクライニング装置で荷重を保持し、他方側は、シートバックとシートクッションがチップアップロック装置でロックされており、シートバックフレームがフリーヒンジとなっているため、シートクッション下面側とカバー部材が当接することで荷重を保持することが可能となる。
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、上記の構成では、シートクッションを安定的に支持することが可能となる。
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、シートクッションを安定的に支持することが可能となる。
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、第1隆起部及び第2隆起部が嵌合部よりも後方に配置されており、荷重を支持する部分には嵌合部が設けられないため、効率よく荷重を支持することが可能となる。
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、追加の付勢部材を用いることなく、シートバックを前方に倒れるようになるため、部品点数が増加してしまうことを抑制することが可能となる。
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、スライドレール操作レバーを操作する際にシートクッションがチップアップしてしまうことを抑制することが可能となる。
また、下記の第2実施形態に係る乗物用シートによれば、物品を収容する凹部を目隠しすることが可能となる。
【0104】
以下、第2実施形態に係る車両用シートS2について、
図15~29を参照しながら説明をする。なお、第1実施形態に係る車両用シートSと重複する内容は説明を省略する。また、第2実施形態についての説明図では、先に説明した構成例と重複する機器・部品に対して、先に説明した構成例にて用いた符号と同一の符号を付している。
【0105】
<第2実施形態に係る車両用シートの基本構成>
第2実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS
2)の基本構成について、
図15を参照しながら説明する。
図15は、車両用シートS2の斜視図である。
【0106】
車両用シートS2は、
図15に示すように、シート本体Shを備えている。シート本体Shは、シートバック1及びシートクッション2を備えている。また、連結部材5の後端部には、既出の
図7に示すように、ロック装置としてのクッションロック装置25が取り付けられている。クッションロック装置25は、シート幅方向において、連結部材5とシートバックフレーム10の側端との間に挟まれた位置に配置されている。クッションロック装置25は、シート状態が着座状態であるときに、シートクッション2をその時点での位置にてロックする。また、クッションロック装置25は、シート状態がチップアップ状態であるときに、シートクッション2をその時点での位置にてロックする。クッションロック装置25は、以下に詳述するように、その状態をロック状態及びアンロック状態の間で切り替えることが可能である。
【0107】
図15に示すように、車両用シートS2において、シートクッション2は、シート本体Shをスライド移動させるためスライドレール操作レバー2Sを備えている。スライドレール操作レバー2Sは、着座状態にあるときに、上方から下方に向かって回動するように構成されている。このような構成によれば、スライドレール操作レバー2Sを操作する際にシートクッション2がチップアップしてしまうことを抑制することが可能となる。
【0108】
図15に示す例では、シートクッション2を傾動させるためのリクライニング操作レバー2Tは、シートバック1の車内側の肩口に設けられている。リクライニング操作レバー2Tは、不図示のケーブルに接続されており、リクライニング操作レバー2Tを操作することで、対応するケーブルが引かれてロックが解除されることで、シートクッション2の傾動(リクライニング)が可能となる。リクライニング操作レバー2Tは、レバーを後方かつ上方へと持ち上げる方向に操作される。
【0109】
図16に示すように、シートクッション2の下面に、コンビニフック9が設けられている。シートクッション2の下面にコンビニフック9が設けられていると、チップアップ状態において、後述する荷物収容凹部165の上に、荷物を袋に入れて載置する際に、袋の持ち手をコンビニフック9に引っかけることが可能となる。また、コンビニフック9に袋の持ち手を引っかけることで、荷物の入った袋を吊り下げることも可能となる。
【0110】
(ベースカバー160)
ベースカバー160は、支持ベース40全体及びスライドレール機構4を上方から覆う樹脂成形品である。本実施形態において、ベースカバー160は、支持ベース40及びスライドレール機構4を覆う機能の他に、シート状態を切り替える際にシートクッション2の移動をガイドする機能を備えている。また、後述するように、ベースカバー160は、荷物等の物品を収容するための荷物収容凹部165を備えている。
【0111】
ベースカバー160は、
図16及び
図17に図示の外形形状をなしており、車体フロア上に載置されている。また、ベースカバー160は、全体的に上方に膨出しており、その内側には支持ベース40及びスライドレール機構4を収容するのに十分な空間が形成されている。また、本実施形態のベースカバー160は、
図17及び
図18に示すように、前側
ベースカバー160aと、後側
ベースカバー160bに分割されて構成されている。
【0112】
また、
図16及び
図17に示すように、ベースカバー160のシート幅方向両端部には、他の部分よりも上方に向かって隆起した第1隆起部161及び第2隆起部162が形成されている。第1隆起部161は、右側のベースブラケット41の頂部に対応する位置に、頂部161aを備えており、第2隆起部162は、左側のベースブラケット41の頂部に対応する位置に、頂部162aを備えている。第2隆起部162は、ガイド部を構成しており、前後方向に沿ってベースカバー160の前端から後端に亘って拡がるように設けられている。そして、ベースカバー160の後方向端部には、前方部163や荷物収容凹部165よりも上方に向かって突出した及び後方突出部164が形成されている。
【0113】
第2隆起部162は、
図16及び
図17に示すように、側方視で略山型となっており、その上端面は、上方に突出した円弧をなすように湾曲した平面となっている。また、第2隆起部162の前端面は、傾斜面となっており、その延長線上には収納フロアFが配置されている。また、第2隆起部162は、シート幅方向において若干の広がり(横幅)を有している。
【0114】
以上のように構成された第2隆起部162は、シート状態が収納状態へ移行する際に、シート本体Shの一部分と摺接することでシートバック1及びシートクッション2の移動をガイドする。より詳しく説明すると、シート状態が収納状態へ移行する際、シートバック1が前倒れすると、これに伴って、シートクッション2が収納フロアFに向かって前方に移動する。このとき、連結部材5の下面が、収納フロアFに向かって傾斜している第2隆起部162の前端面上を摺動(具体的には滑走)する。これにより、シートクッション2は、第2隆起部162にガイドされて収納フロアFへスムーズに向かう。
【0115】
また、ベースカバー160のうち、シート幅方向において第1隆起部161と第2隆起部162との間に位置し、前後方向において前方部163と後方突出部164との間に位置する部分は、
図17に示すように、第1隆起部161や第2隆起部162よりも下方に落ち込んでおり(凹んでおり)、凹部状のスペースを形成している。このスペースは、荷物収容凹部165を構成している。これにより、例えば、シート状態が着座状態やチップアップ状態にある間に、若干の高さを有する荷物を、シートクッション2の下方に位置するスペース(荷物収容凹部165内)に置いておくことが可能となっている。
【0116】
図18に示すように、ベースカバー160は、前側
ベースカバー160aの後端部である後方突出部164に形成された係合凹部166aに、後側
ベースカバー160bの前端部に形成された係合凸部166bが篏合することで一体化されている。ここで、前側
ベースカバー160aの荷物収容凹部165の後方端部を構成する後方突出部164に係合凹部166aが設けられているため、剛性が高まった箇所において後側
ベースカバー160bを嵌合させることが可能となる。
【0117】
また、
図17及び
図18に示すように、ベースカバー160は、シート前後方向において、嵌合部を構成する係合凹部166a及び係合凸部166bは、第1隆起部161及び第2隆起部162よりも後方に設けられている。このような構成によれば、第1隆起部161及び第2隆起部162が嵌合部よりも後方に配置されており、荷重を支持する部分には嵌合部が設けられないため、効率よく荷重を支持することが可能となる。より詳細には、後突時に乗員が沈み込んだときにも、第1隆起部161及び第2隆起部162によって、乗員の沈み込みによる荷重を支持することが可能となる。
【0118】
図16に示すように、シートバック1を車体フロア側に対し回動可能に支持する回動軸Ax、より詳細には、バックサイドフレームとしての連結リンク11(連結リンク11a及び連結リンク11b)の回動軸Ax(第1回動軸及び第2回動軸)がベースカバー160によって一体的に覆われている。ここで、回動軸Axは、シートバック1を車体フロア側に対し回動可能に支持する軸である。車両用シートS2では、着座可能状態において、ベースカバー160がシートクッション2を支持することなる。
【0119】
従来の車両用シートでは、シートクッション側からの荷重を保持する脚部材が存在していたが、車両用シートS2では、脚部材を設けることなく、回動軸Axを覆うカバー部材としてのベースカバー160がシートクッション2側からの荷重を保持する。したがって、車両用シートS2によれば、着座可能状態から収納状態やチップアップ状態との間で状態を切り替えることが可能な乗物用シートを簡素な構造で提供することが可能となる。
【0120】
車両用シートS2では、シートバック1は、着座可能状態においてシートバック1をロック可能なリクライニング装置13をバックサイドフレームの一方側(右側の連結リンク11b)に備えている(
図7)。また、バックサイドフレームの他方側(左側の連結リンク11a)は車体フロアに対し、フリーヒンジにて取り付けられている。そして、シートクッション2は、チップアップ状態においてシートクッションをロックするチップアップロック装置としてのクッションロック装置25(
図13)を、クッションサイドフレームの他方側、つまり左側の連結部材本体部5aに備えている。
【0121】
車両用シートS2では、着座可能状態において、シートバックフレーム10に対し、後方側から大きな荷重がかかった際に、一方側(右側の連結リンク11b)はリクライニング装置13で荷重を保持し、他方側(左側の連結リンク11a)は、フリーヒンジにて車体フロアに取り付けられ、シートバック1とシートクッション2がクッションロック装置25でロックされているため、シートクッション2の下面側とベースカバー160が当接することで荷重を保持することが可能となる。
【0122】
図19及び
図20に示すように、車両用シートS2は、シート状態が収納状態であるとき、シートバック1のシート幅方向中央部の後端部1aよりも後方において荷物収容凹部165が配置されている。より詳細には,車両用シートS2は、シート状態が収納状態であるとき、シート前後方向においてシートバック1のシート幅方向中央部の後端部1aが、荷物収容凹部165の後端である後方突出部164よりも前方に配置されている。このような構成によれば、シート状態が収納状態であるときにおいても、荷物収容凹部165(厳密には、荷物収容凹部165のうち後方の部分)に荷物を収容することが可能となっている。
【0123】
また、
図21は、ベースカバー160(カバー部材)を上方から見た図であり、
図22に
図21のY-Y断面図を示し、
図23に、
図21のZ-Z断面図を示す。車両用シートS2において、ベースカバー160は、シート幅方向における両端部にそれぞれ、上方に向かって隆起した第1隆起部161及び第2隆起部162を備えている。車両用シートS2は、着座可能状態において、第1隆起部161及び第2隆起部162が、シートクッション2の下面と当接することでシートクッション2を支持する。
図22及び
図23に示すように、シート幅方向において、第1隆起部161及び第2隆起部162は、それぞれ、対応するスライドレール機構4よりも外側にオフセットして配置されている。より詳細には、シート幅方向において、第1隆起部161の中心線161bが、対応するロアレール4a及びアッパレール4bの中心線4cよりも外側にオフセットして配置されており、第2隆起部162の中心線162bが、対応するロアレール4a及びアッパレール4bの中心線4cよりも外側にオフセットして配置されている。このような構成によれば、シートクッション2を安定的に支持することが可能となる。
【0124】
通常、自動車のフロントシートのリクライニングロック装置は、リクライニングロック解除レバー(例えば、リクライニング操作レバー2T)で、ロックオフすると、シートバックを前方に付勢するスパイラルスプリングが作用して、所望の位置に再ロックさせている。ここで、スパイラルスプリングでシートバックを前側に付勢しない車両用シートの場合、乗員がリクライニングロック解除レバーを操作してもシートバックが自動で前方に回動しないため、操作感がわかり難いという課題があった。
【0125】
また、シートバックを前方に付勢するスパイラルスプリングを備える場合、収納状態(ダイブダウン状態)から着座状態へ復帰させる際には、重さを感じてしまうということが想定される。
【0126】
図24に示すように、車両用シートS2において、シート前後方向におけるシートクッション2の中央部2bが第1隆起部161及び第2隆起部162よりも前方に配置されている。このような構成にすると、着座者のヒップポイントHPが、シート前後方向において、ベースカバー160(カバー部材)の第1隆起部161及び第2隆起部162(詳細には、第1隆起部161の頂部161a及び第2隆起部162の頂部162a)よりも前方に配置される。
【0127】
リクライニングロック解除レバーを操作して、リクライニングロックを解除すると、シートバック1が、乗員の自重で前方に回転し始めるため、リクライニングロックを解除する操作が軽快に行うことが可能となる。また、収納状態(ダイブダウン状態)からの復帰時は、シートバック1及びシートクッション2の自重のみであるため、操作荷重の増大を抑制可能となる。また、追加の付勢部材(スパイラルスプリング)を用いることなく、シートバック1が前方に倒れるようになるため、部品点数が増加してしまうことを抑制することが可能となる。
【0128】
<変形例>
以上までに本発明の乗物用シートの構成について一例を挙げて説明してきたが、上述した実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の実施形態も考えられる。
【0129】
例えば、着脱可能なオットマンOTを用いることも可能である。以下、
図25乃至28を参照して、着脱可能なオットマンOTについて、その用途と併せて説明をする。
【0130】
図25は、オットマンOTを備える車両用シートS2が着座可能状態であるときの側面図である。
図25に示すように、オットマンOTは、車両用シートS2の前面視においての荷物収容凹部165の前方を覆うことが可能である。具体的には、車両用シートS2の前方から見たときに、荷物収容凹部165に収容された物品B(
図25では靴として例示している)を、オットマンОTによって目隠しすることが可能となる。
【0131】
図26は、車両用シートS2が着座可能状態であるときにオットマンOTを上方に移動させた状態の側面図である。
図26に示す荷物落下防止モードでは、シートクッション2に載置した荷物である物品Bが、前方に移動して、車両用シートS2から落下してしまうことを防止できる。つまり、オットマンOTを回動させることで、シートクッション2上の荷物の落下防止用の障壁として使用することが可能である。
【0132】
図27は、車両用シートS2が着座可能状態であるときにオットマンOTをシートクッション2の着座面に取り付けた状態の側面図である。
図27に示すジュニアシートモードでは、オットマンOTが、シートクッション2の後方に取り付けられており、シートクッション2の座面よりもオットマンOTが高い位置に配置されている。このような状態において、オットマンOTの上に子供が着座することで、車両用シートS2を子供用シートとして使用することが可能となる。
【0133】
図28は、前列の車両用シートS2のシートバック1の背面にオットマンOTを取り付けた状態の側面図である。
図28に示すテーブルモードでは、オットマンが後方の車両用シートS2の着座者から見て、前方の車両用シートS2のシートバック1の背面に取り付けられたオットマンOTをテーブルとして利用することが可能となる。このとき、オットマンOTの裏側、つまり、テーブルとして用いる場合の上面(載置面)が樹脂トレイとして形成されていると好適である。
【0134】
また、オットマンOTを、着脱可能なプレート部材PTとして車両用シートS2に適用することも可能である。
図29は、車両用シートS2が着座可能状態であるときに着脱可能なプレート部材PTをシートバック1やシートクッション2に取り付けた状態の側面図である。
図29に示す仕切りモードでは、車両用シートS2に載置した荷物の荷崩れの防止や、コーナリング時などにおける乗員同士のぶつかりを防止することが可能となる。シート幅方向におけるプレート部材PTの取り付け方を適宜調整することが可能であり、シート幅方向の任意の一方のみにプレート部材PTを取り付けたり、シート幅方向の両側にプレート部材PTを取り付けたりすることが可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 シートバック
1a 後端部
2 シートクッション
2a スリット
2b 中央部
2S スライドレール操作レバー
2T リクライニング操作レバー
3 ヘッドレスト
4 スライドレール機構
4a ロアレール
4b アッパレール
4c中心線
5 連結部材
5a 連結部材本体部(クッションサイドフレーム)
5b 連結部材カバー部
6 アームレスト
7 バックル
7a 支持ブラケット
8 操作ストラップ(操作部材)
9 コンビニフック
10 シートバックフレーム
11 連結リンク(バックサイドフレーム)
Ax 回動軸(第1回動軸,第2回動軸)
13 リクライニング装置
20 シートクッションフレーム
25 クッションロック装置(チップアップロック装置)
26 ダンパ(凸状突起)
40 支持ベース
41 ベースブラケット
42 前方連結部
43 中央連結部
60,160 ベースカバー(カバー部材)
61 ガイド部
61a 開口
61L 第一ガイド部
61R 第二ガイド部
61LF,61RF クッションフレーム
62 ボス状リブ(リブ)
63 凸状リブ(リブ)
64 鉄芯(補強部材)
65 補強ワイヤ(補強部材)
66 保持部
67 荷物収容部
68 挿通孔
70 ケーブル
80 クッションロック装置
81 ロック片
82 係合部材
82a 第1係合孔
82b 第二係合孔
F 収納フロア
S 車両用シート(乗物用シート)
Sh シート本体
V 空洞
160 ベースカバー(収容部)
160a 前側ベースカバー
160b 後側ベースカバー
161 第1隆起部
161a 頂部
161b 中心線
162 第2隆起部
162a 頂部
162b 中心線
163 前方部
164 後方突出部
165 荷物収容凹部(凹部、荷物収容部)
166a 係合凹部
166b 係合凸部
OT オットマン
B 物品
PT プレート部材
HP ヒップポイント