(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】処理選択プログラム、処理選択システム、および処理選択方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B5/00 ZDM
(21)【出願番号】P 2022507007
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2020010062
(87)【国際公開番号】W WO2021181469
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】駒場 祐介
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 義典
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/117021(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0367606(US,A1)
【文献】特開2016-103843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0081538(US,A1)
【文献】特開2012-164109(JP,A)
【文献】特開2019-057159(JP,A)
【文献】特開2015-112209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/278125(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/344219(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/289932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/090202(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
計測対象者の身体に装着され、前記計測対象者に関する情報を計測するセンサが計測したセンサデータを、取得する処理と、
計測状況情報と複数の処理プログラムとの対応関係を参照し、前記センサデータの計測状況情報に応じて、前記センサデータに対する
複数の処理プログラムを選択する処理と、
前記センサデータに対して、選択された前記
複数の処理プログラムを実行する処理と、
選択された前記複数の処理プログラムの実行結果を表示装置に表示させる処理と、
前記表示装置に表示された実行結果のうち、ユーザが採用した実行結果を出力した処理プログラムに係る情報を受け付ける処理と、
計測状況情報と、前記ユーザが採用した実行結果を出力した前記処理プログラムに係る情報とを、前記対応関係に反映することで前記対応関係を更新する処理と、を実行させることを特徴とする処理選択プログラム。
【請求項2】
前記センサデータの計測状況情報は、前記センサの利用者に係る情報、前記センサによる計測環境に係る情報、前記センサの識別情報、前記センサデータの計測時間帯、前記センサを前記
計測対象者に装着するのに要した装着時間、前記
計測対象者の状態、および前記センサデータの時間的長さ、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の処理選択プログラム。
【請求項3】
選択された複数の前記処理プログラムの実行結果を前記表示装置に表示させる際に、選択された複数の前記処理プログラムの過去の採用率を表示させることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の処理選択プログラム。
【請求項4】
選択された複数の前記処理プログラムの実行結果を前記表示装置に表示させる際に、各処理プログラムを実行するのに要した処理時間に係る情報を合わせて表示させることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の処理選択プログラム。
【請求項5】
計測対象者の身体に装着され、前記計測対象者に関する情報を計測するセンサと、
前記センサが計測したセンサデータを取得する取得部と、
計測状況情報と処理プログラムとの対応関係を参照し、前記センサデータの計測状況情報に応じて、前記センサデータに対する
複数の処理プログラムを選択する選択部と、
前記センサデータに対して、選択された前記
複数の処理プログラムを実行する実行部と、
選択された前記複数の処理プログラムの実行結果を表示する表示装置と、
前記表示装置に表示された実行結果のうち、ユーザが採用した実行結果を出力した処理プログラムに係る情報を入力する入力装置と、
計測状況情報と、前記ユーザが採用した実行結果を出力した前記処理プログラムに係る情報とを、前記対応関係に反映することで前記対応関係を更新する更新部と、を備えることを特徴とする処理選択システム。
【請求項6】
前記センサデータの計測状況情報は、前記センサの利用者に係る情報、前記センサによる計測環境に係る情報、前記センサの識別情報、前記センサデータの計測時間帯、前記センサを前記
計測対象者に装着するのに要した装着時間、前記
計測対象者の状態、および前記センサデータの時間的長さ、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする
請求項5に記載の処理選択システム。
【請求項7】
前記表示装置は、選択された複数の前記処理プログラムの実行結果を表示する際に、選択された複数の前記処理プログラムの過去の採用率を表示することを特徴とする
請求項5または請求項6に記載の処理選択システム。
【請求項8】
前記表示装置は、選択された複数の前記処理プログラムの実行結果を表示する際に、各処理プログラムを実行するのに要した処理時間に係る情報を合わせて表示することを特徴とする
請求項5または請求項6に記載の処理選択システム。
【請求項9】
コンピュータが、
計測対象者の身体に装着され、前記計測対象者に関する情報を計測するセンサが計測したセンサデータを取得し、
計測状況情報と処理プログラムとの対応関係を参照して、前記センサデータの計測状況情報に応じて、前記センサデータに対する
複数の処理プログラムを選択し、
前記センサデータに対して、選択された前記
複数の処理プログラムを実行
し、
選択された前記複数の処理プログラムの実行結果を表示装置に表示させ、
前記表示装置に表示された実行結果のうち、ユーザが採用した実行結果を出力した処理プログラムに係る情報を、入力装置から受け付け、
計測状況情報と、前記ユーザが採用した実行結果を出力した前記処理プログラムに係る情報とを、前記対応関係に反映することで前記対応関係を更新する、ことを特徴とする処理選択方法。
【請求項10】
前記センサデータの計測状況情報は、前記センサの利用者に係る情報、前記センサによる計測環境に係る情報、前記センサの識別情報、前記センサデータの計測時間帯、前記センサを前記
計測対象者に装着するのに要した装着時間、前記
計測対象者の状態、および前記センサデータの時間的長さ、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする
請求項9に記載の処理選択方法。
【請求項11】
前記コンピュータは、前記表示装置には、選択された複数の前記処理プログラムの実行結果を表示させると共に、選択された複数の前記処理プログラムの過去の採用率を表示させることを特徴とする
請求項9または請求項10に記載の処理選択方法。
【請求項12】
前記コンピュータは、前記表示装置には、選択された複数の前記処理プログラムの実行結果を表示させると共に、各処理プログラムを実行するのに要した処理時間に係る情報を合わせて表示させることを特徴とする
請求項9または請求項10に記載の処理選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、処理選択プログラム、処理選択システム、および処理選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気通信回線などを経由して、センサが計測したセンサデータを収集し、所定の判断を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/179359号
【文献】国際公開第2015/162816号
【文献】特開2007-303989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサが計測したセンサデータに対して、所定の処理プログラムを用いて処理を行うことで、必要な情報を得る技術が望まれている。処理プログラムの開発者は、検証工程で利用するサンプルデータ以外は入力データとして想定していない場合が多い。したがって、各処理プログラムは、開発者が想定していないセンサデータに対しては、処理精度が低下する。そこで、センサデータごとに、適切な処理プログラムを選択することが望まれる。しかしながら、各処理プログラムと、各処理プログラムの開発時に想定されていたセンサデータの形態とが、合致しない場合がある。
【0005】
1つの側面では、本件は、センサデータに応じた処理プログラムを選択することができる処理選択プログラム、処理選択システムおよび処理選択方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、コンピュータに、計測対象者の身体に装着され、前記計測対象者に関する情報を計測するセンサが計測したセンサデータを、取得する処理と、計測状況情報と複数の処理プログラムとの対応関係を参照し、前記センサデータの計測状況情報に応じて、前記センサデータに対する複数の処理プログラムを選択する処理と、前記センサデータに対して、選択された前記複数の処理プログラムを実行する処理と、選択された前記複数の処理プログラムの実行結果を表示装置に表示させる処理と、前記表示装置に表示された実行結果のうち、ユーザが採用した実行結果を出力した処理プログラムに係る情報を受け付ける処理と、計測状況情報と、前記ユーザが採用した実行結果を出力した前記処理プログラムに係る情報とを、前記対応関係に反映することで前記対応関係を更新する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
センサデータに応じた処理プログラムを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は健常者の足首にセンサが正しく装着されている場合を例示する図であり、(b)は健常者の足首に装着されたセンサが足首に対して正しい角度で装着されていない場合を例示する図である。
【
図2】(a)は処理選択システムの全体構成を例示する図であり、(b)は処理選択装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】処理選択装置がセンサから受信したセンサデータに用いる処理プログラムを選択して実行する動作の流れの一例を表すフローチャートである。
【
図4】センサデータに関連付けられた情報を例示する図である。
【
図5】(a)~(g)はそれぞれ計測状況情報の項目について格納部に格納されている対応関係から抽出された各履歴テーブルを例示する図である。
【
図6】(a)は処理プログラムを選択するための選択根拠空間を例示する図であり、(b)は選択根拠空間に対比部のチェック結果を写像した図である。
【
図7】各処理プログラムが医師によって採用された採用率を例示する図である。
【
図8】(a)~(c)は表示装置の表示結果を例示する図である。
【
図9】(a)~(c)は処理プログラムの選択手法の他の例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施例の説明に先立って、センサデータの処理の概要について説明する。
【0010】
例えば、データ医療では、治療・投薬情報、生活習慣、ゲノム情報等の情報が様々なセンサから収集され、高度個別化医療が実現されている。このようなデータ医療では、短時間の病院検査では見つけ難い日常生活中に現れる症状を捉えることが可能となり、きめ細かな医療を実現することができる。また、医療現場において、作業負荷を軽減することができる。
【0011】
近年の技術革新により、センサの高精度化および低価格化が急速に進み、高精度のセンサが消費者の手に届きやすくなっている。その半面、データの形態が処理の障壁になりつつある。例えば、当初はエンジニア等の有識者のコントロール環境下でセンサによる計測が行われていたが、センサ知識に明るくない業界(医療従事者など)で、例えば、在宅患者の日常生活を計測するといった非コントロール環境下での計測も増えている。
【0012】
そのため、計測対象は同じでも、データの形態(バラつきや偏り具合)に違いがあり、データ処理に影響が出る。ここで、両足首にセンサを装着しておき、健常者の歩行時のセンサデータを処理することで歩行区間を検出する場合について検討する。
図1(a)は、健常者の足首にセンサ200が正しく装着されている場合を例示する図である。
図1(b)は、健常者の足首に装着されたセンサ200が足首に対して正しい角度で装着されていない場合を例示する図である。
【0013】
健常者の歩行時におけるセンサデータを想定して開発した歩行特徴量算出用の処理エンジン(処理プログラム)は、
図1(b)のようにセンサ200が足首に対して正しい角度で装着されていない場合には、正しく歩行区間を検出できず、算出される歩行特徴量の精度が低下してしまう。この場合には、装着センサが正しい角度で装着されていないことを検知して補正によって歩行特徴量を算出する処理プログラムを用いれば、歩行特徴量の精度の低下が抑制される。しかしながら、
図1(a)のようにセンサ200が足首に対して正しい角度で装着されている場合には、この補正用の処理プログラムを用いてセンサデータを処理すると、通常の処理プログラムを用いる場合よりも歩行特徴量の精度が低下してしまう。
【0014】
処理プログラムの開発者は、検証工程で利用するサンプルデータ以外は入力データとして想定していない場合が多い。したがって、各処理プログラムは、開発者が想定していないセンサデータに対しては、処理精度が低下する。様々な場合に対応可能な万能処理プログラムを作成することは困難であるため、多種多様な処理プログラムが作成されることになる。所望の処理精度を得るためには、センサデータごとに、適切な処理プログラムを選択することが望まれる。
【0015】
しかしながら、各処理プログラムと、各処理プログラムの開発時に想定されていたセンサデータの形態とが、合致しない場合が多くなっている。この対応をすべて1社単独で実現するのは困難である。そこで、様々な形態のセンサデータに対する処理精度を向上させるために、複数社の様々な処理プログラムを集め、処理結果を提供するプラットフォームが出現し始めている。しかしながら、プラットフォーム運用者は個々の処理プログラムの特性までは理解していないため、どのセンサデータがどの処理プログラムに適しているか分からない。
【0016】
そこで、以下の実施例では、センサデータの形態に応じた処理プログラムを選択することができる処理選択プログラム、処理選択システム、および処理選択方法について説明する。
【実施例】
【0017】
実施例においては、一例として、理学療法士が計測対象患者の足首にセンサを装着して得られたセンサデータを送信し、処理選択システムが適切な処理プログラムを選択・実行して歩行特徴量を医師に提供する例について説明する。
【0018】
図2(a)は、処理選択システム100の全体構成を例示する図である。
図2(a)で例示するように、処理選択システム100は、センサ10、処理選択装置20、表示装置30、入力装置40などを備えている。処理選択装置20は、受信部21、対比部22、格納部23、選択部24、実行部25、出力部26、更新部27などとして機能する。
【0019】
図2(b)は、処理選択装置20のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図2(b)で例示するように、処理選択装置20は、CPU101、RAM102、記憶装置103、インタフェース104などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。CPU101が記憶装置103に記憶されている処理選択プログラムを実行することによって、処理選択装置20に、受信部21、対比部22、格納部23、選択部24、実行部25、出力部26、更新部27などが実現される。なお、処理選択装置20の各部は、専用の回路などのハードウェアであってもよい。
【0020】
表示装置30は、処理選択装置20の処理結果を表示する装置であり、液晶デバイスなどのディスプレイである。入力装置40は、マウス、キーボードなどの入力装置である。
【0021】
センサ10は、センサの利用者によって計測対象に装着される。本実施例においては、センサの利用者は、一例として理学療法士である。また、本実施例においては、計測対象は、通院患者、在宅患者などの計測患者である。センサ10は、一例としてジャイロセンサであり、角加速度、角速度などを検出する。センサ10を計測患者の両足首などに装着しておけば、歩行に関するデータを収集することができる。
【0022】
理学療法士は、ノートパソコンなどを用いて、センサ10が検出したデータを取得し、自身の判断で所定の時間的長さ範囲のデータを切り取ってセンサデータを作成する。センサ10は、タイマ機能を有している。それにより、センサ10は、データを取得した計測時間帯(計測日時など)を記憶することができる。なお、センサ10には、識別情報(センサID)が定められている。また、センサ10は、複数個設けられていてもよい。理学療法士は、自身の識別情報(理学療法士ID)と、計測患者の識別情報(計測患者ID)と、患者状態と、センサ10を装着するのに要した装着時間とを付したうえでセンサデータを所定のアクセスポイント経由で送信する。患者状態とは、例えば、寝たきり、健常者などである。所定のアクセスポイントとは、例えば、センサ10が計測を行った施設などに設置されているアクセスポイントである。
【0023】
続いて、処理選択装置20の動作について説明する。
図3は、処理選択装置20が、センサ10から受信したセンサデータに用いる処理プログラムを選択して実行する動作の流れの一例を表すフローチャートである。
【0024】
図3で例示するように、受信部21は、センサ10から、有線回線、無線回線などを経由してセンサデータを受信する(ステップS1)。例えば、
図4で例示するように、センサデータには、センサID、理学療法士ID、計測時間帯、装着時間、送信元IPアドレス、計測患者ID、患者状態などの情報が関連付けられている。また、センサデータの時間的長さは、理学療法士が採用した採用データ長の情報として用いることができる。これらのセンサデータの情報から、センサデータの計測状況情報を抽出することができる。計測状況情報は、センサが対象を計測したときの状況を示す情報である。本実施例では、計測状況情報として計測者、計測環境、利用デバイス(センサ)、計測時間帯、装着時間、患者、患者状態が該当するものの、これらに限るものではない。
【0025】
次に、対比部22は、格納部23が格納している対応関係を参照し、当該対応関係と、センサ10から受信した今回のセンサデータの計測状況情報とを対比する(ステップS2)。格納部23が格納している対応関係は、計測状況情報と、センサデータを処理する複数の処理プログラムとの対応関係である。例えば、当該対応関係は、過去のセンサデータに対して実行された処理プログラムと、当該センサデータの計測状況情報との対応関係である。
図5(a)~
図5(g)は、それぞれ計測状況情報の項目について、格納部23に格納されている対応関係から抽出された各履歴テーブルを例示する図である。なお、処理プログラムは、センサデータに対して何らかの処理を行うプログラムであって、例えば特徴量を抽出するためのプログラムである。
【0026】
図5(a)は、センサの利用者に係る情報の履歴テーブルを例示する。
図5(a)で例示するように、各理学療法士IDに、受け持ち患者のIDと計測実績回数とが関連付けられている。受け持ち患者とは、理学療法士が以前にセンサを装着してセンサデータを取得したことがある計測患者のことである。例えば、
図5(a)の例では、理学療法士p01は、受け持ち患者Aを受け持っており、当該受け持ち患者Aに対して10回の計測実績を有している。
【0027】
図5(b)は、センサの利用者による計測環境に係る情報の履歴テーブルを例示する。計測環境は、計測場所などである。計測環境は、例えば、センサ10から送信されたセンサデータの送信元IPアドレスなどから把握することができる。そこで、
図5(b)の例では、各理学療法士IDに、当該理学療法士が計測したことがある施設を表す送信元IPアドレスが関連付けられている。
【0028】
図5(c)は、センサの識別情報の履歴テーブルを例示する。
図5(c)の例では、各理学療法士IDに、当該理学療法士が使用したことがあるセンサIDが関連付けられている。
【0029】
図5(d)は、センサデータの計測時間帯の履歴テーブルを例示する。
図5(d)で例示するように、計測時間帯に、計測患者IDが関連付けられている。
【0030】
図5(e)は、装着時間の履歴テーブルを例示する。
図5(e)で例示するように、計測時間帯に、計測患者IDとセンサ10の装着時間とが関連付けられている。
【0031】
図5(f)は、計測対象の状態の履歴テーブルを例示する。
図5(f)で例示するように、各理学療法士のIDに、センサ10がセンサデータを取得した計測時間帯と、計測患者IDと、患者状態と、センサデータの処理に用いられた処理プログラムとが関連付けられている。
【0032】
図5(g)は、採用データ長の履歴テーブルを例示する。採用データ長とは、各処理プログラムが、収集されたセンサデータのうち処理に採用したデータの時間的な長さのことである。
図5(g)で例示するように、各処理プログラムのIDに、各統計量(平均値、標準偏差σなど)の算出に採用したデータ長が関連付けられている。
【0033】
対比部22は、受信部21が受信したセンサデータの計測状況情報と、格納部23に格納されている対応関係とを対比する。例えば、
図5(a)の履歴テーブルと、センサデータに付されている理学療法士IDおよび計測患者IDとを対比することで、当該理学療法士による当該計測患者に対する計測履歴、計測実績回数などを判断することができる。また、
図5(b)の履歴テーブルと、センサデータに付されている理学療法士IDおよび送信元IPアドレスとを対比することで、当該理学療法士が計測実績の無い施設で計測したか否か、などを判断することができる。また、
図5(c)の履歴テーブルと、センサデータに付されている理学療法士IDおよびセンサIDとを対比することで、用いられたセンサが、当該理学療法士が過去に利用したことがあるセンサであるか否かを判断することができる。また、
図5(d)の履歴テーブルと、センサデータに付されている計測日時および計測患者IDとを対比することで、当該計測患者についてセンサデータの計測時間帯と過去の計測時間帯との相違、などを判断することができる。また、
図5(e)の履歴テーブルと、センサデータに付されている計測患者IDおよび装着時間とを対比することで、当該計測患者に対する装着時間と過去の装着時間との相違、などを判断することができる。また、
図5(f)の履歴テーブルと、センサデータに付されている理学療法士IDおよび患者状態とを対比することで、当該理学療法士が過去に計測対象とした患者状態であるか否か、などを判断することができる。また、
図5(g)の履歴テーブルと、センサデータの時間的長さとを対比することで、過去にいずれかの処理プログラムが採用したデータ長との相違、などを判断することができる。対比部22による対比結果は、選択部24に渡される。
【0034】
選択部24は、対比部22による対比結果を用いて、実行すべき適切な処理プログラムを1以上選択する(ステップS3)。
図6(a)は、処理プログラムを選択するための選択根拠空間を例示する図である。この選択根拠空間は、格納部23に格納されている対応関係を空間で表したものである。
図6(a)で例示するように、選択根拠空間は、複数の空間軸を有している。各空間軸は、計測状況情報の各項目を表している。
図6(a)の例では、説明の簡略化のために空間軸数を3としてあるが、本実施例においては7つの計測状況項目について計測状況情報対比しているため、空間軸数は7である。例えば、過去に収集されたセンサデータの計測状況情報と、それぞれのセンサデータの処理に採用された処理プログラムとの関係をこの選択根拠空間に写像することで、各処理プログラムの分布を得ることができる。各処理プログラムの分布を閾値で仕切ることで、選択根拠空間において各処理プログラムの座標範囲を定めることができる。
【0035】
図6(b)は、この選択根拠空間に、対比部22のチェック結果を写像した図である。選択部24は、選択根拠空間において、チェック結果と、各処理プログラムとの距離を算出する。この場合の距離として、例えば、マハラノビス距離などを用いることができる。各処理プログラムの位置は、各処理プログラムの座標範囲の中心点などとすることができる。選択部24は、算出された距離の小さいものから優先して複数個を候補として選択する。このようにすることで、今回のセンサデータの計測状況情報と一致する過去の計測状況で計測されたセンサデータを処理した処理プログラムを選択することができるようになる。今回のセンサデータの計測状況情報と一致する過去の計測状況が無くても、近い計測状況で計測されたセンサデータを処理した処理プログラムを選択することができるようになる。したがって、センサデータに対して、処理精度の高い処理プログラムを選択することができるようになる。
【0036】
また、
図7で例示するように、各処理プログラムが医師に採用された採用率が、各処理プログラムと関連付けられて格納部23に格納されている。
図7の例では、各処理プログラムIDに、採用率と、採用した医師のIDとが関連付けられている。
【0037】
次に、実行部25は、選択された候補のうち、優先順位の高い複数の処理プログラムを用いて、センサデータに対して処理を実行する(ステップS4)。本実施例においては、各処理プログラムは、センサデータのうち、歩行区間を特定して歩行特徴量を抽出する。なお、処理時間が閾値を超える処理プログラムについては、不採用としてもよい。この場合、実行部25は、選択された候補のうち、次に優先順位の高い処理プログラムを用いて、センサデータに対して処理を実行してもよい。
【0038】
次に、出力部26は、実行部25の実行結果を表示装置30に対して出力する(ステップS5)。それにより、表示装置30は、実行部25の実行結果を表示する。
図8(a)~
図8(c)は、表示装置30の表示結果を例示する図である。
図8(a)~
図8(c)の例では、各処理結果において、特定された歩行区間が異なっている。また、センサデータの測定状況の各項目と、格納部23に格納されている7種類の履歴テーブルとの一致度などが、7角形のグラフとして表示されている。例えば、医師が各処理プログラムを採用した採用率の高いものから推薦順位が高く表示されていてもよい。または、今回のセンサデータに対して各処理プログラムが処理に要した時間の短いものから推薦順位が高く表示されていてもよい。
【0039】
医師は、これらの表示結果を参照することで、どの処理プログラムの処理結果を採用するかを決定することができる。例えば、医師は、入力装置40を用いて、採用する処理プログラムに係る情報(処理プログラムIDなど)を入力する。それにより、処理選択装置20は、医師が採用した処理プログラムに係る情報を受け付ける(ステップS6)。次に、更新部27は、今回のセンサデータの計測状況情報および採用された処理プログラム名を、格納部23に格納されている対応関係に反映することで、当該対応関係を更新する(ステップS7)。例えば、更新部27は、今回のセンサデータの計測状況情報を、各履歴テーブルに追加する。また、更新部27は、採用された処理プログラム名を今回のセンサデータの計測状況に対応する選択根拠空間の座標に写像することで、当該処理プログラムの座標範囲を更新する。
【0040】
本実施例によれば、計測対象に関する情報を計測するセンサが計測したセンサデータを受信し、計測状況情報と複数の処理プログラムとの対応関係を参照し、センサデータの計測状況情報に応じて、センサデータに対する処理プログラムを選択することで、センサデータに応じた処理プログラムを選択することができる。
【0041】
選択された複数の処理プログラムの実行結果を表示装置30に表示させることで、ユーザは、複数の処理プログラムの中から所望の処理プログラムを採用することができる。
【0042】
計測状況情報と、ユーザが採用した実行結果を出力した処理プログラムに係る情報とを、計測状況情報と複数の処理プログラムとの対応関係に反映することで当該対応関係を更新することで、当該対応関係の精度が向上する。
【0043】
選択された複数の処理プログラムの実行結果を表示装置30に表示させる際に、各処理プログラムの過去の採用率を表示させることで、ユーザは他のユーザの採用率を考慮することができるようになる。
【0044】
選択された複数の処理プログラムの実行結果を表示装置30に表示させる際に、処理時間に係る情報を合わせて表示させることで、ユーザは、短時間で処理できる処理プログラムを採用できるようになる。
【0045】
なお、上記実施例では、センサ10が歩行区間検出用の特定のセンサであるため、センサの種類が1種類である。しかしながら、センサの種類は複数であってもよい。この場合、各センサ種類について、計測状況情報と処理プログラムとの対応関係を個別に格納部23に格納しておけばよい。センサデータのメタファイルなどを参照することで、センサデータがどの種類のセンサであるかを識別できるため、格納部23に格納されている対応関係のうち当該センサ種類に合致するものを利用することができるようになる。
【0046】
上記実施例では、選択根拠空間を用いたが、それに限られない。
図9(a)~
図9(c)は、処理プログラムの選択手法の他の例を例示する図である。まず、
図9(a)で例示するように、事前準備プロセスにおいて、計測状況プロファイルの非数値型の値ごとに、処理結果の精度と処理時間との空間にマッピングをする。
【0047】
次に、
図9(b)で例示するように、分布を処理プログラムごとに分離し、各値の対応処理プログラムを割り当てる。例えば、混合分布モデルなどを利用することで、処理プログラムの分布を分離することができる。
【0048】
新しいセンサデータが収集された場合に、
図9(c)で例示するように、割り当てを探索して処理プログラムを選択してもよい。決め方は、多数順でもよい。例えば、
図9(c)の例では、最初に用いる処理プログラムは、e001である。処理中にスケール可能な処理時間、精度を参照し、e001の想定に合致しなければ、次の割り当て処理プログラムであるe002に切り替える。
【0049】
上記各例において、センサ10が、計測対象に関する情報を計測するセンサの一例として機能する。受信部21が、前記センサが計測したセンサデータを取得する取得部の一例として機能する。なお、センサ10は、出力先を、図示しない記憶装置とすることも可能である。そして、受信部21は、図示しない記憶装置からデータを読み出することにより、そのデータを取得する等の変更も適宜可能である。選択部24が、計測状況情報と処理プログラムとの対応関係を参照し、前記センサデータの計測状況情報に応じて、前記センサデータに対する処理プログラムを選択する選択部の一例として機能する。実行部25が、前記センサデータに対して、選択された前記処理プログラムを実行する実行部の一例として機能する。表示装置30が、選択された複数の前記処理プログラムの実行結果を表示する表示装置の一例として機能する。入力装置40が、前記表示装置に表示された実行結果のうち、ユーザが採用した実行結果を出力した処理プログラムに係る情報を入力する入力装置の一例として機能する。更新部27は、計測状況情報と、前記ユーザが採用した実行結果を出力した前記処理プログラムに係る情報とを、前記対応関係に反映することで前記対応関係を更新する更新部の一例として機能する。
【0050】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 センサ
20 処理選択装置
21 受信部
22 対比部
23 格納部
24 選択部
25 実行部
26 出力部
27 更新部
30 表示装置
40 入力装置
100 処理選択システム