IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 戸田工業株式会社の特許一覧

特許7303481アニリンブラック並びに該アニリンブラックを用いた樹脂組成物及び分散体
<>
  • 特許-アニリンブラック並びに該アニリンブラックを用いた樹脂組成物及び分散体 図1
  • 特許-アニリンブラック並びに該アニリンブラックを用いた樹脂組成物及び分散体 図2
  • 特許-アニリンブラック並びに該アニリンブラックを用いた樹脂組成物及び分散体 図3
  • 特許-アニリンブラック並びに該アニリンブラックを用いた樹脂組成物及び分散体 図4
  • 特許-アニリンブラック並びに該アニリンブラックを用いた樹脂組成物及び分散体 図5
  • 特許-アニリンブラック並びに該アニリンブラックを用いた樹脂組成物及び分散体 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】アニリンブラック並びに該アニリンブラックを用いた樹脂組成物及び分散体
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/08 20060101AFI20230628BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230628BHJP
   C08K 13/02 20060101ALI20230628BHJP
   C09B 17/02 20060101ALI20230628BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C09B67/08 C
C08L101/00
C08K13/02
C09B17/02
C09B67/46 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018190617
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2019070118
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2017197197
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 宗由
(72)【発明者】
【氏名】沖田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】三島 祐司
(72)【発明者】
【氏名】栗田 栄一
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104231993(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102676044(CN,A)
【文献】特開2009-080308(JP,A)
【文献】特開平08-333523(JP,A)
【文献】特開2001-261989(JP,A)
【文献】特開2000-072974(JP,A)
【文献】特開平09-031353(JP,A)
【文献】特開2012-153744(JP,A)
【文献】特開2012-153745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 17/02,67/08,
67/20,67/46
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C09D 17/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si、Ti、及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の酸化物微粒子と複合化した一次粒子の平均粒径が0.05~1.0μmであるアニリンブラックであって、前記酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径が0.003~0.1μmであり、前記酸化物微粒子の複合化量が0.1~20重量%であり、前記酸化物微粒子がアニリンブラック粒子内に少なくとも内包されていることを特徴とするアニリンブラック。
【請求項2】
請求項1記載のアニリンブラックにおいて、前記酸化物微粒子がさらにアニリンブラック粒子の表面に固着しているアニリンブラック。
【請求項3】
アニリンブラックの一次粒子の平均粒径に対する酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径の比が0.01~1.0である請求項1又は2に記載のアニリンブラック。
【請求項4】
粉体pHが3.0~9.0である請求項1~3のいずれか一項に記載のアニリンブラック。
【請求項5】
体積固有抵抗値が10~1010Ω・cmである請求項1~のいずれか一項に記載のアニリンブラック。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のアニリンブラックを含んでなる樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のアニリンブラックを含んでなる水系分散体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のアニリンブラックを含んでなる非水系分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性と黒色度に優れ、且つ体積固有抵抗値が高いアニリンブラックに関する。
【0002】
また、本発明は、前記アニリンブラックによって着色された樹脂組成物であり、該樹脂組成物は耐熱性に優れ、黒色度に優れている。一方、前記アニリンブラックによって着色された分散体において、分散媒が水系、及び非水系であるにも関わらず、分散性及び保存安定性が優れている。
【背景技術】
【0003】
アニリンブラックは、特徴的な黒色を発し、水系や非水系などの分散媒に溶けにくいことから、古くから黒色顔料として使用されてきた。アニリンブラックは、アニリンなどの芳香族アミンの酸化重合によって得られるポリアニリンの一種であり、化1で示されるN-フェニルジベンゾパラアジン重合体による基本骨格が主成分として構成されると云われている。また、アニリンのp位で重合されたエメラルジンなどの直鎖のポリアニリンは、緑~紫色であり、主に有機導電体として用いられている。
【0004】
【化1】
【0005】
化1中のnは重合度を示し、Xは水酸基、塩素などの酸基を示す。化1の酸基とは、アニリンブラックのNカウンターアニオンとなるもので、各種有機酸、無機酸から構成される。代表的な有機酸とは、蟻酸、酢酸などであり、代表的な無機酸とは、塩酸、硝酸、硫酸などである。
【0006】
従来、アニリンブラックは、カーボンブラックでは表現できない青みの黒色を呈し、その特長を生かして、塗料、印刷インキ、絵の具、ポスターカラー、プラスチック、熱転写インキなど、各種用途に使用されている。前記アニリンブラックの製造に用いられる酸化剤としては、重クロム酸塩を用いる方法が最適とされてきた。重クロム酸塩は極めて強い酸化剤であるため、アニリン等の出発原料から十分な酸化縮合を発生させる。さらには、クロムイオンや触媒として用いた銅イオンの一部が芳香族アミン縮合体と配位するため、分子内、分子間で強いネットワークを形成し、さらに遷移金属が分子内に残る。そのため、重クロム酸塩を用いて調製されたアニリンブラックは比較的高い耐熱性を発揮する。
【0007】
しかしながら、重クロム酸塩に含まれる、クロムイオンは人体に極めて有害な物質である(現在、重クロム酸で合成されたアニリンブラックに含まれるクロムは色素に配位結合し、有害な六価クロムは含まれず安全性が認められてはいる)。また、触媒として用いられる銅塩に由来する銅イオンもまた有害物質である。従って、これら二つの有害なイオンをアニリンブラックの製造時に使用しないこと、即ち、これらのイオンのアニリンブラックへの混入及び製造現場での散乱の恐れの全くないことが求められている。前記特徴を満たすアニリンブラックを製造することによって、現在まで敬遠されていたアイブロウペンシル、アイブロウパウダー、アイブロウマスカラ、アイシャドー、コンパクトパウダー、ファンデーション、リップスティック、ネイルエナメルなどの化粧品といった直接肌に触れる用途にも展開の可能性がでてくる。
【0008】
従来、クロムや銅などの有害イオンを含まないアニリンブラックの製造方法として、アニリンを酸の水溶液とし、過硫酸塩で酸化重合させること(特許文献1)、過酸化水素と、それの分解触媒となりうる金属または金属塩を用い、発生するOHラジカルを酸化剤としてアニリンを酸化重合させること(特許文献2、特許文献3)が知られている。
【0009】
また、黒色度が高く粒子径を高度に制御したアニリンブラックとして、水溶性高分子化合物、遷移金属化合物およびプロトン酸の存在下に、アニリン等の出発原料を酸化剤により重合させること(特許文献4)が知られている。
【0010】
さらには、一次粒子の軸比が小さいアニリンブラックとして、アニリン等の出発原料の酸化重合過程で触媒と酸化剤を同時に滴下することで得られること(特許文献5)が知られている。また、スルホン基を含有してなるアニリンブラックとして、アニリンとスルホニル化合物が酸化共重合反応させること(特許文献6)が知られている。
【0011】
一方で、電子写真用非磁性現像剤や液晶用ブラックマトリクスなどの用途に対する黒色の着色剤として、ほとんどが安価で黒色度と耐熱性に優れるカーボンブラックを使用する。近年、電子写真画像の高画質化や、ブラックマトリクスの高遮光率化が求められており、着色剤の添加量を増やすなどの高濃度化が検討されている。しかしながら、カーボンブラックはバインダー樹脂中での分散が難しく、カーボンブラックのストラクチャー構造が存在するため、得られる樹脂は低い体積固有抵抗値を有する。そのため、カーボンブラックが電子写真用非磁性現像剤である場合、現像剤の帯電性能が阻害(帯電保持能力低下)されるという課題が残る。また、カーボンブラックがブラックマトリクスに含まれてなる場合、分散体中でカーボンブラックの分散安定性を付与することが難しい。そのため分散体の流動性が悪くなり、レジスト薄膜としての体積固有抵抗値も低くなるという課題が残る。
【0012】
一般に、アニリンブラックはカーボンブラックなどの無機の黒色顔料に比べて非常に体積固有抵抗値が高いことが知られており、前述の低体積固有抵抗値の課題を克服するためにアニリンブラックの適用検討がされている。電子写真用非磁性現像剤の黒色の着色剤としては、高温・高湿時においても電荷のリークが少ない、帯電保持性能に優れる現像剤としての適用が検討されている。(特許文献7~9)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2001-261989号公報
【文献】特開平10-245497号公報
【文献】特開2000-72974号公報
【文献】特開平9-31353号公報
【文献】特開2012-153744号公報
【文献】特開2012-153745号公報
【文献】特開2010-19970号公報
【文献】特開2005-195693号公報
【文献】特開2001-106938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これまで述べてきたように、黒色度に優れ、体積固有抵抗値が高いアニリンブラックは、従来からの塗料、印刷インキなどの用途に加え、電子写真用非磁性現像剤、液晶用ブラックマトリクス、化粧料といった用途にも展開されるようになってきている。加えて、近年、アニリンブラックにはクロムイオンや銅イオンといった遷移金属を含まないものも求められている。しかしながら、高黒色度、高体積固有抵抗値といった特性を持ちながら、耐熱性に優れたアニリンブラックが望まれるところであるが、このようなアニリンブラックはいまだ得られていない。
【0015】
即ち、前出特許文献1~9に記載のアニリンブラックでは、耐熱性の成分が少ないため、十分な耐熱性が発揮されない。更には、クロムや銅といった遷移金属を含まないアニリンブラックの場合、それらの遷移金属成分によって構築されていたアニリンブラックの耐熱性が発揮されなくなっている。
【0016】
そこで、本発明は、耐熱性と黒色度に優れ、且つ、体積固有抵抗値が高いアニリンブラックを提供することを技術的課題とする。また、該アニリンブラックを含んでなる、耐熱性、及び黒色度に優れた樹脂組成物を提供することを技術的課題とする。更には、該アニリンブラックを含んでなる、分散性及び保存安定性に優れた水系分散体、及び非水系分散体を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0018】
すなわち、Si、Ti、及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の酸化物微粒子と複合化した一次粒子の平均粒径が0.05~1.0μmであるアニリンブラックであって、前記酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径が0.003~0.1μmであり、前記酸化物微粒子の複合化量が0.1~20重量%であることを特徴とするアニリンブラックである。(本発明1)
【0019】
また、アニリンブラックの一次粒子の平均粒径に対する酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径の比が0.01~1.0である本発明1記載のアニリンブラックである。(本発明2)
【0020】
また、本発明は、粉体pHが3.0~9.0である本発明1及び2のいずれか一項に記載のアニリンブラックである。(本発明3)
【0021】
また、本発明は、体積固有抵抗値が10~1010Ω・cmである本発明1~3のいずれか一項に記載のアニリンブラックである。(本発明4)
【0022】
また、本発明は、本発明1~4のいずれか一項に記載のアニリンブラックを含んでなる樹脂組成物である。(本発明5)
【0023】
また、本発明は、本発明1~4のいずれか一項に記載のアニリンブラックを含んでなる水系分散体である。(本発明6)
【0024】
また、本発明は、本発明1~4のいずれか一項に記載のアニリンブラックを含んでなる非水系分散体である。(本発明7)
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るアニリンブラックは、耐熱性と黒色度に優れ、且つ、体積固有抵抗値が高いアニリンブラックとして好適である。
【0026】
本発明に係るアニリンブラックを含んでなる樹脂組成物は、耐熱性、及び黒色度に優れた樹脂組成物として好適である。また、本発明に係るアニリンブラックを含んでなる水系分散体、及び非水系分散体は、分散性及び保存安定性に優れた各種分散体として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1で得られたアニリンブラックのフーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)の吸収スペクトルである。
図2】実施例2で得られたアニリンブラックの走査型透過電子顕微鏡(STEM)の明視野(BF)像である。
図3】実施例2で得られたアニリンブラックのSTEMのBF像とエネルギー分散型X線分析装置(EDS)による炭素の分布を重ね合わせた図である。
図4】実施例2で得られたアニリンブラックのSTEMのBF像とEDSによるケイ素の分布を重ね合わせた図である。
図5】実施例2で得られたアニリンブラックのSTEMのBF像とEDSによる酸素の分布を重ね合わせた図である。
図6】実施例2で得られたアニリンブラックの透過型電子顕微鏡(TEM)のBF像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0029】
先ず、本発明に係るアニリンブラックについて述べる。本発明のアニリンブラックはクロムや銅などの有害イオンを含まない。なお、本発明の主題はアニリンブラックであるが、アニリンブラック一次粒子に酸化物微粒子が複合した粒子であり、本発明の主題はアニリンブラック粒子とすることも出来る。
【0030】
本発明に係るアニリンブラックは、Si、Ti、および、Alからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の酸化物微粒子と複合化したアニリンブラックである。前記酸化物微粒子は耐熱性を有するものであり、微粒子化しやすい酸化物である。前記酸化物微粒子と複合化したアニリンブラックとは、アニリンブラック一次粒子に前記酸化物微粒子の大部分が内包された状態であり、前記酸化物微粒子の一部がアニリンブラック一次粒子の表面に固着している。前記酸化物微粒子とアニリンブラックの複合化に対し、メカノケミカル的に複合化された状態ではない。本発明における酸化物微粒子の複合化度を定量的に表わすと、後述する条件で有機溶媒に試料を分散させて、後述の評価方法の任意の観察視野範囲内で、酸化物微粒子全量に対するアニリンブラックと複合化している酸化物微粒子の量の割合である。該割合は88%以上であり、好ましくは92%以上である。ここで、前記複合化している酸化物微粒子とは前記酸化物微粒子全量から単独で存在している酸化物微粒子を除いたものである。すなわち、本発明のアニリンブラックは複合化度が100%で無い場合は、酸化物微粒子を複合化しているアニリンブラック粒子と単独で存在する酸化物微粒子との混合物である。
【0031】
本発明に係るアニリンブラックは、一次粒子の平均粒径が0.05~1.0μmである。アニリンブラックの一次粒子の平均粒径が0.05μm未満の場合には着色力が低く、分散が難しく、黒色度が劣る。また、一次粒子の平均粒径が1.0μmを超える場合には着色力が低いため、黒色度が劣る。より好ましいアニリンブラックの一次粒子の平均粒径は0.10~0.90μmである。
【0032】
本発明に係るアニリンブラックを構成している酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は、0.003~0.10μmが好ましい。酸化物微粒子の平均粒径が0.003μm未満の場合はそれ自体で凝集してしまい、得られるアニリンブラックの耐熱性が発揮できない懸念がある。酸化物微粒子の平均粒径が0.10μmを超える場合は、酸化物微粒子自体の色味がアニリンブラックの発色性に影響してくる懸念がある。或いは、酸化物微粒子がアニリンブラックの表面に処理されず、酸化物微粒子が単独の粒子として挙動してしまう懸念がある。より好ましい酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は0.004~0.07μmである。
【0033】
本発明に係るアニリンブラックを構成している酸化物微粒子の複合化量は、0.1~20重量%である。ここで複合化量とは前述の酸化物微粒子複合化度[%]に酸化物微粒子含有量[重量%]を乗じた値である。酸化物微粒子が0.1重量%未満であると耐熱性の機能が発揮されない。20重量%を超えると黒色度が悪くなる懸念がある。好ましくは、0.2~15重量%である。さらに、より好ましくは、0.3~10重量%である。
【0034】
本発明に係るアニリンブラックの一次粒子の平均粒径に対する酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径の比が0.01~1.0であることが好ましい。0.01未満、或いは1.0を超えると、アニリンブラックと複合化してなる酸化物微粒子を製造することが困難である。特に、1.0を超える場合、酸化物粒子をアニリンブラックが被覆する状態や酸化物粒子よりも微粉であるアニリンブラックが大量に生成している状態であり、耐熱性の粒子粉末を得ることが困難である。好ましくは、0.015~0.9である。さらに、好ましくは、0.017~0.88である。
【0035】
本発明に係るアニリンブラックの粉体pHは、3.0~9.0の範囲が好ましい。粉体pHが3.0未満の場合には、酸化物微粒子がアニリンブラックと複合化しにくい。粉体pHが9.0を越える場合には、酸化物微粒子が凝集する懸念がある。より好ましい粉体pHは3.5~8.0である。
【0036】
本発明に係るアニリンブラックの体積固有抵抗値は、10~1010Ω・cmが好ましい。10Ω・cm未満であれば導電性の高いカーボンブラックとの差別化が困難であり、1010Ω・cmを超えるものを製造することは困難である。より好ましい体積固有抵抗値は5×10~10Ω・cmである。
【0037】
本発明に係るアニリンブラックの色相は、後述する方法によって測定した表色指数のうち、L値、a値、b値によって示すことができ、黒色度は明度L値を指標とする。L値は15.0以下が好ましく、その場合には黒色度に優れると言える。L値が15.0を超える場合には、黒色度に優れるとは言い難い。より好ましいL値は14.0以下である。更により好ましいL値は12.0以下である。また、a値、b値は目的の色みに応じてさまざまであり、アニリンブラックの反応仕様、具体的には、粒径、形状、含まれる酸基の種類や量によって、コントロールされる。通常の黒として表現される場合、a、b値は、それぞれ、-20~20が好ましいが、目的の色みに応じてコントロールされるべきであり、この値に限定されるものではない。
【0038】
本発明に係るアニリンブラックの耐熱性は、後述する方法によって測定した、高温加熱による減色率によって評価することができる。耐熱性の指標を掲げる理由として、電子写真非磁性現像剤や、液晶用ブラックマトリクスなどに用いる場合、その製造段階でそれらの減色を抑制することが必要となるためである。高温加熱による減色率が30%以下であることが好ましく、その場合、耐熱性に優れると言うことができる。高温加熱による減色率が30%を超える場合には、耐熱性があるとは言い難い。より好ましい高温加熱による減色率は20%以下である。更により好ましい高温加熱による減色率は10%以下である。
【0039】
本発明に係るアニリンブラックは、さまざまな酸基を含んでよい。酸基とは、各種無機酸、有機酸の分子から水素原子を1個またはそれ以上除いた部分を指し、Nのカウンターイオンとして作用するものをいう。有機酸として、蟻酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、シュウ酸、アジピン酸、フェノールなどが挙げられ。また、無機酸として、水酸基、塩酸、硝酸、燐酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、過塩素酸などが挙げられる。
【0040】
本発明に係るアニリンブラックは、分散性、及び発色性などの特性を向上させるために、構造中に芳香族アミン以外の芳香族化合物、複素環式化合物、そのフラグメント、あるいは、それらが2つ以上組み合わさったものを含んでいても、共重合されていてもよい。芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの芳香族、フェノール、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸などの芳香族酸や、フラン、チオフェン、キノンなどの複素環式化合物が挙げられる。
【0041】
本発明に係るアニリンブラックは、分散性、及び発色性などを向上させるために、さらに、表面処理を行われていてもよい。表面処理剤としては、特に限定されるものではないが、アルキルアルコール、脂肪酸、アルキルアミンなどの界面活性剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などのポリマー、シランカップリング剤、シランなどの有機珪素化合物などの有機表面処理剤、ロジン-カルシウム、ロジン-マグネシウムなどの有機無機表面処理剤などが挙げられる。あるいは、それらが2つ以上組み合わさったもので処理されたものも良い。シリカ、酸化チタン、アルミナなどの酸化物微粒子なども無機表面処理剤として挙げられるが、メカノケミカル的に複合化された状態となるため、本発明に係るアニリンブラックを構成する酸化物微粒子と複合化の状態が異なる。
【0042】
次に、本発明に係るアニリンブラックの製造方法について述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
本発明に係るアニリンブラックの製造方法において、出発原料の芳香族アミンとしては、アニリンが主成分であることが好ましい。即ち、メチルアニリン、エチルアニリン、トルイジン、アミノナフタレンなどの芳香族アミンや、ピロール、ピリジンなどの含窒素複素環化合物などである。或いはそれら2つ以上が組み合わさったものでも、共重合されたものでも良い。
【0044】
本発明に係るアニリンブラックの製造方法において、酸化物微粒子共存下で行われることが特徴である。その際、出発原料であるアニリン又はアニリンの酸塩を代表とする芳香族アミン又は芳香族アミンの酸塩のいずれか、あるいは、それらの混合物を反応槽で水に分散、あるいは、溶解し、酸にて所定のpHに調整したのち、酸性水溶液とする。この酸性水溶液に、酸化剤及び触媒を添加して酸化重合させて反応溶液とする。好ましくは、攪拌しながら酸化剤を前記反応槽に滴下し、アニリン等の出発原料を酸化重合させる。アニリンブラックを含む反応後の溶液をアルカリ剤により中和して、濾過、水洗、乾燥を行った後、粉砕して、本発明に係るアニリンブラックを得ることができる。なお、触媒の候補として金属または金属塩が挙げられる。該金属または該金属塩は予め均一な水溶液にした後、添加、あるいは、酸化剤と同時に滴下してもよい。
【0045】
酸化物微粒子は、高い分散状態で反応槽に供給されることが好ましいが、酸化物微粒子が分散したスラリー、或いは酸化物微粒子の粉体のいずれの状態で供給されてもよい。但し、生成する複合化アニリンブラック粒子粉末中に酸化物微粒子が単独で存在する割合を減らすためには、前者の分散したスラリーの供給の方が望ましい。
【0046】
酸化物微粒子の分散媒への分散操作が必要な場合は、ビーズミルなどのメディア分散機、あるいは、クレアミックス、フィルミックス、超音波ホモジナイザーなどのメディアレス分散機を用いて分散されてもよい。
【0047】
所定のpH調整に用いる酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、過塩素酸、過沃素酸、蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、アジピン酸などがあげられ、単独または混合物として使用してもよい。なお、酸性水溶液の濃度は、酸の種類にもよるが、通常、0.1~20重量%、好ましくは、0.2~15重量%程度である。
【0048】
酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、酸素などがあげられ、単独または混合物として使用してもよい。酸化剤の使用量はアニリン等の出発原料1モルに対して0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがさらに好ましい。また、酸化剤は、反応溶液に対して徐々に添加することが好ましい。通常10分から10時間、好ましくは20分から5時間かけて、酸化剤を添加することによって、酸化重合速度の制御が可能となる。該制御のため、得られるアニリンブラックの粒子の粒径制御もまた可能となる。
【0049】
触媒となり得る金属又は金属塩としては、鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、硫酸第一鉄、鉄-EDTAキレート、塩化プラチナ、塩化金または硝酸銀などがあげられ、単独または混合物として使用してもよい。触媒の使用量としては、通常、アニリン等の出発原料1モルに対し、0.01~1モルが好ましく、0.02~0.5モルがさらに好ましい。また、クロムや銅を含む金属又は金属塩を触媒として用いることもできるが、環境負荷の観点から、クロムや銅を含まない前記触媒が好ましい。
【0050】
反応溶液に、酸化剤と触媒を添加することによって、アニリン等の出発原料の酸化重合反応が進行する。この際、触媒が酸化剤を分解して、OHラジカルを生成して、該ラジカルが酸化重合反応を促進させても構わない。
【0051】
反応温度は、特に限定されるものではないが、通常10~70℃、好ましくは20~60℃で反応させればよい。また、酸化剤を添加した後、通常、10分から10時間、好ましくは20分から10時間の間、反応溶液を撹拌することが好ましい。
【0052】
生成したアニリンブラックは、反応溶液と共に強酸性になっているため、アルカリ剤によりpHを4.0~9.0の範囲に調整される。好ましくはpHを5.0~8.0の範囲で調整される。必要であれば、20~95℃で30分~1時間加熱撹拌してもよい。
【0053】
反応後の溶液を中和するアルカリ剤としては、無機化合物および有機化合物のいずれでもよい。無機化合物としては、水酸化ナトリムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属や、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩などが挙げられる。有機化合物としては、トリエタノールアミンやトリイソプロパノールアミンなどのトリアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0054】
アルカリ剤で中和した後、常法によって濾取、水洗し、乾燥、粉砕すると、本発明に係るアニリンブラックが得られる。
【0055】
次に、本発明に係るアニリンブラックを含んでなる樹脂組成物について述べる。
【0056】
本発明に係る樹脂組成物において、周知の熱可塑性樹脂が配合されていることが好ましい。また、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤などの添加剤が配合されていることが好ましい。これら配合される物は樹脂組成物の構成基材となる。
【0057】
本発明に係る樹脂組成物中のアニリンブラックの配合割合として、前記構成基材100重量部に対し、アニリンブラックを0.01~200重量部の範囲で使用することが好ましい。樹脂組成物が発色しながら樹脂としての柔軟性を維持することを考慮すれば、好ましくはアニリンブラックを0.05~100重量部、さらに好ましくは0.1~50重量部である。
【0058】
前記添加剤の量は、アニリンブラックと熱可塑性樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加物の含有量が50重量%を越える場合には、樹脂組成物の成形性が低下する。
【0059】
本発明に係る樹脂組成物の明度L値は、アニリンブラックの評価と同様に、後述する評価方法による表色指数で示すことができ、黒色度は、明度L値を指標とする。L値が15.0以下の場合が好ましく、その場合、黒色度に優れるという。L値が15.0を超える場合には、黒色度が優れるとは言い難い。より好ましいL値は14.0以下である。更により好ましいL値は12.0以下である。
【0060】
本発明に係る樹脂組成物の分散性は、後述する目視観察での未分散の凝集粒子の個数の5段階評価する。レベルが高い程高分散性を意味し、レベル3~5の段階であることが好ましい。
【0061】
本発明に係る樹脂組成物の耐熱性は、後述する方法によって測定した、アニリンブラックの評価と同様に、高温加熱による減色率によって評価することができる。減色率は30%以下が好ましく、その場合、耐熱性に優れると言うことができる。熱による減色率が30%超える場合には、耐熱性があるとは言い難い。より好ましい熱による減色率は20%以下である。更により好ましい熱による減色率は10%以下である。
【0062】
本発明に係る樹脂組成物の分散性は、後述する方法によって測定した、ある一定面積当たりに目視で確認できる凝集粒子の個数で判断することができる。該個数が少ないほど、樹脂組成物は高分散性であると言える。
【0063】
次に、本発明に係る樹脂組成物の製造方法について述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
本発明に係る樹脂組成物は、アニリンブラックと樹脂をあらかじめよく混合し、次に、混練機若しくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、アニリンブラックの凝集体を破壊し、樹脂中にアニリンブラックを均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して製造する。
【0065】
次に、本発明に係るアニリンブラックが含んでなる水系分散体について述べる。
【0066】
本発明に係る水系分散体には、水、水系分散媒、界面活性剤、顔料分散剤、樹脂、pH調整剤、消泡剤など、必要に応じて体質顔料が配合されていることが好ましい。これら配合される物は水系分散体の構成基材となる。
【0067】
本発明に係る水系分散体のアニリンブラックの配合割合として、前記分散体構成基材100重量部に対し、アニリンブラックを0.1~200重量部の範囲で使用することが好ましい。前記分散体の発色性と粘度を考慮すれば、より好ましくは0.1~100重量部、さらにより好ましくは0.1~50重量部である。
【0068】
樹脂としては、通常使用される水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂を用いることが好ましい。
【0069】
水系分散媒としては、ブチルアルコールなどのアルコール、グリセリン、ブチルセロソルブなどを使用することが好ましい。
【0070】
消泡剤としては、周知の消泡剤を使用することが好ましい。例えば、ノプコ8034(商品名)、SNデフォーマー477(商品名)、SNデフォーマー5013(商品名)、SNデフォーマー247(商品名)、SNデフォーマー382(商品名)(以上、いずれもサンノプコ製)、アンチホーム08(商品名)、エマルゲン903(商品名)(以上、いずれも花王製)などである。
【0071】
本発明に係る水系分散体の粘度は、20.0mPa・s以下が好ましい。より好ましくは10.0mPa・s以下である。粘度が20mPa・sを越える場合には、バーコーターを用いてできる塗膜の特性を調整しづらい。粘度の下限値は1.0mPa・sが好ましい。粘度が1.0mPa・s未満である場合でも、塗膜の特性を調整しづらい。
【0072】
本発明に係る水系分散体の保存安定性に対し、後述する評価方法による粘度変化率が±20%以下が好ましい。より好ましくは±10%以下である。
【0073】
本発明に係る水系分散体の分散性は、後述する評価方法によるグロスメーターでの光沢度を用いることができる。光沢度の値が高いほど、分散体の分散性が良いことを示す。例えば、45°の光沢度を測定することができ、好ましい値は15以上である。
【0074】
次に、本発明に係る水系分散体の製造方法について述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
本発明に係る水系分散体は、アニリンブラック、水、添加剤を混合し、ビーズミルなどのメディア分散機、あるいは、クレアミックス、フィルミックス、超音波ホモジナイザーなどのメディアレス分散機を用いて分散され、ろ過などの後処理をされて製造されることが好ましい。分散安定性を高めるために、アニリンブラック粒子表面を改質した自己分散処理やマイクロカプセル処理をして製造されてもよい。
【0076】
次に、本発明に係るアニリンブラックを含んでなる非水系分散体について述べる。
【0077】
本発明に係る非水系分散体には、樹脂、分散媒、溶剤、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤など、必要に応じて体質顔料が配合されることが好ましい。これら配合される物は非水系分散体の構成基材となる。
【0078】
本発明に係る非水系分散体のアニリンブラックの配合割合として、前記分散体構成基材100重量部に対し、アニリンブラックを0.1~200重量部の範囲で使用することが好ましい。分散体の発色性と粘度を考慮すれば、より好ましくは0.1~100重量部、さらにより好ましくは0.1~50重量部である。
【0079】
樹脂としては、通常使用されるアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂などを用いることが好ましい。
【0080】
分散媒又は溶剤としては、通常使用されるトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、脂肪族炭化水素などを用いることが好ましい。
【0081】
本発明に係る非水系分散体の粘度は、1~20.0mPa・sが好ましい。粘度が20mPa・sを越える場合、又は1.0mPa・s未満の場合、塗膜の特性を調整しづらい。より好ましくは2~10.0mPa・s以下である。
【0082】
本発明に係る非水系分散体の保存安定性評価に対し、1週間後の非水系分散体の粘度変化率測定を採用している。即ち、後述する評価方法による粘度変化率が±20%以下が好ましく、より好ましくは±10%以下である。
【0083】
本発明に係る非水系分散体の分散性は、後述する評価方法によるグロスメーターでの光沢度を用いることができる。水系分散体の分散性の評価方法と同様に、例えば、45°の光沢度を測定することができ、好ましい値は15以上である。
【0084】
次に、本発明に係る非水系分散体の製造方法について述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
本発明に係る非水系分散体は、水系分散体の場合と同様に、本発明に係るアニリンブラック、分散媒、溶剤、添加剤、樹脂を混合し、ビーズミルなどのメディア分散機、あるいは、クレアミックス、フィルミックス、超音波ホモジナイザーなどのメディアレス分散機を用いて分散され、ろ過などの後処理をされて製造される。分散安定性を高めるために、アニリンブラック粒子表面を改質した自己分散処理や、マイクロカプセル処理をして製造されてもよい。
【0086】
<作用>
本発明に係るアニリンブラックは、Si、Ti、Alから選ばれた少なくとも1種類以上の酸化物微粒子が、0.1~20重量%複合化したアニリンブラックである。反応開始時から、前記酸化物微粒子が存在する状態で芳香族アミンの酸塩を重合開始させると、酸化物微粒子が界面活性を発揮して、疑似的な微細な乳化ミセルを形成する。該ミセル中に芳香族アミンが濃縮された状態となり、そこから酸化重合を行うと、乳化重合となり、酸化物微粒子と複合化したアニリンブラックが形成され、当該一次粒子は成長すると考えられる。また、複合化により、前記酸化物は、水洗しても、洗い流されることはない。このSi、Ti、Alから選ばれた少なくとも1種類以上の酸化物微粒子は不燃材であるため、アニリンブラックと複合化することで、加熱によるアニリンブラック粒子の熱伝導性を阻害し、蓄熱を防止すると推定される。また、前記酸化物微粒子がアニリンブラック一次粒子の表面付近に存在することで、高温加熱によりアニリンブラック粒子表面から成分が揮発変性することが少なくなり、その結果として、アニリンブラックの耐熱性が向上すると推定している。単純にアニリンブラックと酸化物微粒子を機械的に混合しても耐熱性は発揮しづらい。
【実施例
【0087】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0088】
本発明に係るアニリンブラックのFT-IRによる定性は、赤外分光光度計NICOLET iS5(Thermo Scientific製)を用いて、KBr法によって、4000~400cm-1をスキャンして行った。
【0089】
本発明に係るアニリンブラックの分子量は、試料10mgをジメチルホルムアミドに溶解し、高速液体クロマトグラフ、SEC(Size-exclusion chromatography)カラムを用いたGPC(Gel Permeation Chromatography)法によって測定された重量平均分子量の値である。測定条件を下記に示す。
高速液体クロマトグラフ:LaChrom Elite(日立ハイテクノロジーズ製)
検出器:RI
SECカラム:TSKgelα-3000(東ソー製)
標準試料:STANDARD SM-105(分子量範囲:1.3×10~3.0×10)(昭和電工製)
溶離液:10mM臭化リチウムを含むジメチルホルムアミド
流速:0.5ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:20μl
【0090】
本発明に係るアニリンブラックのTEMによる粒子形態観察と付随したEDS元素組成分析は、JEM-F200(日本電子製)を用いた。観察用試料として、エタノールに試料1重量%で混合し、室温で超音波5分間かけて試料を分散させ、TEM用グリッドに塗布し、乾燥させた。アニリンブラックと複合化した酸化物微粒子もまた同時にTEM観察した。即ち、複合化した酸化物微粒子EDSでアニリンブラックと区別し、数視野のTEMの明視野像に示される酸化物微粒子の一次粒子350個の粒子径を測定し、その平均値で示した。
【0091】
本発明に係るアニリンブラックの酸化物微粒子複合化度は2μm×2μmの任意の視野範囲内のTEM観察で判断した。即ち、該観察で単独で存在している酸化物微粒子と、酸化物微粒子がアニリンブラックと複合化した酸化物微粒子とに分離した。続いて、酸化物微粒子を球形と仮定して一次粒子径から各々の総体積を算出し、酸化物微粒子の総体積に対する複合化している酸化物微粒子の総体積の割合を算出した。該割合を酸化物微粒子複合化度として、下記のように判定した。
○:複合化している酸化物微粒子が92%以上のもの
△:複合化している酸化物微粒子が88%以上92%未満のもの
×:複合化している酸化物微粒子が88%未満のもの
【0092】
本発明に係るアニリンブラックの一次粒子の平均粒径は、TEM像では定量判定しづらいため、比表面積BET値を測定し、その値から、球形換算値を数1により算出して、一次粒子の平均粒径とした。ここで、数1で表わされるρは粒子の真密度であり、アニリンブラックの真密度(1.36g/mL)と酸化物微粒子の真密度とその複合化量から算出した。また、比表面積BET値は、窒素を用いたBET法により測定した。装置は、モノソーブMS-21(QUANTA CHROME製)を使用した。
【0093】
<数1>
アニリンブラックの一次粒子の平均粒径[μm]=6/(BET値×ρ)
【0094】
本発明に係るアニリンブラックに含まれる酸化物微粒子の含有量は、蛍光X線ZSXPrimusII(リガク製)にて、同定、及び定量化した。得られた含有量に前述の酸化物微粒子の複合化度を乗じて、本発明における酸化物微粒子の複合化量を算出した。
【0095】
本発明に係るアニリンブラックの一次粒子の平均粒径に対する酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径の比は前述の得られた各々の値を用いた。
【0096】
本発明に係るアニリンブラックの粉体pH値として、次に示す上澄み液のpHをJIS Z8802-7に従って測定した。即ち、試料5gを300mlの三角フラスコには秤取り、煮沸した純水100mlを加え、加熱して煮沸状態を約5分間保持した。その後、栓をして常温まで放冷し、煮沸による減量に相当する水を加えて再び栓をして1分間振り混ぜ、5分間静置した。
【0097】
本発明に係るアニリンブラックの体積固有抵抗値の測定に対し、試料0.5gを秤量し、KBr錠剤成形器(島津製作所製)用いて、1.372×10Pa(140kgf/cm)の圧力で加圧成形を行い、円柱状の被測定試料を作製した。この被測定試料をステンレス電極の間にセットし、電気抵抗測定装置(model 4329A 横河北辰電気製)で15Vの電圧を印加して抵抗値R[Ω]を測定した。次いで、被測定(円柱状)試料の上面の面積A[cm]と厚みt[cm]を測定し、下記数2にそれぞれの測定値を挿入して、体積固有抵抗値[Ω・cm]を求めた。
【0098】
<数2>
体積固有抵抗値[Ω・cm]=R×(A/t
【0099】
本発明に係るアニリンブラックの結晶性については、X線回折(XRD)装置D8 ADVANCE(BRUKER社製)で、線源Cukαで、2θ範囲5~60°で測定した。
【0100】
本発明に係る樹脂組成物の明度L値については、分光測色計X-Rite939(X-Rite製)を用いてJIS Z8729に定めるところに従って、L値を測定した。
【0101】
得られたLの値によって、下記4段階で評価した。
◎:Lが10.0以下のもの
○:Lが10.0を超えて12.0以下もの
△:Lが12.0を超えて15.0以下のもの
×:Lが15.0を超えるのもの
【0102】
本発明に係る樹脂組成物の分散性は、得られた樹脂組成物表面における未分散の凝集粒子の個数を目視により判定し、5段階で評価した。段階が上がるほど分散性が良く、レベル5が最も分散性が良いことを示す。レベル3以上が好ましい。
レベル5:未分散物が認められない。
レベル4:1cm当たりに1~4個認められる。
レベル3:1cm当たりに5~9個認められる。
レベル2:1cm当たりに10~49個認められる。
レベル1:1cm当たりに50個以上認められる。
【0103】
本発明に係る樹脂組成物の耐熱性として、200℃-2時間加熱前のOD値(OD)、200℃-2時間加熱後のOD値(OD)を分光測色計X-Rite939(X-Rite製)を用いて測定し、数3により、200℃-2時間加熱による減色率[%]を算出した、下記4段階で評価した。
【0104】
<数3>
加熱による減色率[%]=(OD-OD)/OD×100
【0105】
◎:加熱による減色率が10%以下のもの
○:加熱による減色率が10%を超えて20%以下のもの
△:加熱による減色率が20%を超えて30%以下のもの
×:加熱による減色率が30%を超えるのもの
【0106】
本発明に係る水系分散体、及び非水系分散体の粘度はE型粘度計TV-30(東機産業製)を用いて測定した。
【0107】
本発明に係る水系分散体、及び非水系分散体の保存安定性評価は、初期粘度と、25℃で1週間保持後の経時粘度をE型粘度計TV-30(東機産業製)で測定した。この初期粘度(V)から該経時粘度(V)への粘度変化率を下記数4で算出し、3段階で評価した。
【0108】
<数4>
粘度変化率[%]=(V-V)/V×100
【0109】
○:粘度変化率が±10%以下
△:粘度変化率が±10%を超えて±20%以下
×:粘度変化率が20%を超えるもの
【0110】
本発明に係る水系分散体、及び非水系分散体の塗膜の光沢度については、バーコーターを用いて塗布した塗布片を、グロスメーターUGV-5D(スガ試験機製)を用いて45°の光沢度を測定して求めた。
【0111】
本発明に係る水系分散体、及び非水系分散体を用いて、アニリンブラックの明度(黒色度)を評価した。該分散体に対し各々バーコーターを用いて塗布し、得られた塗布片について、樹脂組成物の評価と同様に分光測色計X-Rite939(X-Rite製)を用いてJIS Z8729に定めるところに従って表色指数の明度(黒色度:L値)と色相・彩度(a値、b値)をそれぞれ測定した。
【0112】
本発明に係るアニリンブラックの黒色度の判定は下記4段階で評価した。
◎:Lが10.0以下のもの
○:Lが10.0を超えて12.0以下もの
△:Lが12.0を超えて15.0以下のもの
×:Lが15.0を超えるのもの
【0113】
本発明に係るアニリンブラックの耐熱性として、得られた水系分散体、及び非水系分散体による塗布片について、200℃-2時間加熱前のOD値(OD)、該加熱後のOD値(OD)を分光測色計X-Rite939(X-Rite製)を用いて測定した。即ち、数3により、樹脂組成物の評価と同様に加熱による減色率[%]を算出した。
【0114】
得られた減色率を下記4段階で評価した。
◎:加熱による減色率が10%以下のもの
○:加熱による減色率が10%を超えて20%以下のもの
△:加熱による減色率が20%を超えて30%以下のもの
×:加熱による減色率が30%を超えるのもの
【0115】
<アニリンブラックの製造>
実施例1
35%塩酸50.4重量部(塩酸として17.6重量部)と水1050重量部に、アニリン30重量部を入れ、スノーテックスST-O(酸性コロイダルシリカ、固形分20%、日産化学製)1.5重量部(アニリンに対し1重量%)を添加し、酸性水溶液とした。その後、液温25℃で攪拌混合しながら、塩化第二鉄6水和物1.74重量部を水33重量部に溶解した水溶液を加え、9%過酸化水素水300重量部(過酸化水素として27重量部)を7時間かけて滴下し、そのまま12時間攪拌した。その後、液温50℃にて2時間攪拌を行い、10%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH4.0に中和し、pHが安定した後、濾過水洗し、ペーストを80℃で乾燥、粉砕して、黒色顔料を得た。この黒色顔料の赤外吸収スペクトルを測定したところ、図1に示すように、有機化合物のスペクトルデータベースSDBSに掲載されているアニリンのFT-IRスペクトルとほぼ同一であった。即ち、3230cm-1にアミノ基の伸縮振動、3050cm-1、2950cm-1に芳香族由来のCH伸縮振動、1580cm-1、1500cm-1、1450cm-1に芳香族のC=C伸縮振動が確認され、アミノベンゼン(=アニリン)から構成される化合物であることがわかった。分子量は約10,000であり、ポリアニリンであることが分かった。また、目視で黒色であることからアニリンブラックと同定された(アニリンブラック-1)。
【0116】
また、酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は0.015μmであった。アニリンブラック-1の一次粒子の平均粒径は、BET値が15.8m/gであったことより、数1により換算したところ、0.28μmであった。アニリンブラック-1の一次粒径の平均粒径に対する酸化物微粒子の一次粒径の比は0.054であった。粉体pHは3.6であった。
【0117】
また、アニリンブラック-1の体積固有抵抗値は2×10Ω・cmであった。従来から黒色顔料としてよく用いられているカーボンブラックの体積固有抵抗値は1×10-2Ω・cm程度であり、アニリンブラック-1の体積固有抵抗値は十分に高いといえる。また、XRDでは非晶質に相当するハローピークとPDF 00-060-1167(CClN)に相当するピークが混ざったピークパターンであった。
【0118】
実施例2~5
酸化物微粒子の種類と量、芳香族アミンの酸化重合による反応条件を種々変化させた以外は前記実施例1と同様にして、アニリンブラックを得た。
【0119】
これら実施例の製造条件を表1に示す。表1には各原料100%とした時の重量部を示した。但し、酸化物微粒子の添加量のみ、添加した芳香族アミンとの重量%を記載した。例えば、実施例4では酸化物微粒子として、平均一次粒子径が0.04μmのシリカを5重量%、平均一次粒子径が0.01μmの酸化チタンを2重量%用いた。
【0120】
得られたアニリンブラックの諸特性を表2に示す。酸化物微粒子種は、前述の通り、蛍光X線により同定した。また、酸化物微粒子含有量は、同じく、蛍光X線により定量化し、後述するTEM観察で得られた複合化度を乗じて、複合化量を示した。本発明に係るアニリンブラックは酸化物微粒子との複合化度が高かったため、酸化物微粒子複合化量は表1に示す添加した酸化物微粒子量とほぼ同程度であった。アニリンブラックの一次粒子の平均粒径、複合化された酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径、粉体pH、体積固有抵抗値を示した。得られた体積固有抵抗値は高い値を示した。
【0121】
図2に実施例2で得られたアニリンブラック(アニリンブラック-2)の任意の0.5μm×0.5μm視野範囲のSTEMのBF像を示す。得られた一次粒子の像にEDSマッピングによる炭素の分布を重ねた像を図3として示す。色の淡い部分は炭素の多い部分であり、前記BF像の一次粒子の輪郭と一致した。サブミクロンの粒子の内部は炭素の濃度が高いため、該粒子はアニリンブラックであることが分かった。図2のBF像にEDSマッピングによるケイ素の分布を重ねた像を図4として示す。色の濃い部分はケイ素の多い部分であるが、アニリンブラック粒子内にケイ素の多い部分が存在し、且つ、10nm程度の円形状であった。この濃い部分は図3のアニリンブラック粒子内の炭素の少ない部分(像の色の濃い部分)と一致した。また、図2のBF像にEDSマッピングによる酸素の分布を重ねた像を図5として示す。図5の色の濃い部分である酸素の多い部分と図3のケイ素の多い部分は一致した。従って、10nm程度の分布のSiOがアニリンブラック粒子内に存在する(内包されている)ことが分かり、0.5μm×0.5μm視野範囲の複合化度は100%であった。EDS定量による0.5μm×0.5μm視野範囲のSiOは4wt%であり、合成仕込み時の添加量の酸化物微粒子の量と近い値を示した。
【0122】
図6にアニリンブラック-2のTEMのBF像を示す。色の濃い部分は電子線の透過しにくい場所であり、EDSの結果が示すSiO粒子の位置と一致する場所もあった。TEMのBF像とEDSのマッピングより、酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は0.015μmであった。図6と同倍率の撮影条件で、0.5μm×0.5μmの任意の視野範囲を16箇所TEM観察し、合計、2μm×2μmの視野範囲を観察し、各々の視野で得られた複合化度を平均した。得られた本発明の酸化物微粒子の複合化度は95%と高かった。蛍光X線の酸化物微粒子含有量が5重量%であったため、得られた本発明の酸化物微粒子の複合化量は4.8重量%であった。
【0123】
比較例1
35%塩酸50.4重量部(塩酸として17.6重量部)と水1050重量部に、アニリン30重量部を入れ、酸性水溶液とした。その後、液温25℃で攪拌混合しながら、塩化第二鉄6水和物1.74重量部を水33重量部に溶解した水溶液を加え、9%過酸化水素水300重量部(過酸化水素として27重量部)を7時間かけて滴下した。そのまま12時間攪拌後、液温50℃にて2時間攪拌を行い、10%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH4.0に中和した。該pHが安定した後、濾過水洗し、得られたペーストを80℃で乾燥、粉砕して、酸化物微粒子を含まない黒色顔料を得た(アニリンブラック-6)。
【0124】
比較例2
比較例1で合成したアニリンブラック-6を10重量部とし、スノーテックスST-O(酸性コロイダルシリカ、固形分20%、日産化学製)0.5重量部と純水10重量部を混合した。自動乳鉢ANM1000型(日陶科学製)にて、乳棒100rpm、乳鉢6rpmで2時間攪拌し、水分を揮発させた後、80℃で乾燥、粉砕して、酸化物微粒子と機械的に混合した黒色顔料を得た(アニリンブラック-7)。TEM観察で分かったことは、試料がアニリンブラックとシリカが機械的に混合された状態だったことであり、本発明に係るアニリンブラックのように、アニリンブラック一次粒子に内包されたシリカは観察されなかった。得られた酸化物微粒子の複合化度は3%であり、蛍光X線による酸化物微粒子の含有量が1重量%であったため、得られた酸化物微粒子の複合化度は0.03重量%であった。
【0125】
比較例3
特開2001-261989号公報の実施例5を参考にし、アニリン30重量部を5.1%硫酸水溶液600重量部(硫酸として30.6重量部)に溶解し、これに塩化第二鉄6水和物7.8重量部を一度に加え、40℃で過硫酸アンモニウム14.4重量部を水600重量部に溶解した溶液を15分間で滴下した後、70~75℃に加熱して1時間撹拌した。反応後、不溶物を濾取、水洗し、得られたケーキを900重量部の水に再スラリー化し、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整した後、90℃で30分間加熱撹拌した。不溶物を濾取、水洗、乾燥して、アニリンブラックを得た(アニリンブラック-8)。
【0126】
比較例4
特開2000-72974号公報の実施例1を参考にし、62%硫酸18.0重量部(硫酸として11.1重量部)と35%塩酸31.8重量部(塩酸として11.1重量部)と水300重量部に、アニリン30重量部を入れ、攪拌溶解した。その後、前記溶液に硫酸第一鉄13.2重量部を水60重量部に溶解したものを一度に添加した。液温15℃で攪拌混合しながら、30%過酸化水素90.0重量部(過酸化水素として27重量部)を4時間にて添加し、その後液温15℃にて4時間攪拌混合を行い反応終了とした。該終了後、反応液を濾過・水洗し、得られたケーキを960重量部の水を用い再分散させ、10%カセイソーダにてpH7に中和した。該pHが安定した後、濾過・水洗し、得られたペーストを60℃で乾燥して、アニリンブラックを得た(アニリンブラック-9)。
【0127】
比較例5
特開平9-31353号公報の実施例4を参考にし、イオン交換水540重量部、p-トルエンスルホン酸30重量部、1%濃度の硫酸第二鉄15重量部(硫酸第二鉄として0.15重量部)、あらかじめ溶解させておいたポリイソプレンスルホン酸ナトリウム(分子量=3万)10%濃度の水溶液350重量部を反応容器に仕込み、よく攪拌した。ついで35%塩酸33.8重量部(塩酸として11.1重量部)とアニリン30重量部を仕込んだ。反応温度を20℃に保ちながら、5%濃度の過酸化水素水360重量部(過酸化水素として18重量部)を2時間かけて連続的に添加し、さらに2時間攪拌した。その後、濾過・水洗し、得られたペーストを60℃で乾燥して、アニリンブラックを得た(アニリンブラック-10)。
【0128】
これらの比較例の製造条件を、実施例の記載に従って表1に、また、得られたアニリンブラックの諸特性を表2に示す。表2に示すように、比較例のアニリンブラック-6と7は体積固有抵抗値に優れるものであり、アニリンブラック-8と9と10は低い体積固有抵抗値を示した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
<樹脂組成物の製造>
実施例6
実施例1で得たアニリンブラック-1を1.5重量部とし、スチレン-アクリル共重合体JONCRYL680(BASF製)48.5重量部もまた秤量し、混合して混合粉末を得た。得られた混合粉末にステアリン酸カルシウム0.5重量部を加えて混合し、160℃に加熱した熱間ロールのクリアランスを0.2mmに設定した。続いて、上記混合粉末を少しずつロールに練り込んで樹脂組成物が一体となるまで混練を続けた後、樹脂組成物をロールから剥離した。次に、表面研磨されたステンレス板の間に上記樹脂組成物を挟んで180℃に加熱したホットプレス内に入れ、1トン/cmの圧力で加圧成形して厚さ1mmの樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の分散性はレベル5で高分散性であった。また、L値は7.5となり、黒色度は◎であった。
【0132】
得られた樹脂組成物を超遠心粉砕機 ZM200(レッチェ製)を用いて12000rpmにて粉砕し、そのうち、3.0gをプロピレングリコール1-モノメチルエーテルアセタート6.0gに浸漬し、これをガラスプレート上にWET膜厚6μmのバーコーターを用いて塗布(塗膜厚み:約1μm)し、30分120℃で乾燥し、塗布片を得た。該塗布片のオーブン200℃で2時間加熱による減色率は5%で、耐熱性は◎であった。
【0133】
実施例7~10、比較例6~10
アニリンブラックの種類を変化させた以外は、前記実施例6と同様にして樹脂組成物を得た。
【0134】
得られた樹脂組成物の諸特性を表3に示す。比較例6~10は黒色度に優れたものもあったが、比較例6~10において耐熱性に優れているものは得られなかった。
【0135】
【表3】
【0136】
以上のように、本発明の樹脂組成物は、耐熱性、及び黒色度に優れることは明らかであり、分散性にも優れていた。
【0137】
<水系分散体の製造>
実施例11
実施例1で得たアニリンブラック-1を用い、水系分散体組成を下記割合で配合して、1.5mmφガラスビーズ50重量部とともにペイントシェーカーで60分間混合分散し、水系分散体を調製した。
アニリンブラック-1 7.50重量部、
アニオン系界面活性剤 2.50重量部、
(ハイテノールNF-08 :第一工業製薬製)
スチレン-アクリル共重合体 10.00重量部、
(JONCRYL63J :BASF製)
消泡剤 0.50重量部、
(エンバイロジェムAD-01 :日信化学工業製)
水 31.00重量部。
得られた水系分散体の粘度は7.5mPa・sであり、保存安定性は○であった。即ち、水系分散体の保存安定性は良好であった。
【0138】
実施例1で得たアニリンブラック-1の黒色度及び耐熱性、並びに実施例11で得た水系分散体の分散性を観察するために、実施例11の分散体をガラスプレートにWET膜厚6μmのバーコーターを用いて塗膜を作製した。これを120℃30分ベークし、塗布片(塗膜厚み:約1μm)を作製した。得られた塗布片の光沢度は19%であり、実施例11の分散体の分散性は高かった。また、得られた塗布片のL値が8.2であり、アニリンブラック-1の黒色度は◎であった。さらに、高温加熱による減色率は5%で、アニリンブラック-1の耐熱性は◎であった。
【0139】
実施例12~15、比較例11~15
アニリンブラックの種類を変更した以外は、前記実施例11と同様にして水系分散体を得た。
【0140】
得られた水系分散体、及び得られた塗布片の諸特性を表4に示す。実施例11~15は45°光沢度が15以上であり、分散性に優れていた。実施例11~15は優れた耐熱性であったが、比較例11~15では全く耐熱性が得られなかった。
【0141】
【表4】
【0142】
以上のように、本発明の水系分散体は、光沢度による分散性、及び粘度変化率による保存安定性に優れることは明らかである。
【0143】
<非水系分散体の製造>
実施例16
実施例1で得たアニリンブラック-1を用い、非水系分散体組成を下記割合で配合して1.5mmφガラスビーズ50重量部とともにペイントシェーカーで60分間混合分散し非水系分散体を調製した。
アニリンブラック-1 7.50重量部、
高分子分散剤 2.00重量部、
(PB822:味の素ファインテクノ製)
スチレンーアクリル共重合体 3.00重量部、
(JONCRYL680:BASF製)
プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート 37.50重量部。
得られた非水系分散体の粘度は8.0mPa・sであった。保存安定性は○であった。
【0144】
実施例1で得たアニリンブラック-1の黒色度及び耐熱性、並びに実施例16で得た非水系分散体の分散性を観察するために、実施例16の分散体をガラスプレートにWET膜厚6μmのバーコーターを用いて塗布した。これを120℃30分ベークし、塗布片(塗膜厚み:約1μm)を作製した。得られた塗布片の光沢度は20%で実施例16の分散体の分散性は良好であった。また、塗布片のL値が7.5であり、アニリンブラック-1の黒色度は◎であった。さらに、高温加熱による減色率は5%で、アニリンブラック-1の耐熱性は◎であった。
【0145】
実施例17~20、比較例16~20
アニリンブラックの種類を変更した以外は、前記実施例16と同様にして非水系分散体を得た。
【0146】
得られた非水系分散体の諸特性、及び得られた塗布片の諸特性を表5に示す。実施例11~15は45°光沢度が15以上であり、分散性に優れていた。実施例11~15は優れた耐熱性であったが、比較例11~15では耐熱性が得られなかった。
【0147】
【表5】
【0148】
以上のように、本発明の非水系分散体は、光沢度による分散性、及び粘度変化率による保存安定性に優れることは明らかである。
【0149】
また、本発明に係るアニリンブラックは、Si、Ti、Alから選ばれた少なくとも1種類以上の酸化物微粒子が、0.1~20重量%複合化したアニリンブラックであり、耐熱性、黒色度、体積固有抵抗に優れていたことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明に係るアニリンブラックは、耐熱性と黒色度に優れ、且つ体積固有抵抗値も高いので、電子写真用非磁性現像剤、或いはブラックマトリクス用着色剤としての電子機器などの分野として好適である。また、本発明に係るアニリンブラックであって、クロムイオンや銅イオンなどの有害物質を含まないものは、化粧料、塗料、印刷インキ、インクジェットインキなどの各種用途としても好適である。更に、該アニリンブラックを含んでなる樹脂組成物、水系分散体、及び非水系分散体においては、耐熱性と分散性に優れ、黒色度が高いので、電子写真用非磁性現像剤、或いはブラックマトリクス用着色剤としての電子機器などの分野や、化粧料、塗料、印刷インキ、インクジェットインキなどの各種用途として好適である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6