(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ゴルフ練習場の顧客構成分析方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20230101AFI20230628BHJP
【FI】
G06Q30/02
(21)【出願番号】P 2022201954
(22)【出願日】2022-12-19
【審査請求日】2022-12-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518304063
【氏名又は名称】株式会社ゴルフ産業需要調査研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】521556624
【氏名又は名称】株式会社ルミナス
(73)【特許権者】
【識別番号】521555797
【氏名又は名称】株式会社グリーンマーケティング
(73)【特許権者】
【識別番号】522492417
【氏名又は名称】株式会社テクノ・アシスト
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】山岸 勝信
(72)【発明者】
【氏名】内田 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝郎
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-067530(JP,A)
【文献】特開平06-304280(JP,A)
【文献】特開平09-140849(JP,A)
【文献】特開2002-140456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客データベースとコンピュータ端末を備えた顧客構成分析システムによるゴルフ練習場の顧客構成分析方法であって、
顧客データベースでは、
顧客がはじめて
顧客構成分析の対象となるゴルフ練習場を利用した利用開始日と、顧客による当該ゴルフ練習場の利用履歴によって構成された顧客基本情報を蓄積管理する顧客基本情報管理ステップ
が実行され、
コンピュータ端末では、
顧客を所定の1年間における利用回数ごとの顧客群に分類する第1の顧客分類ステップ
が実行され、
所定の1年間に当該ゴルフ練習場を利用した顧客のうち、所定の1年間の翌年も当該ゴルフ練習場を利用した比率である翌年継続利用率を前記第1の顧客分類ステップにおいて分類された顧客群ごとに算出する翌年継続利用率算出ステップ
が実行されるとともに、
前記所定の1年間における利用回数、及び/又は、前記翌年継続利用率に任意の基準を設けて、所定の1年間に当該ゴルフ練習場を利用した顧客を前記任意の基準未満の顧客群と前記任意の基準以上の顧客群に分類する第2の顧客分類ステップ
が実行されて、
顧客分類情報を取得することを特徴とするゴルフ練習場の顧客構成分析方法。
【請求項2】
前記コンピュータ端末では請求項1において取得した顧客分類情報を別の所定の1年間の顧客分類情報と比較して、前記任意の基準未満の顧客群と前記任意の基準以上の顧客群を構成する顧客数、及び/又は、翌年継続利用率の
増減数及び増減比率を算出することを特徴とするゴルフ練習場の顧客構成分析方法。
【請求項3】
前記第2の顧客分類ステップにおいて、所定の1年間における利用回数と翌年継続利用率をそれぞれ縦軸と横軸とした折れ線グラフで示すとともに、近似曲線を導き出して前記所定の1年間における利用回数と前記翌年継続利用率の関係を単純化することを特徴とする請求項1に記載のゴルフ練習場の顧客構成分析方法。
【請求項4】
顧客データベースとコンピュータ端末を備えた顧客構成分析システムによるゴルフ練習場の顧客構成分析方法であって、
顧客データベースにおいて、
顧客の
顧客構成分析の対象となるゴルフ練習場の利用開始日と、顧客による当該ゴルフ練習場の利用履歴データによって構成された顧客基本情報を蓄積管理し、
コンピュータ端末において、
前記顧客基本情報から所定期間における利用回数を基準に顧客を予め設定された顧客群に分類して、各顧客群を構成する顧客数及び、各顧客群単位での利用回数を示した顧客分類情報を取得する
とともに、
前記顧客分類情報には、当該所定期間における各顧客群が、当該所定期間の直前の所定期間においてどの顧客群に分類されていた顧客によって構成されたものであるのか、その内訳を示すことを特徴とするゴルフ練習場の顧客構成分析方法。
【請求項5】
前記コンピュータ端末において、任意の複数の所定期間における前記顧客分類情報を選択し、抽出して、各顧客群を構成する顧客数及び、各顧客群単位の利用回数の
増減数及び増減比率を算出することを特徴とする請求項4に記載のゴルフ練習場の顧客構成分析方法。
【請求項6】
前記各顧客群への分類基準が、顧客の当該ゴルフ練習場の利用開始日が、当該所定期間であるか、当該所定期間より前であるかによって分類する、第1の顧客分類と、当該所定期間中の顧客の利用回数によって分類する第2の顧客分類の組み合わせであることを特徴とする請求項4
または5に記載のゴルフ練習場の顧客構成分析方法。
【請求項7】
前記第2の顧客分類は、当該所定期間中の利用回数が、0回、1回~3回、4回~当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数未満、当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数以上とするとともに、当該所定期間が1年間であり、当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数は4回より多いことを特徴とする請求項
6に記載のゴルフ練習場の顧客構成分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ練習場における顧客構成の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフは優れた生涯スポーツであり、日本では自身がプレーするスポーツの中で最大消費支出規模である。
ゴルフ場で楽しくプレーし、ゴルフの神髄を体感できるまでには一定のスキルが必要であり、ゴルファーにとってゴルフ練習場の利用が必要不可欠であり、また、上達するほどスイング安定向上を欲し、ゴルフ練習場利用回数が増加する。すなわちゴルフ練習場を利用する回数は利用者のゴルフ熱意に比例すると考えられる。
ゴルフ練習場は民間営利施設として2018年全国2800施設存立している(株式会社ゴルフ産業需要調査研究所による調査)。
しかし、1992年以降、ゴルフ場・ゴルフ練習場入場者数、ゴルフ用品小売市場金額に代表されるゴルフ産業需要量は一貫して減少し続けている。人口減少に伴い需要が縮小するなか、現在運営されているゴルフ練習場すべての存続は困難となり整理淘汰は避けられない状況であり、閉鎖施設から存続施設への利用者移行及び定着率の把握は重要となる(転入顧客管理)。
また、ゴルフ練習場顧客の約30%は当該ゴルフ練習場をはじめて利用するビギナー(新規ビギナー)であり、その新規ビギナーの約70%が1回限りの利用で翌年には消滅してしまう。この消滅の可能性が高い新規ビギナーを成熟ゴルファーに成長させて、当該ゴルフ練習場にとっての安定顧客にすることも顧客管理の重要な課題である。
このようにゴルフ場やゴルフ練習場経営(集客)には、できるだけ正確な状況分析、現状把握が不可欠となっている。また、今般の新型コロナウイルスの流行などの不明確な要因(不明確要因)にもできるだけ対応可能な柔軟な経営を模索する必要がある。
【0003】
特許文献1、2には、集客の分析を行う装置などが既に開示されている。また、本願出願人も、特許文献3として、入場者予測方法および入場者予測装置を既に提案している。
【0004】
特許文献1は、アドバイスの対象となる店舗に来店する顧客のうち、特定の複数顧客に対し、各顧客の住所に関する情報とその店舗での商品購入金額に関する情報を得るとともに、その店舗が立地する場所を中心とし、上記複数顧客の住所が全て網羅される領域を地図上で特定し、上記領域を複数エリアに分割してエリアごとに、そのエリアに居住する顧客数と世帯数をデータ化し、上記データに基づいて上記領域を戦略商圏と戦略外商圏とに区分し、上記戦略商圏内の各エリアにおけるマーケットシェア(Gに対するCの割合)を算出した上で、その算出値に基づいて店舗に対する集客力強化等のアドバイスを行うようにした、店舗アドバイス方法である。
【0005】
特許文献2は、オンライン端末とオフライン端末とを混合させシステムを簡素化することを目的に、個人識別バーコードが付されたカードと、署名簿にサインされた氏名をイメージで読み込むOCRと、複数のオンライン端末と、この端末に接続され、バーコード及び商品に付された商品バーコードを読み込むためのバーコードリーダと、オフライン端末と、このオフライン端末と接続され、カードに光学的に情報を書き込むためのカードリード/ライト器と、オンライン端末及びオフライン端末の共通のデータを管理するためのホストコンピュータとからなるゴルフ場総合管理システムが開示されている。
【0006】
また、特許文献3は、その要約の「課題」に「現在と比較して将来どのように顧客数が変化していくかを予測することのできる入場者予測装置を提供する。また商圏範囲の変化に応じた、見込み顧客数の変化を知ることのできる入場者予測装置を提供する。」として、その解決手段として、「スポーツや趣味を行う所定の施設(ゴルフ練習場を含む)や、生活品を購入するコンビニエンスストアやスーパーマーケット等の商業施設の入場者数を、制御プログラムを用いて予測する入場者予測方法であって、前記制御プログラムによって前記施設に入場することを見込む前記住民の居住範囲を商圏範囲として設定し(S1)、データベースの情報に基づき前記商圏範囲において前記施設に入場することが期待される前記入場者数を期待可能入場者数として算出する(S2)」ものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特願2002-123787号公報
【文献】特開平06-318217号公報
【文献】特開2020-030770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ゴルフ練習場収入は「総利用回数×客単価」により決定するが、ゴルフ練習場には多様な「ゴルフ熱意」の顧客が去来する。新しくゴルフを始めたビギナーも毎年多数来場するが翌年殆どが消滅してしまう。その一方で上達に伴って利用回数を増加させ、当該ゴルフ練習場にとって安定した顧客となる場合もある。また、長年にわたり当該ゴルフ練習場にとって安定した顧客であっても加齢等の理由により利用回数が減少し、消滅することも想定される。
上記のように、顧客それぞれが所定期間どのように当該ゴルフ練習場を利用したか、また、複数の所定期間の利用状況を比較して経過を把握することによって、顧客の利用パターンがどのように変化したかを注視することが重要になる。
そして、顧客それぞれの利用パターンが把握できれば、ゴルフ練習場として顧客に対して適切な来場誘致を個別に行うなど、経営の安定化に向けた施策を実施できるようになるが、従来そのような視点に立った顧客の動向把握を行う仕組みはなかった。
そこで、本発明の目的は、詳細な顧客の個人情報に頼ることなく、当該ゴルフ練習場における顧客を所定の基準に基づいて複数の顧客群に分類し、その経時的な動向を把握できる顧客構成の分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゴルフ練習場の顧客構成分析方法は、顧客がはじめて当該ゴルフ練習場を利用した利用開始日と、顧客による当該ゴルフ練習場の利用履歴によって構成された顧客基本情報を蓄積管理する顧客基本情報取得管理ステップと、顧客を所定の1年間における利用回数ごとの顧客群に分類して利用回数階層管理を行う第1の顧客分類ステップと、所定の1年間に当該ゴルフ練習場を利用した顧客のうち、所定の1年間の翌年も当該ゴルフ練習場を利用した比率である翌年継続利用率を前記第1の顧客分類ステップにおいて分類された顧客群ごとに算出する翌年継続利用率算出ステップと、前記所定の1年間における利用回数、及び/又は、前記翌年継続利用率に任意の基準を設けて、所定の1年間に当該ゴルフ練習場を利用した顧客を前記任意の基準未満の顧客群と前記任意の基準以上の顧客群に分類する第2の顧客分類ステップを備えて、顧客分類情報を取得することを特徴とする。
また、取得した顧客分類情報を別の所定の1年間の顧客分類情報と比較して、前記任意の基準未満の顧客群と前記任意の基準以上の顧客群を構成する顧客数、及び/又は、翌年継続利用率の推移を読み取ることを特徴とする。
そして、前記第2の顧客分類ステップにおいて、所定の1年間における利用回数と翌年継続利用率をそれぞれ縦軸と横軸とした折れ線グラフで示すとともに、近似曲線を導き出して前記所定の1年間における利用回数と前記翌年継続利用率の関係を単純化することを特徴とする。
【0010】
本発明のゴルフ練習場の顧客構成分析方法は、顧客の当該ゴルフ練習場の利用開始日と、顧客による当該ゴルフ練習場の利用履歴データによって構成された顧客基本情報を蓄積管理し、前記顧客基本情報から所定期間における利用回数を基準に顧客を予め設定された顧客群に分類して、各顧客群を構成する顧客数及び、各顧客群単位での利用回数を示した顧客分類情報を取得することを特徴とする。
そして、任意の複数の所定期間における前記顧客分類情報を選択し、抽出して、各顧客群を構成する顧客数及び、各顧客群単位の利用回数の差異を算出し、各顧客群を構成する顧客数及び、各顧客群単位の利用回数の推移を読み取ることを特徴とし、前記顧客分類情報は、当該所定期間における各顧客群が、当該所定期間の直前の所定期間においてどの顧客群に分類されていた顧客によって構成されたものであるのか、その内訳を示すことを特徴とする。
そして、前記各顧客群への分類基準が、顧客の当該ゴルフ練習場の利用開始日が、当該所定期間であるか、当該所定期間より前であるかによって分類する、第1の顧客分類基準と、当該所定期間中の顧客の利用回数によって分類する第2の顧客分類基準の組み合わせであることを特徴とし、 前記第2の顧客分類は、当該所定期間中の利用回数が、0回、1回~3回、4回~当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数未満、当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数以上とするとともに、当該所定期間が1年間であり、当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数は4回より多いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、詳細な顧客の個人情報に頼ることなく、当該ゴルフ練習場における顧客を所定期間の利用回数を基準に顧客群に分類することで、顧客群に分類された顧客ごとに、ゴルフ熱意に応じた適切な来場誘致施策の実施が可能となる。
また、ゴルフ練習場の運営にとって重要な指標となる利用回数を独自に設定し、その利用回数よって分類された顧客数や、利用回数を把握することが可能となる。
そして、複数の所定期間の顧客分類情報を抽出して対比することで、その経時的な動向を把握して推移を分析することにより、経営の安定化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における顧客基本情報の一部を示す図である。
【
図2】ゴルフ練習場の利用回数とゴルフ練習場の利用継続率の関係を示す図である。
【
図3】本発明の顧客構成分析方法を実行するシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
人口減少に端を発して、ゴルフ人口が減少傾向にある現状において、今後ゴルフ練習場が新規顧客の大幅な増加を目指すのは困難であり、ゴルフ練習場の存続のためには、当該ゴルフ練習場の顧客が継続的に利用する動機付けとなるような効果的な施策を実施することで、利用回数の増加を目指す必要がある。
そのためには、顧客の利用回数の増減や、施策の実施対象者の選定、施策の成果を把握するための手段が必要であるという要請から、本願発明者は所定の1年間の利用回数と、翌年も継続的に利用する継続利用率(翌年継続利用率)の関係に着目した。
そこで、本発明の第1の実施の形態として、所定の1年間の各顧客の利用回数(年間利用回数)と、翌年継続利用率から、顧客を分類する基準を設定し、当該ゴルフ練習場の経営分析や分類された顧客に対して有効な施策の実施を行うための方法を示す。
【0014】
(顧客について)
本実施の形態において、顧客Cとは、当該ゴルフ練習場を1度でも利用したことのある利用者であり、利用者がはじめて当該ゴルフ練習場を利用する際に、ゴルフ練習場は顧客の情報を取得する。
取得する顧客の情報としては、氏名、住所、生年月日、ゴルフ歴など顧客の属性に関する情報が挙げられるが、本実施の形態では、少なくとも顧客Cが初めて当該ゴルフ練習場を利用した日(利用開始日CIa)と、顧客Cの当該ゴルフ練習場の利用履歴CIbが取得できればよい。本実施の形態において、顧客Cの当該ゴルフ練習場の利用開始日CIaと、当該ゴルフ練習場の利用履歴CIbを顧客基本情報CIとする。
一般的にゴルフ練習場において、顧客Cがいつ当該ゴルフ練習場を利用したか、球数や利用時間などを基準に、どの程度利用したかを把握するために様々な種類の顧客管理システムが導入されており、このような顧客管理システムを用いて、顧客Cが当該ゴルフ練習場をはじめて利用した日(利用開始日CIa)を取得するとともに、顧客が当該ゴルフ練習場を利用するたびにその利用履歴CIbが蓄積されていくことになるので、本実施の形態の顧客構成分析方法を実行するために新たなシステムの導入等のコストは不要である。
【0015】
次に、顧客の利用開始日CIaと利用履歴CIb(顧客基本情報CI)を顧客管理システムで管理しておくことにより、所定の1年間を設定して(a)期間中、何人の顧客Cが当該ゴルフ練習場を利用したか、(b)期間中、当該ゴルフ練習場を利用した各顧客Cは何回利用したか、(c)期間中、当該ゴルフ練習場を利用した顧客Cがその翌年も当該ゴルフ練習場を利用したか否か、といった情報を取得することができる。
すなわち、所定の1年を設定し、設定した所定の1年間に当該ゴルフ練習場を利用した顧客Cを年間利用回数ごとの顧客群CGn(n=年間利用回数)に利用顧客を分類し、各顧客群CGnを構成する顧客のうち、翌年も当該ゴルフ練習場を利用したか否かの情報を取得して、顧客群CGnごとに、翌年継続利用率を算出する(第1の顧客分類S101)。
【0016】
【0017】
表1は本実施の形態のゴルフ練習場の顧客構成分析方法を説明する表であり、上述のように、当該ゴルフ練習場における1年間の利用顧客を年間の利用回数に応じた顧客群に分類し、各顧客群を構成する利用顧客数、利用顧客のうち、翌年も当該ゴルフ練習場を利用した翌年継続顧客数、その比率である翌年継続利用率を示したものになっている。
例えば、所定期間中の利用回数が1回の顧客が分類される顧客群CG1に分類される顧客Cは6,748人で、そのうち翌年も継続して当該ゴルフ練習場を利用した顧客(翌年継続利用者数)は1,948人、翌年継続利用率は29%(28.86%)であることを示しており、利用回数の増加にともない、利用顧客数が徐々に減少していき、年間利用回数が28回の顧客群CG28に分類される顧客は100人未満(98人)となることも読み取ることができる。
また、所定の1年間の利用顧客数の合計(23,205人)と翌年継続顧客数の合計(13,744人)から、所定の1年間における当該ゴルフ練習場全体の翌年継続利用率が59%であることも読み取ることができる。
【0018】
(目標設定)
表1のように、所定の1年間の利用顧客を利用回数に応じた顧客群CGnに分類し、顧客群ごとに構成する利用顧客数だけでなく、翌年も継続利用した顧客数を抽出し、翌年継続利用率の算出を行い、次のステップとして、基準となる利用回数、及び/又は、翌年継続利用率を設定する。
ここで、当該ゴルフ練習場が継続利用されない理由として、加齢や怪我などでゴルフから離れる場合や、引っ越しなどにより当該ゴルフ練習場を利用できなくなる場合など、当該ゴルフ練習場の設備内容や施策とは別の不可避的な要因で継続利用が途切れてしまうことがあることから、本願発明者の経験上80%を超える翌年継続利用率とは、非常に望ましい状態であると言える。当該ゴルフ練習場が目標とする利用回数は、売上を顧客の利用回数ごとに算出して、全体の売り上げに占める比率などから主体的に決定すればよく、その設定方法は適宜選択可能であるが、本実施の形態では、翌年継続利用率80%を目標値と設定するとともに、翌年継続利用率が80%未満となる、年間利用回数10回未満の顧客を不安定顧客群UGと、年間利用回数10回以上の顧客を安定顧客群SGに分類する(第2の顧客分類S201)。
表2に示すように、年間利用回数10回未満の顧客は、顧客群CG1からCG9に分類されるとともに、不安定顧客群UGに分類され、年間利用回数10回以上の顧客はCG10以上に分類されるとともに、安定顧客群SGに分類され、所定の1年間の顧客分類情報CCを得ることができる。
【0019】
【0020】
【0021】
表3は、表1の所定の1年間の利用回数と、利用回数により分類された顧客群CGnごとの翌年継続利用率の関係を折れ線で示したグラフであり、表の横軸を所定の1年間の利用回数(回)、縦軸を翌年継続利用率(%)としており、実線の折れ線で示されているのが、翌年継続利用率であり、点線で示されているのが折れ線から導き出される近似曲線である。
ここで近似曲線とは、利用回数と翌年継続利用率の関係が折れ線となることからも分かるように、実際には不規則なバラつき(起伏)がある。そこで、全体的な傾向を読み取りやすく単純化するために用いる多項式近似曲線である(用いた多項式は表3中に示されている)。
本実施の形態では、所定の1年間の利用回数と、利用回数により分類された顧客群CGnごとの翌年継続利用率の関係の折れ線を、近似曲線を用いることで利用回数と翌年継続利用率の関係を単純化し、不安定顧客群UGと安定顧客群SGの分類の基準となる利用回数、及び/又は、翌年継続利用率の選定を容易にしている。
【0022】
(別の目標設定方法)
本発明の第2の顧客分類の基準となる目標値の設定は、上記のように任意の来場回数や翌年継続利用率を設定する方法とは別に以下のような方法も考えられる。
【0023】
表4は、総務省統計局から発表される社会生活基本調査の結果であり、表4の1は年齢別のゴルフ参加率(参加率とは、調査対象者のうち、ゴルフ練習場もしくはゴルフ場を利用した人数の比率)、表4の2は活動率(年齢別の平均活動回数)を示したものであり、2006年から2021年まで5年ごとの調査の結果である。
また、例えば2006年に10~14歳だったゴルフ参加者が5年後の2011年には15~19歳となっており、その参加率は、3.8から3.4に推移しており加齢係数は3.4/3.8=0.9(0.8947・・・、小数点第二位を四捨五入)となる(表4の3)。
同様に2006年に10~14歳の活動率11.1が、5年後の2011年に15~19歳になると活動率16.1となり、加齢係数は16.1/11.1=1.5(1.45045、小数点第二位を四捨五入)となる(表4の4)。
【0024】
【0025】
表4の5から、20歳~29歳のときに、ゴルフ練習場やゴルフ場を利用するゴルフ参加率は増加し、30歳を境に74歳まで減少し続け、年齢層ごとに約20%ずつ減少することを読み取ることができる。
また、30歳を境にゴルフ参加率は減少するものの、年齢が高くなるにつれて活動率は上昇し、1人当たりの活動数は増加し、年齢層ごとに約20%ずつ増加していることも読み取ることができる。
【0026】
このような総務省統計局から発表される社会生活基本調査の結果から、ゴルフ参加率減少の平均値から本発明の第2の顧客分類の基準となる目標値の設定を行うこともできる。すなわち、表4の5から、30歳から74歳までの年齢層ごとのゴルフ参加率減少の平均値が20%であることが統計から読み取れるので、翌年継続利用率80%を第2の顧客分類の基準である目標値に設定することにより、当該ゴルフ練習場の顧客を不安定顧客群UGと安定顧客群SGに分類して顧客分類情報CCを得ることができる。
【0027】
そして、上述のような方法で得られた顧客分類情報CCと、所定の1年間の前年など、所定の1年とは別の1年の顧客分類情報CCを比較することにより、年間の利用回数ごとに分類された顧客群CGnを構成する顧客数の推移や、不安定顧客群UGを構成する顧客数の増減及び、安定顧客群SGを構成する顧客数の増減を読み取ることが可能となる。
このように顧客を分類することにより、(1)不安定顧客の顧客群に分類された顧客に対し、来場回数の増加を目的とする施策の実施、安定顧客の顧客群に分類された顧客に対しては、来場回数の維持を目的とする施策の実施というふうに、当該ゴルフ練習場にとって、実施する施策の明確化と施策の対象となる顧客の明確化が可能となる。
そして、(2)2つ以上のデータの比較から、利用回数ごとの顧客数の推移を読み取ることで、実施した施策の有効性を判断することも可能となる。
【0028】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について以下詳細に説明する。
【0029】
(顧客について)
本実施の形態において、顧客Cとは、当該ゴルフ練習場を1度でも利用したことのある利用者であり、利用者がはじめて当該ゴルフ練習場を利用する際に、ゴルフ練習場は顧客Cの情報を取得する。
取得する顧客Cの情報としては、氏名、住所、生年月日、ゴルフ歴など顧客の属性に関する情報が挙げられるが、本実施の形態では、少なくとも初めて当該ゴルフ練習場を利用した日(利用開始日Ia)と、顧客Cの当該ゴルフ練習場の利用履歴Ibが取得できればよい。本実施の形態において、顧客の当該ゴルフ練習場の利用開始日と、当該ゴルフ練習場の利用履歴を顧客基本情報Iとするという点については上述の第1の実施の形態と同様である。
一般的にゴルフ練習場において、顧客がいつ当該ゴルフ練習場を利用したか、球数や利用時間などを基準に、どのように利用したかを把握するために様々な種類の顧客管理システムが導入されており、このような顧客管理システムを用いて、顧客が当該ゴルフ練習場をはじめて利用した日(利用開始日Ia)を取得する。
そして、顧客管理システムにより、顧客が当該ゴルフ練習場を利用するたびにその利用履歴Ibが蓄積されていくことになる。
図1は、当該ゴルフ練習場の顧客管理システムから抽出した顧客のリストの一部(顧客番号1から100まで)であり、利用開始日Iaと、2018年から2020年の利用回数が示されている。
【0030】
(第1の顧客分類について)
まず、本実施の形態において所定の期間を1年(12か月)と設定する。そして所定の期間のうちに当該ゴルフ練習場を利用した顧客Cを新規顧客Ncと既存顧客Tcの顧客群Gに分類する。
ここで、新規顧客Ncとは、所定の期間のうちにはじめて当該ゴルフ練習場を利用した顧客Cであり、既存顧客とは、前記所定の期間より前にはじめて当該ゴルフ練習場を利用した顧客である。
すなわち、利用開始日Ibが所定の期間中である顧客が「新規顧客Nc」の顧客群に分類され、利用開始日Ibが所定の期間よりも前の顧客が「既存顧客Tc」の顧客群に分類される。
この、顧客基本情報Iから所定の期間における利用者を新規顧客Ncと既存顧客Tcの顧客群に分類することを第1の顧客分類S102とする。
【0031】
(第2の顧客分類について)
ゴルフ練習場の経営安定化には、顧客が継続的に当該ゴルフ練習場を利用するだけでなく、頻繁に利用する顧客の維持及び増加が必要不可欠であり、以下第2の顧客分類S202で示すように、所定の期間中の利用回数と当該ゴルフ練習場を次の所定の期間も継続的に利用する顧客の割合(継続利用率)に相関関係があることに着目し、顧客の利用回数を基準とした顧客分類を行い、現状や推移・傾向、予測を行うことが有効であることがわかった。
そこで、上記の第1の顧客分類によって、新規顧客Ncと既存顧客Tcに分類された顧客を、本実施の形態では、もうひとつの基準として所定の期間中の利用回数を用いた第2の顧客分類S202を設け、第1の顧客分類S102と第2の顧客分類S202の組み合わせにより分類された顧客群Gを表5に示す。
【0032】
【0033】
(a)まず、当該ゴルフ練習場の利用開始日Iaが所定期間より前の既存顧客Tcのうち、当該所定期間中の利用回数が0回の顧客を「既存休眠(Tcn)」の顧客群Gに分類する。既存休眠顧客(Tcn)は、所定期間中の非アクティブ顧客である。
(b)つぎに、所定期間中の利用回数が1回から3回の顧客のうち、第1の顧客分類において新規顧客Ncに分類されている顧客を「新規ビギナー(Ncb)」、第1の顧客分類において既存顧客Tcに分類されている顧客を「既存ビギナー(Tcb)」の顧客群に分類する。
ここで3回を基準とするのは、次年度の当該ゴルフ練習場の継続利用率が50%を超えるのが、当該年度の利用回数が3回よりも多い(4回以上の)場合であり、年間の利用回数が3回以下の場合は、半数以上がゴルフから遠ざかってしまう基準とみなすことができるためである(
図2参照)。
(c)そして、所定期間中の利用回数が4回から当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数未満の顧客のうち、第1の顧客分類において新規顧客Ncに分類されている顧客を「新規ミドル(Ncm)」、第1の顧客分類において既存顧客Tcに分類されている顧客を「既存ミドル(Tcm)」と分類し、
(d)所定期間中の利用回数が、当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数以上の顧客のうち、第1の顧客分類において新規顧客Ncに分類されている顧客を「新規安定(Ncp)」、第1の顧客分類において既存顧客Tcに分類されている顧客を「既存安定(Tcp)」と分類する。
ここで、当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数とは、例えば所定期間中の利用回数に応じた顧客の売り上げの比率から、もっとも売り上げが大きくなる利用回数としてもよく、所定期間を1年とした場合に、顧客に少なくとも月に1回以上利用してもらいたい、といった単純な目標設定でもよく、所定期間中の利用回数4<当該ゴルフ練習場が任意に設定する目標利用回数となればよい。
【0034】
上記第1の顧客分類S102と第2の顧客分類S202を組み合わせることにより、ゴルフ練習場において有効な顧客構成の分析となる。
第一に「新規安定(Ncp)」という分類の顧客群Gが明らかになる点が挙げられる。ゴルフというスポーツは上述したように、ゴルフ場で楽しくプレーし、ゴルフの神髄を体感できるまでには一定のスキルが必要であり、そのためにはゴルフ練習場利用によるスキルアップが必要不可欠である。
また、上達するほどさらなるスイング安定・向上を欲し、ゴルフ練習場利用回数が増加する。すなわちゴルフ練習場を利用する回数は利用者のゴルフ熱意に比例する。
とすると、当該ゴルフ練習場に任意の所定期間中にはじめて利用した新規顧客Ncでありながら、当該ゴルフ練習場が任意に設定した目標利用回数以上を利用する新規安定顧客Ncpは、ゴルフのスキルも高く、別のゴルフ練習場にとっての既存安定顧客であったが、何らかの理由で当該ゴルフ練習場に転入してきた顧客である可能性が高く、このような新規安定顧客Ncpは翌年度に既存安定顧客Tcpに分類される可能性も高くなる。
この「新規安定(Ncp)」の数、推移の分析により、他のゴルフ練習場との差別化の必要性や、当該ゴルフ練習場の強みを把握することが可能となる。すなわち、所定期間における「新規安定(Ncp)」に分類された顧客数を以前の所定期間における「新規安定(Ncp)」に分類された顧客数と比較し、増加傾向にある場合には、他のゴルフ練習場が閉業したか、当該ゴルフ練習場には他のゴルフ練習場に比べて何らかの魅力があるということであり、当該ゴルフ練習場が実施した設備投資や来場誘致施策が効果を上げた可能性を読み取ることができ、「新規安定(Ncp)」の数が一定及び減少傾向にある場合は、当該ゴルフ練習場に他のゴルフ練習場にとっての既存安定顧客に転入の動機付けができておらず、安定経営のためにこれまでとは異なる観点に立った設備投資や来場誘致施策が必要であることを読み取ることができる。
第二に、本実施の形態の顧客分類によって、顧客のスキルやゴルフ熱意に応じた顧客群Gに分類できるが、それぞれの顧客群Gごとに、顧客のニーズが異なるので、それぞれの顧客群Gに訴求効果の高い施策を実施することができる。
例えば、既存休眠顧客Tcnには、ゴルフそのものから遠ざかってしまっている可能性が高いので、改めてゴルフに接するきっかけとなるような中古ゴルフクラブや用品の展示・販売イベントの企画やイベント告知、新規ビギナー顧客Ncbや既存ビギナー顧客Tcbにはスイングの基本をレクチャーするようなレッスンイベントの企画、イベント告知といったように、それぞれの顧客群Gに対し訴求効果の高いと考えられる施策の実施が可能となる。
【0035】
(実施例)
上述の第2の実施の形態を基に、2020年度を所定年度として実施例を以下に示す。
【0036】
表6は、ゴルフ練習場の任意の顧客リストの概略を示した表であり、顧客Aは、2020年度にはじめて当該ゴルフ練習場を利用した顧客であり、当該年度に当該ゴルフ練習場を20回利用した。すなわち顧客Aの顧客分類は新規安定Ncpである。同様に顧客Bの顧客分類は既存安定Tcp(2018年度新規利用、当該年度利用回数30回)であり、顧客Cの顧客分類は既存休眠Tcn(2002年度新規利用、当該年度利用回数0回)、顧客Dの顧客分類は新規ビギナーNcb(2020年度新規利用、当該年度利用回数3回)である。
また、顧客Eは2015年度にはじめて当該ゴルフ練習場を利用し、当該年度の利用回数は9回である。ここで当該ゴルフ練習場が任意に設定した目標利用回数を12回(1回/月)とした場合、顧客Eは既存ミドルTcmの顧客群に分類されることになる。
このように当該ゴルフ練習場の顧客をすべて当該年度中の利用回数に基づいて分類し、それぞれの顧客群Gに振り分ける。
そのため、以前からの既存顧客Tcであっても、各年度における利用回数により、分類される顧客群Gが異なることになる。
【0037】
【0038】
表7は、当該ゴルフ練習場の2020年度の利用者をそれぞれの顧客群Gに分類した表であり、表8は当該ゴルフ練習場の2020年度のそれぞれ顧客群G単位の利用回数の分布状況を示しているが、以下詳細に説明する。
【0039】
【0040】
表7は、横軸に2020年度の顧客分類、縦軸に前年度の顧客分類情報CCを示しており、2020年度の利用実績に応じて当該ゴルフ練習場の顧客Cを各顧客群Gに分類し、それぞれの顧客群Gを構成する顧客数を読み取ることができる。
また、縦軸の前年度の顧客分類情報CCを参照することで、2020年度の各顧客群Gが前年度にどの顧客群に分類されていた顧客によって構成されているのかが把握できる。
そのほか、利用開始日Iaが2020年度中である新規顧客Ncが、4,644人(新規ビギナーNcb3,074人+新規ミドルNcm1,074人+新規安定Ncp496人)であることが分かる。
また、前年度の顧客分類において、新規ビギナーNcbに分類された顧客2,729人のうち、約78.0%にあたる2,128人が、2020年度は一度も当該ゴルフ練習場を利用することなく、既存休眠Tcnに分類されることになってしまう一方で、前年度に既存安定Tcpに分類された顧客が、2020年度も既存安定Tcpに分類される比率は約69.2%と高いことがわかる。この表から当該ゴルフ練習場にとって、新規顧客Nc(特に新規ビギナーNcb)に対する継続利用の動機付けや、既存安定Tcpに分類される顧客数の維持及び増加が重要な運営指標と位置付けられることなど、様々な指標を読み取ることができる。
そして、当該ゴルフ練習場による設備投資や特定の顧客群Gにターゲットを絞った来場誘致施策といったアクションと、特定の顧客群Gを構成する顧客数の増減を照らし合わせることにより、当該アクションが有効であったか否かの判断材料にも利用できる。
【0041】
【0042】
表8は、横軸に2020年度の顧客分類情報CC、縦軸に前年度の顧客分類情報CCを示しており、2020年度の利用実績に応じて当該ゴルフ練習場の顧客Cを各顧客群Gに分類し、それぞれの顧客群G単位の利用回数を読み取ることができる表である。
また、表7同様、縦軸の前年度の顧客群G単位による利用回数を参照することで、2020年度の顧客群単位の利用回数について、前年度にどの顧客群に分類されていた顧客によって利用された回数であるかを把握できる。
例えば、2020年度の各顧客群Gのうち、もっとも利用回数が多いのは、既存安定Tcpに分類された顧客による利用回数であり、2020年度全体の利用回数189,325回のうち、約73.5%にあたる139,238回である。上述の通り、当該ゴルフ練習場における既存安定Tcpに分類される顧客の重要性の高さを読み取ることができる。
【0043】
さらに、表7と表8を複合的に参照することで、2020年度は、13,216人の顧客(総顧客数24,376人から既存休眠顧客数11,160人を除いた顧客数)により、189,325回当該ゴルフ練習場が利用されており、2020年度に当該ゴルフ練習場を利用した顧客Cの平均利用回数が約14.3回であることを読み取ることも可能で、ほかにも既存安定Tcpと新規安定Ncpの顧客群Gを構成する顧客数を加えた3,122人により、154,779回利用されていることから、2020年度の利用者全体の約23.6%の安定顧客(既存安定Tcp+新規安定Ncp)が、当該ゴルフ練習場の総利用回数の約81.8%を占めており、新規安定Ncpに分類される顧客の既存安定Tcpに分類される顧客への定着率(前年度新規安定→本年度既存安定は約46.9%)を鑑みても、既存安定Tcpに分類される顧客数だけでなく、新規安定Ncpに分類される顧客数の維持及び、増加が当該ゴルフ練習場の運営において、非常に重要な顧客群であることが客観的に把握できる。
【0044】
(年度ごとの比較)
表7、表8のように、所定年度における顧客Cを所定の顧客群Gに分類し、顧客数と利用回数を把握するが、このデータを任意の別の年度のデータと比較することにより、各数値の推移を読み取ることができ、当該ゴルフ練習場の現状や傾向など、さらに様々な状況を把握できることになる。
本実施例では、2020年度と2019年度を比較する。表9が当該ゴルフ練習場の2019年度の各顧客群Gに分類された利用者数を示した表であり、表10が当該ゴルフ練習場の2019年度の顧客群G単位の利用回数の分布状況を示す表である。
そして、表11及び、表12が各顧客群Gを構成する顧客数及び、顧客群G単位の利用回数の2019年度に対する2020年度の増減を示す表である。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
表11は、2019年度に対する2020年度の顧客数の増減及び、増減比率を示した表であり、総顧客数は、2020年度に初めて当該ゴルフ練習場を利用した新規顧客Nc(新規ビギナーNcb+新規ミドルNcm+新規安定Ncp)の人数である、4,644人と同じだけ増加した。
そして、新規顧客Nc数は2019年度の新規顧客数に対し、約23.6%増加していることや、2020年度に当該ゴルフ練習場を利用した顧客Cのうち、2019年度の各顧客群から、2020年度の既存安定Tcpに分類される顧客への移行が軒並み増加傾向であり、225人増(9.4%増)であることなどを読み取ることができる。
【0050】
表12は、2019年度に対する2020年度の各顧客群Gに分類された顧客による顧客群G単位の利用回数を比較する表であり、2020年度の総利用回数は、2019年度の総利用回数に対し、21,823回(約13.0%)増加した。
すなわち、2020年度、既存ビギナーNcbに分類された顧客による利用回数と既存ミドルTcmに分類された顧客による利用回数は、2019年度に対し、減少が見られるが、既存安定Tcpに分類された顧客による利用回数と新規顧客Ncによる利用回数の増加が総利用回数の増加の要因であることが読み取れる。
そして、上記の表を複合的に参照すると、2020年は、従来と比較して、ゴルフに接する人数が増えたこと、これまで、それほどゴルフ熱意が高くなかった既存顧客Tcのゴルフ熱意が高まり、これまで以上にゴルフ練習場の利用回数が増加したことを読み取ることができる。
【0051】
(顧客構成分析システム)
本実施の形態を実行するためのシステムについて、図面を用いて以下に説明するが、
図3は、本実施の形態の顧客構成分析に使用する顧客構成分析システム100の概略図である。
【0052】
(顧客データベース)
本実施の形態において、顧客分類には、顧客の当該ゴルフ練習場の利用開始日Iaと当該ゴルフ練習場の利用履歴Ibからなる顧客基本情報Iが最低限必要となるが、この顧客基本情報Iは、一般的に既存のゴルフ練習場に導入されている既知の顧客管理システムが備える顧客データベース10を利用する。
ゴルフ練習場における一般的な顧客管理システムは、はじめて当該ゴルフ練習場を利用する際に、当該顧客の氏名や住所、性別、生年月日、ゴルフ歴等の属性に関する情報を入力し、その後、当該顧客がいつ当該ゴルフ練習場を利用したか、球数や利用時間、利用金額などを指標として、どのように利用したかを把握するためのシステムで、種々のシステムが利用されている。このような既知の顧客管理システムが備える顧客データベース10から、顧客の当該ゴルフ練習場の利用開始日Iaと当該ゴルフ練習場の利用履歴Ibからなる顧客基本情報Iを顧客分類に活用する。
【0053】
(コンピュータ端末)
本実施の形態における顧客構成分析システムのコンピュータ端末20は、キーボードやマウスといった入力部30によって選択・指定された所定年度に係る顧客基本情報Iを顧客データベース10から抽出する顧客基本情報抽出部2aを備える。
つぎに、顧客基本情報抽出部2aによって抽出された顧客基本情報Iは、顧客分類基準制御部2bに設定されている基準に照らし、顧客分類判定部2cによって、顧客を予め設定された各顧客群Gに分類する。
ここで、顧客分類基準制御部2bは、顧客分類のための所定年度における利用回数に応じた基準を設定する役割を持ち、入力部からの入力により基準となる利用回数を変更するなど、設定値を調節する機能を有する。
そして、顧客分類判定部2cにより、顧客の利用開始日Iaが選択・指定された所定年度内であるか否か、顧客分類基準制御部2bによって予め設定された所定年度内の利用回数の基準により顧客を各顧客群Gに分類し出力する。
この顧客分類判定部2cには、前期顧客分類表示機能2caを備えていてもよく、所定年度における各顧客群を形成する顧客数が、所定年度の前年度にはどの顧客群に分類されていた顧客によって構成された顧客数であるのか、その内訳を出力する。
また、顧客判定部2cは、所定年度の当該ゴルフ練習場の総利用回数を、各顧客群による利用回数に細分化し、出力する。
そして判定部により出力された顧客分類情報は、記憶部2dに格納されるとともに、表示部40に表示されたり、プリンタ50によりプリントされたりする。
【0054】
さらに、コンピュータ端末20が備える顧客構成推移算出部2eは、入力部30の指示に従い、記憶部2dに格納されている各年度の顧客分類情報のうち、2期以上の顧客分類情報を抽出し、各顧客群を構成する顧客数、各顧客群を構成する顧客による利用回数の増減数及び増減比率を算出して顧客構成推移情報を出力する機能を有する。
出力された顧客構成推移情報は、記憶部2dに格納されるとともに表示部40に表示されたり、プリンタ50によりプリントされたりする。
【0055】
このように、最低限の顧客基本情報を基に、各年度における利用者を所定の基準によって予め設けられた顧客群に分類して継続的に情報を取得して、それぞれを比較する手段となるシステムを用いることで、当該ゴルフ練習場の利用者数の推移や予測、必要な設備投資や来場誘致施策の策定や、実施した設備投資や来場誘致施策の有効性の評価といった、多角的な分析が可能となる。
【符号の説明】
【0056】
CC 顧客分類情報、
CGn,G 顧客群、
I 当該ゴルフ練習場の顧客基本情報、
Ia 当該ゴルフ練習場の利用開始日、
Ib 当該ゴルフ練習場の利用履歴、
Nc 新規顧客、
Ncb 新規ビギナー、
Ncm 新規ミドル、
Ncp 新規安定、
S101,S102 第1の顧客分類、
S201,S202 第2の顧客分類、
SG 安定顧客群、
Tc 既存顧客、
Tcn 既存休眠、
Tcb 既存ビギナー、
Tcm 既存ミドル、
Tcp 既存安定、
UG 不安定顧客群、
100 顧客構成分析システム、
10 顧客データベース、
20 コンピュータ端末、
2a 顧客基本情報抽出部、
2b 顧客分類基準制御部、
2c 顧客分類判定部、
2ca 前期顧客分類表示機能、
2d 記憶部、
2e 顧客構成推移算出部、
30 入力部、
40 表示部、
50 プリンタ
【要約】 (修正有)
【課題】詳細な顧客の個人情報に頼ることなくゴルフ練習場における顧客を所定の基準に基づいて複数の顧客群に分類し動向を把握できる顧客構成の分析方法を提供する。
【解決手段】顧客がはじめて当該ゴルフ練習場を利用した利用開始日Iaと、利用履歴Ibによって構成された顧客基本情報Iを蓄積管理し、顧客を所定の1年間における利用回数ごとの顧客群CG
nに分類する第1の顧客分類ステップと、所定の1年間に当該ゴルフ練習場を利用した顧客のうち、翌年も当該ゴルフ練習場を利用した比率である翌年継続利用率を、第1の顧客分類ステップで分類した顧客群毎に算出する翌年継続利用率算出ステップと、所定の1年間における利用回数及び/又は翌年継続利用率に任意の基準を設けて、所定の1年間に当該ゴルフ練習場を利用した顧客を任意の基準未満の顧客群と任意の基準以上の顧客群に分類する第2の顧客分類ステップとで、顧客分類情報CCを取得する。
【選択図】
図1