(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】塩センサ装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20230628BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20230628BHJP
【FI】
G01N21/41 102
G01N21/359
(21)【出願番号】P 2019149024
(22)【出願日】2019-08-15
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】598123138
【氏名又は名称】学校法人 創価大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515117682
【氏名又は名称】株式会社コアシステムジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】515124255
【氏名又は名称】アイセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 篤志
(72)【発明者】
【氏名】西山 道子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 大志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博幸
(72)【発明者】
【氏名】近 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 宏一
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232522(JP,A)
【文献】特開2010-223817(JP,A)
【文献】Xu-dong WANG et al.,“Fiber-Optic Chemical Sensors and Biosensors (2013-2015)”,Analytical Chemistry,2015年11月17日,Vol. 88,No. 1,PP.203-227
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/74
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
G01D 5/26-G01D 5/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及びクラッドを有する光伝送部と、該光伝送部のコア及びクラッドに各々連なるコア及びクラッドを有するヘテロコア部とを備え、該ヘテロコア部のコアが該光伝送部のコアよりも小径である光ファイバを備える塩センサ装置であって、
該ヘテロコア部のクラッドの外周面に分散して固着された金属ナノ粒子層と、
該金属ナノ粒子層を被覆する交互積層膜層とを備え、
該交互積層膜層は少なくとも各1層の
ビニルピロリドンN,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体硫酸塩からなるポリカチオン膜と
ポリビニル硫酸カリウムからなるポリアニオン膜とが交互に積層していることを特徴とする塩センサ装置。
【請求項2】
請求項1記載の塩センサ装置において、前記
金属ナノ粒子は5~100nmの範囲の粒子径を備えることを特徴とする塩センサ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の塩センサ装置において、前記金属ナノ粒子は金ナノ粒子であることを特徴とする塩センサ装置。
【請求項4】
コア及びクラッドを有する光伝送部と、該光伝送部のコア及びクラッドに各々連なるコア及びクラッドを有するヘテロコア部とを備え、該ヘテロコア部のコアが該光伝送部のコアよりも小径である光ファイバの該ヘテロコア部の外周面に、金属ナノ粒子を分散して固着
させ金属ナノ粒子層を形成する工程と、
該金属ナノ粒子層が形成された該光ファイバの該ヘテロコア部の外周面に、少なくとも各1層の
ビニルピロリドンN,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体硫酸塩からなるポリカチオン膜と
ポリビニル硫酸カリウムからなるポリアニオン膜とを交互に積層し、該金属ナノ粒子層を被覆する交互積層膜層を形成する工程とを備えることを特徴とする塩センサ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩センサ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを用いるセンサ装置として、例えば、光ファイバのヘテロコア部のクラッド外周面に金ナノ粒子が固着された光ファイバ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の光ファイバ装置は、光伝送部から前記ヘテロコア部を介して前記光ファイバで光の伝送を行った場合に、前記ヘテロコア部での近赤外域の所定波長の光の吸収度合が該ヘテロコア部の周囲の物質の屈折率に応じて変化するように構成されている。この結果、前記光ファイバ装置によれば、光ファイバでの近赤外域の波長の光の伝送強度の減衰度合を測定することで、ヘテロコア部の周囲の物質の屈折率や濃度等の特性を高感度に測定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、橋梁、トンネル等の公共インフラストラクチャーや、ビル等の建築施設では、海水や凍結防止剤等に含まれる塩化ナトリウムにより、コンクリートや鉄骨が劣化することが知られており、その管理のために塩化ナトリウムの付着量の経時的変化を捉える必要がある。
【0006】
従来、塩化ナトリウムの検出方法としては、塩化ナトリウム溶液の電気伝導度を測定する方法、光学的分光法、炎色反応法、原子吸光法等が知られている。
【0007】
しかしながら、前記検出方法はいずれも塩化ナトリウムを含む試料を対象物からサンプリングする必要があり、既存のインフラストラクチャーや、ビル等における塩化ナトリウムの付着量の経時的変化をその場(InSitu)で長期に亘って観測することはできないという不都合がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、塩化ナトリウム等の塩の量をInSituで長期に亘って観測することができる塩センサ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の塩センサ装置は、コア及びクラッドを有する光伝送部と、該光伝送部のコア及びクラッドに各々連なるコア及びクラッドを有するヘテロコア部とを備え、該ヘテロコア部のコアが該光伝送部のコアよりも小径である光ファイバを備える塩センサ装置であって、該ヘテロコア部のクラッドの外周面に分散して固着された金属ナノ粒子層と、該金属ナノ粒子層を被覆する交互積層膜層とを備え、該交互積層膜層は少なくとも各1層のビニルピロリドンN,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体硫酸塩からなるポリカチオン膜とポリビニル硫酸カリウムからなるポリアニオン膜とが交互に積層していることを特徴とする。
【0010】
尚、本発明の塩センサの検出対象となる「塩」とは、陽イオンと陰イオンとがイオン結合することにより生じた化合物を意味する。前記陽イオンの例としては、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等を挙げることができ、前記陰イオンの例としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等を挙げることができる。また、前記陽イオンと前記陰イオンとがイオン結合することにより生じた化合物としての「塩」の例としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等を挙げることができる。
【0011】
本発明の塩センサ装置では、前記光伝送部のコアを介して光を伝送すると、前記ヘテロコア部でクラッドに漏れ出た光が該クラッドと外界との界面で全反射するときに、外界側にエバネッセント光がしみ出す。ここで、前記エバネッセント光が前記金属ナノ粒子層の金属ナノ粒子内の電子の集団振動と共鳴すると該エバネッセント光が吸収され、前記界面で全反射する反射光が減少するが、その減少の度合いは前記交互積層膜層の屈折率に依存する。
【0012】
前記交互積層膜層は、少なくとも各1層のポリカチオン膜とポリアニオン膜とが交互に積層しており、該ポリカチオン膜はプラスの荷電を有し、該ポリアニオン膜はマイナスの荷電を有している。そこで、前記ヘテロコア部の外界に塩が存在すると、該塩を構成する陽イオンは前記ポリカチオン膜に含まれる陽イオンとイオン交換し、該塩を構成する陰イオンは前記ポリアニオン膜に含まれる陰イオンとイオン交換する。また、塩の濃度によっては、該塩を構成する陽イオンは前記ポリカチオン膜に浸潤し、該塩を構成する陰イオンは前記ポリアニオン膜に浸潤する。この結果、前記交互積層膜層は、膨潤又は収縮して屈折率が変化する。
【0013】
そこで、本発明の塩センサ装置によれば、前記ヘテロコア部のクラッドと外界との界面で全反射した光の減少の度合いを検出することにより、該ヘテロコア部の外界に存在する塩の濃度を知ることができる。
【0014】
本発明の塩センサ装置において、前記金属ナノ粒子は、例えば5~100nmの範囲の粒子径を備えるものを用いることができる。また、前記金属ナノ粒子は、金、銀等のナノ粒子を用いることができるが、酸化しにくいという性質を持ち、また作製が容易であることから金ナノ粒子を用いることが好ましい。
【0015】
また、本発明の塩センサ装置は、例えば、コア及びクラッドを有する光伝送部と、該光伝送部のコア及びクラッドに各々連なるコア及びクラッドを有するヘテロコア部とを備え、該ヘテロコア部のコアが該光伝送部のコアよりも小径である光ファイバの該ヘテロコア部の外周面に、金属ナノ粒子を分散して固着させ金属ナノ粒子層を形成する工程と、該金属ナノ粒子層が形成された該光ファイバの該ヘテロコア部の外周面に、少なくとも各1層のビニルピロリドンN,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体硫酸塩からなるポリカチオン膜とポリビニル硫酸カリウムからなるポリアニオン膜とを交互に積層し、該金属ナノ粒子層を被覆する交互積層膜層を形成する工程とを備える製造方法により、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の塩センサ装置のセンサ部の構成を示す説明的断面図。
【
図2】本発明の塩センサ装置の装置構成を示す説明図。
【
図3】本発明の塩センサ装置により塩化ナトリウム溶液の濃度を測定する方法を示す説明的断面図。
【
図4】塩化ナトリウム水溶液の濃度ごとの反射光の強度の経時変化を示すグラフ。
【
図5】塩化ナトリウム水溶液の濃度ごとの、ヘテロコア部3が空気中にある場合の伝播光強度に対する、ヘテロコア部3が塩化ナトリウム水溶液26に浸漬されているときの伝播光強度の損失を示すグラフ。
【
図6】ある濃度の塩化ナトリウム水溶液26に塩化ナトリウムを添加して濃度を変更してから5分後における伝播光(反射光)の強度と塩化ナトリウム水溶液の濃度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の塩センサ装置1は、光伝送部2,2の間に挟まれた所定長のヘテロコア部3を備える光ファイバ4を備える。光伝送部2は、コア5aと、コア5aの外周面を被覆するクラッド6aとからなるマルチモード光ファイバであり、ヘテロコア部3は、コア5aより小径のコア5bと、コア5bの外周面を被覆するクラッド6bとからなるシングルモード光ファイバである。
【0019】
塩センサ装置1は、ヘテロコア部3のクラッド6bの外周面に形成された金属ナノ粒子層7と、金属ナノ粒子層7を被覆する交互積層膜8とを備えている。本実施形態では、金属ナノ粒子層7は、5~100nmの範囲の粒子径を備える金ナノ粒子がヘテロコア部3のクラッド6bの外周面に分散して固着されている。
【0020】
また、交互積層膜8は、プラスに荷電したポリカチオン膜と、マイナスに荷電したポリアニオン膜とが交互に積層された構成を備えている。交互積層膜8において、前記ポリカチオン膜と前記ポリアニオン膜とは少なくとも各1層が交互に積層されており、例えば各20層が交互に積層されていることが好ましい。
【0021】
本実施形態の塩センサ装置1では、光伝送部2のコア5aを介して光を伝送すると、ヘテロコア部3でそのクラッド6bに漏れ出た光がクラッド6bと外界との界面で全反射するときに、外界側にエバネッセント光がしみ出し、該エバネッセント光が金属ナノ粒子層7の金ナノ粒子内の電子の集団振動と共鳴すると該エバネッセント光が吸収され、前記界面で全反射する反射光が減少する。ここで、前記反射光の減少の度合いは交互積層膜層8の屈折率に依存し、該屈折率はヘテロコア部の外界に存在する塩の濃度に対応して変化する。
【0022】
そこで、塩センサ装置1によれば、ヘテロコア部3のクラッド6bと外界との界面で全反射した光の減少の度合いを検出することにより、ヘテロコア部3の外界に存在する塩の濃度を知ることができる。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の塩センサ装置1は、例えば、橋梁、トンネル、ビル等のコンクリート21の内部に光ファイバ4のヘテロコア部3を埋設したときに、光ファイバ4の一方の端部にLFD等の光源22を接続し、光ファイバ4の一方の端部に例えばスペクトルアナライザ等の検出装置23を接続する。また、検出装置23には、検出装置23で検出された反射光の減少度合いを解析するパソコン等の解析装置24を接続する。光源22、検出装置23、解析装置24は、ヘテロコア部3が埋設されている場所から離れた場所に配置することができる。
【0024】
図2に示す塩センサ装置1によれば、光源22から照射される300~800nmの範囲の波長、例えば530nmの波長の光が光伝送部2のコア5aに入射され、ヘテロコア部3のクラッド6bと外界との界面で全反射された反射光が光伝送部2のコア5aから出射し、検出装置23で受光される。
図2に示す塩センサ装置1では、検出装置23で受光された反射光を解析装置24で解析することにより、その減少度合いからコンクリート21中の塩の濃度を検出することができる。
【0025】
コンクリートやその内部の鉄骨は海水に含まれる塩化ナトリウムや、凍結防止剤に含まれる塩化カルシウムにより劣化することが知られているが、
図2に示す塩センサ装置1によれば、コンクリート21中の塩化ナトリウムや塩化カルシウム等の塩の濃度をInSutiで検出することができるので、コンクリートやその内部の鉄骨の劣化を適切に管理することができる。
【0026】
塩センサ装置1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0027】
まず、光ファイバ4のヘテロコア部3のクラッド6bを3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を用いて処理して、クラッド6bの表面にアミノ基を導入する。次に、クラッド6bの表面にアミノ基が導入されたヘテロコア部3を純水中に浸漬し、アミノ基をプロトン化する。
【0028】
次に、クラッド6bの表面に導入されたアミノ基がプロトン化されたヘテロコア部3を金ナノ粒子懸濁液に浸漬する。このようにすると、プロトン化されたアミノ基の正電荷と、前記金ナノ粒子表面の負電荷との相互作用により、金ナノ粒子がクラッド6bの外周面に分散して固着され、金ナノ粒子からなる金属ナノ粒子層7を形成することができる。
【0029】
前記金ナノ粒子懸濁液は、沸騰水中に所定濃度のクエン酸、クエン酸ナトリウム又はクエン酸カリウムと、所定濃度のテトラクロリド金(III)とを所定量ずつ添加し、撹拌することにより調製することができる。
【0030】
次に、クラッド6bの外周面に金属ナノ粒子層7が形成されたヘテロコア部3を、所定濃度のポリカチオン水溶液に所定時間浸漬した後、引き上げて純水で洗浄した後、所定濃度のポリアニオン水溶液に所定時間浸漬した後、引き上げて純水で洗浄する操作を例えば1~50回繰り返すことにより、金属ナノ粒子層7を被覆する交互積層膜8を形成することができる。
【0031】
前記ポリカチオン水溶液としては、ビニルピロリドンN,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体硫酸塩(ポリクオタニウム11)の10~20ミリモル/リットルの範囲の濃度の水溶液を用いることができる。また、前記ポリアニオン水溶液としては、ポリビニル硫酸塩の10~20ミリモル/リットルの範囲の濃度の水溶液を用いることができる。また、ヘテロコア部3を前記ポリカチオン水溶液又は前記ポリアニオン水溶液に浸漬した後の洗浄は、ヘテロコア部3を純水中に浸漬し、穏やかに動かすことにより行うことができる。
【0032】
次に実施例を示す。
【実施例】
【0033】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、蒸留水100ミリリットルを沸騰させ、これに1質量%のクエン酸水溶液1ミリリットルと、1質量%のテトラクロリド金(III)水溶液1ミリリットルとを加え、沸騰状態のまま15分間撹拌することにより、金ナノ粒子懸濁液を調製した。前記金ナノ粒子懸濁液は、5~100nmの範囲の粒子径で表面に負電荷を有する金ナノ粒子を含んでいる。
【0034】
次に、1質量%の酢酸水溶液50ミリリットルを40℃の温度に加熱し、シランカップリング剤としての3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.5ミリリットルを加え、ゆるやかに撹拌しながら、光ファイバ4の該ヘテロコア部を2分間浸漬した。次に、前記ヘテロコア部3を110℃の温度で2時間加熱し、該ヘテロコア部3のクラッド6bの表面にアミノ基を導入した。
【0035】
次に、クラッド6bの表面にアミノ基が導入されたヘテロコア部3を純水中に浸漬し、アミノ基をプロトン化した。
【0036】
次に、クラッド6bの表面に導入されたアミノ基がプロトン化されたヘテロコア部3を、本実施例で調製した前記金ナノ粒子懸濁液に浸漬し、金ナノ粒子がクラッド6bの外周面に分散して固着されている金属ナノ粒子層7を形成した。
【0037】
次に、クラッド6bの外周面に金属ナノ粒子層7が形成されたヘテロコア部3を、ポリカチオン水溶液としての20ミリモル/リットルの範囲の濃度のポリクオタニウム11水溶液に30秒間浸漬し、引き上げて純水で洗浄した後、ポリアニオン水溶液としての20ミリモル/リットルの範囲の濃度のポリビニル硫酸カリウム水溶液に30秒間浸漬し、引き上げて純水で洗浄する操作を20回繰り返し、金属ナノ粒子層7を被覆する交互積層膜8を形成し、
図1に示す塩センサ装置1を得た。
【0038】
次に、
図2に示す塩センサ装置1において、クラッド6bの外周面に金属ナノ粒子層7と金属ナノ粒子層7を被覆する交互積層膜8とを備えるヘテロコア部3を、コンクリート29に埋設する代わりに、容器25に収容された塩化ナトリウム水溶液26中に浸漬した。そして、各濃度の塩化ナトリウム水溶液26に、順次塩化ナトリウムを添加して塩化ナトリウム水溶液26の濃度を変量する一方、各濃度の塩化ナトリウム水溶液26に浸漬されているヘテロコア部3に対し、光源22から照射される530nmの波長の光を光伝送部2のコア5aに入射し、ヘテロコア部3のクラッド6bと外界との界面で全反射された反射光を光伝送部2のコア5aから出射させ、検出装置23で受光された反射光を解析装置24で解析した。
【0039】
塩化ナトリウム水溶液26の濃度ごとの反射光の強度の経時変化を
図4に示す。
図4から、塩化ナトリウム水溶液の濃度の増大に伴って、交互積層膜8の屈折率が変化することがわかる。
【0040】
次に、塩化ナトリウム水溶液26の濃度ごとの、ヘテロコア部3が空気中にある場合の伝播光(反射光)強度に対する、ヘテロコア部3が塩化ナトリウム水溶液26に浸漬されているときの伝播光(反射光)強度の損失を次式により算出した。結果を
図5に示す。
【0041】
伝播光強度の損失(dB)=10×log
10(ヘテロコア部3が塩化ナトリウム水溶液26に浸漬されているときの伝播光強度/ヘテロコア部3が空気中にある場合の伝播光強度)
図5から、純水中にセンサを浸した状態において、塩化ナトリウム水溶液を加えることにより塩化ナトリウム濃度が増加すると、波長530nmにおける伝播光強度が時間とともに変化することが明らかである。また、塩化ナトリウム水溶液を逐次的に加えることにより、塩化ナトリウム濃度が増加すると、波長530nmにおける伝播光強度が、塩化ナトリウム濃度に応じて変化していることも明らかである。すなわち、本実施例の塩センサ装置1によれば塩化ナトリウム濃度を測定できることがわかる。
【0042】
ある濃度の塩化ナトリウム水溶液26に塩化ナトリウムを添加して濃度を変更してから5分後における伝播光(反射光)の強度と塩化ナトリウム水溶液の濃度との関係を
図6に示す。
図6から、塩センサ装置1は、塩化ナトリウム水溶液の濃度が0.0025質量%以上であるときに該濃度を検出することができ、0.0025~0.15質量%の範囲で伝播光(反射光)の強度と塩化ナトリウム水溶液の濃度との間に直線関係があることがわかる。
【符号の説明】
【0043】
1…塩センサ装置、 2…光伝送部、 3…ヘテロコア部、 4…光ファイバ、 5a、5b…コア、 6a、6b…クラッド、 7…金属ナノ粒子層、 8…交互積層膜。