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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ダブルレンチ
(51)【国際特許分類】
   E21B 19/16 20060101AFI20230628BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
E21B19/16
F16D1/02 100
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022030959
(22)【出願日】2022-03-01
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】505040051
【氏名又は名称】株式会社エムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】522080443
【氏名又は名称】有限会社横浜ツール
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(74)【代理人】
【識別番号】100112416
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 定信
(72)【発明者】
【氏名】綾谷 俊介
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-349592(JP,A)
【文献】実公平07-044818(JP,Y2)
【文献】特許第4515226(JP,B2)
【文献】特開昭59-141688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 19/16
F16D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結可能なダブルレンチであって、前記駆動ロッドと一体回転するように該駆動ロッドに結合可能なレンチ本体と、該レンチ本体への係合状態で該レンチ本体の回転を前記従動ロッドに伝達する従動側レンチ部材と、を備え、該従動側レンチ部材は、前記レンチ本体の一対の従動側開口部を介して前記従動ロッドの表面の一対のレンチカットに係合可能である、ダブルレンチ。
【請求項2】
前記従動側レンチ部材は一対のレンチ面を備え、前記レンチ本体は一対の従動側係合受面を備え、前記従動側レンチ部材が前記レンチ本体に係合した状態で、前記一対のレンチ面と前記一対の従動側係合受面とが適合する、請求項1に記載のダブルレンチ。
【請求項3】
前記従動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する従動側ロック部材を備える、請求項1又は2に記載のダブルレンチ。
【請求項4】
前記レンチ本体への係合状態で前記駆動ロッドの回転を前記レンチ本体へと伝達する駆動側レンチ部材を備え、該駆動側レンチ部材は、前記レンチ本体の一対の駆動側開口部を介して前記駆動ロッドの表面の一対のレンチカットに係合可能である、請求項1,2又は3に記載のダブルレンチ。
【請求項5】
前記駆動側レンチ部材は一対のレンチ面を備え、前記レンチ本体は一対の駆動側係合受面を備え、前記駆動側レンチ部材が前記レンチ本体に係合した状態で、前記一対のレンチ面と前記一対の駆動側係合受面とが適合する、請求項4に記載のダブルレンチ。
【請求項6】
前記駆動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する駆動側ロック部材を備える、請求項4又は5に記載のダブルレンチ。
【請求項7】
駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結可能なダブルレンチであって、前記駆動ロッドと一体回転するように該駆動ロッドに結合可能なレンチ本体と、該レンチ本体への係合状態で該レンチ本体の回転を前記従動ロッドに伝達する従動側レンチ部材と、を備え、該従動側レンチ部材が前記レンチ本体に揺動可能に支持される、ダブルレンチ。
【請求項8】
駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結可能なダブルレンチであって、前記駆動ロッドと一体回転するように該駆動ロッドに結合可能なレンチ本体と、該レンチ本体への係合状態で該レンチ本体の回転を前記従動ロッドに伝達する従動側レンチ部材と、該従動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する従動側ロック部材と、を備え、該従動側ロック部材は、前記レンチ本体に配設されて前記従動側レンチ部材に対して係脱操作可能なロックピンである、ダブルレンチ。
【請求項9】
駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結可能なダブルレンチであって、前記駆動ロッドと一体回転するように該駆動ロッドに結合可能なレンチ本体と、該レンチ本体への係合状態で該レンチ本体の回転を前記従動ロッドに伝達する従動側レンチ部材と、該従動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する従動側ロック部材と、該従動側ロック部材をロック状態へと付勢する従動側ロックばねと、前記レンチ本体への係合状態で前記駆動ロッドの回転を前記レンチ本体へと伝達する駆動側レンチ部材と、該駆動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する駆動側ロック部材と、該駆動側ロック部材をロック状態へと付勢する駆動側ロックばねと、を備え、前記従動側ロックばねのばね力が前記駆動側ロックばねのばね力より弱い、ダブルレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ロッドの回転を従動ロッドへと伝達するダブルレンチに関するものである。本発明のダブルレンチは、例えば、複数の単位ロッドの連結により構成されるドリルロッドから単位ロッドを次々と切り離す作業に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すような二重管式穿孔(削孔)機においては、単位インナロッドと単位アウタロッドとで構成される穿孔用の二重管を順次継ぎ足しながら穿孔作業が行われる。複数本の単位アウタロッドのねじ結合式連結体により、穿孔後の孔壁の崩壊を防止するためのケーシングが形成される。また、複数本の単位インナロッドのねじ結合式連結体により、ケーシング内にドリルロッドが形成される。所定深さの穿孔が完了したら、ドリルロッドを引き抜きながら単位インナロッドを順次切り離して回収する作業が行われる。
【0003】
そして、特許文献2,3に示すように、単位インナロッド切り離し作業には、ダブルレンチとシングルレンチの二種のレンチが使用される。ダブルレンチは、ドリルロッドを駆動するエキステンションロッド(駆動ロッド)の回転を単位インナロッド(従動ロッド)に伝達するためのレンチである。一方、シングルレンチは、ケーシングから引き出された単位インナロッドの回転を阻止するためのレンチである。ダブルレンチとシングルレンチとを用いて行う単位インナロッドの切り離し作業の手順の一例は、特許文献3に記載の通りである。
【0004】
ダブルレンチの従来例として、いわゆる固定型のダブルレンチと開閉型のダブルレンチが知られている。固定型のダブルレンチは、U字状溝を有する二つのレンチプレートを、相互間に間隔をおいて連結部材で一体に連結し、各U字状溝の開口部に脱落防止ピンを配設したものである。一方のU字状溝にはエキステンションロッドのレンチカット(レンチ係合用の切欠き)が係合し、他方のU字状溝には、単位インナロッドのレンチカットが係合する。二つのU字状溝にエキステンションロッドと単位インナロッドの各レンチカットが係合することで、エキステンションロッドと単位インナロッドが駆動上連結される。脱落防止ピンにより、エキステンションロッド及び単位インナロッドからのダブルレンチの脱落が防止される。
【0005】
一方、開閉型のダブルレンチは、U字状溝を有する第一レンチ部材に対して、同じくU字状溝を有する第二レンチ部材を枢支軸にて揺動可能に結合し、各U字状溝の開口部に脱落防止ピンを配設したものである。第一レンチ部材のU字状溝にはエキステンションロッドのレンチカットが係合し、第二レンチ部材のU字状溝には、単位インナロッドのレンチカットが係合する。二つのU字状溝にエキステンションロッドと単位インナロッドの各レンチカットが係合することで、エキステンションロッドと単位インナロッドが駆動上連結される。脱落防止ピンにより、エキステンションロッド及び単位ロッドからのダブルレンチの脱落が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-23551号公報
【文献】特開昭59-141688号公報
【文献】特開平10-193231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固定型のダブルレンチは、単位インナロッドを一本ずつ切り離すたびに、ダブルレンチの全体をエキステンションロッドと次の単位インナロッドとの間にセットし直さなければない。このため、単位インナロッドの切り離し作業の作業性が悪いほか、作業者の疲労も大きかった。
【0008】
これに対し、開閉型のダブルレンチは、単位インナロッド切り離し作業の初期段階で一度だけ第一レンチ部材をエキステンションロッドに取り付ければ、後は、第一レンチ部材上で第二レンチ部材を開閉(揺動)させて、切り離すべき単位インナロッドに順次第二レンチ部材を係合させるだけでよい。このため、開閉型のダブルレンチは、単位インナロッド切り離し作業の作業性向上及び作業者の疲労軽減の点で、固定型のダブルレンチに対して優位性がある。
【0009】
しかし、開閉型のダブルレンチは、第一レンチ部材と第二レンチ部材とが枢支軸で連結されているため、エキステンションロッドの回転時に、枢支軸による連結部分に大きな負荷がかかってしまう。このため、開閉型のダブルレンチには、枢支軸による連結部分が破損し易いという欠点があった。
【0010】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、従動ロッドを次々と切り離す作業の作業性向上及び作業者の疲労軽減の点で有利であり、且つ、破損しにくいダブルレンチを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係るダブルレンチは、駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結可能なダブルレンチであって、前記駆動ロッドと一体回転するように該駆動ロッドに結合可能なレンチ本体と、該レンチ本体への係合状態で該レンチ本体の回転を前記従動ロッドに伝達する従動側レンチ部材と、を備え、該従動側レンチ部材は、前記レンチ本体の一対の従動側開口部を介して前記従動ロッドの表面の一対のレンチカットに係合可能であることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
本発明のダブルレンチによれば、駆動ロッドと一体回転するようにレンチ本体が駆動ロッドに結合される。従動側レンチ部材は、レンチ本体に対して係合可能且つ係合解除可能である。従動側レンチ部材のレンチ本体への係合状態で、駆動ロッドの回転がレンチ本体と従動側レンチ部材とを介して従動ロッドに伝達される。
【0013】
本発明によれば、レンチ本体を駆動ロッドに一旦結合させれば、その後は、レンチ本体へ従動側レンチ部材を係合させる作業のみで、駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結させることができる。そして、レンチ本体に対する従動側レンチ部材の係合作業及び係合解除作業を繰り返すことで、駆動ロッドに対して従動ロッドを次々と連結させることができる。このため、本発明のダブルレンチを用いれば、従動ロッドを次々と切り離す作業の作業性向上及び作業者の疲労軽減の点で有利である。
【0014】
また、本発明によれば、従動側レンチ部材がレンチ本体へ係合するので、レンチ本体の回転が従動側レンチ部材に対して無理なく円滑に伝達される。よって、ダブルレンチに無理な負荷がかかることがなく、ダブルレンチの破損も防止できる。
【0015】
実施の一形態として、前記従動側レンチ部材は一対のレンチ面を備え、前記レンチ本体は一対の従動側係合受面を備え、前記従動側レンチ部材が前記レンチ本体に係合した状態で、前記一対のレンチ面と前記一対の従動側係合受面とが適合する態様としてもよい(請求項2)。この実施の一形態によれば、レンチ本体への従動側レンチ部材の係合状態において、従動側レンチ部材の一対のレンチ面とレンチ本体の一対の従動側係合受面とが適合する。このため、レンチ本体の回転が従動側レンチ部材に対して一層無理なく円滑に伝達される。よって、ダブルレンチに無理な負荷がかかることがなく、ダブルレンチの破損もより確実に防止できる。
【0016】
実施の一形態として、前記従動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する従動側ロック部材を備える態様としてもよい(請求項3)。このようにすれば、レンチ本体から従動側レンチ部材が脱落することが防止できる。
【0017】
実施の一形態として、前記レンチ本体への係合状態で前記駆動ロッドの回転を前記レンチ本体へと伝達する駆動側レンチ部材を備え、該駆動側レンチ部材は、前記レンチ本体の一対の駆動側開口部を介して前記駆動ロッドの表面の一対のレンチカットに係合可能な態様としてもよい(請求項4)。この場合、レンチ本体に駆動側レンチ部材を係合させることで、レンチ本体と駆動側ロッドとが駆動上連結される。
【0018】
実施の一形態として、前記駆動側レンチ部材は一対のレンチ面を備え、前記レンチ本体は一対の駆動側係合受面を備え、前記駆動側レンチ部材が前記レンチ本体に係合した状態で、前記一対のレンチ面と前記一対の駆動側係合受面とが適合する態様としてもよい(請求項5)。この実施の一形態によれば、レンチ本体への駆動側レンチ部材の係合状態において、駆動側レンチ部材の一対のレンチ面とレンチ本体の一対の駆動側係合受面とが適合する。このため、駆動ロッドの回転がレンチ本体に対して無理なく円滑に伝達される。よって、ダブルレンチに無理な負荷がかかることがなく、ダブルレンチの破損もより確実に防止できる。
【0019】
実施の一形態として、前記駆動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する駆動側ロック部材を備える態様としてもよい(請求項6)。このようにすれば、レンチ本体から駆動側レンチ部材が脱落することが防止できる。
【0020】
実施の一形態として、駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結可能なダブルレンチであって、前記駆動ロッドと一体回転するように該駆動ロッドに結合可能なレンチ本体と、該レンチ本体への係合状態で該レンチ本体の回転を前記従動ロッドに伝達する従動側レンチ部材と、を備え、該従動側レンチ部材が前記レンチ本体に揺動可能に支持される態様としてもよい(請求項7)。この場合、従動側レンチ部材をレンチ本体上で正方向に揺動させることで従動側レンチ部材とレンチ本体とが係合し、従動側レンチ部材をレンチ本体上で逆方向に揺動させることで、従動側レンチ部材がレンチ本体から離脱する。従動側レンチ部材がレンチ本体に支持されるので、作業者がレンチ本体に対する従動側レンチ部材の係合操作及び係合解除操作を行うに当たり、従動側レンチ部材の全重量を支える必要がない。このため、従動ロッドを次々と切り離す作業の作業性向上及び作業者の疲労軽減の点で一層有利である。
【0021】
実施の一形態として、駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結可能なダブルレンチであって、前記駆動ロッドと一体回転するように該駆動ロッドに結合可能なレンチ本体と、該レンチ本体への係合状態で該レンチ本体の回転を前記従動ロッドに伝達する従動側レンチ部材と、該従動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する従動側ロック部材と、を備え、該従動側ロック部材は、前記レンチ本体に配設されて前記従動側レンチ部材に対して係脱操作可能なロックピンである態様としてもよい(請求項8)。このようにすれば、レンチ本体から従動側レンチ部材が脱落することが防止できる。
【0022】
実施の一形態として、駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結可能なダブルレンチであって、前記駆動ロッドと一体回転するように該駆動ロッドに結合可能なレンチ本体と、該レンチ本体への係合状態で該レンチ本体の回転を前記従動ロッドに伝達する従動側レンチ部材と、該従動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する従動側ロック部材と、該従動側ロック部材をロック状態へと付勢する従動側ロックばねと、前記レンチ本体への係合状態で前記駆動ロッドの回転を前記レンチ本体へと伝達する駆動側レンチ部材と、該駆動側レンチ部材を前記レンチ本体への係合状態に固定する駆動側ロック部材と、該駆動側ロック部材をロック状態へと付勢する駆動側ロックばねと、を備え、前記従動側ロックばねのばね力が前記駆動側ロックばねのばね力より弱い態様としてもよい(請求項9)。従動側ロック部材の係脱操作は、駆動側ロック部材の係脱操作よりもはるかに頻繁に行われる。このため、従動側ロックばねのばね力を駆動側ロックばねのばね力より弱くしておくことで、従動ロッドを次々と切り離す作業の作業性向上及び作業者の疲労軽減の点でなお一層有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の一形態に係るダブルレンチの分解斜視図である。
図2】(a)は図1のダブルレンチの平面図、(b)は同正面図である。
図3図2(b)のA-A矢視断面図である。
図4図2(b)のB-B矢視断面図である。
図5】二重管式ドリルロッドが取り付けられるドリルヘッドの断面図である。
図6図1のダブルレンチを用いて行う単位インナロッド切り離し作業の手順を示す説明図である。
図7】本発明の他の実施の一形態に係るダブルレンチの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
本発明の実施の一形態に係るダブルレンチは、駆動ロッドと従動ロッドとを駆動上連結可能なダブルレンチである。このダブルレンチは、限定はされないが、二重管式穿孔(削孔)機において、ドリルロッドを引き抜きながら、ドリルロッドを構成する単位インナロッドを順次切り離す作業に用いて好適なものである。この場合、二重管式穿孔(削孔)機を構成するエキステンションロッドが駆動ロッドとなり、ドリルロッドを構成する各単位インナロッドが従動ロッドとなる。但し、適用対象は二重管には限定されず、単管式のドリルロッドから単位ロッドを順次切り離す作業にも使用可能である。
【0026】
図1に示すように、本発明の実施の一形態に係るダブルレンチ1は、レンチ本体2と、駆動側レンチ部材3と、従動側レンチ部材4とを備える。レンチ本体2は、駆動ロッド5と一体回転するように駆動ロッド5に結合可能である。駆動側レンチ部材3は、レンチ本体2に対して係合可能且つ係合解除可能であり、レンチ本体2への係合状態で駆動ロッド5の回転をレンチ本体2に伝達するものである。一方、従動側レンチ部材4は、レンチ本体2に対して係合可能且つ係合解除可能であり、レンチ本体2への係合状態でレンチ本体2の回転を従動ロッド6に伝達するものである。
【0027】
本実施の一形態のダブルレンチ1によれば、駆動側レンチ部材3がレンチ本体2に対して係合可能且つ係合解除可能である。そして、駆動側レンチ部材3のレンチ本体2への係合状態で、駆動ロッド5の回転が駆動側レンチ部材3へと伝達され、さらに、レンチ本体2へと伝達される。また、従動側レンチ部材4は、レンチ本体2に対して係合可能且つ係合解除可能である。従動側レンチ部材4のレンチ本体2への係合状態で、レンチ本体2の回転が従動側レンチ部材4へと伝達され、さらに、従動ロッド6へと伝達される。
【0028】
また、本実施の一形態のダブルレンチ1によれば、駆動側レンチ部材3がレンチ本体2へ係合するので、駆動ロッド5の回転による駆動側レンチ部材3の回転がレンチ本体2へと無理なく円滑に伝達される。同様に、従動側レンチ部材4がレンチ本体2へ係合するので、駆動ロッド5の回転によるレンチ本体2の回転が、従動側レンチ部材4を介して従動ロッド6へと無理なく円滑に伝達される。よって、ダブルレンチ1に無理な負荷がかかることがなく、ダブルレンチ1の破損も防止できる。
【0029】
レンチ本体2は、駆動ロッド5と従動ロッド6とをそれぞれ所定量ずつ受け入れて、駆動ロッド5と従動ロッド6の相互の位置決めを行うものである。このため、図2(b)に示すように、レンチ本体2は、筒状の駆動ロッド受入部7と、筒状の従動ロッド受入部8とを備える。駆動ロッド受入部7と従動ロッド受入部8は、それぞれ入口側から奥側へと同一軸線X上で互いに逆方向に延びている。駆動ロッド受入部7内には駆動ロッド5が挿入され、従動ロッド受入部8内には従動ロッド6が挿入される。駆動ロッド受入部7の奥部には、駆動ロッド5の挿入量を所定量に規制する駆動ロッドストッパ9が配設される。同様に、従動ロッド受入部8の奥部には、従動ロッド6の挿入量を所定量に規制する従動ロッドストッパ10が配設される。
【0030】
図1及び図2(a)に示すように、レンチ本体2は、駆動側レンチ部材3を受け入れるための駆動側係合受部11と、従動側レンチ部材4を受け入れるための従動側係合受部12とを備える。駆動側係合受部11は、駆動ロッド受入部7の入口7a(図2(b)参照)に近い位置にカット面状に形成されている。駆動側係合受部11は、一対の駆動側開口部13,13図1参照)を介して、筒状の駆動ロッド受入部7の内部に連通している。同様に、従動側係合受部12は、従動ロッド受入部8の入口8a(図2(b)参照)に近い位置にカット面状に形成されている。従動側係合受部12は、一対の従動側開口部14,14図1参照)を介して、筒状の従動ロッド受入部8の内部に連通している。
【0031】
図1及び図2(a)に示すように、レンチ本体2の駆動側係合受部11に対応して、駆動側レンチ部材3にはレンチ本体2への係合部15が形成される。図3に示すように、レンチ本体2への駆動側レンチ部材3の係合状態において、駆動側レンチ部材3の係合部15とレンチ本体2の駆動側係合受部11とが適合する。同様に、図1及び図2(a)に示すように、レンチ本体2の従動側係合受部12に対応して、従動側レンチ部材4にはレンチ本体2への係合部16が形成される。図4に示すように、レンチ本体2への従動側レンチ部材4の係合状態において、従動側レンチ部材4の係合部16とレンチ本体2の従動側係合受部12とが適合する。これらの要因により、駆動ロッド5の回転による駆動側ロッド部材3の回転が、レンチ本体2へと一層無理なく円滑に伝達され、レンチ本体2の回転が従動側レンチ部材4へと一層無理なく円滑に伝達される。よって、ダブルレンチ1に無理な負荷がかかることがなく、ダブルレンチ1の破損もより確実に防止できる。
【0032】
図1及び図2(a)に示すように、レンチ本体2にレンチ本体把持用のハンドル17を設けておけば、レンチ本体の取扱いが容易となり、好適である。
【0033】
図1に示すように、駆動側レンチ部材3は、2本の脚部18,18と、これらの脚部同士を連結する連結部19とを有するコ字型の部材である。同様に、従動側レンチ部材4も、2本の脚部20,20と、これらの脚部同士を連結する連結部21とを有するコ字型の部材である。駆動側レンチ部材3の2本の脚部18,18の相互対向面(一対のレンチ面15,15)は、レンチ本体2の一対の駆動側係合受部(駆動側係合受面)11,11への係合部(係合面)であると共に、駆動ロッド5に形成される一対のレンチカット(レンチ係合用の切欠き)22,22(図3参照)への係合部(係合面)となる。同様に、従動側レンチ部材4の2本の脚部20,20の相互対向面(一対のレンチ面16,16)は、レンチ本体2の一対の従動側係合受部(従動側係合受面)12,12への係合部(係合面)であると共に、従動ロッド6に形成される一対のレンチカット(レンチ係合用の切欠き)23,23(図4参照)への係合部(係合面)となる。駆動側レンチ部材3の連結部19と従動側レンチ部材4の連結部21には、それぞれロック孔19a,21aが形成される。各ロック孔19a,21aには、後述する駆動側ロック部材26と従動側ロック部材27とが突入する。
【0034】
図1に示すように、レンチ本体2には、駆動側レンチ部材3をレンチ本体2への係合状態に固定する駆動側ロック部材26が配設される。同様に、レンチ本体2には、従動側レンチ部材4をレンチ本体2への係合状態に固定する従動側ロック部材27が配設される。駆動側ロック部材26と従動側ロック部材27とを配設することで、レンチ本体2から駆動側レンチ部材3及び従動側レンチ部材4が脱落することを防止できる。駆動側ロック部材26の具体例として、駆動側レンチ部材3に対して係脱操作可能なロックピンを挙げることができる。同様に、従動側ロック部材27の具体例として、従動側レンチ部材4に対して係脱操作可能なロックピンを挙げることができる。
【0035】
駆動側ロック部材26は、ロック位置とロック解除位置とに変位操作可能であり、ロック位置において、駆動側ロック部材26の先端部が駆動側レンチ部材3のロック孔19aに突入する。また、ロック解除位置において、駆動側ロック部材26の先端部が駆動側レンチ部材3のロック孔19aから退出する。駆動側ロック部材26には操作用ボルト28がねじ込まれており、この操作用ボルト28の頭部が操作用つまみとなる。操作用つまみを操作位置と非操作位置とに変位操作することで、駆動側ロック部材26をロック位置とロック解除位置とに変位させることができる。
【0036】
図1に示すように、駆動側ロック部材26は、レンチ本体2上に2本のボルト29,29で固定されるロックスリーブ30内に配設される。ロックスリーブ30には、操作用ボルト28の軸部を案内するL字状案内溝31が形成される。L字状案内溝31内を操作用ボルト28の軸部がL字状に移動することで、駆動側ロック部材26がロック位置とロック解除位置とに変位する。ロックスリーブ30内には駆動側ロックばね32(図2(b)参照)が配設され、この駆動側ロックばね32によって駆動側ロック部材26がロック位置に固定される。
【0037】
図1に示すように、従動側ロック部材27は、ロック位置とロック解除位置とに変位操作可能であり、ロック位置において、従動側ロック部材27の先端部が従動側レンチ部材4のロック孔21aに突入する。また、従動側ロック部材27は、図1中のロック解除位置において、従動側レンチ部材4のロック孔21aから退出する。従動側ロック部材27には操作用ボルト33がねじ込まれており、この操作用ボルト33の頭部が操作用つまみとなる。操作用つまみを操作位置と非操作位置とに変位操作することで、従動側ロック部材27をロック位置とロック解除位置とに変位させることができる。
【0038】
従動側ロック部材27は、駆動側ロック部材26と同様にロックスリーブ30内に配設される。ロックスリーブ30には、操作用ボルト33の軸部を案内するL字状案内溝34が形成される。L字状案内溝34内を操作用ボルト33の軸部がL字状に移動することで、駆動側ロック部材27がロック位置とロック解除位置とに変位する。ロックスリーブ30内には従動側ロックばね35が配設され、この従動側ロックばね35によって従動側ロック部材がロック位置とロック解除位置とに固定される。
【0039】
実施の一形態として、従動側ロックばね35のばね力が駆動側ロックばね32のばね力より弱い態様としてもよい。多数の従動ロッド6の連結により構成されるドリルロッドから従動ロッド6を次々と切り離す作業において、従動側ロック部材4の係脱操作は、駆動側ロック部材3の係脱操作よりもはるかに頻繁に行われる。このため、従動側ロックばね35のばね力を駆動側ロックばね32のばね力より弱くしておくことで、従動ロッド6を次々と切り離す作業の作業性向上及び作業者の疲労軽減の点でなお一層有利となる。
【0040】
駆動側レンチ部材3と従動側レンチ部材4の基本構成は互いに同一である。図1の例では、従動側レンチ部材4の連結部21にのみ従動側レンチ部材把持用のスリット36を形成してあるが、このスリット36は駆動側レンチ部材3の連結部19にも形成してもよい。スリット36を従動側レンチ部材4の連結部21にのみ形成してあるのは、駆動側レンチ部材3はレンチ本体2への着脱の頻度が高くないのに対し、従動側レンチ部材4はレンチ本体2への着脱の頻度が高いからである。
【0041】
図2(b)に示すように、レンチ本体2において、駆動ロッドストッパ9に当接するまで駆動ロッド5を駆動ロッド受入部7内に挿入すると、駆動ロッド5の外周面に形成された一対のレンチカット22,22が駆動側開口部13の位置と一致する。この状態で、レンチ本体2の駆動側係合受部11に駆動側レンチ部材3を係合させると、駆動側レンチ部材3の一対のレンチ面15,15が駆動ロッド5の一対のレンチカット22,22に係合する。その後、駆動側ロック部材26をロック位置へと変位させることで、駆動側レンチ部材3がレンチ本体2に対して固定される。
【0042】
同様に、レンチ本体2において、従動ロッドストッパ10に当接するまで従動ロッド6を従動ロッド受入部8内に挿入すると、従動ロッド6の外周面に形成された一対のレンチカット23,23が従動側開口部14の位置と一致する。この状態で、レンチ本体2の従動側係合受部12に従動側レンチ部材4を係合させると、従動側レンチ部材4の一対のレンチ面16,16が従動ロッド6の一対のレンチカット23,23に係合する。その後、従動側ロック部材27をロック位置へと変位させることで、従動側レンチ部材27がレンチ本体2に対して固定される。
【0043】
なお、図1において、従動ロッド6のレンチカットは、従動ロッド6の軸線方向に間隔をおいて二段に亘って形成されている。後で図6を参照して説明するように、従動ロッド6において、駆動ロッド5側の端部に近い位置にある一段目のレンチカット23,23がダブルレンチ係合用のレンチカットであり、二段目のレンチカット24,24がシングルレンチ係合用のレンチカットである。
【0044】
以上のようにして、駆動ロッド5と従動ロッド6とがダブルレンチ1を介して駆動上連結される。駆動ロッド5と従動ロッド6との駆動上の連結状態において、駆動ロッド5の回転は、駆動ロッド5の一対のレンチカット22,22→駆動側レンチ部材3の一対のレンチ面15,15→レンチ本体2の駆動側係合受部11の順に伝達されて、レンチ本体2へと伝動される。また、レンチ本体2の回転は、レンチ本体2の従動側係合受部12→従動側レンチ部材4の一対のレンチ面16,16→従動ロッド6の一対のレンチカット23,23の順に伝達されて、従動ロッド6へと伝動される。
【0045】
駆動側ロック部材26をロック解除位置へと変位させ、駆動側レンチ部材3をレンチ本体2から外すことで、駆動ロッド5とレンチ本体2との駆動上の連結を解除することができる。同様に、従動側ロック部材27をロック解除位置へと変位させ、従動側レンチ部材4をレンチ本体2から外すことで、従動ロッド6とレンチ本体2との駆動上の連結を解除することができる。
【0046】
次に、図5及び図6を参照して、図1のダブルレンチ1を用いて行う単位インナロッドの切り離し作業の手順を説明する。
【0047】
図5は、二重管式ドリルロッドが取り付けられる二重管式穿孔機のドリルヘッド40の断面図である。図5に示すように、ドリルヘッド40は、切削水入口41と切削水出口42とを有するスイベル43を備え、このスイベル43の内部にクリーニングアダプタ44が回動自在に配設される。クリーニングアダプタ44の後端側雌ねじ部45には、二重管式穿孔機のシャンクロッド46の雄ねじ部がねじ結合される。一方、クリーニングアダプタ44の前端側雌ねじ部47には、アダプタカップリング48の後端側雄ねじ部49がねじ結合される。アダプタカップリング48の前端側雄ねじ部50には、二重管式ドリルロッドを構成するアウタロッド(アウタケーシング)51の後端側雌ねじ部52がねじ結合される。
【0048】
また、図5のクリーニングアダプタ44の内部の中間雌ねじ部53には、駆動ロッドとなるエキステンションロッド5の後端側雄ねじ部54がねじ結合される。一方、エキステンションロッド5の前端側雌ねじ部55には、二重管式ドリルロッドを構成するインナロッド57(多数の単位インナロッド6のねじ結合式連結体)の後端側雄ねじ部56がねじ結合される。
【0049】
図5の以上の構成において、二重管式穿孔機の穿孔時のモータ駆動によりシャンクロッド46が回転すると、クリーニングアダプタ44とアダプタカップリング48とを介してアウタロッド51が回転し、同時に、クリーニングアダプタ44とエキステンションロッド5とを介してインナロッド57が回転する。よって、ドリルヘッド40を穿孔方向へと前進させてアウタロッド51及びインナロッド57の先端部を地盤へ押圧させることにより、穿孔が行われる。
【0050】
なお、図5において、符号58は、ドリルヘッド40を進退方向に案内するガイドセルである。ガイドセル58の先端部にはクランプ59が配設されている。このクランプ59は、従動ロッドとしての単位インナロッド6の切り離し作業時にアウタロッド51を把持してアウタロッド51を回転不能に固定する作用を奏する。
【0051】
次に、図6を参照して、単位インナロッド6の切り離し作業の手順を説明する。図6(a)は、二重管式穿孔機において、必要深さの穿孔が完了した状態を示している。この状態では、アダプタカップリング48に対してアウタロッド51がねじ結合されている。
【0052】
まず、図6(b)に示すように、アダプタカップリング48とアウタロッド51とのねじ結合を解除する。そのために、図6(b)では、クランプ59によってアウタロッド51を回転不能に保持し、ドリルヘッド40を穿孔時とは逆方向(図6(b)の矢印方向)に回転させる。図6(b)以下の単位インナロッド6の切り離し作業中は、クランプ59によってアウタロッド51が回転不能に保持された状態が維持される。
【0053】
また、図6(b)に示すように、ドリルヘッドを図6の右方へ後退させ、インナロッド57の最も後端側の単位インナロッド6(切り離し対象となる単位インナロッド)の二段目のレンチカット24をアウタロッド51から露出させる。
【0054】
次いで、図6(c)に示すように、二段目のレンチカット24にシングルレンチ60を係合させ、ドリルヘッド40を穿孔時とは逆方向(図6(c)の矢印方向)に回転させる。これにより、シングルレンチ60がガイドセル58に当接して単位インナロッド6の回転が阻止される。さらにドリルヘッド40を穿孔時とは逆方向へと回転させながらドリルヘッド40を後退させることで、切り離し対象である単位インナロッド6とエキステンションロッド5とのねじ結合が解除される。切り離し対象となる単位インナロッド6にシングルレンチ60を係合させることで、穿孔方向が下り傾斜の場合でも、シングルレンチ60とアウタロッド51の端面とが当接するので、インナロッド57がアウタロッド51内に入り込んでしまうことが防止できる。
【0055】
次に、図6(d)に示すように、互いに分離した状態のエキステンションロッド5と単位インナロッド6との間に、図1のダブルレンチ1を架設する。これにより、互いに分離した状態のエキステンションロッド5と単位インナロッド6とが駆動上連結される。なお、ダブルレンチ1の架設に際しては、ドリルヘッド40を適宜進退方向へと動かして、エキステンションロッド5及び単位インナロッド6に対するダブルレンチ1の位置合わせを行えばよい。
【0056】
次に、図6(e)に示すように、切り離し対象である単位インナロッド6からシングルレンチ60を外した状態で、次の単位インナロッド6の二段目のレンチカット24が露出するまでドリルヘッド40を後退させる。
【0057】
次に、図6(f)に示すように、次の単位インナロッド6の二段目のレンチカット24にシングルレンチ60を係合させ、ドリルヘッド40を穿孔時とは逆方向(図6(f)の矢印方向)に回転させる。これにより、シングルレンチ60がガイドセル58に当接して、次の単位インナロッド6以降のインナロッド57の回転が阻止される。さらにドリルヘッド40を穿孔時とは逆方向へと回転させながらドリルヘッド40を後退させる。これにより、ダブルレンチ1で駆動上連結されたエキステンションロッド5と切り離し対象となる単位インナロッド6とが共に回転する。その結果、切り離し対象となる単位インナロッド6とその次の単位インナロッド6とのねじ結合が解除される。
【0058】
そこで、図6(g)に示すように、作業者がダブルレンチ1の従動側レンチ部材4をレンチ本体2から外して、切り離された単位インナロッド6を手作業で回収する。これで、一本目の単位インナロッド6の切り離し及び回収作業が完了する。
【0059】
その後、図6(f)から図6(d)へと戻って、次の単位インナロッド6以降の切り離し及び回収作業を継続する。図6(d)へ戻る際には、ドリルヘッド40を前進させて、切り離し対象となる次の単位インナロッド6にダブルレンチ1を係合させる。以後の単位インナロッド6の切り離し工程においては、ダブルレンチ1は、駆動ロッドであるエキステンションロッド5に対しては係合状態のままであり、従動ロッドである単位インナロッド6に対してのみダブルレンチ1の係合及び係合解除を繰り返せばよいので、作業効率がよく、作業者の疲労も大幅に軽減される。
【0060】
本発明のダブルレンチは、図1の例に限定されないことは勿論であり、本発明の要旨と関係のない部分については、他の代替構成を採用することもできる。例えば、図1の例では、駆動ロッド5とレンチ本体2を駆動上連結させるための構成として、従動側レンチ部材4とほぼ同様の構成の、レンチ本体2に対して着脱自在な駆動側レンチ部材3を採用している。但し、本発明において、駆動側レンチ部材3を従動側レンチ部材4と同様にレンチ本体2に対して着脱自在な構成とすることは必須とは言えず、従来公知の他の構成を採用して、駆動ロッド5とレンチ本体2を駆動上連結させることとしてもよい。
【0061】
例えば、本発明の他の実施の一形態の図7に示すように、レンチ本体70にU字状の駆動側レンチ部材71を固着した構成であってもよい。この駆動側レンチ部材71のU字溝72は、駆動ロッド5の一対のレンチカット22,22に係合する。駆動側レンチ部材71の二本の脚部73,73の先端部同士を、着脱自在又は揺動自在な脱落防止ピン74によって連結可能な構成とすれば、駆動ロッド5からのレンチ本体71の脱落が防止されて好適である。なお、図7の駆動側レンチ部材71は、前記特許文献2(特開昭59-141688号)の第8図~第10図A,Bに示す従来公知のダブルレンチと同様の構成である。
【0062】
また、本発明の他の実施の一形態として、図7に示すように、従動側レンチ部材75がレンチ本体70に揺動可能に支持される態様としてもよい。すなわち、図1の従動側レンチ部材4と同じ機能を有する従動側レンチ部材75を、一対のアーム76,76と枢支軸77とでレンチ本体70に対して揺動可能に連結する。この場合、従動側レンチ部材75をレンチ本体70上で図7の下方へと揺動させることで、従動側レンチ部材75とレンチ本体70とが係合し、従動側レンチ部材75を介してレンチ本体70と従動ロッド6とが駆動上互いに連結される。一方、従動側レンチ部材75をレンチ本体70上で図7の上方へと揺動させることで、従動側レンチ部材75がレンチ本体70との係合状態から離脱し、レンチ本体70と従動ロッド6との駆動上の連結を解除することができる。図7の例においても、従動側レンチ部材75をレンチ本体70への係合状態に固定する、適宜の従動側ロック部材を設けると好適である。
【0063】
図7の実施の一形態によれば、駆動ロッド5から従動ロッド6への回転の伝達時に、一対のアーム76,76の枢支軸77の部分に大きな負荷がかかることがないので、破損しにくいダブルレンチとなる。なお、図7において、レンチ本体70と従動側レンチ部材75との係合に関わる要素については、図1と同じ部分に図1と同一の符号(8,12,14,16)を付して、重複する説明を省略する。
【0064】
また、図7の例のように、従動側レンチ部材75をレンチ本体70に対して揺動可能に連結すれば、従動側レンチ部材75がレンチ本体70に常時支持されるので、作業者がレンチ本体70に対する従動側レンチ部材75の係合作業及び係合解除作業を行うに当たり、従動側レンチ部材75の全重量を支える必要がない。このため、従動ロッド6を次々と切り離す作業の作業性向上及び作業者の疲労軽減の点で一層有利である。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 ダブルレンチ
2 レンチ本体
3 駆動側レンチ部材
4 従動側レンチ部材
5 駆動ロッド
6 従動ロッド
13 駆動側開口部
14 従動側開口部
16 係合部
12 係合受部
26 駆動側ロック部材(ロックピン)
27 従動側ロック部材(ロックピン)
32 駆動側ロックばね
35 従動側ロックばね
【要約】
【課題】従動ロッドを次々と切り離す作業の作業性向上及び作業者の疲労軽減の点で有利であり、且つ、破損しにくいダブルレンチを提供する。
【解決手段】駆動ロッド5と従動ロッド6とを駆動上連結可能なダブルレンチ1であって、前記駆動ロッド5と一体回転するように該駆動ロッド5に結合可能なレンチ本体2と、該レンチ本体2に対して係合可能且つ係合解除可能であり、該レンチ本体2への係合状態で該レンチ本体2の回転を前記従動ロッド6に伝達する従動側レンチ部材4と、を備えるダブルレンチ1である。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7