(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】歩行制御装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20230628BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20230628BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230628BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G08G1/005
G08G1/16 C
G01C21/34
(21)【出願番号】P 2019142453
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】高田 崚介
(72)【発明者】
【氏名】礒本 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】志築 文太郎
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124490(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025531(WO,A1)
【文献】特開2010-197234(JP,A)
【文献】特開2011-027442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着され、当該ユーザの歩行を制御する歩行制御装置であって、
前記ユーザに対して所定の経路に沿った歩行を誘導するための外力を提示する外力提示部と、
外力提示部に対して連結された装着部と、
前記ユーザの姿勢を計測する姿勢計測部と、
自装置の周囲の環境を計測する環境計測部と、
前記姿勢計測部及び前記環境計測部による計測結果に基づいて、前記外力提示部が提示する外力を変更する外力変更部と、
を有
し、
前記ユーザの歩行する経路を算出する経路算出部をさらに有し、
前記経路算出部は、前記外力変更部が前記外力提示部において提示する外力を変更した場合に、前記経路算出部は、当該変更に基づいて経路を更新し、
前記外力提示部は、変更後の経路に沿った前記ユーザの移動のための外力を提示する、歩行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者に触覚刺激を行うことで、所定の歩行方向に誘導する手法が提案されている(例えば、下記特許文献1及び2)。しかしながら、触覚刺激を用いた手法は、例えば人又は盲導犬が歩行者を誘導する場合のように外力を用いて歩行者を直接牽引することに比べて直感的では無く、不自然さが残るという問題がある。そこで、装着者の頭部にドローンを装着し,ドローンが発生する力によって装着者を牽引する手法が提案されている(例えば、下記非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-27442号公報
【文献】特開2007-144057号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】高田崚介,礒本俊弥,山田渉,真鍋宏幸,志築文太郎,“プロペラを用いた頭部装着型歩行牽引デバイス”,インタラクション2019 予稿集,pp.236-237,2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載ようにドローンによって装着者を牽引する手法を用いることで、装着者の歩行者の歩行方向ならびに歩行速度を制御することができるようになる。しかしながら、牽引によって装着者の姿勢が不安定になり、転倒する可能性がある。また、牽引による装着者の移動または転倒の結果、装着者が第三者、あるいは、壁または電柱などの外部環境と接触する可能性が増大する。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、装置を装着するユーザの歩行を安全に制御することが可能な歩行制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る歩行制御装置は、ユーザに装着され、当該ユーザの歩行を制御する歩行制御装置であって、前記ユーザに対して所定の経路に沿った歩行を誘導するための外力を提示する外力提示部と、外力提示部に対して連結された装着部と、前記ユーザの姿勢を計測する姿勢計測部と、自装置の周囲の環境を計測する環境計測部と、前記姿勢計測部及び前記環境計測部による計測結果に基づいて、前記外力提示部が提示する外力を変更する外力変更部と、を有し、前記ユーザの歩行する経路を算出する経路算出部をさらに有し、前記経路算出部は、前記外力変更部が前記外力提示部において提示する外力を変更した場合に、前記経路算出部は、当該変更に基づいて経路を更新し、前記外力提示部は、変更後の経路に沿った前記ユーザの移動のための外力を提示する。
【0008】
上記の歩行制御装置によれば、ユーザの姿勢と、自装置の周囲、すなわちユーザの周囲の環境に基づいて、ユーザに対して提示する外力を変更することができるため、例えば、ユーザが周囲の人等に衝突する可能性を減らすことができ、装置を装着するユーザの歩行を安全に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置を装着するユーザの歩行を安全に制御することが可能な歩行制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る実施形態に係る歩行制御装置の構成図である。
【
図2】歩行制御装置の具体的な構成を説明する斜視図である。
【
図3】歩行制御装置の具体的な構成を説明する側面図である。
【
図4】歩行制御装置の制御部の機能ブロック図である。
【
図5】歩行制御装置による制御方法を説明するフロー図である。
【
図6】撮像部により取得される画像の例を示す図である。
【
図7】歩行制御装置を装着したユーザの正面図である。
【
図8】歩行制御装置を装着したユーザの姿勢が変化した状態を説明する正面図である。
【
図9】
図8に示す状態で撮像部により取得されるユーザ画像の例を示す図である。
【
図10】近傍に人がいる場合の歩行制御装置の動作例を説明する図である。
【
図11】近傍に人が密集している場合の歩行制御装置の動作例を説明する図である。
【
図12】ユーザの歩行時の外力の提示パターンの例を示す図である。
【
図13】実施形態に係る歩行制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
以下、図面とともに装置の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明における実施形態は、本発明の具体例であり、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されないものとする。
【0013】
図1~
図3は、本発明の一実施形態に係る歩行制御装置1の構成図である。
図1は、歩行制御装置1の概略構成及びその動作を模式的に説明する図であり、
図2及び
図3は、歩行制御装置1の構成を説明する図である。歩行制御装置1は、推進部2と、ユーザに装着される装着部4と、推進部2と装着部4とを連結する連結部3と、撮像部5と、制御部6と、を備える。なお、以降の説明での「ユーザ」は、歩行制御装置1の装着部4を装着している人間を示すものとする。
【0014】
上記の歩行制御装置1は、推進部2が推進力を発生させた際に、推進方向に向かって連結部3及び装着部4が牽引されることにより、装着部4を装着しているユーザは牽引力を受ける。牽引力は、ユーザを引っ張る力であり、推進力によって生じる力である。牽引力は、ある物体がユーザを引っ張る力である外力とほぼ同義である。以下、推進力を発生させることでユーザに対して外力を提示することによって、ユーザを所定の目的地まで誘導する歩行制御装置1について説明する。
【0015】
推進部2は、推力を発生する推力発生部を備え、当該推力発生部が発生する推力に基づいて推進力を発生する。推力発生部は、例えば、モーターで回転するプロペラを含んで構成される。推力は、例えば、プロペラの回転によって生まれる力である。推進部2は、1つ以上の任意の数の推力発生部を備えてもよい。推進部2は、例えば、ドローン(自律式又は遠隔操縦の無人航空機、マルチコプター)である。推進部2は、推進部2の重さ(自重)を基本的に打ち消す方向に推進力を発生する。推進部2は、ユーザを牽引するための装置であり、ユーザに対して外力を提示する外力提示部として機能する。
【0016】
推進部2は、例えば、4つの推力発生部20、位置推定部21及び障害物検知部22を含んで構成される。
【0017】
推力発生部20は、モーターで回転するプロペラを含んで構成される。歩行制御装置1は、4つの推力発生部20を備え、各推力発生部20が発生する推力を個別に制御することができる。これにより、歩行制御装置1は、任意の方向に対して推進力を発生させることができ、任意の回転方向に対して推進力を発生させることができる。そのため、歩行者であるユーザを任意の方向に牽引させること、または、任意の方向に向かせることができる。例えば、歩行制御装置1による推進力の制御により、
図1に示すように、ユーザを牽引することができる。なお、推力発生部20は、それぞれがユーザに接近したことを検出する近接検知部(不図示)を備え、推力発生部20のいずれかがユーザに衝突しそうになった場合に、それ以上歩行制御装置1が傾かないよう制御するようにしても良い。
【0018】
位置推定部21は、自装置である歩行制御装置1の位置を推定する。位置推定部21は、例えばGPS(Global Positioning System)であり、緯度及び経度等を、歩行制御装置1の推定される位置として取得する。推進部2は、位置推定部21によって推定された位置に基づいて決定された方向に推進力を発生する。例えば、推進部2は、後述の制御部6により制御される。制御部6は、ユーザの進路(目的地までの移動経路)に係る情報に基づいて、位置推定部21から取得した位置(現在位置)と予めメモリ等に格納された地形情報とに基づいて現在位置の周囲の地形情報を抽出し、現在位置と周囲の地形情報とに基づいて、ユーザを牽引する方向及び牽引する力等を制御する。そして、推進部2は、制御部6の制御に基づいて所定の方向への所定の大きさの推進力を発生する。この構成により歩行制御装置1は、目的地に向かう方向にユーザを牽引することができる。なお、制御部6は、後述の撮像部5等から得られた情報に基づいてユーザに対して提示する推進力を制御する機能も有する。制御部6による制御については後述する。
【0019】
障害物検知部22は、歩行制御装置1の周囲の障害物を検知し得る。障害物検知部22は、例えば赤外線センサーである。障害物検知部22が障害物を検知した場合、推進部2は検知に基づいて決定された方向に推進力を発生する。例えば、推進部2は、後述の制御部6によって、障害物検知部22によって検知された障害物を回避する方向に推進力を発生する構成とすることができる。この構成により歩行制御装置1は、障害物を回避する方向にユーザを牽引することができ、事故等の危機を回避させることができる。なお、障害物検知部22は設けられていなくてもよい。また、障害物検知部22の障害物の検知に係る機能を、後述の撮像部5が実現する構成としてもよい。
【0020】
上記の推進部2は常に上方向に推進力を発生させる。そのため、推進部2自体の重量によるユーザへの負担を軽減させることができる。また、ユーザの歩行動作に合わせて推進力の強さ及び方向を調整することで、ユーザの歩行負荷を軽減させること、並びに、ユーザの歩行速度の向上及び抑制を行うことができる。
【0021】
また、歩行制御装置1は、例えば推進部2としてドローンを流用することで、安価に歩行制御装置を製造することができる。また、推進部2としてのドローンをユーザの頭部に対して傾けることで、牽引力を高めることができる。ドローンに備わっている複数の推力発生部であるプロペラの一部を逆回転させれば、さらに牽引力を高めることができる。通常のドローンでは、ドローンを飛行させ続けることは困難となるため、プロペラを逆回転させることがない。一方、歩行制御装置1ではプロペラを逆回転させることで、牽引力を高めることができる。
【0022】
連結部3は、推進部2と装着部4とを連結(接続)する機構又は部材等である。連結部3は、連結機構30を有する。また、連結部3は、傾き角度制御機構31を含んで構成されていてもよい。
【0023】
連結機構30は、推進部2と装着部4とを連結する機構又は部材等である。連結機構30は、例えば伸縮するようなゲル等を用いた機構とすることができる。
【0024】
傾き角度制御機構31は、推進部2をユーザに接触させないように連結部3の傾き角度を制御する機構である。傾き角度制御機構31は、上下方向に延びる棒状の部材とすることができる。推進部2が発生させた推進力により推進部2が大きく傾くと、傾き角度制御機構31が装着部4と当接するため、推進部2のさらなる傾きを規制することができる。すなわち、傾き角度制御機構31は、ストッパーとして機能し得る。
【0025】
装着部4は、人間であるユーザ(装着者)の身体に装着される機構又は部材等である。装着部4は、例えば、ユーザの頭部に装着されるヘルメットである。
【0026】
装着部4をユーザの頭部に装着した場合、ユーザの頭部に対して外力を与えることができる。頭部に外力を加えた場合、効果的な牽引が可能となるので、ユーザの歩行牽引を効率的に行うことができるようになる。また、ユーザの腕部や脚部に装着した場合に比べて、ユーザの手足が自由となるため、歩行中の動作の妨げになりにくい。
【0027】
また、装着部4が角度検出部(不図示)を有し、ユーザの装着部位の角度を計測することにより、ユーザが装着部位を傾けた際に、歩行制御装置1が装着部位に衝突しないように推進力を調整するようにしても良い。
【0028】
撮像部5は、ユーザまたは自装置の周囲を撮像する機能を有する。撮像部5は、例えば、カメラ50と、可動式ミラー51と、を含んで構成される。
【0029】
カメラ50は、
図1,
図3等に示すように、推進部2に取り付ける構成とすることができる。一例として、推進部2としてドローンを流用している場合、4つの推力発生部20となるプロペラを離間して配置するための支柱の下方にカメラ50を設けることができる。ただし、カメラ50の取り付け位置は限定されない。カメラ50は、下方向(装着部4)方向を撮像可能なように配置された構成とすることができる。このような構成とした場合、自装置を装着したユーザを上方から撮像することができる。したがって、カメラ50で撮像された画像に基づいてユーザの姿勢を検出することが可能となる。
図3では、2つのカメラ50A,50Bを示している。このように、カメラ50は所望の撮像範囲に係る画像を取得するために複数設けられていてもよい。また、カメラ50は、通常のRGBカメラであってもよいし、対象物までの距離を画像化するデプスカメラとしてもよい。また、カメラ50の数は特に限定されず、ユーザの姿勢を検出可能な程度にユーザの撮像可能であれば、その構成を変更することができる。
【0030】
可動式ミラー51は、カメラ50の撮像領域を変更するためのミラーである。可動式ミラー51は、カメラ50に入射する光の光路を変更可能なように設けられる。
図3では、2つのカメラ50A,50Bのそれぞれに対して、可動式ミラー51A,51Bが設けられている。可動式ミラー51A,51Bを用いることで、カメラ50の撮像領域を変更することができる。具体的には、
図3に示す可動式ミラー51Aのように、カメラ50Aへの入射光路上に配置された場合、カメラ50Aは、ユーザではなく、その周囲を撮像することができる。一方、可動式ミラー51Bのように、カメラ50Bの入射光路から外れる位置に配置された場合、カメラ50Bは、下方のユーザを撮像することができる。このように、可動式ミラー51を用いて、カメラ50の撮像領域を変更することができる。
【0031】
カメラ50及び可動式ミラー51によって、撮像部5は、ユーザの姿勢を検出するユーザ姿勢検出部としての機能と、ユーザの周囲の状況を検出する環境情報検出部としての機能と、を有する。なお、可動式ミラー51に代えて、例えばカメラ50自体が回転する機構を設ける構成、または、カメラ50に広角レンズを装着し、側面と下面を同時に撮影可能とする構成等によって、ユーザ姿勢検出部としての機能と環境情報検出部としての機能とを有するようにしてもよい。
【0032】
制御部6は、推進部2を制御する機能を有する。
図4に示すように制御部6は、姿勢情報取得部61、環境情報取得部62、経路算出部63、外力算出部64、及び、外力制御部65を有する。外力算出部64及び外力制御部65は、外力変更部としての機能を有する。
【0033】
姿勢情報取得部61は、ユーザの姿勢に係る情報である姿勢情報を取得する機能を有する。姿勢情報は、撮像部5のカメラ50で撮像されたユーザの画像から得ることができる。カメラ50がユーザを撮像した場合、ユーザの姿勢に応じてそのユーザの形状等が変化する。そのため、姿勢情報取得部61では、カメラ50で撮像されたユーザの画像から姿勢に係る情報を取得する。
【0034】
環境情報取得部62は、ユーザの周辺環境に係る情報である環境情報を取得する機能を有する。環境情報は、撮像部5のカメラ50で撮像されたユーザの周囲の画像(自装置の周囲の画像にも相当)から得ることができる。カメラ50が周囲を撮像することで、例えば、ユーザの周囲に第三者がいるか否かを特定することができる。また、ユーザの周囲に壁等の構造物が存在する場合には、カメラ50で撮像した画像からそれらの存在及び場所を特定することができる。そのため、環境情報取得部62では、カメラ50で撮像されたユーザの画像から周辺環境に係る情報を取得する。
【0035】
なお、姿勢情報取得部61及び環境情報取得部62は、いずれもカメラ50で撮像された画像から所望の情報を取得する。したがって、制御部6は、カメラ50で撮像された画像を一括して取得し、その中から姿勢情報及び環境情報を個別に取り出す構成としてもよい。また、ユーザの姿勢を撮像するタイミングと周辺環境を撮像するタイミングとでは可動式ミラー51の位置が異なる。したがって、制御部6では、撮像時の可動式ミラー51の位置からカメラ50で撮像された画像を分類して、姿勢情報及び環境情報を個別に取り出す構成としてもよい。
【0036】
経路算出部63は、ユーザの目的地までの経路を算出しその情報を保持する機能する。目的地までの経路とは、ユーザが目的地に向かう際に自装置で誘導すべき経路である。経路算出部63は、ユーザの姿勢変更等によって、事前に想定していたユーザの経路からユーザが外れた場合等に、ユーザを目的地へ誘導するための経路を再度計算する機能を有する。
【0037】
外力算出部64は、姿勢情報取得部61及び環境情報取得部62において取得した情報に基づいて、ユーザに対して提示する外力を変更する機能を有する。外力算出部64は、通常は、経路算出部63によって算出されたユーザの目的地までの経路に沿ってユーザを誘導するように、ユーザに対して提示する外力を算出し、その結果に基づいてユーザを誘導する。ただし、ユーザの姿勢が変化した場合等には、外力算出部64は、その情報に基づいてユーザの転倒または(第三者または壁等への)衝突を防ぐための外力を算出する。このように、外力算出部64は、ユーザを目的地へ誘導するための外力と、ユーザの姿勢の変化を検知した場合のその変化に対する外力と、を算出する機能を有する。
【0038】
外力制御部65は、外力算出部64における算出結果に基づいて、推進部2を制御して、ユーザに対して提示する外力を制御する機能を有する。
【0039】
次に、
図5を参照しながら、ユーザの姿勢の変化及び周辺環境に応じたユーザの歩行の制御について、説明する。
図5で示すフロー図は一例であり、歩行制御装置1における各部の制御に係る順序は、
図5に示す順序に限定されない。
【0040】
まず、歩行制御装置1は、ステップS01を実行する。ステップS01では、制御部6による推進部2の制御によって推進力が発生し、ユーザに対して経路に沿った外力が提示される。ユーザに対して提示する外力は、経路に沿ってユーザを牽引するための外力である。すなわち、歩行制御装置1は、経路に沿ってユーザが移動可能なように、所定の進行方向に沿った牽引力を発生させ、ユーザを牽引する。
【0041】
歩行制御装置1は、ステップS02を実行する。ステップS02では、撮像部5によって、ユーザの姿勢が撮像される。そして、制御部6の姿勢情報取得部61では、ユーザの姿勢に係る姿勢情報が取得される。
【0042】
また、歩行制御装置1は、ステップS02と同時にステップS03を実行する。ステップS03では、撮像部5によって、ユーザの周辺環境が撮像される。そして、制御部6の環境情報取得部62では、ユーザの周辺環境に係る環境情報が取得される。
【0043】
ステップS02及びステップS03は同時に行ってもよいし、交互に行ってもよい。例えば、撮像部5がカメラ50と可動式ミラー51とによって構成される場合には、カメラ50によって、ユーザの姿勢と周辺環境とを同時に撮像することは困難であるため、ステップS02及びステップS03を交互に行う構成とすることができる。また、例えば、撮像部5が広角なレンズを有するカメラ50である場合には、ステップS02及びステップS03を同時に行い得る。このように、歩行制御装置1の装置構成によって、ステップS02及びステップS03を行う順序は変更することができる。
【0044】
次に、歩行制御装置1は、ステップS04を実行する。ステップS04では、制御部6の外力算出部64において、ユーザに対して提示する外力を算出する。また、制御部6の外力制御部65によって算出結果に基づいてユーザに対して外力が提示される。外力算出部64による外力の算出には、上記の姿勢情報及び環境情報が利用される。また、外力制御部65は、推進部2を制御することで推進力を発生させることで、ユーザに対して外力を提示する。
【0045】
なお、ステップS02(姿勢情報の取得)及びステップS03(環境情報の取得)からステップS04(外力の算出及び提示)までの一連の流れはステップS02において、ユーザの姿勢に問題があると判断された場合に重要となるものである。換言するとユーザの姿勢に問題がない場合(取得した姿勢情報に基づき、ユーザの姿勢が通常の状態であると判断される場合)には、姿勢の変化に基づいた外力の提示は不要となり、経路に沿ったユーザの移動を行うための外力の提示を行えばよい。外力算出部64では、姿勢情報取得部61で取得された姿勢情報が通常のユーザの姿勢であると判断される場合には、経路に沿ったユーザの移動を誘導するための外力を算出すればよい。また、制御部6の外力算出部64では、ステップS04を実行する前に、姿勢情報取得部61で取得された姿勢情報に基づいて、ユーザの姿勢の変化に伴う外力の提示が必要かどうかを判断する処理を行ってもよい。
【0046】
なお、ステップS02(姿勢情報の取得)及びステップS03(環境情報の取得)からステップS04(外力の算出及び提示)までの一連の処理は数秒程度で行う構成とすることができる。
【0047】
その後、歩行制御装置1は、ステップS05を実行する。ステップS05では、制御部6においてステップS04を実行した結果、経路の再計算が必要な場合に、経路算出部63が経路情報を更新する。ステップS04においてユーザの姿勢の変化に基づいて、経路に沿ったユーザの移動とは異なる方向へ外力を提示した場合、ユーザはこの外力に基づいて移動することになる。すなわち、ステップS04の結果、当初想定していたユーザの移動経路からユーザが外れてしまうことが考えられる。そこで、経路算出部63では、外力算出部64による外力の算出結果に基づいて経路の更新が必要かどうかを判断する。そして必要な場合には、経路の更新を行う。その後、制御部6がステップS01(経路に沿った外力の提示)を行う場合には、更新された経路(最新の経路)に基づいてユーザに対して外力を提示する。
【0048】
上記の一連の動作により、歩行制御装置1は、ユーザの姿勢と周辺環境とに基づいて、ユーザを安全に移動させるための制御を行う。そのための動作例について、
図6~
図12を参照しながら説明する。
【0049】
まず、
図6~
図9を参照しながら、ユーザUの姿勢に応じた外力の提示について説明する。
図6は、撮像部5のカメラ50により撮像されるユーザの姿勢の画像の例を示している。
図6は、ユーザUを上方から撮像した画像となる。上述のようにカメラ50は下向きの画像を撮像可能であるため、上方からユーザUを撮像することになる。また、
図7は、
図6の状態のユーザUを前方から見た図である。
【0050】
図6及び
図7に示すユーザUは、ユーザUが姿勢を崩すことなく歩行を行っているとする。このとき、
図6に示すように、ユーザUの右手RHと左手LH、及び、右足RFと左足LFがそれぞれ頭を基準に対称となっている。また、右手RH及び左足LFが頭よりも前方にあり、左手LH及び右足RFが頭よりも後方にあることからも、ユーザUが歩行状態にあることがわかる。
【0051】
ここで、
図8に示すように、ユーザUの姿勢が傾くように変化したとする。このときは、
図8に示すように、ユーザUの右手RHと左手LH、及び、右足RFと左足LFの位置が歩行時とは変化する。このような状態を撮像部5のカメラ50により撮像した場合のユーザUの姿勢の画像の例を
図9に示す。
図9に示すように、ユーザUの姿勢が通常とは異なる状態、すなわち、姿勢を崩した状態になると、ユーザUの右手RHと左手LH、及び、右足RFと左足LFの位置が変化する。
【0052】
歩行制御装置1では、制御部6において、上記の
図6及び
図9に示したユーザの姿勢の変化を検出することで、ユーザUが現在どのような姿勢であるかを推定する。そして、このユーザUの姿勢の変化に対応させて、歩行制御装置1は、例えば、ユーザUの転倒を防ぐように提示する外力を変化させることになる。
【0053】
図8では、ユーザUの姿勢が変化した場合の外力の提示の変更例も示している。例えば、
図8では、歩行制御装置1を装着するユーザUが図示右方向に転倒しそうになっている。これに対して、歩行制御装置1は
図8に示すように、図示左上方向に向かう力がユーザUに提示されるように、推進部2を制御する。歩行制御装置1の上記の制御によって、右方向に転倒しかけているユーザUは、それを打ち消す方向である左上方に向けて牽引されることになる。このように、ユーザUの姿勢が変化したことを撮像部5のカメラ50で撮像した画像に基づいて制御部6で検出した場合には、それを打ち消す方向にユーザUに対して外力を提示する。この結果、ユーザUの転倒を防ぐことができる。
【0054】
なお、このようにユーザUの転倒を防ぐように外力を提示した場合には、ユーザの進路が変更することになる。歩行制御装置1は、予め設定された目的地に向けてユーザが安全に歩行できるような経路を設定し、その経路に沿ってユーザを誘導する。これに対して、
図8に示すようにユーザUの位置を変更させるような制御を歩行制御装置1が行った場合、ユーザUは予め設定された経路から外れることになる。このようにユーザUが経路から外れたまたは外れることが予想される場合には、制御部6の経路算出部63は経路の再計算を行い、現在地から目的地へ向けてユーザUが安全に歩行することができる経路を算出する。なお、「安全に歩行できるような経路」の設定は、ユーザUに応じて適宜変更する構成としてもよい。例えば、経路上に段差が設けられないように経路を設定するなど、ユーザUが転倒しやすい場所を避けて経路を算出する構成としてもよい。また、ユーザUの特性(例えば、年齢等)に応じて経路上の段差を許容するなど、ユーザU個別の設定を設けることとしてもよい。
【0055】
次に、環境情報を考慮した外力の提示について説明する。歩行制御装置1において検出対象とする周辺環境について説明する。本実施形態における周辺環境とは、ユーザUの周囲に人がいるのか、いないのか、いる場合にはどの方向に、どの程度離れているのか、また、壁や電柱がどこにあるのか、などが含まれる。これらの情報は、歩行制御装置1がユーザUに対して提示する外力に影響し得る。また、ユーザUの周囲の人も移動可能であるように、これらの情報の少なくとも一部は常に変化し得る。そのため、上記の周辺環境の検出には、歩行制御装置1が備えるカメラ50等を用いることができる。すなわち、カメラ50が撮像したユーザUの周囲の画像に基づいて、ユーザの周辺の環境に係る情報を取得する。仮に、画像からユーザUの近傍に人がいることが把握できた場合、歩行制御装置1は、ユーザUの安全だけでなく、周囲の人の安全も考慮した動作を行う。
【0056】
具体例としては、例えば、上述の
図8に示すように、ユーザUが転倒しそうになり、歩行制御装置1がユーザUの転倒を抑止しようと動作した場合とする。このとき、ユーザUの近傍に人がいる場合と、人がいない場合とによって歩行制御装置1は動作を変更することができる。例えば、ユーザUの近傍に人がいない場合には、歩行制御装置1はユーザUの転倒を抑止することを最優先とした動作を実行すすることができる。
図8に示す推進力の発生方向は一例であり、例えば、転倒を抑止するために図示右上方向にユーザUを牽引したほうがよい場合には、そのように推進部2を制御してもよい。一方、ユーザUの近傍に人がいる場合には、近傍の人を考慮した動作が必要となる。具体的には、ユーザUの転倒するために歩行制御装置1が近傍の人がいる方向にユーザUを牽引した場合、ユーザUの転倒を防止できたとしても、ユーザUが近傍の人と衝突することが考えられる。そのため、歩行制御装置1では、周辺環境に係る環境情報にも基づいて、ユーザUに提示する外力の方向及び大きさを決定する。具体的には、ユーザUの周囲に人または物(壁・電柱等)の障害物がある場合には、障害物がある側へユーザUを牽引し誘導することを防ぐように外力の提示方向を決定する。このように、カメラ50により撮像された画像から得られる周辺環境に係る環境情報は、外力算出部64が提示する外力を算出する際に使用される。
【0057】
一方、歩行制御装置1が、近傍の人に近付く方向にユーザUが転倒しそうであることを検知した場合は、ユーザUの転倒を防ぐために近傍の人から離れる方向にユーザUを牽引すると考えられる。しかしながら、上記のようにユーザUを牽引したとしても、結果的にユーザUが転倒してしまう場合もある。この場合、ユーザUが転倒するとユーザUの頭に装着されている歩行制御装置1が近傍の人に衝突してしまう可能性もある。
【0058】
これに対して、歩行制御装置1の変形例として、近傍に人がいる場合には,必要に応じて、装着部4とは異なる各部をユーザUから一体的に離脱可能な構成としてもよい。装着部4とは異なる各部をユーザUから一体的に離脱可能とした歩行制御装置1Aについて
図10に示す。
図10では、ユーザUが転倒しそうになったため、歩行制御装置1Aは
図8に示すように転倒を抑止しようと動作した場面の直後の状態を示している。歩行制御装置1Aは、
図8に示すように転倒を抑止しようと動作し続ける構成としてもよいが、その場合歩行制御装置1自体が近傍の人UXと衝突して何らかのアクシデントを発生させる可能性がある。これに対して、歩行制御装置1Aでは、近傍の人UX等周囲の障害物と自装置とが衝突する可能性がある場合には、装着部4とは異なる各部を装着部4から一体的に離脱させる。これにより、歩行制御装置1Aの装着部4とは異なる各部は、推進部2により発生させた推進力によって例えば図示左上方向へ移動する。そのため、歩行制御装置1Aが近傍の人UX等の障害物と衝突することを防ぐことができる。
【0059】
なお、上記のように装着部4から離脱した部分(装着部4とは異なる各部)は、ユーザUの上空で待機し、ユーザUが安全に歩行できる状態に復帰した段階を確認した後に、再度装着部4と接続される構成としてもよい。なお、ユーザUが安全に歩行できる状態に復帰したかを確認するために、撮像部5のカメラ50を用いて、上空からユーザUを撮像する構成としてもよい。
【0060】
また、歩行制御装置1Aのように、装着部4とそれ以外とが分離できる構成である場合、それ以外に相当する推進部2側の装着部4からの離脱及び再接続が容易に行えるように、装着部4と連結部3との連結構造を適宜変更することができる。
【0061】
なお、ユーザUが転倒しそうになった場合とは異なる場合でも、装着部4に対してそれ以外が離脱可能な構成としてもよい。例えば、
図11では、ユーザUの周囲に複数の人がいる状態を示している。このような状態では、ユーザUが単に立ち止まっているだけであっても、歩行制御装置1が他の人に衝突する可能性が考えられる。このように周囲に人が多くいる状況を環境情報として取得した場合、歩行制御装置1の制御部6は、推進部2の駆動によって装着部4からそれ以外を離脱させて上空で待機する構成とすることができる。そして、ユーザUの転倒時と同様に、周囲に人がいなくなるなど、安全にユーザUを誘導できるようになった場合に,装着部4から離脱した部分(装着部4とは異なる各部)は再度装着部4と接続される構成としてもよい。
【0062】
上記したように、推進部2を含む各部が装着部4から離脱すると、ユーザUは、推進部2の推進力に基づく外力の提示を受けることができない。すなわち、歩行制御装置は、ユーザUに対して外力を提示することができない。このような構成である場合、上空で待機している推進部2を含む離脱側の装置が、例えば音や光によってユーザUを誘導する構成としてもよい。例えば、推力発生部20を支持する支柱、または推進部2の中央等にライトまたはスピーカーを設けてこれらを用いてユーザUを誘導する構成としてもよい。この場合、ユーザUは、上空で待機している離脱側の装置を見上げる、または、離脱側の装置からの音声を聞くことで、これらの指示に基づいて移動することが可能となる。
【0063】
また、上記の構成に代えて、ある程度長さを有する連結部3を用いることで、離脱側の装置と装着部4とが離れた状態であっても両者を接続可能な構成とすることができる。
図11では、このような変形例に係る歩行制御装置1Bを示している。
図11に示す歩行制御装置1Bは、連結部3Aが離脱側の装置と装着部4とを接続する長尺の糸(ロープ)等によって構成されている。このような構成を有することで、歩行制御装置1Bの推進部2を含む各部が装着部4から離脱している状態であっても、糸状の連結部3Aを介してユーザUに力を伝えることができ、歩行を誘導することができる。この歩行制御装置1Bのように、糸状の連結部3Aを介して推進部2等の離脱側の装置と装着部4とが接続されている場合、離脱側の装置と装着部4との再接続が容易となり得る。
【0064】
なお、上記実施形態では、ユーザUが転倒する場合等を考慮した外力の提示について説明した。これに対して、以下では、歩行制御装置1が通常の歩行時にもユーザUの姿勢を考慮して外力を提示し、ユーザUを誘導する方法について説明する。上述の通り、歩行制御装置1は、ユーザUの姿勢を確認しながらユーザUを誘導している。したがって、ユーザUの姿勢に応じて最も効率的なタイミングで、すなわちユーザUの一歩一歩の踏み出しタイミングを考慮して、外力を提示することができる。具体的な外力の提示タイミングの例を
図12に示す。
図12では、右足及び左足がそれぞれ接地している時間と、歩行制御装置1がユーザUに対して提示する外力(すなわち発生させる推進力)の大きさを示している。
図12に示す駆動パターンでは、右足が地面から離れる直前のタイミングから左足が接地した後のタイミングまで、のように、片足が地面から離れる直前のタイミングから逆足が接地した後のタイミングまで歩行制御装置1がユーザUに対して提示する外力が大きくなっている。また、それ以外の時間帯も歩行制御装置1はユーザUに対して提示するが、その力の大きさは一定とされる。このように、ユーザUの足の動きを考慮して、ユーザUに提示する外力の大きさを変更してもよい。なお、外力を変化させる場合のパターンは
図12に示した例に限定されるわけではなく、異なるパターンを用いてもよい。このように、ユーザUの通常の歩行時でも、ユーザUの姿勢を元に、ユーザUに対して提示する外力を変更する構成としてもよい。また、上記の構成とすることで、ユーザUに対してより適切なタイミングで外力を提示することができ、効率的にユーザUを誘導することができる。なお、上記の構成は、上述のユーザUの転倒を検知した場合の外力の提示と、ユーザUの姿勢に基づいた外力の提示を行っているという点で共通する。
【0065】
上記のように、ユーザUの姿勢に基づき、ユーザUに対して提示する外力がユーザUに効率的に働くタイミングを考慮して歩行制御装置1が外力を提示する構成とした場合、歩行制御装置1におけるエネルギー消費を抑制することができる。すなわり、より少ないエネルギー消費で、ユーザUを効率的に誘導させることが可能となるため、より少ないエネルギーでユーザUを誘導することが可能となる。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る歩行制御装置1は、ユーザUに装着され、当該ユーザUの歩行を制御する装置であって、ユーザUに対して所定の経路に沿った歩行を誘導するための外力を提示する外力提示部としての推進部2と、外力提示部に対して(連結部3を介して)連結された装着部4と、ユーザUの姿勢を計測する姿勢計測部と、自装置の周囲の環境を計測する環境計測部と、姿勢計測部及び環境計測部による計測結果に基づいて、外力提示部が提示する外力を変更する制御部6と、を有する。
【0067】
上記の歩行制御装置1によれば、ユーザUの姿勢と、自装置の周囲、すなわちユーザUの周囲の環境に基づいて、ユーザUに対して提示する外力を変更することができる。したがって、例えば、ユーザUが周囲の人等に衝突する可能性を減らすことができ、装置を装着するユーザUの歩行を安全に制御することが可能となる。
【0068】
歩行制御装置1によりユーザUを牽引する場合、ユーザUは段差等によって転倒する可能性がある。これに対して、歩行制御装置1では、ユーザUの姿勢を姿勢計測部において計測することで、ユーザUの姿勢を考慮した外力を提示することができる。さらに、歩行制御装置1では、自装置の周囲、すなわち、ユーザUの周囲の環境を考慮した外力の提示が可能となっている。仮にユーザUの姿勢が崩れた場合にそれを正すための外力を提示したとしても、その結果、周囲の人または物に衝突する等他のトラブルが発生する可能性も考えられる。歩行制御装置1では、上記の可能性を考慮して、周囲の環境も考慮した外力の提示を行うことによって、ユーザUをより安全に誘導することを実現している。
【0069】
ここで、外力提示部は、プロペラを含んで構成される態様としてもよい。このような構成とすることで、ユーザUに対して提示する外力を回転数等によって制御することができるため、より細かく外力を調整することができる。なお、外力提示部は、複数のプロペラを含んでいてもよい。この場合、複数のプロペラの回転を個別に制御することで、プロペラによって任意の方向に対して推進力を発生させることができ、任意の回転方向に対して推進力を発生させることができる。そのため、ユーザに対して任意の方向の外力を提示することができる。
【0070】
外力変更部は、姿勢計測部及び環境計測部による計測結果から、ユーザUの転倒、または、ユーザUの周囲の障害物との接触が予測される場合に、これらを防ぐようにユーザUに対して外力を提示する態様としてもよい。このような構成とすることで、ユーザUの転倒、または、ユーザUの周囲の障害物との接触を防ぐことができ、より安全にユーザUを誘導することができる。
【0071】
姿勢計測部及び環境計測部は同一のカメラを含んで構成される態様としてもよい。上記の歩行制御装置1では、撮像部5のカメラ50及び可動式ミラー51が姿勢計測部及び環境計測部として機能している。このような構成とすることで、より簡単な構成で姿勢計測部及び環境計測部を実現することができる。
【0072】
装着部4とは異なる各部は、装着部4がユーザUに装着された状態で装着部4から一体的に離脱可能である態様とすることができる。このような構成とすることで、例えば、歩行制御装置1を装着したユーザUが転倒した場合、または、人が密集する場所にユーザUがいる場合に、外力提示部等が周囲の人または物に接触する可能性がある。その場合に、上記のように装着部4とは異なる各部を一体的に離脱可能とすることで、ユーザUからこれらの各部を遠ざけることができるため、ユーザUの近傍の人等に各部が接触することを防ぐことができる。
【0073】
ユーザUの歩行する経路を算出する経路算出部63をさらに有し、経路算出部63は、外力変更部としての外力算出部64及び外力制御部65が外力提示部において提示する外力を変更した場合に、経路算出部63は、当該変更に基づいて経路を更新し、外力提示部は、変更後の経路に沿ったユーザUの移動のための外力を提示する態様とすることができる。このような構成とすることで、外力提示部がユーザUの姿勢及び周囲の環境に基づいてユーザUに対して提示する外力を変更した場合でも、外力の変更に応じて経路を更新することができ、当初の目的地までのユーザUの誘導を適切に行うことができる。
【0074】
なお、上記実施形態で説明した歩行制御装置は上記の構成に限定されず、種々の変更を加えることができる。
【0075】
例えば、歩行制御装置1における姿勢計測部及び環境計測部としての機能は、撮像部5以外の各部が有していてもよい。例えば、歩行制御装置1が加速度センサを備えている場合には、加速度センサを用いてユーザUの身体がどの程度傾いているのかを算出してもよい。また、加速度センサによる測定結果を撮像部5において得られた画像から求められるユーザUの姿勢に係る情報と組み合わせて、ユーザUの現在の姿勢に係る情報の精度を高める構成としてもよい。また、撮像部5としてデプスカメラを用いて、地表面まで高さや身体の各パーツまでの距離を計測することで、ユーザUの現在の姿勢に係る情報の精度を高める構成としてもよい。さらに、歩行制御装置1が角速度センサを備える場合、角速度センサを用いてユーザUの転倒を検知する構成としてもよい。
【0076】
また、ユーザUの姿勢の変化を検出するために、事前にユーザUの通常時の姿勢に係る情報等を取得しておき、ユーザUを誘導する際には、撮像部5から得られた姿勢に係る情報と、事前に取得した通常時の姿勢に係る情報とを照合することで,ユーザUの姿勢が異常ではないかを確認する構成としてもよい。
【0077】
また、上記では、歩行制御装置1単体の動作について説明したが、例えば、歩行制御装置1を装着したユーザが周囲に複数いる場合に、これらが連携をとる構成としてもよい。例えば、所定の範囲内に存在する歩行制御装置1同士で互いに情報の送受信を行うことで、歩行制御装置1同士での衝突・接近等を予測してもよい。また、歩行制御装置1同士での衝突または接近の可能性がある場合には、環境計測部により取得される周辺の環境に係る情報にも基づいて、経路算出部63において安全な経路を再計算する構成としてもよい。なお、上記のように歩行制御装置1同士が情報の送受信を行う場合には、これを実現するための通信機能が歩行制御装置1それぞれに設けられる。
【0078】
(その他)
上記実施の形態の説明に用いた各機能は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組み合わせによって実現される。また、各機能の実現手段は特に限定されない。すなわち、各機能は、物理的及び/又は論理的に結合した1つの装置により実現されてもよいし、物理的及び/又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的及び/又は間接的に(例えば、有線及び/又は無線)で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。
【0079】
例えば、上述の歩行制御装置1の制御部6は、コンピュータとして機能してもよい。
図13は、制御部6のハードウェア構成の一例を示す図である。制御部6は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0080】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。制御部6のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0081】
制御部6における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信や、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することで実現される。
【0082】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。例えば、制御部6の各種処理等は、プロセッサ1001で実現されてもよい。
【0083】
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールやデータを、ストレージ1003及び/又は通信装置1004からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、制御部6の各種処理を実行する機能は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001で動作する制御プログラムによって実現されてもよく、他の機能ブロックについても同様に実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001で実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップで実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
【0084】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、制御部6の各種処理を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0085】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002及び/又はストレージ1003を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0086】
通信装置1004は、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。例えば、制御部6の各種処理の一部は、通信装置1004で実現されてもよい。
【0087】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0088】
また、プロセッサ1001やメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007で接続される。バス1007は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0089】
また、制御部6は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0090】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、当業者にとっては、本実施形態が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本実施形態は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本実施形態に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0091】
情報の通知は、本明細書で説明した態様/実施形態に限られず、他の方法で行われてもよい。例えば、情報の通知は、物理レイヤシグナリング(例えば、DCI(Downlink Control Information)、UCI(Uplink Control Information))、上位レイヤシグナリング(例えば、RRC(Radio Resource Control)シグナリング、MAC(Medium Access Control)シグナリング、報知情報(MIB(Master Information Block)、SIB(System Information Block)))、その他の信号又はこれらの組み合わせによって実施されてもよい。また、RRCシグナリングは、RRCメッセージと呼ばれてもよく、例えば、RRC接続セットアップ(RRC Connection Setup)メッセージ、RRC接続再構成(RRC Connection Reconfiguration)メッセージなどであってもよい。
【0092】
本明細書で説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0093】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0094】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0095】
本明細書で説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0096】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0097】
また、ソフトウェア、命令などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア及びデジタル加入者回線(DSL)などの有線技術及び/又は赤外線、無線及びマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び/又は無線技術は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0098】
本明細書で説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0099】
なお、本明細書で説明した用語及び/又は本明細書の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。
【0100】
本明細書で使用する「システム」および「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
【0101】
また、本明細書で説明した情報、パラメータなどは、絶対値で表されてもよいし、所定の値からの相対値で表されてもよいし、対応する別の情報で表されてもよい。
【0102】
上述したパラメータに使用する名称はいかなる点においても限定的なものではない。さらに、これらのパラメータを使用する数式等は、本明細書で明示的に開示したものと異なる場合もある。
【0103】
本明細書で使用する「判断(judging)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。
【0104】
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、又はこれらのあらゆる変形は、2又はそれ以上の要素間の直接的又は間接的なあらゆる接続又は結合を意味し、互いに「接続」又は「結合」された2つの要素間に1又はそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合又は接続は、物理的なものであっても、論理的なものであっても、或いはこれらの組み合わせであってもよい。本明細書で使用する場合、2つの要素は、1又はそれ以上の電線、ケーブル及び/又はプリント電気接続を使用することにより、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域及び光(可視及び不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどの電磁エネルギーを使用することにより、互いに「接続」又は「結合」されると考えることができる。
【0105】
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0106】
「含む(include)」、「含んでいる(including)」、およびそれらの変形が、本明細書あるいは特許請求の範囲で使用されている限り、これら用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書あるいは特許請求の範囲において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0107】
本明細書において、文脈または技術的に明らかに1つのみしか存在しない装置である場合以外は、複数の装置をも含むものとする。本開示の全体において、文脈から明らかに単数を示したものではなければ、複数のものを含むものとする。
【符号の説明】
【0108】
1,1A,1B…歩行制御装置、2…推進部、3,3A…連結部、4…装着部、5…撮像部、6…制御部、20…推力発生部、21…位置推定部、22…障害物検知部、30…連結機構、31…傾き角度制御機構、50…カメラ、51…可動式ミラー、61…姿勢情報取得部、62…環境情報取得部、63…経路算出部、64…外力算出部、65…外力制御部。