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  • 特許-物品の装飾加工方法 図1
  • 特許-物品の装飾加工方法 図2
  • 特許-物品の装飾加工方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】物品の装飾加工方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/18 20060101AFI20230628BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230628BHJP
   B43K 3/00 20060101ALI20230628BHJP
   B44C 1/22 20060101ALI20230628BHJP
   C25D 11/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C25D11/18 314Z
B23K26/00 B
B43K3/00 N
B44C1/22 B
C25D11/00 303
C25D11/18 306
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019152242
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021031721
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】595049622
【氏名又は名称】株式会社ジャストコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛田 実
(72)【発明者】
【氏名】艸分 将史
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-167797(JP,A)
【文献】特開2001-267720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0299471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/18
C25D 11/00
B23K 26/00
B43K 3/00
B44C 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品のアルマイト皮膜上に形成した塗装皮膜の一部を所望の形状に除去することにより前記アルマイト皮膜を露出させて所望形状の装飾部を形成する物品の装飾加工方法であって、
前記アルマイト皮膜上に形成した前記塗装皮膜に対しレーザー光を照射することにより当該塗装皮膜の表面側を部分的に除去し、当該塗装皮膜の残部を溶融状態で前記アルマイト皮膜上に残すレーザー彫刻工程と、
前記レーザー彫刻工程により前記アルマイト皮膜上に残した前記塗装皮膜の溶融状態の残部をスポンジで拭き取りながら前記アルマイト皮膜の露出面を磨く拭取り工程と、
から成ることを特徴とした物品の装飾加工方法。
【請求項2】
前記拭取り工程において、アルコールを含ませたメラミンスポンジで拭き取ることを特徴とした請求項1に記載の物品の装飾加工方法。
【請求項3】
前記物品がボールペンの軸筒である請求項1または請求項2に記載の物品の装飾加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の装飾加工方法、より詳しくは、例えばボールペン等の軸筒の表面において、アルマイト皮膜を所望形状に露出させて装飾部を形成する物品の装飾加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の表面にアルマイト皮膜を所望形状に露出させて装飾部を形成する方法として、下記特許文献1に記載のものが知られている。この方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜上に塗装皮膜を形成し、この塗装皮膜の所要部分にレーザー光を照射することにより塗装皮膜を食刻し、陽極酸化皮膜を露出させて模様を形成するものである。そして、レーザー光の照射により塗装皮膜を途中まで食刻し、或いは全部を食刻して陽極酸化皮膜を露出させ、場合によっては、陽極酸化皮膜をも食刻して素地を露出させることにより種々の変化に富んだ模様を形成するというものである。
【0003】
しかしながら、この方法は、レーザー光による塗装皮膜の食刻深さに応じて変化に富んだ模様を形成することは可能であるものの、多数の同一物品に対して、レーザー光照射による食刻深さを一定に制御することが困難であり、例えば模様の色調等において、ばらつきの殆どない多数の装飾物品を安定に量産することが困難であるという難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-167797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のアルマイト皮膜の露出面による装飾部の形成方法に上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、必ずしもレーザー光の照射条件等を厳密に制御しなくても、アルマイト皮膜上に形成した塗装皮膜だけを除去してアルマイト皮膜を露出させることができ、装飾部の色調等においてばらつきの殆どない多数の装飾物品を量産し得る物品の装飾加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、物品のアルマイト皮膜上に形成した塗装皮膜の一部を所望の形状に除去することにより前記アルマイト皮膜を露出させて所望形状の装飾部を形成する物品の装飾加工方法であって、
前記アルマイト皮膜上に形成した前記塗装皮膜に対しレーザー光を照射することにより当該塗装皮膜の表面側を部分的に除去し、当該塗装皮膜の残部を溶融状態で前記アルマイト皮膜上に残すレーザー彫刻工程と、前記レーザー彫刻工程により前記アルマイト皮膜上に残した前記塗装皮膜の溶融状態の残部をスポンジで拭き取りながら前記アルマイト皮膜の露出面を磨く拭取り工程と、から成ることを特徴としている。
【0007】
また、本発明は、前記拭取り工程において、アルコールを含ませたメラミンスポンジで拭き取ることを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、前記物品がボールペンの軸筒であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る物品の装飾加工方法によれば、レーザー彫刻工程において塗装皮膜の一部をアルマイト皮膜上に残すようにしているので、レーザー光の照射条件等が多少変動しても、レーザー光の照射によってアルマイト皮膜までもが除去されてしまうおそれもなく、一定の装飾効果を有する装飾部を安定に形成することができる。
【0010】
また、レーザー彫刻工程において塗装皮膜の一部を溶融状態でアルマイト皮膜上に残し、次の拭取り工程においてアルマイト皮膜上に残した塗装皮膜の残部を溶融状態のまま、スポンジで拭き取るようにしているので、塗装皮膜の残部のみを、確実かつ効率的に除去することができ、容易にアルマイト皮膜を露出させて装飾部を形成することができる。
【0011】
さらに、本実施形態の物品の装飾加工方法によれば、拭取り工程においてスポンジで塗装皮膜の残部を除去すると同時に、露出させたアルマイト皮膜を磨くことができ、光沢感に優れた装飾部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の物品の装飾加工方法を実施する物品の模式断面図である。
図2】本実施形態の物品の装飾加工方法におけるレーザー彫刻工程を説明する模式断面図である。
図3】本実施形態の物品の装飾加工方法における拭取り工程を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図3に示すように、本実施形態の物品の装飾加工方法は、物品1のアルマイト皮膜2上に形成した塗装皮膜3の一部にレーザー光を照射するレーザー彫刻工程と、このレーザー彫刻工程によりアルマイト皮膜2上に残した塗装皮膜3の残部31をスポンジで拭き取る拭取り工程と、から構成されている。以下、図1図3を参照しながら、各工程について説明する。
【0014】
まず、図1に示すように、装飾加工すべき物品1を準備する。物品1は、少なくともその表面側がアルミニウム又はアルミニウム合金から成り、その表面側に公知の陽極酸化処理法によりアルマイト皮膜2が形成されている。このアルマイト皮膜2は染料により所望の色彩に着色されている。更にこのアルマイト皮膜2上には、公知のスプレー塗装法により塗装皮膜3が形成されている。本実施形態の物品1は、ボールペンの軸筒であり、この軸筒の外周面に厚み約20nmのアルマイト皮膜2が形成され、アルマイト皮膜2上に厚み約0.01mm以下のシリコン樹脂系の塗装皮膜3が形成されている。
【0015】
次に、この物品1に対しレーザー彫刻工程を実施する。即ち、物品1の塗装皮膜3の一部に対し、文字、図形、模様等の所望の形状でレーザー光を照射することにより、図2に示すように、塗装皮膜3の表面側を部分的に除去し、その塗装皮膜3の残部31を溶融させた状態でアルマイト皮膜2上に残す。
【0016】
そして、このレーザー彫刻工程を終えた直後に、物品1に対し拭取り工程を実施する。即ち、レーザー彫刻工程によりアルマイト皮膜2上に残した塗装皮膜3の残部31を溶融状態のまま、アルコールを含ませたメラミンスポンジで拭き取る。そして、図3に示すように、メラミンスポンジによる拭き取りと同時に、拭き取りにより露出したアルマイト皮膜2の露出面21を磨く。
【0017】
こうして、図3に示すように、物品1のアルマイト皮膜2上の塗装皮膜3だけを所望形状に除去することによりアルマイト皮膜2を露出させて物品1に所望形状の装飾部4を形成するのである。
【0018】
このように、本実施形態の物品の装飾加工方法によれば、レーザー彫刻工程において塗装皮膜3の全部を除去するのではなく、塗装皮膜3の一部をアルマイト皮膜2上に残すようにしているので、レーザー光の照射条件等が多少変動しても、レーザー光の照射によってアルマイト皮膜2までもが除去されてしまうおそれもなく、一定の装飾効果を有する装飾部4を安定に形成することができる。
【0019】
また、本実施形態の物品の装飾加工方法によれば、レーザー彫刻工程において塗装皮膜3の一部を溶融状態でアルマイト皮膜2上に残し、次の拭取り工程においてアルマイト皮膜2上に残した塗装皮膜3の残部31を溶融状態のまま、スポンジで拭き取るようにしているので、塗装皮膜3の残部31のみを、確実かつ効率的に除去することができ、容易にアルマイト皮膜2を露出させて装飾部4を形成することができる。
【0020】
さらに、本実施形態の物品の装飾加工方法によれば、拭取り工程においてスポンジで塗装皮膜3の残部31を除去すると同時に、露出させたアルマイト皮膜2を磨くことができ、光沢感に優れた装飾部4を形成することができる。
【0021】
しかも、本実施形態では、拭取り工程において、アルコールを含ませたメラミンスポンジを使用しているので、アルコールによりメラミンスポンジの繊維が粗面化し、塗装皮膜3の残部31をより効率的に除去することができるとともに、アルマイト皮膜2の露出面21に対する磨き効果も向上させることができ、より光沢感に優れた装飾部をより効率的に形成することができる。
【0022】
以上、本実施形態の物品の装飾加工方法について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0023】
例えば、上記実施形態では、物品1として、ボールペンの軸筒を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、アルマイト皮膜2を有する他の物品に実施することも可能である。また、上記実施形態では、物品1のアルマイト皮膜2上の塗装皮膜3がスプレー塗装法により形成されているが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、電着塗装、静電塗装、浸漬塗装等の他の方法により塗装皮膜3が形成されていてもよい。本発明の物品の装飾加工方法によれば、塗装皮膜3の厚みに多少のばらつきがあっても、一定の装飾効果を有する装飾部4を安定に形成することができる。
【0024】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施したりしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 物品
2 アルマイト皮膜
21(アルマイト皮膜の)露出面
3 塗装皮膜
31(塗装皮膜の)残部
4 装飾部
図1
図2
図3