(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】粉体接触部材および粉体接触部材の表面処理方法
(51)【国際特許分類】
B65D 88/26 20060101AFI20230628BHJP
B24C 3/32 20060101ALI20230628BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B65D88/26 C
B24C3/32 Z
B24C11/00 B
B24C11/00 C
B24C11/00 D
(21)【出願番号】P 2019040412
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000154129
【氏名又は名称】株式会社不二製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 恵二
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正三
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐介
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128101(JP,A)
【文献】特開2006-159402(JP,A)
【文献】特開2008-230665(JP,A)
【文献】特開2017-206006(JP,A)
【文献】国際公開第2014/074844(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/26
B24C 3/32
B24C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単粒子である粉体
及び層状になった粉体が接触する表面に表面処理が施された粉体接触部材であって,前記表面の山頂点の算術平均曲率Spc(1/mm)が150~400であり,前記表面の山の頂点密度Spd(個/mm
2)が10000~180000であり,前記表面の二乗平均平方根傾斜Sdqが0.05~0.30であり,前記表面の算術平均高さSa(μm)が0.02~3.00であることを特徴とする粉体接触部材。
【請求項2】
前記粉体接触部材が,鋼材から成ることを特徴とする請求項1記載の粉体接触部材。
【請求項3】
前記粉体接触部材が,セラミック材から成ることを特徴とする請求項1記載の粉体接触部材。
【請求項4】
前記表面処理が,ブラスト処理であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の粉体接触部材。
【請求項5】
前記表面処理が,手磨き,ラップ研磨,バフ研磨,CMP研磨,レーザー加工,エッチング,切削加工のいずれかであることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の粉体接触部材。
【請求項6】
粉体が接触する表面を備える粉体接触部材の表面処理方法であって,前記表面に表面処理を施すことにより,前記表面の山頂点の算術平均曲率Spc(1/mm)を150~400とし,前記表面の山の頂点密度Spd(個/mm
2)を10000~180000とし,前記表面の二乗平均平方根傾斜Sdqを0.05~0.30とし,前記表面の算術平均高さSa(μm)を0.02~3.00とすることを特徴とする粉体接触部材の表面処理方法。
【請求項7】
前記表面処理が,ブラスト処理であることを特徴とする請求項6記載の粉体接触部材の表面処理方法。
【請求項8】
前記ブラスト処理に使用される研磨材が,弾性材料内に砥粒を分散させて成る弾性研磨材,又は,弾性材料から成る核の表面に砥粒を付着させて成る弾性研磨材であることを特徴とする請求項7記載の粉体接触部材の表面処理方法。
【請求項9】
前記ブラスト処理に使用される研磨材が,金属系の研磨材,セラミック系の研磨材のいずれかであることを特徴とする請求項7記載の粉体接触部材の表面処理方法。
【請求項10】
前記ブラスト処理に使用される研磨材の粒度が#30~#20000であることを特徴とする請求項7~9いずれか1項記載の粉体接触部材の表面処理方法。
【請求項11】
前記ブラスト処理に使用される研磨材を噴射圧力0.01~0.5MPa,噴射距離50~150mmにおいて噴射することを特徴とする請求項7~10いずれか1項記載の粉体接触部材の表面処理方法。
【請求項12】
前記表面処理が,手磨き,ラップ研磨,バフ研磨,CMP研磨,レーザー加工,エッチング,切削加工のいずれかであることを特徴とする請求項6記載の粉体接触部材の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,粉体の供給,搬送,計量等の粉体を取り扱う装置や設備において,粉体が接触する部分に使用される粉体接触部材(例えば,ホッパーなど)であって,表面処理により粉体の付着が抑制され粉体流動性が向上した表面を有する粉体接触部材及び,粉体接触部材の表面処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常,粉体は,接触する部材の表面に付着しやすく,前記表面で堆積するため種々の問題が発生する。例えば,ホッパーに貯留されている粉体を所定量ずつ連続して供給する場合,ホッパーの表面に粉体が付着し堆積することで,粉体の流量が不安定となり,粉体を所定量ずつ連続して供給することができないという問題がある。
【0003】
そこで,上述の粉体の付着や堆積の課題を解決するための発明が,種々提案されている。
【0004】
例えば,特許文献1には,粉体が接触する鋼材表面に所定の凹凸を設けることにより,鋼材表面から粉体が剥離・滑落する性能を高めて粉体の付着を防止する粉体取扱装置用鋼製部材に係る発明が開示されており,詳しくは,平均粒径又は平均外径が20μm以下の粒子又は粒子集合体で構成される粉体が表面に接触する鋼製部材であって,粉体が接触する表面には,凹凸ピッチが,粉体を構成する粒子又は粒子集合体の平均粒径又は平均外径よりも小さく,当該粒子又は粒子集合体が凸部に点接触状態となるように,凹凸ピッチが1μm以下の範囲で凹凸の高さとピッチの比が0.0005以上を呈する所定の凹凸が形成されている粉体取扱装置用鋼製部材が開示されている。
【0005】
また,特許文献2には,粒径の小さい粉体であっても付着が抑制される,粉体付着抑制部材に係る発明が開示されており,詳しくは,基材の少なくとも一方の表面に,樹脂組成物の硬化物からなる複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微小突起構造体を有し,隣接する前記微小突起間の距離の平均が500nm以下であり,前記微小突起が,当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が,当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有する粉体付着抑制部材,さらには,前記微小突起構造体側の表面における純水の静的接触角が,θ/2法で60°以下である粉体付着抑制部材が記載されている。また,特許文献2には,扱う粉体の粒径について,0.1~30μmの粒径を有する粉体に好適に用いることができることが記載されている。
【0006】
また,特許文献3には,粉体と接触する面の強度を確保しつつ,粉体が付着することを抑制できる粉体付着抑制チタン部材に係る発明が開示されており,詳しくは,窒化物,炭化物および炭窒化物のいずれかで形成され,内部よりも硬度が高く,粉体と接触する凹凸面を有する表層部を備え,前記凹凸面の算術平均粗さRaが0.4μm以上,2.0μm以下であり,前記表層部のビッカース硬度が400以上であることを特徴とする粉体付着抑制チタン部材が記載されている。また,特許文献3には,扱う粉体について,実施例にて,メジアン径1.5μmの銀粒子,メジアン径2.5μmのニッケル粒子,メジアン径23μmの粉体塗料,メジアン径8μmのアルミナが挙げられている。
【0007】
特許文献4には,粉体と接触する面の強度を確保しつつ,粉体が付着することを抑制できる粉体付着抑制部材に係る発明が開示されており,詳しくは,主成分がニッケル(さらに,リン,ホウ素,タングステン,モリブテン及びコバルトのうちの少なくとも1つを含んでも良い)であり,粉体と接触する凹凸面を有する皮膜を有し,前記凹凸面の算術平均粗さRaが0.2μm以上,1.6μm以下であり,前記皮膜のビッカース硬度が400以上である粉体付着抑制部材が記載されている。なお,特許文献4には,前記皮膜が,耐摩耗性を示す無機微粒子や潤滑性を示す微粒子を含んでも良いことが記載されており,また,扱う粉体について,実施例にて,メジアン径1.5μmの銀粒子,メジアン径22.3μmの銅粒子,メジアン径0.3μmのPTFE粒子,メジアン径8μmのアルミナ粒子が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4064438号公報
【文献】特開2015-189030号公報
【文献】特開2017-119902号公報
【文献】特開2017-128101号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Kotaro Iida他「Measurement of the Adhesive Force between Particles and a Substrate by Means of the Impact Separation Method. Effect of the Surface Roughness and Type of Material of the Substrate」Chem. Pharm. Bull. 41 (9) 1621-1625 (1993) https://www.jstage.jst.go.jp/article/cpb1958/41/9/41_9_1621/_pdf/-char/en
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら,上述の各特許文献に記載の発明には,以下に述べる問題があった。
【0011】
まず,特許文献1に記載の発明は,20μmより大きい粉体には適用できない問題が有る。例えば,食用の小麦粉は30~40μm程度である。
【0012】
また,特許文献2に記載の発明は,扱う粒子の対象として無機系の粒子には適用できない問題があった。
【0013】
特許文献3に記載の発明は,チタン製には適用できるが,粉体取扱装置に多くみられるSUS(ステンレス鋼)製には適用できない問題あった。
【0014】
特許文献4に記載の発明は,前記皮膜が剥がれて異物となる恐れがあるという問題があった。
【0015】
さらに,特許文献1~4に記載の発明は,いずれも,粉体と接触する表面の形状が,該表面と直交する断面の凹凸の態様を示す2次元の指標(2次元の粗さパラメータ)を用いて特定されるものである。
【0016】
確かに,非特許文献1を例に挙げると,ある粗さをもった平面と単粒子の付着力は,算術平均粗さRa(2次元の粗さパラメータ)が大きくなると急激に減少すること,そして,前記Raは一定の数値からは大きくなるにつれて緩やかに減少していくことが報告されている。
【0017】
本発明においても粉体と接触する表面には一定以上の2次元粗さが必要であることから,上述の既存技術についても,粉体を単粒子とみなした場合,付着軽減効果があると言える。
【0018】
しかし,発明者の鋭意研究の結果,実際に粉体を取り扱う現場においては,粉体は単粒子でなく粒子が層状(粒子層)になった状態でホッパーやシューターなどを流れていくため,粒子層と接触表面(平面)という面の接触を考慮しなければならないこと,そして,面の接触を考える場合,既存の論文,特許文献などで多く用いられる線粗さパラメータ(JISB0601)のような2次元の指標(2次元の粗さパラメータ)では十分ではないことが判明した。
【0019】
本発明は,以上説明した問題点に鑑み,粉体が接触する表面(テクスチャ)の3次元の粗さパラメータに着目し,後述する鋭意検討・研究の結果なされたものであって,表面に接触する粉体が単粒子のみでなく,層状(粒子層)であっても粉体の付着が抑制され高い流動性を有する粉体処理部材及び粉体処理部材の表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために,本発明の粉体接触部材は,単粒子である粉体及び層状になった粉体が接触する表面に表面処理が施された粉体接触部材であって,前記表面の山頂点の算術平均曲率Spc(1/mm)が150~400であり,前記表面の山の頂点密度Spd(個/mm2)が10000~180000であり,前記表面の二乗平均平方根傾斜Sdqが0.05~0.30であり,前記表面の算術平均高さSa(μm)が0.02~3.00であることを特徴とする(請求項1)。
【0021】
なお,前記粉体接触部材は,鋼材から成るものでも良く(請求項2),また,前記粉体接触部材は,セラミック材から成るものでも良い(請求項3)。
【0022】
また,前記表面処理がブラスト処理であることが好適である(請求項4)が,前記表面処理が,手磨き,ラップ研磨,バフ研磨,CMP研磨,レーザー加工,エッチング,切削加工のいずれかであっても良い(請求項5)。
【0023】
また,本発明の粉体接触部材の表面処理方法は,粉体が接触する表面を備える粉体接触部材の表面処理方法であって,前記表面に表面処理を施すことにより,前記表面の山頂点の算術平均曲率Spc(1/mm)を150~400とし,前記表面の山の頂点密度Spd(個/mm2)を10000~180000とし,前記表面の二乗平均平方根傾斜Sdqを0.05~0.30とし,前記表面の算術平均高さSa(μm)を0.02~3.00とすることを特徴とする(請求項6)
【0024】
前記表面処理がブラスト処理であることが好適である(請求項7)。
【0025】
前記ブラスト処理に使用される研磨材が,弾性材料内に砥粒を分散させて成る弾性研磨材,又は,弾性材料から成る核の表面に砥粒を付着させて成る弾性研磨材であることが好適である(請求項8)。
【0026】
また,上述の弾性研磨材の他,前記ブラスト処理に使用される研磨材が,金属系の研磨材,セラミック系の研磨材であっても良い(請求項9)
【0027】
また,上述の研磨材の粒度が#30~#20000であることが好ましい(請求項10)。
【0028】
また,前記研磨材を噴射圧力0.01~0.5MPa,噴射距離50~150mmにおいて噴射することが好ましい(請求項11)。
【0029】
また,前記ブラスト処理の他,前記表面処理が,手磨き,ラップ研磨,バフ研磨,CMP研磨,レーザー加工,エッチング,切削加工のいずれかであっても良い(請求項12)。
【発明の効果】
【0030】
上述した本発明の粉体接触部材は,所定の3次元の粗さパラメータを有する表面(テクスチャ)を備えることで,表面上の粉体が単粒子である場合はもちろん,粒子層(層状)である場合でも付着を効果的に抑制し,表面上での流動性が向上し,さらに,適用できる粉体の粒度の範囲が広いという利点を有する。
【0031】
また,本発明で規定する3次元の粗さパラメータを有する表面(テクスチャ)を形成するための表面処理は,既知の手法で行うことができるので,簡便でかつ短時間での処理が可能である。
【0032】
また,本発明は,粉体接触部材がいかなる材質又は形状であっても適用でき,しかも,既存の製品(粉体接触部材)であっても適用(本発明で規定する3次元の粗さパラメータを有する表面を表面処理により形成すれば良い。)できる利点を有する。
【0033】
また,本発明によれば,表面に皮膜を形成する必要が無い,つまり,異物の混入の恐れを招くような物質を新たに形成する必要がないという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下,本発明の実施形態について説明する。
【0035】
本発明は,粉体に接触する粉体接触部材の表面を表面処理することで後述する所定の3次元粗さパラメータを有する表面(テクスチャ)を形成し,粉体の付着を抑制するものである。
【0036】
本発明の粉体接触部材は,粉体の供給,搬送,計量等の粉体を取り扱う装置や設備において粉体が接触する部分に使用されるもの(例えばホッパーやシュート等)であれば特に限定されるものではない。また,前記粉体接触部材は,例えば,金属やセラミックで形成されていても良い。
【0037】
前記金属としては,例えば,ステンレス,チタン合金,アルミニウム合金,ニッケル基合金や,各種鉄合金等が挙げられ,前記セラミックスとしては,ジルコニア,アルミナ,炭化ケイ素,石英,ガラス等が挙げられる。
【0038】
また,前述の通り,粉体接触部材について粉体の付着抑制の効果を上げるために,本発明者らは,粉体が接触する表面の3次元の粗さパラメータに着目し,鋭意検討した。その結果得られた知見について,まず,粉体接触部材の表面(テクスチャ)は,粒子層(層状)である粉体に対して接触点の数が少なくなること及び,粒子層と表面間には空気層が介在できる空間を備えることで粒子層の流れを向上させることが判明した。
【0039】
ただし,粒子層と平面が接触する点の曲率は鋭利であるとその先端に粒子層が引っかかりやすくなるため,一定の丸み(曲率)が必要であること,また,前記表面(テクスチャ)の山の傾斜が急峻では摩擦抵抗が大きくなりやすいため,傾斜が一定の緩やかさを持っている必要があること,しかし,緩やか過ぎると粒子層と表面(テクスチャ面)間に空気層が介在できなくなるため,傾斜は一定の範囲内にある必要があることが判明した。
【0040】
そして,上述の知見を基に鋭意研究の結果,粉体が接触する表面(テクスチャ)が所定の3次元の粗さパラメータを有するものであること,すなわち,表面の,山頂点の算術平均曲率Spcが150~400であり,山の頂点密度Spdが10000~180000であり,二乗平均平方根傾斜Sdqが0.05~0.30であり,算術平均高さSaが0.02~3.00であることが,粉体付着抑制の観点から望ましいことを見出した。
【0041】
なお,前記山頂点の算術平均曲率Spc(単位:1/mm)とは,表面の山頂点の主曲率の平均を表すパラメータ(つまりは,対象表面の微視的な凸凹の状態を山頂点の曲率の平均値として評価したもの)であり,ISO25178に規定されている。
【0042】
前記山の頂点密度Spdとは,単位面積当たりの山頂点の数を表すパラメータであり,ISO25178に規定されている。通常,Spd(単位:個/mm2)の値が大きいと他の物体との接触点の数が多いことを示唆する。
【0043】
前記二乗平均平方根傾斜Sdqとは,定義領域の全ての点における傾斜の二乗平均平方根により算出されるパラメータ(つまり,粗さ曲線上の二乗平均平方根傾斜Rdqを面に拡張したパラメータに相当する。)であり,ISO25178に規定されている。
【0044】
前記算術平均高さSa(単位:μm)とは,表面の平均面に対して,各点の高さの差の絶対値の平均を表すパラメータ(つまり,粗さ曲線の算術平均高さRaを面に拡張したパラメータに相当する。)であり,ISO25178に規定されている。
【0045】
上記単位は,本明細書において,記載される3次元粗さのパラメータの単位においても同様である。
【0046】
次に,上述した本発明の表面(テクスチャ)を形成するための表面処理の方法を以下に述べる。なお,本発明では,種々の表面処理法を採用できる。
【0047】
まず,本発明に用いられる表面処理の一例として,ブラスト加工法がある。
【0048】
前記ブラスト加工法では,以下に述べる研磨材のうち1つ以上を使用して,上述した本発明の所定の3次元の粗さパラメータを有する表面(テクスチャ)を形成する。
【0049】
ブラストに用いられる研磨材は,種々のものが使用可能であり,例えば,金属系の研磨材,セラミック系の研磨材,弾性研磨材等が好適である。
【0050】
具体的に,前記金属系の研磨材については,材質として,例えば,スチール,ハイス鋼,ステンレス,鉄クロムボロン等が挙げられ,前記セラミック系の研磨材については,材質として,例えば,アルミナ,ジルコニア,ジルコン,炭化ケイ素,ガラスなどが挙げられる。
【0051】
また,前記弾性研磨材は,ゴムやエラストマー等の弾性体(母材)に砥粒を分散させた弾性研磨材(株式会社不二製作所製「シリウス」)や,前記弾性体の表面に砥粒を担持させた弾性研磨材(株式会社不二製作所製「シリウスZ」)である。なお,前記弾性体の表面に砥粒を担持させた弾性研磨材については,自己粘着性を有する前記弾性体の表面に砥粒を付着し定着させた弾性研磨材や,前記弾性体の表面に粘着剤を塗布する等した後に砥粒を付着し定着させた弾性研磨材であっても良い。
【0052】
また,上述の弾性体(母材)に砥粒を分散させた弾性研磨材として,例えば,弾性体である母材90~10wt%に対して砥粒10~90wt%を配合分散してなる弾性研磨材や,前記母材に対して前記砥粒を70wt%以上配合してなる弾性研磨材,さらに,これら弾性研磨材に染料,顔料等の着色材又はこれらに加え,蛍光着色剤及び又は芳香剤,抗菌剤を添加配合してなる弾性研磨材を使用しても良い。
【0053】
また,上述の前記弾性体の表面に砥粒を担持させた弾性研磨材として,例えば,ゴム硬度30以下で,自己粘着性を有する架橋ポリロタキサン化合物から造粒された所定の粒子径を有する核体と,前記核体の表面に形成した砥粒層を備え,該砥粒層は,前記架橋ポリロタキサン化合物によって厚み方向に複数接着された平均粒子径0.1μm~12μmの砥粒から成る組積構造を有する弾性研磨材,前記核体の圧縮永久歪が5%以下,1Hz~100kHzの振動吸収特性(tanδ)が0.3以上である弾性研磨材をはじめ,前記砥粒層の厚さが,弾性研磨材の短径の1/4未満である弾性研磨材,前記核体のゴム硬度が10以下である弾性研磨材,前記核体の圧縮永久歪が1%以下である弾性研磨材,前記架橋ポリロタキサン化合物がポリカーボネートジオール及びアクリル酸エステル共重合体の中から選択される一の化合物とポリロタキサンとを架橋してなる弾性研磨材,前記架橋ポリロタキサン化合物がイソシアネート化合物からなる架橋剤で架橋してなる弾性研磨材,前記ポリロタキサンがα-シクロデキストリン分子の開口部に,ポリエチレングリコールを貫通し,該ポリエチレングリコールの両端にアダマンタン基を結合してなる弾性研磨材,前記α-シクロデキストリン分子の水酸基の一部をポリカプロラクトン基で置換した弾性研磨材,前記架橋ポリロタキサン化合物にシランカップリング剤を配合した弾性研磨材を使用しても良い。
【0054】
上述した研磨材の形状については,特に限定されず,例えば,球状あるいは不定形のものが使用でき,また,上記研磨材のサイズについては,#30~#20000の範囲に入るものが好適に使用される。
【0055】
また,本発明の表面処理として用いられるブラスト加工法には圧縮気体式のサンドブラスト装置を用いるのが好適である。
【0056】
前記圧縮気体式のサンドブラスト装置は,研磨材(メディア)をノズルより圧縮気体(空気,アルゴン,窒素など)のエネルギーを利用して被処理物に向けて噴射し,加工することで行うものである。
【0057】
圧縮気体式のサンドブラスト装置としては,例えば,圧縮気体噴射により生じた負圧により研磨材を吸引して圧縮空気と共に噴射するサクション式ブラスト装置(例:株式会社不二製作所製 SFK-2),タンクから落下した研磨材を圧縮空気に乗せて噴射する重力式ブラスト装置(例:株式会社不二製作所製 SGF-4),研磨材の投入されたタンク内に圧縮気体を供給し,別途与えられた圧縮空気の空気流にタンク内の圧縮気体から搬送された研磨材を乗せてブラストガンより噴射する直圧式ブラスト装置(例:株式会社不二製作所製 FDQ-2)や,上記直圧式の圧縮気体をブロアーユニットで発生させて噴射するブロアー式ブラスト装置(例:株式会社不二製作所製 LDQ-2)等が挙げられる。
【0058】
また,上述のブラスト処理装置を使用した場合のブラスト噴射条件は,一例として噴射圧力は0.04MPa~0.6MPaとし,噴射距離は50~150mmとすることが好ましい。
【0059】
また,本発明の表面処理は,上述のブラスト処理以外の他の表面処理方法を採用してもよく,例えば,各種研磨(手磨き,ラップ研磨,バフ研磨,CMP研磨等),レーザー加工,エッチング,切削加工等を用いて,本発明で規定する3次元の粗さパラメータを有する表面形状(テクスチャ)を形成しても良い。
【実施例】
【0060】
実際に,粉体が接触する表面に表面処理を行って,本発明で規定する3次元の粗さパラメータを有する表面を形成し,該表面の粉体付着抑制の効果について確認試験を行った結果を以下に示す。
【0061】
試験方法は,試験対象の各ワーク(実施例1~4)に表面処理を行い,本発明の所定の3次元粗さパラメータを有する表面を形成した後,該表面に対する粉体の付着抑制の効果を観察した。
【0062】
なお,表面処理後の表面の粗さを測定する方法について,本実施例おいては,形状解析レーザー顕微鏡(キーエンス社製 VK-X250)を用いて測定倍率1000倍で測定を行った。そして,測定したデータをレーザー顕微鏡付属の解析ソフト「マルチファイル解析アプリケーションVK-H1XM」を使用して粗さ解析を行った。前記,解析については,まず,「画像処理」機能を使用して基準面設定(該基準面設定とは,高さデータから最小二乗法で基準面,高さがゼロになる面を作るものである。)を行い,次に面粗さモードで3次元粗さパラメータを算出した。
【0063】
ワーク毎に,ワークに施した表面処理の内容,表面の粗さパラメータ,粉体付着が抑制されているか確認するための粉体の種類,観察結果(効果)を以下の表1~4にまとめた。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
上記表1~表4に示すように,表面処理により本発明の所定の3次元粗さパラメータを有する表面が形成されたワーク(粉体接触部材)は,粉体付着抑制の効果が確認された。