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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20230628BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20230628BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20230628BHJP
   G02B 3/06 20060101ALI20230628BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20230628BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20230628BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20230628BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B23K26/064 K
H01S5/022
G02B3/00 A
G02B3/06
G02B13/00
G02B6/42
H01S5/40
G02B6/32
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019097859
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2019206031
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018101926
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 良夫
(72)【発明者】
【氏名】十倉 好紀
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-119101(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122865(WO,A1)
【文献】特表2014-509263(JP,A)
【文献】特開2012-243900(JP,A)
【文献】特開2006-218544(JP,A)
【文献】特表2016-520989(JP,A)
【文献】特開2009-099987(JP,A)
【文献】特開2000-033489(JP,A)
【文献】特開2015-199117(JP,A)
【文献】米国特許第05617492(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01S 5/022
G02B 3/00
G02B 3/06
G02B 13/00
G02B 6/42
H01S 5/40
G02B 6/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のレーザ光を照射する半導体レーザ装置と、
前記複数本のレーザ光を、L本の集光ビームに集光する光学変換部と、
前記L本の集光ビームを受光するL本の光ファイバと、
を備え、
前記半導体レーザ装置は、N個の半導体レーザバーを有し、
前記N個の半導体レーザバーのそれぞれは、前記複数本のレーザ光を放射する複数個のエミッタを有し、
Lは2以上の整数であり、Nは1以上の整数であり、
前記光学変換部は、
前記複数本のレーザ光の第1方向の成分および前記第1方向と異なる第2方向の成分を、前記レーザ光の進行方向と平行な平行光に変換する第1光学系と、
平行光に変換した前記複数本のレーザ光を、前記L本の集光ビームに集光する第2光学系と
を備え、
前記光ファイバが、開口数NA=sin(Θ)および半径CRを有する光ファイバコアを有し、
前記第2光学系は、1本の前記集光ビームあたりk個のエミッタから放射するk本の前記レーザ光を前記光ファイバコアに集光し、
前記第2光学系の前記第1方向の焦点距離F x2 は、
前記複数個のエミッタからの前記第1方向への発散角度Θ 、エミッタ幅W 、ピッチP、前記第1方向の焦点距離をE x1 とし、
前記レーザ光の前記第1方向の幅ΣB を、
=(E x1 ・sin(Θ /2))・2+W
ΣB =P・(k-1)+(E x1 ・sin(Θ /2))・2+W
として、
x2 ≧ΣB /(2・sin(Θ))
であり、
前記第2光学系の位置は前記光ファイバコアの入射面からの距離がC である場合、
2・F x2 ≧C ≧(1-2・CR/ΣB )・F x2
を満たす
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1光学系は、マイクロレンズを有し、
前記マイクロレンズは、
前記複数個のエミッタからの前記第1方向への発散角度Θ、エミッタ幅W、ピッチP、前記第1方向の焦点距離をEx1とすると、
(Ex1・sin(Θ/2))・2+W≦P
を満たす複数のレンズを含み、
前記複数のレンズは、前記複数個のエミッタに対応して、前記第1方向に配列されている
請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記光ファイバが、開口数NA=sin(Θ)および半径CRの光ファイバコアを有し、
前記半導体レーザバーの前記第1方向に配列されたエミッタから放射するk個のレーザ光を前記光ファイバに集光し、
前記第2光学系の前記第2方向の焦点距離Fy2は、
前記集光ビームの前記第2方向の幅B
=Ey1(2・sin(Θ/2))
として、
y2≧B/(2・sin(Θ))
を満たし、
前記第2光学系の位置は、前記光ファイバコアの入射面からの距離がCである場合、
2・Fy2≧C≧(1-2・CR/B)・Fy2
である
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記半導体レーザ装置は、
前記第1方向に個のエミッタを配列した前記半導体レーザバーを、前記第2方向にN個配列した1台の半導体レーザ装置で構成され、
1本の前記集光ビームに用いるエミッタ数をk個とした場合、
K×N≧k×L(K,k,Nは1以上の整数)
を満たす
請求項からのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記複数個のエミッタは、予め定められた第1方向に配列され、
前記N個の半導体レーザバーは、前記第1方向と異なる第2方向に積層され、
前記半導体レーザ装置は、前記第1方向および前記第2方向と異なる第3方向に前記レーザ光を放射する
請求項からのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第1光学系は、シリンドリカルレンズを有し、
前記シリンドリカルレンズは、
前記複数個のエミッタから照射される前記レーザ光の前記第2方向への発散角度Θ、前記エミッタの幅W、前記N個の半導体レーザバーのピッチをS、前記シリンドリカルレンズの前記第2方向の焦点距離をEy1とすると、
(Ey1・sin(Θ/2))・2+W≦S
を満たす
請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記第2光学系は、N個積層した前記半導体レーザバーのうち、n層の前記半導体レーザバーからの前記レーザ光を集光した前記集光ビームを、1本の前記光ファイバに入射する
請求項からのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記光ファイバが、開口数NA=sin(Θ)および半径CRを有する光ファイバコアを有し、
前記第2光学系は、前記N個に積層された半導体レーザバーのうちn層の半導体レーザバーが出射する前記半導体レーザバーを分岐し、前記光ファイバコアに集光するシリンドリカルレンズを有し、
前記シリンドリカルレンズの前記第2方向の焦点距離Fy2は、
前記集光ビームの前記第2方向のビーム幅ΣBを、
=(Ey1・sin(Θ/2))・2+W
ΣB=S・(n-1)+B
として、
y2≧ΣB/(2・sin(Θ))
を満たし、
前記シリンドリカルレンズの位置は、前記光ファイバコアの入射面からの距離がCである場合、
2・Fy2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fy2
である
請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記光ファイバが、開口数NA=sin(Θ)および半径CRを有する光ファイバコアを有し、
前記第2光学系は、1本の前記集光ビームあたりk個のエミッタから放射するk本の前記レーザ光を、前記集光ビームとして前記光ファイバコアに集光し、前記第2光学系が凸レンズを有し、
前記凸レンズの前記第1方向の焦点距離Fx2は、
前記複数個のエミッタからの前記第1方向への発散角度Θ、エミッタ幅W、ピッチP、エミッタ総数K、前記第1方向の焦点距離をEx1とし、
前記レーザ光の前記第1方向の幅ΣBを、
=(Ex1・sin(Θ/2))・2+W
ΣB=P・(K-1)+(Ex1・sin(Θ/2))・2+W
として、
x2≧ΣB/(2・sin(Θ))
を満たし、
前記凸レンズは、前記N個に積層された半導体レーザバーのうちn層の半導体レーザバーが出射する前記レーザ光を分岐し、前記光ファイバコアに集光し、
前記第2方向の焦点距離Fy2は、前記集光ビームの前記第2方向のビーム幅ΣBを、
=(Ey1・sin(Θ/2))・2+W
ΣB=S・(n-1)+B
として、
y2≧ΣB/(2・sin(Θ))
を満たし、
x2≧Fy2の場合、
前記凸レンズの位置は前記光ファイバコアの入射面からの距離をCとすると、
2・Fx2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fx2
を満たし、
x2<Fy2の場合、
2・Fy2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fy2
を満たす
請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記光ファイバの光ファイバコア、光ファイバクラッドおよび外装を含む直径をFmaxとしたとき、
前記集光ビームの幅をBとし、前記第2光学系の前記第2方向の焦点距離をFy2とし、前記N個の半導体レーザバーのピッチをSとして、
前記光ファイバの最小間隔CDは、
CD=Fy2・(2・sin(Θ)+S・(n-1))
y2=ΣB/(2・sin(Θ))
が、
CD≧Fmax
である場合に
前記第2光学系は、N個積層した前記半導体レーザバーのうち、n層の前記半導体レーザバーからの前記レーザ光を集光した前記光ファイバコア、前記光ファイバクラッドおよび前記外装からなる1本の前記光ファイバに入射する
請求項からのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記光ファイバは、前記集光ビームの入射側において、
L個の光ファイバコアと、
前記L個の光ファイバコアを共通して覆う光ファイバクラッドと、
を備える
請求項1から10のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記光ファイバは、前記集光ビームの放射側において、
L個の独立した光ファイバコアと、
前記光ファイバコアを覆う独立したL個の光ファイバクラッドと
を有する
請求項1から11のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記光ファイバは、入射側において、断面が長円形の光ファイバコアを有する
請求項1から12のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記光ファイバは、入射側において、断面が多角形の光ファイバコアを有する
請求項1から13のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記L本の光ファイバの放射面から出たL本の加熱ビームの照射強度分布を加工するL個の照射ヘッドを更に備える
請求項1から14のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項16】
前記照射ヘッドは、前記加熱ビームの進行方向と直交する2次元面の照射強度分布が、前記加熱ビームの前記2次元面の中心を最大強度とした釣鐘型の照射強度分布である加熱ビームを照射する
請求項15に記載のレーザ加工装置。
【請求項17】
前記照射ヘッドは、前記加熱ビームの進行方向と直交する2次元面の照射強度分布が、略均一であるトップハット型の照射強度分布である加熱ビームを照射する
請求項15に記載のレーザ加工装置。
【請求項18】
前記照射ヘッドは、前記加熱ビームの進行方向と直交する2次元面の照射強度分布が、一の方向においてトップハット型の照射強度分布であり、他の方向において釣鐘型の照射強度分布である加熱ビームを照射する
請求項15に記載のレーザ加工装置。
【請求項19】
前記L個の照射ヘッドは、前記加熱ビームによる照射領域を中心とした同一円周上に非等間隔で配置された2以上の照射ヘッドを含む
請求項15から18のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項20】
前記L個の照射ヘッドは、
前記加熱ビームを照射する第1照射ヘッドと、
前記第1照射ヘッドの前記加熱ビームによる照射領域を中心とした同一円周上以外の領域に配置した第2照射ヘッドと
を含む
請求項15から18のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項21】
前記半導体レーザ装置に冷却水を供給する単一の冷却部を備え、
前記半導体レーザ装置は、
前記単一の冷却部から前記冷却水を流入および流出する単一の第2入出力端子と
を有する
請求項1から20のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項22】
複数本のレーザ光を照射する半導体レーザ装置と、
前記複数本のレーザ光を、L本の集光ビームに集光する光学変換部と、
前記L本の集光ビームを受光するL本の光ファイバと、
前記半導体レーザ装置に冷却水を供給する単一の冷却部と、
を備え、
前記半導体レーザ装置は、
N個の半導体レーザバーと、
前記単一の冷却部から前記冷却水を流入および流出する単一の第2入出力端子と、
を有し、
前記N個の半導体レーザバーのそれぞれは、前記複数本のレーザ光を放射する複数個のエミッタを有し、
Lは2以上の整数であり、Nは1以上の整数である
レーザ加工装置。
【請求項23】
前記L本の集光ビームの強度を調整する調整部を備え、
前記調整部は、L本の時間的に連続な強度を有する集光ビームを非連続な強度を有する集光ビームに変換するポッケルセル素子を有する
請求項1から22のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項24】
前記調整部は、前記L本の集光ビームの強度を減衰するポッケルセル素子を有する
請求項23に記載のレーザ加工装置。
【請求項25】
前記L本の集光ビームの強度を調整する調整部と、
前記調整部の位置を制御することにより、前記L本の集光ビームの強度をそれぞれ調整する第1制御部と
を備える
請求項1から22のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項26】
複数本のレーザ光を照射する半導体レーザ装置と、
前記複数本のレーザ光を、L本の集光ビームに集光する光学変換部と、
前記L本の集光ビームを受光するL本の光ファイバと、
前記L本の集光ビームの強度を調整する調整部と、
前記調整部の位置を制御することにより、前記L本の集光ビームの強度をそれぞれ調整する第1制御部と、
を備え、
前記半導体レーザ装置は、N個の半導体レーザバーを有し、
前記N個の半導体レーザバーのそれぞれは、前記複数本のレーザ光を放射する複数個のエミッタを有し、
Lは2以上の整数であり、Nは1以上の整数である
レーザ加工装置。
【請求項27】
前記調整部は、
前記L本の集光ビームの強度を減衰するダンパを有する
請求項25又は26に記載のレーザ加工装置。
【請求項28】
前記L本の集光ビームの内、特定の集光ビームの強度を検知するセンサ部と、
前記特定の集光ビームを放射する前記半導体レーザ装置の供給電力を制御することにより、前記集光ビームの強度を調整する第2制御部と
を備える
請求項1から22のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、COガスレーザを使用したレーザ加工機用の加熱レーザ光が知られている(例えば、特許文献1)。COガスレーザを用いることにより、材料加工に必要な数Wから数KWクラスの高強度のレーザ光が安定して得られる。数Wクラスのレーザ強度は、樹脂や布の切断、異種材料の溶接に用いられる。一方、金属板やブロック加工、切断には数KWクラスの大出力強度のレーザ源が用いられる。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2011-29438号公報
[特許文献2] 特開2016-175813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、COガスレーザ光の発振波長は、10μmと長波長となる。COガスレーザ光用のレンズはZnSe材料に限定されおり、高圧プレスでの製作が必要で高価である。そのためにシリコン単結晶製の反射ミラーを用いるのが一般である。この結果、材料コストアップと加熱ビームの操作性が劣る。10μmと長波長領域で、透過率の高い材料が存在しない。このため、従来のレーザ加工装置では、光ファイバを使用できないので、加熱ビームの操作性が悪い。数KWクラスのCOレーザの場合は、共振器を構成するミラー間隔の光のパス長は数m必要となる。共振器ミラー間に設置したガス管の長さにより小型化が困難である。さらに、COガス冷却用循環器が必要などの付帯設備が必要となり大型になる。多数の穴を加工したい場合は、これらのレーザビームは1本の加熱ビームを反射方向にミラーを高速に反射させて加工する。よって、加工した穴形状の精度が大きく損なってしまう。
【0004】
なお、ファイバレーザを用いる方式では、ファイバレーザの発振波長が1μm程度であるので、石英製レンズや石英製ファイバを使用できる。しかしながら、ファイバレーザは高額である。
【0005】
一方、単結晶育成装置用に限定されているが、1台の半導体レーザ装置からのレーザ光をミラーにより分岐する方法が提案されている。しかし、レーザ加工装置に用いる分岐したレーザ光は高強度パワーのレーザ光を用いる。レーザ加工装置の分岐用にミラーを用いることができない。ミラー分岐の場合、ミラーを45度程度傾斜する条件下で、100%の反射率を確保する必要がある。その為、ミラーを構成する数層からなる多層積層薄膜の高精度の膜厚制御が必要である。製造上の膜厚バラツキ発生のために、反射率100%を確保することは困難である。この場合、レーザ光のエネルギー吸収によってミラーの温度が上昇する。その結果、ミラーの反射面の多層膜が破損する場合がある。また、破損に至らない場合でも、ミラー反射面の歪みが発生する。ミラー反射面の熱ゆがみは光ファイバの入射面での集光ビームスポットを移動させる。このような歪みはファイバ出力強度を変化させるだけでなく、ファイバ入射面の端部が溶解する原因となる。また45度の傾斜角度を維持するための支持台の振動や周辺温度変化にも敏感である。そのため、レーザ光をミラーにより分岐する方法は、レーザ加工装置用には適さない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、複数本のレーザ光を照射する半導体レーザ装置と、複数本のレーザ光を、L本の集光ビームに集光する光学変換部と、L本の集光ビームを受光するL本の光ファイバと、を備え、半導体レーザ装置は、N個の半導体レーザバーを有し、N個の半導体レーザバーのそれぞれは、複数本のレーザ光を放射する複数個のエミッタを有し、Lは2以上の整数であり、Nは1以上の整数であるレーザ加工装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1に係るレーザ加工装置100の概要の一例を示す。
図2】実施例2に係るレーザ加工装置100の概要の一例を示す。
図3】実施例1および実施例2に係るレーザ加工装置100の光学系を説明するための図である。
図4A】円形の光ファイバコア62を有する光ファイバ60の一例を示す。
図4B】多角形の光ファイバコア62を有する光ファイバ60の一例を示す。
図4C】3つの光ファイバコア62を有する光ファイバ60の一例を示す。
図5A】加熱ビーム104の照射強度分布の測定例を示す。
図5B】加熱ビーム104の照射強度分布の測定例を示す。
図5C】加熱ビーム104の照射強度分布の測定例を示す。
図5D】加熱ビーム104の照射強度分布の測定例を示す。
図6A】実施例3に係るレーザ加工装置100の構成の一例を示す。
図6B】実施例4に係るレーザ加工装置100の構成の一例を示す。
図7】実施例5に係るレーザ加工装置100の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
[実施例1]
図1は、実施例1に係るレーザ加工装置100の概要の一例を示す。レーザ加工装置100は、電源10と、半導体レーザ装置20と、調整部50と、制御部55と、光ファイバ60と、光学変換部70と、照射ヘッド80とを備える。
【0010】
電源10は、半導体レーザ装置20に電力を供給する。レーザ加工装置100は、半導体レーザ装置20に電力を供給する単一の電源10のみを有する。レーザ加工装置100は、単一の電源10のみを有するので、半導体レーザ装置20に電力を供給する電源を複数必要としない。
【0011】
冷却部15は、半導体レーザ装置20に冷却水を供給する。レーザ加工装置100は、半導体レーザ装置20を冷却する単一の冷却部15のみを有してよい。即ち、半導体レーザ装置20には、1つの入水口および1つの出水口が設けられる。例えば、冷却部15は、半導体レーザ装置20を冷却するためのチラーを有する。
【0012】
半導体レーザ装置20は、複数本のレーザ光21を放射する。一例において、半導体レーザ装置20は、複数のエミッタを有し、1個以上のN個の半導体レーザバーを備える。本例の半導体レーザ装置20は、入出力端子22および入出力端子24を1つずつ有する。
【0013】
入出力端子22は、電源10と半導体レーザ装置20とを接続するための端子である。一例において、入出力端子22は、入力端子および出力端子を各1個ずつ含んでよい。入出力端子22は、第1入出力端子の一例である。
【0014】
入出力端子24は、冷却部15と半導体レーザ装置20とを接続するための端子である。一例において、入出力端子24は、冷却水の入水口および出水口を各1個ずつ含んでよい。入出力端子24は、第2入出力端子の一例である。
【0015】
光学変換部70は、複数本のレーザ光21を、予め定められたL本の集光ビーム102に変換する。Lは、2以上の整数である。Lは、奇数であっても、偶数であってもよい。本例では、L=3の場合について説明するがこれに限られない。光学変換部70は、第1光学系30および第2光学系40を有する。
【0016】
第1光学系30は、レーザ光21を予め定められた方向に平行な光に変換する。一例において、第1光学系30は、レーザ光21を進行方向と平行な光に変換する。例えば、第1光学系30は、シリンドリカルレンズやマイクロレンズ等の任意のレンズを有する。
【0017】
第2光学系40は、進行方向と平行にされたレーザ光21をL個の集光ビーム102に変換する。第2光学系40は、L個の集光ビーム102を光ファイバ60に入射する。
【0018】
調整部50は、L個の集光ビーム102の強度を調整する。調整部50は、L個の集光ビーム102の強度を個別に調整してよい。例えば、調整部50は、集光ビーム102を吸収するL個のダンパを有する。
【0019】
制御部55は、調整部50を制御することにより、集光ビーム102を吸収する量を調整する。これにより、制御部55は、集光ビーム102の強度を調整する。例えば、制御部55は、調整部50が有するダンパの位置を調整する。制御部55は、L本の加熱ビーム104の強度を観察し、L本の集光ビーム102の強度をそれぞれ独立して制御してよい。制御部55は、第1制御部の一例である。
【0020】
制御部55は、調整部50を制御することにより、集光ビーム102をパルス光に変調する。例えば、制御部55は、調整部50が有するポッケルセル素子に電圧を与え、集光ビーム102の偏向方向を調整する。制御部55は、L本の集光ビーム102のパルス周波数をそれぞれ独立して制御してよい。一例において、制御部55は、調整部50を制御することにより、集光ビーム102のパルス周波数や透過強度を制御する。集光ビーム102のパルス周波数や透過強度は、集光ビーム102のパルス幅や時間間隔を調整することにより制御する。
【0021】
光ファイバ60は、集光ビーム102を受光して伝搬する。光ファイバ60は、入射側において光ファイバコア62を有する。L本の光ファイバ60には、L本の光ファイバコア62が対応して設けられてよい。照射ヘッド80は、加熱ビーム104の放射側においてL本の放射側ファイバ66を有する。
【0022】
光ファイバコア62は、集光ビーム102を受光する。光ファイバコア62は、L個設けられることにより、L本の集光ビーム102を受光する。本例の光ファイバコア62は、3個の光ファイバコア62a~光ファイバコア62cを含む。
【0023】
放射側ファイバ66は、光ファイバコア62が受光した集光ビーム102を予め定められた位置に導通して放射する。本例の放射側ファイバ66は、3つの放射側ファイバ66a~放射側ファイバ66cを含む。例えば、放射側ファイバ66a~放射側ファイバ66cは、集光ビーム102を照射ヘッド80に接続するべく配線される。
【0024】
照射ヘッド80は、光ファイバ60の放射側に設けられる。照射ヘッド80は、光ファイバ60から受光した集光ビーム102を、加熱ビーム104として放射する。照射ヘッド80は、加熱ビーム104の照射強度分布を加工する。本例の照射ヘッド80は、放射側ファイバ66a~放射側ファイバ66cに対応した3つの照射ヘッド80a~照射ヘッド80cを含む。制御部55は、コンピュータ制御等により、照射ヘッド80の位置と角度を制御してもよい。照射ヘッド80は、駆動系によって3次元空間を高精度かつ高速に移動してよい。
【0025】
加工材料110は、加熱ビーム104により加工される材料である。加工材料110の材料は、特に限定されない。半導体レーザ加工装置100は、加工材料110の材質に応じたワット数の加熱ビーム104を生成するように、半導体レーザ装置20の構造および光学系が設計されてよい。例えば、加工材料110は、加熱ビーム104により、複数の穴112が設けられる。本例のレーザ加工装置100は、加熱ビーム104の照射強度分布や形状を制御することにより、任意の形状の穴112を形成できる。また、加熱ビーム104の照射強度分布を最適に調整することにより、穴112の精度を向上することができる。
【0026】
なお、L個の照射ヘッド80の位置は、加工材料110の加工方法に応じて、適宜変更されてよい。L個の照射ヘッド80は、規則的に設けられてもよいし、不規則に設けられてもよい。
【0027】
L個の照射ヘッド80は、加工材料110の同一の領域を照射してもよいし、異なる領域を照射してもよい。L個の照射ヘッド80は、加熱ビーム104による照射領域を中心とした同一円周上において、非等間隔で配置された2以上の照射ヘッド80を含んでよい。L個の照射ヘッド80の加工材料110との距離は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。L個の照射ヘッド80は、加熱ビーム104を照射する第1照射ヘッドと、当該第1照射ヘッドの加熱ビーム104による照射領域を中心とした同一円周上以外の領域に配置した第2照射ヘッドとを含んでよい。
【0028】
L個の照射ヘッド80は、それぞれ異なる角度で加工材料110に加熱ビーム104を照射してよい。例えば、照射ヘッド80aが照射する加熱ビーム104aと加工材料110とのなす角度は垂直でもよいし、鋭角や鈍角でもよい。また、照射ヘッド80aと他の照射ヘッド80bおよび照射ヘッド80cとのなす角度は平行であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0029】
本例のレーザ加工装置100は、L本の加熱ビーム104の本数、強度および照射位置等を自在に変更することにより、多彩な用途に応用できる。例えば、レーザ加工装置100は、加工材料110の穴の形成、パターンの形成、加工材料110の溶融等の用途に用いられる。また、レーザ加工装置100は、多数のパターンを同時に形成できるので、加工効率に優れる。レーザ加工装置100は、所望の三次元立体構造を加工できる。加熱ビーム104は三次元方向から放射できる。
【0030】
[実施例2]
図2は、実施例2に係るレーザ加工装置100の概要の一例を示す。本例では、実施例1に係るレーザ加工装置100と相違する点について特に説明する。本例のレーザ加工装置100は、実施例1のレーザ加工装置100に、さらに、半導体レーザ装置120を追加した場合の概要を示す。レーザレーザ加工装置100は、実施例1の構成に、半導体レーザ装置120と、電源12と、第1光学系130と第2光学系140とからなる光学変換部170と、センサ部150と、制御部155と、光ファイバコア62dと、照射ヘッド80dとを備える。
【0031】
冷却部15は、半導体レーザ装置20および半導体レーザ装置120に冷却水を供給する。レーザ加工装置100は、半導体レーザ装置20および半導体レーザ装置120を冷却する単一の冷却部15のみを有してよい。例えば、冷却部15は、半導体レーザ装置20および半導体レーザ装置120を冷却するためのチラーを有する。
【0032】
半導体レーザ装置120は、複数本のレーザ光121を放射する。一例において、半導体レーザ装置120は、複数のエミッタを有し、N個の半導体レーザバーを備える。本例の半導体レーザ装置120は、入出力端子122および入出力端子124を1つずつ有する。
【0033】
入出力端子122は、電源12と半導体レーザ装置120とを接続するための端子である。本例の入出力端子122は、半導体レーザ装置120に1つ設けられている。
【0034】
入出力端子124は、冷却部15と半導体レーザ装置120とを接続するための端子である。一例において、入出力端子124は、冷却水の入水口および出水口を各1個ずつ含んでよい。冷却部15は、入出力端子24および入出力端子124と並列に接続してよい。本例の入出力端子124は、半導体レーザ装置120に1つ設けられている。
【0035】
光学変換部170は、複数本のレーザ光121を集光ビーム102dに変換する。本例の集光ビーム102dは、1本の光ファイバコア62dに入射されるが、複数の光ファイバコア62に入射されてもよい。
【0036】
第1光学系130は、レーザ光121を予め定められた方向に平行な光に変換する。第1光学系130は、第1光学系30と同様の構成を有してもよい。
【0037】
第2光学系140は、進行方向と平行にされたレーザ光121を集光ビーム102dに変換する。第2光学系140は、第2光学系40と同様の構成を有してもよい。
【0038】
センサ部150は、L本の集光ビーム102の内、特定の集光ビーム102の強度を検知する。本例のセンサ部150は、集光ビーム102dの強度を検知する。センサ部150は、ファイバ入射端面からの散乱光を測定する。測定子はpn接合による光強度検出装置であってよい。
【0039】
制御部155は、集光ビーム102dを放射する半導体レーザ装置120の供給電力を制御することにより、集光ビーム102dの強度を調整する。制御部155は、センサ部150からの電圧信号により、電源12の出力を制御するための制御電圧を出力する。これにより、集光ビーム102dの照射強度をダンパなしに、調整できる。制御部155は、第2制御部の一例である。
【0040】
光ファイバ60は、集光ビーム102を受光して伝搬する。光ファイバ60は、入射側において光ファイバコア62を有する。L本の光ファイバ60には、L本の光ファイバコア62が対応して設けられてよい。照射ヘッド80は、加熱ビーム104の放射側においてL本の放射側ファイバ66を有する。
【0041】
光ファイバコア62は、集光ビーム102を受光する。光ファイバコア62は、L個設けられることにより、L本の集光ビーム102を受光する。本例の光ファイバコア62は、4個の光ファイバコア62a~光ファイバコア62dを含む。
【0042】
放射側ファイバ66は、光ファイバコア62が受光した集光ビーム102を予め定められた位置に導通して放射する。本例の放射側ファイバ66は、4つの放射側ファイバ66a~放射側ファイバ66dを含む。例えば、放射側ファイバ66a~放射側ファイバ66dは、集光ビーム102を照射ヘッド80に接続するべく配線される。
【0043】
照射ヘッド80は、光ファイバ60の放射側に設けられる。照射ヘッド80は、光ファイバ60から受光した集光ビーム102を、加熱ビーム104として放射する。照射ヘッド80は、加熱ビーム104の照射強度分布を加工する。本例の照射ヘッド80は、放射側ファイバ66a~放射側ファイバ66dに対応した4つの照射ヘッド80a~照射ヘッド80dを含む。制御部55は、コンピュータ制御等により、照射ヘッド80の位置と角度を制御してもよい。照射ヘッド80は、駆動系によって3次元空間を高精度かつ高速に移動してよい。
【0044】
加工材料110は、加熱ビーム104により加工される材料である。加工材料110の材料は、特に限定されない。半導体レーザ加工装置100は、加工材料110の材質に応じたワット数の加熱ビーム104を生成するように、半導体レーザ装置20および120の構造および光学系が設計されてよい。例えば、加工材料110は、加熱ビーム104により、複数の穴112が設けられる。本例のレーザ加工装置100は、加熱ビーム104の照射強度分布や形状を制御することにより、任意の形状の穴112を形成できる。また、加熱ビーム104の照射強度分布を最適に調整することにより、穴112の精度を向上することができる。
【0045】
なお、L個の照射ヘッド80の位置は、加工材料110の加工方法に応じて、適宜変更されてよい。L個の照射ヘッド80は、規則的に設けられてもよいし、不規則に設けられてもよい。
【0046】
L個の照射ヘッド80は、加工材料110の同一の領域を照射してもよいし、異なる領域を照射してもよい。L個の照射ヘッド80は、加熱ビーム104による照射領域を中心とした同一円周上において、非等間隔で配置された2以上の照射ヘッド80を含んでよい。L個の照射ヘッド80の加工材料110との距離は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。L個の照射ヘッド80は、加熱ビーム104を照射する第1照射ヘッドと、当該第1照射ヘッドの加熱ビーム104による照射領域を中心とした同一円周上以外の領域に配置した第2照射ヘッドとを含んでよい。
【0047】
L個の照射ヘッド80は、それぞれ異なる角度で加工材料110に加熱ビーム104を照射してよい。例えば、照射ヘッド80aが照射する加熱ビーム104aと加工材料110とのなす角度は垂直でもよいし、鋭角や鈍角でもよい。また、照射ヘッド80aと他の照射ヘッド80bおよび照射ヘッド80cとのなす角度は平行であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0048】
本例のレーザ加工装置100は、L本の加熱ビーム104の本数、強度および照射位置等を自在に変更することにより、多彩な用途に応用できる。例えば、レーザ加工装置100は、加工材料110の穴の形成、パターンの形成、加工材料110の溶融等の用途に用いられる。また、レーザ加工装置100は、多数のパターンを同時に形成できるので、加工効率に優れる。レーザ加工装置100は、所望の三次元立体構造を加工できる。加熱ビーム104は三次元方向から放射できる。
【0049】
実施例2に係るレーザ加工装置100は、複数の半導体レーザ装置の使用も可能にすることに特徴がある。本例のレーザ加工装置100は、1台の半導体レーザ装置から分割して多数本のレーザ分割する場合、分岐したレーザ強度の一部が小さい強度になってしまう場合に有効である。分岐することによるレーザ強度の低下を防止できる。このような場合でも、半導体レーザ装置を冷却水の供給システムは1台ですみ、半導体レーザ直近での温度を制御できるので、半導体出力を安定させることができる。
【0050】
図3は、実施例1および実施例2に係るレーザ加工装置100の光学系を説明するための図である。レーザ加工装置100は、半導体レーザバー26と、シリンドリカルレンズ32と、マイクロレンズ34と、マイクロレンズ42と、ダンパ52と、光ファイバ60とを備える。
【0051】
半導体レーザバー26は、総数K個のエミッタ28を有し、K本のレーザ光21を放射する。本例のK個のエミッタ28は、X軸方向に幅Wを有し、予め定められたピッチPでX軸方向に配列されている。1個のエミッタ28から照射されるレーザ光21の1本の強度が数Wである。例えば、1個のエミッタ28から照射されるレーザ光21の1本の強度が10Wの場合、12個のエミッタ28を有する半導体レーザバー26が放射するレーザ光21の強度が120Wとなる。エミッタ28の数は、必要とする強度に応じて決定されてよい。X軸方向は、第1方向の一例である。Y軸方向は、第2方向の一例である。
【0052】
ここで、半導体レーザバー26が放射するレーザ光21は、X軸方向およびY軸方向の成分を有する。例えば、半導体レーザバー26は、Y軸方向にΘ、X軸方向にΘの発散角度でレーザ光21を放射する。
【0053】
第1光学系30は、k本のレーザ光21を進行方向(例えば、Z軸)と平行な光に変換する。第1光学系30は、シリンドリカルレンズ32およびマイクロレンズ34を有する。本例の第1光学系30は、半導体レーザバー26から放射されたK本のレーザ光21を進行方向Z軸と平行となるように変換する。第1光学系30は、レーザ光21を進行方向(例えば、Z軸)に対して平行な平行光に変換することにより、レーザ光21の伝達強度ロスや光ファイバ60の損傷を防止することができる。
【0054】
シリンドリカルレンズ32は、Y軸方向の成分を進行方向と平行な方向に変換する。シリンドリカルレンズ32は、円柱状のレンズを含む。シリンドリカルレンズ32は、レーザ光21が入射する平坦な面と、レーザ光21が放射する円柱状の曲面とを有する。但し、シリンドリカルレンズ32の形状は本例に限られない。例えば、シリンドリカルレンズ32は、ファーストアキシスシリンドリカルレンズFACである。
【0055】
マイクロレンズ34は、発散角度Θで放射するレーザ光21を進行方向と平行な方向に変換する。マイクロレンズ34は、X軸方向に配列されたK個の凸レンズを有する。例えば、マイクロレンズ34は、スローアキシスレンズSACである。
【0056】
第1光学系30は、シリンドリカルレンズ32およびマイクロレンズ34を組み合わせることにより、レーザ光21を進行方向(例えば、Z軸)に対して平行な光に変換する。
【0057】
半導体レーザ装置20は、各エミッタ28からレーザ光21を進行方向(例えば、Z軸)に対して2次元楕円面形状に放射する。レーザ光21の発散角度はX軸方向にΘ,Y軸方向にΘである。実施例ではΘ=8°,Θ=30°である12個のエミッタを有する半導体レーザバー26を用いる。レーザ光21の発散角度にはバラツキも生じる。
【0058】
レーザ加工装置100は、放射角やそのバラツキのある複数の集光ビーム102を、光ファイバ60に入射させる。光ファイバコア62の入射面の直径内にレーザ光21を入射しなければならない。そして、レーザ光21を光ファイバコア62の許容入射角度Θ内で入射する。
【0059】
ここで、光ファイバ60への許容入射角度Θと、開口数NAとの間にはNA=sin(Θ)の関係が成り立つ。即ち、開口数NA=0.22の場合、許容入射角度Θが12.8度になり、最大許容入射角度が±12.8度になる。
【0060】
許容入射角度Θを超えて集光ビーム102が光ファイバ60に入射すると、光ファイバコア62と光ファイバコア62の周囲の材料である後述する光ファイバクラッド64との境界面で全反射することなく透過してしまい、光伝達強度が減衰する。さらには、透過した集光ビーム102の光エネルギーは発熱原因となり、光ファイバ60の石英を溶解し、破損する要因となる場合がある。
【0061】
光ファイバコア62の直径は0.6mm程度である。第2光学系40は、集光ビーム102を光ファイバコア62の直径内に厳密に集光する。そのため、集光ビーム102の径が大きい場合、光ファイバ60の溶解の原因となり得る。集光ビーム102の入射角度および集光径は、光ファイバ60の特性に応じた条件を満たす。特に、加熱ビーム104の強度が大きくなる場合に、第1光学系、第2光学系への要求が厳しくなる。
【0062】
第1光学系30を構成するマイクロレンズ34は、レーザ光21をL個の集光ビーム102に分岐するために、平行に変換したレーザ光21が互いに重ならないように設計する。エミッタ28の発散角度Θ、エミッタ28の幅W、エミッタ28のX軸方向におけるピッチPから、マイクロレンズ34の焦点距離が次の条件を満たすように設けられる。
【0063】
平行光に変換されたレーザ光21のX軸方向のビーム幅Bが、隣の平行光に変換されたレーザ光21と重ならないためには、次式を満たすように設計される。
[数1]
≦P
また、ビーム幅Bは、次式で示される。
[数2]
=(Ex1・sin(Θ/2))・2+W
x1は、マイクロレンズ34を構成する凸レンズの焦点距離である。マイクロレンズ34の焦点距離Ex1は、次式を満たす。
[数3]
(Ex1・sin(Θ/2))・2+W≦P
マイクロレンズ34の焦点距離Ex1が((P-W)/2)/(sin(Θ/2))より大きい場合はX軸方向のビーム幅Bが隣のエミッタ28からのレーザ光21と重なってしまう。
【0064】
第1光学系30を構成するシリンドリカルレンズ32は、マイクロレンズ34よりもエミッタ28放射面近くに設けられることが好ましい。レーザ光21のY軸方向の発散角度Θが、X軸方向の発散角度Θよりも大きいので、レーザ光21のY軸方向成分を先に進行方向(例えば、Z軸)と平行な成分に変換しておくことが好ましい。これにより、レーザ光21のY軸方向の幅Bの増加を抑制できる。
【0065】
シリンドリカルレンズ32の焦点距離Ey1は、シリンドリカルレンズの加工形状から可能な最小サイズで設計されることが好ましい。例えば、シリンドリカルレンズ32のY軸方向の焦点距離Ey1は0.6mmである。マイクロレンズ34の焦点距離Ex1は1.4mmであってよい。シリンドリカルレンズ32の厚みは0.8mmとなるので、シリンドリカルレンズ32のZ軸方向にマイクロレンズ34を設置するために、0.8mmより大きな焦点距離Ex1が必要である。
【0066】
本例の半導体レーザバー26では、X軸方向のエミッタ28の数が12個、X軸方向の幅Wが0.2mm、X軸方向のエミッタ28のピッチPが0.4mmであり、エミッタ28のY軸方向の長さWが0.01mmである。各エミッタから放射するレーザ光21は、2次元楕円面形状に発散する。本例の12個のエミッタから放射するレーザ光21の発散角度は、Θ=30°およびΘ=8°である。
【0067】
ビーム幅Bは、次式で算出される。
[数4]
=(Ex1・sin(Θ/2))・2+W=0.195+0.2=0.395mm
ビーム幅Bは、エミッタ28のピッチP=0.4mm以下となり(数3)式を満たす。
【0068】
以上、第1光学系30は、シリンドリカルレンズ32およびマイクロレンズ34の光学パラメータを適切に設定することにより、半導体レーザ装置20が照射するレーザ光21が互いに重ならないように、Z軸と平行な光に変換できる。この結果、第1光学系30は、レーザ光21をL個の集光ビーム102に分岐できる。
【0069】
次に平行になったレーザ光21をL個の集光ビーム102に分岐するための第2光学系40の設計指針を述べる。レーザ光21を集光ビーム102に分岐するための第1光学系30への必要条件はすでに述べたとおりである。光ファイバ60への許容入射角度Θと、開口数NAとの間にはNA=sin(Θ)の関係が成り立つことを先に述べた。即ち、開口数NA=0.22の場合、許容入射角度Θが12.8度になり、最大許容入射角度が±12.8度になる。この要請から、第2光学系40を構成するマイクロレンズ42で、K個のエミッタ28をL個のファイバに集光する場合、第2光学系40のX方向の焦点距離Fx2は、次式となる。
[数5]
x2≧ΣB/(2・sin(Θ))
【0070】
第2光学系40を構成するマイクロレンズ42のX方向の焦点距離Fx2は、総数K個のエミッタ28のうちk個のエミッタ28からのレーザ光21を1個の光ファイバコア62に集光する。そのために、総数K個の一部k個のレーザ光21のX軸方向の幅ΣBからの入射角度を2・sin(Θ)内に収めるように焦点距離Fx2を設計する。ΣB/(2・sin(Θ))より大きい焦点距離Fx2であればよい。
【0071】
k個のエミッタ28からのk本のレーザ光21を光ファイバコア62に入射する場合、レーザ光21のX軸方向の幅ΣBは、次式で示される。
[数6]
ΣB=P・(k-1)+B
即ち、次式を満たす。
ΣB=P・(k-1)+(Ex1・sin(Θ/2))・2+W
Pは、エミッタ28のX軸方向におけるピッチである。
【0072】
ここで、例えば、半導体レーザバー26では、エミッタ28の数が12個であり、エミッタ28の幅Wが0.2mmであり、ピッチPが0.4mmである。12本のレーザ光21が3本に分割される場合、1本の集光ビーム102あたりのエミッタ28の数がk=4個となる。Bは(数4)式であるから、ΣBが次式で示される。
ΣB=0.4・(4-1)+0.395=1.595mm
【0073】
したがってΣB/(2・sin(Θ))=3.65となる。開口数NA=0.22の場合、Fx2は3.65mmより大きい焦点距離を選べばよい。よって、Fx2=3.65mmは最小値である。3.65mmより大きい焦点距離のFx2の場合、光ファイバコア62への入射角度が小さくなる。エミッタ28からの距離は最小値に設定することが好ましい。
【0074】
第2光学系40を構成するマイクロレンズ42は3個の凸レンズからなるマイクロレンズである。マイクロレンズ42は、1体に構成した3個の凸レンズを有してよい。マイクロレンズ42に入射するレーザ光21の個数kが異なる場合、(数2)式のΣBの値が異なる。ΣBの最大の値で(数5)式を満たすようにFx2を決める。
【0075】
第2光学系40を構成するマイクロレンズ42の位置は、光ファイバコア62の入射面からの距離がCである場合、次式を満たさなければならない。即ち、(数5)式を満たす焦点距離Fx2を設定し、さらに焦点距離Fx2をもつマイクロレンズ42の位置Cが次式を満たす位置としなければならない。
[数7]
2・Fx2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fx2
ここで、CRは、光ファイバコア62の半径である。光ファイバコア62の半径CRは、光ファイバコア62の断面が矩形の場合、当該矩形の中心から矩形の外周までの最短距離であってよい。
【0076】
が(1-2・CR/ΣB)・Fx2より小さいと、光ファイバコア62のエッジにレーザ光21を照射してしまい、コア損傷を引き起こす。レーザ光21は高強度であるので、深刻なダメージとなる。Cが焦点距離以上に大きくなるとレーザ光21は広がる。Cが2・Fx2より大きいと、光ファイバコア62のエッジにレーザ光21を照射し、コア損傷を引き起こす。
【0077】
ここで、光ファイバコア62はCR=0.3mmである場合は、(1-2・CR/ΣB)・Fx2=(1-2×0.3/1.595)×3.65=2.23mmである。そのため、Cが7.3mm≧C≧2.23mmを満たす位置にマイクロレンズ42を設置する。
【0078】
実施例1および実施例2では、マイクロレンズ42の位置をC=3.5mmとした。焦点距離Fx2と同程度の距離とした。コア面へのレーザ光21を極力小さくするためと、集光マイクロレンズ42と光ファイバコア62内にダンパ52を設置するためのスペースを考慮した。
【0079】
このように、第1光学系30と第2光学系40を適切に設計することにより、1本の集光ビーム102あたりk個のエミッタ28から放射するk本のレーザ光21を1個の光ファイバコア62に集光することができる。
【0080】
上記に述べた第2光学系40の設計指針は、Y軸方向においても同様である。シリンドリカルレンズ32の焦点距離Ey1を用いた場合、進行方向と平行なレーザ光21の幅Bは、次式で示される。
[数8]
=Ey1(2・sin(Θ/2))
発散角度Θは、半導体レーザ装置20からY軸方向の発散角度である。
【0081】
開口数NAの要請からY軸方向の集光用レンズの焦点距離Fy2は、次式で示される。
[数9]
y2≧B/(2・sin(Θ))
【0082】
したがって、エミッタ28の発散角度Θ、第1光学系30のシリンドリカルレンズ32の焦点距離Ey1、開口数NAとから、次式が成り立つ。
[数10]
y2≧(Ey1・sin(Θ/2))・2/(2・sin(Θ))
【0083】
焦点距離Fy2を有する集光レンズから光ファイバコア62の受光面までの距離Cは、光ファイバコア62内に入射するように次式を満たす。
[数11]
2・Fy2≧C≧(1-2・CR/B)・Fy2
【0084】
焦点距離Fy2を有する集光レンズから光ファイバコア62の受光面までの距離Cが、入射コア面に近い配置の場合、入射する集光ビーム102が光ファイバコア62の外側に入射してしまい光ファイバ60に深刻なダメージを与える。距離Cがこれより大きい場合、入射する集光ビーム102は光ファイバコア62の外側に入射してしまい光ファイバ60が損傷する場合がある。したがって、距離Cは焦点距離Fy2程度であることが望ましい。
【0085】
実施例1および実施例2において、各エミッタ28からのY軸方向のレーザ光21はΘ=30°の発散角度を有する。第1光学系30で用いるシリンドリカルレンズを焦点距離Ey1=0.6mmとすることにより、レーザ光21のY軸方向の幅B=0.5mmで平行となる。光ファイバコア62の直径が0.6mmなのでBはこれより小さい。本実施例では、Y軸方向のレーザ光21の幅は第2光学系40により特に集光することなく、光ファイバコア62に入射できる。光ファイバコア62への入射角度は平行光であるのでゼロ度である。許容開口数NA以下であるのは自明である。したがって、実施例1および実施例2においては、第2光学系40においてY軸方向の集光レンズがなくてもよい。
【0086】
実施例1および実施例2においてのダンパ52は、集光ビーム102の強度を調整するカーボン製のダンパである。ダンパ52は、それぞれの集光ビーム102のエッジに設置される。ダンパ52aは集光ビーム102aの下部に設置される。ダンパ52aの上端エッジで集光ビーム102aの下部のビームを吸収し、集光ビーム102aの強度を調整する。ダンパ52cは集光ビーム102cの下部に設置される。ダンパ52cの上端エッジで集光ビーム102cの下部のビームを吸収し、集光ビーム102cの強度を調整する。ダンパ52bは集光ビーム102bの上部に設置される。ダンパ52bの下エッジで集光ビーム102bの上部のビームを吸収し、集光ビーム102bの強度を調整する。ダンパ52のカーボンは、集光ビーム102の強度を調整できる程度に十分に小さい反射率を有する。ダンパ52は、吸収効率が高い材料を有することが好ましい。
【0087】
また、ダンパ52は、集光ビーム102を吸収した場合に放熱できるよう程度に高い熱伝導率を有することが好ましい。例えば、ダンパ52のカーボンの熱伝導率は、銅と同程度に高い。ダンパ52の裏面に設置した銅板に冷却水を導入することにより、吸収した集光ビーム102による熱を効率良く吸収される。
【0088】
本例のダンパ52は、上下端部で集光ビーム102を吸収する。ダンパ52は、集光ビーム102a~集光ビーム102cに対応した3つのダンパ52a~ダンパ52cを含む。ダンパ52の上下位置は、ピエゾ素子で電圧駆動することにより調整できる。ダンパ52a~ダンパ52cは、独立に駆動されてよい。ダンパ52の高さは、ピエゾ素子を用いて数μmの精度で調整できる。ダンパ52の高さを電圧で調整することにより、加熱ビーム104の強度を測定しながら、外部電圧源で厳密に制御できる。これにより、レーザ加工装置100は、L本の加熱ビーム104の強度を外部制御できる。
【0089】
図4Aは、円形の光ファイバコア62を有する光ファイバ60の一例を示す。光ファイバ60は、光ファイバコア62および光ファイバクラッド64を有する。
【0090】
光ファイバコア62は、入射された集光ビーム102を伝搬する。光ファイバコア62は、円形状の断面を有する。光ファイバコア62の半径CRは、CR=0.3mmである。光ファイバ60の開口数は、開口数NA=sin(Θ)=0.22である。
【0091】
光ファイバクラッド64は、光ファイバコア62の周囲を覆う。即ち、光ファイバ60の構造は、光ファイバコア62とその周囲を覆う光ファイバクラッド64との2層構造である。光ファイバクラッド64の屈折率は、光ファイバコア62の屈折率より小さい。光ファイバコア62と光ファイバクラッド64の屈折率差により、集光ビーム102が光ファイバコア62内に閉じ込められる。例えば、光ファイバクラッド64は、フッ化酸化ケイ素材料を有する。
【0092】
光ファイバ60は、集光ビーム102を光ファイバコア62と光ファイバクラッド64との境界面で全反射させることにより、光ファイバコア62の内部に閉じ込める。光ファイバ60は、集光ビーム102を全反射させることにより、内部での損失を低減することができる。例えば、光ファイバ60の許容入射角度は、Θ=12.72°である。この場合、光ファイバ60は、完全受光角2・Θ=2・12.72°=25.44°内で入射した集光ビーム102を光ファイバコア62の内部に閉じ込める。
【0093】
図4Bは、多角形の光ファイバコア62を有する光ファイバ60の一例を示す。多角形とは、略三角形状や略矩形形状を含んでよい。本例の光ファイバコア62は、矩形の断面を有する点で図4Aの光ファイバコア62と相違する。
【0094】
本例の光ファイバ60は、図4Aの場合と同一の開口数NAを有してよい。例えば、開口数NA=0.22の場合、光ファイバ60の許容入射角度は、Θ=12.72°である。この場合、光ファイバ60は、完全受光角2・Θ=25.44°内で入射した集光ビーム102を光ファイバコア62の内部に閉じ込める。
【0095】
第1光学系30および第2光学系40は、光ファイバ60の完全受光角2・Θ内で、光ファイバコア62の径2・CRに収まるようにレーザ光21を入射する。光ファイバコア62の径とは、光ファイバコア62の断面が矩形の場合、光ファイバコア62のY軸方向の上端と下端との間の大きさである。
【0096】
図4Cは、3つの光ファイバコア62を有する光ファイバ60の一例を示す。光ファイバ60は、3つの光ファイバコア62と光ファイバクラッド64とを有する。光ファイバ60は、4個以上の光ファイバコア62を有してもよい。
【0097】
実施例1の光ファイバコア62は、3つの光ファイバコア62a~光ファイバコア62cを含む。3つの光ファイバコア62a~光ファイバコア62cは、X軸方向に1次元に配列している。3つの光ファイバコア62a~光ファイバコア62cは、共通の光ファイバクラッド64で覆われている。これにより、1本の光ファイバ60を構成している。光ファイバコア62の断面形状は、光ファイバコア62の径と開口数NAの仕様に応じて適宜設定されてよい。
【0098】
光ファイバコア62aは、円形の断面を有する。光ファイバコア62aの断面形状は、図4Aで示した光ファイバコア62の断面形状と同一であってよい。
【0099】
光ファイバコア62bおよび光ファイバコア62cは、矩形の断面形状を有する。光ファイバコア62bおよび光ファイバコア62cの断面形状は、図4Bで示した光ファイバコア62の断面形状と同一であってよい。複数の光ファイバコア62の断面形状は、同一であっても異なっていてもよい。
【0100】
光ファイバコア62の形状を適切に設定することにより、集光ビーム102の強度を大きくした場合であっても、光ファイバコア62の溶解などの故障を抑制することができる。また、集光ビーム102のパワーのロスを最小限にして、集光ビーム102を光ファイバ60の放射面に伝達できる。
【0101】
光ファイバ60の入射側は、L個の光ファイバコア62が1つにまとめられてよい。本例の光ファイバクラッド64は、3つの光ファイバコア62a~光ファイバコア62cを覆う。光ファイバ60の入射側を1本にすることにより、集光ビーム102を個々の独立した光学系を用いることなく入射することができる。
【0102】
一方、光ファイバ60の放射側は、L個の光ファイバコア62がそれぞれ独立して設けられる。即ち、光ファイバ60は、図1で示したように、それぞれ独立した3本の光ファイバ60a~光ファイバ60cを有する。これにより、レーザ加工装置100は、任意の方向から、加工材料110に加熱ビーム104を照射することができる。
【0103】
L個の照射ヘッド80は、同一の照射強度分布の加熱ビーム104を出射してもよいし、異なる照射強度分布の加熱ビーム104を出射してもよい。
【0104】
光ファイバ60は、光ファイバコア62の形状を適切に選択することにより、加工材料110の加工精度を向上することができる。光ファイバコア62が矩形の場合、加熱ビーム104の照射強度分布は、進行方向と直交する面を構成するX'軸、Y'軸方向に略均一なトップハット型の照射強度分布となる。照射強度分布の形状は、照射ヘッド80の光学系に応じて、変更できる。トップハット型の照射強度分布は、加工材料110を隙間なく加工する場合に適している。
【0105】
また、光ファイバコア62が円形の場合、中心部の照射強度が最大で中心軸から離れるに従いなだらかに減少する釣鐘型形状の照射強度分布が得られる。照射強度分布の形状は、照射ヘッド80の光学系に応じて変更できる。例えば、照射ヘッド80の光学系を変更することにより、照射強度分布のX'軸方向およびY'軸方向の広がりサイズを調整できる。釣鐘型の照射強度分布は、加工材料110を滑らかな断面形状に加工する場合や、3次元面のスムーズな加工に適している。
【0106】
図5Aは、加熱ビーム104の照射強度分布の測定例を示す。本例では、X'軸方向8mm幅、Y'軸方向±10mm幅で囲まれた2次元の照射強度分布を示す。
【0107】
本例の加熱ビーム104は、トップハット型の照射強度分布を有する。レーザ加工装置100は、矩形の光ファイバコア62により、トップハット型の照射強度分布の加熱ビーム104を生成する。
【0108】
本例の照射強度分布は、加工材料110の照射面における加熱ビーム104の照射強度分布をビームプラファイラーで実測した結果である。本測定結果は、加熱ビーム104の進行方向をZ'軸として、Z'軸と直交する2次元(X',Y')面での加熱ビームの照射強度を縦軸にプロットした測定結果である。加工材料110の照射面は、照射ヘッド80から200mmの位置にある。
【0109】
加熱ビーム104の照射強度分布は、X'軸方向8mm、Y'軸方向4mm幅で囲まれた2次元矩形形状において、±5%内に照射強度が収まったトップハット型の照射強度分布を示している。照射強度がゼロの位置から最大強度の位置までの距離は0.05mm内に収まっている。
【0110】
レーザ加工装置100は、本例の加熱ビーム104を用いて材料を切断することにより、加工材料110の断面を50μm以下の精度で切断できる。また、レーザ加工装置100は、加熱ビーム104の断面を0.05mm以下の精度で切断することもできる。本例の加熱ビーム104は、数mmサイズの材料の加工用に用いる場合の照射強度分布を示す。レーザ加工装置100は、加熱ビーム104の断面の矩形形状の幅を数10mmから0.1μm程度まで調整することができる。
【0111】
図5Bに、加熱ビーム104の照射強度分布の測定例を示す。本例では、X'軸方向8mm幅、Y'軸方向±10mm幅で囲まれた2次元の照射強度分布を示す。
【0112】
本例の加熱ビーム104は、釣鐘型の照射強度分布を有する。レーザ加工装置100は、矩形の光ファイバコア62により、釣鐘型の照射強度分布の加熱ビーム104を生成する。
【0113】
本例の照射強度分布は、加工材料110の照射面における加熱ビーム104の照射強度分布をビームプラファイラーで実測した結果である。本測定結果は、加熱ビーム104の進行方向をZ軸'として、Z'軸と直交する2次元(X',Y')面での加熱ビームの照射強度を縦軸にプロットした測定結果である。加工材料110の照射面は、照射ヘッド80から200mmの位置にある。
【0114】
加熱ビーム104の照射強度分布は、X'軸方向8mm幅、Y'軸方向±5mm(10%強度の位置)幅で囲まれた領域において、X'軸方向はトップハット型、Y'軸方向は釣鐘型の照射強度分布を示している。X'軸方向の強度分布は均一な照射強度を有する。一方、Y'軸方向は中心軸を最大強度として±方向に減少する釣鐘型の照射強度を有している。即ち、本例の加熱ビーム104は、Y'軸方向切断面を鋭く、X'軸方向の切断面が曲線形状に加工したい場合に用いられる。本例の加熱ビーム104は、数mmサイズの材料の加工用に用いる場合の照射強度分布を示す。レーザ加工装置100は、加熱ビーム104の断面のX'軸方向を数10mmから0.1μm程度まで調整することができる。
【0115】
図5Cに、加熱ビーム104の照射強度分布の測定例を示す。本例では、X'軸方向8mm幅、Y'軸方向±10mm幅で囲まれた2次元の照射強度分布を示す。
【0116】
本例の加熱ビーム104は、X'軸方向にトップハット型の照射強度分布を有し、Y'軸方向に釣鐘型の照射強度分布を有する。例えば、レーザ加工装置100は、矩形の光ファイバコア62により、トップハット型の照射強度分布の加熱ビーム104を生成する。
【0117】
本例の照射強度分布は、加工材料110の照射面における加熱ビーム104の照射強度分布をビームプラファイラーで実測した結果である。本測定結果は、加熱ビーム104の進行方向をZ軸として、Z'軸と直交する2次元(X',Y')面での加熱ビームの照射強度を縦軸にプロットした測定結果である。加工材料110の照射面は、照射ヘッド80から200mmの位置にある。
【0118】
加熱ビーム104の照射強度分布は、X'軸方向8mmにトップハット型の照射強度、Y'軸方向で±10mm(10%強度の位置)に釣鐘型の照射強度を有する。X'軸方向の強度分布は均一な照射強度を有する。一方、Y'軸方向は中心軸を最大強度として±方向に減少する釣鐘型の照射強度を有している。本例の照射強度分布は、照射ヘッド80の光学系に用いるシリンドリカルレンズの位置を調整することにより得られる。
【0119】
図5Dに、加熱ビーム104の照射強度分布の測定例を示す。本例の加熱ビーム104は、釣鐘型の照射強度分布を有する。レーザ加工装置100は、円形の光ファイバコア62により、釣鐘型の照射強度分布の加熱ビーム104を生成する。
【0120】
本例の照射強度分布は、加工材料110の照射面における加熱ビーム104の照射強度分布をビームプラファイラーで実測した結果である。本測定結果は、加熱ビーム104の進行方向をZ'軸として、Z'軸と直交する2次元(X',Y')面での加熱ビームの照射強度を縦軸にプロットした測定結果である。加工材料110の照射面は、照射ヘッド80から200mmの位置にある。
【0121】
加熱ビーム104の照射強度分布は、X'軸方向に±1mm(10%強度の位置)の釣鐘型、Y'軸方向に±1mm(10%強度の位置)の釣鐘型の照射強度を有する。このように、X'軸方向±1mm幅、Y'軸方向±1mm幅で囲まれた2次元の照射強度分布を示す。X'軸、Y'軸方向は中心点を最大強度として±方向に減少する釣鐘型の照射強度を有している。照射強度10%の強度位置は、照射ヘッド80の光学系に用いるレンズの位置を調整することにより変更できる。本例の加熱ビーム104は、数mmサイズの材料の加工用に用いる場合の照射強度分布を示す。レーザ加工装置100は、加熱ビーム104の断面の釣鐘型の幅を数10mmから0.1μm程度まで調整することができる。
【0122】
[実施例3]
図6Aは、実施例1および実施例2に係るレーザ加工装置100の構成の一例を示す。本例の半導体レーザ装置20は、N層に積層されたN個の半導体レーザバー26を備える。レーザ加工装置100は、半導体レーザバー26を積層させることにより、数100W~数KWの高出力の加熱ビーム104を出力することができる。本例のレーザ加工装置100は、図3の実施例と異なり、レーザ光21をX軸方向へは分割していない。
【0123】
N個の半導体レーザバー26は、Y軸方向に積層されている。本例の半導体レーザバー26は、予め定められた積層間隔Sで積層されている。半導体レーザバー26は、等間隔で積層されてもよいし、異なる間隔で積層されてもよい。
【0124】
ここで、本例のレーザ加工装置100は、複数の半導体レーザバー26を使用する場合であっても、それぞれの半導体レーザバー26に個々に独立した電源を設ける必要がない。また、レーザ加工装置100は、複数の半導体レーザバー26を使用する場合であっても、それぞれの半導体レーザバー26に個々に独立した冷却水用チラー装置を設ける必要がない。
【0125】
本例のレーザ加工装置100は、積層した半導体レーザバー26を有するものの、1個の電源10および1個の冷却部15を有すればよく、半導体レーザ装置20の手前で分岐した冷却水ルートを用意しなくてよい。即ち、半導体レーザ装置20は、1個の冷却水供給口と1個の冷却水排水口を有すればよい。これにより、レーザ加工装置100は、積層した半導体レーザバー26を有する半導体レーザ装置20の温度測定点を1か所にできる。レーザ加工装置100は、複数の温度測定点で温度管理する場合よりも、半導体レーザ装置20の温度を高い精度で制御することができる。これにより、半導体レーザ装置20の温度に依存した加熱ビーム104のバラツキを低減できる。
【0126】
一方、複数の冷却部15を設ける場合、複数の温度測定点で温度管理がなされていた。この場合、各半導体レーザ装置から流れる個々の冷却水は、合流後の冷却水温度で測定していた。そのため、温度精度を高く設定する必要があった。複数の冷却水が合流した後の温度精度を制御しても、それぞれの半導体レーザ装置のエミッタ温度を制御することができない。また、それぞれの半導体レーザ装置の温度を制御するためには、複数の冷却水ごとに半導体レーザ装置の台数と同じ台数のチラー装置が必要であった。0.1℃~0.05℃以下の温度精度のチラーを用いるとコストの面で不利である。
【0127】
本例の半導体レーザバー26は、Y軸方向に6層積層している。レーザ加工装置100は、6段積層した半導体レーザバー26から3本の光ファイバ60に分岐する。即ち、光ファイバ60のそれぞれには、2段分の半導体レーザバー26が出力したレーザ光21が入射される。レーザ光21を平行光に変換して集光ビーム102とする場合、平行になったレーザ光21が互いに重なりのないように変換される。
【0128】
また、本例のレーザ加工装置100は、第1光学系30として、シリンドリカルレンズ32およびマイクロレンズ34を有する。レーザ加工装置100は、第2光学系40として、シリンドリカルレンズ44およびシリンドリカルレンズ46を有する。
【0129】
シリンドリカルレンズ32およびマイクロレンズ34は、レーザ光21を進行方向と平行となるように設計される。実施例2のように、半導体レーザバー26を積層する場合であっても、実施例1の場合と同様に、シリンドリカルレンズ32の焦点距離Ey1およびマイクロレンズ34の焦点距離Ex1を適切に設計する。例えば、マイクロレンズ34の焦点距離Ex1は、実施例1の場合と同様に、隣接するレーザ光21が重ならないように設定される。
【0130】
第1光学系30を構成するシリンドリカルレンズ32は、マイクロレンズ34よりも先に設けられることが好ましい。レーザ光21のY軸方向の発散角度Θが、X軸方向の発散角度Θよりも大きいので、レーザ光21のY軸方向成分を先に進行方向(例えば、Z軸)と平行な成分に変換しておくことが好ましい。これにより、レーザ光21のY軸方向の幅Bの増加を抑制できる。
【0131】
シリンドリカルレンズ32の焦点距離Ey1は、シリンドリカルレンズの加工形状から可能な最小サイズで設計されることが好ましい。例えば、シリンドリカルレンズ32のY軸方向の焦点距離Ey1は0.6mmである。マイクロレンズ34の焦点距離Ex1は1.4mmとする。シリンドリカルレンズ32の厚みは0.8mm必要であるので、シリンドリカルレンズ32のZ軸方向にマイクロレンズ34を設置するために、0.8mmより大きな焦点距離Ex1が必要である。
【0132】
実施例3の半導体レーザバー26では、X軸方向のエミッタ28の数が12個、X軸方向の幅Wが0.2mm、X軸方向のエミッタ28のピッチPが0.4mmであり、エミッタ28のY軸方向の長さWが0.01mmである。半導体レーザバー26の積層数は6層である。半導体レーザバー26の積層間隔Sは2.5mmとした。各エミッタ28から放射するレーザ光21は、2次元楕円面形状に発散する。本例の12個のエミッタ28から放射するレーザ光21の発散角度は、Θ=30°およびΘ=8°である。
【0133】
シリンドリカルレンズ32の焦点距離Ey1は、Y軸方向に積層した半導体レーザバー26からの平行になったレーザ光21が重ならないように設定される。シリンドリカルレンズ32の焦点距離Ey1は、エミッタ発散角度Θ、エミッタ幅W、半導体レーザバー26の積層間隔Sに基づいて設計される。積層間隔Sは、積層された半導体レーザバー26におけるY軸方向のエミッタ28の間隔である。
【0134】
第2光学系40は、第1光学系30が平行光に変換したレーザ光21をL本の光ファイバ60に集光する。本例の第2光学系40は、シリンドリカルレンズ44およびシリンドリカルレンズ46を有する。
【0135】
シリンドリカルレンズ44は、レーザ光21をY軸方向に集光する。シリンドリカルレンズ44は、Y軸方向に配列された3個のシリンドリカルレンズ44a~シリンドリカルレンズ44cを有する。シリンドリカルレンズ44は、第2のシリンドリカルレンズの一例である。
【0136】
シリンドリカルレンズ46は、レーザ光21をX軸方向に集光する。これにより、レーザ光21が光ファイバコア62に集光される。シリンドリカルレンズ46は、第1のシリンドリカルレンズの一例である。
【0137】
次に、半導体レーザ装置20が積層された複数の半導体レーザバー26を有する場合において、第2光学系40のX軸方向の設計手法について説明する。レーザ光21がY軸方向において重ならないようにするために、平行光に変換されたレーザ光21のY軸方向の幅Bが次式を満たすように設計される。
[数12]
≦S
【0138】
シリンドリカルレンズ32のエミッタ28からの距離を焦点距離Ey1とすると、Y軸方向のビーム幅Bは、次式で示される。
[数13]
=(Ey1・sin(Θ/2))・2+W
即ち、次式を満たす。
[数14]
(Ey1・sin(Θ/2))・2+W≦S
エミッタ幅Wは、エミッタ28のY軸方向の幅である。ここで、マイクロレンズ34の焦点距離Ey1が0.6mm、W=0.01であるから、Bが次式で算出される。
=(0.6・sin(30°/2))・2+0.01=0.31+0.01=0.32mm
そして、S=2.5mmであるから、(数12)式を満たす。したがって、半導体レーザバー26aと半導体レーザバー26bとのレーザ光21は重ならない。
【0139】
積層間隔SのN段の積層構造から照射される平行に変換されたレーザ光21のY軸方向のビーム幅ΣBは、次式で示される。
[数15]
ΣB=S・(N-1)+B
ΣB=(Ey1・sin(Θ/2))・2+W+S・(N-1)
実施例3において、ΣB=2.4・(2-1)+0.32=2.7mmとなる。
【0140】
ビーム幅ΣBの平行光に変換されたレーザ光21を開口数NA=sin(Θ)=0.22の許容集光角度に入射するためのシリンドリカルレンズ44aの焦点距離Fy2は、ビーム幅Bを、シリンドリカルレンズ44aに入射するレーザ光21のビーム幅ΣBに置き換えると、次式を満たす。
[数16]
y2≧ΣB/(2・sin(Θ))
【0141】
ΣBが(数15)式で示されるので、シリンドリカルレンズ44aの焦点距離Fy2は、次式で示される。
[数17]
y2≧(Ey1・sin(Θ/2))・2+W+S・(N-1)/(2・sin(Θ))
【0142】
また、焦点距離Fy2を有するシリンドリカルレンズ44aから光ファイバコア62の受光面までの位置Cは、光ファイバコア62内に入射する必要があるので、次式を満たす。
[数18]
2・Fy2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fy2
【0143】
例えば、ファイバの開口数NA=sin(Θ)=0.22、CR=0.3mmの場合、B=0.32mm、ΣB=2.7mmであるから、Fy2が次式で示される。
y2=ΣB/(2・sin(Θ))=2.7/(2×0.22)=6.13
シリンドリカルレンズ21の位置は、入射コア面からの距離Cが次式を満たすように設定される。
2・6.13≧C≧(1-2・0.3/2.7)・6.13
12.26≧C≧0.126
実施例3では、シリンドリカルレンズ44aの焦点距離Fy2を6mmとした。
【0144】
なお、光ファイバ60は、光ファイバコア62および光ファイバクラッド64を有している。また、光ファイバ60は、さらに外装を含んでよい。光ファイバコア62、光ファイバクラッド64および外装用の被覆を有する個別の光ファイバ60を用いる場合、光ファイバ60の全体の直径をFmaxとすると、光ファイバコア60aと光ファイバ60bとの間隔CDは、次式を満たすように設定される。
CD≧Fmax
【0145】
集光ビーム102の間隔は、光ファイバ60の間隔CDに一致する。したがって、間隔CDは、次式で示される。
CD=Fy2・(2・sin(Θ)+S・(n-1))
ここで、集光ビームの幅をBとし、第2光学系のY軸方向の焦点距離をFy2とする。Sは、半導体レーザバー26のY軸方向の間隔である。
【0146】
また、焦点距離Fy2は、次式で示される。
y2=ΣB/(2・sin(Θ))
【0147】
この場合に、レーザ加工装置100は、N個積層した半導体レーザバー26のうち、n層の半導体レーザバー26からのレーザ光21を集光した集光ビーム102を、1本の光ファイバ60に入射することができる。
【0148】
実施例2の場合、Fy2=6.13mmであるから、間隔CDが次式で示される。
CD=Fy2・(2・sin(Θ)+S・(n-1))=6.13・2・0.22+2.5=2.69+2.5=5.19mm
【0149】
被覆外装を有する1本の光ファイバ60の直径Fmaxが5mm以下であれば、独立した光ファイバを用いることができる。このような光ファイバを用意できない場合は、図4Cに図示した共通の光ファイバクラッド64の光ファイバ60を用いてよい。なお、レーザ光21は、反射ミラーを用いて分岐してよい。
【0150】
シリンドリカルレンズ46は、L本の光ファイバ60にX軸方向を集光したレーザ光21を入射する。シリンドリカルレンズ46の焦点距離Fx2は、実施例1の場合と同様の数式を用いて決定されてよい。但し、本例のシリンドリカルレンズ46は、積層された半導体レーザバー26から入射されるレーザ光21のそれぞれが光ファイバ60に入射されるように調整される。
【0151】
レーザ光21のX軸方向の幅ΣBは、次式で示される。
[数19]
=(Ex1・sin(Θ/2))・2+W
[数20]
ΣB=P・(K-1)+B
【0152】
この場合、第2光学系40のX軸方向の焦点距離Fx2は、次式で示される。
[数21]
x2≧ΣB/(2・sin(Θ))
である。焦点距離Fx2は、次式を満たす。
[数22]
x2≧(P・(K-1)+B)/(2・sin(Θ))
【0153】
また、光ファイバコア62aとシリンドリカルレンズ46aとの距離Cは、次式で示される。
[数23]
2・Fx2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fx2
【0154】
本例の半導体レーザバー26は、X軸方向のエミッタ28の総数Kが12個、X軸方向の幅Wが0.2mm、X軸方向のエミッタ28のピッチPが0.4mmであり、エミッタ28のY軸方向の長さWが0.01mmである。半導体レーザバー26の積層数は6層である。半導体レーザバー26の積層間隔Sは2.5mmとした。各エミッタ28から放射するレーザ光21は、2次元楕円面形状に発散する。本例の12個のエミッタ28から放射するレーザ光21の発散角度は、Θ=30°およびΘ=8°である。
【0155】
第1光学系30を構成するシリンドリカルレンズ32は、マイクロレンズ34よりも先に設けられることが好ましい。レーザ光21のY軸方向の発散角度Θが、X軸方向の発散角度Θよりも大きいので、レーザ光21のY軸方向成分を先に進行方向(例えば、Z軸)と平行な成分に変換しておくことが好ましい。これにより、レーザ光21のY軸方向の幅Bの増加を抑制できる。
【0156】
シリンドリカルレンズ32の焦点距離Ey1は、シリンドリカルレンズの加工形状から可能な最小サイズで設計されることが好ましい。例えば、シリンドリカルレンズ32のY軸方向の焦点距離Ey1は0.6mmである。マイクロレンズ34の焦点距離Ex1は1.4mmとする。シリンドリカルレンズ32の幅は0.8mm必要であるので、シリンドリカルレンズ32のZ軸方向にマイクロレンズ34を設置するために、0.8mmより大きな焦点距離Ex1が必要である。
【0157】
本例の半導体レーザバー26では、X軸方向のエミッタ28の数が12個、X軸方向の幅Wが0.2mm、X軸方向のエミッタ28のピッチPが0.4mmであり、エミッタ28のY軸方向の長さWが0.01mmである。各エミッタ28から放射するレーザ光21は、2次元楕円面形状に発散する。本例の12個のエミッタ28から放射するレーザ光21の発散角度は、Θ=30°およびΘ=8°である。
【0158】
一例において、B、ΣBおよびFx2は、次の通りである。
=0.395mm
ΣB=P・(K-1)+B=0.4・(12-1)+0.395=4.79
x2≧ΣB/(2・sin(Θ))=4.795/(2×0.22)=10.9
【0159】
また、光ファイバコア62aとシリンドリカルレンズ46aとの距離Cは、次式で示される。
2・Fx2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fx2
よって、Cが次式を満たす。
21.8≧C≧9.5
実施例2ではC=11mmであり、Cを焦点距離Fx2=10.9mmと同程度とした。
【0160】
ここで、3つの光ファイバ60において、開口数NAやコア径が異なる場合、シリンドリカルレンズ46a~シリンドリカルレンズ46cがそれぞれ異なる特性を有してよい。また、シリンドリカルレンズ46a~シリンドリカルレンズ46cの配置は、光ファイバ60a~光ファイバ60cに合わせて異なっていてよい。
【0161】
本例のレーザ加工装置100は、X軸方向にK個のエミッタ28が配列した半導体レーザバー26を、Y軸方向にN個積層した1台の半導体レーザ装置20を備えることにより、1本の集光ビーム102に用いるエミッタ28の数をk個とした場合、次式を満たす。
K×N≧k×L
但し、K,k,Nは1以上の整数である。
【0162】
以上の通り、本例のレーザ加工装置100は、第1光学系30および第2光学系40の光学系を適切に設定することにより、大出力の加熱ビーム104を1台の半導体レーザ装置20から分岐し、取り出すことができる。
【0163】
なお、本例のレーザ加工装置100は、6段の半導体レーザバー26を均等に分割している。但し、レーザ加工装置100は、上から1段、2段、3段として、3段階の出力強度の加熱ビーム104を形成してもよい。
【0164】
本例の光ファイバ60は、それぞれ矩形、円形、矩形の光ファイバコア62a~光ファイバコア62cを有するが、これに限られない。
【0165】
本例の光ファイバ60a~光ファイバ60cの受光面は、シリンドリカルレンズ46a~シリンドリカルレンズ46cとそれぞれ等しい間隔で設けられる。光ファイバ60aの受光面ンとシリンドリカルレンズ46との距離は、光学条件を満たす範囲で短く設定されることが好ましい。
【0166】
本例の第2光学系40は、シリンドリカルレンズ44およびシリンドリカルレンズ46のレンズ系のみで構成される。これにより、第2光学系40は、レーザ光21の光学変換時に生じる熱を低減することができる。また、第2光学系40の構成が単純となり、光学系のサイズが小さくなる。
【0167】
[実施例4]
図6Bは、実施例1および実施例2に係るレーザ加工装置100の構成の一例を示す。本例のレーザ加工装置100は、光ファイバコア62に集光ビーム102を集光する。本例のレーザ加工装置100は、集光レンズとして凸レンズ48を備える点で、実施例3に係るレーザ加工装置100と相違する。これにより、シリンドリカルレンズの枚数を削減できる。
【0168】
光ファイバ60は、開口数NA=sin(Θ)および半径CRの光ファイバコア62を有する。凸レンズ48の第一方向の焦点距離Fx2は、総数K個のエミッタ28からのX軸方向への発散角度Θ、エミッタ幅W、ピッチP、X軸方向の焦点距離をEx1とし、レーザ光のX軸方向の幅ΣBを、
[数24]
=(Ex1・sin(Θ/2))・2+W
[数25]
ΣB=P・(K-1)+(Ex1・sin(Θ/2))・2+W
とすると、
[数26]
x2≧ΣB/(2・sin(Θ))
を満たす。これにより、集光ビーム102が光ファイバ60に損傷を与えることなく入射される。
【0169】
N個に積層された半導体レーザバー26のうちn層の半導体レーザバー26が出射するレーザ光21を分岐する場合、凸レンズ48のY軸方向の焦点距離Fy2は、集光ビーム102のY軸方向のビーム幅ΣBを用いて次式で示される。
[数27]
y2≧ΣB/(2・sin(Θ))
ここで、ビーム幅ΣBは、
=(Ey1・sin(Θ/2))・2+W
であるから、
ΣB=S・(n-1)+B
である。これにより、光ファイバ60に損傷を与えることなく集光ビーム102が入射される。
【0170】
x2≧Fy2の場合、凸レンズ48の焦点距離は、(数26)式を満たすFx2であり、且つ、
凸レンズ48の位置は光ファイバコア62の入射面からの距離がCとすると、
2・Fx2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fx2
を満たす。
【0171】
一方、Fx2<Fy2の場合、
凸レンズ48の焦点距離は、(数27)式を満たすFy2であり、且つ、
2・Fy2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fy2
を満たす。
【0172】
一例において、光ファイバ60は、ファイバの開口数NA=sin(Θ)=0.22、CR=0.3mmを満たす。本例の半導体レーザバー26では、X軸方向のエミッタ28の数が12個、X軸方向の幅Wが0.2mm、X軸方向のエミッタ28のピッチPが0.4mmであり、エミッタ28のY軸方向の長さWが0.01mmである。各エミッタ28から放射するレーザ光21は、2次元楕円面形状に発散する。本例の12個のエミッタ28から放射するレーザ光21の発散角度は、Θ=30°およびΘ=8°である。
【0173】
したがって、B、ΣBおよびFx2は、次の通りである。
=0.395mm
ΣB=P・(K-1)+B=0.4・(12-1)+0.395=4.79
x2≧ΣB/(2・sin(Θ))=4.795/(2×0.22)=10.9
以上から、光ファイバコア62aと凸レンズ48との距離Cは、次式で示される。
2・Fx2≧C≧(1-2・CR/ΣB)・Fx2
よって、Cが次式を満たす。
21.8≧C≧9.5
【0174】
ここではC=11mmとして、Cを焦点距離Fx2=10.9mmと同程度とした。また、光ファイバ60の開口数NA=sin(Θ)=0.22、CR=0.3mmであるから、B=0.32mm、ΣB=2.7mmである。したがって、Fy2が次式で示される。
y2=ΣB/(2・sin(Θ))=2.7/(2×0.22)=6.13
【0175】
凸レンズ48の位置Cは、入射コア面からの距離Cが次式を満たすように設定される。
2・6.13≧C≧(1-2・0.3/2.7)・6.13
12.26≧C≧0.126
X軸方向の要請およびY軸方向の要請から、焦点距離Fx2=10.9mmである凸レンズ48の入射コア面から距離Cは、次式を満たす。
12.26≧C≧9.5
【0176】
したがって、焦点距離Fx2=10.9mmである凸レンズ48の入射コア面から距離Cは11mmと選択すればよい。凸レンズ48の焦点距離、ならびに凸レンズ48の入射コア面から距離Cを適切に選択すれば、2枚必要なシリンドリカルレンズセットを1枚の凸レンズ48でファイバ端面を損傷なく集光ビーム102を入射できる。
【0177】
[実施例5]
図7は、実施例5に係るレーザ加工装置100の構成の一例を示す。本例のレーザ加工装置100は、L×N本の光ファイバ60で構成される点で実施例1および実施例2に係るレーザ加工装置100と相違する。
【0178】
本例のレーザ加工装置100は、半導体レーザバー26をL個に分岐した実施例1に係る構成を、半導体レーザバー26をN層積層した場合に拡張した実施例である。本例のレーザ加工装置100は、L×N個の光ファイバコア62に集光ビーム102を集光する。但し、光ファイバ60の入射側の本数はL本でよい。一方、放射側ファイバ66の本数は、L×N本となり、照射ヘッド80の数もL×N本個となる。
【0179】
本例のレーザ加工装置100は、1つの半導体レーザバー26からL本の加熱ビーム104を形成し、さらに、N層に積層している。これにより、レーザ加工装置100は、さらに多数の加熱ビーム104により加工材料110を加工できる。本例のレーザ加工装置100は、多数の穴を一度に形成する場合等に特に有利である。
【0180】
また、調整部50は、ポッケルセル素子を有してよい。ポッケルセル素子は、電圧を印加することにより、集光ビーム102の偏光面を回転させる。これにより、透過した集光ビーム102をオンオフすることができる。その結果、連続した集光ビーム102を数Hzから数MHzの広い周波数範囲のパルス光に変換できる。調整部50は、オンオフ比の調整により透過強度を調整できる。これにより、加熱ビーム104の強度が調整される。加熱ビーム104のパルス周波数、オンオフ比は、外部電圧源で制御できる。ポッケルセル素子を使用した場合は、カットした光は主方向とは異なる方向に放射することから、このカットした集光ビーム102を吸収するダンパが設けられる。
【0181】
以上、レーザ加工装置100は、COガスレーザの代わりに半導体レーザ装置20を用いて加熱ビーム104を生成する。本例のレーザ加工装置100は、数10Wクラスから数KWクラスの高強度の加熱ビーム104を多数本同時に提供できる。レーザ加工装置100は、光学系を適宜変更することにより、多角形状や長円形形状等の様々な形状の加熱ビーム104を生成することができる。レーザ加工装置100は、トップハット型の照射強度、釣鐘型の照射強度、トップハット型と釣鐘型を組み合わせた照射強度分布などの加熱ビーム104を生成できる。また、レーザ加工装置100は、加熱ビーム104ごとに形状や照射強度分布を変更できる。
【0182】
レーザ加工装置100は、冷却部15を1台のみ備える。冷却水の温度制御精度の高い冷却方式を実現する。COレーザ加工装置では、数mサイズになるのに対して、本例のレーザ加工装置100は、数KWクラスの高強度出力においても数10cmサイズの設置専有面積で十分である。レーザ加工装置100のエネルギー変換効率は40%以上と極めて高く、省エネを実現できる。
【0183】
半導体レーザ装置20の寿命は、数10万時間以上に達している。レーザ加工装置100は、半導体レーザ装置20を用いることにより、加熱ビーム104のオンオフの過酷な使用環境にも耐える。そのため、レーザ加工装置100は、量産用のレーザ加工装置として優れている。レーザ加工装置100は、調整部50を用いることにより、連続光の加熱ビーム104を、数HzからMHzのパルスビームに変更できる。レーザ加工装置100は、複数本の加熱ビーム104を独立して特性を変更できる。
【0184】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0185】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0186】
10・・・電源、12・・・電源、15・・・冷却部、20・・・半導体レーザ装置、21・・・レーザ光、22・・・入出力端子、24・・・入出力端子、26・・・半導体レーザバー、28・・・エミッタ、30・・・第1光学系、32・・・シリンドリカルレンズ、34・・・マイクロレンズ、40・・・第2光学系、42・・・マイクロレンズ、44・・・シリンドリカルレンズ、46・・・シリンドリカルレンズ、48・・・凸レンズ、50・・・調整部、52・・・ダンパ、55・・・制御部、60・・・光ファイバ、62・・・光ファイバコア、64・・・光ファイバクラッド、66・・・放射側ファイバ、70・・・光学変換部、80・・・照射ヘッド、100・・・レーザ加工装置、102・・・集光ビーム、104・・・加熱ビーム、110・・・加工材料、112・・・穴、120・・・半導体レーザ装置、121・・・レーザ光、122・・・入出力端子、124・・・入出力端子、130・・・第1光学系、140・・・第2光学系、150・・・センサ部、155・・・制御部、170・・・光学変換部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7