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特許7303552基礎製品を提供する方法と長尺体で被覆されたマンドレル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】基礎製品を提供する方法と長尺体で被覆されたマンドレル
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/04 20060101AFI20230628BHJP
   B29C 41/42 20060101ALI20230628BHJP
   B29C 53/60 20060101ALI20230628BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20230628BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20230628BHJP
   B32B 1/06 20060101ALI20230628BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230628BHJP
   B65H 81/06 20060101ALI20230628BHJP
   F16L 9/16 20060101ALI20230628BHJP
   B29K 27/18 20060101ALN20230628BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20230628BHJP
【FI】
B29C63/04
B29C41/42
B29C53/60
B29C70/16
B29C70/32
B32B1/06
B32B27/30 D
B65H81/06 Z
F16L9/16
B29K27:18
B29L7:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020067081
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021054652
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-12-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019073207
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019076717
(32)【優先日】2019-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019078892
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019084635
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019173380
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】田邉 豪
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】関根 洋之
【審判官】井口 猶二
(56)【参考文献】
【文献】特表平9-501759(JP,A)
【文献】米国特許第5972441(US,A)
【文献】米国特許第5752934(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎製品を提供する方法であって、
該基礎製品は、少なくとも1枚のフィルムが螺旋状に巻回され、該少なくとも1枚のフィルムにより隙間なく形成された長尺体であり、
該少なくとも1枚のフィルムのうちの、少なくとも1枚のフィルムが少なくともポリテトラフルオロエチレンから構成され、
該長尺体の平均厚みは5μm以上75μm以下であり、
該長尺体は、該長尺体の螺旋状に巻回されたフィルムのうちの少なくとも1枚が、マンドレル上に接触した状態で提供され、
該長尺体は、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる測定値を使用し、ひずみ%を横軸に、応力N/mmを縦軸にとったときの前記長尺体の応力ひずみ曲線において、該応力ひずみ曲線を単一のピークとみなしたときの、該ピークの半値全幅が10%以上150%以下の範囲にあることを特徴とする基礎製品を提供する方法。
【請求項2】
JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる、前記長尺体の20%ひずみ引張強度が100N/mm以上であること
を特徴とする請求項に記載の基礎製品を提供する方法。
【請求項3】
前記長尺体は、1枚以上のフィルムが螺旋状に右巻きで巻回され、1枚以上のフィルムが螺旋状に左巻きで巻回されていること
を特徴とする請求項1または2に記載の基礎製品を提供する方法。
【請求項4】
前記フィルムは、厚みが2μm以上25μm以下であること
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の基礎製品を提供する方法。
【請求項5】
1枚以上のフィルムが、少なくともポリテトラフルオロエチレン製のフィルムと熱可塑性フッ素樹脂製のフィルムとを積層して形成されていること
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の基礎製品を提供する方法。
【請求項6】
前記マンドレルは、外径0.05mm以上10mm以下であること
を特徴とする請求項1に記載の基礎製品を提供する方法。
【請求項7】
基礎製品を提供する方法であって、
該基礎製品は、少なくともポリテトラフルオロエチレンから構成された円筒状の長尺体であり、
該長尺体の平均厚みは5μm以上75μm以下であり、
該長尺体は、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる測定値を使用し、ひずみ%を横軸に、応力N/mm2を縦軸にとったときの前記長尺体の応力ひずみ曲線において、
該応力ひずみ曲線を単一のピークとみなしたときの、該ピークの半値全幅が10%以上150%以下の範囲にあり、
該長尺体が、マンドレル上に接触した状態で提供されること
を特徴とする基礎製品を提供する方法。
【請求項8】
基礎製品を提供する方法であって、
該基礎製品は、少なくともポリテトラフルオロエチレンから構成された円筒状の長尺体であり、
該長尺体の平均厚みは5μm以上75μm以下であり、
該長尺体は、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる測定値を使用し、ひずみ%を横軸に、応力N/mm2を縦軸にとったときの前記長尺体の応力ひずみ曲線において、
該応力ひずみ曲線を単一のピークとみなしたときの、該ピークの半値全幅が10%以上200%以下の範囲にあり、
該長尺体が、マンドレル上に接触した状態で提供されること
を特徴とする基礎製品を提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と言う。)製の基礎製品の提供方法と、その基礎製品である長尺体で被覆されたマンドレルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途や耐薬品性が要求される流体の輸送管など、配管の内層にフッ素樹脂層を設けた製品がある。これらの製品の中には、基礎製品として提供されたフッ素樹脂製の長尺体を使用し、そしてその長尺体に各種樹脂や補強層などの外層材を積層して製造されるものがある。
【0003】
たとえばフッ素樹脂製の長尺体をカテーテルに使用する場合、長尺体の外周上に直進性や操作性を付与するエラストマー層、金属線を含む補強層を順次積層して製品とするものがある。また、製薬用途ではフッ素樹脂製の長尺体上に、シリコーンエラストマーを積層し、その上にポリエステル繊維による編組を埋め込んだエラストマー層を積層して製品とするものがある。また、燃料輸送用途で使用する場合には、長尺体の外周にエラストマーを積層し、その外周に耐熱性が高い補強材の編組をかけて製品とするものがある。
【0004】
また、上記基礎製品を用いた完成品では、薄肉であることが要求されることがあり、その場合、その一部を構成する基礎製品も薄肉であることが求められる。また、製品の柔軟性や可とう性が必要とされる場合には、フッ素樹脂では硬いためその分基礎製品は薄肉にすることが必要なときがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、たとえば、ある製造業者は、基礎製品として提供された長尺体を使用する場合、長尺体の内部にマンドレルを挿通する工程、マンドレルを加熱し長尺体を長手方向に延伸させてマンドレルと長尺体とを均一に接触させる工程、長尺体をマンドレル表面に接触させた状態で長尺体に各種層を積層して製品を形成する工程、マンドレルを長手方向に延伸して縮径させマンドレルを製品から引き抜く工程を経て製品を製造することがある。上述のように、従来の基礎製品となる長尺体では、製品の製造工程に基礎製品をマンドレル上に接触させる工程が必要だった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、基礎製品を提供する方法であって、該基礎製品は、少なくとも1枚のフィルムが螺旋状に巻回され、該少なくとも1枚のフィルムにより隙間なく形成された長尺体であり、該少なくとも1枚のフィルムのうちの、少なくとも1枚のフィルムが少なくともポリテトラフルオロエチレンから構成され、該長尺体の平均厚みは5μm以上75μm以下であり、該長尺体は、該長尺体の螺旋状に巻回されたフィルムのうちの少なくとも1枚が、マンドレル上に接触した状態で提供される基礎製品を提供する方法によって解決される。

【0007】
また、本課題は、マンドレルと、該マンドレルの外周に少なくとも1枚のフィルムが螺旋状に巻回され、該少なくとも1枚のフィルムにより隙間なく形成された長尺体とからなり、該少なくとも1枚のフィルムのうちの、少なくとも1枚のフィルムが少なくともポリテトラフルオロエチレンから構成され、該長尺体の平均厚みは5μm以上75μm以下である長尺体で被覆されたマンドレルによって解決される。
【0008】
上記長尺体は、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる測定値を使用し、ひずみ%を横軸に、応力N/mmを縦軸にとったときの前記長尺体の応力ひずみ曲線において、該応力ひずみ曲線を単一のピークとみなしたときの、該ピークの半値全幅が10%以上150%以下の範囲にあることが好ましい。
【0009】
上記長尺体は、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる、前記長尺体の20%変位時の引張強度が100N/mm以上であることが好ましい。
【0010】
上記長尺体は、1枚以上のフィルムが螺旋状に右巻きで巻回され、1枚以上のフィルムが螺旋状に左巻きで巻回されていることが好ましい。
【0011】
上記フィルムは、厚みが2μm以上25μm以下であることが好ましく、上記フィルムは、少なくともポリテトラフルオロエチレン製のフィルムと熱可塑性フッ素樹脂製のフィルムとを積層して形成されたフィルムであってもよい。
【0012】
上記基礎製品として提供される長尺体は、外径0.05mm以上10mm以下のマンドレル上に接触した状態で提供されることがより好ましい。
【0013】
また、上記課題は、基礎製品を提供する方法であって、該基礎製品は、少なくともポリテトラフルオロエチレンから構成された円筒状の長尺体であり、該長尺体の平均厚みは5μm以上75μm以下であり、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる測定値を使用し、ひずみ%を横軸に、応力N/mmを縦軸にとったときの前記長尺体の応力ひずみ曲線において、該応力ひずみ曲線を単一のピークとみなしたときの、該ピークの半値全幅が10%以上150%以下の範囲にあり、該長尺体が、マンドレル上に接触した状態で提供する方法によって解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明による、今までにない基礎製品の提供方法により先述の課題が解決される。すなわち、基礎製品として提供された長尺体をマンドレルに接触させる工程が不要になり、その製造工程において、大幅に工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の基礎製品を提供するときの形態を表す図である。
図2図2は、本発明の長尺体の一例の断面図である。
図3図3は、本発明の長尺体に使用するフィルムの一例を説明する図である。
図4図4は、本発明の長尺体の一例のフィルムの巻回構造を説明する図である。
図5図5は、本発明の長尺体の一例の構造を説明する図である。
図6図6は、本発明の長尺体の一例の断面図である。
図7図7は、本発明の長尺体の応力ひずみ曲線の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴であっても本発明の成立に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の基礎製品を提供するときの形態を表す図である。本発明の基礎製品としての長尺体は、マンドレル110の外周上に長尺体120の内周面が接触した状態で製造業者に提供される。長尺体120は、ポリテトラフルオロエチレンを含む樹脂から構成された円筒状の形態であり、長尺体120の平均厚みは一般に薄いことが要求される。本発明の長尺体の厚みは、5μm以上75μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。また、長尺体120は、マンドレル110上に少なくとも1枚のフィルムが螺旋状に巻回され、該少なくとも1枚のフィルムにより隙間なく形成されることが好ましい。ここで、「隙間なく形成された」とはマンドレル110の外周面が1枚又は複数枚のフィルムにより完全に被覆された状態を意味する。
長尺体120をマンドレル110上に隙間なく形成する別の態様として、いわゆるシガレット巻きのフィルムにより隙間なく形成することもでき、また、1枚のシームレスフィルムにより隙間なく形成することもできる。
【0018】
図2は、本発明の長尺体がフィルムを螺旋状に巻回して構成されるときの一例の、長手方向に沿った断面の一部を表す図である。図2では長尺体120が、少なくとも2層からなる例を示す。図2a)は、長尺体120が2層からなるときの図であり、マンドレル110の外周上に、第1層のフィルム121aが螺旋状に間隔をあけて巻回されている。それより外側に第2層のフィルム122aが第1層のフィルム121aの間隔を埋めるように螺旋状に巻回されている。これにより、マンドレル110の外周面は2層のフィルムにより完全に被覆された状態となっている。図2b)は、長尺体120が2層からなるときの別の一例の図である。マンドレル110上に、第1層のフィルム121bが螺旋状に隙間をあけずに巻回され、それより外側に、第2層のフィルム122bが隙間を空けずに螺旋状に巻回されている。図2c)は、長尺体120が3層からなるときの一例の図である。マンドレル110の外周上に、第1層のフィルム121cが螺旋状に隙間をあけずに巻回され、それより外側に第2層のフィルム122cが螺旋状に間隔をあけて巻回され、さらにその外側に第3層のフィルム123cが螺旋状に隙間をあけずに巻回されている。また、本発明の長尺体は、例えば、4層以上の層から構成されていてもよい。
【0019】
本発明に使用されるマンドレルには、SUS、銅、銀、真鍮、アルミ、ニッケルチタンなどの金属製パイプ、またはPTFE、PEEKなどの樹脂製パイプ、SUS、銅、銀、アルミ、ニッケルチタンなどの金属線、またはこれらの金属線に銀、ニッケルなどの金属メッキを施した線材、PTFEまたはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂線、を使用することができる。マンドレルの断面形状は、通常は円形(略円形を含む)であるが、必要に応じて四角形、多角形などの形状であったり、部分的に形状が変化するものであってもよい。マンドレルの外周面には長尺体が接触するため、マンドレルの表面は平滑なものが好ましい。
【0020】
本発明に断面形状が円形のマンドレルを使用する場合、外径が0.05mm以上10mm以下のものを使用することが好ましい。中でも0.075mm以上8mm以下のものが好ましく、0.1mm以上5mm以下のものが更に好ましい。マンドレルの引張破断伸びは5%以上であることが好ましい。引張破断伸びが5%以上の場合、マンドレルが製造工程上で不要になった段階で、マンドレルを長手方向に延伸してその外径を小さくし、マンドレルからの基礎製品を使った完成品の抜き取りがさらに容易にできる。また、引張破断強度は75MPa~600MPaであることが好ましい。
【0021】
本発明の長尺体に使用するポリテトラフルオロエチレンから構成されるフィルムは、充実構造のPTFEから構成されることが好ましい。充実構造のPTFEを使用した場合、長尺体を使った完成品の気密性と強度が得られる。充実構造のPTFEから構成されるフィルムは、例えば、以下のように作成することができる。PTFE樹脂のファインパウダーと、助剤(ソルベントナフサやホワイトオイル等の潤滑剤)とを混合し、圧縮してできた予備成形品を押出機に投入してフィルム状に成形し、それを乾燥させる。乾燥させると、フィルム状に成形した成形物中の助剤が揮発して、フィルム中に細孔を有する未焼成PTFEフィルムが得られる。未焼成PTFEフィルムを融点以上の温度に加熱して焼成すると、フィルム中の細孔が消滅し、充実PTFEフィルムとなる。このとき、さらに加圧ロールを通してフィルムを圧縮することもできる。また、上述の未焼成PTFEフィルムを融点以下の温度で加熱しながら一軸または二軸方向に延伸し、多孔質構造のPTFEフィルムを作成したあとで、加圧して充実構造のフィルムとすることもできる。加圧後のそのフィルムは、焼成して用いてもよい。作成したフィルムは、一般に、使用する幅にスリットして使用する。また、上述の多孔質構造のPTFEフィルムを、例えば、マンドレル外周上に螺旋状に巻回したあとに、リング状のダイスを通過させて、多孔質構造から充実構造のPTFEに変えることができる。
【0022】
本発明の長尺体に使用するフィルムには、必要に応じてフィラーまたはその他の樹脂が含まれていても良い。フィラーとして、例えば、カーボン、アルミナなどの金属酸化物及び樹脂フィラーが挙げられ、その他の樹脂として、例えば、熱可塑性フッ素樹脂が挙げられる。これらは、1種類または複数種類を合わせて使用することが出来る。
【0023】
図3は、本発明の長尺体に使用するフィルムの一例を説明する図であり、長尺体の第2層130aが、1枚のPTFE製のフィルム131aから構成され、第1層130bが、1枚のPTFE製のフィルム132aと1枚の熱可塑性フッ素樹脂製のフィルム132bとを積層して形成されているときの一例を表している。本発明の長尺体に使用するフィルムは、130bのような2枚の樹脂フィルムを積層したものに限らず、3枚以上の複数枚の樹脂フィルムを積層したものも使用できる。積層した複数枚の樹脂フィルムは、張り合わせても、張り合わせていなくてもよい。本発明において「1枚のフィルム」というときには、図3の第2層130bのように、2枚以上の樹脂フィルムを積層したうえで、それをマンドレル上に(場合によっては長尺体のある層の上に)同じ角度で巻回しているものも含む。
熱可塑性フッ素樹脂製の樹脂フィルムに使用する樹脂は、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のような、PTFEの結晶融点よりも融点が低い樹脂が好ましい。PTFE製のフィルムと熱可塑性フッ素樹脂製のフィルムとから構成される一枚のフィルムを用いる場合、その厚さの比率(PTFE製の樹脂フィルム/熱可塑性フッ素樹脂製の樹脂フィルム)は、10/1~1/1の範囲が好ましい。本発明の長尺体は、PTFEが主成分であることが好ましい。ここで、主成分であるとは体積比率で全体の半分以上を占めることを意味する。
【0024】
本発明の長尺体に使用するフィルムは、厚みが2μm以上25μm以下であることが好ましく、3μm以上25μm以下であることがより好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。フィルムの厚みが薄いほど、マンドレル上にフィルムを巻回したときに巻目の段差が小さく、長尺体の内表面および外表面への巻目の影響が小さくなり好ましいが、薄すぎるとマンドレル上にフィルムを被覆するときに、フィルムの破れやしわが発生するなどの虞がある。
【0025】
本発明の長尺体に使用するフィルムの幅は、長尺体の内径と必要な長尺体の厚さ、フィルムの巻き角度などに応じて、適宜決めることができる。図4は、本発明の長尺体のフィルムの巻回構造に関するパラメーターを説明するための図である。マンドレル110の外径(長尺体の内径)をD、フィルムの巻き角度をα、フィルム130を1回巻くときに進む距離すなわちピッチをP、巻回されたフィルム130同士の重なり量をbとすると、フィルム130の幅Wは、下式で求められる。ここで、フィルムの巻き角度αは、長尺体の中心軸Aと、フィルムの幅の中心線Bとに挟まれた角度であり、0度より大きく90度より小さい角度とする。
P=πDcosα
W=Psinα+b
本発明において、フィルムの巻き数(ラップ数)は下式で求められる。フィルム130の幅をW、フィルム130同士の重なり量bとする。
フィルムの巻き数(ラップ数)= 1+(b/W)
フィルム130が間隔をあけて巻回される場合は、フィルム130同士の重なり量はマイナス量であらわされ、フィルムの巻き数は1未満の数字となる。
【0026】
図5は、本発明の長尺体の一例のフィルムの巻回構造を説明する図である。図5の例では、1枚のフィルムから構成される層を3層備えている。各フィルムは、螺旋の向きが右巻き(Z巻き)、左巻き(S巻き)のいずれかで巻回される。図5の例では、長尺体120の第1層121は、巻回される方向が右巻きで巻回され形成されている。第2層122は、フィルムを巻回させる方向が第一層121とは異なる方向、すなわち左巻きで巻回されている。第3層123は、フィルムを巻回させる方向が第1層と同じ右巻きで巻回されている。本発明の長尺体は、1枚以上のフィルが螺旋状に右巻きで巻回され、1枚以上のフィルムがそれとは逆の左巻きで螺旋状に巻回されていることが好ましい。
【0027】
本発明の長尺体の各層は、フィルムの巻き角度が3度~30度の角度で巻回されていることが好ましく、3度~20度の角度で巻回されていることがより好ましい。長尺体を構成するすべての層の巻き角度をそろえる必要はなく、各層が異なる巻き角度で巻回されていてもよい。長尺体の各層のフィルムは、それぞれフィルムの端が重なるように巻回されることが好ましいが、隙間を空けて巻回された層を積層することにより、マンドレルの外周が完全に被覆された状態で長尺体を形成したものでもよい。図6は、長尺体の第1層のフィルムが巻き数1.5ラップ(すなわちフィルムの幅の半分が隣り合うフィルムと重なり合う巻き数)で巻回されているときの例である。
【0028】
マンドレル上の長尺体は、340℃以上に加熱されていることが好ましい。このように加熱することで、巻回されたフィルム同士の重なり部、または隣接した層が融着し一体化しやすくなる。また、加熱することによりマンドレル上に強く接触させやすい。
【0029】
本発明の長尺体は、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる測定値を使用し、ひずみ%を横軸に、応力N/mmを縦軸にとったときの前記長尺体の応力ひずみ曲線において、該応力ひずみ曲線を単一のピークとみなしたときの、該ピークの半値全幅が10%以上200%以下範囲にあることが好ましく、10%以上150%以下の範囲にあることがより好ましく、10%以上100%以下であることがさらに好ましい。このようにすることにより、強度と屈曲性のバランスのとれた長尺体となる。また、薄肉の長尺体であっても屈曲性と強度を両立することができる。
【0030】
本発明の長尺体は、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる、前記長尺体の20%ひずみ引張強度が100N/mm以上であることがとくに好ましい。
【0031】
本発明では、それが完成品でなく基礎製品の範中であれば、本発明の長尺体の上に、さらに加工を加えて製造業者へ提供する場合も含む。このとき、本発明の長尺体の引張試験は、長尺体の上に加工を加える前の、長尺体単体の状態で行う。
【0032】
従来の基礎製品は、完成品の長さに合わせて提供されてきており、そのような提供方法でも良いが、本発明の基礎製品の提供方法では、長尺体を完成品複数本分の長さでリールに巻くか束巻きにして提供することも可能である。
【0033】
本発明の長尺体の製造方法について下記の実施例でより詳細に説明する。下記の実施例は、発明を例示するものであって、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【実施例
【0034】
<長尺体の寸法測定>
長尺体で被覆されたマンドレルを、長さ1mほどにカットし、マンドレルのみを延伸して抜き取り、長尺体の寸法を測定した。内径、外径、及び肉厚は、長尺体の長手方向に垂直な断面においてマイクロスコープを使用して測定するか、内径はピンゲージを使用し、外径はピンゲージを挿入した状態でダイヤルゲージを使用して測定する。マイクロスコープを使用する場合は、同一断面内でできるだけ均等に各方向から測定できるように4方向以上で測定して算術平均値をとる。ピンゲージとダイヤルゲージを使用した場合は、できるだけ均等に4方向から測定して算術平均値をとる。できるだけ同一サンプルで複数ヶ所の断面について測定して算術平均値をとることが好ましい。長尺体の内径が大きい場合は、長尺体を長手方向に切り開いて、ダイヤルゲージを使用して肉厚を測定することも可能である。
長尺体の寸法は、完成品の長手方向の中心くらいに相当する、長尺体の部位で測定することが好ましい。例えば、完成品の長手方向の中心くらいに相当する、長尺体の部位を寸法測定範囲の中心として、前後25cmの範囲で寸法を測定し、その算術平均値をとるということが考えられる。
<引張試験>
JIS K7127‐1999に準拠して、長尺体の引張試験を行った。ただし、試験片を8~10cm程度以上の長さでカットした長尺体とした。試験片は、完成品の長手方向の中心くらいに相当する、長尺体の部位をチャックの中心に配置できるようにするのが好ましい。試験片を引張試験機のチャックにセットし、チャック間距離を標線間距離として引張試験を行った。引張試験機は、島津製作所製 オートグラフAGS‐1kNX型を使用し、23℃±2℃の環境下で、初めのチャック間距離50mm、試験速度200mm/minの条件で実施した。
得られた測定値は、ひずみを%で表示して横軸に、応力をN/mmの単位で縦軸にとって応力ひずみ曲線を作成した。ここで、ひずみとは、標線間距離の引張時の増加量を初めのチャック間距離で除した値のことであり、応力とは引張力をチャック間の引張前の長尺体の断面積(通常、引張前の長尺体の端部の断面積に等しい)で除した値のことである。応力ひずみ曲線を単一のピークとみなして、その単一ピークの応力の最大値の半分の応力値におけるピークの幅(ピークの2つのひずみの値の差)を、そのサンプルの応力ひずみ曲線におけるピークの半値全幅とした。図7に本発明の長尺体の応力ひずみ曲線の模式図と、このときの半値全幅(FWHM)を示す。図7の応力ひずみ曲線を単一のピークとみなしたとき、ピークの応力の最大値σmaxの半分の応力値1/2σmaxのとき、ひずみの値は、εとεをとる。ピークの半値全幅は、下式で求められる。
半値全幅(%)= ε-ε
また、上記引張試験で、ひずみが20%のときの引張応力を、20%ひずみ引張強度とした。20%ひずみ引張強度は、100N/mm以上であることが好ましい。
【0035】
実施例1
基礎製品の製造業者の工程
フィルムとして、PTFEフィルム(厚さ7μm)を準備した。マンドレルとして、外径0.45mmのステンレス線を準備した。ラッパーを使用して、マンドレルの外周に、第1層としてPTFEフィルムを右巻きで螺旋状に巻き数1.5ラップで巻回し、その上に第2層としてPTFEフィルムを左巻きで螺旋状に巻き数1.3ラップで巻回し、積層していった。このフィルムが積層されたマンドレルを、370℃に加熱したオーブンの中を通過させ、その後空冷させ、リールに巻きとった。得られた長尺体の特性を表1にまとめた。
完成品の製造業者の工程
基礎製品の製造業者から受け取った長尺体で被覆されたマンドレルを、リールから押出機へ送り出し、その外周にポリアミドエラストマーを0.25mm厚さに押出していき、インライン自動カット機(In‐line Automated Cutter)で長さ2mにカットした。カットした後マンドレルのみを延伸してマンドレルを抜き取り、ポリアミドエラストマーを積層した完成品が得られた。

実施例2
基礎製品の製造業者の工程
フィルムとして、PTFEフィルム(厚さ6μm)を準備した。マンドレルとして、外径0.19mmの銅線を準備した。ラッパーを使用して、マンドレルの外周に、第1層としてPTFEフィルムを右巻きで螺旋状に巻回し、その上に第2層としてPTFEフィルムを左巻きで螺旋状に巻き数1.4ラップで巻回し、積層していった。このフィルムが積層されたマンドレルを、380℃に加熱したオーブンの中を通過させ、その後空冷させ、リールに巻きとった。得られた長尺体の特性を表1にまとめた。
完成品の製造業者の工程
基礎製品の製造業者から受け取った長尺体で被覆されたマンドレルを、リールから押出機へ送り出し、その外周にポリアミドエラストマーを0.20mm厚さに押出していき、インライン自動カット機(In‐line Automated Cutter)で長さ2mにカットした。カットした後マンドレルのみを延伸してマンドレルを抜き取り、ポリアミドエラストマーを積層した完成品が得られた。

実施例3
基礎製品の製造業者の工程
フィルムとして、PTFEフィルム(厚さ7μm)を準備した。また、PTFEフィルム(厚さ7μm)とPFAフィルム(厚さ8μm)を積層したフィルム(積層フィルム)を準備した。マンドレルとして、外径1.51mmのステンレスパイプを準備した。ラッパーを使用して、マンドレルの外周に、第1層としてPTFEフィルムを左巻きで螺旋状に巻き数1.5ラップで巻回し、その上に第2層として積層フィルムを右巻きで螺旋状に巻き数1.9ラップで巻回し、積層していった。このフィルムが積層されたマンドレルを、380℃に加熱したオーブンの中を通過させ、その後空冷させ、リールに巻きとった。得られた長尺体の特性を表1にまとめた。
完成品の製造業者の工程
基礎製品の製造業者から受け取った長尺体で被覆されたマンドレルを、リールから押出機へ送り出し、その外周にポリアミドエラストマーを0.5mm厚さに押出していき、インライン自動カット機(In‐line Automated Cutter)で長さ2mにカットした。カットした後マンドレルのみを延伸してマンドレルを抜き取り、ポリアミドエラストマーを積層した完成品が得られた。

実施例4
基礎製品の製造業者の工程
PTFEフィルム(厚さ6μm)とPFAフィルム(厚さ2μm)を積層したフィルム(積層フィルム)を準備した。マンドレルとして、外径1.51mmのPTFE製のモノフィラメントを準備した。ラッパーを使用して、マンドレルの外周に、第1層として積層フィルムのPTFE側をマンドレルに向けて左巻きで螺旋状に巻き数1.5ラップで巻回し、その上に第2層として積層フィルムを右巻きで螺旋状に巻き数1.5ラップで巻回し、積層していった。このフィルムが積層されたマンドレルを、370℃に加熱したオーブンの中を通過させ、その後空冷させ、リールに巻きとった。得られた長尺体の特性を表1にまとめた。
完成品の製造業者の工程
基礎製品の製造業者から受け取ったラストマーを0.5mm厚さに押出していき、インライン自動カット機(In‐line Automated Cutter)で長さ2mにカットした。カットした後マンドレルのみを延伸してマンドレルを抜き取り、ポリウレタンエラストマーを積層した完成品が得られた。

実施例5
基礎製品の製造業者の工程
フィルムとして、PTFEフィルム(厚さ6μm)を準備した。また、PTFEフィルム(厚さ6μm)とPFAフィルム(厚さ2μm)を積層したフィルム(積層フィルム)を準備した。マンドレルとして、外径1.49mmのステンレスパイプを準備した。ラッパーを使用して、マンドレルの外周に、第1層としてPTFEフィルムを右巻きで螺旋状に巻き数1.3ラップで巻回し、その上に第2層として積層フィルムを左巻きで螺旋状に巻き数1.2ラップで巻回し、さらにその上に、第3層として積層フィルムを左巻きで螺旋状に巻き数1.0ラップで巻回し、積層していった。このフィルムが積層されたマンドレルを、390℃に加熱したオーブンの中を通過させ、その後空冷して、リールに巻きとった。得られた長尺体の特性を表1にまとめた。
完成品の製造業者の工程
基礎製品の製造業者から受け取った長尺体で被覆されたマンドレルを、リールから押出機へ送り出し、その外周にポリウレタンエラストマーを0.5mm厚さに押出していき、インライン自動カット機(In‐line Automated Cutter)で長さ2mにカットした。カットした後マンドレルのみを延伸してマンドレルを抜き取り、ポリウレタンエラストマーを積層した完成品が得られた。

実施例6
基礎製品の製造業者の工程
フィルムとして、PTFEフィルム(厚さ6μm)を準備した。また、PTFEフィルム(厚さ7μm)とPFAフィルム(厚さ8μm)を積層したフィルム(積層フィルム)を準備した。マンドレルとして、外径1.49mmのステンレスパイプを準備した。ラッパーを使用して、マンドレルの外周に、第1層としてPTFEフィルムを左巻きで螺旋状に巻き数1.3ラップで巻回し、その上に第2層として積層フィルムを右巻きで螺旋状に巻き数1.9ラップで巻回し、さらにその上に、第3層として積層フィルムを左巻きで螺旋状に巻き数1.9ラップで巻回し、積層していった。このフィルムが積層されたマンドレルを、370℃に加熱したオーブンの中を通過させ、その後空冷して、リールに巻きとった。得られた長尺体の特性を表1にまとめた。
完成品の製造業者の工程
基礎製品の製造業者から受け取った長尺体で被覆されたマンドレルを、リールから押出機へ送り出し、その外周にポリオレフィンエラストマーを0.5mm厚さに押出していき、インライン自動カット機(In‐line Automated Cutter)で長さ2mにカットした。カットした後マンドレルのみを延伸してマンドレルを抜き取り、ポリオレフィンエラストマーを積層した完成品が得られた。

実施例7
基礎製品の製造業者の工程
PTFEフィルム(厚さ8μm)とPFAフィルム(厚さ7μm)を積層したフィルム(積層フィルム)を準備した。マンドレルとして、外径1.49mmのアルミ線を準備した。ラッパーを使用して、マンドレルの外周に、第1層として積層フィルムを右巻きで螺旋状に巻き数1.3ラップで巻回し、その上に第2層として積層フィルムを左巻きで螺旋状に巻き数1.3ラップで巻回し、積層していった。このフィルムが積層されたマンドレルを、380℃に加熱したオーブンの中を通過させ、その後空冷して、リールに巻きとった。得られた長尺体の特性を表1にまとめた。
完成品の製造業者の工程
基礎製品の製造業者から受け取った長尺体で被覆されたマンドレルを、リールから押出機へ送り出し、その外周にポリオレフィンエラストマーを0.5mm厚さに押出していき、インライン自動カット機(In‐line Automated Cutter)で長さ2mにカットした。カットした後マンドレルのみを延伸してマンドレルを抜き取り、ポリオレフィンエラストマーを積層した完成品が得られた。

実施例8
基礎製品の製造業者の工程
マンドレルとして、外径1.01mmのステンレス線を準備した。容器に、PTFEファインパウダー100質量部に対して、助剤18質量部を入れて混合し、予備成形機に投入して予備成形体を作成した。予備成形体を押出成形機に投入し、円筒状の押出金型を通してシームレスフィルム状に押出成形し、それを延伸しながら、押出成形金型内部を通って出てきているマンドレル上に被覆して長尺体を形成させた。長尺体で被覆したマンドレルは、150℃に設定した乾燥炉で乾燥させた後、430℃に設定した焼成炉を通過させ、その後空冷してリールに巻きとった。得られた長尺体の特性を表1にまとめた。
完成品の製造業者の工程
基礎製品の製造業者から受け取った長尺体で被覆されたマンドレルを、リールから押出機へ送り出し、その外周にポリアミドエラストマーを0.35mm厚さに押出していき、インライン自動カット機(In‐line Automated Cutter)で長さ2mにカットした。カットした後マンドレルのみを延伸してマンドレルを抜き取り、ポリアミドエラストマーを積層した完成品が得られた。

上記実施例において、基礎製品の製造業者と完成品の製造業者は、異なる事業体であってもよいが、それらのものは、同じ事業体内において異なる製造工程に携わる者であってもよい。
また、基礎製品の製造業者から完成品の製造業者ではなく、基礎製品の製造業者から次の基礎製品の製造業者であってもよい。

比較例1
基礎製品の製造業者の工程
PTFEファインパウダー100重量部に対して、助剤15重量部を配合し、予備成形機に投入して予備成形体を作成した。予備成形体を押出成形機に投入し、ラム速度3mm/minで押出して円筒状に押出成形した。成形したPTFEは、乾燥後、430℃のオーブンで加熱し、焼成し、カットし、肉厚0.025mm、長さ2mのPTFEライナーが得られた。
完成品の製造業者の工程
マンドレルとして外径1.35mmのステンレスパイプを準備した。基礎製品の製造業者から受け取ったPTFEライナーそれぞれの内部に、長さ2.2mのマンドレルを挿通した。PTFEライナーの片端をマンドレルに固定し、もう一方の端部におもりを固定して200℃の恒温槽内に吊るし、おもりの荷重でPTFEライナーを長手方向に延伸させ、縮径させた。PTFEライナーの内表面がマンドレル表面に接触した状態のPTFEライナーが得られた。
つぎに、PTFEライナーで被覆されたマンドレルを1本ずつ取り出し、その表面にポリアミドエラストマーを肉厚が0.5mmになるように塗布し、ポリアミドエラストマーを架橋させた。その後、マンドレルのみを延伸し、マンドレルを抜き取り、ポリアミドエラストマーを積層した完成品を得た。
ただし、加熱してPTFEライナーを長手方向に延伸させる工程において、すべて同じ条件で延伸させたが、長手方向に伸びすぎるものがあり、PTFEライナー肉厚がばらつくものが発生した。
【0036】
実施例、比較例の基礎製品の製造業者の工程で作成した長尺体について、JIS K7127‐1999に準拠して、引張試験を行った。チャック間距離50mm、試験速度200mm/minの条件で引張試験を実施した。得られた測定値から、サンプルの応力ひずみ曲線におけるピークの半値全幅と、20%ひずみ引張強度を確認した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
本発明の提供方法で基礎製品として提供される長尺体は、完成品の製造業者においてマンドレルに被覆させる工程を必要とすることなく、完成品の製造業者の工程を大幅に削減することができた。従来の提供方法である比較例では、長尺体をマンドレルに被覆する工程が必要であったため、本発明の提供方法である実施例と比較して作業時間を大きくロスする結果となった。また、従来の提供方法である比較例では、複数本の完成品を個別に製造する必要があった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の基礎製品は、特に耐薬品性が要求される流体の輸送管の内層材やカテーテルなどの医療用途など、幅広い分野で好適に用いることができる。本発明の基礎製品を提供されて取り扱う製造業者は、その製造工程において、大幅に工数を削減することができる。
【符号の説明】
【0040】
110 マンドレル、 120 長尺体、 121 第1層、 122 第2層、 123 第3層、 130 フィルム


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7