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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】拡張現実ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020517822
(86)(22)【出願日】2018-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 IL2018051068
(87)【国際公開番号】W WO2019064301
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】62/565,135
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518010049
【氏名又は名称】ルムス エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
【住所又は居所原語表記】8 Pinchas Sapir Street, 7403631 Ness Ziona, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ダンジガー,ヨハイ
(72)【発明者】
【氏名】レヴィン,ナアマ
(72)【発明者】
【氏名】シャーリン,エラド アクセル
(72)【発明者】
【氏名】チャイエット,アレグザンダー
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219490(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0026486(KR,A)
【文献】国際公開第2014/154225(WO,A1)
【文献】特開2015-060066(JP,A)
【文献】特表2009-516862(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132347(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ領域から観察方向に沿って観察者の眼に画像を提供するディスプレイであって、前記ディスプレイは:
(a) 投影方向に沿ってコリメートされた画像照明を投影する画像プロジェクタと;
(b) 第1の主表面及び第2の主表面を有する少なくとも部分的に透明な材料から形成された光学要素であって、前記光学要素は複数の部分反射面を含み、前記複数の部分反射面は、前記光学要素の内部にあり、平面状であり、互いに平行であり、且つ前記投影方向に対して少なくとも部分的にオーバーラップしている、光学要素と;
を有し、
前記画像プロジェクタは、前記ディスプレイ領域内で前記主表面のうちの1つに入射する前記投影方向を有する前記光学要素に対して配置され、前記コリメートされた画像照明の各光線が前記光学要素に入射し、前記観察方向に沿って前記第1の主表面を出射するためにリダイレクトされるように、前記主表面のうちの1つからの事前の反射なしに前記部分反射面の少なくとも2つによって部分的に反射されるように、配向され、
前記投影方向は、50度を超える角度で前記主表面の1つに入射し、
前記画像プロジェクタは、前記光学要素内に前記部分反射面の伸長方向に平行な主要寸法を持つ細長い有効開口を有する画像を投影するための光学開口拡大装置を有し、
前記光学開口拡大装置は、複数の部分反射内部表面を含む光ガイド光学要素を有する、
ディスプレイ。
【請求項2】
前記画像プロジェクタは、前記主表面のうちの前記1つに到達する前に前記画像照明を修正する色収差補正要素を含む、
請求項に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記画像プロジェクタは、出力方向を持つ画像発生器を有し、前記光学開口拡大装置は、透明材料から形成され、複数の部分反射面を含む光学拡大要素を有し、前記複数の部分反射面は、前記光学拡大要素の内部にあり、平面状であり、互いに平行であり、且つ前記画像発生器の出力方向に対して少なくとも部分的にオーバーラップしており、前記画像発生器は、前記光学拡大要素に入射する出力方向を持つ前記光学拡大要素に対して配置され、前記コリメートされた画像照明の各光線が前記光学拡大要素に入射し、前記投影方向に沿って前記光学拡大要素を出射するためにリダイレクトされるように前記部分反射面の少なくとも2つによって部分的に反射されるように、配向される、
請求項に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記光学要素は平面状スラブである、
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記光学要素は非平面状スラブである、
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記画像プロジェクタは、前記主表面のうちの前記1つに到達する前に前記画像照明を修正する歪補正要素を含む、
請求項に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記光学要素は、屈折力を備えるレンズである、
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記投影方向が入射する前記主表面のうちの前記1つは、前記画像照明が前記観察方向に沿って出射する前記第1の主表面である、
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記投影方向が入射する前記主表面のうちの前記1つは、前記第2の主表面である、
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記部分反射面は、偏光選択層として実装される、
請求項1に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイに関し、特に、光学要素(光学素子)内で斜めに配置される部分的な反射面と組み合わせて自由空間画像投影を使用する拡張現実ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
拡張現実ディスプレイは、視覚的な表示(visual display)及び現実世界(real world)のビューを同時に観察者(observer)に提供するディスプレイである。拡張現実ディスプレイの例は、固定ウインドウを介して表示が提供されるヘッドアップディスプレイと、典型的にはガラスフレームフォームファクタ又はヘッドマウントバイザのいずれかで、ディスプレイが観察者の頭に対して装着されるニアアイディスプレイとを含む。特に、ニアアイディスプレイに関しては、ディスプレイはコンパクトである必要がある。現実世界の可視性は、乱されず、歪められず、不明瞭でないことが望ましい。
【0003】
多くのニアアイディスプレイシステムは、現実世界の可視性を可能にしながら仮想画像を眼に投影するために、部分反射部(partial reflector)が眼の前に斜めの角度で配置されるビームスプリッタアーキテクチャ(beam splitter architecture)を利用する。このタイプの構成は、図1に概略的に示されている。ビームスプリッタの斜めの角度に関する幾何学的要件は、典型的には、構造をかさ高くする。
【0004】
拡張現実ディスプレイの別のアプローチは、画像が全内部反射によって基板内にトラップされ、基板の予め定められた領域から観察者の眼に向かって基板から外に結合される光ガイド光学要素を使用する。このアプローチは、画像が全内部反射によってトラップされるように、画像を光ガイド内に導入するためのカップリングイン配置(coupling-in arrangement)を必要とする。光ガイド基板は、複数の内部反射を通して画質を維持するために、その光学表面の高精度平行度を必要とする。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、観察者の目に画像を提供するためのディスプレイである。
【0006】
本発明の実施形態の教示によれば、観察方向(viewing direction)に沿って観察者の眼に画像を提供するディスプレイが提供され、ディスプレイは:(a)投影方向に沿ってコリメートされた(collimated)画像照明を投影する画像プロジェクタと、(b)第1の主表面及び第2の主表面を有する少なくとも部分的に透明な材料から形成された光学要素とを有し、光学要素は、複数の部分反射面(partially reflective surfaces)を含み、複数の部分反射面は、光学要素の内部にあり、平面状であり、互いに平行であり、且つ投影方向に対して少なくとも部分的にオーバーラップしており、画像プロジェクタは、主表面のうちの1つに入射する投影方向を有する光学要素に対して配置され、コリメートされた画像照明の各光線が光学要素に入射し、観察方向に沿って第1の主表面を出射するためにリダイレクトされる(redirected)ように部分反射面の少なくとも2つによって部分的に反射されるように、配向される(oriented)。
【0007】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、投影方向は、50度を超える角度で主表面のうちの1つに入射する。
【0008】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、画像プロジェクタは、主表面のうちの1つに到達する前に画像照明を修正する色収差補正要素(chromatic aberration compensation element)を含む。
【0009】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、プロジェクタは、光学要素内に部分反射面の伸長方向(extensional direction)に平行な主要寸法を持つ細長い有効開口(elongated effective aperture)を有する画像を投影するための光学開口拡大装置(optical aperture expansion arrangement)を有する。
【0010】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、光学開口拡大装置は、複数の部分反射内部表面を含む光ガイド光学要素を有する。
【0011】
本発明の一実施形態のさらなる特徴によれば、プロジェクタは、出力方向を持つ画像発生器を有し、光学開口拡大装置は、透明材料から形成され、複数の部分反射面を含む光学拡大要素を有し、複数の部分反射面は、光学拡大要素の内部にあり、平面状であり、互いに平行であり、且つ画像発生器出力方向に対して少なくとも部分的にオーバーラップしており、画像発生器は、光学拡大要素に入射する出力方向を持つ光学拡大要素に対して配置され、コリメートされた画像照明の各光線が光学拡大要素に入射し、投影方向に沿って光学拡大要素を出射するためにリダイレクトされるように部分反射面の少なくとも2つによって部分的に反射されるように、配向される。
【0012】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、光学要素は平面状スラブ(planar slab)である。
【0013】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、光学要素は非平面状スラブである。
【0014】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、画像プロジェクタは、主表面のうちの1つに到達する前に画像照明を修正する歪補正要素を含む。
【0015】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、光学要素は、屈折力(refractive optical power)を備えるレンズである。
【0016】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、投影方向が入射する主表面のうちの1つは、画像照明が観察方向に沿って出射する第1の主表面である。
【0017】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、投影方向が入射する主表面のうちの1つは、第2の主表面である。
【0018】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、部分反射面は、偏光選択層として実装される。
【0019】
また、本発明の実施形態の教示によれば、観察方向に沿って観察者の眼に画像を提供するディスプレイが提供され、ディスプレイは:(a)投影方向に沿ってコリメートされた画像照明を投影する画像プロジェクタと;(b)第1の主表面及び第2の主表面を有する少なくとも部分的に透明な材料から形成される光学要素とを有し、光学要素は、複数の部分反射面を含み、複数の部分反射面は、光学要素の内部にあり、平面状であり、且つ互いに平行であり、画像プロジェクタは、主表面のうちの1つに入射する投影方向を有する光学要素に対して配置され、コリメートされた画像照明の各光線が光学要素に入射し、前記部分反射面の少なくとも1つによって第1の反射で部分的に反射され、その結果、主表面のうちの少なくとも1つで全反射し、観察方向に沿って第1の主表面を出射するように複数の部分反射面のうちの他のものから少なくとも1つのさらなる反射によってリダイレクトされるように、配向される。
【0020】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、部分反射面の少なくとも1つは、画像照明の第1の光線に対する第1の反射と、画像照明の第2の光線に対するさらなる反射の両方に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、添付の図面を参照して、単なる例示として本明細書に記載されている。
【0022】
図1】ビームスプリッタジオメトリに基づく従来技術の拡張現実ディスプレイの概略図である。
図2A】観察者の目に画像を提供するための、本発明の実施形態の教示に従って構成され作動する、ディスプレイの概略側面図である。
図2B】種々の光線経路を示す図2Aのディスプレイからの光学要素の拡大図である。
図3A】横開口拡大(transverse aperture expansion)を達成するための異なるオプションを示す図2Aのディスプレイの概略正面図である。
図3B】横開口拡大を達成するための異なるオプションを示す2Aのディスプレイの概略正面図である。
図3C】横開口拡大を達成するための異なるオプションを示す2Aのディスプレイの概略正面図である。
図3D】横開口拡大を達成するための異なるオプションを示す2Aのディスプレイの概略正面図である。
図4】平らなプレートとして実装された光学要素を使用する図2Aのディスプレイの実装を示す概略等角図である。
図5】曲率を有するプレートとして実装される光学要素を使用する図2Aのディスプレイの実装を示す概略的な等角図である。
図6A】観察者の目に画像を提供するための、本発明の実施形態の教示に従って構成されかつ作動する、ディスプレイの代替的な実施の概略的側面図である。
図6B】種々の光線経路を示す図6Aのディスプレイからの光学要素の拡大図である。
図7図6Aのディスプレイの代替実施形態のための光学要素の拡大図である。
図8A】上記実施形態のいずれかの光学要素を製造するための技術を示す概略断面図である。
図8B】上記実施形態のいずれかの光学要素を製造するための技術を示す概略断面図である。
図9A】観察者の目に画像を提供するための、本発明の実施形態の教示に従って構築されて動作する、ディスプレイの代替的な実装の概略側面図であり、ディスプレイは、仮想画像と現実世界のビューとの間の偏光管理を使用する。
図9B図9Aのディスプレイの光学要素内の部分反射面で使用するための、それぞれ2種類の誘電体コーティングのS偏光及びP偏光光の反射率特性を示すグラフである。
図9C図9Aのディスプレイの光学要素内の部分反射面で使用するための、それぞれ2種類の誘電体コーティングのS偏光及びP偏光光の反射率特性を示すグラフである。
図10A】非ガイド及びガイドディスプレイ入力の両方を組み合わせた、図6Aのディスプレイの代替実施形態のための光学要素の拡大側面図である。
図10B】ガイド及び非ガイド画像のそれぞれについて、伝搬路に沿った主光線に関する光線方向の角度空間における表現である。
図10C】ガイド及び非ガイド画像のそれぞれについて、伝搬路に沿った主光線に関する光線方向の角度空間における表現である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、観察者の目に画像を提供するためのディスプレイである。
【0024】
本発明によるディスプレイの原理及び動作は、図面及び添付の説明を参照することにより、よりよく理解され得る。
【0025】
次に、図面を参照すると、図2A~10Cは、観察方向VDに沿って観察者の目に画像を提供するための、本発明の特定の実施形態の教示に従って構築され実施される、ディスプレイの様々な実施形態を示す。一般的に言うと、ディスプレイは、投影方向PDに沿ってコリメートされた画像照明を投影する画像プロジェクタ20(又は、異なる例による、60又は97)と、第1及び第2の主表面を有する少なくとも部分的に透明な材料から形成された光学要素22(又は、62、72、又は110)とを含む。光学要素は、光学要素の内部にあり、平面状であり、互いに平行であり、照明方向に沿って見たときに少なくとも部分的にオーバーラップしている、複数の部分反射面又は「ファセット」24(41、52、64、74又は90A)を含む。
【0026】
画像プロジェクタは、主表面のうちの1つに入射する投影方向PDを有する光学要素に対して配置され、コリメートされた画像照明の各光線が光学要素に入射し、観察方向VDに沿って第1の主表面から出射するためにリダイレクトされるように、部分反射面の少なくとも2つによって部分的に反射されるように配向される。
【0027】
本発明は、図1の従来技術のビームスプリッタアプローチと比較して、重要な設計上のフレキシビリティを提供することはすぐに明らかになるであろう。具体的には、ファセットが、光学要素の主表面に対して斜めの角度で配置されるので、光学要素の表面に対して浅い入射画像投影方向に対して、適切に配向されたファセットを設けることができ、それによって、光学要素がほぼ直立した配向で配置されることができ、よりコンパクトな設計を容易にする。この文脈において、「浅い」角度とは、「高い入射角度」に対応する、表面の平面に比較的近い方向を指し、ここで、入射角は、表面に対する局所的な垂線に対して測定される。本発明のいくつかの特に好ましい実施において、投影方向は、50度を超える角度、多くの場合60度を超える角度で、主表面のうちの1つに入射する。特定の特に好ましい実施は、70度の領域(±5度)における投影方向の入射角を使用する。
【0028】
他の前述の従来技術の「光ガイド」アプローチとは対照的に、本発明は、光学要素の主表面の1つに入射する自由空間(空気を通る)画像投影を用い、入射画像照明の大部分は、光学要素内で全反射するように方向転換されない。これは、光ガイド内を伝搬する画像の画像品質を維持するために不可欠な設計要件及び制限の多くを緩和する。本発明のこれら及び他の利点は、以下の例から明らかになる。
【0029】
ここでは、画像照明の「投影方向」及び「観察方向」を参照する。本発明は、特に、投影された画像が無限にコリメートされる、各画素の画像情報が光の平行ビームであり、画素の位置に対応する角度で伝搬することを意味する、実装に関する。このような画像は、本質的に、空中の画像の視野(FOV)に対応する角度の範囲に広がる(spans)。高い屈折率を有する媒質内では、この角度範囲は圧縮されるが、画像伝搬の残りの特性は本質的に同じままである。表現を簡単にするために、本明細書では、テキスト及び図面において、画像の中心画素に対応する唯一の「方向」を参照し、画像照明の伝搬を説明するための代表的な光線方向として使用する。各実施において、画像は、画像FOVが画像の異なる画素に対応する二次元の代表的な光線の両側に広がる多くのこのような光線で構成されていることが理解されるべきである。4つの最も外側のコーナー光線(FOVの最も外側のコーナーにおけるコーナー画素方向)によって表される完全なFOVは、図4及び5の実施形態の等角図に示されている。ここでも、代表的な「投影方向」及び「観察方向」は、FOVの中心画素の投影方向及び観察方向に対応するが、図面を取り散らかすことを避けるため、図4及び図5にはこれらの方向は示されていない。
【0030】
次に、図2を参照すると、ここに示す本発明の特定の実施形態によれば、画像プロジェクタ(又は「光プロジェクタ」)20は、画像を投影方向PDに沿って光学要素(又は「反射プレート」)22に投影する。反射プレート22は、内部部分反射平行ファセット(internal partially reflecting parallel facets)24を含む。プロジェクタからの光(破線)は、プレート22(PD’)の中に屈折し、次いで、観察方向VDに沿って観察者の眼に向かって屈折する前に、方向VD’にファセット24によって反射される。
【0031】
この構成では、観察者の眼に偏向するための適切な角度は、プレートによってではなく、ファセットによって決定される。換言すれば、PDの入射角及び光学要素22の外面に対するVDの反射角は等しくない。従って、プレート角度は、上述の図1の通常のビームスプリッタアプローチよりも急勾配にすることができ、一方、反射角は、眼に向かって最適なままである。さらに、垂直開口は、好ましくは、複数のファセット24によって部分反射される各光線によって広げられ(multiplied)、それによって、画像プロジェクタ20の投影開口が、図1の構成を実施するために必要とされるプロジェクタの光学開口よりも小さくなることを可能にする。
【0032】
図5を参照して以下に例示するように、内部ファセット24が平行である限り、プレート22は平坦である必要はない。したがって、プレート22は、平面状スラブ又は非平面状スラブであり得る。これは、人間工学的及び/又は共形状(conformal shape)を使用するディスプレイの設計を容易にする。加えて、光学要素は、光学的に中立なプレートである必要はなく、代替的に、屈折力(optical power)を有するレンズとして実装することができる。これは、拡張現実ディスプレイの処方眼鏡との完全な統合を可能にし、これは、仮想画像(この例では、眼の近くの表面を2回通過する)及び現実世界のビュー(各表面を1回通過する)に対して同じ光学的補正を提供するように設計され得る、又は、例えば、仮想画像に対してより近接した焦点距離が望まれるところの各々に対して異なる屈折力補正を提供するように設計され得る。
【0033】
図2の構成及び本発明の他の多くの構成では、光は、浅い角度(高入射角)で光学要素内に屈折し、垂直に近くで出る。このような構成は、本質的に色収差を生成する傾向があり、この色収差は、好ましくは、光学要素22プロジェクタの主表面に到達する前に、画像照明を修正するために配置される色収差補正要素26を画像プロジェクタに設けることによって少なくとも部分的に補正される。色収差補正要素(又は「色補正装置」)は、例えば、プリズム又は回折要素のいずれかであり得る。残留色収差及び視野歪(field distortion)は、投影画像自体において電子的に補正されることが好ましい。ある場合には、この補正は、RGBレーザなどの比較的狭いスペクトル照明を使用することによって容易になり、照明の各色の分散が回避される。色補正のためのこのような配置は、本明細書に示される本発明の全ての実施において最も好ましくは使用されるが、提示を簡単にするために図面からは省略される。
【0034】
既に述べたように、ファセット24は、投影される画像の部分反射が複数のファセットで生じ、それによって一次元の(ここでは図面に示されるように垂直の)光学開口拡大を達成するように、(屈折)投影方向PD’対してかなりのオーバーラップを有する。加えて、(暗い線を伴わない)観察される画像の連続性を保証するために、ファセットは、(屈折)観察方向VD’に、及びVD’方向の周りの角度視野に広がる画像光線に対して、連続した(すなわち、前のものが終了したところから始まる)カバレッジを最小限与えるべきである。
【0035】
反射される出力画像の均一性を高めるために、ファセット24は、不均一性の平均化が得られるように、(図に示されているように)観察方向においてもオーバーラップすることが好ましい。言い換えると、異なるファセットからの投影画像の異なる部分の反射が、単一の出力光線に寄与するように重畳される。特定の特に好ましい実装では、投影方向及び観察方向の一方又は両方に対して正確な(整数の)数のオーバーラップするファセットを有するようにファセットを配置することが可能であり、望ましい場合がある。例えば、図2Bの例では、点線の破線は、主光線(屈折した投影方向PD’)がプレートに入射し、正確に4つのファセットから部分反射され、各ファセットの端部が、その4つ下のファセットの始まりに位置合わせされ、すなわち、75%オーバーラップしていることを示す。屈折した観察方向VD'は、正確に2つのファセットと交差し、各ファセットの端部は、VD'方向に対してその2つ下のファセットの始まりに位置合わせされ、すなわち、50%のオーバーラップを有する。その結果、プレートを横切る主光線によって反射される全エネルギは実質的に一定であり、仮想画像は均一に照明される。
【0036】
ファセット24が偏光選択性である場合(多くの用途において、S偏光が好ましい)、20から送られる光は、意図された比率でファセットから反射されるように、対応して偏光されるべきである。偏光選択性部分反射表面は、当技術分野で良く知られるように、多層薄膜誘電体コーティングを使用することによって、又はワイヤグリッド偏光子などの構造偏光子層の導入によって生成することができる。1つの偏光の高い透過率(transmission)を持つ偏光選択性部分反射ファセットの使用は、複数のファセットを通る現実世界のビューが過度に減衰されないことを確実にするのに役立つ。
【0037】
図2A及び図2Bを参照してこれまで説明した構造は、図示のように垂直に投影画像の光学開口拡大を達成する。光学要素22に向かって投影される画像の横開口(lateral aperture)は、アイボックス全体(entire eye box)にわたって必要とされる視野をカバーするのに十分に広くなるべきである。この横方向に拡大された投影画像は、図3A~3Dに概略的に示すように、様々な方法で生成することができる。
【0038】
光学拡大3Aは、単一の横開口を形成する広いミラー及び/又はレンズに基づく。これは、開口拡大に対する従来のアプローチであるが、比較的大きな体積を必要とすることがある。横開口増加(transverse aperture multiplication)を使用する別のアプローチが、図3B~3Dに記載されている。
【0039】
図3Bの例では、米国特許第7,643,214号B2にさらに詳細に記載された手法を用いて、光ガイド要素(light guide element)が中心から照明され、画像照明を一次元で案内して横開口拡大を達成する。
【0040】
図3Cの例では、国際公開第2015/162611A1号にさらに完全に記載されているアプローチを使用するか、又は本出願の優先日に公開されておらず、先行技術を構成しない国際公開第2018/065975A1号に記載されているように、画像光を二次元で案内するための矩形断面光ガイドを使用することによって、光ガイド要素が側方から照明され、横開口拡大を達成するように画像照明を一次元で案内する。
【0041】
図3Dは、本発明のさらなる態様によるさらなるオプションの実施形態を示し、図2A及び2Bの構成と本質的に同様の構成が、回転された向きで使用されて、光学要素22上に投影するための横開口増加を達成する。したがって、ここで概略的に示された実施において、プロジェクタは、出力方向ODを有する画像発生器30を含み、光学開口拡大装置は、透明材料から形成され、光学拡大要素の内部にあり、平面状であり、互いに平行であり且つ画像発生器出力方向に対して少なくとも部分的にオーバーラップしている複数の部分反射面34を含む、光学拡大要素32として実装される。画像発生器30は、光学拡大要素に入射する出力方向を備えて光学拡大要素32に対して配置され、コリメートされた画像照明の各光線が光学拡大要素に入射し、投影方向に沿って光学拡大要素を出射するためにリダイレクトされるように、部分反射面の少なくとも2つによって部分反射されるように配向される。この構成は、画像が第2の(図示のような垂直の)次元の光学開口拡大が生じる光学要素22に到達する前に、第1の(図示のような水平の)次元の光学開口拡大を達成する。
【0042】
図3B~3Dに示されるオプションの各々において、偏光は、光が横方向から垂直方向の開口拡大に移行するとき変化され得る。これは、偏光管理コンポーネント28(例えば、波長プレート(wave-plate)及び/又は偏光子)を使用して達成することができる。
【0043】
図4を参照すると、これは、平面垂直開口増加プレート40が内部平行ファセット41を有し、垂直に対して20°の傾斜にある、このようなシステムの例示的な寸法を含む本発明の例示的な実施を説明する。視野は32°×18°と定義され、プレートから眼の回転中心42までの距離は45mmと定義された。横開口拡大は、内部ファセット45を有する1D(一次元)光ガイド44によって提供され、下方に投影する(projecting)出力開口を生成する。一例におけるこのプロジェクタ構成の寸法は、15.45mm×40.73mmであった。この例では、プロジェクタにおける光学拡大装置は、図3Cの原理に従って実装される。光ガイド44は、光学系によって、又は小さい光画像発生器及びそれに関連するコリメート光学系48によって照明される別の長手方向開口拡大部46を通して照明され得る。
【0044】
この実装では、色収差は、逆の色収差を生成するように光ガイド44を傾斜させることによって補正することができる。従って、例えば、ここに示す実装では、光ガイド44は、この図に示すように、その長さに沿った軸の周りに時計回り方向に傾いている。
【0045】
次に、図5を参照すると、これは、プレート50(平プレート40と同等)が湾曲し、一方、内部ファセット52は、依然として平面状且つ平行である、図4と同様の構成を示す。観察される画像はプレート内の内部ファセットから反射されるので、表面の曲率は反射光に非常に小さい影響を与える。従って、この構成は、全て最小歪みで、開口増加とともに、無限遠に合焦された仮想画像の観察方向への反射を可能にする。仮想画像のわずかな残留歪みは、光学要素設計の分野でよく知られている標準的なソフトウェアツールを用いて、コンピュータ実装の数値的方法を用いて各プレート50の特定の形状のために設計される、典型的には、非点収差レンズ又は自由形状レンズとして実装される補償要素54によって予め補償することができる。
【0046】
これまでに示された本発明の実装の全ては、「背面照明」実装を示してきた、すなわち、そこでは、観察方向に沿った投影画像の入射及び反射画像の出射が、観察者の目に面した同じ表面で生じる。しかし、これらの実施形態の全てに対する代替の実施形態は、画像投影が観察者の目から離れた光学要素の側部から生じる「前面照明」実装を採用してもよいことに留意されたい。図6A及び図6Bを参照して、このタイプの例示的な実装をここに示す。従って、プロジェクタ60は、観察者の目からプレート62とは反対側に配置される。内部ファセット64は、観察者に向けて仮想画像を反射するように最適化された角度で配置される。屈折力を伴う又は伴わない、光学開口の横方向の拡大及び平面状又は非平面状光学要素に関する前述のオプションの全ては、前面照明ジオメトリを使用して、全て等しく適用可能である。
【0047】
次に、図7を参照すると、本発明は、ファセットによって伝えられる照明の少なくとも一部が、内部反射によってトラップ又は「ガイド」されることなく、光学要素を通過するような方法で画像照明が光学要素内に導入されるという点で、特定の従来技術の前述の光ガイドアプローチとは区別される。それにもかかわらず、光学要素の主要面(複数可)から1つ又は複数の内部反射をするように、画像照明の一部がプレート内で反射される実装もまた、本発明の範囲内に含まれる。一つのそのような例を図7に示す。この場合、画像照明70の例示的な光線は、光ガイド72に入射し、ファセット74上の点73に衝突する。ファセットによる反射の後、光は、プレート/光ガイドの主表面に対して浅い角度にあり、従って、光ガイド72内で全内部反射によって伝搬する。ファセット74による第2の反射76は、観察方向VDに沿う線78に沿って光を観察者に向かって投影する。
【0048】
従って、この実施形態では、前の例とは異なり、ファセットの1つにおける第1の反射は、画像照明を観察方向に沿って導かない。その代わりに、ファセットのうちの1つからの第1の反射は、プレートの主表面の少なくとも1つにおいて全反射するように、画像照明光線の一部をリダイレクトする。次いで、光線は、観察方向に沿って第1の主表面から出るように、ファセットのうちの他からの少なくとも1つのさらなる反射によってリダイレクトされる。照明は、それがプレートの主表面(複数可)から1つ又は複数の内部反射をするという意味で、ここでは「部分的にガイドされる」と呼ばれる。それにもかかわらず、画像照明はプレート内に沿って比較的短い距離しか通過しないため、光学性能は、プレートの主表面の光学的品質及び平行度の不完全性に対して感度がはるかに低い。「第1の反射」の原因となるファセットは、本質的に「さらなる反射」の原因となるファセットに類似しており、特に好ましい実装では、部分反射面の少なくとも1つは、画像照明の第1の光線の第1の反射及び画像照明の第2の光線のさらなる反射の両方に寄与する。
【0049】
特に、図7の実施形態では、ファセットは、(屈折)投影方向に対して必ずしもオーバーラップせず、第1の反射光線及び/又はプレートの主表面からのそれらの反射に対するファセットの有効なオーバーラップによって、開口拡大が部分的に達成される。屈折した投影方向に対するファセットによる連続的なカバレッジが、典型的には、好ましい。全ての実施形態において、屈折した観察方向に対するファセットによる連続的なカバレッジは、仮想画像内の暗線を回避するために非常に望ましい。
【0050】
本発明の種々の特に好ましい実施形態によれば、光学要素内の内部反射によって、最小限の光のガイドが必要とされる又は光のガイドは必要とされない。従って、本発明は、導入され得る幾つかの歪み及び複屈折にもかかわらず、プラスチックなどの媒質を用いた実装に適している。本明細書では、図8A及び8Bを参照して、プラスチックを使用して必要なファセットを組み込んだ光学要素を製造するための様々な非限定的アプローチを説明する。
【0051】
図8Aでは、部品80は成形プラスチックで作られ、適当な反射材コーティング(reflector coatings)81でコーティングされている。また、相補部品(complementary part)82が、同じ屈折率を有するプラスチックで作られ、2つは一緒に取り付けられる。
【0052】
図8Bは、部品80及び反射材コーティング81が上述のように作られ、次に、その中で部品80と一体構造を形成するように、相補部品84が直接成形される型86内に配置される代替方法を示している。
【0053】
前述したように、本発明の種々の実装の部分反射面は、偏光選択層として実装することができる。図9A~9Cは、偏光管理を利用する特定の実装をより詳細に示している。
【0054】
ファセットコーティングは、部分反射を提供する誘電体又は金属コーティングに基づくことができる。多くの場合、このコーティングは、固有の偏光依存性を有する。現実世界からの光はファセットコーティングによって反射されないが、プロジェクタからの光の一部は観察者の眼に反射されることが好ましい。図9Aでは、この選択的反射は、P偏光を透過し、Sを反射する偏光選択性コーティングを使用することによって達成される。偏光子88がプレート22の前に配置されている。プロジェクタは、観察者に向けてファセットによって反射されるS偏光を送り、偏光子は、外界からP偏光のみを透過する。
【0055】
図9B及び図9Cは、屈折率1.6を有するプレートのファセットに使用され得る2つのタイプの誘電体コーティングの反射率特性を示す。50°に近い入射角では、Pの透過率とSの反射との間に最高の分離がある。したがって、この範囲の、例えば45~55°の範囲の角度は、ファセット(に対する垂線)と観察方向との間の傾きに対して良好な角度である。
【0056】
より大きな角度範囲に対してファセットの特性をより有利にする他のコーティングを使用することができる。追加のオプションは、ワイヤグリッドフィルム(例えば、米国ユタ州のMoxtek社から市販されている)又は複屈折誘電体コーティング(例えば、米国ミネソタ州の3M社から市販されている)の使用を含む。
【0057】
プロジェクタからプレートへのP偏光の透過率は、プレートの表面への入射角をブルースター角に近づけるように設計することによって改善することができる。例えば、n=1.8に対して、この角度は約61度である。
【0058】
最後に図10A及び10Bを参照すると、非ガイド(unguided)画像照明の投影を使用する本発明は、ガイド画像プロジェクタと組み合わせて実施することができることが留意されるべきである。
【0059】
図10Aは、ファセット90Aを有する光ガイドを示す。ガイド画像プロジェクタ92は、96Aとして反射し、98Aとして光ガイドから外に結合される画像光94Aを注入する。同じ光線のベクトルは、サフィックスBを備えた同じ数を有して図10Bに示されている。
【0060】
本発明の一態様によれば、投影方向PDに沿って非ガイド画像照明をライトガイド上に投影する第2のプロジェクタ97がシステムに含まれている。光100は、光ガイド内に屈折し102A、ファセット90Aから114Aとして反射する。116Aとして外面から反射の後、光線は、118Aとしてのファセット90Aからもう一度反射する。光線118Aは、94Aと同等(平行)であり、従って、120Aとして反射し、観察方向VDに122A(98Aと同等)として光ガイドから外に結合される。この反射プロセスのベクトルは、同じ数字であるがサフィックスBを有して図10Cに角度空間で示されている。
【0061】
上述の説明は、例としてのみ役立つことを意図するものであり、多くの他の実施形態が、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内で可能であることが理解されるであろう。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C