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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】光硬化性人工爪組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230628BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20230628BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/35
A61K8/37
A61K8/55
A61Q3/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021201525
(22)【出願日】2021-12-13
(65)【公開番号】P2022111991
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2021007337
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】森田 菜津紀
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 拓昭
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055772(JP,A)
【文献】特開2018-140945(JP,A)
【文献】特開2010-013439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 29/00-31/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、
(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物、
(c)光重合開始剤、
を含み、
前記(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物が、リン酸2-アクリロイルオキシエチル及び/又はリン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)を含み、
前記(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物が、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの1種類以上を含
(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量が、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超7.0質量%以下である、
光硬化性人工爪組成物。
【請求項2】
前記(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物が、
(i)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、
(ii)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる水酸基含有(メタ)アクリレート、
からなる群より選ばれる1種類以上を含む、請求項1に記載の光硬化性人工爪組成物。
【請求項3】
(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量が、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超4.4質量%以下である、請求項1又は2に記載の光硬化性人工爪組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性人工爪組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手や足の自爪に装飾を施したり、人工爪を接着してこれに装飾を施したりするネイルアートの人気が高まっている。また、外力による爪の割れ・剥がれを防止するための補強のために、爪の上に人工爪を形成することが行われている。
このような爪の装飾や補強のためには、いわゆるマニキュア、ペディキュア、スカルプチュアと呼ばれる樹脂含有の材料が爪に塗布されている。
【0003】
最近、爪の装飾又は補強のために使用される材料としては、ジェルネイルと呼ばれる光硬化性人工爪組成物が注目を集めている。ジェルネイルは、光硬化性のジェル状爪被覆材料(光硬化性人工爪組成物)であって、例えば、(メタ)アクリレート系オリゴマーと(メタ)アクリル系モノマーを含むものが知られている。ジェルネイルは、爪に塗布し、紫外線を照射して硬化することで、ラジカル重合反応により、架橋した高分子被膜を形成するため、爪から剥がれにくい強靱な被膜を形成できるとされている。
【0004】
これまで、ジェルネイル等の光硬化性人工爪組成物は、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)、密着持続性、硬化性、硬化塗膜の美感等の観点からの検討が主に進められてきた。しかしながら、これまでの光硬化性人工爪組成物は、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)及び密着持続性の点で、さらなる特性向上が求められていた。さらに、光硬化性人工爪組成物は、硬化性及び硬化塗膜の美感等の特性についても求められている。
【0005】
ジェルネイル等の光硬化性人工爪組成物において、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)や密着持続性を向上させるために、これまで以下の検討がなされている。
特許文献1には、(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、(b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物、および(c)ラジカル重合開始材を含む人工爪化合物が記載されている。
【0006】
特許文献2には、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ラジカル重合性化合物及び光重合開始剤を含有する光硬化性人工爪組成物が記載されている。この組成物は、ラジカル重合性化合物として、メタクリロキシエチルヘキサノエートフォスフェートやトリスメタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等の「メタクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物」を具体的に用いるもので、「アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物」を用いたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-53097号公報
【文献】特開2017-197532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)及び密着持続性に優れ、硬化性及び硬化塗膜の美感等の特性にも優れる光硬化性人工爪組成物を得ることである。さらに、爪上に形成した硬化塗膜が経時的に白濁する経時白濁が防止され、硬化性及び硬化塗膜の美感等の特性にも優れる光硬化性人工爪組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成の光硬化性人工爪組成物とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には以下の通りである。
項1:(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物、(c)光重合開始剤、を含む光硬化性人工爪組成物。
項2:(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物が、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸エステル化合物である、項1に記載の光硬化性人工爪組成物。
項3:(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物が、リン酸2-アクリロイルオキシエチル及び/又はリン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)である、項1又は2に記載の光硬化性人工爪組成物。
項4:(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物が、(メタ)アクリレート基を有するラジカル重合性オリゴマーである、項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性人工爪組成物。
項5:(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量が、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超4.4質量%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の光硬化性人工爪組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光硬化性人工爪組成物は、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)及び密着持続性に優れ、硬化性及び硬化塗膜の美感等の特性にも優れるという、顕著な効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の光硬化性人工爪組成物について説明する。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物及び光重合開始剤を含むものである。
本発明の光硬化性組成物において、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物を含有することで、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)及び密着持続性が向上する機構等は不明であるが、本発明者らは、次のように推察している。
一般的に、アクリレート基は、メタクリレート基より立体障害が小さく硬化性が高いことから、爪表面への浸透後に確実に硬化し、爪全体と強力に密着することで、硬化塗膜の硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)及び密着持続性が向上すると考えられる。なお、本発明は、この推察に限定されるものではない。
また、本発明の光硬化性人工爪組成物において、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量を、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、特定の範囲(0質量%超、好ましくは0.1質量%以上であり、4.4質量%以下、好ましくは4.3質量%以下)とすることで、爪上に形成した光硬化性人工爪組成物塗膜が、時間の経過により白濁すること(経時白濁)が防止できる機構等は不明であるが、本発明者らは、次のように推察している。
一般的に、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物は、リン原子に水酸基が1つ結合した化合物と、リン原子に水酸基が2つ結合した化合物の混合物として提供される場合が多い。アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物と爪が結合(水素結合)する際には、リン原子に結合した1つの水酸基が寄与することとなるため、リン原子に結合した水酸基が過剰となっている。この過剰となった水酸基が、爪から蒸散する水分と反応することで、硬化塗膜の経時白濁が起こるものと考えられる。これは、塗布直後には硬化塗膜の白濁が起こらないこと、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物を含まない系では経時白濁が起こらないこと等から、硬化塗膜の経時白濁が、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物からの過剰な水酸基と爪から蒸散する水分との反応によるものであることが示唆されていると考えられる。これより、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量を、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、特定の範囲とすることで、爪上に形成した光硬化性人工爪組成物塗膜の経時白濁が防止できると考えられる。なお、本発明は、この推察に限定されるものではない。
【0012】
以下、(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物、(c)光重合開始剤、を含む光硬化性人工爪組成物について詳細に説明する。
本明細書においては、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの両者を意味する。
【0013】
[アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物]
アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物は、分子内にアクリレート基と、リン酸基(-P(=O)(OH)基又は-P(=O)(OH)-基)を有するラジカル重合性リン酸化合物であれば、特に限定されない。
例えば、下記式;
CH=CH-COO-R-P(=O)(OH)
CH=CH-COO-R-P(=O)(OH)-R-OCO-CH=CH
(式中R、R及びRは、2価の有機基を表す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0014】
このようなアクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物としては、例えば、リン酸2-アクリロイルオキシエチル、リン酸2-アクリロイルオキシプロピル、リン酸2-アクリロイルオキシブチル、リン酸2-アクリロイルオキシペンチル、リン酸2-アクリロイルオキシヘキシル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシエチル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシプロピル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシブチル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシペンチル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシヘキシル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシエチル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシプロピル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシブチル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシペンチル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシヘキシル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシエチル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシプロピル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシブチル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシペンチル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシヘキシル、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシプロピル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシブチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシペンチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシヘキシル)、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノアクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジアクリレート、プロピレンオキサイド変性リン酸ジアクリレート、リン酸変性エポキシアクリレート等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物としては、例えば、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸エステル化合物を用いることができる。
【0015】
本発明の光硬化性人工爪組成物において、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量は、特に限定されない。光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、例えば0質量%超、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、例えば10.0質量%以下、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下とすることができる。アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物を含有することで、本発明の光硬化性人工爪組成物は、爪に対する接着性を向上させることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物において、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量を、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超、好ましくは0.1質量%以上であり、4.4質量%以下、好ましくは4.3質量%以下とすることで、爪上に形成した光硬化性人工爪組成物塗膜が、時間の経過により白濁すること(経時白濁)を防止することができる。
【0016】
[(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物]
(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物は、分子内に(メタ)アクリレート基を1個以上有するとともに、分子内にリン原子を有しないラジカル重合性化合物であれば、特に限定されず、1種類単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
一分子中に含まれる(メタ)アクリレート基の数は特に制限されないが、光硬化性人工爪組成物の硬化性、硬化塗膜の硬度等の観点から、1~10個、好ましくは1~8個である。また、(メタ)アクリレート基の数は、赤外吸収分光法(IR)、核磁気共鳴法(NMR)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)等を用いて分析することによって確認できる。
【0017】
(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性オリゴマー(以下、「(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー」という場合がある。)や(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性モノマー(以下、「ラジカル重合性モノマー」という場合がある。)があげられる。
本発明においては、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物として、1種類以上の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーと、1種類以上のラジカル重合性モノマーとを混合して用いることが好ましい。
【0018】
本発明の光硬化性人工爪組成物において、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物の含有量は、特に限定されない。光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、例えば99質量%以下、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下とすることができる。
【0019】
<(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー>
(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物として用いられる(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーは、(メタ)アクリレート基を1個以上有するオリゴマーであれば、特に制限されない。一分子中に含まれる(メタ)アクリレート基の数は特に制限されないが、光硬化性人工爪組成物の硬化性、硬化塗膜の硬度等の観点から、1~10個、好ましくは2~8個である。
(メタ)アクリレート基の数は、赤外吸収分光法(IR)、核磁気共鳴法(NMR)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)等を用いて分析することによって確認できる。
【0020】
本発明の光硬化性人工爪組成物に含まれるアクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物は、反応性が高く、硬化の際に発生する硬化熱も高い。このため、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物と比較して相対的に反応性が低く、硬化の際に発生する硬化熱も低いメタクリレート基を有するオリゴマーを含有させることで、光硬化性人工爪組成物の反応性を調整し、光硬化性人工爪組成物の硬化熱を低くすることが好ましい。これにより、光硬化性人工爪組成物の硬化熱を、例えば、45℃以下、好ましくは43℃以下、より好ましくは40℃以下とすることができる。
【0021】
本発明者らの知見によると、光硬化性人工爪組成物において、硬化熱は、(メタ)アクリレート基とラジカルとが反応することにより発生する。そのため、(メタ)アクリレートオリゴマー等の重合度が大きい(重量平均分子量が大きい)成分を用いると、単位質量当たりの(メタ)アクリレート基の数が少なくなり、単位質量当たりの反応部位が少なくなるため、硬化熱を制御する(低減する)ことが可能となる。一方で、多官能(メタ)アクリレートを用いると、硬化熱が高くなる傾向がある。
すなわち、(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーについて、その重合度を大きくする、重合度が高い(分子量が大きい)オリゴマーの含有量を増やすことにより、硬化熱を低くすることができる。一方、(メタ)アクリレート基を多数有するオリゴマーを用いる、オリゴマーの重合度を小さくする、重合度が低い(分子量が小さい)オリゴマーの含有量を増やすことにより、硬化熱を高くすることができる。
また、アクリレート基は分子構造が嵩高くないことから反応性がメタクリロイル基よりも高くなる。その反面、硬化熱が高くなる傾向がある。
本発明の光硬化性人工爪組成物において、(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーとしては、例えば、メタクリレート基を有するオリゴマーを用いることができる。
【0022】
(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーは、特に限定されないが、例えば、
主骨格(主鎖)にウレタン結合、エポキシ基の開環反応によって生じる結合、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、カーボネート結合、アミド結合からなる群より選ばれる1種類以上を有する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー、
主骨格(主鎖)がスチレン系、(メタ)アクリル系、オレフィン系、ジエン系モノマーからなる群より選ばれる1種類以上のモノマーの重合により分子鎖を有する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー、
等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0023】
これらのうち、
(a)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(ウレタン結合を主骨格に有する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー)、
(b)エポキシ基の開環反応によって生じた分子鎖を有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、
(c)エステル(メタ)アクリレートオリゴマー(エステル結合を主骨格に有する(メタアクリレート基を有するオリゴマー)、
(d)エーテル(メタ)アクリレートオリゴマー(エーテル結合を主骨格に有する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー)、
等からなる群より選ばれる1種類以上を用いると、密着性等の点で有利である。
(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーは、市販品または合成品のいずれを使用してもよい。また、本発明においては、光硬化性樹脂組成物及び/又はその硬化塗膜の爪密着性や耐久性等の観点から、1種類以上のウレタン(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーを含んでいてもよい。
(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーは、(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー以外のオリゴマーと混合して用いることもできる。
【0024】
(ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成し、さらに、分子内に活性水素含有基と(メタ)アクリレート基を有する化合物(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等)を反応させる方法等で合成できるが、この方法のみに限定されない。
市販品としては、例えば、AH-600、AT-600、UA-306H、UF-8001G(共栄社化学社製)や、RUA-071、RUA-003VE、RUA-075、RUA-048(亜細亜化学工業社製)、UA-4200、UA200PA、UA-33H、UA-1100H、SUA TH1、SUA TH2(新中村化学社製)、UV-3310B(三菱ケミカル社製)、UN-9000PEP、UN-9200A、AU-2040(トクシキ社製)、KUA-PC2I(ケーエスエム社製)、アートレジン UN-6303、UN-9200A、UN-900PEP(根上工業社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを光硬化性人工爪組成物に使用すると、伸縮性、密着性、強度に優れる硬化塗膜を得ることができることから、好ましく用いられる。
本発明において使用することができる1種類以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、非芳香族系ポリエーテル骨格、芳香族系ポリエーテル骨格、非芳香族系ポリカーボネート骨格、芳香族系ポリカーボネート骨格、非芳香族系ポリエステル骨格、及び芳香族系ポリエステル骨格からなる群より選ばれる1種類以上を有するものから選択して使用することができる。中でも非芳香族系ポリエーテル骨格や(非)芳香族系ポリカーボネート骨格の1種類以上を有するものが好ましい。
【0026】
例えば、非芳香族系ポリエーテル骨格の1種類以上を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、イソシアネート基含有ポリエーテルウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を加えて、前記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基総数の10%以上のイソシアネート基に、前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物により付加反応させて得ることができる。
ここで、イソシアネート基含有ポリエーテルウレタンプレポリマーは、炭素数3以上のアルキレン基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネートとを反応させたもので、重量平均分子量が、例えば400以上30,000以下のものである。ポリオール化合物としては、ポリプロピレンポリオールが好ましい。ポリイソシアネートとしては、非芳香族系ポリイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらのイソシアヌレート化物、ビューレット化物等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0027】
(エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー)
エポキシ基の開環反応によって生じた分子鎖を有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、多官能エポキシ樹脂に対して、エポキシ基と反応する官能基を有する(メタ)アクリレートを反応させることによって合成できるが、この方法に限定されるものではない。
市販品としては、例えば、EBECRYL 1259、605、1606(ダイセル・サイテック社製)、EPOXY ESTER 3000A、3000MK、3002A(N)、3002M(N)、40EM(共栄社化学社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
(エステル(メタ)アクリレートオリゴマー)
エステル結合を有するエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールと多価カルボン酸との反応により得られたエステル系オリゴマーが有するカルボキシル基及び/又は水酸基に対し、分子内に水酸基と(メタ)アクリレート基を有する化合物及び/又は(メタ)アクリル酸やカルボキシル基を有するアクリル化合物を付加することにより合成できるが、この方法に限定されるものではない。
市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M-6100、M-6200、M-6250、M-6500、M-7100、M-7300K、M-8030、M-8060、M-8100、M-8530、M-8560、M-9050(東亞合成社製)や、UV-3500BA、UV3520TL、UV-3200B、UV-3000B(三菱ケミカル社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
(エーテル(メタ)アクリレートオリゴマー)
エーテル結合を有するエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、脂肪族系のポリエーテルポリオールの水酸基や、ビスフェノール等を原料とする芳香族系のポリエーテルポリオールの水酸基に対し、分子内に水酸基と(メタ)アクリレート基を有する化合物、(メタ)アクリル酸、及び、分子内にカルボキシル基と(メタ)アクリレート基を有する化合物等からなる群より選ばれる1種類以上を付加させることにより合成できるが、この方法に限定されるものではない。
市販品としては、例えば、UV-6640B、UV-6100B、UV-3700B(三菱ケミカル社製)、ライトアクリレート(登録商標)3EG-A、4EG-A、9EG-A、14EG-A、PTMGA-250、BP-4EA、BP-4PA、BP-10EA、ライトエステル4EG、9EG、14EG(共栄社化学社製)、EBECRYL(登録商標)3700(ダイセル・サイテック社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
((メタ)アクリレート基を有するオリゴマーの重量平均分子量、含有量)
(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーの重量平均分子量は、特に限定されない。例えば1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上であり、例えば100,000以下、好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下である。重量平均分子量の範囲をこのような範囲とすることで、低粘度を保持しつつ、硬化塗膜の耐久性を向上することができる。
【0031】
本発明の光硬化性人工爪組成物において、(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーの含有量は、特に限定されない。光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、例えば10質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、例えば90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下とすることができる。
また、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物全量に対する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーの含有量についても特に限定されない。例えば0質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、例えば100質量%以下、好ましくは50質量%以下とすることができる。
【0032】
<ラジカル重合性モノマー>
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート基を有するラジカル重合性モノマー(以下、「(メタ)アクリレートモノマー」という場合がある。)や(メタ)アクリレート基以外のラジカル重合性不飽和基を有する化合物があげられる。
【0033】
((メタ)アクリレートモノマー)
(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリレート基を1個以上有し、分子内にリン原子を有しないモノマーであれば、特に制限されない。一分子中に含まれる(メタ)アクリレート基の数は特に制限されないが、光硬化性人工爪組成物の硬化性、硬化塗膜の硬度等の観点から、1個以上であり、例えば10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは6個以下である。
本発明では、(メタ)アクリレートモノマーとして、(メタ)アクリレート基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上を用いることが好ましい。また、(メタ)アクリレート基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上と、(メタ)アクリレート基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上との混合物を用いることが好ましい。
【0034】
(メタ)アクリレート基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物;アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘプチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-tert-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジドデシル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクタデシル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリレート基含有アミド化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン、アダマンチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、(2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4イル)メチル(メタ)アクリレート、(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-2イル)メチル(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレ-ト、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリアジントリ(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリルオキシスクシンイミド、N-(メタ)アクリルオキシフタルイミド等の複素環含有(メタ)アクリレート等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0035】
これらの(メタ)アクリレート基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーのうち、(i)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、
(ii)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、
からなる群より選ばれる1種類以上が好ましい。
【0036】
(メタ)アクリレート基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(イソピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドロキシプロピル)等)、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレートモノマー;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレートモノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等のポリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の(メタ)アクリレート基を4個以上有する(メタ)アクリレートモノマー;等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0037】
これらの(メタ)アクリレート基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーのうち、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、下記式
【化1】
で表されるプロポキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等からなる群より選ばれる1種類以上を使用することが好ましい。
【0038】
((メタ)アクリレート基以外のラジカル重合性不飽和基を有する化合物)
(メタ)アクリレート基以外のラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基等のラジカル重合し得る不飽和基(重合性の炭素-炭素間二重結合を持つ官能基)を持つ化合物があげられる。
このような化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレン、酢酸ビニル等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0039】
本発明の光硬化性人工爪組成物におけるラジカル重合性モノマーの含有量は、例えば、1質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、例えば90質量%以下、好ましくは80質量%以下となるように含有させることができる。
また、光硬化性人工爪組成物に含有させるラジカル重合性モノマーの種類や量を調製することで、光硬化性人工爪組成物の反応性や硬化熱を調整することができる。
本発明においては、ラジカル重合性モノマーとして、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー等の官能基を有するラジカル重合性モノマーや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等の分子内に環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物を用いることが、光硬化性人工爪組成物の硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)、密着持続性、硬化性、硬化塗膜の美感等の点で好ましい。
【0040】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、光硬化用の光源から発せられる波長の光が照射されると、ラジカルを発生するものである。例えば、アシルフォスフィンオキシド系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシッドエステル系、α-アミノアルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、チタノセン系、キノン系等からなる群より選ばれる1種類以上の光重合開始剤があげられる。
光重合開始剤は、光硬化性人工爪組成物に対して、UV-LED光源を含む各種の光源を用いて光を照射した場合であっても、良好な硬化性を付与することができる。
【0041】
このうち、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤は、一般的に用いられるUV-LED光源から発せられる365nm以上405nm以下の波長の紫外線の照射によりラジカルを発生する。このため、UV-LED光源を含む各種の光源を用いて光を照射して硬化させる場合であっても、良好な硬化性を付与することができる。さらに、UV-LED光源を用いて光を照射して硬化させる場合には、硬化塗膜の黄変(黄ばみ)を防止することができる。
アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
特に、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドは、皮膚コンディショニング剤としても機能することから、本発明において好ましく用いることができる。
【0042】
アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤以外の光重合開始剤としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル-オキシ]-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、フルオロチオキサントン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド、1,2-オクタンジオン、1-(4-(フェニルチオ)-2,2-(O-ベンゾイルオキシム))1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE184)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、フェニルグリオキシ酸メチル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、及びカンファーキノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0043】
本発明においては、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤を含む光重合開始剤を用いることが好ましく、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤とα-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤を含む光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0044】
本発明の光硬化性人工爪組成物において、光重合開始剤の含有量は、特に限定されない。光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、例えば0.05質量%以上、好ましくは0.07質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、例えば5.0質量%以下、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。含有量が5.0質量%を超えると、硬化塗膜の分子量が低下し硬化塗膜が脆くなるおそれがあり、また、光硬化性人工爪組成物の硬化塗膜が黄変(黄ばみ)するおそれがある。含有量が0.05質量%未満であると、光硬化性人工爪組成物の硬化に時間がかかるおそれがあり、また、硬化不良となるおそれがある。
【0045】
[その他成分]
本発明の光硬化性人工爪組成物には、粘度、塗布性、取扱性、硬化塗膜耐久性などに悪影響を与えない範囲で、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物及び光重合開始剤に加えて、各種の成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、着色剤、多官能チオール化合物、ポリオール化合物、香料、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、第3級アミン等の光重合促進剤、連鎖移動剤、充填剤、表面張力調整剤、重合禁止剤、難燃剤、酸化防止剤、イオン吸着体、低応力化剤、防腐剤、抗菌剤、可撓性付与剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等の各種の添加剤からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0046】
着色剤は、顔料、光輝材、染料からなる群より選ばれる1種類以上があげられ、任意の量用いて、光硬化性人工爪組成物に所望の色調を付与する。特に、爪用被覆材に使用されている無機顔料、光輝材、有機顔料及び染料からなる群より選ばれる1種類以上であって、紫外線照射(光照射)による硬化を大きく阻害しないものである。
硬化前の光硬化性人工爪組成物には、顔料等のみではなく樹脂粒子や、公知の光硬化性人工爪組成物に配合できる装飾用材料等を配合しておくことも可能である。
【0047】
着色剤としては、例えば、褐色201号、黒色401号、紫色201号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、青色403号、青色404号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、緑色3号、緑色401号、緑色402号、黄色201号、黄色202号-(1)、黄色202号-(2)、黄色203号、黄色204号、黄色205号、黄色4号、黄色401号、黄色402号、黄色403号-(1)、黄色404号、黄色405号、黄色406号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、橙色401号、橙色402号、橙色403号、赤色102号、赤色104号-(1)、赤色105号-(1)、赤色106号、赤色2号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号-(1)、赤色230-(2)、赤色231号、赤色232号、赤色3号、赤色401号、赤色405号、赤色501号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色505号、赤色506号、酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、カーボンブラック、金属粉、金属フレーク、金属酸化物フレーク、ガラスフレーク等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0048】
多官能チオール化合物は、光硬化性人工爪組成物の硬化性調整剤、架橋剤及び粘度調整剤として配合される。また、多官能チオール化合物を光硬化性人工爪組成物に配合することで、硬化塗膜を拭き取って除去する際の拭き取り性を向上させることができる。
多官能チオール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール化合物の水酸基に、チオール基又は反応してチオール基になる基を有する化合物が反応して得られたもの等があげられる。例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
多官能チオール化合物を光硬化性人工爪組成物に含有させる場合には、好ましくは1.0~10.0質量%となるように含有させることができる。
【0049】
ポリオール化合物は、光硬化性人工爪組成物の希釈剤、密着性向上剤としての機能を有している。ポリオール化合物としては、例えば、アルキルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、フェノリックポリオール等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。中でも、アルキルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが好ましい。
アルキルポリオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0050】
ポリエステルポリオールとしては、縮合型ポリエステルポリオール、付加重合ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。縮合型ポリエステルポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ヘキサンジメタノール、ダイマー酸ジオール、ポリエチレングリコール等からなる群より選ばれる1種類以上のジオール化合物と、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸等からなる群より選ばれる1種類以上の有機多塩基酸との縮合反応によって得られ、重量平均分子量は100以上100,000以下が好ましい。付加重合ポリエステルポリオールとしては、ポリカプロラクトンが挙げられ、重量平均分子量は100以上100,000以下が好ましい。ポリカーボネートポリオールはポリオールの直接ホスゲン化、ジフェニルカーボネートによるエステル交換法などによって合成され、重量平均分子量は100以上100,000以下が好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキシドの開館重合により得られるポリエーテルポリオールがあげられる。
【0051】
重合禁止剤は、例えば、キノン化合物、サリチル酸ヒドラジド、トコフェロール化合物等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
重合禁止剤を光硬化性人工爪組成物に含有させる場合には、光硬化性人工爪組成物全体に対して、例えば500ppm以上、好ましくは1,000ppm以上であり、例えば5,000ppm以下、好ましくは4,500ppm以下となるように配合することができる。
【0052】
[光硬化性人工爪組成物の用途・物性等]
本発明の光硬化性人工爪組成物の硬化塗膜は、基材に対する密着性に優れ、基材への密着性が長期間持続し、適度な硬さを有している。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、いわゆる一般のマニキュアやペディキュアのように、爪の表面に被覆を行うための組成物であり、使用者自身の爪の表面を、必要に応じてサンディングする等して凹凸を設けた表面に被覆してもよい。特にジェルネイルとして好適に使用でき、例えば、使用者の爪に直接塗布されるベースコート層、該ベースコート層の上に塗布されるカラーコート、さらにその上に塗布されるトップコート層のいずれにも使用できる。
なお、カラーコートとして用いる場合は、着色剤を用いて、ソリッドカラーやラメ調、金属光沢調、暗色や明色等多彩に調色して用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物の硬化塗膜を形成する際には、従来の紫外線等により硬化されるラジカル重合性のマニキュア等と同様の設備、又は一般の紫外線硬化用の設備を用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、いずれの層に用いても、長期間(例えば、硬化後少なくとも2週間)硬化塗膜が欠けることなく、剥がれず、また下層や使用者の爪に対して浮きが発生することを抑制できる。
【0053】
本発明の光硬化性人工爪組成物は、筆等の塗布具によって十分に塗布することができる程度の粘度を有すればよい。
光硬化性人工爪組成物は、硬化塗膜の引張試験による破断時の応力(最大応力)が15.0MPa以上であることが好ましく、18.0MPa以上がより好ましく、20.0MPa以上であることがさらに好ましい。15.0MPa未満であると、擦りにより剥離し易くなるおそれがある。
また、硬化塗膜の破断時の歪率が95.0%以上であることが好ましく、97.0%以上がより好ましく、100.0%以上がさらに好ましい。
【0054】
[光硬化性人工爪組成物を用いた爪の被覆]
本発明の光硬化性組成物を用いて被覆される爪は、人の手の爪と足の爪のいずれでもよく、犬や猫などの動物の爪でもよい。
本発明の光硬化性人工爪組成物を、爪又は爪に設けられた(未)硬化塗膜の上に塗布して被覆する際、塗布面にサンディングを施してもよく、施さなくてもよい。光硬化性人工爪組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、筆等の塗布具や、インクジェット等の塗布方法を用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、ジェルネイルにおける、ベースコート層(ジェルベース;下地層)、中間層(カラー層)又はトップコート層のいずれとしても用いることができる。特に、基材に対する密着性が優れていることから、ベースコート層(ジェルベース;下地層)として用いることが好適である。
本発明の光硬化性人工爪組成物を塗布後、硬化前に小さな飾りや粉体等を、光硬化性人工爪組成物の塗膜表面に付着させ、意匠性を高めることも可能である。
【0055】
また、シートの片面に、爪等の形状を有する層を本発明の未硬化の光硬化性人工爪組成物を用いて作製し、この層を爪表面と接触(転写)させた後に、シートを剥離するか又は剥離せずに、紫外線を照射して硬化させることもできる。
シート表面に予め光硬化性人工爪組成物を用いて層を設け、これを転写する方法によれば、筆等の塗布具を使用することなく、爪の表面に均一かつ正確な模様を被覆することが可能であり、使用後においても該塗布具を洗浄等する必要がない。
【0056】
塗布後の光硬化性人工爪組成物の硬化に関しても公知の紫外線硬化用の装置を用いて行うことができる。光硬化性人工爪組成物の組成によって、硬化に必要な照射エネルギーは異なるものの、その光照射による照射エネルギー(積算光量)は、5mJ/cm以上1000mJ/cm以下、好ましくは10mJ/cm以上800mJ/cm以下である。照射エネルギーがこの範囲内であれば、十分な密着性および耐擦性を有するネイルアートを得ることができる。
光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等の公知の紫外線の光源を用いることができる。
その中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザーダイオード(UV-LD)が好ましい。
【実施例
【0057】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は質量部を意味する。
【0058】
<実施例1~9、比較例1~5>
表1に示す成分を、表1に示す量比(質量部)となるように容器内に投入し、ディゾルバーにより撹拌しつつ50℃に加温し撹拌した。撹拌後80℃で2時間静置し脱泡し、光硬化性人工爪組成物を得た。これらの工程は、全て遮光下にて行った。
【0059】
表1中の成分は、それぞれ以下のとおりである。
PA:リン酸2-アクリロイルオキシエチル及びリン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)を含む混合物
PU:ヒドロキシエチルメタクリレート、イソホロンジイソシアネート及びポリカーボネートジオールから得られるポリカーボネートポリウレタンメタクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
HPK:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
PM1:リン酸ビスメタクリロイルオキシエチル
PM2:リン酸カプロン酸メタクリロイルオキシエチル
【0060】
<ピールオフ荷重>
得られた光硬化性人工爪組成物の密着性の評価を、ピールオフ荷重に基づいて行った。
ピールオフ荷重の測定は、90°ピールオフ試験により以下のように行った。結果を表1に併せて示す。
(90°ピールオフ試験)
ナイロン板の表面をエタノールで拭き汚れを除去した後に、硬化後膜厚が100μmの膜厚となるように光硬化性人工爪組成物を塗布した。30W-LEDライトで30秒硬化させて、縦10mm、幅50mmの硬化塗膜を形成した。
硬化塗膜の幅方向端部を、デジタルフォースゲージ(イマダ社製、ZTA-100N)に設けたクリップで挟み、ナイロン板から硬化塗膜を100mm/secで幅方向に剥離角90°で剥離し、ピールオフ荷重(硬化塗膜を剥離させる際に要した荷重(kg)の最大値)を測定した。
【0061】
<ピールオフ荷重増減率>
ピールオフ荷重増減率は、実施例1のピールオフ荷重を基準として、以下の式により求めた。結果を表1に併せて示す。
ピールオフ荷重増減率(%)=(ピールオフ荷重)/(実施例1のピールオフ荷重)×100
【0062】
【表1】
【0063】
<白濁試験>
実施例1~9、比較例1の光硬化性人工爪組成物を被験者の爪に塗布・硬化してジェル
ネイルにおけるベースコート層(ジェルベース)を形成した。その後、透明カラージェルを塗布・硬化して透明カラー層を形成し、さらに、透明トップコートジェルを塗布・乾燥して透明トップコート層を形成しジェルネイルを作製した。硬化条件は、30W-LEDライトの30秒照射とした。
ジェルネイル形成後4週間、ジェルネイルの状態を目視にて確認し、白濁発生の有無を確認した。評価は、4週間経過後も白濁していない場合をA評価、4週間後に白濁していた場合をB評価とした。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表1より、「アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物」を含有する実施例1~9の光硬化性人工爪組成物は、「アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物」を含まない比較例1~5の光硬化性人工爪組成物と比較して、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)の指標となるピールオフ荷重及びピールオフ荷重増減率が大きく、硬化塗膜の基材(爪)への密着性・接着力が高いことが分かる。
さらに、硬化性、硬化塗膜の美感等の点でも問題がなく、ジェルネイルとして好適に使用し得るものであった。さらに、表2より、「アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物」の含有量を、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超(好ましくは0.01質量%以上)4.4質量%以下(好ましくは4.3質量%以下)とすることで、爪に対する高い接着性を維持しつつ、経時的に白濁することが防止されたベースコート層を形成し得ることがわかる。これにより、特にカラー層を透明調のものとした際に、ジェルネイルが経時的に白濁により美感を損なう恐れがなくなり、極めて有用である。
【0066】
一方、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物を含まない比較例1の光硬化性人工爪組成物、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物に代えてメタクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物を含む比較例2~5の光硬化性人工爪組成物は、いずれも、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)の指標となるピールオフ荷重の値が実施例1~9より低く密着性の点で問題があり、ジェルネイルとして使用した場合、満足のいくものではなかった。