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特許7303582インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物(IB複合物)を有効成分として含む肥満及び/または糖尿を伴うメタボリックシンドロームの予防、改善治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物(IB複合物)を有効成分として含む肥満及び/または糖尿を伴うメタボリックシンドロームの予防、改善治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/8998 20060101AFI20230628BHJP
   A61K 36/47 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230628BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230628BHJP
【FI】
A61K36/8998
A61K36/47
A61P3/04
A61P3/10
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/37
A61K31/7048
A23L33/105
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021570428
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 KR2020006545
(87)【国際公開番号】W WO2020242113
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0064098
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516311102
【氏名又は名称】エイチエルサイエンス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヘ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン-レ
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ-ギ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミ-リョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジン-ソン
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-050301(JP,A)
【文献】特開2012-121840(JP,A)
【文献】特開2011-074051(JP,A)
【文献】特開2017-105728(JP,A)
【文献】特開2015-127339(JP,A)
【文献】特開2016-185931(JP,A)
【文献】特開2006-104094(JP,A)
【文献】特開2008-247871(JP,A)
【文献】特開2006-008526(JP,A)
【文献】特開2006-056836(JP,A)
【文献】日本栄養・食糧学会大会講演要旨集,2008年,Vol.62nd ,Page.268, 3F-09a
【文献】Journal of Ethnopharmacology,2012年,Vol.142 No.1,pp.65-71
【文献】British Journal of Nutrition,2010年,Vol.103, No.4,pp.502-512
【文献】食品と科学,2007年,Vol.49, No.11,pp.80-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物を有効成分として含み、
前記インディアングーズベリー抽出物は、酸加水分解する条件で、1~5mg/gのエラグ酸を含むものであるか、または、酸加水分解しない条件で、5~25mg/gの遊離エラグ酸を含むものであり、
前記大麦若葉抽出物は、6~11mg/gのサポナリンを含むものであり、
前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との重量比は4:1~1:1であることを特徴とする、肥満及び糖尿から選択されるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物。
【請求項2】
前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との重量比が4:1または1:1であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物がそれぞれの単一物質に比べて相乗効果を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、膵臓リパーゼの酵素活性を抑制することで、脂肪の消化及び吸収を阻害し、脂肪合成を抑制し、脂肪分解を促進して脂肪蓄積の抑制と体重減少の効能を有するか;または血糖吸収を調節し、糖代謝を促進して、血糖、インスリン及び糖化ヘモグロビンの減少の効能を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記インディアングーズベリー抽出物または大麦若葉抽出物が、乾燥粉末であることを特徴とする、請求項1からのうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1からのうちいずれか一項に記載の組成物を含む、肥満及び糖尿から選択されるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用薬剤学的組成物。
【請求項7】
請求項1からのうちいずれか一項に記載の組成物を含む、肥満及び糖尿から選択されるメタボリックシンドロームの予防、改善用食品組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物の製造方法であって、
搾汁及び乾燥工程を含み、インディアングーズベリーの果実からインディアングーズベリー抽出物を収得する段階と、
搾汁及び乾燥工程を含み、大麦若葉から大麦若葉抽出物を収得する段階と、
前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを4:1~1:1の重量比で混合して複合物を製造する段階と、を含むことを特徴とする、メタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然抽出物を有効成分として含むメタボリックシンドローム(Metabolic syndrome)の予防、改善または治療用組成物に関する。
【0002】
本出願は、2019年5月30日付け出願の韓国特許出願第10-2019-0064098号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
肥満(Obesity)とは、体内に脂肪が過剰に蓄積された状態を意味し、遺伝的な要因、運動量の欠乏、ストレス、ホルモン不均衡、西欧化された食生活などの多様な原因によって発生する。近年、エネルギーの摂取と消費との不均衡によって肥満の有病率は毎年増加している。2017年度国民健康栄養調査によれば、韓国の満19歳以上の肥満率は34.1%であり、2001年の29.2%に比べて4.9%増加した。肥満自体でも健康の問題になり得るが、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、第2型糖尿病、高血糖症などの代謝性症候群(メタボリックシンドローム、Metabolic syndrome)と密接に係わるため、現在深刻な保健問題として認識されている。
【0004】
現在、多様な方向で肥満を治療または改善するための方法が提供されており、その一つとして肥満治療剤がある。代表的な肥満治療剤としては、フェンテルミン(Phentermine)、フェンジメトラジン(Phendimetrazine)、マジンドール(Mazindol)などの食欲抑制剤、及びオルリスタット(Orlistat)の脂肪吸収抑制剤が挙げられるが、食欲抑制剤の場合は、中枢神経を興奮させて動悸、胸痛、めまい、不安、無感覚などの副作用を引き起こし、脂肪吸収抑制剤の場合は、脂溶性ビタミンの吸収阻害、消化器障害など胃腸関連副作用を引き起こす。
【0005】
このような肥満治療剤による薬物療法の他にも、エネルギーの摂取を制限する食餌療法、エネルギー消費を増加させる運動療法、精神療法、行動療法、外科療法なども実施されているが、望ましくは、運動を通じたエネルギー消費の促進と副作用の少ない肥満治療用薬剤とを並行することが最も安全且つ効果的な肥満の治療方法として提示されている。
【0006】
したがって、人体に安全であって優れた効果を奏する肥満または糖尿の抑制または治療用物質の開発が切実に求められている状況である。
【0007】
本明細書の全体にわたって多数の文献が参照され、その引用が示されている。引用された文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として援用されることで、本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、肥満または糖尿の治療及び抑制の効果を奏しながらも副作用のない天然物を開発しようと研究努力した結果、多様な天然原料のうち、インディアングーズベリー(Indian gooseberry)抽出物及び大麦若葉(barley sprout)抽出物が肥満または糖尿のようなメタボリックシンドロームに対する優れた治療効果を有することを確認し、研究結果に基づいてそれぞれの原料が有する効能を極大化してメタボリックシンドロームの治療に相乗効果を奏する配合比を明らかにすることで、本発明の完成に至った。
【0009】
したがって、本発明の目的は以下の具現例を提供することである。
【0010】
具現例1.インディアングーズベリー(Emblica officinalis)抽出物と大麦若葉(Hordeum vulgare)抽出物との複合物を有効成分として含むことを特徴とする、メタボリックシンドロームの予防、改善または治療に使用するための組成物;若しくは、メタボリックシンドロームの予防、改善または治療用医薬品、または、健康機能食品を製造するためのインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物の応用。
【0011】
具現例2.具現例1において、前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との重量比が4:1~1:1であることを特徴とする組成物;または応用。
【0012】
具現例3.上述した具現例のうちいずれか一つにおいて、前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物がそれぞれの単一物質に比べて相乗効果を有することを特徴とする組成物;または応用。
【0013】
具現例4.上述した具現例のうちいずれか一つにおいて、前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、膵臓リパーゼの酵素活性を抑制することで、脂肪の消化及び吸収を阻害し、脂肪合成を抑制し、脂肪分解を促進して、脂肪蓄積の抑制と体重減少の効能を有するか;または血糖吸収を調節し、糖代謝を促進して、血糖、インスリン及び糖化ヘモグロビンの減少の効能を有することを特徴とする組成物;または応用。
【0014】
具現例5.上述した具現例のうちいずれか一つにおいて、前記メタボリックシンドロームが、肥満または糖尿であることを特徴とする組成物;または応用。
【0015】
具現例6.上述した具現例のうちいずれか一つにおいて、前記インディアングーズベリー抽出物が、酸加水分解する条件で、1~5mg/gのエラグ酸を含むことを特徴とする組成物;または応用。
【0016】
具現例7.上述した具現例のうちいずれか一つにおいて、前記インディアングーズベリー抽出物が、酸加水分解しない条件で、5~25mg/gの遊離エラグ酸(free ellagic acid)を含むことを特徴とする組成物;または応用。
【0017】
具現例8.上述した具現例のうちいずれか一つにおいて、前記大麦若葉抽出物が、6~11mg/gのサポナリン(Saponarin)を含むことを特徴とする組成物;または応用。
【0018】
具現例9.上述した具現例のうちいずれか一つにおいて、前記インディアングーズベリー抽出物または大麦若葉抽出物が、搾汁したものであるか、または、水、炭素数1~4の低級アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか一つを抽出溶媒として使用して抽出したものであることを特徴とする組成物;または応用。
【0019】
具現例10.上述した具現例のうちいずれか一つにおいて、前記インディアングーズベリー抽出物または大麦若葉抽出物が、乾燥粉末であることを特徴とする組成物;または応用。
【0020】
具現例11.上述した具現例のうちいずれか一つによるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物を含む薬剤学的組成物または医薬品。
【0021】
具現例12.上述した具現例のうちいずれか一つによるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物を含む食品組成物、健康機能食品、または食品。
【0022】
具現例13.上述した具現例のうちいずれか一つによる組成物を、メタボリックシンドロームを患っているかまたは患うおそれのある対象体に投与する段階を含む、メタボリックシンドロームを予防、改善または治療する方法。
【0023】
具現例14.搾汁及び乾燥工程を含み、インディアングーズベリーの果実からインディアングーズベリー抽出物を収得する段階と、
搾汁及び乾燥工程を含み、大麦若葉から大麦若葉抽出物を収得する段階と、
前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを4:1~1:1の重量比で混合して複合物を製造する段階と、を含むことを特徴とする上述した具現例のうちいずれか一つによる組成物の製造方法。
【0024】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一態様は、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物を有効成分として含むことを特徴とするメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物を提供することである。
【0026】
インディアングーズベリー(Phyllanthus emblica L.)は、エムブリカ・オフィシナリス(Emblica officinalis Gaertn)またはアムラ(Amla)とも称し、各地方または言語によって固有の名称を有している。例えば、アマラキ、余柑子、油甘、奄摩勒、エンブリック・ミロバラン(Emblic myrobalan)、マラッカノキ、マラッカツリー(Malacca tree)、アロンラ(Aonla)、アミラ、アミラキ、アミラキャトラ(Amla Chatura)、ネリカイ(Nellikkai)、ネルリ(Nel-li)、タシャ(Tasha)、カユラカ(Kayu laka)、ケムラカ(Kemlaka)、ナックホンポン(Nakham-pom)などとも呼ばれる。インディアングーズベリーは、ネパールを含む南部アジア、マレーシア地域を含む東南アジア地域及び中部南部などの広い地域にかけて野生に分布して自生している植物である。耕作地としては、台湾の海抜1500m以上の山の傾斜面及びヒマラヤ山脈で多く栽培されている。
【0027】
インディアングーズベリーは高さ3~8mの落葉樹である。葉の長さは約10mm、幅は約2~3mmの長方形であり、レモン香の黄緑色の小さい花が4月~5月に咲く。果実は、平たい球状であり、大きさは平均18~25mm、熟すれば浅黄色を帯びて艶があり、六条が走る黄緑色である。新鮮な果実の味は甘酸っぱくて渋く後味は甘い。果実は乾燥すると黒色になり、乾燥しても栄養成分が破壊されないため、乾燥したものが流通されている。アムラ(Amla)はアマラキ(amalaki)とも呼ばれ、アマラキはネパールで神聖な木として知られている。
【0028】
インディアングーズベリー(アムラ)は、ビタミンC、ミネラル、アミノ酸、タンニン、ルチンなどを含んでいると知られている。インディアングーズベリーにはビタミンCがオレンジより20倍も多く含有されており、熱にも非常に安定的であるため、高温に長時間晒されてもビタミンが殆ど破壊されない。ビタミンCの耐熱性は一緒に含まれているタンニン成分によると考えられ、これら成分によって抗酸化、抗腫瘍、抗炎症活性などを奏する。他にもインディアングーズベリー(アムラ)には、エラグ酸、没食子酸、クェルセチン(quercetin)などの多様な生理活性成分が含まれている。
【0029】
大麦若葉(Hordeum vulgare L.)は、大麦の種子を播種して成長した若い葉のことである。一具現例において、大麦若葉は播種してから約8~15日後の10~20cmほどの若い葉であり得る。大麦は、約一万年前ユーラシア大陸で初めて栽培された穀物の一つであり、人類が栽培した最も古い作物の一つとして知られている。大麦若葉は、ビタミンA、ビタミンB及びビタミンCを含む各種のビタミン、カルシウム、マグネシウム及びカリウムなどのミネラル含量が高いだけでなく、多量の食物繊維を含み、栄養学的にも優れた食品源として知られており、健康機能性食品及び医薬品素材として産業的利用可能性が大きくなっている。米国、日本などでは若い大麦の葉を凍結乾燥して粉末状にし、健康食品として開発して販売している。韓国では、一般食品及び健康機能食品として粉末、丸、青汁、茶、化粧品などと多様に製品化して販売している。薬理活性の面で、大麦若葉は多くの生理活性物質による抗酸化活性、排便活動円滑、コレステロール数値の改善、血糖数値の改善、高脂血症の改善及び肥満抑制の効果など多様な機能を有する。このような生理活性効果は、サポナリン、ルトナリン(lutonarin)などを含むフラボノイドによると考えられる。
【0030】
本発明の組成物は、有効成分としてインディアングーズベリーと大麦若葉の抽出物を含むが、本明細書で使われる用語「抽出物」とは、原物を搾汁するかまたは原物に抽出溶媒を処理して得た抽出結果物、若しくは、これを剤形化(例えば、粉末化)した加工物も含む意味である。
【0031】
本発明の組成物で用いられる抽出物を、原物に抽出溶媒を処理して得る場合は、多様な抽出溶媒が使用可能であるが、例えば、極性溶媒または非極性溶媒を使用し得る。極性溶媒としては、(i)水、(ii)アルコール(望ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ノルマル-プロパノール、イソ-プロパノール、ノルマル-ブタノール、1-ペンタノール、2-ブトキシエタノールまたはエチレングリコール)、(iii)酢酸、(iv)DMFO(ジメチルホルムアミド)及び(v)DMSO(ジメチルスルホキシド)などを使用し得、非極性溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、エチルアセテート、メチルアセテート、フルオロアルカン、ペンタン、ヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン、デカン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ジイソブチレン、1-ペンテン、1-クロロブタン、1-クロロペンタン、o-キシレン、ジイソプロピルエーテル、2-クロロプロパン、トルエン、1-クロロプロパン、クロロベンゼン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ジエチルスルフィド、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アニリン、ジエチルアミン、エーテル、四塩化炭素及びTHFなどを使用し得る。
【0032】
望ましくは、本発明で用いられる抽出物は、原物を搾汁するか、または、水、炭素数1~4の低級アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか一つを抽出溶媒として使用して抽出したものであり得るが、これらに制限されることはない。
【0033】
また、本明細書で使われる用語「抽出物」は、上述したように当業界で粗抽出物(crude extract)で通用される意味を有するが、広義的には抽出物を追加的に分画(fractionation)した分画物も含む。すなわち、原物を搾汁するかまたは上述した抽出溶媒を用いて得た抽出物だけでなく、そこに精製過程を追加的に適用して得たものも含む。例えば、前記抽出物を一定の分子量カットオフ値を有する限外濾過膜に通過させて得た分画、多様なクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性または親和性による分離のために製作されたもの)による分離など、追加的に実施された多様な精製方法を通じて得られた分画も本発明の抽出物に含まれる。
【0034】
また、本発明の抽出物は、以後の追加的な過程、例えば濾過、濃縮または乾燥過程を経て溶媒を除去したもの、または、濾過、濃縮及び乾燥過程を全て経たものであり得る。濾過は、例えば濾過紙を用いるか又は減圧濾過器を用い得、濃縮は減圧濃縮器、乾燥は噴霧乾燥するか又は凍結乾燥法などを行って粉末状態の抽出物を得てもよい。
【0035】
本発明の一具現例によれば、上述したように製造したインディアングーズベリー抽出物は1~25mg/gのエラグ酸を含むことができるが、分析方法によって、酸加水分解する条件で1~5mg/gのエラグ酸を含むものであり得、酸加水分解しない条件で5~25mg/gの遊離エラグ酸を含むものであり得る。また、上述したように製造した大麦若葉抽出物は、6~11mg/gのサポナリンを含むものであり得る。
【0036】
本発明の組成物において、上述したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とは混合物または複合物で含有できる。前記混合物または複合物は、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物のそれぞれの単一物質に比べて相乗効果を奏することができる。より具体的には、前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とは、4:1~1:1の重量比で、例えば4:1、2:1または1:1の重量比で含まれ得るが、これらに制限されるものではない。
【0037】
一具現例によれば、本発明の組成物は、搾汁及び乾燥工程を含み、インディアングーズベリーの果実からインディアングーズベリー抽出物を収得する段階と、搾汁及び乾燥工程を含み、大麦若葉から大麦若葉抽出物を収得する段階と、前記インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを4:1~1:1の重量比で混合して複合物を製造する段階と、を含むことで製造できる。
【0038】
このような本発明のインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との混合物または複合物は、膵臓リパーゼの酵素活性を抑制することで脂肪の消化及び吸収を阻害し、脂肪合成抑制効果、脂肪分解効果を発揮して、脂肪蓄積の抑制、血糖吸収調節及び糖代謝を促進し、血糖、インスリン及び糖化ヘモグロビンの減少、体重減少の効能を有して、これによって肥満または糖尿のようなメタボリックシンドロームの予防、改善または治療効果を奏する。
【0039】
本発明において用語「膵臓リパーゼ(Pancreatic lipase)」は、膵臓から分泌される中性脂肪であるトリグリセリド(Triglyceride、TG)をモノグリセリド(Monoglyceride、MG)と脂肪酸(Fatty acid)とに加水分解する脂肪分解酵素であり、膵臓トリアシルグリセロールリパーゼ(pancreatic triacylglycerol lipase)とも称し、中性脂肪の細胞内吸収を促進する酵素である。したがって、前記膵臓リパーゼ活性阻害能は、体内脂肪吸収度を評価する指標として使用され得る。
【0040】
本発明において用語「cAMP(Cyclic adenosine monophosphate、環状アデノシン一リン酸 )」は、細胞表面受容体にβ-アドレナリン拮抗剤、プロスタグランジンE2(prostaglandin E2、PGE2)、ヒスタミンが結合してアデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase)を活性化させるか又は細胞内cAMPホスホジエステラーゼの作用を抑制することで、細胞内濃度が増加する。cAMPは、脂肪分解酵素であるホルモン敏感性脂肪分解酵素(hormone sensitive lipase、HSL)を活性化させて中性脂肪の分解を促進し、熱生成を促進することに関与する。したがって、前記cAMPレベルは、脂肪分解を評価する指標として使用され得る。
【0041】
本発明において用語「グリセロール遊離(Glycerol release)」は、グリセロールの放出量を示し、脂肪細胞内に蓄積された脂肪球に存在するトリグリセリド(TG)が分解されると、グリセロール(glycerol)と脂肪酸(fatty acid)とに分けられる。したがって、遊離したグリセロールの含量は、脂肪球内のトリグリセリド(TG)の分解を評価する指標として使用され得る。
【0042】
本発明において用語「IRS(Insulin receptor substrate)」は、筋肉、肝、脂肪組織など全身組織に分布したインスリン受容体基質であって、インスリン信号伝達経路に関与して糖及び脂質代謝を調節する機能を果たす。
【0043】
本発明において用語「PI3K(Phosphoinositide 3-Kinase)」は、インスリン信号伝達経路に関与するリン酸化酵素であって、インスリン受容体基質である「IRS」と相互作用して血糖吸収を調節し、脂肪合成を抑制する機能を果たす。
【0044】
本発明において用語「GLUT4(glucose transporter 4)」は、脂肪細胞及び筋肉細胞に主に存在するブドウ糖受容体であり、インスリン依存的に細胞内から細胞膜にブドウ糖(glucose)を移動させて糖代謝から脂肪合成を抑制する指標となる。脂肪蓄積によるインスリン抵抗性が生じれば、GLUT4転位(translocation)が円滑に起きず、GLUT4発現の増加は細胞内へと糖を移動させてエネルギーとして使用させることで、体内糖代謝を調節する機能を果たす。
【0045】
また、本発明は、上述した有効成分を含む組成物を含み、薬剤学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤などを付け加えて薬剤学的単位投与形で剤形化された、肥満または糖尿のようなメタボリックシンドロームの予防及び治療のための薬剤学的組成物を提供する。
【0046】
ここで、薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アラビアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイル等を含むが、これらに限定されることはない。
【0047】
また、前記有効成分を含む組成物を製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤し得る。
【0048】
また、前記薬剤学的投与形態は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルション、シロップ、エアロゾルなどの経口剤形、外用剤、坐剤、及び滅菌注射液の形態で剤形化して使用され得る。
【0049】
前記経口投与のための固形製剤には、前記抽出物または粉末に、少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉はカルシウムカーボネート、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混合して調剤され得る。また、単なる賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、滑石のような潤滑剤も使用され得る。
【0050】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水溶性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれ得る。
【0051】
前記非水溶性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用され得る。
【0052】
坐剤の基材としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロールゼラチンなどが使用され得る。他にもステアリン酸マグネシウム、滑石のような潤滑剤も使用され得る。
【0053】
本発明の薬剤学的組成物は、目的とする方法に応じて経口投与するかまたは非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)され得、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、年齢、性別、薬物形態、投与経路及び期間によって変わるが、当業者によって適切に選択され得る。
【0054】
また、本発明は、前記有効成分を含有する組成物を含み、食品補助添加剤を付け加えて健康機能食品として剤形化された、肥満または糖尿のようなメタボリックシンドロームの予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0055】
ここで、前記抽出物を添加可能な食品としては、例えば、各種の食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などが挙げられる。
【0056】
本発明の健康機能性食品組成物は、前記抽出物を含むこと以外に他の成分には特に制限がなく、通常の食品、飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含み得る。
【0057】
前記天然炭水化物としては、単糖、例えば、ブドウ糖、果糖;二糖、例えば、マルトース、スクロース;多糖、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが挙げられる。
【0058】
他にも、香味剤として天然香味剤(ソーマチン(thaumatin)、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用し得る。
【0059】
他にも、本発明の抽出物、粉末または複合物は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤、ペクチン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含み得る。
【0060】
他にも、本発明の抽出物、粉末または複合物は、天然果物ジュース及び野菜飲料を製造するための果肉を含み得る。このような成分は、独立的にまたは組み合わせて使用可能である。
【発明の効果】
【0061】
本発明によるインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とで組成された複合物は、脂肪の消化及び吸収を阻害する効能を発揮し、より詳しくは、膵臓リパーゼの酵素活性を抑制するのに相乗効果を奏し、摂取した脂肪の消化及び吸収を阻害する効能を発揮し、IRS、PI3Kを含むGLUT4シグナリングを促進させて糖代謝から脂肪合成を抑制し、cAMP発現調節を通じて脂肪分解を促進して細胞外に排出されるグリセロール量を増加させて、脂肪蓄積を抑制し、血糖吸収を調節し、糖代謝を促進して、体重、血糖、インスリン及び糖化ヘモグロビンを減少させることで、肥満または糖尿のようなメタボリックシンドロームの予防、改善または治療効果に優れる。
【0062】
また、本発明のインディアングーズベリー抽出物及び大麦若葉抽出物は、毒性及び副作用のない、人体に無害な天然抽出物で組成された複合物であって、効果的なメタボリックシンドロームの予防、改善または治療に有用に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】インディアングーズベリー抽出物及び大麦若葉抽出物を含む11種の天然物に対する膵臓リパーゼ阻害活性度を示した図である。
図2】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、単一物で処理した場合と比べて、膵臓リパーゼ阻害活性度における相乗効果を奏することを示した図である。
図3】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との混合比率に応じた膵臓リパーゼ阻害活性度を示した図である。
図4】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との混合比率に応じた細胞内cAMPレベルを示した図である。
図5】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との混合比率に応じた細胞内グリセロール遊離を示した図である。
図6】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、単一物で処理した場合と比べて、細胞内P-IRS1/IRS1のタンパク質発現比率における相乗効果を奏することを示した図である。
図7】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、単一物で処理した場合と比べて、細胞内P-PI3K/PI3Kのタンパク質発現比率における相乗効果を奏することを示した図である。
図8】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、単一物で処理した場合と比べて、細胞内GLUT4のタンパク質発現程度における相乗効果を奏することを示した図である。
図9】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、単一物で処理した場合と比べて、細胞内脂肪蓄積抑制における相乗効果を奏することを示した図である。
図10】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物と単一物で処理した場合との実験動物における血糖を比べて示した図である。
図11】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物と単一物で処理した場合との実験動物における血中インスリンを比べて示した図である。
図12】インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物と単一物で処理した場合との実験動物における血中糖化ヘモグロビン(Hemoglobin A1c;HbA1c)を比べて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではないということは、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者にとって自明であろう。
【0065】
実施例
1.試験物質の製造方法
1.1.インディアングーズベリー(アムラ)抽出物の製造(比較例1)
インディアングーズベリー(アムラ、原産地ネパール)の果実を洗浄し搾汁してインディアングーズベリー果実抽出物を収得した。その後、濾過して濃縮した後、乾燥して本発明で使用するインディアングーズベリー抽出物を製造した。
【0066】
1.2.大麦若葉抽出物の製造(比較例2)
大麦若葉(原産地韓国)を収穫して搾汁し、濾過してセルロースのような不溶性繊維質を除去した後、乾燥した。乾燥した粉末を均質化して本発明で使用する大麦若葉抽出物を製造した。
【0067】
1.3.複合物の製造(実施例1~5)
前記比較例1及び比較例2で製造したインディアングーズベリー(アムラ)抽出物と大麦若葉抽出物とを下記表1のような重量比で配合して複合物を製造した。
【0068】
【表1】
【0069】
1.4.候補素材の製造方法
国内外の文献から抗肥満または抗糖尿活性素材をサーチし、国内原料の需給可否、食品原料としての摂取可能性を考慮して確保した天然物を候補素材として選定して研究に用いた。候補素材A、B、C、Dは、それぞれ、蓮の葉、桔梗、針桑、桂皮であり、熱水を添加して抽出し、噴霧乾燥した後、研究に用いた。Eは桑葉、Fは蓮子肉であり、熱水を添加して抽出し、濃縮して噴霧乾燥した後、研究に用いた。G、H、Iは、それぞれ、ビートルート、石榴、タルトチェリーであり、濃縮して噴霧乾燥した後、研究に用いた。
【0070】
1.5.指標成分の含量確認
インディアングーズベリー(アムラ)抽出物及び大麦若葉抽出物の指標成分の含量分析及び原料標準化のため、インディアングーズベリー(アムラ)抽出物(比較例1-1、比較例1-2、比較例1-3)及び大麦若葉抽出物(比較例2-1、比較例2-2、比較例2-3)それぞれの原料に対して3種の原料を製造した。
【0071】
インディアングーズベリー(アムラ)抽出物の指標成分はエラグ酸に設定し、大麦若葉抽出物の指標成分はサポナリンに設定して分析した。分析方法に応じて、インディアングーズベリー(アムラ)抽出物における指標成分の含量は表2及び表3に示し、大麦若葉抽出物における指標成分の含量は表4に示した。
【0072】
より具体的には、各抽出物の指標成分の含量分析は、以下のように行った。
【0073】
インディアングーズベリー(アムラ)抽出物のエラグ酸を定量するため、以下の分析法を用いた。
【0074】
インディアングーズベリー(アムラ)抽出物内のエラグ酸の含量は、酸加水分解後、高速液体クロマトグラフィー方法を用いて測定した。カラムとしてはカプセルパック(Capcell pak)C18 UG120(4.6mm×250mm、5μm)を用い、移動床としては0.85%リン酸精製水とメタノールとの6:4混合液(A)及びメタノール(B)を用いて勾配(gradient)法で分離し、UV検出器で370nmの波長でエラグ酸を検出した。その結果、実験方法1.1によって製造されたインディアングーズベリー(アムラ)抽出物内のエラグ酸含量は1~5mg/g範囲と確認された。
【0075】
【表2】
【0076】
前記インディアングーズベリー(アムラ)抽出物の遊離エラグ酸を定量するために使った分析方法において、酸加水分解しない条件の分析法は以下のようである。インディアングーズベリー(アムラ)抽出物内の遊離エラグ酸の含量は、メタノール超音波抽出後、高速液体クロマトグラフィー方法を用いて測定した。カラムとしてはカプセルパックC18 UG120(4.6mm×250mm、5μm)を用い、移動床としては0.85%リン酸精製水とメタノールとの6:4混合液(A)及びメタノール(B)を用いて勾配法で分離し、UV検出器で370nmの波長でエラグ酸を検出した。その結果、実験方法1.1によって製造されたインディアングーズベリー(アムラ)抽出物内の遊離エラグ酸含量は5~25mg/g範囲と確認された。
【0077】
【表3】
【0078】
前記大麦若葉抽出物のサポナリンを定量するため、以下の分析法を用いた。大麦若葉抽出物内のサポナリンの含量は、高速液体クロマトグラフィー方法を用いて測定した。カラムとしてはカプセルパックC18 UG120(4.6mm×250mm、5μm)を用い、移動床としては0.1%ギ酸(A)及びメタノール(B)を用いて勾配法で分離し、UV検出器で340nmの波長でサポナリンを検出した。その結果、実験方法1.2によって製造された大麦若葉抽出物内のサポナリン含量は6~11mg/g範囲と確認された。
【0079】
【表4】
【0080】
2.効能評価
2.1.膵臓リパーゼ阻害活性の測定
膵臓リパーゼは、中性脂肪であるトリグリセリド(TG)をモノグリセリド(MG)と脂肪酸とに加水分解する酵素であって、脂肪の消化を進行し、腸内上皮細胞が分解産物を吸収するように補助する。したがって、膵臓リパーゼの活性が抑制されれば、中性脂肪の分解と小腸細胞及び消化管への脂肪吸収が阻害されるため、膵臓リパーゼ活性阻害能は抗肥満活性を予測するのに非常に有用な試験法である。本実施例では、膵臓リパーゼ阻害活性を以下のように測定した。まず、エンザイムバッファー(10mM MOPS、1mM EDTA、pH6.8)にブタ膵臓由来リパーゼを0.5g/200mLの濃度で溶解した酵素溶液6μLに、トリスバッファー(100mM Tris-HCl、5mM CaCl、pH7.0)169μLと試料20μLを添加して混合した後、37℃で15分間インキュベーションした。その後、基質溶液(p-ニトロフェニルブチレートを10mMになるようにジメチルホルムアミドに溶解)5μLを添加して37℃で30分間インキュベーションした後、分光光度計(UV-visible spectrophotometer)を用いて405nmで吸光度を測定した。膵臓リパーゼ阻害活性度(%)は、下記の数式1を用いてに示した。ここで、Xは試料を添加した吸光度、Yは試料を添加していない吸光度を示す。測定値は、実験を3回繰り返して平均値で示した。
【0081】
[数式1]
膵臓リパーゼ阻害活性度(%)=(1-(X-Y)/Y)×100
2.2.膵臓リパーゼ阻害活性における複合物の相乗効果の確認
本発明のインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物に対し、単一物で処理した場合と比べた膵臓リパーゼ害活性の相乗効果を調べるため、同一濃度で単一物と複合物との活性を分析した。複合物の相乗効果を確認するため、コルビー(Colby)の式を活用した。コルビーの式を下記の数式2に示した。測定された値がコルビーの式で導出されたE値を超える場合、相乗効果を認めることができる。Eは複合物(A+B)の予測される効果(%)、Aは単一物Aの効果(%)、Bは単一物Bの効果(%)を示す。
【0082】
[数式2]
E=A+B-(AB/100)
2.3.細胞培養及び分化誘導
本発明のインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物に対し、単一物で処理した場合と比べた、脂肪細胞分化過程における脂肪合成及び脂肪分解に及ぼす影響を確認した。本実施例では、3T3-L1セルをATCC(American Type Cultured Collection、Rockville、MD、USA)から入手して実験した。3T3-L1脂肪前駆細胞を10%新生仔ウシ血清(NCS)、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン、1%L-グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウム、1%HEPES、1%NEAA混合物が含まれた高グルコースDMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Medium)を使って、37℃、5%COが維持される培養器(Thermo Fisher Scientific Inc.、Pittsburgh、PA、USA)で培養し、2日毎に培養液を交換した。細胞が単一層でフラスコ底に80%以上付着すれば、PBS溶液を使って細胞表面を洗浄し、0.25%トリプシン-EDTAを添加した後、培養器で3分間放置して細胞を分離した。その後、遠心分離機(GYROZEN 416G)を使って1600rpmで5分間遠心分離して細胞を収集し、細胞の分化は、10%ウシ胎児血清(FBS)、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン、1%L-グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウム、1%HEPES、1%NEAA混合物、ゲンタマイシンが含まれたDMEM培養液を使って、6-ウェルプレート(TPP)に1×10cells/wellを均等に分注し、100%コンフルエント状態であるとき、10%FBS、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン、1%L-グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウム、1%HEPES、1%NEAA混合物、ゲンタマイシンが含まれたDMEM培養液に、脂肪生成カクテル(adipogenic cocktail、MDI溶液)である3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX、0.5mM)、インスリン(10μg/mL)、デキサメタゾン(DEX、1μM)を混合して分化誘導を始めた。分化期間は総9日間持続した。分化初期の3日間は、毎日同じ培養液で交換し、分化中期の3日間は、培養液をインスリン(10μg/mL)のみを含む10%FBSを含むDMEMに変えて毎日交換し、分化後期の3日間は、10%FBSを含むDMEM培養液で毎日交換した。脂質生成メカニズムでは分化開始と同時に試料を毎日処理し、脂肪分解メカニズムでは分化終了の3日前から3日間処理した。
【0083】
2.4.細胞内cAMPレベルに対する複合物の相乗効果の確認
cAMPは、脂肪分解酵素であるホルモン敏感性脂肪分解酵素(HSL)を活性化させて中性脂肪の分解を促進し、熱生成を促進することに関与する。本実施例では、細胞内cAMPレベルを測定するため、cAMP ELISAキット(Cell biolabs Inc.、SanDiego、CA USA)を使用して以下のように測定した。まず、1×10セルをLysisバッファーに入れて均質化し、5分間13,000rpmで遠心分離し、その上済み液をサンプルとして使用した。サンプルと標準試薬を96ウェルプレートのウェルに50μLずつ分注し、ペルオキシダーゼcAMPトレーサーコンジュゲート試薬を25μLずつ分注した後、ウサギ抗cAMPポリクローナル抗体試薬を50μLずつ分注し、プレートカバーを覆って2時間室温で放置した。2時間後、洗浄バッファーで250μLずつ分注して総5回洗浄作業を行い、室温で暖かくなった基質溶液を各ウェルに100μLずつ分注した後、室温で20分間放置した。20分後、停止液を100μLずつ各ウェルに分注して反応を中止させ、波長450nmで吸光度を測定した。
【0084】
2.5.細胞内グリセロール遊離に対する複合物の相乗効果の確認
脂肪分解は、脂肪細胞内の中性脂肪(トリグリセリド)が遊離脂肪酸(fatty acid)とグリセロールとに加水分解される過程であり、脂肪細胞内の脂肪分解に及ぼす影響を確認するため、脂肪分解時に増加するグリセロールを測定した。本実施例では、脂肪細胞の分化過程でグリセロールの放出量に及ぼす影響を測定するため、McGowan等の方法によってグリセロールリン酸オキシダーゼ‐トリンダー(TRINDER)酵素反応法を適用した遊離グリセロール試料を用いて培養液内のグリセロール含量を以下のように測定した。まず、各試料を濃度毎に処理して分化後期(9日目)にそれぞれ培養液を集めて使用し、培養液(1mL)と遊離グリセロール試料(800μL)とを混合して37℃ホットプレートで10分間反応させた後、ELISAリーダー(Molecular Devices、USA)を使って波長540nmで吸光度を測定した。グリセロール含量は、遊離グリセロールを標準試薬として使った標準曲線を作成することで測定し、タンパク質含量は、BSAを標準試薬として使ってブラッドフォード法で測定した。
【0085】
2.6.細胞内IRS、PI3K及びGLUT4に対する複合物の相乗効果の確認
IRS(Insulin Receptor Substrate)は、全身組織に分布するインスリン受容体基質であって、インスリン信号伝達経路に関与して糖及び脂質代謝を調節する。PI3K(Phosphoinositide 3-Kinase)は、インスリン信号伝達経路に関与する酵素であって、IRSと相互作用して血糖吸収を調節し、脂肪合成を抑制する機能を果たす。GLUT4(Glucose transport 4)は、脂肪細胞及び筋肉細胞で主に存在するブドウ糖受容体であり、インスリンの作用によって細胞内から細胞膜へのブドウ糖移動を促進する。内臓脂肪蓄積によるインスリン抵抗性が生じれば、細胞質から細胞膜へのGLUT4転位(translocation)が円滑に起きなくなる。本実施例では、IRS、PI3K及びGLUT4のタンパク質発現を測定するため、ウエスタンブロッティング(Western blotting)用セルライセートのタンパク質定量をブラッドフォードアッセイを用いて行った。タンパク質(40μg)を10%Mini-PROTEAN(登録商標) TGXTM プレキャストゲル(Bio-Rad)にローディングし、Trans-Blot(登録商標) TurboTM 転写システム(Bio-Rad)を使って転写を行った。メンブレンをブロッキングバッファー(5%スキムミルク/TBST(1%Tween(登録商標)20含有トリス緩衝液))で1時間ブロッキングし、洗浄後、IRS、PI3K及びGLUT4の1次抗体と反応させた。洗浄した後、HRPが重合された2次抗体(Cell Signaling、1:3000)と1時間反応させた後、洗浄してEzWest Lumi plus(ATTO、Tokyo、Japan)を用いて発色し、Ez-Capture II(ATTO)とCSアナライザー3.0ソフトウェア(ATTO)を使って分析した。
【0086】
2.7.細胞内脂肪蓄積抑制に対する複合物の相乗効果の確認
本発明のインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が脂肪前駆細胞から脂肪細胞に分化する過程での脂肪細胞の分化に及ぼす影響を測定するため、オイルレッドO染色を行った。すなわち、細胞培養及び分化誘導プロトコルに従って、脂肪生成カクテル(adipogenic cocktail)を含む10%FBSを含有するDMEM培養液と抽出物を毎日交換し、分化後期(9日目)にそれぞれオイルレッドO染色を行った。培養液を吸引し、PBS溶液で2回洗浄した後、PBS溶液を完全に吸い込んで、10%ホルマリンを入れて5分間室温で固定した後、10%ホルマリンを吸い込んでから新たな10%ホルマリンを再度入れ、2時間以上室温で固定した。その後、ホルマリンを吸引し、60%イソプロパノールを入れて直ちに吸引した後、フラスクを完全に乾燥させ、オイルレッドO溶液を添加して60分間脂肪球を染色した。染色後、蒸留水で4回洗浄し、脂肪球の細胞内蓄積を顕微鏡とカメラで観察した。脂肪球蓄積量を定量するため、十分に乾燥した状態で100%イソプロパノールを添加してオイルレッドO染料を溶出させた後、ELISAリーダー(Molecular Devices、USA)を使って波長520nmで吸光度を測定した。このとき、100%イソプロパノールをブランク(blank)として使用した。
【0087】
2.8.複合物が肥満誘導されたマウスの体重変化に及ぼす影響の確認
本発明のインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が高脂肪食餌により肥満誘導されたマウスの体重変化に及ぼす影響を確認した。実験動物は、(株)セロンバイオ(Uiwang-si、Korea)から20g内外の4週齢雄C57BL/6Jマウスを入手した。明暗は12時間(明暗サイクル)、温度は23±2℃、相対湿度は50±5%である条件で、1週間の適応期を経て実験に用いた。適応期間中はAIN-93G食餌及び飲用水を自由に摂取させた後、体重を測定して平均体重に近い個体を無作為法で各群当り8匹ずつ分離した。適応期間が終わった後、試料は15週間自律食餌摂取を行い、毎週食餌摂取量と体重を測定し、実験終了後に体重増加量(weight gain)を同一期間の食餌摂取量(total food consumption)で除して食餌効率(Food efficiency ratio、FER)を計算した。実験群の分類と実験食餌組成は表5のようであり、食餌効率の計算式は下記の数式3に示した。
【0088】
[数式3]
FER=体重増加量(g)/食餌摂取量(g)×100
【0089】
【表5】
【0090】
2.9.複合物が肥満誘導されたマウスの臓器及び脂肪組織の重量変化に及ぼす影響の確認
本発明のインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が高脂肪食餌によって肥満誘導されたマウスの臓器及び脂肪組織の重量変化に及ぼす影響を確認した。組織摘出は、採血した後、臓器(肝、腎臓、脾臓)と白色脂肪組織(皮下脂肪、内臓脂肪(副睾丸脂肪及び腹腔内脂肪))を摘出し、生理食塩水で洗浄して濾過紙で水分を除去した後、重量を測定した。
【0091】
2.10.複合物が肥満誘導されたマウスの血中グルコース、インスリン及びHbA1cの変化に及ぼす影響の確認
本発明のインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が高脂肪食餌によって肥満誘導されたマウスの血中グルコース、インスリン及びHbA1cの変化に及ぼす影響を確認した。血液分析は、実験終了後、実験動物を12時間絶食させてイソフルランで麻酔し、肝静脈から採血した。血液は全血及び遠心分離(14,000rpm、20min、4℃)して分離した血清をもって分析し、ELISAキット(Biovision)を用いて測定した。
【0092】
3.実験結果
3-1.11種の天然物に対する膵臓リパーゼ阻害活性
上述した実験方法で提示した製造方法で製造した11種の天然物に対する膵臓リパーゼ阻害活性度を測定した。図1及び表6に示されたように、同一濃度において、比較例1の試料のリパーゼ阻害活性度が83.77±0.27%と最も高いことが確認でき、その次は比較例2の試料のリパーゼ阻害活性が42.81±2.09%と優れることが確認できた。このような結果から、11種の天然物に対する膵臓リパーゼ阻害活性度は、インディアングーズベリー抽出物及び大麦若葉抽出物が最も優れ、インディアングーズベリー抽出物及び大麦若葉抽出物が膵臓リパーゼ阻害剤として作用して体内脂肪吸収率を低下させて抗肥満活性を有することが確認できる。
【0093】
【表6】
【0094】
3-2.膵臓リパーゼ阻害活性におけるインディアングーズベリーと大麦若葉と複合物の相乗効果
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物の単一物及びこれらの複合物に対する膵臓リパーゼ阻害活性度を測定した。インディアングーズベリー抽出物の膵臓リパーゼ阻害活性度を比較例1に、大麦若葉抽出物の膵臓リパーゼ阻害活性度を比較例2に、同じ濃度の複合物に対する膵臓リパーゼ阻害活性度を実施例1-1に示した。また、複合物の相乗効果を確認するため、コルビー(Colby)の式を活用して測定した結果は実施例1-2に示した。図2及び表7に示されたように、インディアングーズベリー抽出物の膵臓リパーゼ阻害活性度は94.42±0.66%であり、大麦若葉抽出物は40.83±3.14%の効能を見せた。同じ濃度の複合物に対する膵臓リパーゼ阻害活性度は112.64±3.20%と、単一物質よりも複合物で膵臓リパーゼ阻害活性度がさらに優れた。コルビーの式を活用して導出した複合物における相乗効果予測値は96.70%であるが、実施例1-2では130.06±2.21%と予測値よりも約134%以上優れた効果を見せた。このことから、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物は、それぞれの単一物質よりも膵臓リパーゼの酵素活性抑制に著しい相乗効果を奏し、摂取した脂肪の消化及び吸収を阻害して抗肥満活性を有することが確認できる。
【0095】
【表7】
【0096】
3-3.多様な重量比で配合したインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物の膵臓リパーゼ阻害活性における効果の確認
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物の最適比率を選定するため、膵臓リパーゼ阻害活性度を測定した。実験結果3-2から、インディアングーズベリー及び大麦若葉はそれぞれの単一物質よりも複合物で相乗効果を奏することを確認した後、製造工程及び経済性を考慮したうえで、インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が最も優れた効能を奏する最適比率を選定した。図3及び表8に示されたように、同一濃度におけるインディアングーズベリーと大麦若葉との混合比率による膵臓リパーゼ阻害活性度は、インディアングーズベリー:大麦若葉が4:1、2:1、1:1の比率である場合、それぞれ103.45±2.14、108.37±1.92、105.62±0.40と類似した活性を見せ、1:2、1:4で測定された83.30±1.63、60.98±0.33よりも優れた活性を見せた。このような結果から、それぞれの単一物質よりも著しい相乗効果を有するインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、インディアングーズベリー:大麦若葉が4:1~1:1の比率であるとき、他の混合比率よりも優れた膵臓リパーゼ阻害剤として作用して脂肪の消化及び吸収を抑制できることを確認した。
【0097】
【表8】
【0098】
3-4.多様な重量比で配合したインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物の細胞内cAMPレベルにおける効果の確認
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを多様な重量比で配合して細胞内cAMPレベルを測定した。図4に示されたように、同一濃度においてインディアングーズベリー及び大麦若葉の単一物はそれぞれ1479.3±16.8、1300.0±81.9の活性を見せた。インディアングーズベリーと大麦若葉との混合比率に応じたcAMPレベルは、インディアングーズベリー:大麦若葉が4:1、2:1の比率であるとき、それぞれ2472.3±163.8、2508.3±106.3と、単一物に比べて著しい相乗効果を見せた。その次は、1:1、1:2、1:4の比率で測定された2132.7±149.4、1763.7±101.1、1469.7±24.5の順で優れた活性を見せた。このような結果から、それぞれの単一物質よりも著しい相乗効果を有するインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、cAMP発現調節を通じて脂肪分解を促進できることを確認した。
【0099】
3-5.多様な重量比で配合したインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物の細胞内グリセロール遊離における効果の確認
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを多様な重量比で配合して細胞内グリセロール遊離を測定した。図5に示されたように、同一濃度においてインディアングーズベリー及び大麦若葉の単一物はそれぞれ0.55±0.03、0.47±0.03の活性を見せた。インディアングーズベリーと大麦若葉との混合比率に応じたグリセロール遊離は、インディアングーズベリー:大麦若葉が4:1、2:1の比率であるとき、それぞれ1.01±0.17、1.01±0.01と、単一物に比べて著しい相乗効果を見せた。その次は、1:1、1:4、1:2の比率で測定された0.77±0.06、0.69±0.06、0.60±0.09の順で優れた活性を見せた。このような結果から、それぞれの単一物質よりも著しい相乗効果を有するインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が、脂肪細胞内に蓄積された脂肪球に存在するトリグリセリド、すなわち、中性脂肪を分解してグリセロール放出量が増加することを確認した。
【0100】
3-6.細胞内IRS1におけるインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物の相乗効果
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを配合して細胞内P-IRS1/IRS1の発現比率を確認した。図6に示されたように、同一濃度においてインディアングーズベリー及び大麦若葉の単一物はそれぞれ0.42、0.32の発現比率を見せた。インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物である実施例3では、0.86の発現比率であって、単一物に比べて著しい相乗効果を見せた。また、50、100μg/mLの処理群ではそれぞれ0.51、0.63の発現比率を見せ、インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が濃度依存的に細胞内P-IRS1/IRS1の発現比率を増加させ、このような結果から、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物がP-IRS1/IRS1の発現比率を増加させて血糖吸収を調節し、糖代謝から脂肪合成を抑制できることを確認した。
【0101】
3-7.細胞内PI3Kにおけるインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物の相乗効果
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを配合して細胞内P-PI3K/PI3Kの発現比率を確認した。図7に示されたように、同一濃度においてインディアングーズベリー及び大麦若葉の単一物はそれぞれ1.93、1.26の発現比率を見せた。インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物である実施例3では4.31の発現比率であって、単一物に比べて著しい相乗効果を見せた。また、50、100μg/mLの処理群ではそれぞれ1.05、1.47の発現比率を見せ、インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が濃度依存的に細胞内P-PI3K/PI3Kの発現比率を増加させ、このような結果から、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が血糖吸収を調節し、糖代謝から脂肪合成を抑制できることを確認した。
【0102】
3-8.細胞内GLUT4におけるインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物の相乗効果
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを配合して細胞内GLUT4の発現量を測定した。図8に示されたように、同一濃度においてインディアングーズベリー及び大麦若葉の単一物はそれぞれ0.18、0.11の発現量を見せた。インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物である実施例3では0.38の発現量であって、単一物に比べて著しい相乗効果を見せた。また、50、100μg/mLの処理群ではそれぞれ0.14、0.33の発現量を見せ、インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が濃度依存的に細胞内GLUT4の発現量を増加させ、このような結果から、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物がGLUT4シグナリングを促進させて糖代謝から脂肪合成を抑制できることを確認した。
【0103】
3-9.細胞内脂肪蓄積抑制におけるインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物の相乗効果
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを配合し、脂肪細胞分化に及ぼす影響を測定するため、オイルレッドO染色を行った。図9に示されたように、同一濃度での細胞内中性脂肪の含量はインディアングーズベリー及び大麦若葉の単一物がそれぞれ0.60±0.02、1.10±0.05であった。インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物である実施例3では0.29±0.03であって、単一物に比べて著しい相乗効果を見せた。また、50、100μg/mLの処理群ではそれぞれ0.88±0.02、0.57±0.03であり、インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が濃度依存的に脂肪細胞内脂肪蓄積を抑制することを確認した。
【0104】
3-10.インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が肥満誘導されたマウスの体重変化に及ぼす影響の確認
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを配合し、高脂肪食餌によって肥満誘導されたマウスの体重変化に及ぼす影響を確認するため、実験動物の体重を測定した。表9に示されたように、高脂肪食餌によって肥満を誘導した対照群は、30.92±3.53の体重増加量を見せた。インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物である実施例3では、100、200、400mg/kg投与群でそれぞれ28.13±3.93、25.78±3.35、24.70±1.85と濃度依存的な体重減少を見せた。食餌効率を比べた結果からも、対照群対比インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物で濃度依存的に減少することを確認し、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が体重減少に優れた効果を見せることを確認した。
【0105】
【表9】
【0106】
3-11.インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が肥満誘導されたマウスの臓器及び脂肪組織の重量変化に及ぼす影響の確認
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを配合し、高脂肪食餌によって肥満誘導されたマウスの臓器及び脂肪組織の重量変化に及ぼす影響を確認するため、実験動物の臓器(肝、腎臓、脾臓)及び白色脂肪組織(皮下脂肪、内臓脂肪(副睾丸脂肪及び腹腔内脂肪))を測定した。表10に示されたように、高脂肪食餌によって肥満誘導した対照群の白色脂肪組織の総量、皮下脂肪組織の重量、内臓脂肪組織の重量はそれぞれ7.06±0.72、3.57±0.62、3.49±0.32であった。対照群と比べて、インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物である実施例3では、100、200、400mg/kg投与群での白色脂肪組織の総量がそれぞれ5.52±0.86、5.37±0.31、3.95±0.41と減少し、皮下脂肪組織の重量が2.62±0.43、2.31±0.18、1.54±0.31と減少し、内臓脂肪組織の重量が2.90±0.67、3.06±0.14、2.41±0.15と減少した。このような結果から、インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が濃度依存的に脂肪組織の重量を減少させることを確認し、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が体脂肪蓄積抑制に優れた効果を見せることを確認した。
【0107】
【表10】
【0108】
3-12.インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が肥満誘導されたマウスの血糖変化に及ぼす影響の確認
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを配合し、高脂肪食餌によって肥満誘導されたマウスの血糖変化に及ぼす影響を確認するため、実験動物の血糖を測定した。図10に示されたように、同一濃度400mg/kgでインディアングーズベリー及び大麦若葉の単一物における血糖数値はそれぞれ4.74±0.64、6.99±0.79を見せた。インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物である実施例3では血糖が4.63±0.51であって、単一物に比べて著しい減少効果を見せた。また、100、200、400mg/kgの処理群でインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が濃度依存的に血糖を減少させることを確認し、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が血糖減少に優れた効果を見せることを確認した。
【0109】
3-13.インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が肥満誘導されたマウスの血中インスリンの変化に及ぼす影響の確認
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを配合し、高脂肪食餌によって肥満誘導されたマウスのインスリン変化に及ぼす影響を確認するため、実験動物の血中インスリンを測定した。図11に示されたように、 同一濃度400mg/kgでインディアングーズベリー及び大麦若葉の単一物における血中インスリン数値はそれぞれ0.67±0.01、0.76±0.02を見せた。インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物である実施例3では血中インスリンが0.56±0.01であって、単一物に比べて著しい減少効果を見せた。また、100、200、400mg/kgの処理群でインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が濃度依存的にインスリンを減少させることを確認し、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が血中インスリンの減少に優れた効果を見せることを確認した。
【0110】
3-14.インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が肥満誘導されたマウスの血中糖化ヘモグロビン(HbA1c)の変化に及ぼす影響の確認
上述した実験方法で提示した製造方法で製造したインディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物とを配合し、高脂肪食餌によって肥満誘導されたマウスの血中糖化ヘモグロビンの変化に及ぼす影響を確認するため、実験動物の血中HbA1cを測定した。図12に示されたように、同一濃度400mg/kgでインディアングーズベリー及び大麦若葉の単一物における血中HbA1cはそれぞれ7.50±0.11、9.67±0.57を見せた。インディアングーズベリーと大麦若葉との複合物である実施例3では血中HbA1cが7.15±0.22であって、単一物に比べて著しい減少効果を見せた。また、100、200、400mg/kgの処理群でインディアングーズベリーと大麦若葉との複合物が濃度依存的に血中HbA1cを減少させることを確認し、インディアングーズベリー抽出物と大麦若葉抽出物との複合物が血中HbA1cの減少に優れた効果を見せることを確認した。
図1
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