(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】高ダイナミックレンジ較正を備えるRF/ミリ波ピーク検出器
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20230628BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
G01R19/00 M
G01R35/00 E
(21)【出願番号】P 2022041834
(22)【出願日】2022-03-16
(62)【分割の表示】P 2018521287の分割
【原出願日】2016-10-24
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2015-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ヴィト ジャンニーニ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ポール ギンスバーグ
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-267084(JP,A)
【文献】特開2005-345199(JP,A)
【文献】米国特許第06762627(US,B1)
【文献】国際公開第2015/056055(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0057712(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0004359(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0021048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 19/00-19/32、
11/00-11/66、
21/00-22/10、
35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
ピーク電圧検出器の入力に複数の直流(DC)
レベルを印加して各電流レベルに対する出力電圧を
測定する
ことに
よって、その入力における信号の電力レベルに対応する電圧を出力するように構成される前記ピーク電圧検出器に対
する第1の係数を
決定すること
と、
前記ピーク電圧検出器
の入力に1つ又はそれ以上の較正電力レベルにおける交流(AC)信号を印加して各較正電力レベルに対するピーク電圧を測定すること
によって、前記ピーク電圧検出器
に対する第2の係数を
決定すること
と、
前記
第1の係数
と前記
第2の係数
とを用いて第1の測定電圧を調整することによって
前記ピーク電圧検出器において受信される入力無線周波数(RF
)信号の近似電力を計算すること
であって、前記ピーク電圧検出器が前記入力RF信号に応答して前記第1の測定電圧を生成する、前記計算することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
第2の測定電圧を生成するために、休止入力
信号に応答して前記ピーク電圧検出器によって生成される第2のピーク電圧を測定すること
と、
二重サンプリングされた測定電圧を生成するために、前記第1の測定電圧から前記第2の測定電圧を減算すること
と、
を更に含み、
前記二重サンプリングされた測定電圧が、前記
入力RF信号の近似電力を計算するために前記第1の測定電圧
として用いられる、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記第2のピーク電圧を測定することが、前記第1の測定電圧が閾値を下回るときにのみ実施される、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記ピーク電圧検出器を表す温度を測定
して前記測定された温度を前記
第1の係数とともに
格納することを更に含み、
前記
複数の直流
(DC)レベルを印加することが、
現在の温度が前記
格納された温度から或る範囲値より
も大き
く異なることに
応答して実施され、
前記近似電力を計算することが、前記
現在の温度が前記
格納された温度
から前記範囲値
の範囲内
で異なることに応答して、前記
第1の係数
と前記第2の係数とを用い
て前記第1の測定電圧を調整する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記範囲値が10℃である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記第2の係数を決定することが、前記
1つ又はそれ以上の較正電力レベルの各々に対して、
既知の周波数と前記較正電力レベルとを有するテスト無線周波数(RF)信号を前記ピーク電圧検出器の入力に提供することと、
結果のピーク電圧を測定することと、
前記結果のピーク電圧を前記テストRF信号に関連付ける較正係数を計算することと、
前記較正係数を前記ピーク電圧検出器と同じ集積回路上の不揮発性ストレージ位置に格納することと、
を含む、方法。
【請求項7】
方法であって、
ピーク電圧検出器上で電流・電圧スイープを実施することによって、その入力における信号の電力レベルに対応する電圧を出力するように構成される前記ピーク電圧検出器に対して第1の係数を決定することと、
1つ又は複数の第2の係数のセットを決定するために、前記ピーク電圧検出器上で交流(AC)較正テストを実施することであって、
既知の周波数と既知の電力レベルとを有する無線周波数(RF)テスト信号を前記ピーク電圧検出器の入力に提供することと、
前記ピーク電圧検出器から結果のピーク電圧を測定することと、
前記測定
された結果のピーク電圧を前記RFテスト信号の電力レベルに関連付けるAC較正係数を計算することと、
前記AC較正係数を前記ピーク電圧検出器と同じ集積回路上の不揮発性ストレージ位置に格納することと、
によってなされる、前記AC較正テストを実施することと、
前記第1の係数と前記1つ又は複数の第2の係数とを用いて第1の測定電圧を調整することによって、前記ピーク電圧検出器において受信される入力RF信号の近似電力を計算することであって、前記ピーク電圧検出器が前記入力RF信号に応答して前記第1の測定電圧を生成する、前記近似電力を計算することと、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記AC較正テストの既知の周波数が高周波動作周波数より小さく、
前記方法が、
前記高周波
動作周波数
においてテストRF信号を用いて前記
ピーク電圧検出器上で少なくとも1つの高周波数較正テストを実施すること
と、
前記ピーク電圧検出器から結果のピーク電圧を測定することと、
前記
結果のピーク電圧を前記テストRF信号に関連付ける高周波数較正係数を計算すること
と、
前記
1つ又は複数の第2の係数を前記高周波数較正係数に関連付ける変換要素(ρ)値を計算すること
と、
前記ρ値を別の不揮発性メモリ位置に
格納すること
と、
を
更に含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記
入力RF信号が高周波
動作周波数(RF)
においてであり、
前記
近似電力を計算すること
が、前記
第1の係数
と前記
1つ又は複数の第2の係数
と前記ρ
値とを用いて前記第1の測定電圧を調整することによって
前記入力RF信号の近似電力を計算することを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記近似電力を計算することが、
第2の測定電圧を生成するために、休止入力
信号に応答して前記
ピーク電圧検出器によって生成される第2のピーク電圧を測定すること
と、
二重サンプリングされた測定電圧を生成するために、前記第1の測定電圧から前記第2の測定電圧を減算すること
と、
を更に含み、
前記二重サンプリングされた測定電圧が、前記
入力RF信号の近似電力を計算するために前記第1の測定電圧
として用いられる、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記第2のピーク電圧を測定することが、前記第1の測定電圧が閾値を下回るときのみ実施される、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、
前記
ピーク電圧検出器を表す温度を測定
して前記測定された温度を前記
第1の係数とともに
格納することを更に含み、
前記電流
・電圧スイープが、
現在の温度が前記
格納された温度から或る範囲値より
も大きく異なるときにのみ実施され、
前記近似電力を計算することが、前記
現在の温度が前記
格納された温度の前記範囲値内に留まる限り、前記
格納された
第1の係数
と前記1つ又は複数の第2の係数と前記ρ値とを用いる、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記範囲値が10℃である、方法。
【請求項14】
システムであって、
集積回路(IC)の基板上に形成されるミリ波ピーク電圧検出器であって、ミリ波無線周波数(RF)信号を受け取るように結合される入力と、その入力において受信される前記RF信号の電力レベルに対応する測定ピーク電圧信号を提供するための出力とを有する、前記
ミリ波ピーク電圧検出器と、
前記
ミリ波ピーク電圧検出器の出力上の前記測定ピーク電圧信号を読み込むように結合される組み込み自己テスト(BIST)ネットワークであって、処理モジュールと、不揮発性メモリ部分を有するメモリモジュールとを含み、
前記処理モジュールが、
前記
ミリ波ピーク電圧検出器上で電流・電圧スイープを実施することによって前記
ミリ波ピーク電圧検出器に対して第1の係数を決定し、
第1の測定電圧を生成するために、ミリ波無線周波数(RF)信号に応答して前記
ミリ波ピーク電圧検出器によって生成されるピーク電圧を測定し、
較正された電力レベルにおける1つ又は複数の交流(AC)テスト信号を前記
ミリ波ピーク電圧検出器に印加することによってすることによって前記
ミリ波ピーク電圧検出器に対して第2の係数を決定し
前記第1の係数と前記第2の係数とを用いて前記第1の測定電圧を調整することによって前記RF信号の近似電力を計算する、
ように動作可能である、前記BISTネットワークと、
を含む、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、
前記
処理モジュールが、
第2の測定電圧を生成するために、休止入力信号に応答して前記
ミリ波ピーク電圧検出器によって生成される第2のピーク電圧を測定し、
二重サンプリングされた測定電圧を生成するために、前記第1の測定電圧から前記第2の測定電圧を減算する、
ように更に動作可能であり、
前記二重サンプリングされた測定電圧が、前記RF信号の近似電力を計算するために、前記第1の測定電圧として用いられる、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記第2のピーク電圧を測定することが、前記第1の測定電圧が閾値を下回るときにのみ実施される、システム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムであって、
前記
処理モジュールが、前記
ミリ波ピーク電圧検出器を表す温度を測定し、前記測定された温度を前記第1の係数とともに前記メモリモジュールに格納するように更に動作可能であり、
前記電流・電圧スイープが、現在の温度が前記格納された温度から或る範囲値よりも大きく異なることに応答して実施され、
前記近似電力を計算することが、前記現在の温度が前記格納された温度から前記範囲値の範囲内で異なることに応答して、前記第1の係数と前記第2の係数とを用いて前記第1の測定電圧を調整する、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、
前記範囲値が10℃である
、システム。
【請求項19】
請求項14に記載のシステムであって、
前記
処理モジュールが、更に、
既知の周波数と既知の電力レベルとを有するテスト無線周波数(RF)信号を前記
ミリ波ピーク電圧検出器の入力に提供し、
結果のピーク電圧を測定し、
前記結果のピーク電圧を前記テストRF信号に関連付ける較正係数を計算し、
前記較正係数を前記集積回路上の不揮発性ストレージメモリにおける位置に格納する、
ことによって、前記第2の係数を決定するように動作可能である、システム。
【請求項20】
請求項14に記載のシステムであって、
前記
ミリ波ピーク電圧検出器の入力に結合される出力を有するミリ波モジュールを更に含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、全般的に、ワイヤレストランシーバシステムに関し、特に、厳しい機能要件に準拠しなければならないシステムにおけるトランシーバ性能パラメータの測定に関する。
【背景技術】
【0002】
先進運転支援システム(ADAS)と称される安全システムの新たなクラスが、人間の操作エラーを低減するために、自動車に導入されている。これらのシステムは、ミリ波自動車用レーダーに主に基づくスマートセンサによって可能にされる。そのような支援システムの急増は、リアビューフェーシングカメラ、横滑り防止装置(electronic stability control)、及びビジョンベースの歩行者検出システム等の機能性を提供し得、一部は、マイクロコントローラ及びセンサ技術における改善により可能にされている。高度化された埋め込みレーダーに基づくソリューションは、ADAS設計者に対し補足的な安全機能を可能にしている。
【0003】
自動車用レーダーシステムにおいて、車両の周りの障害物、及び検出されたオブジェクトの車両に対する速度を検出するために、1つ又は複数のレーダーが用いられ得る。例えば、衝突を回避するために或いは付帯的損害を低減するため、必要とされる適切なアクションを、レーダーシステムにおける処理ユニットがレーダーセンサによって生成された信号に基づいて決定し得る。現在の自動車用レーダーシステムは、車両の周囲のオブジェクト及び障害物、検出された任意のオブジェクト及び障害物の車両に対する位置、及び検出された任意のオブジェクト及び障害物の車両に対する速度を検出することができる。例えば、処理ユニットを介して、レーダーシステムは、車両ドライバに潜在的な危険性を警告し得、危険な状況にある車両を制御することによって衝突を回避し得、車両の部分的な制御を引き受け得、或いは車両の駐車の際にドライバを支援し得る。
【0004】
自動車用レーダーシステムは、道路車両機能安全性(Road Vehicles-Functional Safety)と題された国際規格(ISO)26262の機能安全性の仕様を満たすために必要とされる。ISO 26262は、機能安全性を、電気/電子システムの機能不良挙動によって引き起こされる不適切なリスクがないことと定義している。自動車用レーダーにおける機能安全性は、レーダーの構成要素の欠陥に起因する人間に対する被害の予防である。自動車用レーダーの場合、レーダーは、約100ミリ秒(ms)のフォールトトレラント時間インターバル内で適切に機能することが既知であるべきである。そのため、車両が動作している間、信号対ノイズ比(SNR)の劣化を引き起こし得る、レーダーの如何なる部分における欠陥も検出されるべきであり、約100ms内に適切な応答が成されるべきである。
【発明の概要】
【0005】
説明される例において、集積回路(IC)が、ダイオードベースのミリ波ピーク電圧検出器(PVD)を含む。テストフェーズの間、交流(AC)係数のセットを決定及びストアするために、1つ又は複数のPVDに対してマルチポイント低周波数較正テストが実施される。ICの動作の間、プロセス及び温度直流(DC)係数を決定するために、PVDの選択された1つに対して電流-電圧スイープが実施される。第1の測定電圧を生成するために、高周波無線周波数(RF)信号に応答して、PVDによって生成されるピーク電圧が測定される。DC係数及びAC係数を用いて第1の測定電圧を調整することによって、RF信号の近似電力が計算される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】自動車用運転支援応用例に対して用いられ得るレーダーシステムのブロック図である。
【0007】
【
図2】
図1のトランシーバにおいて用いられるピーク電圧検出器のより詳細なブロック図である。
【
図3】
図1のトランシーバにおいて用いられるピーク電圧検出器の概略図である。
【0008】
【
図4】
図2の電圧検出器に対する例示の応答曲線を図示するプロット図である。
【0009】
【
図5】
図2のピーク検出器に対する較正された応答曲線を図示するプロット図である。
【
図6】
図2のピーク検出器に対する較正された応答曲線を図示するプロット図である。
【0010】
【
図7】
図2のピーク検出器の較正を図示するフローチャートである。
【
図8】
図2のピーク検出器の較正を図示するフローチャートである。
【
図9】
図2のピーク検出器の較正を図示するフローチャートである。
【0011】
【
図10】複数のレーダートランスミッタ及びレシーバを含むレーダーシステム集積回路のブロック図である。
【0012】
【
図11】複数のレーダーシステムを備える自動車の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一貫性のため、種々の図面における類似の要素は類似の参照番号で示される。下記の実施形態の詳細な説明において、より徹底した理解を提供するために多くの特定の詳細が記載されている。しかしながら、例示の実施形態はこれらの特定の詳細無しに実施されてもよい。別の例において、説明を不必要に複雑化することを避けるために、周知の特徴の詳細な説明はなされていない。
【0014】
自動車用レーダーは、ISO 26262等の安全規格に準拠するために、そのライフサイクルにわたって、機能不良に起因するリスクを自己診断及びアセスメントする必要がある。現場において性能低下をチェックする組み込み自己テスト(BIST)ネットワークが本明細書において開示される。本開示の実施形態は多数の利点を提供し、それらの利点には、故障モード検出に対する手段、デジタル支援性能適合、及び無線周波数(RF)テストの大幅コスト低減が含まれ、この大幅なコスト低減は、大量生産されているミリ波製品の最大30%に相当し得る。
【0015】
図1は、自動車用運転支援応用例に対して用いられ得る例示のレーダーシステム100のブロック図である。この例は、複数のRFトランスミッタ(TX)110、複数のRFレシーバ(RX)120、RF信号シンセサイザ回路130、RFループバック132等を有し得る。例えば、各RFトランスミッタ110は、アンプ111、112のチェーン、及びパワーアンプ(PA)113を含み得る。各レシーバ120は、低ノイズアンプ(LNA)121、及びアンプ122、123のチェーンを含み得る。レーダーシステムの一般的な動作は、周知であるので本明細書で詳細に説明する必要はない。この例において、レーダーシステムは79~81GHzの範囲において動作するが、他の実施形態において、これより高い又は低い動作周波数が用いられ得る。
【0016】
典型的に、ADASにおける最大故障率は、システム100において図示される高スイングミリ波ブロック内である。従って、各トランスミッタ110内のRFアンプのほとんどの又は全ての出力、LO(ローカルオシレータ)信号分配、各レシーバ120のフロントエンド、及び各TX-RX132ループバックパスにおける電圧スイングを綿密に監視するために、141、142、143等のピーク検出器(PD)のセットが提供される。これらの低複雑度(low-complexity)ピーク検出器は、システム100内の数十個のミリ波ノードにおいて割り当てられ、一方、RF性能及びエリアへの影響は無視できるものである。パッケージの問題を示し得る相対的な出力/入力インピーダンス変動を測定するために、反射係数及び出力電力における変動を感知するインピーダンス検出器(ZDTX、ZDRX)が各アンテナポートに配置され得る。
【0017】
BISTネットワークは、PD(141~143等)のセットを監視するために結合され得、低ノイズ計装アンプ145で構成される1つ又は複数の低周波数フロントエンドを含み得、低ノイズ計装アンプ145は、逐次比較レジスタ(SAR)アナログデジタルコンバータ(ADC)146の入力におけるダイナミックレンジを最大化する。BISTサブシステム有限状態機械(FSM)147がBISTネットワークを制御する。機能安全性がデジタルセーフアイランドとしてロックステッププロセッサ(表示されない)の周りに築かれ得、デジタルセーフアイランドは、ASIL-Bシステムに対する主要要件である、全てのアナログ機能に対するシングルポイントフォールトメトリック(SPFM)が90%より上であることをターゲットとしている。
【0018】
ピーク検出器
79GHzにおいて電圧を感知することは、特に、複数のRFブロックにわたる広いテストカバレッジを達成するためには難しいタスクであり得る。数フェムトファラッドの容量性負荷が、インピーダンスミスマッチを引き起こし得、そのために許容不能な損失を引き起こし得る。また、そのような機能安全性特徴は、典型的に、RF設計及びレイアウトが進んだ段階にあるときにのみ割り当てられ得るので、厳しい面積要件がPD設計上の自由度を制限し得る。PDの確度と精度は、一連のオンチップRFテストを可能にし得、従ってコスト低減を提供する。
【0019】
図2及び
図3は、
図1のトランシーバにおいて用いられ得る例示のピーク電圧検出器241の更に詳細なブロック図及び概略図である。
図1を再度参照すると、PD241はPD141~143等の各々を表し得る。上述したように、PDは、疑似差動様式で各ミリ波アンプの出力に置かれ得る。例示のアンプ211は、種々のアンプ111~113、121~123等を表す。
【0020】
PD241は、ダイオード接続されたNMOSデバイス353に印加されたRF RMS(二乗平均平方根)電圧をピークDC(直流)電圧に変換する、弱反転にバイアスされた二乗則デバイスである。二乗則検出器の基本動作は周知である。ダイオード出力のDC成分は、RF入力電圧の二乗に、及びダイオードのタイプ、プロセス、及び温度に依存する応答性に比例する。測定された出力DC出力電圧は、信号パスのインピーダンスに基づいて、入力RF電力に比例する。
【0021】
例示のPD241において、容量分圧器351、352が、入力354上のアンプ211から受信されるインカミング信号を検出器241の線形領域内に減衰する。出力357上に提供されるピーク信号が低ノイズアンプ145によって増幅され、ADC146の入力に提供される前に、抵抗器355及びキャパシタ356によって形成されたローパスフィルタがスプリアス高調波を除去し得る。類似のトポロジーが、デバイス358に接続されたダイオードを用いて、疑似差動入力359に対して提供される。ダイオード接続されたNMOSデバイス361、362の差動セットが、出力360上に基準電圧Vo-refを提供する。これ以降に更に詳細に説明されるように、出力357及び基準出力360を横切って測定する電圧はΔVDCと称され得る。
【0022】
図4は、
図2の例示の電圧検出器に対する例示の応答曲線を図示するプロット図である。下記式(1)により、PD241のDC応答性に対して79GHzが得られ得る。
ここで、β
0は、IV(電流-電圧)ダイオード二乗則関係の二次導関数に比例し、プロセス及び温度変動に依存するDC応答性と称され得る。β
acは、線形領域402において応答性周波数依存性をキャプチャし、β
nlは、一層高次の高調波がイン/アウト特性を圧縮する傾向がある上側二乗則領域403をモデル化している。PDダイナミックレンジの底部分401は最終的に、ノイズ、ミスマッチ、及びスプリアス高調波によって制限される。
【0023】
較正
そのような不可避な変動のトラッキング及び補償を可能にする較正/トリミング戦略をここで説明する。多くの非理想特性をキャプチャし所望の確度を達成するために、3ステッププロセスが信頼され得る。第1番目に、DC IV(電流-電圧)較正ステップが、電流DAC(デジタルアナログコンバータ)を用いてPDバイアス電流をスイープすることを含む。
図2及び
図3を再び参照すると、DAC247はこの目的のために用いられ得る。充分な数のポイントを用いて、各ダイオード353、358の入力電流対出力電圧特性をキャプチャすることによって、任意の所与のプロセスコーナー及び温度で、IV指数ダイオード特性I=f(V)が適切に再構築され得る。式(2)に示されるように、DC応答性におけるそうした変動をキャプチャするために、測定されたポイントの回帰(regression)が用いられ得る。
ここでqは、電子電荷であり、nは非理想特性係数であり、kはボルツマン定数であり、Tはケルビンでの絶対温度である。
【0024】
第2のステップにおいて、デバイスの製造時、マルチポイント「トリミング」がデバイスの最終テストの間に実施され得る。或いは、この「トリミング」ステップは、デバイスがシステムに取り付けられた後等、それ以降の時点で実施されてもよい。このトリミングステップは、改善された絶対確度を提供する。その結果は、デバイスの動作の間に用いるためにスタティックメモリにストアされ得る。例えば、結果は、デバイス100上に配置されるヒューズのセットを飛ばすことによって、あるいは、結果をデバイス100上に配置されるリードオンリーメモリ(ROM)又は他の種類の不揮発性メモリにストアすることによってストアされ得る。
【0025】
この較正ステップをシンプルにするために、トリミングは、1~10GHzの範囲の周波数等の一層低い周波数信号を用いて実施され得る。基本的な前提は、ダイオード接続されたNMOSデバイスが広帯域であること、及び1GHz対80GHz応答性が、プロセス、温度、及びミスマッチに対して無視可能な依存性のみ有する定数倍率(constant multiplying factor)ρ異なることである。この較正ステップは、複数の入力電力ポイント(それらの対応する電圧はv
RF,trimである)を用い、式(3)によって表されるトリミング係数ベクトルを計算する。典型的に、満足する結果を得るためには、4又はそれ以上の入力ポイントが実施されるべきである。
ここでβ0は、
から計算され、
Δv
0,trimはv
RF,trimを印加したときのPD出力における測定されたDC電圧である。β
ac及びβ
nlは、それぞれ、PD線形領域402及び非線形領域403におけるβ
trimの補間によって計算され得る。
【0026】
第3のステップにおいて、RF相関二重サンプリング(CDS)が実施され得る。このステップは、
図4を再度参照すると、範囲401におけるPD感度レベルに近い電圧を感知するとき、改善された精度を提供し得る。このステップは、短時間のインターバル内にその入力においてRF信号が存在する場合と存在しない場合のPD出力をサンプリングし、その2つの測定値を減算することによって実施され得る。2つのサンプル間の時間における分離に応じて、CDSはフル又はソフトとなり得る。短時間インターバルで取得された2つのサンプルを減算するとき、ピーク検出器のオフセット及びノイズに対するCDSの影響は、オートゼロプロセスの影響に類似している。伝達関数は周波数の原点にゼロを課し、これが如何なるオフセットもキャンセルし、1/fノイズを強力に低下させる。時間インターバルが増大すると、2つのサンプルは相関が少なくなり、ノイズフィルタリングの影響が少なくなる。しかし、それでもオフセットエラーは補償される(ソフトCDS)。CDSルーティンの間、最適なPD-LNAゲインが推定され得る。フルCDSを用いるとき、このルーティンは、PD-LNA145に対してゲイン制御アルゴリズムを用い得、このアルゴリズムはGPADC146に対する入力をクリッピングすることなく、出力におけるSNRの最大化を可能にする。
【0027】
例えば、
図3の実施形態において、RF入力信号を切り離すためにスイッチ365、366が用いられ得る。このようにして、相関された緩変化ノイズ寄与はキャンセルされ得る。実際には、CDSは、SNR(信号対ノイズ比)を改善するハイパス伝達関数を生成する。
【0028】
測定結果
図5及び
図6は、
図2のピーク検出器に対する例示の較正された応答曲線を図示するプロット図である。テストデバイスは、CMOSの45nm技術を用いて制作され、それらに上述の較正技法が適用された。
図5において、プロットライン511は、テストデバイスから取得された生読み取り値を表し、プロットライン512は、生読み取り値に上述の較正を適用した結果を図示する。線形領域502は、較正プロセスによって拡張され、一層広いダイナミックレンジ(DR)をカバーしている。
図6は、異なる温度に対して及びテストIC上の異なる場所に配置された幾つかのデバイスに対して、上述の3ステップを用いて達成された、較正されたピーク検出器絶対応答性エラーを図示する。27dBダイナミックレンジ602にわたって1dBのより悪いケースのエラーが図示されている。
【0029】
較正プロセス
図7~
図9は、上述の較正ステップを更に詳細に図示するフローチャートである。
図7はDC IVスイーププロセスを図示する。この例では、β
0係数とも称されるβ
DC係数は、
図2を再度参照すると、DAC247によって提供される64の電流ステップを用いて決定される。他の実施形態は、これより多くの又はこれより少ない電流ステップを用い得る。ICの温度がオンチップ温度センサを用いて測定される(702)。測定された温度は、IC上に位置するメモリ回路にストアされ得る。この例では、温度は、最寄りの10℃に丸められる。この実施形態では、単一の温度が測定される。他の実施形態において、ICの周りに幾つかのセンサが散在され得、各PDが近くの温度センサに関連付けられ得る。
【0030】
図1を再度参照すると、本実施形態は幾つかのPD-LNA145を有する。どのPDが動作されるのかに依存して、対応するPD-LNA145が選択され(704)、較正される(705)。インデックス「x」は選択されたPD-LNAを識別する。ターゲットPDは、その後選択され(706)、
図3を再度参照すると、ENP及びENMスイッチをオンにすることによって読み出しが可能にされる。インデックス「y」は選択されたPDを識別する。
【0031】
選択されたPDに関連する温度が、最後のIVスイープから、10℃以上変化していない(707)場合、最後のIVスイープからの結果(716)が用いられ得る。そうでない場合、選択されたPDを、RF入力がオフにされ電流DAC247がオンにされる「IVスイープモード」にすること(708)によってIVスイーププロセスが継続する。
【0032】
各電流ステップ713では、複数の出力電圧測定が行われ、その結果が平均され(710)、その後、64 IV結果の表を形成するためにストアされる(712)。
【0033】
データが収集された後、データを関数に適合させるために回帰が実施される(714)。本実施形態において、「n(x,y,T)」及び「i
0(x,y,T)」を見つけるために式(4)に基づいて非線形指数回帰が実施される。ここで、i
Dはスイープ電流であり、V
PDは各ステップでの測定された出力電圧である。
【0034】
β
DC係数は、その後、式(5)を用いて決定され得る(716)。
【0035】
図8は、上述のACトリミングのプロセスを更に詳細に図示する。上述のように、ACトリミングプロセスは、典型的にICの製造の間の最終テストにおいて、一度だけ実施される必要がある。その後、トリミングプロセスの結果は、ICの動作の間の使用のために、IC上に配置される不揮発性ストレージにストアされ得る。較正を実施するために、幾つかの電力レベルでテスト電力を正確に判定し得るRF電力源及び電力メーターが用いられ得る。例えば、テストRF信号をBISTネットワークに提供するためにICパッケージ上に専用又は共用のピンが提供され得る。
【0036】
本実施形態では4つの電力レベルが用いられるが、他の実施形態において、これより多い又はこれより少ない電力レベルが較正プロセスに対して用いられ得る。本実施形態において、高電力PDは、-11dBm、-5dBm、1dBm、及び7dBmの入力電力設定を用いて較正される。低電力PDは、-22dBm、-13dBm、-7dBm、及び-1dBmの入力電力設定を用いて較正される。上述のように、較正RF信号は1~10GHzの範囲にあり得る。或いは、76~81GHzの範囲においてフル動作周波数で較正が実施され得る。例えば、1~10GHzで行われた較正結果を、79GHzで1サンプルを実施することによって79~81GHzでの動作に変換するために、定数「ρ」が決定され得る。
【0037】
ターゲットPD及びPD-LNAが選択される(802)。各入力電力レベルに対し、ノイズの影響を最小化するために相関二重サンプリングが実施される(804)。その結果は、「ΔVdc」と称される。上述のように、本実施形態ではRF電力の4つのレベルが各PDに対して用いられる。
【0038】
4つのΔVdc結果の各々に対し、定数ρを用い、式(3)を用いて、βトリミング係数が計算される(808)。4つのβトリミング係数は、その後、IC上の不揮発性ストレージにストアされる。
【0039】
式(1)に戻り、β
ac係数及びβ
nl係数は、
図4を再び参照すると、それぞれ線形領域402及び非線形領域403における多項式補間により取得される。
【0040】
図9は、選択されたPD及びPD-LNA902からの生測定されたΔV
DC値に基づいてRF電力値を決定するための最終的なプロセスを図示する。各測定値904に対して、ICの電流温度、又は選択されたPDの近くのICの領域が、オンチップ温度センサから決定される(905)。また、選択されたLNA145のゲインが提供される(906)。
図4を再び参照すると、測定されたΔV
DC値が、測定されたピーク電圧がノイジー領域401にあることを示す閾値908を下回るとき、相関二重サンプリング(CDS)909が実施され得る。或いは、全ての測定値に対してCDS909が実施されてもよい。
【0041】
温度が最後のIVスイープの10度以内にある(910)限り、IC上の不揮発性メモリから、ストアされたβDC定数がリトリーブされ得る(912)。10度より大きい差が存在する場合、新規のIVスイープが実施され得、その結果が不揮発性メモリ904にストアされ得る。
【0042】
4つのβAC係数のセットが不揮発性メモリ904からリトリーブされ(914)、生ΔVDC値とともに用いるためのβAC係数を決定するために、生ΔVDC値に基づいて補間が実施される。
【0043】
「δ
1G-79G[T]」係数とも称されるρ係数も不揮発性メモリからリトリーブされ得る。ρ係数は、79GHzで動作するPDと1~10GHzでの実際の低コストトリミング手順との間のデルタ係数をキャプチャする。このパラメータの温度依存性は、スタンドアロンPDシミュレーション/測定を介してキャプチャされ得、トリミング温度に対して正規化され得る(916)。表1は、デバイス100に対する温度にわる係数をまとめたものである。
表1 ACパラメータの温度依存性
【0044】
係数の全てが収集された後、式(1)に示されるように、β
79Gが計算され得る(918)。β
79Gに対する更に詳細な式は、式(6)によって提供される。
ここで、β
acnl,1G(:)は、AC 1GHzトリミングのベクトル結果である。
【0045】
β
79G(x,y,T)係数が決定された後、実際のRMS電圧値が、式(1)を用いて計算され得(920)、式(7)として書き換えられ得る。この計算された結果は、その後、最終的なV
RMS結果として上位レベルの制御システムに提供され得る(910)。
【0046】
レビューにおいて、上記に詳述したように、各々がPVD(ピーク電圧検出器)のセットを備えるミリ波トランシーバを有するICを含むウェハが製造された後、ウェハはスライスされ、パッケージされ、その後、最終テストが行われる。各ICの最終テストの間、4ポイント(又はそれ以上)のテストが実施され得、当該テストでは、4又はそれ以上の電力レベルで、マイクロ波<10GHz RFソースを用いて1(又はそれ以上)のPVDの4又はそれ以上の測定値が取得される。PVD出力の結果のセットはIC上の不揮発性メモリ内に記録される。
【0047】
ICがシステムに取り付けられた後、
図7に関連してより詳細に説明したように、電源をオンにされる度に、プログラム可能DACを用いて電流のスイープを行い、RF入力がオフにされる間にPD出力電圧を測定することによって、DC電流/電圧(IV)較正が実施され得る。チップ温度は、オンチップ温度センサを用いて測定され得る。式(4)の「n」及び「i
0」に対する値を導き出すために、測定されたPD出力値を用いて回帰が実施される。この例では、非線形回帰が実施される。非線形回帰は、既知の非線形関数を補間する統計的方法であり、この例では式(4)であり、式中、I
dはスイープ電流であり、V
pdは、出力で測定された対応するDC電圧であり、V
t=kT/qであり、n及びi
0は、数的補間プロセスを介して適合される変数である。係数「n」が決定された後、式(5)を用いてβ
0が計算され、式中、q及びkは定数であり、Tは測定された温度であり、nは補間の結果である。
【0048】
チップの動作の間、4ポイント較正からのストアされた値と、値「n」、i0、及びVtに基づいて式(5)から導き出されたβ0の電流値とを用いて、βtrimに対する値が計算される。
【0049】
ICの温度は温度センサを用いて監視される。動作の間、温度が10℃より大きく変化するときは必ず、「n」、i0、及びVtの新たな値を決定するために、新たなDC IVスイープ較正が実施され得る。
【0050】
マイクロ波か又はミリ波周波数でRF電圧測定が行われる度に、システム内の制御プロセッサによってPVD出力値(Δvdc)が読み出され、その後、対応するVrms値が式(6)及び式(7)を用いて決定され得る。
【0051】
PVD応答曲線の下側領域に対応する読み取り値が取得されると、RF入力をオフにして第2の測定値が取得され得る。この測定値は、ノイズを最小化するためにRMS読み取り値から減算される。ノイズは、短時間のt2<τインターバル内に第2の読み取り値が取得される場合にのみキャンセルされる。τが長くなると、ノイズ相関、及びノイズキャンセリング効果が低下する。しかしながら、t2>>τで第2の測定値が取得される場合、それでもオフセットエラーはキャンセルされ得る。
【0052】
図10は、複数のレーダートランスミッタ及びレシーバを含み得るレーダーシステムSOC 1000のブロック図であり、
図1を再び参照すると、デバイス100に類似している。レーダーSOC 1000は、FMCW(周波数変調連続波)RF信号を送信するための複数の送信チャネル1010、及び反射され送信された信号を受信するための受信チャネル1020を含み得る。また、受信チャネルの数は、送信チャネルの数より多くし得る。例えば、レーダーSOC 1000の或る実施形態は、3つの送信チャネル及び4つの受信チャネルを有し得る。
【0053】
送信チャネルは、適切なトランスミッタ及びアンテナを含む。受信チャネルは、適切なレシーバ及びアンテナを含む。また、受信チャネル1020の各々は、同一であり得、受信された信号を増幅するための1つ又は複数の段を備える低ノイズアンプ(LNA)1021、IF信号を生成するために送信生成回路要素によって生成された信号を受信された信号と混合するミキサー1022、IF信号をフィルタリングするためのベースバンドバンドパスフィルタ1023、フィルタリングされたIF信号を増幅するための可変ゲインアンプ(VGA)1024、及びアナログIF信号をデジタルIF信号に変換するためのアナログデジタルコンバータ(ADC)1025を含み得る。ミキサーはダウンコンバータとして機能し、いずれも無線周波数(RF)信号である、低ノイズアンプと送信生成回路要素から受信される入力の、周波数間の差に等しい周波数を備える出力信号を生成する。受信チャネルのバンドパスフィルタ、VGA、及びADCは、ベースバンドチェーン又はベースバンドフィルタチェーンと総称され得る。また、バンドパスフィルタ及びVGAは、IFアンプ(IFA)と総称され得る。
【0054】
受信チャネル1020は、デジタルIF信号をデジタル制御モジュール1050に提供するために、デジタルフロントエンド(DFE)デシメーション構成要素1051に結合される。DFE1051は、データ転送レートを低減するために、デジタルIF信号に対してデシメーションフィルタリングを実施するための機能性を含む。制御モジュール1050におけるプロセッサ1052及び/又は信号プロセッサ1053が、例えば、DCオフセット除去や、RX間ゲイン不均衡の非理想特性、及びRX間位相不均衡非理想特性等の受信チャネルにおける非理想特性のデジタル補償等、デジタルIF信号に対する他の動作も実施し得る。制御モジュール1050は、例えばレーダーSOC 1000が通常モードにあるとき、デシメーションされたデジタルIF信号を別のIC内に置かれ得る処理ユニットに転送するために、高速シリアルインタフェース(I/F)1054に結合され得る。制御モジュールはまた、レーダーSOC 1000がテストモードにあるときデジタルテスト信号をBISTモジュール1040に転送するために、組み込み自己テスト(BIST)モジュール1040に結合され得る。
【0055】
シリアルペリフェラルインタフェース(SPI)1055が、別のICに置かれた処理ユニットとの通信のためのインタフェースを提供し得る。例えば、処理ユニットは、チャープのタイミング及び周波数、出力電力レベル、監視機能のトリガリング等の制御情報を制御モジュールDFEに送信するためにSPI 1055を用い得る。レーダーSOC 1000は、データを処理ユニットに送信する等のためにSPI 1055を用い得る。
【0056】
制御モジュール1050は、通常モードにおける及びテストモードにおけるレーダーSOC 1000の動作を制御するための機能性を含む。例えば、制御モジュール1050は、DFE 1051の出力サンプルをストアするためのバッファ、バッファコンテントのスペクトル情報を計算するためのFFT(高速フーリエ変換)エンジン、及び通常モードにおける及びテストモードにおけるレーダーSOC 1000の動作を制御するためのファームウェアを実行するMCUを含み得る。
【0057】
20GHz周波数変調シンセサイザ(FM-Synth)モジュール1030がRF信号を生成し、RF信号は、その後4倍にされ、トランスミッタチャネルに提供される。プログラム可能タイミングエンジン1031は、レーダーフレームにおけるチャープのシーケンスに対するチャープパラメータ値を制御モジュール1050から受け取るための、及びパラメータ値に基づいてフレームにおけるチャープの送信及び受信を制御するチャープ制御信号を生成するための機能性を含む。例えば、チャープパラメータは、レーダーシステムアーキテクチャによって定義され、どのトランスミッタをイネーブルするのかを示すトランスミッタイネーブルパラメータ、チャープ周波数開始値、チャープ周波数スロープ、チャープ持続時間、更なるレーダープロセスのために、いつ送信チャネルが送信するべきか、いつDFE出力デジタルが収集されるべきかのインジケータ等を含み得る。これらのパラメータの1つ又は複数がプログラム可能であり得る。
【0058】
無線周波数シンセサイザ(SYNTH)1032は、タイミングエンジン1031からのチャープ制御信号に基づいて送信のためのFMCW(周波数変調連続波)信号を生成するための機能性を含む。幾つかの実施形態において、SYNTH 1032は、電圧制御オシレータ(XO)を備える位相ロックループ(APLL)を含み得る。
【0059】
クロックマルチプライヤ1033は、送信信号(LO信号)の周波数を、ミキサー1022のLO周波数まで増大させる。クリーンアップPLL(位相同期回路)は、外部の低周波数基準クロック(図示せず)の信号の周波数を、SYNTH 1032の周波数まで増大させるように、及びクロック信号から基準クロック位相ノイズをフィルタ除去するように動作する。
【0060】
クロックマルチプライヤ1033、シンセサイザ1032、タイミング生成器1031、及びクリーンアップPLLは、送信生成回路要素の例である。送信生成回路要素は、送信チャネルに対する入力として、及びクロックマルチプライヤを介する受信チャネルにおけるミキサーに対する入力として、無線周波数(RF)信号を生成する。送信生成回路要素の出力は、LO(ローカルオシレータ)信号又はFMCW信号と称され得る。
【0061】
BIST回路要素1040は、1つ又は複数の温度センサ1041、ダイナミック及び不揮発性メモリ1042、処理エンジン1043、ADC 1046、及び、上記に詳述したようなピーク検出器のセット等の種々のRF/アナログ構成要素を含む。処理エンジン1043は、メモリ1042にストアされた命令を実行すること、測定された電圧情報をPD 1044のセットからADC 1046を介して受け取ること、及びメモリ1042にストアされた係数データにアクセスすることによって、
図7~
図9に関して上述された処理を実施するように構成され得る。
【0062】
図11は、本明細書に詳述されるように、複数のレーダーシステムを備える自動車1100の図である。ロングレンジレーダー(LRR)は、オートクルーズコントロール1160等の用途に用いられ得る。ミディアムレンジレーダー(MRR)は、典型的に、ナロービームを用い、高相対速度を検出するべきものである。MRRは、ブレーキング1161、交差検出1162、歩行者検出1163、及びリバースクロストラフィックアラート(reverse cross traffic alerts)1164等の用途に用いられ得る。ショートレンジレーダー(SRR)は、典型的に、良好な距離分解能を提供するために大きい角度分離を備えるワイドビームを用いる。SRRは、パーキングレーン変更及び死角監視1165、1167、及びプリクラッシュアラート及びパーキング1166、1168等の用途に用いられ得る。
【0063】
上述の用途に対してオブジェクト検出を提供するために、レーダーSOC 1000等のレーダーSOCのセットが自動車1100の周りに配備され得る。従って、レーダーSOCの各々は、自動車用応用例において要求される安全性のレベルを提供するために、上記に詳述されるようにBISTロジックによって監視され得る。
【0064】
上記に更に詳細に説明されるように、本開示の実施形態は、ピーク検出器のシンプルさ、小面積、及び低電流消費を提供する。シンプルなPDトポロジーが用いられ得、それは、RF性能に影響を与えることなく、チップ全体で何100回か繰り返され得る。
【0065】
例えば、本明細書に開示される較正技法は、プロセスコーナー、供給電圧及び基準電流変動、温度、グローバル及びローカルミスマッチにわたって堅牢性を提供し得る。ダイオード曲線の一方の側では非線形性補償を介して、及び他方の側ではノイズフロア、オフセット、及びミスマッチ低減を介して、ダイナミックレンジ拡張が提供され得る。
【0066】
他の実施形態
本記述を参照することで、様々な他の実施形態が可能である。例えば、本明細書では76~81GHzの帯域で動作するレーダーシステムが説明されているが、他の実施形態が、この範囲より高い又は低いRF帯域で動作し得る。
【0067】
本明細書では、IVスイープの結果を数値化するために非線形回帰が用いられた。他の実施形態において、結果を数値化するために、線形回帰又は更にシンプルな表が用いられ得る。
【0068】
本明細書に説明される実施形態において、温度が10℃より大きく変化するとき、新規のIVスイープが実施される。別の実施形態において、用途に求められる精度に応じて、一層高い又は一層低い閾値が用いられ得る。
【0069】
本開示に説明される技法は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装され得る。ソフトウェアにおいて実装される場合、そのソフトウェアは、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はデジタル信号プロセッサ(DSP)等の1つ又は複数のプロセッサ上で実行され得る。こういった技法を実行するソフトウェアは、コンパクトディスク(CD)、ディスケット、テープ、ファイル、メモリ、又はその他のコンピュータ可読ストレージデバイス等のコンピュータ可読媒体に初期的にストアされ得、プロセッサにロード及び実行され得る。幾つかの例において、ソフトウェアはまた、コンピュータ可読媒体及びコンピュータ可読媒体のためのパッケージング材料を含む、コンピュータプログラム製品において販売され得る。幾つかの例において、ソフトウェア命令は、別のデジタルシステム等のコンピュータ可読媒体からの送信パスを介して、取り外し可能なコンピュータ可読媒体(例えば、フロッピーディスク、光学ディスク、フラッシュメモリ、USBキー等)を介して分配され得る。
【0070】
デジタルシステムにおける構成要素は、異なる名称で呼ばれ得、及び/又は説明された機能性から逸脱することなく、本明細書において示されない様式で組み合わされ得る。また、用語「結合する」及びその派生語は、間接的、直接的、光学的、及び/又はワイヤレス電気的接続を意味することを意図している。例えば、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接的な電気的接続を介して、他のデバイス及び接続を介する間接的な電気的接続を介して、光学的な電気的接続を介して、及び/又は、ワイヤレス電気的接続を介してなされ得る。
【0071】
本明細書において、方法ステップが順次に提示され説明され得るが、図示され説明されるステップの1つ又は複数が、省かれ得、繰り返され得、同時に実施され得、及び/又は、図面及び/又は本明細書の説明に示される順序とは異なる順序で実施され得る。従って、説明される実施形態は、図面に示され及び/又は本明細書において説明されたステップの特定の順に限定されない。
【0072】
特許請求の範囲内で、説明された実施形態における変更が可能であり、他の実施形態が可能である。