IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ロンドンティールームの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ロイヤルミルクティーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20230628BHJP
   A23F 3/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A23F3/16
A23F3/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022134955
(22)【出願日】2022-08-26
【審査請求日】2022-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505414492
【氏名又は名称】株式会社ロンドンティールーム
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 宏
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】銀座ルノアール,Cafeルノアール[online],日本,2022年02月16日,https://twitter.com/Ginzarenoir_co/status/1493842586351464448,[検索日:2022年10月28日]
【文献】おいしいロイヤルミルクティ(チャイ)の入れ方,YouTube [online] [video],2008年10月25日,https://www.youtube.com/watch?v=BQH6n7to244,[検索日:2022年10月28日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00 - 3/42
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイヤルミルクティーの製造方法であって、
前記製造方法は、
容器内で所定量の水を沸騰させ、沸騰した水に紅茶の茶葉組成物を投入し、容器を強火にかけた状態で所定時間煮出す煮出し工程と、
煮出し工程の終了後、容器を強火にかけた状態で、水の所定量の0.6~2倍量のミルクを加え、再沸騰させる再沸騰工程と、
再沸騰後、直ちに容器を火から下ろし、容器の内容物を漉して茶葉抽出液を回収する回収工程、
を含み、
茶葉組成物は、(1)アッサム産、及び(2)スリランカ産及び/又はアフリカ産の茶葉の混合物であり、スリランカ産の茶葉はミディアムグロウンの茶葉であり、アフリカ産の茶葉はマラウイ産の茶葉である、
製造方法。
【請求項2】
回収工程のあとに、さらに、茶葉抽出液を少なくとも2時間保存する保存工程を含む、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
容器内で所定量の水を沸騰させ、沸騰した水に紅茶の茶葉組成物を投入し、容器を強火にかけた状態で所定時間煮出す煮出し工程と、
煮出し工程の終了後、容器を強火にかけた状態で、水の所定量の0.6~2倍量のミルクを加え、再沸騰させる再沸騰工程と、
再沸騰後、直ちに容器を熱源から下ろし、容器の内容物を漉して茶葉抽出液を回収する工程、
により、調製され、
茶葉組成物は、(1)アッサム産、及び(2)スリランカ産及び/又はアフリカ産の茶葉の混合物であり、スリランカ産の茶葉はミディアムグロウンの茶葉であり、アフリカ産の茶葉はマラウイ産の茶葉である、
ロイヤルミルクティー。
【請求項4】
請求項1に記載のロイヤルミルクティーの製造に使用するための、紅茶の茶葉組成物であって、(1)アッサム産、及び(2)スリランカ産及び/又はアフリカ産の茶葉の混合物であり、スリランカ産の茶葉はミディアムグロウンの茶葉であり、アフリカ産の茶葉はマラウイ産の茶葉である、茶葉組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ロイヤルミルクティーの製造方法、前記製造方法により製造されたロイヤルミルクティー、及び前記ロイヤルミルクティーの製造方法を実施するために使用される茶葉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イギリスにおいて好まれている「ミルクティー」は、一般的に紅茶の茶葉の抽出液と、牛乳を混合し調製される牛乳入り紅茶飲料である。
【0003】
また、日本の喫茶店、カフェ等で提供されるホットミルクティーは、ポット、カップ内で、紅茶の茶葉と湯を混合し、一定時間(通常は、2分から4分程度)茶葉を蒸らした後に、顧客の好みに合わせて牛乳と混合される牛乳入り紅茶飲料である(非特許文献1)。
【0004】
インドにおいて好まれている「チャイ」は、紅茶の茶葉を水で煮出してからミルクと砂糖を加え再沸騰させる、あるいは、砂糖を加えた牛乳の中で紅茶の茶葉を煮出すミルク入り紅茶飲料であり、煮出し工程中に砂糖を加えることを特徴としている。また、チャイには香辛料が加えられていることも多い(非特許文献2)。
【0005】
ロイヤルミルクティーは、上記海外の牛乳入り紅茶飲料とは異なり、日本で生まれた牛乳入り紅茶飲料である(非特許文献1)。非特許文献1によれば、一般的に、ロイヤルミルクティーはミルクティー同様、湯の中で紅茶の茶葉を煮出すことはしないとされている。また、ロイヤルミルクティーに使用される茶葉も、インドのアッサム産の茶葉、スリランカのウバ産の茶葉とされている。
【0006】
非特許文献3には、鍋で茶葉を煮出し、牛乳を加えて更に煮込んで作る、濃厚でありながらえぐ味が少ないロイヤルミルクティー専用茶葉が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】https://www.olive-hitomawashi.com/column/2018/12/post-3507.html
【文献】https://www.brooks.co.jp/bob/tea/20180308/
【文献】https://london-tearoom.co.jp/blog/royalmilktea_selection/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1~2に記載の牛乳入り紅茶飲料は、ホットで飲むことを前提としている。しかし、特に、イギリスやインドでは、冷やしたミルク入り紅茶飲料を飲む習慣がない。また、インドでは、チャイを製造するにあたり、砂糖を添加することを前提としている。
【0009】
日本は、紅茶に限らず茶葉抽出飲料をホットだけでなく、アイスでも飲む習慣がある。また、近年の健康ブームから、砂糖の摂取を好まない者も増えている。
【0010】
茶葉抽出物は、冷やした場合、茶葉の成分であるカフェインやタンニンが析出し白く濁る「クリームダウン」と呼ばれる現象を起こすことが多い。また、クリームダウンを起こした茶葉抽出飲料は非常にえぐ味(苦み)が増す。このため、ホット用に製造した茶葉抽出飲料をそのまま冷やしても、ホットの時と比較してもえぐ味が強くなることが多い。特に、茶葉を煮出すほどえぐ味が増すため、煮出した茶葉抽出飲料を、冷やして茶葉抽出飲料として提供することは難しい。
【0011】
本発明は、えぐ味が少ないロイヤルミルクティーの製造方法を提供することを一課題とする。えぐ味が少なく、かつホットでもアイスでも提供可能なロイヤルミルクティーの製造方法を提供することを一課題とする。また、提供時に砂糖等の甘味料を添加しなくても、えぐ味が少なく、かつホットでもアイスでも提供可能なロイヤルミルクティーの製造方法を提供することを一課題とする。さらに、前記ロイヤルミルクティーの製造方法を実施するために使用される茶葉組成物を提供することを一課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の実施形態を含む。
項1.ロイヤルミルクティーの製造方法であって、前記製造方法は、容器内で所定量の水を沸騰させ、沸騰した水に紅茶の茶葉組成物を投入し、容器を強火にかけた状態で所定時間煮出す煮出し工程と、煮出し工程の終了後、容器を強火にかけた状態で、水の所定量の0.6~2倍量のミルクを加え、再沸騰させる再沸騰工程と、再沸騰後、直ちに容器を火から下ろし、容器の内容物を漉して茶葉抽出液を回収する回収工程、
を含み、茶葉組成物は、(1)アッサム産、及び(2)スリランカ産及び/又はアフリカ産の茶葉の混合物である、製造方法。
項2.回収工程のあとに、さらに、茶葉抽出液を少なくとも2時間保存する保存工程を含む、項1に記載の製造方法。
項3.容器内で所定量の水を沸騰させ、沸騰した水に紅茶の茶葉組成物を投入し、容器を強火にかけた状態で所定時間煮出す煮出し工程と、煮出し工程の終了後、容器を強火にかけた状態で、水の所定量の0.6~2倍量のミルクを加え、再沸騰させる再沸騰工程と、再沸騰後、直ちに容器を熱源から下ろし、容器の内容物を漉して茶葉抽出液を回収する工程、により調製され、茶葉組成物は、(1)アッサム産、及び(2)スリランカ産及び/又はアフリカ産の茶葉の混合物である、ロイヤルミルクティー。
項4.項1に記載のロイヤルミルクティーの製造方法を実施するために使用される、紅茶の茶葉組成物であって、(1)アッサム産、及び(2)スリランカ産及び/又はアフリカ産の茶葉の混合物である、茶葉組成物。
【発明の効果】
【0013】
えぐ味が少ないロイヤルミルクティーを提供できる。または、濃厚でありながらえぐ味が少なく、かつホットでもアイスでも提供可能なロイヤルミルクティーを提供できる。または、提供時に砂糖等の甘味料を添加しなくても、えぐ味が少なく、かつホットでもアイスでも提供可能なロイヤルミルクティーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のある実施形態は、ロイヤルミルクティーの製造方法、前記製造方法によって製造されたロイヤルミルクティー、ロイヤルミルクティーの製造方法を実施するために使用される、紅茶の茶葉組成物(以下、「ロイヤルミルクティー用茶葉組成物」ともいう)に関する。
【0015】
本明細書において、「ロイヤルミルクティー」は、紅茶の茶葉(以下、単に「茶葉」ともいう場合がある)を煮出して製造するミルク入り紅茶飲料を意図する。
【0016】
紅茶の茶葉として、複数の産地に由来する紅茶の茶葉を混合(ブレンド)した茶葉組成物を使用する。茶葉組成物は、(1)アッサム産、及び(2)スリランカ産及び/又はアフリカ産の茶葉の混合物である。
【0017】
アッサム産の茶葉は、インドのアッサム地方で収穫され、加工された茶葉を意図する。アッサム種の茶の木は、インドのアッサム地方以外でも栽培されているが、本発明では、アッサム産の茶葉として、インドのアッサム地方で収穫され、加工された茶葉を使用することが好ましい。アッサム産の茶葉は特に制限されないが、例えば、三井農林株式会社が提供する茶葉を挙げることができる。
【0018】
スリランカ産の茶葉は、いわゆるセイロンティーと呼ばれる。スリランカ産の茶葉は、産地や茶葉加工工場が位置する標高に応じて、ハイグロウン、ミディアムグロウン、及びローグロウンに大別される。世界三大銘茶の1つであるウバ産の紅茶は、ハイグロウンティーに分類される。本発明において、ロイヤルミルクティーの製造には、ハイグロウンティー又はミディアムグロウンティーを使用することが好ましい。特に好ましくは、ディンブラ産の茶葉を使用することが好ましい。ディンブラ産の茶葉は、スリランカのディンブラ地方で収穫され、加工された茶葉を意図する。ディンブラ産の茶葉には、ディコヤ産の茶葉を含む。また、ディンブラ地方には、ハイグロウンとミディアムグロウンが含まれ得るため、本明細書においても両方を含むものとする。また、ディンブラ産の茶葉の中でもディコヤ産の茶葉が好ましい。ディンブラ産の茶葉として、例えば、三井農林株式会社NOR#2(商品コード23014)、ディンブラL.B.F(株式会社ロンドン・ティールーム)、三井農林株式会社ディンブラSH-2(商品コード23397)等を挙げることができる。ディコヤ産の茶葉としては、5 o'clock(株式会社ロンドン・ティールーム)、ミディアムグロウン(株式会社ロンドン・ティールーム)を挙げることができる。
【0019】
アフリカ産の茶葉は、ケニア、又はマラウイで収穫され、加工された茶葉を意図する。ケニア産の茶葉として、例えば、三井農林株式会社ケニア-A(商品コード02887)、三井農林株式会社ケニアLTR-21028-D(商品コード24767)を挙げることができる。マラウイ産の茶葉として、三井農林マラウイCTC LTR-21028-E(商品コード24768)を挙げることができる。
【0020】
本発明では、収穫した季節によって茶葉の風味が変わるシーズナルの茶葉ではなく、通年同じ風味や味となるようにブレンダーが調合した茶葉を使用することが好ましい。
【0021】
茶葉の大きさ(グレード)には、CTC(Crush/Tear/Curl)、ホールリーフ、ブロークン、ファニングス、ダスト等がある。茶葉のグレードは、特に制限されないが、CTC、ブロークン等が好ましい。
【0022】
また、茶葉の生葉としては、渋みを防ぐ点から、フラワリーオレンジペコ(FOP)、オレンジペコ(OP)、ペコ(P)等を挙げることができる。渋み(えぐ味)を防ぐ点から、ペコスーチョン、スーチョンを使用することは好ましくない。
【0023】
茶葉組成物の配合は、アッサム産の茶葉を1重量部とした時に、スリランカ産及び/又はアフリカ産の茶葉が0.3~2.2重量部、好ましくは0.45~2.1重量部程度とすることが好ましい。このような配合とすることにより、調製したロイヤルミルクティーにおいて、濃さ、及び/又は甘みが感じられ、かつ渋み(えぐ味)が押さえられる。
【0024】
特に、ロイヤルミルクティー用の茶葉組成物としては、アッサム産の茶葉と、スリランカ産の茶葉と、アフリカ産の茶葉の3種類を配合する場合には、アッサム産の茶葉と、スリランカ産の茶葉との合計重量に対して、アフリカ産の茶葉の比率を0.1~12%程度、好ましくは、5~11%程度とすることが好ましい。
【0025】
ロイヤルミルクティー用の茶葉組成物として、アッサム産の茶葉とディコヤ産の茶葉とのを組み合わせることは、ロイヤルミルクティーの濃さ、甘み、渋みの点から特に好ましい。
【0026】
本発明のロイヤルミルクティーの製造方法の1つの特徴として、ホットでもアイスでも、渋みが抑えられたミルク入り紅茶飲料を提供できることを挙げることができる。
【0027】
一般的に、湯で抽出した茶葉組成物をそのまま冷やすと、紅茶に含まれるタンニンやカテキンが析出し(クリームダウンともいう)、ホットで飲むよりも、アイスで飲んだときの方が渋みを強く感じるという特徴がある。このため、アイスティーの茶葉は、一般的にホットで飲む紅茶茶葉とは異なることが多い。
【0028】
しかし、本発明において、上記ロイヤルミルクティー用の茶葉組成物は、ホット用とアイス用を区別する必要はない。
【0029】
ここで、ウバ産の茶葉は、ディンブラ産とは産地が異なる。本発明において、好ましくは、本発明において、ウバ産の茶葉は使用しないか、茶葉組成物全体の1重量%未満の含有量であることが好ましい。
【0030】
紅茶を抽出するための水は、水道水であることが好ましい。特に日本は、水道水が軟水であるため、水道水を使用して差し支えない。
【0031】
ミルクは、市販の牛乳であれば使用することができる。牛乳として、低温殺菌牛乳(パスチャライズド牛乳)、高温殺菌牛乳、ホモジナイズド牛乳、ノンホモジナイズド牛乳を使用することができる。本発明のロイヤルミルクティーには、脂肪分が3.6%以上、3.8%以上、4.0%以上、又は4.3%以上の牛乳を使用できる。特に好ましくは、4.0%以上、又は4.3%以上の牛乳である。脂肪分が市販されている牛乳として、雪印メグミルク特濃、オハヨー乳業の特濃4.4ミルクや、よつ葉乳業の特選よつ葉4.0牛乳を挙げることができる。
【0032】
また、ミルクとして、豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク、ライスミルク等を使用してもよい。
【0033】
ロイヤルミルクティーは、
容器内で所定量の水を沸騰させ、沸騰した水にロイヤルミルクティー用の茶葉組成物を投入し、容器を強火にかけた状態で所定時間煮出す煮出し工程と、
煮出し工程の終了後、容器を強火にかけた状態で、水の所定量の0.6~2倍量のミルクを加え、再沸騰させる再沸騰工程と、
再沸騰後、直ちに容器を火から下ろし、容器の内容物を漉して茶葉抽出液を回収する回収工程、
を含む製造方法によって製造される。
【0034】
煮出し工程は、沸騰した湯の中で、ロイヤルミルクティー用の茶葉組成物を煮出す工程である。
【0035】
一般的な、紅茶の抽出では、容器に茶葉を入れて沸騰した直後の湯を投入するか、容器に入れた沸騰直後の湯に茶葉を投入してから、一定時間(2分~4分程度)静置する。この工程は、一般的に「蒸らし」と呼ばれる。
【0036】
しかし、本発明では、沸騰した湯の中で、ロイヤルミルクティー用の茶葉組成物を強火で煮出す。より詳細には、煮出し工程は最初から最後まで強火で加熱する。強火とは、ガスコンロの炎が鍋底にあたり、炎が反り返る程度、ただし、好ましくは、炎は鍋底の外へは広がらない程度の火力である。熱源が、IH、熱線、遠赤外線である場合には、ガス火の火力と同程度に調整する。
【0037】
ここでは例示的に、6杯分を製造することを例として説明する。
【0038】
容器(例えば、鍋、特に沸騰しても内容物がこぼれない寸胴鍋や鍋底よりも鍋口がやや狭くなっている鍋が好ましい)に所定量の水(550~650mL程度)の水を投入し、水を沸騰させる。水が沸騰してから(好ましくは、水が沸騰してから直ちに)ロイヤルミルクティー用の茶葉組成物を容器に投入して、所定時間沸騰した状態を維持する。ロイヤルミルクティー用の茶葉組成物の投入量は、6杯分で25g~35g程度、好ましくは28g~32g程度である。所定時間は、はじめに投入した湯の量が半分~5/6量程度になるまでである。具体的な時間の目安としては、8分~12分程度である。
【0039】
本発明においては、6杯分を1つの容器で調製することが好ましいが、例えば、2杯分を製造する場合には、6杯分の1/3量の水と茶葉組成物を使用する。所定時間は、2杯分を製造する場合には、2.5分~4分程度である。
【0040】
再沸騰工程は、煮出し工程終了後、容器を強火にかけた状態で、ミルクを加え、再沸騰させる工程である。ミルクは、水の所定量の0.6~2倍量、好ましくは0.9~1.5倍量、より好ましくは1~1.2倍量程度加える。ミルクは、冷蔵状態であったものを直ちに加えてもよい。また、室温(20℃~30℃程度)にもどして加えてもよい。再沸騰工程は、容器の内容物が、沸騰した時点で終了する。
【0041】
次に、再沸騰工程が終了した容器を熱源から下ろし、容器の内容物を漉して茶葉抽出液を回収する回収工程を行う。内容物は、ざる、ペーパーフィルターを設置したざる等で2回以上漉すことが好ましい。
【0042】
さらに、茶葉抽出液を、粗熱をとったあと、2℃~10℃で、少なくとも2時間、好ましくは5時間以上、より好ましくは12時間~24時間程度保存する保存工程を行ってもよい。
【0043】
このような保存工程を設けると、製造したロイヤルミルクティーの風味や味が安定し、飲んだ者による味の感じ方の差が減少される。
【0044】
かくして調製された本発明のロイヤルミルクティーは、甘味料を添加しなくても、甘さが感じられ、えぐ味が押さえられた製品となる。
【0045】
本発明のロイヤルミルクティーは、提供後好みで甘味料を加えてもよい。また、いったん冷やしたロイヤルミルクティーをホットで提供する場合には、再度加熱して提供することができる。
【0046】
ここで、ロイヤルミルクティーは、上記製造方法により規定される。これは茶葉に含まれる成分は茶葉の産地、発酵度合い等によっても異なり、茶葉抽出物に含まれる成分を解析することは膨大な時間を要し、すべての成分を特定することは困難である。特に本願のように複数種の茶葉を混合し、煮沸して茶葉抽出液を得て、さらにミルクを加える場合にはよりロイヤルミルクティーに含まれる成分は複雑であり、実際にすべての成分を特定することは不可能である。したがって、本願にかかるロイヤルミルクティーを製造方法によって規定することについて、不可能・非実際的事情がある。
【実施例
【0047】
以下に実施例を示して本発明についてより詳細に説明する。しかし、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。
1.調製例
表1に調製例A~S、T16、T17、U~Wに使用した紅茶の茶葉、およびその割合を示す。また、比較例X、ABに使用した茶葉を表1に示す。水は水道水を、牛乳は雪印メグミルク特濃を使用した。表1に示す茶葉のうち「三井農林」と記載されているものは、三井農林株式会社が販売する茶葉であることを示す。「三井農林NOR#2」は、スリランカのハイグロウンの茶葉とミディアムグロウンの茶葉をブレンドした混合物である。
【0048】
2.ロイヤルミルクティーの調製方法
ロイヤルミルクティーは6杯分を1つの鍋で調製した。
【0049】
初めに、鍋に600mLの水道水を加え、鍋をガスコンロにかけ水道水を強火で沸騰させた。表1に示す割合で混合した茶葉(6杯分は30g)を沸騰している湯に投入した。投入後強火(ガスコンロの最大火力)で10分間沸騰状態を維持した。沸騰状態を維持している間、水分の蒸発は妨げず放置した。この茶葉の煮出し工程において、鍋内の水分量はおおよそ480mL~500 mLに減少した。
【0050】
10分経過後、強火を維持したまま1000 mLの牛乳を加えた。
【0051】
牛乳を加えてから沸騰するまで強火で加熱を続け、再沸騰して吹き上がったところで火を止めた。
【0052】
火を止めた後、直ちに鍋内の茶葉抽出物を茶漉しで濾しながら別の容器に移した。
【0053】
18杯分のロイヤルミルクティーは、6杯分のロイヤルミルクティーを3つの鍋で調製し、最後に1つの容器に回収し、混合した。
【0054】
アイス用のロイヤルミルクティーは、上記方法で調製した容器に入った状態のロイヤルミルクティーを、容器ごと冷却し調製した。アイス用のロイヤルミルクティーを冷却する過程では、ロイヤルミルクティーそのものには氷は添加していない。
【0055】
3.調製したロイヤルミルクティーの評価
評価は、4名から8名のパネラーが各調製例及び比較例のミルク入り紅茶飲料を試飲し、紅茶風味の濃さ、甘み、渋み(えぐ味)を4段階で評価し、平均値を求めた。評価値は高い方が強いことを示す。また、各調製例について、調製直後の温かいものと、同じミルク入り紅茶飲料を一晩冷蔵保存した冷たいものを試飲して評価した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示す比較例X及びABは、ウバ産の茶葉とアッサム産の茶葉をそれぞれ単独で使用した例である。これらの例では、甘みよりもえぐ味が強く感じられた。したがって、甘味料の添加なしに提供することは難しいと考えられた。
【0058】
表1に示す調製例では、調製例A、E、Q、及びSでは甘みよりもえぐ味が強かった。これらの調製例の中で調製例Aは、アッサム産の茶葉と、ディンブラ産のハイグロウンとミディアムグロウンの茶葉を混合したディンブラ(三井農林NOR#2)を使用している。一方、ディンブラ産の茶葉でも、ディンブラ(L.B.F)、ディンブラC(三井農林ディンブラSH-2)はミディアムグロウンの茶葉であり、これらを使用した調製例I、T16、T17では、えぐ味よりも甘みが強く感じられた。また、同じミディアムグロウンであるディコヤ産の茶葉をアッサム産の茶葉とともに使用した調製例J、L、M、Wにおいても、えぐ味よりも甘みが強く感じられた。いっぽう、調製例Qも、ディコヤ産の茶葉を使用しているが、アッサム産の茶葉に変えてケニア産の茶葉を使用している。調製例Qでは、甘みよりもえぐ味が強く感じられたことから、アッサム産の茶葉の使用は必要であると考えられた。
【0059】
また、アッサム産の茶葉と、ケニア産の茶葉を使用した調製例D、G、K、N、O、及びSではえぐ味よりも甘みが強く感じられた。
【0060】
アッサム産の茶葉と、マラウイ産の茶葉を使用した調製例H、Pもえぐ味よりも甘みが強く感じられた。
【0061】
ここまでは、甘味料を加えずホットで試飲した場合の評価結果である。
【0062】
アイスで試飲した場合、ホットよりもえぐ味が際立つ傾向がある。このため、各調製例を冷やして試飲した。
【0063】
その結果、アイスで飲んだ場合に、美味しいと評価できない(表1において「×」で表す)は、調製例A、B、C、F、H、及びQであった。調製例A、B、C、Fは、ディンブラ(三井農林NOR#2)を使用している。このため、えぐ味が際立ったと考えられた。また、調製例Hで使用されているマラウイは、ホットの場合でもえぐ味よりも甘みが強く感じられたものの、各評価項目の評価値が低かったため、アイスにした際に物足りなさを感じる結果となった。調製例Qはアッサム産の茶葉を使用していないことから、やはり美味しいと感じるロイヤルミルクティーの調製には、アッサム産の茶葉の使用は必須と考えられた。
【0064】
表2に、調製例Wを調製直後に試飲した場合と、調製5~6時間冷蔵保存した後に試飲した場合の結果を示す。調製例Wを調製直後に7名のパネラーが試飲したところ、濃さ、えぐ味の感じ方がかなりばらついていた。しかし、同じパネラーが調製5~6時間後に試飲した場合、すべての項目において感じ方が一定となり、分散値が低くなった。
【0065】
【表2】
【0066】
これらの結果から、本発明のロイヤルミルクティーは調製後一定時間冷蔵状態で寝かした方が味が安定することが示された。一般的にクリームダウンの観点から茶葉抽出物を冷蔵状態で長く保存することは、美味しい紅茶飲料を提供する上でよくないことであると言われてきた。また、ミルク入り紅茶飲料は、チャイを除き、一般的には紅茶が冷えてから牛乳を加えてアイスミルクティーとして提供されており、ミルクを加えた紅茶飲料の長期保存も、えぐ味が出るという欠点から他社では行われていないか、えぐ味を消すために甘味料や香料を添加している。今回の結果はこの常識を覆すものであり、本発明特有の1つの効果であると考えられた。
【要約】
【課題】えぐ味が少ないロイヤルミルクティーを提供することを一課題とする。
【解決手段】ロイヤルミルクティーの製造方法であって、前記製造方法は、容器内で所定量の水を沸騰させ、沸騰した水に紅茶の茶葉組成物を投入し、容器を強火にかけた状態で所定時間煮出す煮出し工程と、煮出し工程の終了後、容器を強火にかけた状態で、水の所定量の0.6~2倍量のミルクを加え、再沸騰させる再沸騰工程と、再沸騰後、直ちに容器を火から下ろし、容器の内容物を漉して茶葉抽出液を回収する回収工程、を含み、茶葉組成物は、(1)アッサム産、及び(2)スリランカ産及び/又はアフリカ産の茶葉の混合物である、製造方法により、課題を解決する。
【選択図】なし