IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティーアンドアール バイオファブ カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7303594人工血管製造用3Dプリンティングシステム及びそれを用いた人工血管の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】人工血管製造用3Dプリンティングシステム及びそれを用いた人工血管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/241 20170101AFI20230628BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230628BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230628BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20230628BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20230628BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20230628BHJP
【FI】
B29C64/241
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/245
B29C64/209
B29C64/106
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022530868
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2019017877
(87)【国際公開番号】W WO2021107252
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0153497
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517336290
【氏名又は名称】ティーアンドアール バイオファブ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】T & R BIOFAB CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】542ho,237 Sangidaehak-ro Siheung-si Gyeonggi-do 15073 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】アン グンソン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンキョン
(72)【発明者】
【氏名】ミン キョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リー インギュ
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151524(JP,A)
【文献】特表2019-516577(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0008407(KR,A)
【文献】特開昭58-157465(JP,A)
【文献】特開2018-154049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
A61L 27/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヘッドを介して高分子が外周面に吐出されることにより、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を形成する、回転可能な支持体製作ユニットと、
高分子を前記支持体製作ユニットに吐出して3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体(hollow cylindrical support)を形成する第1ヘッドと、
第1ヘッドを介して製作された円柱状支持体を垂直に据え置く支持台と、
支持台に垂直に据え置かれて固定された円柱状支持体の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出する第2ヘッドと、を含み、
前記支持台は、中空円柱状の支持体が位置する支持板と、前記支持板の中心に形成される内部固定部と、を含み、
前記内部固定部は、前記支持板に垂直に位置する支持体の内周面に密着して、前記支持体を支持板に固定することを特徴とする、
人工血管製造用3Dプリンティングシステム。
【請求項2】
前記第1ヘッドは、高分子を吐出するために上昇又は下降する第1空気圧シリンダと、前記第1空気圧シリンダの下降によって高分子を吐出する第1吐出ユニットと、吐出される高分子の温度を制御する温度制御ユニットと、を含む、請求項1に記載の人工血管製造用3Dプリンティングシステム。
【請求項3】
前記第2ヘッドは、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出するために上昇又は下降する第2空気圧シリンダと、前記第2空気圧シリンダの下降によって、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出する第2吐出ユニットと、吐出される少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの温度を調節する温度調節ユニットと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工血管製造用3Dプリンティングシステム。
【請求項4】
前記支持体製作ユニットは、高分子が吐出されるときに回転できる回転軸と、回転軸の一側に連結され、回転軸を回転させるモーターと、回転軸の他側に連結され、回転軸を支持するベアリングと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工血管製造用3Dプリンティングシステム。
【請求項5】
前記第2ヘッドは、垂直方向に移動しながら、支持台に垂直に固定された円筒状支持体の内部に少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することを特徴とする、請求項1に記載の人工血管製造用3Dプリンティングシステム。
【請求項6】
前記支持台は、固定された第2ヘッドが少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出する間に垂直方向に移動することができることを特徴とする、請求項1に記載の人工血管製造用3Dプリンティングシステム。
【請求項7】
前記高分子は、熱可塑性高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の人工血管製造用3Dプリンティングシステム。
【請求項8】
前記熱可塑性高分子は、ラクチド(lactide)、カプロラクトン(caprolactone)、グリコリド(glycolide)、ジオキサノン(dioxanone)、プロピレン(propylene)、エチレン(ethylene)、塩化ビニル(vinylchloride)、ブタジエン(butadiene)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)、カーボネート(carbonate)及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)よりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項7に記載の人工血管製造用3Dプリンティングシステム。
【請求項9】
前記少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、ゲル化高分子、細胞、成長因子及び細胞外基質よりなる群から選択された1種以上を含み、第2ヘッドに充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面と、支持体の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面とが同様のパターンを有することを特徴とする、請求項1に記載の人工血管製造用3Dプリンティングシステム。
【請求項10】
第1ヘッドを介して支持体製作ユニットの外周面に高分子が吐出され、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体(hollow cylindrical support)を形成するステップと、形成された円柱状支持体を垂直に固定する固定ステップと、第2ヘッドを垂直に移動させながら、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを前記支持体の内部に吐出させるステップと、を含み、
前記固定ステップは、3Dプリンティング用支持体固定装置によって行われ、
前記3Dプリンティング用支持体固定装置は、
中空円柱状の支持体が位置する支持板と、前記支持板の中心に形成される内部固定部と、を含み、
前記内部固定部は、前記支持板に垂直に位置する支持体の内周面に密着して、前記支持体を支持板に固定することを特徴とする、
人工血管の製造方法。
【請求項11】
前記支持体を形成するステップは、第1ヘッドを支持体製作ユニットの上部に移動させるステップと、支持体製作ユニットの上部に第1ヘッドが位置した後、支持体製作ユニットを回転させる回転ステップと、第1ヘッドを支持体製作ユニットの長さ方向に移動させながら、高分子を回転させる支持体製作ユニットの外周面に吐出させる吐出ステップと、を含むことを特徴とする、請求項10に記載の人工血管の製造方法。
【請求項12】
前記回転ステップと前記吐出ステップは、同時に行われるか、或いは順次行われることを特徴とする、請求項11に記載の人工血管の製造方法。
【請求項13】
前記吐出ステップの後に、支持体の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの一部を除去するステップをさらに含む、請求項10に記載の人工血管の製造方法。
【請求項14】
3Dプリンティング用支持体固定装置であって、
中空円柱状の支持体が位置する支持板と、
前記支持板の中心に形成される内部固定部と、を含み、
前記内部固定部は、前記支持板に垂直に位置する支持体の内周面に密着して、前記支持体を支持板に固定することを特徴とする、3Dプリンティング用支持体固定装置。
【請求項15】
前記内部固定部は、前記支持板の中心に備えられるタップホールと、前記タップホールに締結されるボルトと、前記ボルトの外周面に備えられる弾性チューブと、を含む、請求項14に記載の3Dプリンティング用支持体固定装置。
【請求項16】
前記ボルトの直径は、前記支持体の内径より小さいことを特徴とする、請求項15に記載の3Dプリンティング用支持体固定装置。
【請求項17】
前記弾性チューブは、ボルトによって垂直に圧力が加わるときに半径方向に膨張可能な弾性体であることを特徴とする、請求項15に記載の3Dプリンティング用支持体固定装置。
【請求項18】
前記弾性チューブは、シリコーンゴム(silicone rubber)、エチレンプロピレンゴム(ethylene propylene rubber、EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(ethylene propylene diene rubber、EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(Styrene-butadiene rubber、SBR)、クロロプレンゴム(chloroprene rubber、CR)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer、TPE)、及び熱可塑性オレフィン(thermoplastic olefin、TPO)よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項17に記載の3Dプリンティング用支持体固定装置。
【請求項19】
前記支持板の上面に形成される外部固定部をさらに含み、前記外部固定部は、支持体の外周面に密着して前記支持体を固定することを特徴とする、請求項14に記載の3Dプリンティング用支持体固定装置。
【請求項20】
前記外部固定部は、
前記支持板の上面の一端に形成された第1固定プレートと、前記支持板の上面の他端に形成された第2固定プレートと、前記第1固定プレートと前記第2固定プレートとを連結するガイドと、前記ガイドに沿って移動可能な密着部と、を含む、請求項19に記載の3Dプリンティング用支持体固定装置。
【請求項21】
前記密着部は、前記支持体の外周面と密着する面に形成される密着溝を含む、請求項20に記載の3Dプリンティング用支持体固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性高分子を含む3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を製作して垂直に固定した後、支持体の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することにより、プリンティング後にも構造と形態を一定に維持可能であり、多層構造の中空形状を有する人工血管を製造することができる、人工血管製造用3Dプリンティングシステム及びそれを用いた人工血管の製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、3Dプリンティング印刷物が形成される造形板に含まれる支持体固定装置に関し、より詳細には、支持体の内外部にプリンティング組成物を吐出して3Dプリントするために前記支持体を支持し固定することができる支持体固定装置を含む造形板及びそれを含む3Dプリンターに関するもので、中空支持体を内部及び/又は外部で安定的に3Dプリンティング装置の印刷領域に固定させることにより、別途の支持体固定装置の回転や移動なしに前記中空支持体の内部及び/又は外部に安定して3Dプリンティングを行うことができる3Dプリンターを提供するためのものである。
【0003】
本発明は、産業通商資源部が後援する産業技術革新プログラム(産業技術革新プログラム第20000325号)の支援によるものである(This work was supported by the Industrial Technology Innovation Program(No.20000325) funded by the Ministry Of Trade, Industry & Energy(MI, Korea))。
【背景技術】
【0004】
心臓、心臓弁、血管などの循環器系に発生する疾患である心血管疾患は、全世界的に成人の死亡原因の中で1位を記録しているが、それらの中でも、二重動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの属する血管に関連する疾患が最も多くの部分を占めている。これにより、患者の生命や生活の質の向上のために、同種血管や人造血管などの自己血管を置き換えることができる装置が求められており、特に3Dバイオプリンティング技術を利用して人造血管を製造する装置を開発するための研究が盛んに行われている。しかし、このような既存の組織構造物の場合には、支持できる構造体がないため、平板にバイオプリントされるときにその断面が円形にならず、形状が変形するという問題点を持っている。
【0005】
特に、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの属する血管に関連する疾患が最も多い部分を占めており、患者の生命や生活の質の向上のために、同種血管や人工血管などの自己血管を置き換えることができる装置が求められており、特に3Dプリンティング技術を利用した人工血管の製造に関する研究が行われている。
【0006】
3Dプリンティング技術を利用して人工血管を製造する方法としては、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を製作して固定した後、前記支持体の内外部にプリンティング組成物を吐出して人工血管を製造する方法が挙げられる。
【0007】
しかし、このように円柱又は中空状構造物が持つ曲面に精密なプリンティングを行うことができる技術は依然として改善が必要であるが、これは、特に円柱状の固定支持部と円柱状支持体とを嵌合して支持体を固定するので、支持体の内部にプリンティング組成物を吐出するには固定支持部を除去する過程が必須に伴われるため、精密な3Dプリンティングが困難であるという問題があるからである。また、従来の固定支持部は、形状変更が不可能であるため、様々な大きさの支持体を固定及び支持することができないという限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱可塑性高分子を含む3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を製作して垂直に固定した後、支持体の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することにより、プリンティング後にも構造と形態を一定に維持可能であり、多層構造の中空形状を有する人工血管を製造することができる人工血管製造用3Dプリンティングシステム及びそれを用いた人工血管の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、支持体に比べて低い高さの内部固定部を用いて支持体を固定することにより、支持体の内部及び/又は外部に3Dプリンティング工程を容易かつ精密に行うことができるだけでなく、選択的に外部固定部を用いて安定かつ堅固に前記支持体を固定することにより、より精密かつ迅速に3Dプリンティング工程を行うことができる支持体固定装置、及びその支持体固定装置が含まれた回転型3Dプリンティング造形板を備える3Dプリンターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の一実施形態は、第1ヘッド1200を介して高分子が外周面に吐出されることにより、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体1010を形成する、回転可能な支持体製作ユニット1100と、高分子を前記支持体製作ユニット1100に吐出して3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体(hollow cylindrical support)1010を形成する第1ヘッド1200と、第1ヘッド1200を介して作製された円柱状支持体1010を垂直に据え置く支持台1300と、前記支持台1300に垂直に据え置かれて固定された円柱状支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出する第2ヘッド1400と、を含む。
【0011】
前記第1ヘッド1200は、高分子を吐出するために上昇又は下降する第1空気圧シリンダ1210と、前記第1空気圧シリンダ1210の下降によって高分子を吐出する第1吐出ユニット1220と、吐出される高分子の温度を制御する温度制御ユニット1230と、を含むことが好ましい。
【0012】
また、前記第2ヘッド1400は、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出するために上昇又は下降する第2空気圧シリンダ1410と、前記第2空気圧シリンダ1410の下降によって、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出する第2吐出ユニット1420と、吐出される少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの温度を調節する温度調節ユニット1430と、を含むことが好ましい。
【0013】
一方、支持体製作ユニット1100は、高分子が吐出されるときに回転できる回転軸1110と、回転軸1110の一側に連結され、回転軸1110を回転させるモーター1120と、回転軸1110の他側に連結され、回転軸1110を支持するベアリング1130と、を含むことが好ましい。
【0014】
一例として、前記第2ヘッド1400は、垂直方向に移動しながら、支持台1300に垂直に固定された円筒状支持体1010の内部に少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することができる。
【0015】
他の例として、前記支持台1300は、固定された第2ヘッド1400が、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出する間に垂直方向に移動することができる。
【0016】
一方、前記高分子は、熱可塑性高分子であることが好ましく、前記熱可塑性高分子は、ラクチド(lactide)、カプロラクトン(caprolactone)、グリコリド(glycolide)、ジオキサノン(dioxanone)、プロピレン(Propylene)、エチレン(Ethylene)、塩化ビニル(vinylchloride)、ブタジエン(butadiene)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)、カーボネート(carbonate)及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)よりなる群から選択された1種以上であることが好ましい。
【0017】
また、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、ゲル化高分子、細胞、成長因子及び細胞外基質よりなる群から選択された1種以上を含み、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面と、支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面とが同様のパターンを有することが好ましい。
【0018】
一方、本発明の他の実施形態は、人工血管の製造方法に関するものであり、第1ヘッドを介して支持体製作ユニットの外周面に高分子が吐出され、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体(hollow cylindrical support)を形成するステップと、形成された円柱状支持体を垂直に固定する固定ステップと、第2ヘッドを垂直に移動させながら、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを前記支持体の内部に吐出させるステップと、を含む。
【0019】
前記支持体を形成するステップは、第1ヘッドを支持体製作ユニットの上部に移動させるステップと、支持体製作ユニットの上部に第1ヘッドが位置した後、支持体製作ユニットを回転させる回転ステップと、第1ヘッドを支持体製作ユニットの長さ方向に移動させながら、高分子を回転させる支持体製作ユニットの外周面に吐出させる吐出ステップと、を含むことができ、このとき、前記回転ステップと前記吐出ステップは、同時に行われるか、或いは順次行われることが好ましい。
【0020】
一方、本発明による人工血管の製造方法は、前記吐出ステップの後に、支持体の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの一部を除去するステップをさらに含むことができる。
【0021】
本発明の他の実施形態による3Dプリンティング用支持体固定装置は、中空円柱状の支持体220が位置する支持板200と、前記支持板200の中心に形成された内部固定部201と、を含むが、前記内部固定部201は、前記支持板200に垂直に位置する支持体220の内周面に密着して、前記支持体220を支持板200に固定することを特徴とする。
【0022】
前記内部固定部201は、前記支持板200の中心に備えられるタップホール206と、前記タップホール206に締結されるボルト203と、前記ボルト203の外周面に備えられる弾性チューブ205と、を含むことができ、前記ボルト203の直径は、前記支持体220の内径よりも小さいことが好ましい。
【0023】
前記弾性チューブ205は、ボルト203によって垂直に圧力が加わるときに半径方向に膨張可能な弾性体が使用できるが、このような弾性チューブ205は、シリコーンゴム(silicone rubber)、エチレンプロピレンゴム(ethylene propylene rubber、EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(ethylene propylene diene rubber、EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber、SBR)、クロロプレンゴム(chloroprene rubber、CR)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer、TPE)、及び熱可塑性オレフィン(thermoplastic olefin、TPO)よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0024】
本発明の他の実施形態による3Dプリンティング用支持体固定装置は、前記支持板200の上面に形成される外部固定部202をさらに含むことができるが、前記外部固定部202は、支持体220の外周面に密着して前記支持体220を固定することができる。
【0025】
前記外部固定部202は、前記支持板200の上面の一端に形成された第1固定プレート221と、前記支持板200の上面の他端に形成された第2固定プレート222と、前記第1固定プレート221と第2固定プレート222とを連結するガイド223と、前記ガイド223に沿って移動可能な密着部224と、を含む。
【0026】
このとき、前記密着部224は、前記支持体220の外周面と密着する面に形成される密着溝225をさらに含むことが好ましい。
【0027】
本発明は、このような3Dプリンティング用支持体固定装置を含む3Dプリンターを挙げることができ、このような3Dプリンターを用いて中空の円柱状支持体220の内部と外部に3Dプリンティング構造物を形成することができる3Dプリンティングシステムをさらに含むことができる。
【0028】
上述した本発明に含まれたいくつかの実施形態は、通常の技術者レベルで必要に応じて多様に組み合わせられるか或いは結合されて実施できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、熱可塑性高分子を含む3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を製作して垂直に固定した後、支持体の内部に少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することにより、多層構造の中空形状を有する人工血管を製造することができ、プリンティング後にも人工血管の構造と形態を一定に維持することができるという効果を持つ。それだけでなく、熱可塑性高分子を含む3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を含むことにより、一定レベル以上の弾性を有し、容易に破損せず、手術などの臨床適用時にも支持体の多孔性構造によって生体組織に糸で固定できるという効果を持つ。
【0030】
本発明の支持体固定装置は、低い高さの内部固定部を用いて支持体を固定することにより、支持体内部の3Dプリンティングを容易に行うことができるだけでなく、これと同時に外部固定部を用いて支持体をより安定的に固定して精密な3Dプリンティングを行うことができる。また、本発明の支持体固定装置は、弾性チューブを含む内部固定部と、スライド可能な密着部を含む外部固定部を用いて中空支持体を3Dプリンティング装置の出力ステージに堅固かつ安定的に固定することにより、様々な大きさの支持体を精密かつ迅速に中空支持体に3Dプリンティング工程を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施例による支持体固定装置Aを備えた回転型3Dプリンティング造形板が含まれた3Dプリンターを示す図である。
図2】本発明の一実施例による支持体が固定された支持体固定装置Aを備えた造形板の拡大図である。
図3】本発明の一実施例による支持体固定装置Aを備えた造形板の斜視図である。
図4】本発明の一実施例による支持体が固定された支持体固定装置Aの断面図である。
図5】本発明の一実施例による内部固定部の支持体固定及び作動原理を示す模式図である。
図6】本発明の一実施例による外部固定部の支持体固定及び作動原理を示す模式図である。
図7】外部固定部の変形例を模式的に示すものである。
図8】外部固定部の変形例を模式的に示すものである。
図9】本発明による人工血管製造用3Dプリンティングシステムを示す斜視図である。
図10】本発明による支持体製作ユニットの拡大図である。
図11】本発明による第1ヘッド及び第2ヘッドの拡大図である。
図12】本発明の一実施例による支持台の拡大図である。
図13】本発明の他の実施例による支持台の拡大図である。
図14】本発明の他の実施例による人工血管製造用3Dプリンティングシステムを示す正面図である。
図15】本発明の別の実施例による人工血管製造用3Dプリンティングシステムを示す正面図である。
図16】本発明の一実施例による4つの空間に区画された第2ヘッド(a)又は5つの空間に区画された第2ヘッド(b)に充填されたヒドロゲルをそれぞれ図式的に示す図である。
図17】本発明の他の実施例による中空部と区画部材とを備えた第2ヘッドを概略的に示す結合図(a)及び分解図(b)である。
図18】本発明の別の実施例による少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを図式的に示す図である。
図19】本発明の一実施例による第2ヘッドに使用される区画部材を示す拡大図である。
図20】本発明による人工血管の製造方法を説明するフローチャートである。
図21】本発明による3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を形成するステップを図式的に示す図である。
図22】本発明による少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを支持体の内部に吐出させるステップを図式的に示す図である。
図23】本発明による支持体の内部に吐出された、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの一部を除去するステップを図式的に示す図である。
図24】本発明による人工血管を示す斜視図である。
図25】本発明による人工血管を臨床適用する過程を図式的に示す図である。
図26】様々な形状の区画部材を備えた第2ヘッドを用いてヒドロゲルがプリントされることを共焦点顕微鏡で観察した結果を示す図である。
図27】区画部材なしにA、B、C、Dのヒドロゲルを用いて四重円筒構造の血管を模写した結果を図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施例によって詳細に説明する前に、本明細書及び請求の範囲に使用された用語又は単語は、通常又は辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきであることを明らかにする。
【0033】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、本明細書で記述した「部」とは、特定の機能を行う1つの単位又はブロックを意味する。
【0034】
各ステップは、文脈上明らかに特定の順序を記載しない限り、明示された順序とは異なる方式で実施できる。すなわち、各ステップは、明示された順序と同一に実施されてもよく、実質的に同時に実施されてもよく、逆の順序で実施されてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態は、3Dプリンターによって実際3Dプリンティングが行われるステーションに中空支持体を垂直に固定することができる固定装置に関するもので、本発明を説明するにあたり、不要な3Dプリンターのその他の構成要素についての説明は省略する。
【0036】
以下では、本発明の(中空)支持体固定装置を備えた3Dプリンティング造形板についてより詳細に説明する。
【0037】
図1は本発明の一実施例による支持体固定装置を備えた3Dプリンティング造形板が含まれた3Dプリンターの一例を示す図であり、図2図1に示された(中空)支持体固定部Aを構成する支持体固定装置の拡大図である。
【0038】
図1及び図2に示すように、本発明による3Dプリンティング造形板に備えられる支持体固定装置210は、3Dプリンターに備えられ、中空支持体220をプリンティングステージに固定及び支持する。このとき、使用される中空支持体は、円柱状中空支持体の形態が好ましく、特に人工血管などのように円柱状中空支持体の内面と外面の両方に3Dプリントされなければならないプリンティング構造物の3Dプリンティング過程においてさらに有用に使用できる。
【0039】
より詳細には、支持体220を本発明の支持体固定装置210で固定し、3Dプリンターのヘッドを構成するノズル部150を介してプリンティング組成物1を前記支持体220の内部及び/又は外部に順次(固定された支持体の移動なしに)吐出させることにより、人工血管と類似な構造或いは形態を有する3次元構造物をプリントすることができる。
【0040】
前記3Dプリンターのノズル部150を含むヘッド3は、ヘッド移動ユニット4によって水平及び垂直方向に移動することができ、前記ヘッド移動ユニット4は、ステージ5によってガイドされる。
【0041】
前記プリンティング組成物1は、熱可塑性高分子、ヒドロゲル(hydrogel)又はこれらの混合物を含む液相のバイオインク素材であり、必要に応じては、前記熱可塑性高分子やヒドロゲル(hydrogel)バイオインク素材に細胞を添加することもできる。
【0042】
このとき、使用される熱可塑性高分子は、特に限定されないが、例えば、ラクチド(lactide)、カプロラクトン(caprolactone)、グリコリド(glycolide)、ジオキサノン(dioxanone)、プロピレン(Propylene)、エチレン(Ethylene)、塩化ビニル(vinylchloride)、ブタジエン(butadiene)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)、カーボネート(carbonate)及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)よりなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0043】
また、前記ヒドロゲル(hyrogel)などのバイオインク素材として、アルジネート(alginate)、フィブリノゲン(fibrinogen)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、コラーゲン(collagen)、及びデキストラン(dextran)よりなる群から選択される1種以上が使用できる。
【0044】
図3は本発明の一実施例による支持体固定装置210の斜視図であり、図4は支持体固定装置210の断面図である。
【0045】
図3及び図4を参照して説明すると、本発明による支持体固定装置210は、支持板200と、前記支持板200の中心に形成された内部固定部201と、前記支持板の上面に形成された外部固定部202と、を含む。
【0046】
前記支持板200は、支持体220を支持するためのものであり、図3に示すように、円板状であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、支持体220を支持することができる各種平板形状に形成されることができる。
【0047】
前記支持体220は、中空の柱状支持体、好ましくは、多孔性構造の中空の円柱状支持体(hollow cylindrical support)であり得る。このような支持体220は、高分子を用いて予め別個の3Dプリンティング方式で製造できるが、本発明による支持体固定装置が含まれた3Dプリンターを用いて予め支持体を形成することも可能である。
【0048】
このとき、使用できる高分子素材は、例えば、ラクチド(lactide)、カプロラクトン(caprolactone)、グリコリド(glycolide)、ジオキサノン(dioxanone)、プロピレン(Propylene)、エチレン(Ethylene)、塩化ビニル(vinylchloride)、ブタジエン(butadiene)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)、カーボネート(carbonate)及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)、PCL(polycaprolactone)、ASA(acrylonitrile-styrene-acrylate)、SAN(styrene-acrylonitrile copolymer)、PS(polystyrene)、PPSF/PPSU(polyphenylsulfone)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、PLA(polylactic acid)、PDL(poly-d-lysine)などのFDMプリンティングが可能な熱可塑性高分子よりなる群から選択できる。
【0049】
前記内部固定部201は、支持体220の内周面に密着して前記支持体220を固定するためのものであり、前記支持板200の中心に備えられたタップホール206と、前記タップホール206に締結されるボルト203と、前記ボルト203のねじ部204の外周面に備えられる弾性チューブ205と、を含む(図4参照)。
【0050】
図5に示すように、ボルト203のねじ部204の外周面に弾性チューブ205が密着するように形成され(図5(a))、ボルト203が、支持板200の中心に備えられたタップホール206に締結されるとき、弾性チューブ205を上方から加圧して弾性チューブ205を半径方向に膨張させる(図5(b))。半径方向に膨張した弾性チューブ205は、支持体220の内周面に密着することにより、支持体220を垂形態で安定的に固定することができる。
【0051】
具体的には、支持体220は、ボルト203及び弾性チューブ205が内部空間に含まれるように垂直に位置する。以後、ボルト203をタップホール206と締結させることにより、弾性チューブ205が上方から下方に加圧されて半径方向に膨張し、これにより支持体220の内周面に弾性チューブ205が密着支持されて支持体220が垂直に支持板200に固定されることができる。このとき、ボルト203の直径は、支持体220の内径よりも小さいことが好ましく、半径方向に膨張した弾性チューブ205の外径は、支持体220の内径と同一又は類似の大きさに形成されることが好ましい。
【0052】
前記弾性チューブ205の材質は、特に限定されるものではないが、ボルト203によって加圧されるときに形状が変化できるように弾性力を有する材質であることが好ましく、例えば、シリコーンゴム(silicone rubber)、エチレンプロピレンゴム(ethylene propylene rubber、EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(ethylene propylene diene rubber、EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber、SBR)、クロロプレンゴム(chloroprene rubber、CR)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer、TPE)、及び熱可塑性オレフィン(thermoplastic olefin、TPO)よりなる群から選択される少なくとも1種が使用できる。
【0053】
さらに好ましくは、このような弾性材質の変形率が初期直径に対して25~35%の範囲で変形することがよい。
【0054】
このように、弾性力を有する弾性チューブ205が支持体220の内周面に柔らかく密着することにより、支持体220が支持板200に垂直にしっかりと固定されるとともに、支持体220の形状が圧力によって損傷するのを防止することができる。
【0055】
本発明による外部固定部202は、支持体220の外周面に密着して前記支持体220を固定するためのものであって、前記支持板200の上面一端に形成された第1固定プレート221と、前記支持板200の上面の他端に形成された第2固定プレート222と、前記第1固定プレート221と第2固定プレート222とを連結するガイド223と、前記ガイド223に沿って移動可能に形成された密着部224と、を含むことができる。
【0056】
図6に示すように、密着部224は、ガイド223に沿って移動することができるため、支持体220の内部空間に前記ボルト203及び弾性チューブ205が含まれるように、支持体220を垂直に位置させ後(図6(a))、前記密着部224を支持体220の外周面に密着するように移動させることにより(図6(b))、支持体220を垂直にさらに堅固に固定させることができる。支持体220の外周面に密着した密着部224は、ねじ、ゴムリング、接着樹脂等の固定手段によってその位置が固定されることにより、支持体220をより堅固に固定させることができる。
【0057】
前記密着部224は、支持体220の外周面と密着する面に形成される密着溝225を含むことができる。前記密着溝225は、密着部224と支持体220との密着面積を広げ、より堅固に支持体220を固定するためのものであり、支持体220の外周面の形状に対応する形状に形成されることができる。例えば、前記支持体220が円柱状支持体である場合には、前記密着溝225は、支持体と同じ曲率半径を有する曲面形状に形成されてもよい。
【0058】
図7及び図8には、このような外部固定部202の様々な変形例が示されている。図7には、支持体220の外周面と密着して固定できるようにダンパー形態の密着部224が用いられる例が示されており、図8には板ばね形態の密着部224が示されている。このようなダンパー又は板ばね形態の密着部224は、支持体220の外周面と密着するが、支持体の外周面に少なくとも3つの領域を支持する方式である3点接触以上で構成されることが好ましい。
【0059】
3Dプリントされて最終的に形成される3次元構造物の下端が損傷するのを防止するために、密着部224に密着する支持体220の下端は犠牲層として形成することも可能である。
【0060】
上述したように垂直に固定された支持体220の下端は、密着部224が密着することにより加わる圧力により損傷するか、或いは重力により支持体220の荷重が下端に片寄って損傷するが、このように損傷する支持体220の下端を犠牲層として形成することにより、3Dプリンティングを完了した後、このような犠牲層を除去して損傷のない3次元構造物を形成することができる。この犠牲層の高さは、支持体220の全高を基準に10%、好ましくは10mm未満に形成されることが好ましい。
【0061】
図9は本発明による人工血管製造用3Dプリンティングシステムを示す斜視図である。図9を参照すると、本発明の人工血管製造用3Dプリンティングシステム1001は、第1ヘッド1200を介して高分子が外周面に吐出されることにより、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体1010を形成する、回転可能な支持体製作ユニット1100と、高分子を前記支持体製作ユニット1100に吐出して3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体1010を形成する第1ヘッド1200と、第1ヘッド1200を介して製作された円柱状支持体1010を垂直に据え置く支持台1300と、前記支持台1300に垂直に据え置かれて固定された円柱状支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出する第2ヘッド1400と、第1ヘッド1200及び第2ヘッド1400を同時に又はそれぞれ個別に水平及び垂直方向に移動させるヘッド移動ユニット1510、1520、1530と、ヘッド移動ユニット1500の移動をガイドするX軸ステージ1610、Y軸ステージ1620及びZ軸ステージ1630と、を含む。
【0062】
支持体製作ユニット1100は、回転可能であり、第1ヘッド1200を介して高分子が外周面に吐出されるときに回転することにより、支持体1010が3次元多孔性構造の中空の円柱状に形成されるようにする。ここで、外周面の直径は、人体血管の直径と同一又は類似するように製作されることが好ましい。
【0063】
第1ヘッド1200は、支持体製作ユニット1100の外周面に高分子を吐出して、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体1010を形成する。
【0064】
前記第1ヘッド1200は、ヘッド移動ユニット1520によってY軸ステージ1620に沿って移動して支持体製作ユニット1100の上部に位置する。その後、X軸ステージ1610に沿って移動しながら支持体製作ユニット1100の外周面に高分子を吐出するが、高分子の吐出過程中で支持体製作ユニット1100が同時に回転することが好ましい。すなわち、高分子の吐出と支持体製作ユニット1100の回転が同時に行われることにより、支持体1010が3次元多孔性構造の中空の円柱状に形成されることができる。
【0065】
また、第1ヘッド1200は、空気圧によって高分子を吐出することができ、高分子の濃度又は第1ヘッド1200のノズルの大きさに応じて空気圧が適切に制御されることにより、吐出される高分子の吐出量又は吐出速度を調節することが好ましい。
【0066】
一方、前記高分子は、熱可塑性高分子であることが好ましく、生体内又は生体外で無害であり、生体内環境に容易に適応して拒絶反応が発生しない生分解性高分子であることがさらに好ましい。
【0067】
前記熱可塑性高分子は、特に限定されないが、例えば、ラクチド(lactide)、カプロラクトン(caprolactone)、グリコリド(glycolide)、ジオキサノン(dioxanone)、プロピレン(Propylene)、エチレン(Ethylene)、塩化ビニル(vinylchloride)、ブタジエン(butadiene)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)、カーボネート(carbonate)及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)よりなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0068】
本発明の熱可塑性高分子を含む支持体1010は、プリンティング後にも構造と形態を一定に維持可能であり、一定レベル以上の弾性を有し、容易に破損しない。また、3次元多孔性構造によって、手術などの臨床適用時にも生体組織に糸で固定されることができる(後述する図25を参照)。
【0069】
支持台1300は、第1ヘッド1200によって、支持体製作ユニット1100で形成された支持体1010を垂直に固定して、第2ヘッド1400が支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することができるようにする。
【0070】
支持台1300は、支持体1010が垂直に固定される間に適切な温度を維持するように内部に温度調節システムを含むことが好ましく、例えば、ペルチェ素子などを用いて温度を調節することができる。この場合、前記温度調節システムは、自動校正器によって一定間隔ごとに温度を確認した後、適切な温度に補正できる。
【0071】
第2ヘッド1400は、垂直方向に移動しながら、支持台1300に固定された支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出し、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが支持体1010の内部に積層されることにより、人工血管1020を製造することができる。
【0072】
一例として、第2ヘッド1400は、ヘッド移動ユニット1520によってY軸ステージ1620に沿って移動して、支持台1300に垂直に据え置かれて固定された支持体1010の上部に位置する。その後、Z軸ステージ1630に沿って上昇しながら、支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出し、これにより、支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面と、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面とは同様のパターンを有する。ただし、支持体1010の直径に応じて断面の大きさは変わり得る。
【0073】
前記「同様」とは、100%同一であることだけでなく、実質的に同一の機能を行える程度に同一のものまでも含む意味と定義される。すなわち、「断面が同様のパターンを有する」とは、断面の大きさが変わるだけであり、元の断面の形態はそのまま維持することを意味する。
【0074】
また、第2ヘッド1400は、空気圧によって、別途の区画部なしに、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することもできるが、(別途の区画部なし)少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの濃度又は第2ヘッド1400のノズルの大きさに応じて空気圧が適切に制御されることにより、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの吐出量又は吐出速度を調節することが好ましい。
【0075】
一方、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルとは、2つ以上の異なるインクが混合されずに多区画を形成するヒドロゲルを意味する。前記異なるインクとは、構成成分、構成成分の含有量及び物性よりなる群から選択された1つ以上が異なることをいう。少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルに関する具体的な内容については、後述する。
【0076】
ヘッド移動ユニット1510、1520、1530は、X軸ステージ1610、Y軸ステージ1620又はZ軸ステージ1630に沿って移動して第1ヘッド1200及び第2ヘッド1400を同時に水平及び垂直方向に移動させ、X軸ステージ1610、Y軸ステージ1620及びZ軸ステージ1630は、ヘッド移動ユニット1510、1520、1530の移動をガイドする。
【0077】
具体的には、ヘッド移動部1530に第1ヘッド1200及び第2ヘッド1400が形成されることが好ましく、これにより、第2ヘッド1400から少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが吐出されながら、これと同時にZ軸ステージ1630に沿って垂直方向に移動可能である。
【0078】
図10は本発明による支持体製作ユニット1100の拡大図であり、支持体製作ユニット1100は、回転軸1110、モーター1120及びベアリング1130を含む。
【0079】
回転軸1110は、第1ヘッド1200から熱可塑性高分子が吐出されるときに回転することにより、支持体1010が3次元多孔性構造の中空の円柱状に形成されるようにすることができ、ここで、回転軸1110の直径は、人体血管の直径と同一又は類似するように製作されることが好ましい。
【0080】
モーター1120は、回転軸1110の一側に連結され、外部の動力の印加を受けて回転軸1110を回転させる役割を果たし、ベアリング1130は、回転軸1110の他側に連結され、回転する回転軸1110を支持する。
【0081】
詳細には、回転軸1110は、モーター1120及びベアリング1130から分離でき、これにより第1ヘッドから吐出されて回転軸1110の外周面に形成された熱可塑性高分子材質の3次元多孔性構造を有する中空の円柱状支持体1010を回転軸1110から分離可能である。
【0082】
図11は本発明による第1ヘッド及び第2ヘッドの拡大図である。図11に示すように、第1ヘッド1200は、第1空気圧シリンダ1210、第1吐出ユニット1220及び温度制御ユニット1230を含む。
【0083】
第1空気圧シリンダ1210は、外部から伝達される空気圧によって上昇又は下降することにより、熱可塑性高分子が第1吐出ユニット1220から吐出されるようにする。すなわち、熱可塑性高分子の濃度又は第1吐出ユニット1220のノズルの大きさに応じて適切に制御された空気圧によって下降しながら熱可塑性高分子に圧力を加えることになり、熱可塑性高分子が第1吐出ユニット1220を介して支持体製作ユニット100の外周面に吐出される。
【0084】
第1空気圧シリンダ1210は、熱可塑性高分子の濃度又は第1吐出ユニット1220のノズルの大きさに応じて空気圧を適切に制御して、吐出される熱可塑性高分子の吐出量又は吐出速度を調節することが好ましい。
【0085】
第1吐出ユニット1220は、第1空気圧シリンダ1210の下降により加圧され、熱可塑性高分子を支持体製作ユニット1100の外周面に吐出する。このとき、第1吐出ユニット1220は、X軸ステージ1610に沿って移動しながら回転する支持体製作ユニット1100の外周面に熱可塑性高分子を吐出して、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体1010を製作することができる。
【0086】
温度制御ユニット1230は、熱可塑性高分子が適切な粘度を持つように温度を制御する役割を果たし、使用される熱可塑性高分子に応じて適切な温度に制御することが好ましい。
【0087】
一方、第2ヘッド1400は、第2空気圧シリンダ1410、第2吐出ユニット1420及び温度調節ユニット1430を含む。第2空気圧シリンダ1410は、外部から伝達される空気圧によって上昇又は下降することにより、ヒドロゲルが第2吐出ユニット1420を介して吐出されるようにする。必要に応じて、区画に分けられていない単一のヒドロゲル、或いは少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが吐出されることができる。
【0088】
このとき、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、ヒドロゲルの濃度又は第2吐出ユニット1420のノズルの大きさに応じて適切に制御された空気圧によって下降しながら、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルに圧力を加えることにより、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが第2吐出ユニット1420を介して支持体の内部に吐出されるようにすることができる。
【0089】
第2空気圧シリンダ1410は、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの濃度又は第2吐出ユニット1420のノズルの大きさに応じて空気圧を適切に制御することにより、吐出される少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの吐出量又は吐出速度を調節することが好ましい。
【0090】
第2吐出ユニット1420は、第2空気圧シリンダ1410の下降によって加圧され、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを支持体の内部に吐出する。
【0091】
このとき、第2吐出ユニット1420は、Z軸ステージ1630に沿って上昇しながら、支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することができる。また、支持体1010が垂直に固定された支持台1300が移動しながら支持体1010が移動するとき、第2吐出ユニット1420を介して支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することも可能である。
【0092】
これにより、支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面と、第2空気圧シリンダ1410に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面とは、同様のパターンを有するようにすることができる。
【0093】
温度調節ユニット1430は、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが3次元加工のための物理的性質と生物学的性質を持つように温度を調節する役割を果たし、使用されるヒドロゲルに応じて適切に温度を調節することが好ましい。
【0094】
図12は本発明の一実施例による支持台の拡大図であり、図13は本発明の他の実施例による支持台の拡大図である。
【0095】
まず図12を参照すると、支持台1300は、支持体1010を垂直に固定する固定ユニット1310を含み、固定ユニット1310は、ボルト1311及び弾性チューブ1312を含む。
【0096】
ボルト1311は、ねじ部1311-aの外周面に弾性チューブ1312が密着し、下部に位置したナット(図示せず)と締結されるとき、弾性チューブ1312を加圧して弾性チューブ1312を膨張させる。膨張した弾性チューブ1312は、支持体1010の内周面に密着することにより、支持体1010を垂直に固定することができる。
【0097】
具体的には、支持体1010は、内部空間にボルト1311及び弾性チューブ1312が含まれるように垂直に位置する。その後、ボルト1311をナットと締結することにより弾性チューブ1312が加圧されて膨張し、これにより支持体1010の内周面に弾性チューブ1312が密着支持されて支持体1010が垂直に固定されることができる。このとき、ボルト1311の直径は、支持体1010の直径よりも小さく形成されることが好ましく、膨張した弾性チューブ1312の外径は、支持体1010の内径と同一又は類似の大きさに形成されることが好ましい。
【0098】
弾性チューブ1312は、ボルト1311(すなわち、ねじ部1311-a)の外周面に密着し、ボルト1311が、下部に位置したナットと締結されるときに加圧されることにより、半径方向に膨張して支持体1010の内周面に密着する。
【0099】
前記弾性チューブ1312の材質は、特に限定されるものではないが、ボルト1311によって加圧されるときに形状が変化できるように弾性力を有する材質であることが好ましく、例えば、シリコーンゴム、アルジネート、ゼラチンなどを使用することができる。
【0100】
すなわち、弾性力を有する弾性チューブ1312が支持体1010の内周面に滑らかに密着することにより、支持体1010が垂直にしっかりと固定されるとともに、支持体1010の形状が外部の圧力によって損傷するのを防止することができる。
【0101】
一方、他の例として、図13に示すように、支持台1300は、支持体1010を垂直に固定する絞り1320を含むことができ、支持体1010を、絞り1320の内部に形成されたホール1321に垂直に位置させた後、絞り1320が支持体1010の外周面に密着するように調節されることにより、支持体1010を垂直に固定することができる。このとき、絞り1320の密着により支持体1010の下端が損傷するのを防止するために、絞り1320と密着する支持体1010の下端は犠牲層として形成されることも可能である。
【0102】
図14は本発明の他の実施例による人工血管製造用3Dプリンティングシステムを示す正面図である。
【0103】
図14を参照すると、人工血管製造用3Dプリンティングシステム1002は、支持体製作ユニット1100、第1ヘッド1200、支持台1300、昇降手段1330、第2ヘッド1400、ヘッド移動ユニット1510、1520、1530、X軸ステージ1610、Y軸ステージ1620、及びZ軸ステージ1630を含む。ここで、以前の実施例と同一の部分は説明を省略し、以前の実施例と異なる部分のみ説明することにする。
【0104】
支持台1300は、第1ヘッド1200と支持体製作ユニット1100で形成された支持体1010を垂直に固定し、第2ヘッド1300が支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたジーンヒドロゲルを吐出する間に垂直方向に移動して、少なくとも1つのヒドロゲル或いは2つの区画に分けられたヒドロゲルが支持体1010の内部に積層されるようにする。
【0105】
具体的には、支持台1300は、下部に、支持台1300を上昇又は下降させる昇降手段1330(例えば、空気圧シリンダ、油圧シリンダ、スクリューなど)を備えることができ、第2ヘッド1400が支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出する間、昇降手段1330による上昇或いは下降などの移動過程とともに、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが支持体1010の内部に積層される。このとき、支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面と、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面とは同様のパターンを有する。
【0106】
第2ヘッド1400は、垂直方向に移動する支持台1300に固定された支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出し、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが支持体1010の内部に積層されることにより、人工血管120を製造することができる。
【0107】
具体的には、第2ヘッド1400は、ヘッド移動部1520によってY軸ステージ1620に沿って移動して支持体1010の上部に位置する。その後、垂直方向に下降する支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出し、これにより支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面と、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面とは同様のパターンを有する。
【0108】
図15は本発明の別の実施例による人工血管製造用3Dプリンティングシステムを示す正面図である。図15を参照すると、人工血管製造用3Dプリンティングシステム1003は、支持体製作ユニット1100、第1ヘッド1200、支持台1300、第2ヘッド1400、ヘッド移動ユニット1510、1540、1550、X軸ステージ1610、Y軸ステージ1620、及びZ軸ステージ1640を含む。ここで、以前の実施例と同一の部分は説明を省略し、以前の実施例と異なる部分のみ説明することにする。
【0109】
ヘッド移動ユニット1510、1540、1550は、X軸ステージ1610、Y軸ステージ1620又はZ軸ステージ1640に沿って移動して第1ヘッド1200及び第2ヘッド1400を個別に水平及び垂直方向に移動させ、X軸ステージ1610、Y軸ステージ1620及びZ軸ステージ1640は、ヘッド移動ユニット1510、1540、1550の移動をガイドする。具体的には、ヘッド移動ユニット1550に第2ヘッド1400が形成されることが好ましく、これにより、第2ヘッド1400が、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出しながら、Z軸ステージ1640に沿って垂直方向に移動可能である。
【0110】
一方、図16図19には、本発明の様々な実施例による少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが図式的に示されている。図16図19を参照すると、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、2つ以上の区画空間を含む第2ヘッド1400の各区画空間に異なるインクを充填することで形成できる。
【0111】
具体的には、第2ヘッド1400の内部は、それぞれのインクを収容する複数の空間が区画されるが、このとき、第2ヘッド1400は、特定の数の空間が形成されるように一体に製作されてもよく、第2ヘッド1400から着脱可能な区画部材1440によって複数の空間に互いに区画されてもよい。第2ヘッド1400から脱着可能な区画部材1440を用いる場合、単一の第2ヘッド1400の区画部材1440のみを変えることにより、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを複数種類のパターンでプリントすることができ、各インクの面積比に応じて、区画部材1440が区画する空間の大きさを調節することができる。
【0112】
第2ヘッド1400から着脱可能な形態で除去可能な区画部材1440を用いる実施例の場合には、図16(a)及び(b)のように区画部材1440を第2ヘッド1400に挿入することができ、図17(a)及び(b)のように区画部材1440を中空部1450に装着して一緒に第2ヘッド1400に挿入することも可能である。
【0113】
このとき、使用される区画部材1440は、射出、押出、又は3次元プリンティング方法などの多様な方法で製造できるが、好ましくは、3次元プリンティング方法で製造でき、区画部材1440の大きさは、第2ヘッド1400の内部に挿入できるようにするが、円筒形、四角形、三角錐など、いずれの大きさ及び形状も可能である。すなわち、区画部材1440の断面パターンは、様々な形状に製造でき、好ましくは、製造しようとする人工血管の断面積と同様のパターンを有することができる。区画部材1440の様々な断面形状の例を図19に示し、人工血管と類似の形状、多数の同心円を含む形状などを含むことができる。また、区画部材の材質は、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)、PCL(polycaprolactone)、ASA(acrylonitrile-styrene-acrylate)、SAN(styrene-acrylonitrile copolymer)、PS(polystyrene)、PPSF/PPSU(polyphenylsulfone)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、PLA(polylactic acid)、PDL(poly-d-lysine)などのFDMプリンティングが可能な熱可塑性樹脂と光硬化性樹脂、機械加工が可能な非鉄/非鉄合金材料などの固体材料が好適である。
【0114】
別の実施例として、図18を参照すると、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、第2ヘッド1400に少なくとも1種のインクを3次元プリンティング法でプリントしたインク印刷物として提供し、少なくとも1種のインクを3次元プリンティング法以外の方法でインク充填物としてさらに提供して形成できる。ここで、3次元プリンティング法でプリントしたインク印刷物は、それ自体も2次元又は3次元パターンを有するものであってもよい。また、インク充填物は、3次元プリンティング法で第2ヘッド1400に提供されるインク印刷物とは異なり、3次元プリンティング法ではない充填方法によって提供されるインク充填物を意味し、3次元プリンティング法以外の方法による充填方法の例としては、チューブやシリンジなどを用いて充填する方法があり、特に限定されない。
【0115】
一方、第2ヘッド1400に提供されるインク充填物とインク印刷物とのインク粘度差は、25℃温度で測定した粘度差が5,000cp以下、例えば0~5,000cp、1,000cp以下、500cp以下、200cp以下、150cp以下、100cp以下、又は50cp以下であってもよい。
【0116】
インクの粘度差が非常に大きければ、互いに異なる物質の分子力によってインク印刷物の形状が変形することがあり、吐出して3次元プリンティングをしようとする場合、同一の圧力をインク又は第2ヘッド1400に加える場合、粘度差により、第2ヘッド1400に収容された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルのパターンが崩壊する可能性がある。したがって、互いに異なる2種以上のインクを使用する場合、粘度の差が小さいほど好ましい。
【0117】
そして、前記インク充填物とインク印刷物との弾性値の差は、10,000Pa以下、例えば0~10,000Paであってもよく、前記インク充填物とインク印刷物は、粘性と弾性が剪断速度によって変化する傾向が類似し、粘性値と弾性値が類似することが好ましい。
【0118】
また、互いに異なるインクに使用されるゲル化高分子が異なる場合には、例えば、ゲル化高分子がコラーゲン、ゼラチンのように温度感受性を有し、他の一つがアルジネート、フィブリンゲルのように温度感受性を有しない場合には、第2ヘッド1400内部の温度を調節する必要があり、第2ヘッド1400の温度を4℃~37℃の温度範囲で適宜調節することが好ましい。
【0119】
図16及び図18に示されている実施例において、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが下部にこぼされないように、第2ヘッド1400に予め支持物質としてヒドロゲルを0.1mL~2mL程度少量入れた後、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを第2ヘッド1400に入れることが好ましく、その後、第2ヘッド1400の内部にヒドロゲルを再び充填して安定的なプリンティングを誘導することができる。
【0120】
また、前記少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、第2空気圧シリンダ1410を介して加圧され、第2吐出ユニット1420を介して支持体1010の内部に吐出され、このとき、第2空気圧シリンダ1410は、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面が同じ形状を維持しながら大きさだけ縮小されてノズルを通過するように制御されることが好ましい。
【0121】
具体的には、各区画された空間に収容されたインクに同じ条件の圧力を加えるために、1つの第2空気圧シリンダ1410を用いて圧力を行うか、或いは2つ以上の第2空気圧シリンダ1420を用いて同一の圧力で加圧して行うことができる。
【0122】
その後、第2空気圧シリンダ1410の加圧によって、それぞれ異なるインクが、単一通路を備えたノズルを介して支持体1010の内部に吐出され、支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面と、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面とは同様のパターンを有する。
【0123】
ここで、第2空気圧シリンダ1410に加わる圧力があまり高い場合には、ノズルにかかる負荷が大きくなって損傷が発生するか、或いは少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルがスムーズにスレッド(thread)形状に排出されず、凝り固まって不均衡な形状に排出される危険性があり、加わる圧力が弱すぎる場合、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの粘性による抵抗のためノズルから円滑な排出ができないことがある。
【0124】
また、第2吐出ユニット1420のノズルは、単一通路を備えて、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを多重チャンネル制御ではなく、単一チャンネル制御方式で吐出することができるが、前記ノズルの直径が小さすぎる場合には、排出圧力が大きくなって圧力が強いときの危険性が同一に発生するおそれがあり、前記ノズルの直径が大きすぎる場合には、人工血管の製造時に3次元形状の精度が低下するおそれがある。
【0125】
したがって、0.1~500kPaの範囲内の圧力を加えて、0.1~1mmの範囲内の排出口直径を有するノズルを介して、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することが好ましく、第2ヘッド1400が1~700mm/minの範囲内の速度で移動しながら、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルをプリントすることが好ましい。
【0126】
上述した圧力範囲及び直径範囲内で、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの排出が適切に円滑かつ容易に行われると同時に、製造される人工血管形状の精度を適切に所望のレベルに達成することができる。
【0127】
従来技術のように1つずつの材料を噴射してバイオプリンティングを行う場合には、第2吐出ユニット1420のノズル内径のサイズ減少に制限があるため、材料の体積減少に限界があったが、本発明によれば、多重インクの数に比例して吐出されるインクの体積を減少させることができるため、従来技術に比べて精密な噴射が可能となる。
【0128】
また、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが第2吐出ユニット1420のノズルを通過するときに、それぞれのインクと第2吐出ユニット1420の通路の内面との間に接触する面積が減少するので、発生するせん断応力が単一材料を吐出するときよりも低減する。よって、細胞活性の面で従来技術に比べて有利な効果がある。
【0129】
したがって、本発明によれば、複雑な断面構造を持つ人工血管を高い精度と解像度でプリントして製造することができ、様々な断面パターンを有する人工血管を製造することができるだけでなく、所望の形状を異質的にプリントするとともに、細胞のせん断応力も大きく減らすことにより、細胞生存率が高まる。
【0130】
また、本発明の少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを使用する場合、多重材料が異質的に含有された多重ヘッドを使用する従来技術に比べて、1つのヘッド(すなわち、第2ヘッド1400)を用いて2つ以上の異なるインクを一緒に吐出してプリントすることができるので、単一のヘッドを使用することができるため、プリンティング工程時間が減少し、3Dプリンティングシステムが単純になるという利点がある。
【0131】
一方、図18に示すように、支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面と、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面とは同様のパターンを有し、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面パターンの比率は、断面の面積比率、直径比率などの様々な方法で表示されることができる。
【0132】
具体的には、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面パターンと、支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面パターンとの比率が、例えば、断面パターンの直径が100:99~100:0.1、又は100:50~100:1、100:18~100:1の比率に縮小できる。
【0133】
しかし、前記縮小比率は、第2ヘッド1400の断面直径、第2吐出ユニット1420の断面直径、又はノズルの直径などに直接影響され、支持体1010の断面パターンのサイズに合わせて適宜調節して多様に設計することができる。
【0134】
本発明の実施例によれば、比率は、特定の形状の全体直径から98.7%まで小型化可能である。例えば、縮小比率は、下記数式1に従って計算することができる。
[数式1]
縮小比率=100-(第2ヘッドの断面直径/印刷物の断面直径)×100(%)
【0135】
一方、第2ヘッド1400に提供されるインクは、人工血管を製造することができるバイオインクであることが好ましい。本明細書において、「バイオインク」とは、生きている細胞或いはバイオ分子を含み、人工血管製造用3Dプリンティング技術に応用して人工血管を製作することができる素材を通称する用語である。本発明のバイオインクは、複数の細胞を含む液体、半固体、又は固体組成物を含む。
【0136】
また、バイオインクは、3次元加工のための物理的性質及び細胞が目的の機能を行うようにするための生物学的環境を提供しなければならない。プリンティング工程が長くなるときには、第2ヘッド1400内で細胞の生存に必要な栄養分と酸素の供給が適切に行われることが好ましい。さらに、プリンティング過程で発生する物理的ストレスから細胞を保護することができなければならない。その他にも、バイオインクは、3次元パターニングの反復性、生産性、ノズルの詰まりがあってはならないなど、プリンティング工程上で必要とする物理的性質を持たなければならない。
【0137】
したがって、バイオインクは、ヒドロゲルであることが好ましく、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、ゲル化高分子、細胞、成長因子及び細胞外基質よりなる群から選択された1種以上を含むことができ、例えば、所望の細胞を混合したヒドロゲル、特定の成長因子(growth factor)が含有されたヒドロゲル、細胞と成長因子が含有されたヒドロゲル、サイトカイン(cytokine)が含有されたヒドロゲル、又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。
【0138】
前記ヒドロゲルは、ポリエチレングリコール、コラーゲン、マトリゲル、アルジネート、ゼラチン、アガロース、フィブリノゲン及び脱細胞化組織由来細胞インク、又はこれらの混合物が好ましく、前記細胞は、人工血管が移植又は挿入される患者に由来する血管内皮細胞、血管平滑筋細胞又は線維細胞を使用するか、或いは患者由来の幹細胞を用いて分化させた血管内皮細胞、血管平滑筋細胞及び線維細胞よりなる群から選択された1種以上であることが好ましい。
【0139】
また、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、低粘度であるほど速く拡散するので、水(1cp)よりも濃い粘度であって、25℃温度で測定した粘度が2cp~1,000,000cp、例えば2cp~10,000cp、或いは5cp~1,000,000cpの粘性を有するゲル状の物質が適切である。そして、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、吐出に適切な粘度を提供するために、様々な粘度増進剤を使用することもできる。
【0140】
前記少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、生体適合性、プリンティング適合性、幾何学的精密性、精度などの物理的及び生物学的な面で優れた利点を有する。
【0141】
一方、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの緻密化は、適切な密度で細胞を成長させることから誘導され、そのために組織由来成分がさらに含まれることができる。
【0142】
組織由来成分は、血管、軟骨、腎臓、心臓、肝臓、筋肉などの動物の特定組織が脱細胞化され、細胞外基質を主成分とする物質のゲル化物を意味し、これは、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの組織特異性を強化するために含まれることができる。
【0143】
また、本発明において、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、細胞培養培地をさらに含むことができる。前記細胞培養培地は、目的の細胞に適した任意の培地を含む概念である。
【0144】
ゲル化高分子溶液は、様々な種類を使用することができるが、このような高分子溶液が持つべき条件は、次の通りである。まず、3次元プリンティングがよく行われるようにするために、適当な粘性を持ってノズルからの噴出が容易でなければならず、排出された後に速やかに硬化することにより、作られる対象の形態がつぶれるなどの問題が発生してはならない。さらに、基本的に、製造の目的のために、人体内の組織と類似の細胞培養環境を造成することができなければならない。
【0145】
前記ゲル化高分子の例は、フコイダン、コラーゲン、アルジネート、キトサン、ヒアルロン酸、シルク、ポリイミド(polyimides)、ポリアミック酸(polyamix acid)、ポリカプロラクトン(polycarprolactone)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ナイロン(nylon)、ポリアラミド(polyaramid)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリベンジルグルタメート(poly-benzyl-glutamate)、ポリフェニレンテレフタルアミド(polyphenyleneterephthalamide)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリスチレン(polystyrene)、セルロース(cellulose)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリ乳酸(Polylactic acid、PLA)、ポリグリコール酸(ポリグリコール酸、PGA)、ポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体(PLGA)、ポリ{ポリ(エチレンオキシド)テレフタレート-co-ブチレンテレフタレート}(PEOT/PBT)、ポリホスホエステル(polyphosphoester、PPE)、ポリホスファゼン(PPA)、ポリアンヒドリド(Polyanhydride、PA)、ポリオルソエステル{poly(ortho ester)、POE}、ポリ(プロピレンフマレート)-ジアクリレート{poly(propylene fumarate)-diacrylate、PPF-DA}及びポリエチレングリコールジアクリレート{poly(ethylene glycol)diacrylate、PEG-DA}よりなる群から選択された1種以上、又はこれらの材料の組み合わせであってもよい。ところが、本実施例に材料が制限されるものではない。
【0146】
また、前記ゲル化高分子は、天然高分子を化学的に変形させたものを使用することができ、例えば、ゼラチン(gelatin)とメタクリレート(MA)を化学的に結合し、光学開始剤(photoinitiator)を結合したGelMA、アルジネート/セラチン(Alginate/Gelatin)、アルジネート(Alginate)の結合部位(binding site)を追加するために、pentapeptide sequencing Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg(YIGSR)とEDC/NHSを結合したアルジネートなどを含むことができる。
【0147】
特に、前記ポリエチレングリコール、アルギネート、コラーゲン及びゼラチンを含むヒドロゲルは、水分含量が高く、生体適合性に優れるうえ、機械的特性を調節することができ、生分解性に優れるため、細胞が包埋された担体の製造に広く用いられてきた。このような理由により、ヒドロゲルは、細胞が搭載された構造の製造に非常に適しており、様々なタイプの組織再生骨格を得るために直接プリントすることができる。
【0148】
前記ゼラチンは、温度感受性を示すので、前記細胞輸送物質として特に適している。すなわち、ゼラチンは、37℃で液化し、常温以下で固化する特性を持っている。
【0149】
前記ゲル化高分子は、物理的処理又は化学的処理を用いて架橋結合を形成することができ、前記化学的処理には架橋溶液を使用することができ、選択されたゲル化高分子に応じて適切に架橋溶液を選択して使用することができる。
【0150】
例えば、前記架橋溶液は、石膏;又はヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、フッ化アパタイト、塩化アパタイト、α-TCP、β-TCP、メタリン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、EDC{1-エチル-(3-3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド}、又はこれらの塩から選択される1種以上の混合物の溶液であり得る。
【0151】
前記ゲル化高分子溶液を含むインクは、通常、液相のコラーゲン溶液におけるコラーゲン濃度比率が0.1~30重量%の範囲内に形成されることが好ましい。
ヒドロゲルの製造方法は、通常の3次元プリンティング用にインクを製造する際に使用する製造方法を適用して行うことができるが、特に限定されない。
【0152】
本発明による少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、前述したように細胞を含むことができ、前記細胞は、人工血管が移植又は挿入される患者に由来する血管内皮細胞、血管平滑筋細胞又は繊維細胞を使用するか、或いは患者由来の幹細胞を用いて分化させた血管内皮細胞、血管平滑筋細胞及び線維細胞よりなる群から選択された1種以上であることが好ましい。
【0153】
本発明の少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルで使用される細胞類型は、当技術分野における公知の任意の方式で培養できる。細胞及び組織培養方法は、当技術分野における公知のものである。
【0154】
また、細胞は、所望の細胞株に沿って細胞の分化を誘導する細胞分化物質と培養されることもできる。例えば、幹細胞は、分化培地と接触してインキュベートされることにより、一定の範囲の細胞類型を生成する。
【0155】
前記幹細胞は、非制限的例として、骨原性(osteogenic)分化培地、軟骨原性(chondrogenic)分化培地、脂肪生成(adipogenic)分化培地、神経分化培地、心筋細胞分化培地及び血管細胞分化培地を含む分化培地と接触してインキュベートされることができる。
【0156】
さらに、細胞は、成長因子、サイトカインなどと培養されることができる。成長因子は、細胞によって生成され、それ自体及び/又は様々な他の隣接している或いは離れている細胞に影響を与えることができる、サイトカインを含むタンパク質、ポリペプチド、又はポリペプチド複合体を指す。通常、成長因子は、発生的に或いは多数の生化学的又は環境的な刺激に反応して特定類型の細胞の成長及び/又は分化に影響を及ぼす。全部ではないが、一部の成長因子はホルモンである。
【0157】
例示的な成長因子は、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、基本FGF(bFGF)を含む線維芽細胞成長因子(FGF)、PDGFAA及びPDGF-ABを含む血小板由来成長因子(PDGF)、BMP-2及びBMP-7などを含む骨形成タンパク質(BMP)、肝細胞成長因子(HGF)、形質転換成長因子α(TGF-α)、TGFβ-1及びTGFβ-3を含む形質転換成長因子β(TGF-β)、表皮成長因子(EGF)、顆粒球-マクロファージコロニー-刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー-刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-6(IL-6)、IL-8などがある。
【0158】
人工血管を製造するために使用される少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルに含まれる細胞の個数は、細胞の種類、バイオインク組成物に含まれた細胞栄養成分の含有量などに応じて調節されることができる。
【0159】
また、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲル組成物に含まれる細胞の種類は、上記の方法によって製造しようとする血管の種類に応じて様々に変更可能である。本発明の属する技術分野における通常の技術を有する者であれば、3次元バイオプリンティングを介して製造しようとする血管の種類に応じて適切な細胞を選択して、これに適用することができるであろう。
【0160】
また、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが支持体の内部に吐出されて積層された後には、これを加熱するか、或いは紫外線に露出させるか、或いは架橋結合溶液を添加することにより、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの架橋結合を促進することができる。このような架橋は、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルが、より堅い構造物に完成できるようにし、前記架橋結合を促進するために光学開始剤(photoinitiator)を使用することができる。
【0161】
一方、本発明の他の実施例は、人工血管の製造方法に関するものであり(図20参照)、高分子が第1ヘッドを介して支持体製作ユニットの外周面に吐出されるため、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を形成するステップ(S1100)と、形成された支持体を垂直に固定する固定ステップ(S1200)と、第2ヘッドを垂直に移動させながら、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを支持体の内部に吐出させるステップ(S1300)と、支持体の内部に吐出された、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの一部を除去するステップ(S1400)と、を含む。本発明による人工血管の製造方法によって、多層構造の中空形状を有する人工血管を製造することができる。
【0162】
図21に示すように、3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を形成するステップ(S1100)は、高分子が第1ヘッド1200を介して支持体製作ユニット1100の外周面に吐出され(図21(a)参照)、これにより3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体1010(図21(b)参照)が形成される。前記ステップS1100は、まず、第1ヘッドを支持体製作ユニットの上部に移動させるステップ(S110)が行われる。このとき、第1ヘッド1200は、ヘッド移動ユニット1520によってY軸ステージ1620に沿って移動することにより、支持体製作ユニット1100の上部に位置する。
【0163】
次に、支持体製作ユニットが回転する回転ステップ(S120)が行われる。
【0164】
前記回転するステップ(S120)の後、第1ヘッドを支持体製作ユニットの長さ方向に移動させながら、高分子を支持体製作ユニットの外周面に吐出させる吐出ステップ(S130)が行われる。前記回転ステップ(S120)及び吐出ステップ(S130)は、同時に又は順次行われることが好ましく、第1ヘッド1200がX軸ステージ1610に沿って移動しながら、支持体製作ユニット1100の外周面に高分子を吐出するときに支持体製作ユニット1100が回転することにより、支持体が3次元多孔性構造の中空の円柱状に形成されることができる。その後、以前のステップを介して形成された支持体を垂直に固定するステップ(S200)が行われ、好ましくは、支持体1010は支持台1300に垂直に固定できる。
【0165】
次に、第2ヘッドを垂直に移動させながら、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを支持体の内部に吐出させるステップ(S300)が行われる。図22を参照すると、前記ステップS300は、まず、第2ヘッド1400を支持体1010の上部に移動させた後に行われる。すなわち、第2ヘッド1400は、ヘッド移動ユニット1520によってY軸ステージ1620(図21に示される)に沿って移動して支持体1010の上部に位置することができる。その後、第2ヘッド1400は、垂直に上昇しながら、支持体1010の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出し、これにより、支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面と、第2ヘッド1400に充填された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面とは、同様のパターンを有する。
【0166】
最後に、図23に示すように、支持体の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの一部を除去するステップ(S400)が行われる。ここで、支持体1010の内部に吐出された少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルは、1種以上の物質を含み、多層構造で形成されているため、各層を形成する物質のゲル化条件を異にして、中心部位に該当する一部分を除去することが好ましい。
【0167】
一例として、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルの断面を基準に、外部には、3w/v%のアルギン酸ナトリウム(sodium alginate)が形成され、内部には、温度感受性ヒドロゲルである3%のゼラチンで形成された人工血管を200Mの塩化カルシウムに架橋結合させた後、37℃の液体に入れておくと(図23(a)参照)、ゲル化アルジネートはそのまま形状を維持するが、ゼラチンは溶けて中空形状の人工血管20が形成される(図23(b)参照)
【0168】
図24及び図25を参照すると、本発明によって製造された人工血管1020は、多層構造の中空形状に製造され、プリンティング後にも、人工血管1020の構造と形態を一定に維持可能である。それだけでなく、熱可塑性高分子を含む3次元多孔性構造の中空の支持体を含むことにより、一定レベル以上の弾性を有し、容易に破損せず、手術などの臨床適用時にも支持体の多孔性構造によって生体組織に糸で固定できる。
【0169】
以下、本発明の実施例を考察する。しかし、本発明の範疇が以下の好適な実施例に限定されるものではなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の権利範囲内で、本明細書に記載された内容の種々の変形形態を実施することができる。
【0170】
[実施例1]区画部で区切られたヒドロゲルプリンティング
【0171】
区画部で区切られた第2ヘッドを用いて3次元プリンティングを行うために、区画部材を、3次元プリンティング方法でポリ乳酸(polylactic acid、PLA)を材質にして製造した。
【0172】
この時、第2ヘッドを用いた3次元プリンティング装置を使用するが、18、20、22、25及び27GaugeのノズルサイズでRGBヒドロゲルがプリントされることを共焦点顕微鏡で確認したとともに、第2ヘッドの断面形状と同様の形状に小型化が可能であることを確認した。
【0173】
本発明の実施例によれば、比率は、特定の形状(実施例:Lobule)の全体直径(15mm)から98.7%(200μm)まで小型化が可能であることを確認したとともに、表1にその結果をまとめた。下記数式1のように縮小比率を計算した。
【0174】
[数式1]
縮小比率=100-(第2ヘッドの直径/プリントされた直径)×100(%)
【0175】
【表1】
【0176】
[実施例2]様々な形状の少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルプリンティング
【0177】
多様な形状の区画部を備えた第2ヘッドを用いて3次元プリンティングを行うために、多様な形状の区画部材を、3次元プリンティング方法でポリ乳酸(polylactic acid、PLA)を材質にして製造した。
【0178】
区画部材を備えた第2ヘッドにそれぞれGreen、Blue、Red蛍光パーティクルが含有された3w/v%アルギン酸ナトリウムを入れた結果、それぞれ区画でRGBヒドロゲルがプリントされることを共焦点顕微鏡で確認した。
【0179】
図26には、様々な形状の区画部材を備えた第2ヘッドを用いてRGBヒドロゲルがプリントされることを共焦点顕微鏡で観察した結果をまとめた。
【0180】
図26の結果から確認されるように、3D CADを介してモデル化された様々な形状の区画部材を用いて第2ヘッドを介してプリンティングを行った結果、同一の区画構造を有する結果物をプリントすることができ、様々な形態の組織も模写できることを確認することができる。
【0181】
[実施例3]インク印刷物とインク充填物とを含む第2ヘッド
【0182】
3次元プリンティング装置の第2ヘッドに、3w/v%アルギン酸ナトリウム材質の充填用第1ヒドロゲルを注入した。前記第1ヒドロゲルが注入された第2ヘッドに、長い長さのノズルを備えた3次元プリンティング装置を用いて、Green蛍光パーティクルが含有された3w/v%アルギン酸ナトリウムを第2ヒドロゲルとして3次元プリンティング方法で注入した。
【0183】
前記第2ヘッドに、充填用第1ヒドロゲルと3次元プリントされた第2ヒドロゲルを、圧力を加えて第2吐出ユニットを介して得られる吐出物を用いて3次元プリンティング方法でプリントした。ノズルサイズ(nozzle I.D)が1.0mmを用いて3列に印刷した。ノズルサイズ1mmのノズルを使用した場合、プリントされた断面の長さが30マイクロメートルであり、ノズルサイズ(nozzle I.D)2mmのノズルを使用する場合、プリントされた断面の長さが70マイクロメートルであった。
【0184】
前記印刷物を共焦点顕微鏡で蛍光観察した結果、緑色蛍光パーティクルが含有されたヒドロゲルがプリントされることを共焦点顕微鏡で確認した。吐出された結果物を共焦点顕微鏡で蛍光観察した結果、高解像度で区分されてインクがプリントされることを確認した。
【0185】
[実施例4]様々なサイズのノズルを用いた2つの区画に分けられたヒドロゲルプリンティング
【0186】
実施例3と同様の第2ヘッドを用いた3次元プリンティング装置を使用するが、18、20、22、25、27Gaugeのノズルサイズでヒドロゲルがプリントされることを共焦点顕微鏡で確認した。具体的には、18、20、22、25及び27Gaugeの各ノズル内径は、0.82mm、0.63mm、0.41mm、0.28mm、及び0.1mmであった。
【0187】
第2吐出ユニットを用いて第1ヒドロゲル充填物と第2ヒドロゲル印刷物がノズルサイの変化によるプリンティング結果物を共焦点顕微鏡観察によって確認した結果、第2吐出ユニットの断面形状と同様の形状に小型化が可能であった。本発明の実施例によれば、比率は、特定形状(実施例:Lobule)の全体直径(15mm)から98.7%(200μm)まで小型化可能であり、前記数式2に従って計算した。表2にその結果をまとめた。
【0188】
[数式2]
インク印刷物の縮小比率=(A-B)/A×100(%)
【0189】
(式中、Aは3次元プリンティング法で第2ヘッドに提供された1次インク印刷物の断面直径、Bは印刷インクの2次印刷物の断面直径であり、前記A及びBは同一の長さ単位である)
【0190】
【表2】
【0191】
[実施例5]内腔(lumen)構造を有する人工血管の製作
【0192】
実施例3と同一の第2ヘッドに3w/v%アルギン酸ナトリウムを注入し、長いノズルを用いて、温度感受性ヒドロゲルである3%ゼラチンを、既に注入されたアルジネートの内部にプリンティング方法を用いて注入した。準備された複合ヒドロゲルを200mMの塩化カルシウムにプリントすると、アルギネートのみゲル化が誘導され、ゼラチンはゲル化していないまま存在する。このプリンティング構造体を37℃の液体に入れておくと、ゲル化アルギネートはそのまま形状を維持するが、ゼラチンは溶けて内腔構造を形成した。
【0193】
[実施例8]細胞を含み、多重内腔構造を有する血管の製作
【0194】
実施例7と同様の方法で、第2ヘッドに3w/v%アルギン酸ナトリウムを注入し、長い長さのノズルを備えた3次元プリンティング装置を用いて、平滑筋細胞が1×10Cells/mL以上の濃度で含有された3%アルギネートを、前記充填した3%アルギネート内に注入し、血管内皮細胞1×10Cells/mL以上の濃度で内在した3%ゼラチンを、平滑筋細胞が内在したアルジネートに注入する連続的な方法を介して、血管構造を模写した。
【0195】
特に、血管の大動脈又は大静脈は、四重円筒構造で積み重ねられているが、この方法を介して、容易に四重構造の血管をプリントすることができるだけでなく、サイズ調節も可能である(図27のA、B、C、Dを使用した4重円筒構造模写結果を参照)。それだけでなく、細静脈の二重構造や微小血管の一重構造も同様に模写することができる。
【0196】
以上、本発明の詳細な説明では、具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、具体的な実施例の様々な変形と多様な組み合わせが可能であるのは、本発明の属する分野における通常の知識を有する者にとって当たり前であろう。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明は、熱可塑性高分子を含む3次元多孔性構造の中空の円柱状支持体を製作して垂直に固定した後、支持体の内部に、少なくとも2つの区画に分けられたヒドロゲルを吐出することにより、プリンティング後にも構造と形態を一定に維持可能であり、多層構造の中空形状を有する人工血管を製造することができる人工血管製造用3Dプリンティングシステム、及びそれを用いた人工血管の製造方法を提供するためのものであり、多層構造の中空形状を有する人工血管を製造することができ、プリンティング後にも人工血管の構造と形態を一定に維持するこことができるという効果があるので、産業上利用可能性がある。
【符号の説明】
【0198】
1 プリンティング組成物
3 ヘッド
4 ヘッド移動ユニット
5 ステージ
200 支持板
201 内部固定部
202 外部固定部
203 ボルト
204 ねじ部
205 弾性チューブ
206 タップホール
210 支持体固定装置
220 支持体
221 第1固定プレート
222 第2固定プレート
223 ガイド
224 密着部
225 密着溝
1001、1002、1003 人工血管製造用3Dプリンティングシステム
1010 支持体
1020 人工血管
1100 支持体製作ユニット
1110 回転軸
1120 モーター
1130 ベアリング
1200 第1ヘッド
1210 第1空気圧シリンダ
1220 第1吐出ユニット
1230 温度制御ユニット
1300 支持台
1310 固定ユニット
1311 ボルト
1312 弾性チューブ
1320 絞り
1321 ホール
1330 昇降手段
1400 第2ヘッド
1410 第2空気圧シリンダ
1420 第2吐出ユニット
1430 温度調節ユニット
1440 区画部材
1450 中空部
1630、1640 Z軸ステージ
1510、1520、1530、1540、1550 ヘッド移動ユニット
1610 X軸ステージ
1620 Y軸ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27