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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】災害情報表示システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20230628BHJP
【FI】
G06Q50/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023016253
(22)【出願日】2023-02-06
【審査請求日】2023-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523041768
【氏名又は名称】廣田 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】廣田 秀明
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-197978(JP,A)
【文献】特開2022-043420(JP,A)
【文献】特開2011-151656(JP,A)
【文献】特開2008-211419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動応答システムによって受け付けられた災害情報に関するレコードが時系列で蓄積されている災害情報データベースと、
前記災害情報データベースにアクセス可能な管理サーバーと、
前記管理サーバーからの表示指示に応答して、災害対応の優先度が高い災害情報を表示する災害状況画面を出力する表示出力装置と、
を備え、
前記災害情報データベースに蓄積された各レコードには、要請区分と救助待機者数とが前記災害情報として記録されており、
前記管理サーバーは、
前記災害情報データベースに蓄積されたレコードの前記要請区分を参照し、前記要請区分が救助要請に該当する複数のレコードを救助要請レコードとして抽出し、
前記救助要請レコードに記録された前記救助待機者数に基づいて前記救助要請レコードの優先度をそれぞれ決定し、優先度の高い順に前記救助要請レコードの内容を列挙した画面を前記災害状況画面として前記表示出力装置に出力させることを特徴とする災害情報表示システム。
【請求項2】
前記各レコードには、残り時間が前記災害情報として更に記録されており、
前記管理サーバーは、前記要請区分が前記救助要請に該当し且つ残り時間がゼロでない又は不明である複数のレコードを前記救助要請レコードとして抽出することを特徴とする請求項1に記載の災害情報表示システム。
【請求項3】
前記各レコードには、残り時間が前記災害情報として更に記録されており、
前記管理サーバーは、前記要請区分が前記救助要請に該当し且つ残り時間がゼロの複数のレコードを前記救助要請レコードとして抽出することを特徴とする請求項1に記載の災害情報表示システム。
【請求項4】
前記各レコードには、前記救助待機者数の内訳として負傷者数と小学生以下の人数と体力的弱者数とが前記災害情報として更に記録されており、
前記管理サーバーは、前記救助待機者数と前記負傷者数と前記小学生以下の人数と前記体力的弱者数とに基づいて前記救助要請レコードの優先度をそれぞれ決定し、優先度の高い順に前記救助要請レコードの内容を列挙した画面を前記災害状況画面として前記表示出力装置に出力させることを特徴とする請求項1に記載の災害情報表示システム。
【請求項5】
前記各レコードには、前記負傷者数の内訳として重症者数が前記災害情報として更に記録されており、
前記管理サーバーは、前記救助待機者数と前記負傷者数と前記重症者数と前記小学生以下の人数と前記体力的弱者数とを用いて前記救助要請レコードの優先度を決定し、
前記優先度の決定において、前記重症者数と前記小学生以下の人数と前記体力的弱者数との重み付けは、前記救助待機者数と前記負傷者数との重み付けよりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の災害情報表示システム。
【請求項6】
自動応答システムによって受け付けられた災害情報に関するレコードが時系列で蓄積されている災害情報データベースと、
前記災害情報データベースにアクセス可能な管理サーバーと、
前記管理サーバーからの表示指示に応答して、災害対応の優先度が高い災害情報を表示する災害状況画面を出力する表示出力装置と、
を備え、
前記災害情報データベースに蓄積された各レコードには、要請区分と被害状況とが前記災害情報として記録されており、
前記管理サーバーには、前記災害情報データベースに蓄積されたレコードの中から緊急性の高いレコードを抽出するための緊急ワードが複数記憶されており、
前記管理サーバーは、
前記災害情報データベースに蓄積されたレコードの前記要請区分を参照し、前記要請区分が被害報告に該当する複数のレコードを被害報告レコードとして抽出し、
前記被害報告レコードの中から前記被害状況のテキストに前記緊急ワードが含まれるレコードを優先表示レコードとして特定し、前記優先表示レコードを優先して前記被害報告レコードの内容を列挙した画面を前記災害状況画面として前記表示出力装置に出力させることを特徴とする災害情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害情報表示システムに関し、より詳細には、自動応答システムによってデータベースに蓄積された災害情報の中から優先度の高いものを表示出力装置に表示する災害情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災や災害発生の緊急時に、経営者層、管理権原者、防火管理者、防災管理者らが、管理領域内の防火・防災管理業務の実施状況を迅速に確認、把握することができる防火・防災管理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1において、制御部(11)は、火災が発生した場所を特定する情報を含む火災発生場所情報を取得する(図10のステップS11)。そして、制御部(11)は、取得した火災発生場所情報に基づいて、管理者情報データベース(12A)を照会し、該火災発生場所の管理者を取得する(ステップS12)。次に、制御部(11)は、取得した管理者の管理者端末識別情報を管理者情報データベース(12A)から取得し(ステップS13)、取得した管理者端末情報に基づき、該管理者端末にプッシュ通知の配信要求を、プッシュ通知サービスを提供する事象者サーバーへ送信する(ステップS14)。管理者端末(3)では、当該事業者サーバーから受信したプッシュ通知により、火災が発生した旨の通知が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-98477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、河川洪水や土砂災害、大地震による家屋崩壊や地崩れといった大災害が発生すると、災害発生の知らせや救助要請に加え、災害発生の危険が迫っていることを通報する電話が短時間の間に集中する。このような事態に対応すべく、電話機増設や電話対応者増員を実施したり、更に事態が悪化した場合には応援要員を割り当てたりして対応することが想定される。
【0006】
ただ、電話機を何台増設するべきであるか、あるいは、対応要員をどの程度増員すべきであるかは必ずしも明確ではない。例えば、電話機を5台から10台に増設したとしても、10台全てが話中で更に11本目がかかってくれば、11本目の相手方には話中になる。また、仮に電話対応者を倍に増員したとしても、全員が同時に電話中や手が離せない状況に陥れば、新たな電話が鳴ったとしても誰も対応できず、相手方には呼び出し音が鳴り続ける事態になる。
【0007】
以上のように、電話回線が混み合ってパンク状態になったり、電話対応者が新たな通報に速やかに対応できない状況になったりすれば、人命を左右する緊急性の高い通報を逃すおそれがある。この点、上述したような状況において、電話自動応答システムを用いて「只今、大変混み合っており……」などの録音メッセージを流し、音声メッセージを順次預かることが考えられる。
【0008】
しかしながら、録音された音声メッセージを担当者が個別に確認し、人命を左右する緊急性の高い通報を見つけ出すには膨大な時間を要する。そのため、単に音声メッセージを預かったとしても、緊急性の高い通報を特定して迅速に対応することは困難である。
【0009】
そこで、本発明は、自動応答システムによってデータベースに蓄積された災害情報の中から優先度の高いものを担当者に迅速に把握させることが可能な災害情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、自動応答システムによって受け付けられた災害情報に関するレコードが時系列で蓄積されている災害情報データベースと、前記災害情報データベースにアクセス可能な管理サーバーと、前記管理サーバーからの表示指示に応答して、災害対応の優先度が高い災害情報を表示する災害状況画面を出力する表示出力装置と、を備え、前記災害情報データベースに蓄積された各レコードには、要請区分と救助待機者数とが前記災害情報として記録されており、前記管理サーバーは、前記災害情報データベースに蓄積されたレコードの前記要請区分を参照し、前記要請区分が救助要請に該当する複数のレコードを救助要請レコードとして抽出し、前記救助要請レコードに記録された前記救助待機者数に基づいて前記救助要請レコードの優先度をそれぞれ決定し、優先度の高い順に前記救助要請レコードの内容を列挙した画面を前記災害状況画面として前記表示出力装置に出力させることを特徴とする災害情報表示システムを提供している。
【0011】
ここで、前記各レコードには、残り時間が前記災害情報として更に記録されており、前記管理サーバーは、前記要請区分が前記救助要請に該当し且つ残り時間がゼロでない又は不明である複数のレコードを前記救助要請レコードとして抽出するのが好ましい。
【0012】
また、前記各レコードには、残り時間が前記災害情報として更に記録されており、前記管理サーバーは、前記要請区分が前記救助要請に該当し且つ残り時間がゼロの複数のレコードを前記救助要請レコードとして抽出するのが好ましい。
【0013】
また、前記各レコードには、前記救助待機者数の内訳として負傷者数と小学生以下の人数と体力的弱者数とが前記災害情報として更に記録されており、前記管理サーバーは、前記救助待機者数と前記負傷者数と前記小学生以下の人数と前記体力的弱者数とに基づいて前記救助要請レコードの優先度をそれぞれ決定し、優先度の高い順に前記救助要請レコードの内容を列挙した画面を前記災害状況画面として前記表示出力装置に出力させるのが好ましい。
【0014】
更に、前記各レコードには、前記負傷者数の内訳として重症者数が前記災害情報として更に記録されており、記管理サーバーは、前記救助待機者数と前記負傷者数と前記重症者数と前記小学生以下の人数と前記体力的弱者数とを用いて前記救助要請レコードの優先度を決定し、前記優先度の決定において、前記重症者数と前記小学生以下の人数と前記体力的弱者数との重み付けは、前記救助待機者数と前記負傷者数との重み付けよりも大きいのが好ましい。
【0015】
また、本発明は、自動応答システムによって受け付けられた災害情報に関するレコードが時系列で蓄積されている災害情報データベースと、前記災害情報データベースにアクセス可能な管理サーバーと、前記管理サーバーからの表示指示に応答して、災害対応の優先度が高い災害情報を表示する災害状況画面を出力する表示出力装置と、を備え、前記災害情報データベースに蓄積された各レコードには、要請区分と被害状況とが前記災害情報として記録されており、前記管理サーバーには、前記災害情報データベースに蓄積されたレコードの中から緊急性の高いレコードを抽出するための緊急ワードが複数記憶されており、前記管理サーバーは、前記災害情報データベースに蓄積されたレコードの前記要請区分を参照し、前記要請区分が被害報告に該当する複数のレコードを被害報告レコードとして抽出し、前記被害報告レコードの中から前記被害状況のテキストに前記緊急ワードが含まれるレコードを優先表示レコードとして特定し、前記優先表示レコードの内容を優先的に列挙した画面を前記災害状況画面として前記表示出力装置に出力させることを特徴とする災害情報表示システムを更に提供している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、災害情報データベースに蓄積されたレコードの要請区分を参照し、救助要請に該当する複数のレコードが救助要請レコードとして抽出される。抽出された救助要請レコードに記録された救助待機者数に基づいて救助要請レコードの優先度がそれぞれ決定される。そして、優先度の高い順に救助要請レコードの内容を列挙した画面が災害状況画面として表示出力装置に出力される。そのため、自動応答システムによってデータベースに蓄積された災害情報の中から優先度の高いものを担当者に迅速に把握させることが可能である。
【0017】
なお、本発明の災害情報表示システムのように、自動応答システムによってデータベースに蓄積された災害情報の中から優先度の高いものを担当者に迅速に把握させるための具体的構成は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る災害情報表示システムの概略構成を示すシステム構成図。
図2】災害情報データベースに蓄積されたレコードの一例を示す図。
図3】残り時間が所定時間以上又は不明な救助要請レコードの中から優先度の高い災害情報を表示出力装置に表示する処理を示すフローチャート。
図4図3のフローチャートの処理によって表示出力装置に表示される災害状況画面の一例を示す図。
図5】残り時間がゼロの救助要請レコードの中から優先度の高い災害情報を表示出力装置に表示する処理を示すフローチャート。
図6図5のフローチャートの処理によって表示出力装置に表示される災害状況画面の一例を示す図。
図7】被害報告レコードの中から優先度の高い災害情報を表示出力装置に表示する処理を示すフローチャート。
図8図7のフローチャートの処理によって表示出力装置に表示される災害状況画面の一例を示す図。
図9】救援・物資要請のレコードの内容を時系列で列挙した災害状況画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<1.実施形態>
本発明の実施形態による災害情報表示システムについて、図1から図9に基づき説明する。本実施形態における災害情報表示システムは、自動応答システムによってデータベースに蓄積された災害情報の中から優先度の高いものを表示出力装置に表示するためのシステムである。
【0020】
なお、本実施形態では、IVR(Interactive Voice Response)、音声ガイダンス及び自動応答などの電話自動応答システムによって災害情報が取得されるものとする。ただし、これに限定されず、チャットボットなどの自動会話プログラムによって災害情報が取得されるようにしてもよい。
【0021】
以下では、本発明による災害情報表示システムの一例として、図1に示す災害情報表示システム1を例示する。図1に示すように、災害情報表示システム1は、災害情報データベース2と、管理サーバー3と、表示出力装置4とを備えて構成される。
【0022】
災害情報データベース2は、電話自動応答システムによって受け付けられた災害情報に関するレコードが時系列で蓄積されたデータベースである。詳細には、電話自動応答システムで受け付けた1件の災害情報が1つのレコードとして記録される。つまり、災害情報データベース2には、電話自動応答システムで受け付けた災害情報の数だけレコードが蓄積されている。すなわち、電話自動応答システムを介して100件の災害情報が受け付けられると、災害情報データベース2には、100件の災害情報をそれぞれ記録した100レコードが蓄積されることになる。
【0023】
図2に示すように、災害情報データベース2には、各レコードのフィールド(項目)として、「No.」、「年月日」、「時刻」、「要請区分」、「状況」、「救助待機者数」、「うち負傷者数」、「(負傷者数のうち重症者数)」、「うち小学生以下」、「うち体力的弱者」及び「残り時間」が設けられている。
【0024】
「No.」のフィールドには、各レコードの識別番号が記録される。具体的には、「No.」には、電話自動応答システムを介して災害情報が受け付けられた順に番号が自動で割り振られる。
【0025】
「年月日」及び「時刻」のフィールドには、電話自動応答システムで応答した年月日及び日時が記録される。具体的には、「年月日」及び「時刻」には、電話自動応答システムを介して災害情報が受け付けられた日時が自動で記録される。
【0026】
「要請区分」のフィールドには、「救助要請」、「被害報告」及び「救援・物資要請」の何れかがが記録される。なお、「救助要請」、「被害報告」及び「救援・物資要請」は、電話自動応答システムにおいて個別のプッシュ番号(例えば、「救助要請」=「1」、「被害報告」=「2」、「救援・物資要請」=「3」)に割り振られているものとする。そして、通報者によって特定のプッシュ番号(例えば「1」)が選択されると、そのプッシュ番号に対応する区分(例えば「救助要請」)が「要請区分」のフィールドに記録されるものとする。
【0027】
「状況」のフィールドには、電話自動応答システムで録音した被害状況の音声データをテキスト化したテキストデータが記録される。なお、音声データは、既存の変換プログラムを用いて自動でテキストデータに変換されるものとする。
【0028】
「救助待機者数」のフィールドには、救助待機者数が記録される。なお、救助待機者数は、電話自動応答システムにおいて通報者が人数を入力した後に#(シャープボタン)を押下することなどで入力されるものとする。
【0029】
「うち負傷者数」のフィールドには、救助待機者数のうち負傷者数が記録される。なお、負傷者数は、電話自動応答システムにおいて救助待機者数と同様の方法で入力されるものとする。
【0030】
「(負傷者数のうち重症者数)」のフィールドには、負傷者数のうち重症者数が記録される。なお、重症者数は、電話自動応答システムにおいて救助待機者数と同様の方法で入力されるものとする。
【0031】
「うち小学生以下」のフィールドには、救助待機者数のうち小学生以下の人数が記録される。なお、小学生以下の人数は、電話自動応答システムにおいて救助待機者数と同様の方法で入力されるものとする。
【0032】
「うち体力的弱者」のフィールドには、救助待機者数のうち体力的弱者の人数が記録される。なお、体力的弱者の人数は、電話自動応答システムにおいて救助待機者数と同様の方法で入力されるものとする。ここで、体力的弱者とは、車椅子を使用するなど身体に障害がある人、身体能力が低い高齢者、今回の災害で負傷(骨折等)した人などを意味する。
【0033】
「残り時間」のフィールドには、すでに発生していることを示す「0」、1時間以内に発生する可能性があることを示す「1」及び不明であることを示す「98」の何れかが記録される。すなわち、本実施形態において、「残り時間」とは、災害発生までに残された時間を意味する。ここで、災害発生までに残された時間とは、例えば、河川の水位が上昇し堤防を越えるまでの時間である。あるいは、自宅の1階はすでに浸水し、今は2階に避難している状況において、2階も浸水すると思われるまでの時間である。すなわち、現在のところ辛うじて難を免れているものの、それがどれくらいの間、耐えられると思われるかの時間(差し迫った状況も含んだもの)である。また、本実施形態では、通報者が残り時間の判定や推察をすることができない場合には、残り時間が不明(「98」)という取り扱いをする。これには差し迫っている状況も想定されるため、システム上、残り時間が所定時間以上と同様の扱いをする。なお、「0」、「1」及び「98」は、電話自動応答システムにおいて個別のプッシュ番号に割り振られているものとする。そして、通報者によって特定のプッシュ番号が選択されると、そのプッシュ番号に対応する区分が「残り時間」のフィールドに記録されるものとする。
【0034】
ここでは、図2に示すように、電話自動応答システムを介して12件の災害情報が受け付けられ、それらに対応する12レコードが災害情報データベース2に記録されている場合を例示する。
【0035】
管理サーバー3は、演算装置、記憶装置及び入力装置などを備える公知のサーバーコンピュータによって構成される。管理サーバー3は、災害情報データベース2にアクセス可能(すなわち、災害情報データベース2に蓄積されたレコードの情報を取得可能)に構成されている。
【0036】
表示出力装置4は、各種画像データに基づく画面を表示する装置であり、公知のディスプレイや公知のプロジェクター及びスクリーンなどで構成される。
【0037】
続いて、図3のフローチャートを参照しながら、所定条件で抽出した救助要請レコードの内容を優先度の高い順に列挙した災害状況画面を表示出力装置4に表示させる処理について説明する。
【0038】
まず、ステップS11において、管理サーバー3は、災害情報データベース2に記録される全レコードの「要請区分」及び「残り時間」を参照し、「要請区分」が「救助要請」であり且つ「残り時間」が「0」以外(つまり、「1」又は「98」)の複数のレコードを救助要請レコードとして抽出する。なお、「残り時間」が「0」以外とは、残り時間が多少なりとも残っているか、不明であることを示している。
【0039】
図2に示すように、12レコードのうち「要請区分」が「救助要請」であり且つ「残り時間」が「0」以外のものは、「No.」が「1」、「2」、「5」の3レコードである。よって、管理サーバー3は、「No.」が「1」、「2」、「5」の3レコードを救助要請レコードとして抽出する。
【0040】
次に、ステップS12において、管理サーバー3は、救助要請レコードとして抽出した3レコードの優先度を決定する。具体的には、管理サーバー3は、次の優先度計算式を用いて各レコードの優先度を算出する。
(数1)
【0041】
優先度=救助待機者数×0.1+負傷者数×0.1+重症者数×0.4+(小学生以下の人数+体力的弱者数)×0.4
【0042】
上記計算式によれば、「No.」が「1」であるレコードの優先度が「0.7」、「No.」が「2」であるレコードの優先度が「1.1」「No.」が「5」であるレコードの優先度が「1.3」になる。つまり、救助要請レコードを優先度の高い順に並べると、「No.」が「5」のレコード、「2」のレコード、「1」のレコードになる。
【0043】
ステップS13において、管理サーバー3は、図4に示すように、ステップS12で決定した優先度の高い順(「No.」が「5」、「2」、「1」の順)に救助要請レコードの内容を列挙した災害状況画面SC1を表示出力装置4に出力する。災害状況画面SC1においては、救助要請レコードの内容が優先度の高い順に上から下に列挙されている。
【0044】
続いて、図5のフローチャートを参照しながら、図3とは別の条件で抽出した救助要請レコードの内容を優先度の高い順に列挙した災害状況画面を表示出力装置4に表示させる処理について説明する。
【0045】
まず、ステップS21において、管理サーバー3は、災害情報データベース2に記録される全レコードの「要請区分」及び「残り時間」を参照し、「要請区分」が「救助要請」であり且つ「残り時間」が「0」である複数のレコードを救助要請レコードとして抽出する。なお、「残り時間」が「0」とは、残り時間が全く残っておらず、既に災害が発生している状況を示す。ここで、「既に災害が発生した状況」とは、例えば、隣家が土砂の下敷きになった状況や、道路が陥没して自動車がその中に転落した状況である。
【0046】
図2に示すように、12レコードのうち「要請区分」が「救助要請」であり且つ「残り時間」が「0」のものは、「No.」が「8」、「10」、「11」の3レコードである。よって、管理サーバー3は、「No.」が「8」、「10」、「11」の3レコードを救助要請レコードとして抽出する。
【0047】
次に、ステップS22において、管理サーバー3は、救助要請レコードとして抽出した3レコードの優先度を決定する。具体的には、管理サーバー3は、上述した優先度計算式を用いて各レコードの優先度を算出する。
【0048】
上述した優先度計算式を用いて優先度を計算すると、「No.」が「8」であるレコードの優先度が「0」、「No.」が「10」であるレコードの優先度が「1.2」「No.」が「11」であるレコードの優先度が「0.2」になる。つまり、救助要請レコードを優先度の高い順に並べると、「No.」が「10」のレコード、「11」のレコード、「8」のレコードになる。
【0049】
ステップS23において、管理サーバー3は、図6に示すように、ステップS22で決定した優先度の高い順(「No.」が「10」、「11」、「8」の順)に救助要請レコードの内容を列挙した災害状況画面SC2を表示出力装置4に出力する。災害状況画面SC2においては、救助要請レコードの内容が優先度の高い順に上から下に列挙されている。
【0050】
続いて、図7のフローチャートを参照しながら、緊急ワードを含む緊急対応レコードの内容を列挙した災害状況画面を表示出力装置4に表示させる処理について説明する。
【0051】
まず、ステップS31において、管理サーバー3は、災害情報データベース2に記録される全レコードの「要請区分」を参照し、「要請区分」が「被害報告」である複数のレコードを被害報告レコードとして抽出する。
【0052】
図2に示すように、12レコードのうち「要請区分」が「被害報告」であるものは、「No.」が「7」、「9」、「12」の3レコードである。よって、管理サーバー3は、「No.」が「7」、「9」、「12」の3レコードを被害報告レコードとして抽出する。
【0053】
次に、ステップS32において、管理サーバー3は、抽出された被害報告レコードの中から「状況」のテキストに緊急ワードが含まれるレコードを特定する。なお、緊急ワードは、管理サーバー3のメモリーに予め登録されているものとする。
【0054】
本実施形態では、「土砂災害」の緊急ワードとして、「下敷き」、「生き埋め」、「崩壊」及び「崩落」が登録されているものとする。また、「浸水」の緊急ワードとして、「溺れる」、「避難」及び「屋根の上」が登録されているものとする。また、「洪水」の緊急ワードとして、「家が流される」、「流されそう」、「孤立」、「越水」、「破堤」及び「堤防を越える」が登録されているものとする。更に、「共通」の緊急ワードとして、「救助」、「人命」及び「危険」が登録されているものとする。
【0055】
被害報告レコードとして抽出された3レコードのうち、「No.」が「7」のレコードの「状況」のテキストには、緊急ワード「崩落」が含まれている。また、「No.」が「12」のレコードの「状況」のテキストには、緊急ワード「堤防を越える」が含まれている。一方、「No.」が「9」のレコードの「状況」のテキストには、緊急ワードが1つも含まれていない。そのため、管理サーバー3は、3レコードのうち「No.」が「7」、「12」の2レコードを緊急ワードが含まれるレコードとして特定する。
【0056】
ステップS33において、管理サーバー3は、図8に示すように、特定されたレコード(ここでは、「No.」が「7」、「12」の2レコード)の内容を優先的に列挙した災害状況画面SC3を表示出力装置4に出力する。災害状況画面SC3においては、特定されたレコード(「No.」が「7」、「12」の2レコード)の内容が上側に表示され、特定されなかったレコード(「No.」が「9」のレコード)の内容がその下に表示されている。なお、「No.」が「7」、「12」の2レコードに関しては、時系列順に上から下に表示されている。
【0057】
管理サーバー3は、上述した災害状況画面SC1~SC3に加え、図9に示すように、「要請区分」が「救援・物資要請」である複数のレコードの内容を時系列順に表示した災害状況画面SC4を表示出力装置4に出力することも可能である。
【0058】
上述した実施形態によれば、災害情報データベース2に蓄積された全レコードの「要請区分」及び「残り時間」を参照し、「要請区分」が「救助要請」であり且つ「残り時間」が「0」以外の複数のレコードが救助要請レコードとして抽出される。その後、抽出された救助要請レコードの優先度が優先度計算式によってそれぞれ決定される。そして、優先度の高い順に救助要請レコードの内容を列挙した画面が災害状況画面SC1として表示出力装置に出力される。
【0059】
また、上述した実施形態によれば、災害情報データベース2に蓄積された全レコードの「要請区分」及び「残り時間」を参照し、「要請区分」が「救助要請」であり且つ「残り時間」が「0」である複数のレコードが救助要請レコードとして抽出される。その後、抽出された救助要請レコードの優先度が優先度計算式によってそれぞれ決定される。そして、優先度の高い順に救助要請レコードの内容を列挙した画面が災害状況画面SC2として表示出力装置に出力される。
【0060】
更に、上述した実施形態によれば、災害情報データベース2に蓄積された全レコードの「要請区分」を参照し、「要請区分」が「被害報告」である複数のレコードを被害報告レコードとして抽出する。抽出された被害報告レコードの中から「状況」のテキストに緊急ワードが含まれるレコードを特定する。そして、緊急ワードが含まれるレコードの内容を優先的に列挙した画面が災害状況画面SC3として表示出力装置に出力される。
【0061】
そのため、自動応答システムによってデータベースに蓄積された災害情報の中から優先度の高いものを担当者(災害対策本部の管理者等)に把握させることが可能である。これにより、担当者は、限られた人材や機材を効率的に配分させることが可能になり、ひいては、より多くの人命を救出することができる。
【0062】
<2.変形例>
本発明による災害情報表示システムは上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0063】
例えば、上述した実施形態では、災害状況画面SC1,SC2,SC3,SC4が個別に表示される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、災害状況画面SC1,SC2を1つの画面内に同時出力させたり、災害状況画面SC3,SC4を1つの画面内に同時出力させたりするようにしてもよい。あるいは、災害状況画面SC1,SC2,SC3,SC4を1つの画面内に同時出力させるようにしてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では、救助要請レコードの優先度が優先度計算式によってそれぞれ決定される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、「救助待機者数」に着目し、「救助待機者数」が多いほど優先度が高くなるようにしてもよい。もちろん、「重症者数」に着目し、「重症者数」が多いほど優先度が高くなるようにしてもよく、あるいは、「小学生以下の人数+体力的弱者数」に着目し、「小学生以下の人数+体力的弱者数」が多いほど優先度が高くなるようにしてもよい。
【0065】
また、上述した優先度計算式は一例に過ぎず、適宜パラメータ(重み付け)を変更することが可能である。
【0066】
また、上述した実施形態の災害情報データベース2の各フィールド(項目)は、あくまでも一例に過ぎない。例えば、災害情報データベース2のフィールドとして被災場所の住所が更に記録されるようにしてもよい。そうすることで、地図アプリケーションを用いて地図上に被災場所をプロット(位置表示)することが可能になる。
【0067】
また、上述した実施形態では、災害情報表示システム1が単一のシステムとして機能する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、災害情報表示システム1が他の災害対応システムと連携するようにしてもよい。他の災害対応システムと連携することで、例えば、事案の対応状況を関係者間でリアルタイムに共有することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 災害情報表示システム
2 災害情報データベース
3 管理サーバー
SC1,SC2,SC3,SC4 災害状況画面
【要約】
【課題】自動応答システムによってデータベースに蓄積された災害情報の中から優先度の高いものを担当者に迅速に把握させることが可能な災害情報表示システムの提供。
【解決手段】災害情報表示システム1は、災害情報データベース2と管理サーバー3と災害状況画面を出力する表示出力装置4とを備える。災害情報データベース2には、自動応答システムによって受け付けられた災害情報に関するレコードが時系列で蓄積されている。災害情報データベース2に蓄積された各レコードには、要請区分と救助待機者数とが記録されている。管理サーバー3は、救助要請に該当する複数のレコードを救助要請レコードとして抽出し、救助要請レコードの優先度を救助待機者数に基づいてそれぞれ決定する。管理サーバー3は、優先度の高い順に救助要請レコードの内容を列挙した災害状況画面を表示出力装置4に出力させる。
【選択図】図1
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図9