(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/339 20210101AFI20230628BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20230628BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20230628BHJP
A61B 5/361 20210101ALI20230628BHJP
A61B 5/364 20210101ALI20230628BHJP
【FI】
A61B5/339
A61B5/332
A61B5/352 100
A61B5/361
A61B5/364
(21)【出願番号】P 2023531508
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2023000046
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2022002935
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519409257
【氏名又は名称】株式会社カルディオインテリジェンス
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】高田 智広
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩久
(72)【発明者】
【氏名】田村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】武智 峰樹
(72)【発明者】
【氏名】波多野 薫
(72)【発明者】
【氏名】幸 優佑
(72)【発明者】
【氏名】岡本 克郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 茜
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-313478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0083706(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110037688(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0192941(US,A1)
【文献】TANIGUCHI, Hirohisa et al.,Explainable Artificial Intelligence Model for Diagnosis of Atrial Fibrillation Using Holter Electroc,International Heart Journal,2021年05月29日,Vol.62, No.3,pp.534-539,Online ISSN:1349-3299, DOI:10.1536/ihj.21-094
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得する取得部と、
前記電気的活動が測定された期間の中から、複数の前記値のばらつきが所定の条件を満たす期間を、対象期間として選択する選択部と、
前記対象期間に測定された複数の前記値に対応する複数の点を表示部に表示させる表示制御部と、
を有し、
所定の基準点と前記複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する前記値に対応しており、
前記基準点から前記複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の前記値が測定された時刻の順に、前記基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転する、
表示制御装置。
【請求項2】
被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得する取得部と、
対象期間に測定された複数の前記値に対応する複数の点を表示部に表示させる表示制御部と、
を有し、
所定の基準点と前記複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する前記値に対応しており、
前記基準点から前記複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の前記値が測定された時刻の順に、前記基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転し、
前記取得部は、前記複数の点のうち隣り合う2つの点を線で結ぶことによって生成された折れ線の形状が真円に近いほど小さい値となる真円度を算出し、
前記表示制御部は、前記真円度が閾値以下の前記複数の点を、前記真円度が前記閾値より大きい前記複数の点とは異なる表示態様で、前記表示部に表示させる、
表示制御装置。
【請求項3】
被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得する取得部と、
対象期間に測定された複数の前記値に対応する複数の点を表示部に表示させる表示制御部と、
を有し、
所定の基準点と前記複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する前記値に対応しており、
前記基準点を基準とした2つの前記点の間の角度は、当該2つの点のうち一方に対応する前記値に比例する角度であり、
前記基準点から前記複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の前記値が測定された時刻の順に、前記基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転する、
表示制御装置。
【請求項4】
被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得する取得部と、
対象期間に測定された複数の前記値に対応する複数の点を表示部に表示させる表示制御部と、
を有し、
所定の基準点と前記複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する前記値に対応しており、
前記基準点から前記複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の前記値が測定された時刻の順に、前記基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転し、
前記表示制御部は、前記値が測定されたことに応じて、前記値に対応する前記点を逐次前記表示部に表示させ、
前記表示制御部は、前記値に対応する前記点を逐次前記表示部に表示させている間に、複数の前記値のばらつきが所定の閾値以上になった場合に、前記値に対応する前記点を逐次前記表示部に表示させることを停止する、
表示制御装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記複数の点のうち隣り合う2つの点を線で結ぶことによって生成された折れ線を、前記表示部に表示させる、
請求項1
から4のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記値が測定された時刻に応じて、当該値に対応する前記点又は当該点に接続された線の表示態様を変化させる、
請求項1
から4のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記基準点を中心とした、所定の間隔で配置された複数の同心円を、前記複数の点とともに前記表示部に表示させる、
請求項1
から4のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記電気的活動が測定された期間の中から、前記被分析者に心房細動又は期外収縮が発生していると推定された期間を、前記対象期間として選択する選択部をさらに有する、
請求項
2から4のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【請求項9】
学習対象者に心房細動又は期外収縮が発生していると判断された期間における複数の前記値に対応する前記複数の点の位置関係と、前記学習対象者に心房細動又は期外収縮が発生していないと判断された期間における複数の前記値に対応する前記複数の点の位置関係と、を用いて機械学習した機械学習モデルに、前記被分析者の複数の前記値に対応する前記複数の点の位置関係を入力することによって、前記被分析者に心房細動又は期外収縮が発生しているか否かを推定する推定部をさらに有する、
請求項
8に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記被分析者に心房細動又は期外収縮が発生していると推定された前記対象期間の前記複数の点を、前記被分析者に心房細動又は期外収縮が発生していると推定されなかった前記対象期間の前記複数の点とは異なる表示態様で、前記表示部に表示させる、
請求項
8に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記閾値は、前記対象期間が長いほど又は前記複数の点の数が多いほど小さい値である、
請求項
2に記載の表示制御装置。
【請求項12】
前記表示制御部は、前記対象期間のうち第1期間の前記複数の点の上に、前記対象期間のうち第2期間の前記複数の点を重畳して、前記表示部に表示させる、
請求項1
から4のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【請求項13】
前記被分析者を装着する前記電気的活動を測定するための装置に設けられたセンサが測定した加速度に基づいて、前記被分析者が前記装置を叩いたことを示すタップイベントを検出する検出部と、
前記電気的活動が測定された期間の中から、前記タップイベントが検出された時刻を基準とした期間を、前記対象期間として選択する選択部と、
をさらに有する、
請求項
2から4のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【請求項14】
前記タップイベントが検出された時刻を基準とした期間に測定された前記電気的活動に基づいて、前記被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する推定部をさらに有し、
前記表示制御部は、前記推定部が推定した前記被分析者に心房細動が発生しているか否かを示す情報を、前記表示部に表示させる、
請求項
13に記載の表示制御装置。
【請求項15】
前記検出部は、前記電気的活動により前記センサに生じる加速度よりも大きな閾値以上の加速度を前記センサが測定したことを条件として前記タップイベントを検出する、
請求項
13に記載の表示制御装置。
【請求項16】
プロセッサが実行する、
被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得するステップと、
前記電気的活動が測定された期間の中から、複数の前記値のばらつきが所定の条件を満たす期間を、対象期間として選択するステップと、
前記対象期間に測定された複数の前記値に対応する複数の点を表示部に表示させるステップと、
を有し、
所定の基準点と前記複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する前記値に対応しており、
前記基準点から前記複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の前記値が測定された時刻の順に、前記基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転する、
表示制御方法。
【請求項17】
コンピュータを、
被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得する取得部と、
前記電気的活動が測定された期間の中から、複数の前記値のばらつきが所定の条件を満たす期間を、対象期間として選択する選択部と、
前記対象期間に測定された複数の前記値に対応する複数の点を表示部に表示させる表示制御部と、
として機能させ、
所定の基準点と前記複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する前記値に対応しており、
前記基準点から前記複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の前記値が測定された時刻の順に、前記基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の電気的活動に関する情報を表示するための表示制御装置、表示制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者等の被分析者が身体に装着して長時間にわたって心電図を測定することができるホルター心電計が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、医師等の分析者は、心電計が測定した心電図においてRR間隔等の心臓の電気的活動を示す値の時間変化を目視で確認することによって、被分析者に心房細動等の異常が発生しているか否かを判断していた。しかしながら、心電図のグラフでは、横軸が時間を表し、縦軸が心臓の電気的興奮を表しているため、分析者はグラフ上で離れた位置にある波形同士を比較する必要があり、心臓の電気的活動を示す値の時間変化を直感的に把握しづらい。そのため、分析者が心臓の電気的活動を示す値の時間変化を見逃しなく確認することは難しい場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、分析者が心臓の電気的活動を示す値の時間変化を確認しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の表示制御装置は、被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得する取得部と、対象期間に測定された複数の前記値に対応する複数の点を表示部に表示させる表示制御部と、有し、所定の基準点と前記複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する前記値に対応しており、前記基準点から前記複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の前記値が測定された時刻の順に、前記基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転する。
【0007】
前記表示制御部は、前記複数の点のうち隣り合う2つの点を線で結ぶことによって生成された折れ線を、前記表示部に表示させてもよい。
【0008】
前記表示制御部は、前記値が測定された時刻に応じて、当該値に対応する前記点又は当該点に接続された線の表示態様を変化させてもよい。
【0009】
前記表示制御部は、前記基準点を中心とした、所定の間隔で配置された複数の同心円を、前記複数の点とともに前記表示部に表示させてもよい。
【0010】
前記表示制御装置は、前記電気的活動が測定された期間の中から、複数の前記値のばらつきが所定の条件を満たす期間を、前記対象期間として選択する選択部をさらに有してもよい。
【0011】
前記表示制御装置は、前記電気的活動が測定された期間の中から、前記被分析者に心房細動又は期外収縮が発生していると推定された期間を、前記対象期間として選択する選択部をさらに有してもよい。
【0012】
前記表示制御装置は、学習対象者に心房細動又は期外収縮が発生していると判断された期間における複数の前記値に対応する前記複数の点の位置関係と、前記学習対象者に心房細動又は期外収縮が発生していないと判断された期間における複数の前記値に対応する前記複数の点の位置関係と、を用いて機械学習した機械学習モデルに、前記被分析者の複数の前記値に対応する前記複数の点の位置関係を入力することによって、前記被分析者に心房細動又は期外収縮が発生しているか否かを推定する推定部をさらに有してもよい。
【0013】
前記表示制御部は、前記被分析者に心房細動又は期外収縮が発生していると推定された前記対象期間の前記複数の点を、前記被分析者に心房細動又は期外収縮が発生していると推定されなかった前記対象期間の前記複数の点とは異なる表示態様で、前記表示部に表示させてもよい。
【0014】
前記取得部は、前記複数の点のうち隣り合う2つの点を線で結ぶことによって生成された折れ線の形状が真円に近いほど小さい値となる真円度を算出し、前記表示制御部は、前記真円度が閾値以下の前記複数の点を、前記真円度が前記閾値より大きい前記複数の点とは異なる表示態様で、前記表示部に表示させてもよい。
【0015】
前記閾値は、前記対象期間が長いほど又は前記複数の点の数が多いほど小さい値であってもよい。
【0016】
前記表示制御部は、前記対象期間のうち第1期間の前記複数の点の上に、前記対象期間のうち第2期間の前記複数の点を重畳して、前記表示部に表示させてもよい。
【0017】
前記基準点を基準とした2つの前記点の間の角度は、当該2つの点のうち一方に対応する前記値に比例する角度であってもよい。
【0018】
前記表示制御部は、前記値が測定されたことに応じて、前記値に対応する前記点を逐次前記表示部に表示させてもよい。
【0019】
前記表示制御部は、前記値に対応する前記点を逐次前記表示部に表示させている間に、複数の前記値のばらつきが所定の閾値以上になった場合に、前記値に対応する前記点を逐次前記表示部に表示させることを停止してもよい。
【0020】
前記表示制御装置は、前記被分析者を装着する前記電気的活動を測定するための装置に設けられたセンサが測定した加速度に基づいて、前記被分析者が前記装置を叩いたことを示すタップイベントを検出する検出部と、前記電気的活動が測定された期間の中から、前記タップイベントが検出された時刻を基準とした期間を、前記対象期間として選択する選択部と、をさらに有してもよい。
【0021】
前記表示制御装置は、前記タップイベントが検出された時刻を基準とした期間に測定された前記電気的活動に基づいて、前記被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する推定部をさらに有し、前記表示制御部は、前記推定部が推定した前記被分析者に心房細動が発生しているか否かを示す情報を、前記表示部に表示させてもよい。
【0022】
前記検出部は、前記電気的活動により前記センサに生じる加速度よりも大きな閾値以上の加速度を前記センサが測定したことを条件として前記タップイベントを検出してもよい。
【0023】
本発明の第2の態様の表示制御方法は、プロセッサが実行する、被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得するステップと、対象期間に測定された複数の前記値に対応する複数の点を表示部に表示させるステップと、有し、所定の基準点と前記複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する前記値に対応しており、前記基準点から前記複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の前記値が測定された時刻の順に、前記基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転する。
【0024】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータを、被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得する取得部と、対象期間に測定された複数の前記値に対応する複数の点を表示部に表示させる表示制御部と、として機能させ、所定の基準点と前記複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する前記値に対応しており、前記基準点から前記複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の前記値が測定された時刻の順に、前記基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、分析者が心臓の電気的活動を示す値の時間変化を確認しやすくできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る表示制御システムSの概要を説明するための図である。
【
図2】実施形態に係る表示制御システムSのブロック図である。
【
図3】検出部がタップイベントを検出する方法を説明するための模式図である。
【
図4】タップイベントと心房細動の有無との関係を示す情報を表示している情報端末の模式図である。
【
図5】選択部が第2対象期間を選択する方法を説明するための模式図である。
【
図6】表示制御部が複数の特徴値に対応する複数の点を表示部に表示させる方法を説明するための模式図である。
【
図7】例示的な多角形状図形の形状を説明するための模式図である。
【
図8】特徴値に対応する多角形状図形を表示している情報端末の模式図である。
【
図9】実施形態に係る表示制御システムが実行する表示制御方法のフローチャートを示す図である。
【
図10】特徴値に対応する多角形状図形を表示している情報端末の模式図である。
【
図11】例示的な多角形状図形の形状を説明するための模式図である。
【
図12】例示的な多角形状図形の形状を説明するための模式図である。
【
図13】例示的な多角形状図形の形状を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[表示制御システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る表示制御システムSの概要を説明するための図である。表示制御システムSは、測定機器1と、情報端末2と、表示制御装置3と、を備える。測定機器1及び情報端末2は、それぞれ複数設けられてもよい。表示制御システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0028】
測定機器1は、被分析者の心臓の心電図を測定する装置である。また、測定機器1は、測定機器1に与えられた加速度を測定するセンサを備える。被分析者は、例えば、診療を受けている患者、臨床試験の被験者等である。測定機器1は、例えば、被分析者が装着する心電計である。測定機器1は、被分析者の体の表面において体表面心電図を測定し、又は被分析者の心臓の表面若しくは内部において心内心電図を測定する。
【0029】
測定機器1は、例えば、被分析者の手首、手掌、胸部等に装着された状態で電位を測定することにより被分析者の心電図を測定する、12誘導心電計、ホルター心電計又は埋め込み型心電計である。本実施形態において、測定機器1は、被分析者の胸部に貼り付けられることによって、生活中の被分析者の心電図を連続的に測定可能なパッチ型心電計である。また、測定機器1は、ペースメーカー、除細動器、心内電極等、心電図を測定可能なその他の装置であってもよい。
【0030】
測定機器1は、無線通信回線を含むネットワークNを介して、測定した心電図を示す心電図データと、測定した加速度を示す加速度データと、を表示制御装置3に送信する。測定機器1が測定した心電図データ及び加速度データは、ネットワークNを介することなく、例えば記憶媒体を用いて表示制御装置3に届けられてもよい。
【0031】
情報端末2は、医師や医療従事者等の分析者が使用するコンピュータである。情報端末2は、例えば、表示制御装置3から受信した情報を表示可能な液晶ディスプレイ等の表示部を有する。
【0032】
表示制御装置3は、心臓の電気的活動に関する情報を表示部に表示させるための制御をするコンピュータである。表示制御装置3は、例えば、測定機器1から受信した心電図データ及び加速度データに基づいて、心臓の電気的活動に関する情報を表示させるための表示情報を情報端末2に送信する。
【0033】
本実施形態に係る表示制御システムSが実行する処理の概要を以下に説明する。測定機器1は、測定機器1を装着している被分析者の心電図を測定するとともに、測定機器1に与えられた加速度を測定する。測定機器1は、測定した心電図を示す心電図データと、測定した加速度を示す加速度データと、を表示制御装置3に送信する。
【0034】
表示制御装置3は、測定機器1が送信した心電図データ及び加速度データを取得する。表示制御装置3は、心電図データから、被分析者の心臓の電気的活動を示す値である特徴値を取得する。特徴値は、心電図データから抽出される値であり、例えばRR間隔である。
【0035】
また、表示制御装置3は、受信した加速度データに基づいて、被分析者が装置を叩いたことを示すタップイベントを検出する。表示制御装置3は、例えば、10秒以内に3回以上の加速度のピークが発生したことを条件として、タップイベントを検出する。
【0036】
表示制御装置3は、例えば、タップイベントが検出された時刻を基準とした所定の期間を、特徴値の表示に用いる対象期間として選択する。表示制御装置3は、対象期間に測定された複数の特徴値に対応する複数の点を、情報端末2の表示部に表示させるための表示情報を生成し、情報端末2に送信する。
【0037】
ここで表示制御装置3は、複数の特徴値に対応する複数の点を、所定の基準点を基準とした多角形状図形の頂点となるように表示部に表示させる。多角形状図形は、閉じた折れ線又は閉じていない折れ線によって形成される図形である。表示制御装置3は、多角形状図形の頂点のみを表示部に表示させてもよい。表示される多角形状図形において、基準点と複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する特徴値に対応する。
【0038】
不整脈の診断や、電気生理検査における刺激に対する応答の評価等において、心臓の電気的活動が周期的であるか又は不規則であるかを確認することが求められる。従来、横軸が時間を表し、縦軸が心臓の電気的興奮を表す心電図や、横軸が時間を表し、縦軸が心拍数を表すトレンドグラフを用いて、心臓の電気的活動が不規則であるか否かの確認が行われていた。しかしながら、そのような心電図やトレンドグラフから、分析者が心臓の電気的活動が不規則であるかを直感的に把握することは容易ではなかった。
【0039】
これに対して、本実施形態に係る表示制御システムSによれば、分析者は、情報端末2において、対象期間における特徴値の時間変化を、多角形状図形の形状として把握できる。例えば、正常状態(洞調律)では多角形状図形の形状が真円に近くなり、被分析者に心房細動が発生している状態では多角形状図形の形状全体の凹凸が大きくなる。また、例えば被分析者に期外収縮が発生している状況では、多角形状図形の形状の一部のみの凹凸が大きくなる。これにより、表示制御システムSは、分析者が心臓の電気的活動を示す値の時間変化を確認しやすくすることができる。
【0040】
[表示制御システムSの構成]
図2は、本実施形態に係る表示制御システムSのブロック図である。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示したもの以外のデータの流れがあってもよい。
図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0041】
測定機器1は、通信部11と、心電図測定部12と、加速度測定部13とを有する。測定機器1は、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。
【0042】
通信部11は、ネットワークNを介して表示制御装置3との間でデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部11は、ネットワークNを介して、心電図測定部12及び加速度測定部13から出力されたデータを表示制御装置3に送信する。
【0043】
心電図測定部12は、例えば、被分析者の体の表面又は内部に配置される電極と、電極を介して電位を測定する回路と、を含み、測定した電位から生成した心電図を示す心電図データを通信部11に出力する。加速度測定部13は、例えば、測定機器1に与えられた加速度を測定する加速度センサを含み、測定した加速度を示す加速度データを通信部11に出力する。
【0044】
表示制御装置3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33とを有する。表示制御装置3は、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。また、表示制御装置3は、コンピュータ資源の集合であるクラウドによって構成されてもよい。
【0045】
通信部31は、ネットワークNを介して測定機器1及び情報端末2との間でデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部31は、測定機器1からネットワークNを介して受信したデータを制御部33に通知する。また、通信部31は、ネットワークNを介して、制御部33から出力されたデータを情報端末2に送信する。
【0046】
記憶部32は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部32は、制御部33が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部32は、表示制御装置3の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部33との間でデータの授受を行ってもよい。
【0047】
制御部33は、取得部331と、検出部332と、推定部333と、選択部334と、表示制御部335と、を有する。制御部33は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部32に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部331、検出部332、推定部333、選択部334及び表示制御部335として機能する。制御部33の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部33の機能の少なくとも一部は、制御部33がネットワーク経由で実行されるプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0048】
以下、本実施形態に係る表示制御システムSが実行する表示制御方法を詳細に説明する。被分析者は、測定機器1を装着する。測定機器1において、心電図測定部12は、測定機器1を装着している被分析者の心電図を測定する。また、加速度測定部13は、測定機器1に与えられた加速度を測定する。通信部11は、心電図測定部12が測定した心電図を示す心電図データと、加速度測定部13が測定した加速度を示す加速度データと、を表示制御装置3に送信する。
【0049】
通信部11は、心電図データ及び加速度データを表示制御装置3に逐次送信し、又は所定期間(例えば、24時間)の心電図データ及び加速度データをまとめて表示制御装置3に送信する。通信部11は、心電図データ及び加速度データを、同時に表示制御装置3に送信し、又は異なるタイミングで表示制御装置3に送信する。
【0050】
表示制御装置3は、(1)タップイベントに関する情報を表示部に表示させるための処理と、(2)心臓の電気的活動を示す値に対応する多角形状図形を表示部に表示させるための処理と、の少なくとも一方を実行する。表示制御装置3は、当該2つの処理を並行して実行してもよく、当該2つの処理のうち一方の処理を実行した後に他方の処理を実行してもよい。
【0051】
第1に、表示制御装置3がタップイベントに関する情報を表示部に表示させるための処理を説明する。表示制御装置3において、取得部331は、測定機器1が送信した加速度データを、通信部31を介して取得する。被分析者は、心房細動の症状が発生した際や、食事や運動等を行った際に、測定機器1を所定回数叩くように指示されている。検出部332は、取得部331が取得した加速度データに基づいて、被分析者が装置を叩いたことを示すタップイベントを検出する。検出部332は、例えば、加速度データにおいて、所定期間内に所定回数以上の加速度のピークが発生したことを条件として、タップイベントを検出する。
【0052】
図3は、検出部332がタップイベントを検出する方法を説明するための模式図である。
図3は、加速度データAが示す加速度のグラフを表している。
図3のグラフにおいて、横軸は測定時刻を表しており、縦軸は加速度を表している。
【0053】
検出部332は、加速度のグラフにおいて、所定の閾値A1以上となった加速度のピークを特定する。閾値A1は、例えば、心拍等の心臓の電気的活動により測定機器1に生じる加速度よりも大きな値である。記憶部32は、例えば、一般的な心拍等により測定機器1に生じる加速度よりも大きな閾値A1を予め記憶している。また、検出部332は、分析対象とする期間の前に被分析者が測定機器1を装着した際(例えば、測定機器1のキャリブレーション時)の加速度データに基づいて、被分析者の心拍等により測定機器1に生じる平常時の加速度を閾値A1として決定してもよい。
【0054】
検出部332は、加速度のグラフにおいて、所定期間内(例えば、10秒以内)に所定回数以上(例えば、3回以上)のピークを特定した場合に、当該所定回数以上のピークをタップイベントとして検出する。検出部332は、例えば、検出したタップイベントに対応する複数のピークの時刻の平均値を、タップイベントが検出された時刻として特定する。
【0055】
表示制御装置3は、加速度データが示す加速度を閾値A1と比較することにより、被分析者が測定機器1を叩くことにより発生する加速度を、被分析者の心拍等により発生する加速度や、心房細動の発生時に被分析者が立っていられなくなることにより発生する加速度と区別して検出できる。
【0056】
また、検出部332は、検出したタップイベントに対応する複数のピークの回数に基づいて、タップイベントの種類を判定してもよい。被分析者は、例えば、動悸等の心房細動の症状が発生した際に3回連続で測定機器1を叩き、食事又は運動を行った際に5回連続で測定機器1を叩くように指示されている。
【0057】
記憶部32は、被分析者が測定機器1を叩く回数(すなわち、所定期間内の加速度のピークの回数)と、タップイベントの種類と、を関連付けた情報を予め記憶している。検出部332は、記憶部32に記憶された情報に基づいて、検出した一又は複数のタップイベントそれぞれの回数に関連付けられたタップイベントの種類を判定する。これにより、被分析者は、測定機器1を叩く動作を変えるだけで、タップイベントの種類を表示制御装置3に伝えることができる。表示制御装置3は、判定されたタップイベントの種類を表示部に表示させることにより、分析者が心電図とタップイベントの種類との関連性を分析しやすくできる。
【0058】
検出部332は、一又は複数のタップイベントそれぞれが検出された時刻と、当該タップイベントの種類と、を関連付けたタップイベント情報を、記憶部32に記憶させる。
【0059】
推定部333は、検出部332によりタップイベントが検出された時刻を基準とした第1対象期間に測定された電気的活動に基づいて、被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する。第1対象期間は、例えば、タップイベントが検出された時刻を含む所定の長さ(5分、10分等)の期間である。また、第1対象期間は、タップイベントが検出された時刻より前又は後の少なくとも一方における所定の長さの期間であってもよい。
【0060】
記憶部32は、例えば、教師データとして用いられる学習用心電図データに基づいて学習することにより生成された、入力された心電図データを、心房細動が発生している心電図データと心房細動が発生していない心電図データとに分類することができる第1機械学習モデルを予め記憶している。第1機械学習モデルの内部構成は任意であるが、例えばCNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)により構成されている。
【0061】
推定部333は、取得部331が取得した心電図データの中で第1対象期間の心電図データを、記憶部32に記憶された第1機械学習モデルに入力する。推定部333は、第1機械学習モデルから出力された分類結果に基づいて、第1対象期間において被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する。
【0062】
また、推定部333は、取得部331が取得した心電図データの全期間を所定の長さ(5分、10分等)に分割することによって生成した複数の心電図データそれぞれを、記憶部32に記憶された第1機械学習モデルに入力してもよい。この場合に、推定部333は、全期間の分類結果から、第1対象期間における分類結果を抽出することによって、第1対象期間において被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する。
【0063】
第1対象期間において被分析者に心房細動が発生していると推定された場合に、推定部333は、さらに第1対象期間の心電図データにおいて細動波(f波ともいう)が明瞭であるか否かを判定する。
【0064】
記憶部32は、例えば、教師データとして用いられる学習用心電図データに基づいて学習することにより生成された、入力された心電図データを、細動波が明瞭な心電図データと細動波が不明瞭な心電図データとに分類することができる第2機械学習モデルを予め記憶している。第2機械学習モデルの内部構成は任意であるが、例えばCNNにより構成されている。
【0065】
推定部333は、第1対象期間の心電図データの所定の長さ(30秒、1分等)に分割することによって生成した複数の心電図データそれぞれを、記憶部32に記憶された第2機械学習モデルに入力する。推定部333は、第2機械学習モデルから出力された分類結果に基づいて、第1対象期間の心電図データの中で、細動波が明瞭な部分を特定する。また、第1対象期間の心電図データの中に細動波が明瞭な心電図データが特定されなかった場合に、推定部333は、第1対象期間の心電図データの中からノイズの少ない部分を特定してもよい。推定部333は、例えば、フーリエ変換を用いて高周波成分や低周波成分のピークレベルが低い波形をノイズの少ない部分として選択し、又は移動平均法やARモデルを用いて心電図データの予測モデルを作成し、予測モデルからのズレ量が小さいものをノイズの少ない部分として選択してもよい。また、推定部333は、検査技師や医師によってノイズが少ないと判断された心電図データと、ノイズが多いと判断された心電図データとを機械学習することによって生成された機械学習モデルを用いて、ノイズの少ない部分を特定してもよい。
【0066】
表示制御部335は、情報端末2の表示部に、第1対象期間の心電図データとともに、検出部332が検出したタップイベントと、推定部333が推定した心房細動の有無と、の関係を示す情報を表示させるための表示情報を生成する。表示情報は、例えば、第1対象期間の心電図データと、検出部332が検出したタップイベントに関するタップイベント情報と、推定部333が推定した心房細動の有無に関する推定情報と、を含む。
【0067】
表示情報は、第1対象期間の心電図データのうち、推定部333が特定した細動波が明瞭な部分のみを含んでもよい。また、表示情報は、第1対象期間の心電図データの中に細動波が明瞭な心電図データが特定されなかった場合に、第1対象期間の心電図データのうち、推定部333が特定したノイズの少ない部分のみを含んでもよい。これにより、表示制御装置3は、心房細動が発生していると推定された期間の中で分析に寄与する可能性の大きい部分のみを表示部に表示させ、分析者が心電図データを分析しやすくできる。
【0068】
表示制御部335は、生成した表示情報を、情報端末2に送信する。情報端末2は、表示制御装置3から受信した表示情報に従って、第1対象期間の心電図データとともに、検出部332が検出したタップイベントと、推定部333が推定した心房細動の有無と、の関係を示す情報を表示部上に表示する。
【0069】
図4は、タップイベントと心房細動の有無との関係を示す情報を表示している情報端末2の模式図である。
図4の例では、表示制御部335は、第1対象期間の心電図データHとともに、タップ情報Tと、推定情報Eと、を情報端末2の表示部上に表示させている。
【0070】
タップ情報Tは、例えば、第1対象期間の心電図データHの中で一又は複数のタップイベントそれぞれが検出された時刻を特定する情報(例えば、心電図データH上の時刻を示す矢印)と、当該タップイベントの種類と、を含む。推定情報Eは、例えば、第1対象期間において被分析者に心房細動が発生していると推定されたか否かを表す文字列又は記号を含む。また、推定情報Eは、第1対象期間の心電図データHの中で細動波が明瞭な部分を示している。
【0071】
心房細動等の不整脈の検査及び診断において、被分析者に動悸等の自覚症状があったタイミングや、被分析者が食事や運動等の特定の行動を行ったタイミングにおいて、心電図の波形に不整脈特有の特徴が表れているかどうかを確認することが重要である。表示制御装置3は、検出部332が検出したタップイベントと、推定部333が推定した心房細動の有無と、の関係を示す情報を表示部に表示させる。これにより、表示制御装置3は、分析者が不整脈の症状を感じたタイミング等における心電図の波形を分析しやすくできる。また、表示制御装置3は、タップイベントの種類を表示部に表示させることにより、どのようなイベントが心電図の波形に影響を与えたかを分析者が分析しやすくできる。
【0072】
第2に、表示制御装置3が心臓の電気的活動を示す値に対応する多角形状図形を表示部に表示させるための処理を説明する。表示制御装置3において、取得部331は、測定機器1が送信した心電図データを、通信部31を介して取得する。
【0073】
取得部331は、心電図データから、被分析者の心臓の電気的活動を示す値である特徴値を取得する。特徴値は、心電図データから抽出される値である。取得部331は、特徴値に対応する心電図データ上の測定時刻を、特徴値が測定された時刻として特定する。
【0074】
特徴値は、例えば、心電図におけるQRS波(R波)のピーク間の時間を示すRR間隔(R-R間隔)、又は単位時間あたりの心拍数である。なお、単位時間あたりの心拍数は、RR間隔の逆数に対応する。また、特徴値は、心臓電気生理学的検査の際に外から与えられたプログラム刺激や、プログラム刺激に対する応答であってもよく、例えば心内心電図のV-V間隔、V-A間隔、His-V間隔、カテーテル電極の電位と任意の応答波形の間隔等である。また、特徴値は、上室性不整脈アブレーション時の電極カーテル間隔や心房細動(AF)アブレーション時の解剖学的な起電力の最早期、その他の疾患の診断や治療を目的としたものであってもよく、例えば心室期外収縮(PVC)起源の起電力の最早期や、心室頻拍(VT)のミッドダイアストリッククポテンシャル(MDP:Mid-Diastolic Potential)とQRS波との距離である。取得部331は、心電図データに対して既知の波形解析処理(例えば、ウェーブレット変換)を行うことによって、RR間隔、単位時間あたりの心拍数、VV間隔又はVA間隔のいずれかを特徴値として取得する。
【0075】
選択部334は、被分析者に対して心臓の電気的活動が測定された期間(例えば、心電図データの全期間)の少なくとも一部を、特徴値の表示対象とする第2対象期間として選択する。
【0076】
図5は、選択部334が第2対象期間を選択する方法を説明するための模式図である。
図5は、心電図データHが示す心電図のグラフを表している。
図5のグラフにおいて、横軸は測定時刻を表しており、縦軸は心電図の電位を表している。
【0077】
選択部334は、例えば、心臓の電気的活動が測定された期間の中から、複数の特徴値のばらつきが所定の条件を満たす期間を、第2対象期間として選択する。この場合に、選択部334は、心電図データの全期間を所定の長さ(5分、10分等)に分割することによって生成した複数の期間それぞれに対してばらつきを算出する。
【0078】
選択部334は、例えば、1つの期間に測定された複数の特徴値の分散や標準偏差等の統計値を、当該期間における複数の特徴値のばらつきとして算出する。また、選択部334は、1つの期間に測定された複数の特徴値の最頻値又は中央値からの差に対応する値を、当該期間における複数の特徴値のばらつきとして算出してもよい。選択部334は、例えば、心電図データの全期間の中から、算出したばらつきが所定の閾値以上である一又は複数の期間を、第2対象期間として選択する。
【0079】
図5の例では、選択部334は、複数の特徴値のばらつきが所定の閾値以上である第1時刻t1から第2時刻t2までの期間を、第2対象期間として選択している。これにより、表示制御装置3は、心電図データの中で、心房細動が発生しているか否かを確認するために重要な、複数の特徴値のばらつきが大きい部分を表示対象として抽出できる。
【0080】
また、選択部334は、心臓の電気的活動が測定された期間の中から、情報端末2において分析者により指定された一又は複数の期間を、第2対象期間として選択してもよい。
【0081】
また、選択部334は、上述の検出部332により検出されたタップイベントに基づいて、第2対象期間を選択してもよい。この場合に、選択部334は、例えば、心臓の電気的活動が測定された期間の中で、検出部332によりタップイベントが検出された時刻を含む所定の長さ(5分、10分等)の期間を、第2対象期間として選択する。また、選択部334は、タップイベントが検出された時刻より前又は後の少なくとも一方における所定の長さの期間を、第2対象期間として選択してもよい。これにより、表示制御装置3は、心電図データの中で、例えば分析者が不整脈の症状を感じたタイミング等に近い部分を表示対象として抽出できる。
【0082】
また、選択部334は、上述の推定部333により推定された心房細動の有無に基づいて、第2対象期間を選択してもよい。この場合に、選択部334は、例えば、心臓の電気的活動が測定された期間の中で、推定部333により心房細動が発生していると推定された期間を、第2対象期間として選択する。これにより、表示制御装置3は、心電図データの中で、心房細動が発生していると推定された部分を表示対象として抽出できる。
【0083】
推定部333は、選択部334により選択された第2対象期間に測定された電気的活動に基づいて、被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する。なお、選択部334が推定部333により心房細動が発生していると推定された期間を第2対象期間として選択した場合には、推定部333は改めて心房細動の有無の推定を行わなくてもよい。
【0084】
推定部333は、取得部331が取得した心電図データの中で第2対象期間の心電図データを、記憶部32に記憶された上述の第1機械学習モデルに入力する。推定部333は、第1機械学習モデルから出力された分類結果に基づいて、第2対象期間において被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する。
【0085】
また、推定部333は、取得部331が取得した心電図データの全期間を所定の長さ(5分、10分等)に分割することによって生成した複数の心電図データそれぞれを、記憶部32に記憶された第1機械学習モデルに入力してもよい。この場合に、推定部333は、全期間の分類結果から、第2対象期間における分類結果を抽出することによって、第2対象期間において被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する。
【0086】
表示制御部335は、情報端末2の表示部に、第2対象期間に測定された複数の特徴値に対応する複数の点を多角形状図形として表示させるための表示情報を生成する。
図6は、表示制御部335が複数の特徴値に対応する複数の点P1を表示部に表示させる方法を説明するための模式図である。
【0087】
表示制御部335は、複数の特徴値に対応する複数の点P1を、以下の規則に従って所定の基準点P0(原点)を基準とした2次元平面上に配置する。
(1)基準点P0と複数の点P1それぞれとの距離(すなわち、ベクトルVの大きさ)は、当該点P1に対応する特徴値に対応する値である。
(2)基準点P0から複数の点P1それぞれまでのベクトルVの向きが、複数の特徴値が測定された時刻の順に、基準点P0を基準として時計回り又は反時計回りに角度θで回転する。
【0088】
これにより、複数の特徴値に対応する複数の点P1は、基準点P0を基準とした多角形状図形の頂点となるように配置される。第2対象期間全体が1周分(360度)の多角形状図形によって表されてもよい。また、第2対象期間を構成する複数の期間が複数周分(720度、1080度等)の多角形状図形によって表されてもよい。
【0089】
1周分の多角形状図形に対応する期間が長すぎると、心房細動による特徴値の変動が多角形状図形の形状の一部のみに影響を与えるため、分析者が多角形状図形の形状に基づいて心房細動の有無を確認しづらい。そのため、1周分の多角形状図形に対応する期間、すなわち1周分の期間の長さは、例えば、5秒以上5分以内の値である。より望ましくは、1周分の期間の長さは、10秒以上1分以内の値である。これにより、表示制御装置3は、心房細動による特徴値の変動が多角形状図形全体の形状に反映されやすくし、分析者が多角形状図形の形状に基づいて心房細動の有無を確認しやすくできる。
【0090】
基準点P0と点P1との間の距離は、例えば、当該点P1に対応する特徴値に対して所定の係数を乗算した値である。これにより、表示制御装置3は、複数の特徴値の大きさを、多角形状図形の凹凸として表すことができる。
【0091】
角度θは、例えば、2π(360度)を、1周分の多角形状図形の頂点の数で除算した値である。1周分の多角形状図形の頂点の数は、記憶部32に設定される。また、角度θは、隣り合う2つの点のうち一方に対応する特徴値に比例する角度であってもよい。この場合に、角度θは、例えば、RR間隔×2π/(1周分の期間の長さ)の式で算出される。1周分の期間の長さは、記憶部32に設定される。これにより、表示制御装置3は、特徴値の大きさに応じて頂点間の角度を調整できる。
【0092】
RR間隔、単位時間あたりの心拍数、VV間隔、VA間隔等の特徴値は、心房細動の判定基準の1つである。被分析者に心房細動が発生している状態では、特徴値に、正常状態(洞調律)にはない不規則性が現れる。また、一般的に心房細動よりも安全性が高いと言われている期外収縮が被分析者に発生している状態でも、特徴値に不規則性が現れる場合がある。
【0093】
しかしながら、従来、医師等の分析者にとって、横軸が時間を表し、縦軸が心臓の電気的興奮を表す心電図データから、特徴値における不規則性を見逃しなく把握し、正常状態と、心房細動が発生している状態と、期外収縮が発生している状態と、を区別することは容易ではなかった。それに対して、表示制御装置3は、複数の特徴値に対応する多角形状図形を表示部に表示させることにより、分析者が特徴値における不規則性を直感的に把握しやすくすることができる。
【0094】
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)は、例示的な多角形状図形の形状を説明するための模式図である。
図7(a)は、正常状態(洞調律)における多角形状図形を表している。
図7(b)は、被分析者に期外収縮が発生している状態における多角形状図形を表している。
図7(c)は、被分析者に心房細動が発生している状態における多角形状図形を表している。
【0095】
図7(a)に例示した正常状態において、多角形状図形は、真円に近い形状である。
図7(b)に例示した被分析者に期外収縮が発生している状態において、多角形状図形は、一部分において凸凹が大きく、その他の部分において円弧に近い形状となる。被分析者に
図7(c)に例示した心房細動が発生している状態において、多角形状図形は、全体的に凸凹が大きい形状となる。
【0096】
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)において、複数の点P1を閉じた折れ線で結んだ多角形状図形の形状に、特徴値の不規則性が表れている。また、複数の点P1を閉じていない折れ線で結んだ多角形状図形の形状にも、同様に特徴値の不規則性が表れる。また、多角形状図形の頂点である複数の点P1の配置にも、同様に特徴値の不規則性が表れる。
【0097】
このように、分析者は、複数の特徴値に対応する多角形状図形の形状を見ることにより、特徴値の不規則性を直感的に把握し、正常状態と、心房細動が発生している状態と、期外収縮が発生している状態と、を容易に区別することができる。
【0098】
取得部331は、多角形状図形の形状が真円に近い程度を示す真円度を算出してもよい。取得部331は、例えば、複数の点P1のうち隣り合う2つの点P1を線で結ぶことによって生成された折れ線である多角形状図形を生成する。取得部331は、生成された多角形状図形の複数の箇所において外径Dを算出し、最大の外径Dmax及び最小の外径Dminを特定する。そして取得部331は、(Dmax-Dmin)/2の値を、真円度として算出する。算出された真円度は、真円に近いほど(すなわち、真円に類似しているほど)小さい値となり、真円から遠いほど(すなわち、真円に類似していないほど)大きい値となる。
【0099】
後述のように、表示制御部335は、算出された真円度に応じて多角形状図形の表示態様を変えることにより、多角形状図形の形状が真円に近いかどうかを示す客観的な指標を分析者に提供することができる。取得部331は、ここに示した具体的な値に限らず、具体的な多角形状図形の形状が真円に近い程度を示すその他の値を真円度として取得してもよい。
【0100】
推定部333は、多角形状図形の形状に機械学習処理を適用することによって、第2対象期間において被分析者に心房細動又は期外収縮が発生しているか否かを推定してもよい。この場合に、記憶部32は、例えば、学習対象者に心房細動が発生していると判断された期間における複数の値に対応する複数の点P1の位置関係と、学習対象者に期外収縮が発生していると判断された期間における複数の値に対応する複数の点P1の位置関係と、学習対象者に心房細動又は期外収縮が発生していないと判断された期間における複数の値に対応する複数の点P1の位置関係と、を教師データとして学習することにより生成された第3機械学習モデルを予め記憶している。第3機械学習モデルは、入力された心電図データを、心房細動が発生している心電図データと、期外収縮が発生している心電図データと、心房細動又は期外収縮が発生していない心電図データと、に分類することができる。第3機械学習モデルの内部構成は任意であるが、例えばCNNにより構成されている。
【0101】
推定部333は、表示制御部335が配置した複数の点P1の位置関係(例えば、複数の点P1それぞれの座標)を、記憶部32に記憶された第3機械学習モデルに入力する。推定部333は、第3機械学習モデルから出力された分類結果に基づいて、第2対象期間において被分析者に心房細動が発生しているか否か、及び期外収縮が発生しているか否かを推定する。後述のように、表示制御部335は、推定部333が推定した心房細動又は期外収縮が発生しているか否かを示す情報を表示部に表示させることにより、多角形状図形の形状を用いた機械学習による推定結果を分析者に提供することができる。
【0102】
表示制御部335は、例えば、第2対象期間の心電図データと、多角形状図形を表示させるための情報と、を含む表示情報を生成する。多角形状図形を表示させるための情報は、例えば、複数の点それぞれの座標又は2次元平面に配置された複数の点の画像である。さらに、表示情報は、取得部331が取得した真円度と、推定部333が推定した心房細動又は期外収縮が発生しているか否かを示す情報と、の少なくとも一方を含んでもよい。
【0103】
表示制御部335は、生成した表示情報を、情報端末2に送信する。情報端末2は、表示制御装置3から受信した表示情報に従って、特徴値に対応する多角形状図形を表示部上に表示する。
【0104】
図8は、特徴値に対応する多角形状図形を表示している情報端末2の模式図である。
図8の例では、表示制御部335は、第2対象期間の心電図データHとともに、多角形状図形Fと、推定情報Eと、を情報端末2の表示部上に表示させている。第2対象期間を構成する複数の期間が複数周分の多角形状図形Fによって表される場合には、表示制御部335は、第2対象期間のうち第1期間の多角形状図形Fの上に、第2対象期間のうち第2期間の多角形状図形Fを重畳して、表示部に表示させてもよい。第1期間は、例えば、2次元平面上で360度に対応する期間であり、第2期間は、2次元平面上で次の360度に対応する期間である。また、表示制御部335は、複数の多角形状図形Fを、表示部上の互いに異なる領域に表示させてもよい。
【0105】
多角形状図形Fは、複数の特徴値に対応する複数の点P1と、複数の点P1のうち隣り合う2つの点を線で結ぶことによって生成された折れ線Lと、を含む。また、多角形状図形Fは、折れ線Lを含まずに、複数の点P1のみを含んでもよい。
【0106】
表示制御部335は、第2対象期間の複数の点P1を一度に表示部に表示させてもよい。また、表示制御部335は、第2対象期間の複数の点P1を、当該点P1が測定された時刻の順に1つずつ表示部に表示させてもよい。
【0107】
表示制御部335は、例えば、複数の点P1の中から特徴値が測定された時刻の順に2つの点P1を線で結ぶことによって、折れ線Lを生成する。また、表示制御部335は、複数の点P1の中で測定された時刻が最も早い点P1と最も遅い点P1とを線で結んでもよい。また、表示制御部335は、複数の点P1の中から、位置(座標)が近い順に2つの点P1を線で結ぶことによって、折れ線Lを生成してもよい。折れ線Lは、表示制御装置3の表示制御部335ではなく、情報端末2によって生成されてもよい。このように、表示制御装置3は、特徴値の時間変化を多角形状図形の形状として表示部に表示させることにより、分析者が特徴値の時間変化を確認しやすくすることができる。
【0108】
多角形状図形Fは、複数の点P1の配置に用いられた基準点P0を中心とした、所定の間隔で配置された複数の同心円Cの上に重畳されて表示されている。これにより、表示制御装置3は、分析者が多角形状図形Fの形状が真円に近いかどうかを判断しやすくできる。
【0109】
推定情報Eは、例えば、推定部333により第2対象期間において被分析者に心房細動又は期外収縮が発生していると推定されたか否かを表す文字列又は記号を含む。また、推定情報Eは、取得部331が取得した真円度を示す情報を含んでもよい。真円度を示す情報は、例えば、真円度が所定の閾値以下である場合に真円に近いことを表す文字列又は記号を含み、真円度が所定の閾値より大きい場合に真円から遠いことを表す文字列又は記号を含む。
【0110】
表示制御部335は、取得部331が取得した真円度が所定の閾値以下の複数の点P1を、真円度が所定の閾値より大きい複数の点P1とは異なる表示態様で、表示部に表示させてもよい。表示制御部335は、例えば、真円度が所定の閾値以下である場合と、真円度が所定の閾値より大きい場合とで、複数の点P1の色、模様又は大きさを変更し、又は複数の点P1に接続された線の色、線種又は太さを変更する。これにより、表示制御装置3は、多角形状図形Fの形状が真円に近いかどうかを把握しやすくできる。
【0111】
表示制御部335は、推定部333による推定結果に基づいて、被分析者に心房細動又は期外収縮が発生していると推定された場合の複数の点P1を、被分析者に心房細動又は期外収縮が発生していると推定されなかった場合の複数の点P1とは異なる表示態様で、表示部に表示させてもよい。表示制御部335は、例えば、心房細動が発生していると推定された場合と、期外収縮が発生していると推定された場合と、心房細動又は期外収縮が発生していると推定されなかった場合とで、複数の点P1の色、模様又は大きさを変更し、又は複数の点P1に接続された線の色、線種又は太さを変更する。これにより、表示制御装置3は、多角形状図形Fの形状を用いた機械学習による推定結果を把握しやすくできる。
【0112】
[表示制御方法のフローチャート]
図9は、本実施形態に係る表示制御システムSが実行する表示制御方法のフローチャートを示す図である。表示制御装置3において、取得部331は、測定機器1が送信した心電図データ及び加速度データを、通信部31を介して取得する(S11)。
【0113】
検出部332は、取得部331が取得した加速度データに基づいて、被分析者が装置を叩いたことを示すタップイベントを検出する(S12)。検出部332は、例えば、加速度データにおいて、所定期間内に所定回数以上の加速度のピークが発生したことを条件として、タップイベントを検出する。
【0114】
推定部333は、取得部331が取得した心電図データの中で第1対象期間の心電図データを、記憶部32に記憶された第1機械学習モデルに入力する。推定部333は、第1機械学習モデルから出力された分類結果に基づいて、第1対象期間において被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する(S13)。
【0115】
表示制御部335は、情報端末2の表示部に、第1対象期間の心電図データとともに、検出部332が検出したタップイベントと、推定部333が推定した心房細動の有無と、の関係を示す情報を表示させるための表示情報を生成し、情報端末2に送信する(S14)。情報端末2は、表示制御装置3から受信した表示情報に従って、第1対象期間の心電図データとともに、検出部332が検出したタップイベントと、推定部333が推定した心房細動の有無と、の関係を示す情報を表示部上に表示する。
【0116】
取得部331は、心電図データから、被分析者の心臓の電気的活動を示す値である特徴値を取得する(S15)。取得部331は、例えば、RR間隔、単位時間あたりの心拍数、VV間隔又はVA間隔のいずれかを、特徴値として取得する。
【0117】
選択部334は、被分析者に対して心臓の電気的活動が測定された期間の少なくとも一部を、特徴値の表示対象とする第2対象期間として選択する。(S16)。選択部334は、例えば、複数の特徴値のばらつき、検出部332により検出されたタップイベント、又は推定部333により推定された心房細動の有無に基づいて、第2対象期間を選択する。
【0118】
推定部333は、取得部331が取得した心電図データの中で第2対象期間の心電図データを、記憶部32に記憶された第1機械学習モデルに入力する。推定部333は、第1機械学習モデルから出力された分類結果に基づいて、第2対象期間において被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する(S17)。
【0119】
表示制御部335は、第2対象期間に測定された複数の特徴値に対応する複数の点P1を、所定の基準点を基準とした2次元平面上に配置する(S18)。表示制御部335は、基準点と複数の点それぞれとの距離が、当該点に対応する特徴値に対応するように、複数の点を配置する。また、表示制御部335は、基準点から複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の特徴値が測定された時刻の順に、基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転するように、複数の点を配置する。
【0120】
表示制御部335は、例えば、第2対象期間の心電図データと、多角形状図形を表示させるための情報と、を含む表示情報を生成し、情報端末2に送信する(S19)。情報端末2は、表示制御装置3から受信した表示情報に従って、特徴値に対応する多角形状図形を表示部上に表示する。
【0121】
図9に例示したフローチャートにおいて、ステップS12~S14におけるタップイベントの表示に関する処理と、ステップS15~S19における多角形状図形の表示に関する処理とは、並行して行われてもよく、逆の順序で行われてもよく、どちらか一方のみが行われてもよい。
【0122】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る表示制御システムSにおいて、表示制御装置3は、被分析者の心臓の電気的活動を示す特徴値の時間変化を、多角形状図形の形状として情報端末2の表示部に表示させる。分析者は、情報端末2において、対象期間における特徴値の時間変化を、多角形状図形の形状として把握できる。例えば、正常状態では多角形状図形の形状が真円に近くなり、被分析者に心房細動が発生している状態では多角形状図形の形状全体の凹凸が大きくなる。また、例えば被分析者に期外収縮が発生している状況では、多角形状図形の形状の一部のみの凹凸が大きくなる。これにより、表示制御システムSは、分析者が心臓の電気的活動を示す値の時間変化を確認しやすくすることができる。そのため、分析者が例えば非専門医であっても、多角形状図形の形状を参照して容易に心房細動、期外収縮、正常波形の可能性を区別できる。
【0123】
[第1変形例]
本変形例に係る表示制御装置3は、特徴値が測定されたことに応じて、特徴値に対応する点を表示部に逐次表示させる。本変形例において、選択部334は、特徴値の表示対象とする第2対象期間を選択しなくてもよい。
【0124】
表示制御部335は、取得部331が新たな特徴値を取得したことを条件として、新たな特徴値に対応する点P1を、
図6を用いて説明した規則に従って基準点P0を基準とした2次元平面上に配置する。
【0125】
表示制御部335は、新たな点P1が配置されたことを条件として、新たな点P1を含む多角形状図形を表示させるための表示情報を生成する。多角形状図形を表示させるための情報は、例えば、新たな点P1を含む複数の点P1それぞれの座標又は2次元平面に配置された新たな点P1を含む複数の点P1の画像である。これにより、表示制御装置3は、複数の特徴値に対応する複数の点P1を、測定された時刻の順に表示部に逐次表示させることができる。
【0126】
表示制御部335は、多角形状図形が含む点P1に対応する特徴値が測定された時刻から所定の時間が経過したことを条件として、当該点P1を多角形状図形から削除してもよい。これにより、表示制御装置3は、最近測定された特徴値に対応する複数の点P1のみを含む多角形状図形を表示部に表示させ、分析者が被分析者の最近の状態を把握しやすくできる。
【0127】
表示制御部335は、生成した表示情報を、情報端末2に送信する。情報端末2は、表示制御装置3から受信した表示情報に従って、特徴値に対応する多角形状図形を表示部上に表示する。
【0128】
図10は、特徴値に対応する多角形状図形を表示している情報端末2の模式図である。
図10の例では、表示制御部335は、上図の多角形状図形Fを情報端末2の表示部上に表示させた後、下図の多角形状図形Fを情報端末2の表示部上に表示させる。
【0129】
多角形状図形Fは、複数の特徴値に対応する複数の点P1と、複数の点P1のうち隣り合う2つの点を線で結ぶことによって生成された折れ線Lと、を含む。また、多角形状図形Fは、複数の点P1又は折れ線Lの一方のみを含んでもよい。また、多角形状図形Fは、
図8の例と同様に、複数の点P1の配置に用いられた基準点を中心とした、所定の間隔で配置された複数の同心円の上に重畳されて表示されてもよい。
【0130】
表示制御部335は、多角形状図形Fが含む複数の点P1を一度に表示部に表示させてもよい。また、表示制御部335は、多角形状図形Fが含む複数の点P1を、当該点P1が測定された時刻の順に1つずつ表示部に表示させてもよい。
【0131】
表示制御部335は、例えば、複数の点P1の中から特徴値が測定された時刻の順に2つの点P1を線で結ぶことによって、折れ線Lを生成する。また、表示制御部335は、複数の点P1の中で測定された時刻が最も早い点P1と最も遅い点P1とを線で結んでもよい。また、表示制御部335は、複数の点P1の中から、位置(座標)が近い順に2つの点P1を線で結ぶことによって、折れ線Lを生成してもよい。折れ線Lは、表示制御装置3の表示制御部335ではなく、情報端末2によって生成されてもよい。このように、表示制御装置3は、特徴値の時間変化を多角形状図形の形状として表示部に表示させることにより、分析者が特徴値の時間変化を確認しやすくすることができる。
【0132】
表示制御部335は、特徴値が測定された時刻に応じて、当該特徴値に対応する点P1又は当該点P1に接続された線の表示態様を変化させてもよい。表示制御部335は、例えば、現在時刻と特徴値が測定された時刻との差が所定の閾値以内である場合と、現在時刻と特徴値が測定された時刻との差が所定の閾値より大きい場合とで、複数の点P1の色、模様又は大きさを変更し、又は複数の点P1に接続された線の色、線種又は太さを変更する。これにより、表示制御装置3は、古い点P1と新しい点P1とで表示態様を変更し、分析者が複数の点P1に対応する特徴値の経時変化を直感的に把握しやすくできる。
【0133】
第2対象期間を構成する複数の期間が複数周分の多角形状図形Fによって表される場合には、表示制御部335は、第2対象期間のうち第1期間の多角形状図形Fの上に、第2対象期間のうち第2期間の多角形状図形Fを重畳して、表示部に表示させてもよい。第1期間は、例えば、2次元平面上で360度に対応する期間であり、第2期間は、2次元平面上で次の360度に対応する期間である。これにより、表示制御装置3は、複数の点P1を、基準点を基準として周回させて表示させることができるため、分析者が多角形状図形Fの形状の経時変化を把握しやすくできる。
【0134】
この場合に、表示制御部335は、第1期間の多角形状図形Fと、第2期間の多角形状図形Fと、を線で接続することにより閉じていない折れ線として表示部に表示させてもよい。また、表示制御部335は、第1期間の多角形状図形Fと、第2期間の多角形状図形Fと、をそれぞれ閉じた折れ線として表示部に表示させてもよい。
【0135】
また、表示制御部335は、基準点と複数の点P1それぞれとの距離に、時間経過とともに大きく又は小さくなる係数を乗算してもよい。そうすると、特徴量が一定であっても基準点と複数の点P1それぞれとの距離が時間経過に応じて変化するため、多角形状図形Fが渦巻き状になる。これにより、表示制御装置3は、複数の点P1を周回させて表示させる際に、複数の点P1同士が重なりづらくすることができる。
【0136】
表示制御部335は、複数の点を逐次表示部に表示させている間に、測定された複数の特徴値のばらつきが所定の閾値以上になった場合に、複数の点を逐次表示部に表示させることを停止してもよい。この場合に、取得部331は、新たな特徴値を取得したことを条件として、それまでに測定された複数の特徴値のばらつきを算出する。取得部331は、測定された複数の特徴値の全てを用いてばらつきを算出してもよく、測定された複数の特徴値の一部(例えば、最新の特徴値から遡って所定数の特徴値)を用いてばらつきを算出してもよい。
【0137】
取得部331は、例えば、複数の特徴値の分散や標準偏差等の統計値を、複数の特徴値のばらつきとして算出する。また、取得部331は、複数の特徴値の最頻値又は中央値からの差に対応する値を、複数の特徴値のばらつきとして算出してもよい。
【0138】
表示制御部335は、例えば、算出されたばらつきが所定の閾値以上になった場合に、新たな点P1を逐次配置することを停止し、既に配置された複数の点を含む多角形状図形を表示させるための表示情報を情報端末2に送信する。これにより、表示制御装置3は、複数の特徴値のばらつきが大きくなったタイミングで多角形状図形Fの更新を停止し、心房細動が発生しているか否かを確認するために重要な部分が後続のデータで上書きされることを抑制できる。
【0139】
[第2変形例]
特徴値の時間変化の傾向によって、1周分の多角形状図形に対応する期間、すなわち1周分の期間の長さが異なる場合がある。そこで本変形例に係る表示制御システムSは、情報端末2に表示させる1周分の多角形状図形の期間を切り替え可能にする。以下、上述の実施形態とは異なる部分を主に説明する。
【0140】
取得部331は、情報端末2において分析者により指定された、情報端末2に表示させる1周分の多角形状図形の期間を取得する。1周分の期間は、例えば、10秒間、30秒間等の心電図データの測定時間、又は10個、30個等の多角形状図形の頂点の数によって表される。
【0141】
表示制御部335は、例えば、多角形状図形が指定された1周分の期間で表示されるように、
図6に例示したように特徴値に対応する点P1のベクトルVを回転させる角度θを決定する。そして表示制御部335は、決定した角度θを用いて、複数の特徴値に対応する複数の点P1を、所定の基準点P0(原点)を基準とした2次元平面上に配置する。これにより、複数の特徴値が、分析者により指定された1周分の期間の多角形状図形として表示される。
【0142】
図11は、例示的な多角形状図形の形状を説明するための模式図である。
図11の例は、被分析者に心房細動及び徐脈が発生している場合の心電図データに基づいて表示された多角形状図形を表している。徐脈の場合は心拍数が少ないため、1周分の期間が10秒間である多角形状図形では、分析者は心房細動による凹凸を確認しづらい。一方、1周分の期間が20個の頂点又は30秒間である多角形状図形では、分析者は心房細動による凹凸を容易に確認できる。
【0143】
このように、本変形例に係る表示制御システムSは、情報端末2に表示させる1周分の多角形状図形の期間を切り替え可能にすることにより、特徴値の時間変化の傾向をより確認しやすくすることができる。
【0144】
[第3変形例]
上述の実施形態では多角形状図形の形状が被分析者に心房細動又は期外収縮が発生しているか否かの判断に用いられる例を説明したが、多角形状図形の形状は心房細動又は期外収縮に限らずその他の不整脈が発生しているか否かの判断にも用いることができる。
【0145】
上述のように、被分析者に心房細動が発生している状態において、多角形状図形は、全体的に凸凹が大きい形状となる。被分析者に期外収縮が発生している状態において、多角形状図形は、一部分において凸凹が大きく、その他の部分において円弧に近い形状となる。被分析者に2段脈又は3段脈が発生している状態において、多角形状図形は、星形の形状となる。
【0146】
被分析者に頻脈が発生している状態において、多角形状図形は、特徴値であるRR間隔が小さく又は単位時間あたりの心拍数が多いことを表す形状(例えば、面積が比較的小さい形状)となる。被分析者に徐脈が発生している状態において、多角形状図形は、特徴値であるRR間隔が大きく又は単位時間あたりの心拍数が少ないことを表す形状(例えば、面積が比較的大きい形状)となる。被分析者にポーズ(心拍の停止)が発生している状態において、多角形状図形は、特徴値であるRR間隔が大きく又は単位時間あたりの心拍数が少ないことを表す形状(例えば、面積が比較的大きい形状)となる。
【0147】
図12は、例示的な多角形状図形の形状を説明するための模式図である。
図12の例は、被分析者に2段脈、3段脈又はポーズが発生している場合の心電図データに基づいて表示された多角形状図形を表している。2段脈が発生している場合の多角形状図形は、星形の形状となっている。3段脈が発生している場合の多角形状図形は、星形の頂点部分が折れた形状となっている。ポーズが発生している場合の多角形状図形は、ある一部分の頂点が残りの部分の頂点に比べて異常に大きい形状となっている。
【0148】
このように、表示制御システムSは、情報端末2に表示させた多角形状図形により、被分析者に心房細動又は期外収縮を含む様々な不整脈が発生しているか否かを分析者が判断しやすくすることができる。
【0149】
多角形状図形は、多角形状図形を形成する複数の点P1の配置に用いられた基準点P0を中心とした、所定の基準値を半径とした円である補助線の上に重畳されて表示されることが望ましい。補助線の基準値は、頻脈が発生していることを示すRR間隔又は単位時間あたりの心拍数、徐脈が発生していることを示すRR間隔又は単位時間あたりの心拍数、ポーズが発生していることを示すRR間隔又は単位時間あたりの心拍数等である。これにより、表示制御システムSは、分析者が多角形状図形と補助線とを見比べることにより被分析者に頻脈、徐脈、ポーズ等が発生しているか否かを判断しやすくすることができる。
【0150】
[第4変形例]
被分析者において心房細動が開始又は終了した時点の付近では、1つの多角形状図形において心房細動の部分と洞調律の部分が混在するため、期外収縮との見分けが付きにくくなる。そこで本変形例に係る表示制御システムSは、全範囲で心房細動が発生している期間の多角形状図形を生成する。以下、上述の実施形態とは異なる部分を主に説明する。
【0151】
推定部333は、例えば、上述の第1機械学習モデルを用いて、取得部331が取得した心電図データの全期間を所定の長さ(例えば、多角形状図形の1周分の期間より短い長さ)に分割することによって生成した複数の心電図データそれぞれに対して、被分析者に心房細動が発生しているか否かを推定する。表示制御部335は、心房細動が発生していると判定された連続する複数の心電図データ(全範囲で心房細動が発生していると推定された期間の心電図データ)に対応する特徴値を用いて、多角形状図形を情報端末2に表示させる。
【0152】
図13は、例示的な多角形状図形の形状を説明するための模式図である。
図13の上段の例は、被分析者において心房細動が開始した時点付近の心電図データに対応する多角形状図形を表している。被分析者において心房細動が開始した時点付近では、多角形状図形に凹凸が大きい形状と円弧に近い形状とが混在するため、被分析者において期外収縮が発生している場合の多角形状図形の円弧に近い形状と見分けが付きにくい。心房細動が終了した時点付近でも同様である。
【0153】
図13の下段の例は、被分析者において全範囲で心房細動が発生していると推定された期間の心電図データに対応する多角形状図形を表している。全範囲で心房細動が発生している期間、例えば被分析者において心房細動が発生している最中では、多角形状図形の全体で凹凸が大きい形状になっているため、分析者は被分析者において心房細動が発生していることを判断しやすい。
【0154】
このように、本変形例に係る表示制御システムSは、全範囲で心房細動が発生している期間の多角形状図形を情報端末2に表示させることにより、分析者が多角形図形を参照して心房細動又は期外収縮の有無を判断しやすくすることができる。
【0155】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0156】
表示制御装置3のプロセッサは、
図9に示す表示制御方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、表示制御装置3のプロセッサは、
図9に示す表示制御方法を実行するためのプログラムを実行して表示制御システムSの各部を制御することによって、
図9に示す表示制御方法を実行する。
図9に示す表示制御方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0157】
S 表示制御システム
1 測定機器
11 通信部
12 心電図測定部
13 加速度測定部
2 情報端末
3 表示制御装置
31 通信部
32 記憶部
33 制御部
331 取得部
332 検出部
333 推定部
334 選択部
335 表示制御部
【要約】
本発明の一実施形態に係る表示制御装置3は、被分析者の心臓の電気的活動を示す値を取得する取得部331と、対象期間に測定された複数の値に対応する複数の点を表示部に表示させる表示制御部335と、有し、所定の基準点と複数の点それぞれとの距離は、当該点に対応する値に対応しており、基準点から複数の点それぞれまでのベクトルの向きが、複数の値が測定された時刻の順に、基準点を基準として時計回り又は反時計回りに回転する。