(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/40 20060101AFI20230628BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20230628BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20230628BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230628BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B41M5/40 220
B41M5/40 210
B32B7/027
C09J7/29
C09J7/38
G09F3/02 F
(21)【出願番号】P 2020194867
(22)【出願日】2020-11-25
(62)【分割の表示】P 2016075743の分割
【原出願日】2016-04-05
【審査請求日】2020-12-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】江頭 雄介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村上 麻衣
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】井口 猶二
【審判官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-341427(JP,A)
【文献】特開平6-48034(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072411(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28-5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側に粘着剤層を有すると共に、
表面側に
バーコードが印刷された印刷層を有する第1基材と、
表面側に透明な感熱記録層を有する透明な第2基材とを備え、
前記第1基材の
印刷層面側と、前記第2基材の
裏面側とが、貼り合されており、
前記第1基材の前記印刷層面側に貼り合される、前記感熱記録層及び前記第2基材からなる二層部分のヘイズ値が、40%以下であり、
前記第1基材
の前記裏面側の前記粘着剤
層を覆う剥離紙を備え、
前記感熱記録層は、融点が50℃未満の低融点のパラフィンを含む、
ことを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記第1基材の前記印刷
層面側と前記第2基材の裏面側とが、接着剤層又は粘着剤層を介して貼り合されている、
請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記第2基材が透明フィルムである、
請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記第1基材が、金属層を有する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録体に関し、更に詳しくは、印刷層及び感熱記録層を有する感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録体は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、記録画像が得られるものであり、ファクシミリや自動券売機、科学計測機の記録用媒体としてだけではなく、小売店等のPOSシステムの感熱記録ラベルなどとして広範な用途に使用されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した感熱記録ラベルには、予め定まったロゴマークや背景のデザイン等の固定情報を、感熱記録ラベルの感熱記録層上に、オフセット印刷等によってプレ印刷しておき、このプレ印刷され印刷層を介して、製造年月日や消費期限等の可変情報をサーマルプリンタで前記感熱記録層に感熱記録する場合がある。
【0005】
このようにプレ印刷の上から感熱記録する場合には、印刷インクの段差などによってサーマルヘッドから感熱記録層への熱伝導が損なわれ、良好な記録印字が行えないといった難点がある。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、プレ印刷の後に、良好な感熱記録が行える感熱記録体を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0008】
(1)本発明の感熱記録体は、裏面側に粘着剤層を有すると共に、表面側にバーコードが印刷された印刷層を有する第1基材と、表面側に透明な感熱記録層を有する透明な第2基材とを備え、前記第1基材の印刷層面側と、前記第2基材の裏面側とが、貼り合されており、前記第1基材の前記印刷層面側に貼り合される、前記感熱記録層及び前記第2基材からなる二層部分のヘイズ値が、40%以下であり、前記第1基材の前記裏面側の前記粘着剤層を覆う剥離紙を備え、前記感熱記録層は、融点が50℃未満の低融点のパラフィンを含む。
【0009】
本発明の感熱記録体によると、第1基材の印刷層面側に、感熱記録層を有する第2基材の裏面側が貼り合されているので、感熱記録層上には、印刷層はなく、したがって、印刷層の上から感熱層にサーマルヘッドで印字する従来例のように、印刷インクの段差などによってサーマルヘッドから感熱記録層への熱伝導が損なわれるといったことがなく、良好な記録印字を行うことが可能である。
【0010】
また、印刷層上に、感熱記録層を有する第2基材が積層されることになるので、印刷層を保護することができる。
【0011】
更に、印刷層上に積層される感熱記録層及び第2基材は、透明であるので、感熱記録層及び第2基材を通して、印刷層の印刷画像を視認することができる。
本発明によると、印刷層上の、感熱記録層及び第2基材からなる二層部分は、ヘイズ値が40%以下と透明度が高いので、感熱記録層及び第2基材を通して印刷層の印刷画像を明瞭に視認することができる。
本発明によると、当該感熱記録体をラベルとして使用する場合に、剥離紙を剥がして包装品等に貼付することができる。
【0012】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記第1基材の前記印刷層面側と前記第2基材の裏面側とが、接着剤層又は粘着剤層を介して貼り合されている。
【0013】
この実施態様によると、第1基材の印刷層面側に、感熱記録層が表面に形成されている第2基材の裏面側が、接着剤層又は粘着剤層を介して貼り合されているので、印刷層上に、接着剤層又は粘着剤層、第2基材及び感熱記録層が積層された構造となり、印刷層を介することなく、感熱記録層に良好な記録印字を行うことが可能となる。
【0014】
また、印刷層上に、接着剤層又は粘着剤層を介して第2基材及び感熱記録層が積層されているので、印刷層を保護することができる。
【0015】
更に、印刷層上に積層される第2基材及び感熱記録層は、透明であるので、感熱記録層及び第2基材を通して印刷層の印刷画像を視認することができる。
【0016】
(3)本発明の他の実施態様では、前記第2基材が透明フィルムである。
【0017】
この実施態様によると、印刷層上の第2基材は、透明フィルムであるので、透明フィルムを通して印刷層の印刷画像を視認することができる。
【0022】
(4)本発明の他の実施態様では、前記第1基材が、金属層を有する。
【0023】
第1基材は、金属層を有するものであればよく、したがって、金属層のみを有する、すなわち、第1基材が金属層であってもよく、あるいは、紙や合成フィルム等に金属層が設けられたものなどであってもよい。
【0024】
この実施態様によると、第1基材上に積層される第2基材及び感熱記録層は、透明であるので、感熱記録層及び第2基材を通して、第1基材の金属層を視認することができ、当該感熱記録体を、例えば、ラベルとして使用した場合に、金属層の有する金属光沢によって、高級感を付与したり、人目を引くアイキャッチ効果を高めることができる。
【0025】
また、ラベルには、包装品等に手作業で貼付される場合があり、作業者が誤ってラベルを貼り忘れることがあり、また、包装品中、例えば、食品中にラベルやラベルの破片が混入するといったことが生じるが、第1基材が金属層を有するので、金属探知機を通過させることによって、ラベルの有無を容易に検査することができる。これによって、ラベルの貼り忘れや食品中へのラベルの混入等を容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、第1基材の印刷層面側に、感熱記録層を有する第2基材の前記感熱記録層を有しない裏面側が貼り合されているので、感熱記録層上には、印刷層はなく、したがって、印刷層の上から感熱記録層にサーマルヘッドで印字する従来例のように、印刷インクの段差などによってサーマルヘッドから感熱記録層への熱伝導が損なわれるといったことがなく、良好な記録印字を行うことが可能である。
【0029】
また、印刷層上に、感熱記録層を有する第2基材が積層されることになるので、印刷層を保護することができる。
【0030】
更に、印刷層上に積層される感熱記録層及び第2基材は、透明であるので、感熱記録層及び第2基材を通して印刷層の印刷画像を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態の感熱記録体の概略断面図である。
【
図2】
図2は本発明の他の実施形態の感熱記録体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態の感熱記録体の概略断面図である。
【0034】
この実施形態の感熱記録体1は、一方の面である裏面に第1粘着剤層2を有すると共に、他方の面である表面にバーコードが印刷された印刷層4を有する第1基材3の印刷層面側と、一方の面である表面に透明な感熱記録層7を有する透明な第2基材6の裏面側とが、第2粘着剤層5を介して貼り合せされている。
【0035】
したがって、この感熱記録体1は、第1粘着剤層2と、第1基材3と、印刷層4と、第2粘着剤層5と、透明な第2基材6と、透明な感熱記録層7とが、この順序で積層された構造となっている。
【0036】
第1粘着剤層2の粘着剤としては、タック紙等に使用される従来の粘着剤を使用することができる。かかる粘着剤としては、例えば、エマルジョン系(粘着剤を水に分散したもの)、ソルベント系(粘着剤を溶剤に溶解したもの)、ホットメルト系(熱可塑性を利用したもの)等である。材質としては、合成ゴム系や天然ゴム系、アクリル樹脂系、ポリビニルエーテル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系等の粘着剤があげられる。ホットメルト系の粘着剤はゴム系でもアクリル系でもよい。
【0037】
第1基材3は、特に制限はなく、紙、あるいは、フィルムであってもよく、従来のタック紙等の基材として使用されている基材の中から、適宣選択することができる。このような基材としては、例えば上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙などの紙類、合成紙、アルミニウム箔や銅箔や鉄箔などの金属箔、不織布などの多孔質材料、更にはポリエチレン、ポリプロピレン、各種オレフィン系共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーポネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるプラスチックシート等を挙げることができる。
【0038】
印刷層4は、公知のオフセット印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等の印刷方式により、バーコードが印刷され、また、予め定まった固定情報、例えば、ロゴマーク、商品名、背景のデザイン等をプレ印刷することができる。
【0039】
感熱記録層7には、プレ印刷された固定情報以外の可変情報、例えば、価格、製造年月日、消費期限等をサーマルプリンタで感熱記録することができる。
【0040】
第2基材6及び感熱記録層7は、プレ印刷された印刷層4上に積層されるので、印刷層4による印刷画像を、第2基材6及び感熱記録層7を通して視認できるようにするために、第2基材6及び感熱記録層7には、透明性が要求される。
【0041】
この第2基材6は、透明な基材であればよく、透明な合成樹脂フィルム、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを用いることができる。かかるフィルムの厚さは特に限定されないが、例えば、10μm~100μm程度が塗工性及び透明性に優れ、好ましい。
【0042】
感熱記録層7を形成する材料としては、加熱により発色する発色剤、顕色剤、充填剤、結着剤(バインダー)、及び滑剤などを含み、透明な感熱記録層を形成できる従来公知の材料を用いることができる。
【0043】
感熱記録層7の透明性を向上させるために、各材料は、粒子径の細かいものを使用するのが好ましい。このように粒子径の細かい材料とすることによって、粒子の乱反射を抑制することができる。
【0044】
具体的には、発色剤であるロイコ染料としては、例えば、2-アニリン-3メチル-6-(N-メチル-P-トルイジノ)フルオランなどを挙げることができ、それらの粒子径は、0.1~1.0μmであるのが好ましい。ここで、粒子径とは、マイクロトラックレーザー解析・散乱式粒度分析機による測定50%平均粒子径をいう。
【0045】
上記の顕色剤としては、例えば、3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンなどを挙げることができ、それらの粒子径は、0.1~1.0μmであるのが好ましい。
【0046】
上記の充填剤としては、例えば、カオリン、炭酸カルシウムなどを挙げることができ、それらの粒子径は、1.0μm以下であるのが好ましい。
【0047】
上記の結着剤としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体などを挙げることができる。
【0048】
上記の滑剤としては、ポリエチレン、ステアリン酸亜鉛、パラフィンなどを挙げることができ、それらの粒子径は、0.5μm以下であるのが好ましい。
【0049】
透明性を向上させるためには、パラフィンを含有させるのが特に有効であり、このパラフィンは、感熱記録層7の発色温度未満、好ましくは80℃未満、より好ましくは、50℃未満の低融点のパラフィンであるのが好ましい。
【0050】
この低融点のパラフィンの粒子径は、上記のように0.5μm以下であるのが好ましい。このパラフィンの含有量は、乾燥重量で、例えば、0.1~1.0g/m2であるのが好ましい。
【0051】
このように低融点のパラフィンを含有させることによって、感熱記録層形成用の塗液を、第2基材6上に塗布し、乾燥する際に、パラフィンが溶融し、感熱記録層7を構成する粒子の表面の凹凸等の隙間に入り込んで、隙間を埋めることになり、これによって、粒子表面の乱反射を抑制して透明性を向上させることができる。
【0052】
裏面に第1粘着剤層2が形成されると共に、表面に印刷層4が形成された第1基材3の表面側と、表面に透明な感熱記録層7が形成された透明な第2基材6の裏面側とを、貼り合せる第2粘着剤層5は、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。
【0053】
なお、第2粘着剤層5に換えて、透明な接着剤層を設けてもよい。
【0054】
上記のように、第2基材6及び感熱記録層7は、プレ印刷された印刷層4上に積層されるので、印刷層4による印刷画像を、第2基材6及び感熱記録層7を通して視認することになり、第2基材6及び感熱記録層7は、高い透明性を有するのが好ましい。
【0055】
そこで、感熱記録層7を有する第2基材6からなる感熱フィルムについて、透明度の異なる複数種類を調製し、各感熱フィルムを、印刷層4が形成された第1基材3に第2粘着剤層5を介して貼り合せて各サンプルを作製し、その視認性を次のようにして評価した。
【0056】
具体的には、ヘイズ値(HAZE)が異なる複数種類の感熱フィルムを、印刷層4としてバーコードがプレ印刷された第1基材3に貼り合せ、その視認性を、バーコード読取り率(%)、ANSIグレード、PCS値(%)で評価した。
【0057】
ヘイズ値(%)は、JIS K 7136に準拠し、ヘイズメーターを用いて測定した。
【0058】
バーコード読取り確率は、市販のバーコードリーダーにて、20回バーコードの読取りを行って読取れる確率を算出した。
【0059】
バーコード検証機WoodPecker PC6500(ムナゾヲ株式会社)を用いて、ANSI(American National Standards Institute)グレードを測定し、同時に、PCS値(Print Contrast Signal)を測定した。
【0060】
なお、バーコードがプレ印刷された第1基材3に貼り合せる感熱フィルムの厚みは、45μmとした。
【0061】
結果を下記表1に示す。
【0062】
【0063】
表1において、サンプルNo.1~6の実施例1~6は、バーコードがプレ印刷された第1基材3上に、ヘイズ値が異なる感熱フィルム(ラミネート素材)を貼り合せたものである。
【0064】
実施例1は、市販の透明な感熱フィルムを貼り合せたものであり、実施例2,3は、ヘイズ値が異なるように調製した感熱フィルムを、貼り合せたものである。
【0065】
実施例4~6は、本件出願人による出願であって、既に公開されている特開2014-218024号公報で提案している、透明性が良好な感熱記録体と同様の材料等を用いて、ヘイズ値が異なるように、感熱記録層7を有する第2基材6からなる感熱フィルムを調製し、貼り合せたものである。
【0066】
サンプルNo.7は、比較例1であって、感熱フィルムではなく、単なる透明フィルムを、貼り合せたものである。サンプルNo.8は、比較例2であって、何も貼り合せていないブランクである。
【0067】
表1に示されるように、サンプルNo.1~6の実施例1~6及びサンプルNo.7,8の比較例1,2のいずれもバーコード読み取り確率は、100%であった。
【0068】
市販の感熱フィルムを、バーコードがプレ印刷された第1基材3に、第2粘着剤層5を介して貼り合せた実施例1では、ANSIグレードがCである。これに対して、ヘイズ値が異なるようにそれぞれ調製した各感熱フィルムを、貼り合せた実施例2~6では、ANSIグレードがいずれもBであり、実施例1よりも優れている。
【0069】
ANSIグレードがCである実施例1のヘイズ値が86.76%であり、ANSIグレードがBである実施例2~6の内、最もヘイズ値の高い、すなわち、透明度が低い実施例2のヘイズ値が73.30%である。したがって、ANSIグレードを考慮すると、貼り合せる感熱フィルムは、そのヘイズ値が80%以下であるのが好ましくは、75%以下であるのがより好ましい。
【0070】
また、PCS値については、85%以上であることが要求される場合が比較的多い。表1に示すように、実施例1,2は、PCS値が85%未満であるのに対して、実施例3~6は、いずれもPCS値が85%以上である。
【0071】
実施例1,2の内、PCS値が高い実施例2のPCS値が79%であって、その感熱フィルムのヘイズ値が73.30%である。これに対して、実施例3~6の内、PCS値が最も低い実施例3のPCS値が85%であって、その感熱フィルムのヘイズ値が32.84%である。したがって、85%程度以上のPCS値を得るためには、貼り合せる感熱フィルムは、そのヘイズ値が40%以下であるのが好ましくは、35%以下であるのがより好ましい。
【0072】
表1に示すように、PCS値が90%の実施例5の感熱フィルムのヘイズ値は、24.29%であり、PCS値が91%である実施例6の感熱フィルムのヘイズ値は、15.94%である。したがって、90%程度を超えるPCS値を得るためには、貼り合せる感熱フィルムは、そのヘイズ値が24%以下であるのが好ましくは、20%以下であるのがより好ましい。
【0073】
以上のように印刷層4が形成された第1基材3に貼り合される感熱記録層7を有する第2基材6は、透明であって、その透明度に対応するヘイズ値が、上記のような値以下であるのが好ましい。
【0074】
本実施形態の感熱記録体1では、印刷層4が形成された第1基材3に貼り合される感熱記録層7を有する第2基材6は、透明であるので、印刷層4による印刷画像を、感熱記録層7及び第2基材6を介して容易に視認できる。
【0075】
また、感熱記録層7は、印刷層4上に積層されるので、従来例のように、印刷層を介して感熱記録する必要がなく、印刷インクの段差などによってサーマルヘッドから感熱記録層7への熱伝導が損なわれるといったことがなく、良好な記録印字を行うことが可能である。
【0076】
更に、印刷層4上に、第2基材6及び感熱記録層7が積層されるので、印刷層4を、第2基材6及び感熱記録層7によって保護することができる。
【0077】
上記のように、第1基材3は、特に制限はないので、例えば、周縁に紙繊維の毛羽立ちを有する、いわゆるちぎり和紙を使用することができ、その毛羽立ちや風合いによって手作り感や高級感を持たせることができ、例えば、日本酒やワインの瓶などに貼付するのにラベルなどに好適である。
【0078】
また、第1基材3は、金属層を有する構成としてもよく、例えば、第1基材3を、金属箔からなる金属層で構成してもよいし、あるいは、紙や合成樹脂フィルム等の基材に、金属蒸着膜や金属粉末を主成分とする塗膜等の金属層を設けたり、金属箔を貼り合せた構成としてもよい。
【0079】
かかる構成によれば、第1基材3上の第2基材6及び感熱記録層7は、透明であるので、第1基材3を構成する金属層を視認することができ、ラベルとして使用した場合に、金属層の有する金属光沢によって、高級感を付与したり、人目を引くアイキャッチ効果を高めることができる。
【0080】
また、ラベルは、包装品等に手作業で貼付される場合があり、作業者が誤ってラベルを貼り忘れることがある。また、包装品である食品中にラベルやラベルの破片が混入するといったことが生じるが、第1基材3が金属層を有するので、金属探知機を通過させることによって、ラベルの有無を容易に検査でき、ラベルの貼り忘れや食品へのラベルの混入等を容易に検出することができる。
【0081】
本発明の感熱記録体1は、上記
図1の構成に限るものではなく、他の層を設けてもよく、例えば、
図2に示すように、感熱記録層7上に、透明な保護層8を形成してもよいし、第1粘着剤層2の表面を覆う剥離紙9を設けてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 感熱記録体
2 第1粘着剤層
3 第1基材
4 印刷層
5 第2粘着剤層
6 第2基材
7 感熱記録層
8 保護層
9 剥離紙