(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】水耕栽培装置及び水耕栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230628BHJP
【FI】
A01G31/00 604
A01G31/00 611Z
(21)【出願番号】P 2016225124
(22)【出願日】2016-11-18
【審査請求日】2019-09-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503006132
【氏名又は名称】有限会社新日邦
(74)【代理人】
【識別番号】100092680
【氏名又は名称】入江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】甲 斐 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮 野 孝 一 郎
(72)【発明者】
【氏名】篠 原 淳 一
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】佐藤 史彬
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-43944(JP,U)
【文献】実開平7-5346(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第0514558(EP,A1)
【文献】特開平9-103203(JP,A)
【文献】特開平10-4807(JP,A)
【文献】特開2003-310067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G31/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔のそれぞれに植物を支持した植物支持体を挿入固定し、栽培槽の栄養液を覆
う水耕栽培用被覆体を互いに接触させて並列に並べて前記栄養液に浮かせ、植物を栽培す
る水耕栽培方法であって、
接触する一方の前記水耕栽培用被覆体と接触する他方の前記水耕栽培用被覆体との間
に生じる隙間の下方に空間を形成し、この空間を前記栽培槽の栄養液に臨ませ、
前記空間は、断面視、水平方向の水平寸法A>垂直方向の垂直寸法Bである横長の四
角形であり、
前記植物支持体を挿入固定する前記孔は、前記栄養液に向かって、入口側孔部、中間
側孔部、出口側孔部を有し、
前記出口側孔部において、前記栄養液に一番近い部位は第1の部位であり、前記栄養
液に一番遠い部位は第2の部位であり、
前記第1の部位と前記第1の部位に対向する前記植物支持体の部位との距離T、前記
第2の部位と前記第2の部位に対向する前記植物支持体の部位との距離tとすれば、T>tの関係とし、
前記入口側孔部は、栄養液に向かって先細りとなるテーパーが形成され、
前記出口側孔部は、栄養液に向かって末広がりとなるテーパーが形成され、
前記中間側孔部で植物支持体を固定する
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項2】
複数の孔のそれぞれに植物を支持した植物支持体を挿入固定し、栽培槽の栄養液を覆
う水耕栽培用被覆体を互いに接触させて並列に並べて前記栄養液に浮かせ、植物を栽培す
る水耕栽培装置であって、
接触する一方の前記水耕栽培用被覆体と接触する他方の前記水耕栽培用被覆体との間
に生じる隙間の下方に形成された空間を備え、
この空間を前記栽培槽の栄養液に臨ませ、
前記空間は、断面視、水平方向の水平寸法A>垂直方向の垂直寸法Bである横長の四
角形であり、
前記植物支持体を挿入固定する前記孔は、前記栄養液に向かって、入口側孔部、中間
側孔部、出口側孔部を有し、
前記出口側孔部において、前記栄養液に一番近い部位は第1の部位であり、前記栄養
液に一番遠い部位は第2の部位であり、
前記第1の部位と前記第1の部位に対向する前記植物支持体の部位との距離T、前記
第2の部位と前記第2の部位に対向する前記植物支持体の部位との距離tとすれば、T>tの関係とし、
前記入口側孔部は、栄養液に向かって先細りとなるテーパーが形成され、
前記出口側孔部は、栄養液に向かって末広がりとなるテーパーが形成され、
前記中間側孔部で植物支持体を固定する
ことを特徴とする水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培装置及び水耕栽培方法に係り、特に、藻の発生を防ぐことができる水耕栽培装置及び水耕栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水耕栽培用被覆体(例えば、定植パネル)を並列状態に浮かべて使用する水耕栽培装置がある(特許文献1参照)。
この水耕栽培装置は、栽培槽の栄養液の上面に水耕栽培用被覆体を浮かべると共に、この水耕栽培用被覆体を複数枚用いて、栽培槽の栄養液の上面を覆って、栽培槽の栄養液中に藻が発生するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記水耕栽培装置にあっては、並列状態の一方の水耕栽培用被覆体(定植パネル3)と並列状態の他方の水耕栽培用被覆体(定植パネル3)との間に隙間(特許文献1の
図1参照)が生じ、この隙間が栽培槽の栄養液に接触しているため、毛細管現象により前記隙間を介して栄養液が上昇し、この栄養液が水耕栽培の光源側に面していることもあって、藻の発生に必要な光、水、栄養の3条件が満たされ、水耕栽培用被覆体の表面に藻が発生して、植物の葉の裏面側に藻が付着し、藻の除去に手間を要するという問題点が生じた。
【0005】
本発明は、前記問題点を考慮してなされたもので、藻の発生を防ぐことができる水耕栽培装置及び水耕栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の水耕栽培方法は、複数の孔のそれぞれに植物を支持した植物支持体を
挿入固定し、栽培槽の栄養液を覆う水耕栽培用被覆体を互いに接触させて並列に並べて前
記栄養液に浮かせ、植物を栽培する水耕栽培方法であって、接触する一方の前記水耕栽培
用被覆体と接触する他方の前記水耕栽培用被覆体との間に生じる隙間の下方に空間を形成
し、この空間を前記栽培槽の栄養液に臨ませ、前記空間は、断面視、水平方向の水平寸法
A>垂直方向の垂直寸法Bである横長の四角形であり、前記植物支持体を挿入固定する前
記孔は、前記栄養液に向かって、入口側孔部、中間側孔部、出口側孔部を有し、前記出口
側孔部において、前記栄養液に一番近い部位は第1の部位であり、前記栄養液に一番遠い
部位は第2の部位であり、前記第1の部位と前記第1の部位に対向する前記植物支持体の
部位との距離T、前記第2の部位と前記第2の部位に対向する前記植物支持体の部位との
距離tとすれば、T>tの関係とし、前記入口側孔部は、栄養液に向かって先細りとなるテーパーが形成され、前記出口側孔部は、栄養液に向かって末広がりとなるテーパーが形成され、前記中間側孔部で植物支持体を固定するものである。
【0008】
また、請求項2記載の水耕栽培装置は、複数の孔のそれぞれに植物を支持した植物支
持体を挿入固定し、栽培槽の栄養液を覆う水耕栽培用被覆体を互いに接触させて並列に並
べて前記栄養液に浮かせ、植物を栽培する水耕栽培装置であって、接触する一方の前記水
耕栽培用被覆体と接触する他方の前記水耕栽培用被覆体との間に生じる隙間の下方に形成
された空間を備え、この空間を前記栽培槽の栄養液に臨ませ、前記空間は、断面視、水平
方向の水平寸法A>垂直方向の垂直寸法Bである横長の四角形であり、前記植物支持体を
挿入固定する前記孔は、前記栄養液に向かって、入口側孔部、中間側孔部、出口側孔部を
有し、前記出口側孔部において、前記栄養液に一番近い部位は第1の部位であり、前記栄
養液に一番遠い部位は第2の部位であり、前記第1の部位と前記第1の部位に対向する前
記植物支持体の部位との距離T、前記第2の部位と前記第2の部位に対向する前記植物支
持体の部位との距離tとすれば、T>tの関係とし、前記入口側孔部は、栄養液に向かって先細りとなるテーパーが形成され、前記出口側孔部は、栄養液に向かって末広がりとなるテーパーが形成され、前記中間側孔部で植物支持体を固定するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例の水耕栽培装置の要部を示すもので、
図5記載の孔に植物を支持した植物支持体を挿入固定し、水耕栽培の使用状態の概略的断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の水耕栽培装置に使用される水耕栽培用被覆体(栽培パネル)の概略的斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2の水耕栽培用被覆体(栽培パネル)の概略的平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)の概略的正面図であり、
図3(c)は、
図3(a)のA-A線による概略的断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の水耕栽培用被覆体(栽培パネル)を互いに接触させて並列に並べた使用状態の概略的平面図で、
図4(b)は、
図4(a)のA-A線による概略的断面図である。
【
図5】
図5は、
図4(b)の一部を拡大して示す概略的一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施例の水耕栽培装
置及び水耕栽培方法を図面(
図1乃至
図5)を参照して説明する。
図1に示すPは水耕栽培装置で、水耕栽培装置Pは、土の代わりに栄養液(養液又は水耕肥料溶液)を供給して野菜を栽培する装置で、天候や季節などに影響を受けずに安定して植物を生産できるものである。
水耕栽培装置Pは、複数の孔1a、1a・・・のそれぞれに植物を支持した植物支持体2、2・・・を挿入固定し、栽培槽3の栄養液4を覆う水耕栽培用被覆体(栽培パネル、定植パネル)1を互いに接触させて並列(二つ以上のものが並ぶこと)に並べて栄養液4に浮かせ、植物を栽培するものである。
栄養液(養液又は水耕肥料溶液)4は、栄養塩類などの植物の生育に必要な成分(例えば、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム等)を含んだ水である。
【0018】
植物支持体2は、例えば、図示しないスポンジ(スポンジは、例えば、発泡ウレタン等で形成)に所定間隔を置いて分割用切目を設けることにより形成されたスポンジブロック体で、レタス等の葉菜類の野菜の苗を支持するものである。
なお、水耕栽培用被覆体1の上方には、白色蛍光灯、LED等の図示しない光源(照明部)が設けられている。
【0019】
水耕栽培用被覆体1は、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン等で形成され、複数の孔1a、1a・・・のそれぞれに植物を支持した植物支持体2、2・・・を挿入固定し、栽培槽3の栄養液4に互いに接触させて並列に浮かべて使用するもので、水耕栽培用被覆体1は、平面視、矩形形状であって[
図2~
図3(a)(b)(c)参照]、周縁部の部位の厚みtを複数の孔1a、1a・・・を有した部位の厚みTより薄くなっている(T>t)。
その結果、
図5に示すように、接触する一方の水耕栽培用被覆体1(1X)と接触する他方の水耕栽培用被覆体1(1Y)との間に隙間Sの下方に空間Kを形成し、この空間Kを栽培槽3の栄養液4に臨ませる構成となる。
【0020】
なお、水耕栽培用被覆体を並列状態に使用する従来の水耕栽培方法にあっては、並列状態の一方の水耕栽培用被覆体と並列状態の他方の水耕栽培用被覆体との間に形成される隙間が栽培槽の栄養液に接触しているため、毛細管現象により前記隙間を介して栄養液が上昇し、該栄養液が水耕栽培の光源側に面していることもあって、藻の発生に必要な光、水、栄養の3条件が満たされ、水耕栽培用被覆体の表面に藻が発生して、植物の葉の裏面側に藻が付着し、藻の除去に手間を要していたが、
本実施例の水耕栽培装置(水耕栽培方法)Pによれば、複数の孔a、1a・・・のそれぞれに植物を支持した植物支持体2、2・・・を挿入固定し、栽培槽3の栄養液4を覆う水耕栽培用被覆体1を互いに接触させて並列に並べて栄養液4に浮かせ、植物を栽培する水耕栽培装置(水耕栽培方法)Pであって、接触する一方の水耕栽培用被覆体1(1X)と接触する他方の水耕栽培用被覆体1(1Y)との間に生じる隙間Sの下方に空間Kを形成し、この空間Kを栽培槽3の栄養液4に臨ませるため、従来生じていた毛細管現象を防いで、水耕栽培用被覆体1の表面上の藻の発生を防止して、植物への藻の付着を抑制することができる(
図1、
図4、
図5参照)。
【0021】
なお、上述した水耕栽培用被覆体1は、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン等で形成され、平面視、矩形形状であって、周縁部の部位の厚みtを
図4及び
図5に示すように、複数の孔1a、1a・・・を有した部位の厚みT(T>t)より薄くなっている。
そのため、隣接する水耕栽培用被覆体1、1との間に形成される隙間Sが空気5を介して栽培槽3の栄養液4に臨む構成を簡易に得ることができる。
【符号の説明】
【0022】
P 水耕栽培装置
S 隙間
1 水耕栽培用被覆体(栽培パネル)
1X 接触する一方の水耕栽培用被覆体
1Y 接触する他方の水耕栽培用被覆体
1a 孔
2 植物支持体
3 栽培槽
4 栄養液
K 空間